次に、本発明の参考実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び/又は図2に示すように、静電塗装システム10は、図示しない色塗料槽から供給された塗料を供給する塗料供給部20を含む。なお、塗料としては、有機溶剤型塗料を含む導電性塗料が用いられるが、好適には水溶性塗料が用いられるとよい。
また、前記静電塗装システム10は、前記塗料供給部20から送給された塗料が導入される単一の塗料供給ポート24a及び後記する塗装ガン42に対して塗料を吐出(排出)する単一の塗料排出ポート24bが設けられ、後記する吐出ピストン(可動体)26の往復動作によって一定量の塗料を連続して供給する定量吐出ポンプ(塗料定量供給手段)28と、連結部30を介して前記定量吐出ポンプ28と同軸状に連結され前記吐出ピストン26を駆動させる駆動シリンダ32とを備える。
さらに、前記静電塗装システム10は、前記駆動シリンダ32の図示しないピストン及びピストンロッドの変位(ストローク)を所望の速度に制御する電空ポジショナ36と、前記電空ポジショナ36に対して制御信号を導出するコントローラ38と、図示しないキーボード等からなり前記コントローラ38に所望の制御信号を入力・設定する入力部40と、前記定量吐出ポンプ28から供給された塗料を図示しない自動車ボデイ(被塗装物)に向かって吐出する塗装ガン42とを有する。
定量吐出ポンプ28は、図3に示されるように、前記塗料供給部20から塗料が供給されると共に、前記供給された塗料を塗装ガン42に対して吐出する塗料吐出部48と、吐出ピストン26に連結されたポンプロッド50を洗浄するロッド洗浄部52とから基本的に構成される。
前記定量吐出ポンプ28を構成する前記塗料吐出部48は、図3に示されるように、例えば、SUS等の金属製材料によって円筒状に形成されたシリンダボデイ56と、前記シリンダボデイ56の内部空間に沿って摺動自在に変位する吐出ピストン26と、前記吐出ピストン26に一端部が連結されて他端部がロッド洗浄部52を貫通して前記シリンダボデイ56の外部まで延在する長尺なポンプロッド50とを有するシリンダ機構によって構成される。なお、前記吐出ピストン26の外周面には、前記シリンダボデイ56の内壁に摺接してシール機能を発揮する図示しないピストンパッキンが環状溝を介して装着される。
前記シリンダボデイ56の内部には、往復動作する前記吐出ピストン26によって、図面に向かって左方の第1シリンダ室58aと、図面に向かって右方の第2シリンダ室58bとに分割された2つの空間部が形成される。この場合、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの容積比は、略同等であってもよいが、好ましくは、第2シリンダ室58bの容積C2が、第1シリンダ室58aの容積C1と比較して小さく設定されるとよい(C1>C2)。この第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの容積比の設定は、図示しないストッパによって行われる。
前記シリンダボデイ56には、前記第1シリンダ室58aに連通する単一の塗料供給ポート24a及び単一の塗料排出ポート24bが設けられ、前記塗料排出ポート24bには、ボールが着座部に着座することにより、塗装ガン42への塗料の吐出を遮断する第1チェック弁60aが配設される。なお、参考実施形態では、塗料供給ポート24aが単一に設けられているが、これに限定されるものではなく、複数の塗料供給ポート24aが設けられるようにしてもよい。
また、前記シリンダボデイ56には、吐出ピストン26の中央部から偏位した部位に固定されて前記ポンプロッド50と略平行に延在すると共に、第2シリンダ室58bと塗料排出ポート24bとを連通させる連通路66を有する中空の管路体(連通手段)68が設けられる。この管路体68は、吐出ピストン26と一体的に変位するように設けられ、前記管路体68の一端部は、シリンダボデイ56に形成された段付孔部64に沿って挿通自在に設けられる。また、管路体68の一端部開口には、図4に示されるように、テーパ状凹部68aが形成される。なお、管路体68の一端部の外周面には、段付孔部64の内壁に摺接してシール機能を発揮するOリング71が装着される。
さらに、前記シリンダボデイ56には、吐出ピストン26の前進ストローク及び後進ストロークにおける塗料吐出量(吐出圧力)のバランスを調整する吐出量調整機構(吐出圧力調整機構)62が設けられる。この吐出量調整機構62は、シリンダボデイ56に固定され前記管路体68の連通路66に沿って延在する長尺なニードル部材70を有し、前記ニードル部材70の先端部には、図4に示されるように、管路体68の一端部開口に形成されたテーパ状凹部68aに臨むテーパ部72が設けられる。
後記するように、第2シリンダ室58b内に供給された塗料は、前記管路体68の内壁と前記ニードル部材70の外壁との間の間隙74を通じて連通路66に沿って流通し、塗料排出ポート24bから塗装ガン42へ導出される。
この場合、ニードル部材70が挿通された状態で管路体68が吐出ピストン26と一体的に横方向に沿って変位し前記吐出ピストン26が前進ストロークから後進ストロークに切り換わる際、前記ニードル部材70の先端部のテーパ部72と管路体68のテーパ状凹部68aとの離間距離が最小となって、管路体68の一端部開口から排出される塗料吐出量が絞られる。従って、前記吐出ピストン26が前進ストロークから後進ストロークに切り換わる際に発生する吐出ピストン26の急な飛び出し(流量変化)を防止して、前進及び後進ストローク時における塗料吐出量(吐出バランス)が好適に調整される。
換言すると、吐出量調整機構62を設けることにより、ストロークの切換時に発生する流量変化を回避して塗料の吐出圧力を安定化させることができると共に、吐出量調整機構62を簡素な構造によって構成することができる。
なお、前記ニードル部材70のテーパ部72と管路体68のテーパ状凹部68aとの離間距離は、前記ニードル部材70の他端部に係着されたロックナット75のねじ込み量によって調整可能に設けられる。
吐出ピストン26の中央部(中心部)に固定されるポンプロッド50は、内部に貫通孔76が形成された中空体によって構成される。第1シリンダ室58aに臨む前記ポンプロッド50の一端部には、前記第1シリンダ室58aと前記貫通孔76との連通状態と非連通状態とを切り換えるボールを有する第2チェック弁(切換手段)60bが設けられる。
また、シリンダボデイ56及びロッド洗浄部52を軸方向に沿って貫通し外部に露呈するポンプロッド50の他端部には、第3チェック弁60cが設けられる。さらに、一端部側に近接するポンプロッド50の中間部位には、第2シリンダ室58bに連通する連通孔78が設けられる。
この場合、一端部側の第2チェック弁60bのボールが着座部から離間することにより、第1シリンダ室58a内の塗料が前記ポンプロッド50の一端部開口から貫通孔76内に導入され、前記貫通孔76内に導入された塗料は、前記連通孔78を通じて第2シリンダ室58b内に供給される。一方、前記第2チェック弁60bのボールが着座部に着座することにより、ポンプロッド50の一端部開口が閉塞されて、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの連通状態が遮断される。
また、他端部側の第3チェック弁60cのボールが着座部から離間することにより、後記する洗浄液供給源80から供給された洗浄液がポンプロッド50の貫通孔76内に導入され、前記貫通孔76内に導入された洗浄液は、連通孔78を通じて第2シリンダ室58b内に供給される。その際、一端部側の第2チェック弁60bのボールは、着座部に着座してポンプロッド50の一端部開口は、閉塞された状態にある。
なお、前記第1〜第3チェック弁60a〜60cでは、ボールのみを設けているが、図示しないコイルスプリングや板ばね等の弾性部材によって前記ボールを係着し、ばね力によって前記ボールを着座部に押圧するようにしてもよい。
前記ロッド洗浄部52は、図3に示されるように、ポンプロッド50を支持する支持孔を有し、内部にロッド洗浄室81が形成されたケーシング82を有する。前記ケーシング82には、前記ロッド洗浄室81に対して窒素ガスを充填するN2ガス供給源84に連通するガスポート86が設けられる。
定量吐出ポンプ28の他端部から所定長だけ突出して外部に露呈するポンプロッド50の自由端には、連結部30(図1参照)が設けられる。この連結部30は、例えば、カップリング部材によって構成され、定量吐出ポンプ28のポンプロッド50と駆動シリンダ32のピストンロッドとがそれぞれ同軸に連結される。
図1及び図2に戻って、駆動シリンダ32は、金属製シリンダチューブに形成された圧力室内に収装された図示しないピストンと、前記ピストンに連結された自由端が外部に露呈するピストンロッドとを有する周知のエアシリンダから構成される。この場合、図示しないエア供給源から供給された圧力エアが圧力室内に供給されてピストンを押圧することにより前記ピストンが一方の変位終端から他方の変位終端まで変位し、ピストンロッドが前記ピストンと一体的に変位して進退動作(往復動作)するように設けられる。
従って、駆動シリンダ32が駆動されてピストンロッドが進退動作することにより、前記ピストンロッドの直線運動が定量吐出ポンプ28のポンプロッド50に伝達され、シリンダボデイ56の軸線方向に沿って吐出ピストン26が直線状に往復動作するように設けられている。
この場合、定量吐出ポンプ28の吐出ピストン26が1ストローク(一方の変位終端位置から他方の変位終端位置までの変位)変位することによって、吐出ピストン26による塗料の押し出し作用(排出作用)と塗料の吸入充填作用(吸引充填作用)とが同時に遂行される。
従って、駆動シリンダ32の駆動作用下に定量吐出ポンプ28の吐出ピストン26が複数回往復動作して前記ストロークが連続することにより、充填された塗料の押し出し作用及び塗料の吸入充填作用が連続し塗装ガン42に対して塗料を継続的に供給することができる。
前記駆動シリンダ32のピストンの変位速度は、例えば、電気信号を空気圧信号に変換する電空変換機構を内部に有する公知の電空ポジショナ36によって制御される。この電空ポジショナ36では、予め入力(設定)される電気信号(入力信号)に比例した圧力エアを出力側から得ることができ、前記圧力エアを駆動シリンダ32の圧力室に供給することにより、ピストンの変位速度を所望の速度に制御することができる。
なお、前記電空変換機構は、圧電素子等からなるフラッパによってノズル背圧を調圧する図示しないノズルフラッパ機構や、複数のダイヤフラムによってノズル背圧を調圧する図示しないダイヤフラム機構等が用いられるとよい。
被塗装物である自動車ボデイが搬送される図示しない生産ラインに近接して塗装用のロボット(図示せず)が配設され、前記ロボットのアーム88(図1参照)には、例えば、塗装ガン42、定量吐出ポンプ28、駆動シリンダ32及び電空ポジショナ36等が図示しない固定手段を介して搭載され、アーム88と一体的に変位するように設けられる。
塗料に対する高電圧印加方法としては、外部印加方式(塗装ガン42で噴霧状態にした塗料に対して高電圧を印加する方式)と、内部印加方式(塗装ガン42内で流動状態の塗料に対して高電圧を印加する方式)とが知られており、参考実施形態では、いずれの方式も可能であるが、好適には塗装効率が高い水溶性塗料に対する内部印加方式を用いるとよい。
なお、前記塗装用のロボットは、例えば、コントローラ38によってその動作がプログラミング制御される、産業用の多関節型のロボットからなり、旋回部を構成するアーム88の先端部(手首部)に塗装ガン42が装着されたものを用いるとよい。
参考実施形態に係る静電塗装システム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
図示しないエア供給源を付勢し、電空ポジショナ36を経由して駆動シリンダ32に駆動用エアを供給すると共に、コントローラ38から電空ポジショナ36に制御信号(入力信号)を導入して駆動シリンダ32のピストンの変位速度を所定速度に制御することにより、定量吐出ポンプ28が駆動される。
先ず、定量吐出ポンプ28の吐出ピストン26を1ストロークだけ変位させ、前記吐出ピストン26の後進ストロークによって、塗料供給ポート24aから供給された塗料をシリンダボデイ56の第1シリンダ室58a内に予め充填しておく。なお、シリンダボデイ56の第1シリンダ室58a内には、塗料供給ポート24aを介して塗料供給部20から、常時、一定圧力で塗料が継続的に供給されているものとする。
続いて、吐出ピストン26が後進ストロークから前進ストロークに切換わると、図5(a)に示されるように、シリンダボデイ56の第1シリンダ室58a内に充填された塗料が加圧され、前記加圧された塗料によってポンプロッド50の一端部側に設けられた第2チェック弁60bのボールが押圧され、前記ボールが着座部から離間することにより前記第2チェック弁60bが弁開状態となる。
従って、第1シリンダ室58a内に充填された塗料は、第2チェック弁60bのボールと着座部との間を通過してポンプロッド50の貫通孔76に沿って流通し、ポンプロッド50の中間部位に設けられた連通孔78から第2シリンダ室58b内に導入される。なお、ポンプロッド50の他端部に設けられた第3チェック弁60cは、貫通孔76に沿って流通する塗料によってボールが着座部に着座して弁閉状態となっている。
さらに、第2シリンダ室58b内に導入された塗料は、図5(b)に示されるように、管路体68の連通路66とニードル部材70との間隙74に沿って前記管路体68の他端部から一端部(吐出ピストン26の前進ストローク方向)に向かって流通し、シリンダボデイ56の塗料排出ポート24bを介して塗装ガン42に吐出される。
すなわち、貫通孔76を有するポンプロッド50は、吐出ピストン26の中心部に軸着されていると共に、第2シリンダ室58bの容積C2が第1シリンダ室58aの容積C1よりも小さく設定されている(図5(a)において、二点鎖線で示される吐出ピストン26の位置参照)。従って、貫通孔76及び連通孔78を通じて第1シリンダ室58aから第2シリンダ室58bに流出した塗料は、第2シリンダ室58b内に収容しきれず、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの容積差に対応する余剰な溢れ量が発生する。この結果、前記余剰な溢れ量は、第2シリンダ室58bに臨む管路体68の連通路66に沿って流通し、塗料排出ポート24bから塗装ガン42に向かって吐出される。このようにして、吐出ピストン26が前進ストロークに沿って変位し、ストロークエンドに到達する(図5(b)参照)。
次に、ポンプロッド50が前進ストロークのストロークエンドに到達すると、折り返し動作に切り換わり、ポンプロッド50は、後進ストロークとなる。図6(a)に示されるように、前記ポンプロッド50が後進ストロークに沿って変位することにより、第2シリンダ室58b内に充填されている塗料が加圧されて第1シリンダ室58aよりも第2シリンダ室58b内の塗料の圧力が上昇し、ポンプロッド50の一端部に設けられた第2チェック弁60bのボールが前記とは反対方向に押圧されて着座部に着座して前記第2チェック弁60bが弁閉状態となる。
前記第2チェック弁60bが弁閉状態となることにより、第2シリンダ室58b内の加圧された塗料は、前進ストロークと同様に管路体68の連通路66に沿って流通し、塗料が塗料排出ポート24bから塗装ガン42に向かって吐出される。このようにして、吐出ピストン26が後進ストロークに沿って変位し、ストロークエンドに到達する(図6(b)参照)。
以上のように、参考実施形態では、吐出ピストン26が前進ストローク及び後進ストロークを連続して繰り返すことにより、塗料の吸入作用及び排出作用が同時になされ、塗装ガン42に対して一定量の塗料を安定して且つ連続して供給することができる。
参考実施形態では、塗装ガン42に対して塗料が吐出される塗料排出ポート24bを単一とした定量吐出ポンプ28を設けることにより、配管通路が簡素化されると共に、ポンプ構造を簡素化することができる。
すなわち、定量吐出ポンプ28としてシリンダ機構を用いた場合、従来技術では、ピストンによって第1シリンダ室と第2シリンダ室とに分割され、一方の出入ポートから第1シリンダ室に対して塗料が吸入されると同時に、他方の出入ポートから第2シリンダ室に充填されていた塗料が塗装ガンに向かって吐出されるシリンダ構造が通常である。この場合、従来技術では、シリンダボデイに一方及び他方の出入ポートからなる2つの塗料排出ポートを設けることが必須となり、チューブ等による配管通路の接続作業が煩雑になると共に、一方の出入ポートと他方の出入ポートとを切り換える切換弁等が必要となり、部品点数が多くなってシステム構造が複雑化するという問題がある。
これに対して、参考実施形態では、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの連通状態と非連通状態を切り換える第2チェック弁60bをポンプロッド50に設け、さらに、第2シリンダ室58bと単一の塗料排出ポート24bとを連通させる管路体68を設けることにより、シリンダボデイ56に対して単一の塗料排出ポート24bを設けることができる。
次に、各種ポンプを用いた塗料の吐出特性と参考実施形態に係る定量吐出ポンプ28を用いた塗料の吐出特性との比較を図7に示す。
図7(a)に示されるように、従来技術に係るギヤポンプを用いた第1比較例では、吐出特性曲線を略均一な波形とすることができるが、塗料の吐出量の設定値近傍部位で小さな脈動が発生する。
図7(b)に示されるように、従来技術に係るダイヤフラムを用いた第2比較例では、吐出特性曲線が吐出量の設定値を超過した後、大きく減少しさらに設定値を超過するという大きな脈動が発生する。
図7(c)に示されるように、従来技術に係るプランジャポンプを用いた第3比較例では、時間の経過に沿って間欠的に塗料の吐出が停止される間欠的な吐出特性曲線となり、脈動が発生する。
図7(d)に示されるように、参考実施形態に係る定量吐出ポンプでは、塗料の吐出特性曲線が設定値近傍で安定した均一な波形となり、安定した吐出状態を連続して保持することができる。
次に、複数の定量吐出ポンプ28を用いたポンプ搭載方式について説明する。
図8(a)、(b)に示されるように、図示しない各塗料供給部20に接続された複数(図8中では2個)のカラーチェンジバルブ(切換弁)90a、90bを用い、前記カラーチェンジバルブ90a(90b)を切り換えて所望の色の塗料をロボットのアーム88に搭載された定量吐出ポンプ28a(28b)にそれぞれ供給して静電塗装をすることができる。この場合、省スペース化を図ることができる利点がある。
また、図9(a)、(b)に示されるように、複数の定量吐出ポンプ28a〜28jを架台92上に並設して配置し、各定量吐出ポンプに接続される複数のカラーチェンジバルブ(切換弁)が並設されたバルブユニット94をロボットのアーム88上に搭載するようにしてもよい。
ここで、電空ポジショナ36の一動作例を説明すると、エアシリンダからなる駆動シリンダ32のストローク長(変位量)を塗料の吐出容量に対応させて決定し、前記ストローク長を各ポイントによって分割し(例えば、1〜60ポイント)、前記分割された各ポイントの電圧を設定する。この電圧信号を送給することで発生する電位差(0〜24V)により駆動シリンダ32に出力されるエア圧力が制御され、定量吐出ポンプ28の吐出ピストン26の変位速度を所望の速度に制御することが可能となる。
このようにして塗料吐出部48から供給された塗料は、塗装ガン42に送給され、さらに、図示しない高電圧印加手段による内部高電圧方式で高電圧に印加された後、前記塗装ガン42から自動車ボデイに向かって単位時間当たり一定量の塗料が安定的且つ連続的に吐出されて静電塗装が遂行される。
静電塗装の開始前及び静電塗装の遂行中において、N2ガス供給源84を駆動してガスポート86からロッド洗浄室81内に窒素ガスを供給し、前記ロッド洗浄室81内を窒素ガスで加圧して封入しておくことにより、外部に対する塗料の漏洩を確実に阻止することができる(図2、図5及び図6参照)。例えば、導電性塗料として水溶性塗料を使用した場合、外部に対する塗料の漏洩防止は、リーク電流の発生を阻止するために特に重要である。この場合、前記ロッド洗浄室81内に封入される窒素ガスの圧力は、塗料の供給圧力よりも高く設定されることにより、シール機能を円滑に発揮することができる。
次に、例えば、塗料の色切り換え時又はメンテナンス等において、塗料が流通する第2シリンダ室58bを洗浄液によって洗浄する洗浄作業について説明する。
洗浄液供給源80を駆動し、前記洗浄液供給源80から供給された洗浄液をポンプロッド50の貫通孔76を通じて第2シリンダ室58b内に送給する。その際、ポンプロッド50の他端部に設けられた第3チェック弁60cは、洗浄液による押圧作用によってボールが着座部から離間して弁開状態となる。従って、ポンプロッド50の他端部側から導入された洗浄液は、ポンプロッド50の貫通孔76及び連通孔78をそれぞれ経由して第2シリンダ室58bに供給され、前記第2シリンダ室58b内が好適に洗浄される。なお、使用済みの洗浄液は、塗料排出ポート24bを通じて塗装ガン42から外部に排水される。
参考実施形態では、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとを連通させるポンプロッド50の貫通孔76を洗浄液が流通する洗浄通路として利用すると共に、吐出ピストン26と一体的に変位し前記吐出ピストン26の中心部に連結されたポンプロッド50の連通孔78から洗浄液を吐出させることにより、第2シリンダ室58b内を円滑に且つ効率的に洗浄することができる。なお、洗浄液が吐出されるポンプロッド50の連通孔78は、例えば、周方向に沿って複数個設けられるとよい。
また、塗料供給通路であるポンプロッド50の貫通孔76に沿って洗浄液を供給することができ、前記ポンプロッド50を有効利用することができると共に、第2シリンダ室58bの中心部から半径外方向に向かって(内側から外側に向かって)洗浄液が吐出されることにより、第2シリンダ室58bを確実に洗浄することができる。
さらに、シリンダボデイ56に対して、洗浄液を導入するために洗浄ポートを設けることが不要になると共に、前記洗浄ポートに対して洗浄液を供給するためのチューブ等の配管作業が不要となる。
参考実施形態では、1ストローク中に塗料の押し出し作用と塗料の吸引充填作用とを同時に行う吐出ピストン26を直線状に往復動作させる定量吐出ポンプ28を備えることにより、塗装ガン42に対して塗料を連続して交互に吐出供給することができる。この結果、参考実施形態では、流通路を流通する塗料の流れが円滑となり、塗装ガン42に対して継続的に且つ安定的に塗料を供給することができる。
さらに、参考実施形態では、定量吐出ポンプ28のロッド洗浄室81内を窒素ガスで加圧し封入することにより、ポンプロッド50の一部が外部に露呈する場合であっても外部に対する塗料の漏洩を確実に阻止することができる。例えば、導電性塗料として水溶性塗料を使用した場合、外部に対する水溶性塗料の漏洩防止は、リーク電流の発生を阻止するために特に重要であり、汎用性を増大させることができる。
さらにまた、参考実施形態では、塗料の連続吐出塗布が可能となるため、従来のようなポンプの載せ替えが不要となり、外部印加方式を採用することができる。この外部印加方式は、経路を絶縁することが不要となり、安全性を容易に確保することができる。塗装機器の大型化を抑制して設置スペースを削減することができる。
なお、参考実施形態では、単一の塗料排出ポート24bをシリンダボデイ56の軸方向(吐出ピストン26のストローク方向)に沿った一端面の下部側に設けているが、これに限定されるものではなく、吐出ピストン26のストローク方向に沿ったシリンダボデイ56の一端面のいずれの部位であってもよく、また、前記とは反対側で、吐出ピストン26のストローク方向に沿ったシリンダボデイ56の他端面に設けてもよい。
次に、本発明の実施形態について説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る定量吐出ポンプの概略構造縦断面図、図11は、図10の定量吐出ポンプを構成するベローズが縮径して第1シリンダ室と第2シリンダ室が連通した状態を示す概略構造縦断面図である。
図10に示されるように、本実施形態に係る定量吐出ポンプ29では、シリンダボデイ56内のシリンダ室を第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとに分割する吐出ピストン26aとして、シリンダボデイ56(ポンプロッド50)の軸線と直交する径方向に向かって伸縮可能なベローズ102を有するベローバルブ(径方向伸縮部材)100が設けられている。従って、本実施形態に係る定量吐出ポンプ29では、ポンプロッド50の一端部に設けられた第2チェック弁60bが不要となる点で前記参考実施形態と相違している。
この定量吐出ポンプ29は、ポンプロッド50の軸方向に沿った一端部にベローバルブ100が設けられ、このベローバルブ100は、所定の耐溶剤性を有し、例えば、シリコーンゴム等のゴム製材料や金属製材料によって形成されたベローズ102を備える。前記ベローズ102は、外径側の山部と内径側の谷部とが交互に連続して伸縮自在に形成された蛇腹部102aと、前記蛇腹部102aの一方に設けられバンド104によってポンプロッド50の外周面に緊締される環状の緊締部102bと、前記蛇腹部102aの他方に設けられて蛇腹部102a内の空間部106を閉塞する閉塞部102cとから構成される。
前記ポンプロッド50の軸方向に沿った一端部は、封止された閉塞端部からなり、前記閉塞端部の近傍部位には、ベローズ102内の空間部106とポンプロッド50内の貫通孔76とを連通させる連通孔78が設けられる。また、ポンプロッド50の軸方向に沿った他端部側には、排気ポート108aを介してベローズ102の空間部106内のエアを急速に排気する急速排気弁(クイックエキゾーストバルブ)108が設けられと共に、配管チューブ110を介して切換弁112及びエア供給源114がそれぞれ接続される。切換弁112は、図2に示すコントローラ38からの切換信号によってオフ状態とオン状態とが切り換えられる(図11参照)。急速排気弁108を設けることにより、後記するベローズ102の縮径状態と拡径状態とを迅速に且つ容易に切り換えることができる。前記急速排気弁108としては、例えば、ダイヤフラムタイプ又はプランジャ弁タイプ等が用いられるとよい。さらに、シリンダボデイ56及びケーシング82には、ポンプロッド50の外周面に摺接してシールするOリング116a、116bが設けられる。
シリンダボデイ56の一端部側壁には、第1シリンダ室58aに連通する塗料供給ポート24aが設けられ、前記塗料供給ポート24aから供給された塗料は、一端部側壁に形成された連通路118を介して第1シリンダ室58a内に導入される。なお、シリンダボデイ56の一端部側壁の連通路118には、第1シリンダ室58a内に導入された塗料の逆流を防止する図示しない逆流防止弁が設けられる。また、ケーシング82には、塗装ガン42に連通する単一の塗料排出ポート24bが設けられ、前記塗料排出ポート24bは、室119及び連通路120を介して第2シリンダ室58bと連通するように設けられる。
塗料排出ポート24bと塗装ガン42との間には、ベローバルブ100のベローズ102の疲労度(疲労状態)を検知する光センサ122が設けられる。この光センサ122は、例えば、光ファイバセンサによって構成され、加圧されたベローズ102の伸縮状態を反射光の光量変化として検知されるとよい。具体的には、塗料排出ポート24bから排出される塗料の流通圧力が上昇することによって反射光の光量が減少し、前記流通圧力が降下することにより反射光の光量が増大することによって、ベローズ102の疲労度を検知することができる。
ベローバルブ100を構成するベローズ102は、空間部106内にエア(圧力流体)が供給されていないとき、図10に示されるように拡径状態にあり、ベローズ102の蛇腹部102aがシリンダボデイ56の内壁に摺接(摺動)するように設けられる。換言すると、空間部106内がエアで加圧されていない状態では、ベローズ102を構成する蛇腹部102aの隣接する山部同士及び谷部同士が弾性力によって相互に接近して、蛇腹部102aが密に屈曲した状態に折り畳まれるため、ベローズ102の蛇腹部102a(外径部)が径方向に伸張(拡径)してシリンダボデイ56の内壁に当接した状態となる。この場合、シリンダボデイ56内のシリンダ室がベローバルブ100(ベローズ102)によって気密に分割され、前記分割された第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとが非連通状態となる。
一方、切換弁112の弁位置をOFF状態からON状態に切り換えることによってエア供給源114から供給されたエア(圧縮エア)は、ポンプロッド50の貫通孔76及び連通孔78を介してベローズ102の空間部106内に導入され、ベローズ102の閉塞部102cをポンプロッド50の軸方向に沿って押圧する(図11の矢印参照)。
従って、図11に示されるように、ベローズ102の蛇腹部102aがシリンダボデイ56の内壁から離間した縮径状態となり、ベローズ102の蛇腹部102aとシリンダボデイ56の内壁との間で周方向に沿った間隙124が設けられる。この結果、シリンダボデイ56内の第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとが前記間隙124を通じて連通状態となる。このように、ベローバルブ100を構成するベローズ102の径方向への伸張動作(拡径動作)又は収縮動作(縮径動作)によって、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの非連通状態と連通状態とを切り換えることができる。
本発明の実施形態に係る定量吐出ポンプ29は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
図12(a)、(b)は、本実施形態に係る定量吐出ポンプのベローバルブ(吐出ピストン)が前進ストロークに沿って変位する状態を示す動作説明図、図13(a)、(b)は、本実施形態に係る定量吐出ポンプのベローバルブ(吐出ピストン)が後進ストロークに沿って変位する状態を示す動作説明図である。
先ず、ベローバルブ100及びポンプロッド50が一体的に第1シリンダ室58a側(前進ストローク方向)に向かって変位する場合について説明する。なお、第1シリンダ室58a、第2シリンダ室58b及び塗料排出ポート24bに連通する室119内には、予め塗料が充填されているものとする。
吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100が第1シリンダ室58a側に向って変位(前進ストローク)を開始すると同時に、切換弁112の切換作用下にエア供給源114から供給されたエアがポンプロッド50の貫通孔76及び連通孔78を介して空間部106内に導入される。前記空間部106内に導入されたエアによって閉塞部102cがポンプロッド50の軸方向に沿って押圧され(図11参照)、蛇腹部102aが径方向に収縮(縮径)しシリンダボデイ56の内壁との間で形成された間隙124を通じて第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとが連通状態となる。なお、第1シリンダ室58a内に充填されている塗料は、図示しない逆流防止弁によって塗料供給ポート24aからの漏出(逆流)が阻止されている。
この場合、予め、第1シリンダ室58a内に充填されて第1シリンダ室58aを満たしていた塗料は、ベローバルブ100の前進ストロークによって加圧され、図12(a)に示されるように、前記間隙124を通過して第1シリンダ室58aから第2シリンダ室58bに向って流動する。従って、ベローバルブ100(吐出ピストン26a)の前進ストローク量に対応する容量からなる塗料が、間隙124を通過して第1シリンダ室58aから第2シリンダ室58bへ供給されると共に、前記前進ストローク量に対応する容量からなる塗料が塗料排出ポート24bから塗装ガン42へ向って吐出される。
吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100の前進ストロークは、図12(b)に示されるように、ベローバルブ100がシリンダボデイ56の一端部側壁に到達することによって変位終端位置となる。なお、前進ストロークの変位終端位置は、例えば、図示しないストッパを用いて、ベローバルブ100がシリンダボデイ56の一端部側壁に到達する手前の位置で停止するようにしてもよい。
次に、ベローバルブ100の変位を前進ストロークから後進ストロークに切り換えて、ベローバルブ100を第2シリンダ室58b側に向って変位させる場合について説明する。
ベローバルブ100の変位を前進ストロークから後進ストロークに切り換えると同時に、切換弁112の弁位置をオン状態からオフ状態へ切り換えてエア供給源114から空間部106内へのエアの供給を停止する。また、同時に、急速切換弁108を作動させて、空間部106に残存するエアを連通孔78及び貫通孔76を介して急速排気弁108の排気ポート108aから外部へ排出する。
従って、ベローバルブ100の蛇腹部102aは、エアによる内部加圧状態が解除されてその弾性力によって元の状態に復帰しようとする力が作用し、蛇腹部102aが連続して屈曲した原形状に復帰する(図10参照)。このため、ベローズ102の蛇腹部102aは、径方向に沿って伸張(拡径)した状態となり、蛇腹部102aの外径部がシリンダボデイ56の内壁に摺接した状態となる。この結果、ベローバルブ100が第2シリンダ室58b側に向って変位する後進ストロークでは、図13(a)に示されるように、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの非連通状態が保持されまま、蛇腹部102aの外径部がシリンダボデイ56の内壁に沿って摺動する。
ベローバルブ100が第2シリンダ室58b側に向って変位する後進ストロークの場合、吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100によって第2シリンダ室58b内に充填されていた塗料が加圧され、ベローバルブ100の後進ストローク量に対応する容量から第2シリンダ室58b内に臨むポンプロッド50の容積分を減算した容量が塗料排出ポート24bから吐出される。前進ストロークの変位終端位置から後進ストロークを開始する際、同時に、塗料供給ポート24aから塗料が供給されて第1シリンダ室58a内に導入される。なお、第1シリンダ室58aの容積と第2シリンダ室58bとの容積との比は、塗料排出ポート24bから吐出される塗料の吐出量に対応して、図示しないストッパで予め所定の容量比に設定されているものとする。
このようにして、シリンダボデイ56のシリンダ室に沿ってベローバルブ100を往復動作させ、ベローバルブ100の前進ストローク及び後進ストロークを連続して繰り返すことにより、塗料排出ポート24bから一定量の塗料を連続して吐出することができる。
本実施形態によれば、吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100を、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとの連通状態と非連通状態を切り換える切換手段としての機能をも併有させることにより、構造が簡素化され部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
また、本実施形態によれば、ポンプロッド50の一端部にベローバルブ100を設けることにより第2チェック弁60bが不要となり、ツマリやクラッキング(cracking)が発生するおそれを好適に回避し、塗料排出ポート24bから塗料を安定して吐出することができる。また、本実施形態では、塗料供給通路を切り換えて塗料供給ポート24aから洗浄液を供給することにより、第1シリンダ室58aを好適に洗浄することができる。なお、その他の作用効果は、前記参考実施形態と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
さらに、図10及び図11に示される本実施形態では、蛇腹部102aを有するベローバルブ100を径方向伸縮部材の一例として説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図14の変形例に示されるように、略円筒状で径方向に伸縮性を有する弾性部材130によって径方向伸縮部材を構成するようにしてもよい。この弾性部材130では、ベローバルブ100のベローズ102と比較して蛇腹部102aが設けられていないため、弾性部材130の外表面に付着した塗料を洗浄液で容易に洗浄することが可能となり、洗浄性を向上させることができる。このため、例えば、塗料の色交換作業やメタリックを含んだ塗料の供給に有効に活用することができる。
この場合、略円筒状に形成されたゴム製の弾性部材130の軸方向に沿った一端部及び他端部をバンド104a、104bでそれぞれポンプロッド50の外周面に緊締し、ポンプロッド50の連通孔78からエアを吐出させることにより、ポンプロッド50を中心として略ドーナツ状に膨らませることができる。この結果、弾性部材130の外周面がシリンダボデイ56の内壁に摺接し、第1シリンダ室58aと第2シリンダ室58bとを非連通状態とすることができる(図14(b)参照)。また、前記とは逆に、弾性部材130の内部エアを排気させて収縮させることにより、間隙124を介して第1シリンダ室58aと第2シリンダ室とを連通状態とすることができる(図14(a)参照)。