JP5506614B2 - 播種機 - Google Patents

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本発明は、播種機に関するものであり、殊に甜菜等の発芽期において風害から子葉等を保護することができる播種機に関する。
甜菜は、輪作作物の一つとして北海道を中心に栽培されている。輪作農家の安定した経営を図るためには、甜菜および他の作物の経営規模を拡大し、所得を確保する必要があるが、手間のかかる甜菜の移植栽培は規模拡大の障害となっており、省力的な直播栽培の普及が望まれている。また、甜菜の発芽期である春先には、殊に主産地である北海道において、強風が起こりやすく、現行の甜菜直播作業は風害対策を講じていないために、子葉が強風に振られて根に傷が付いたり、土砂の粒子によって子葉自体が損傷したりして、安定した収量が得られなかった。そのため、風害の影響を受けにくく、安定した出芽が得られる播種機が望まれている。
特許文献1では、カバークロップ(被覆作物)によって発芽期の甜菜を風害から保護するために、カバークロップと甜菜とを同時に播種できる播種機が開示されている。
特許第4096030号公報
ところが、カバークロップによる風害対策を行うには、カバークロップとして使用する作物の種苗費、及びカバークロップとして使用した作物を枯らす薬剤費がかかるうえ、カバークロップの播種及び薬剤散布のために作業時間が増加し、コストが上昇する。また、播種後の降水量が少ない場合、カバークロップの生育が遅れ、十分な耐風害効果が得られないという問題がある。
したがって、本発明の目的は、発芽期の風害から、低コストで且つ確実に子葉等を保護して安定した出芽が得られる播種機を提供することにある。
上記問題を解決するため、本発明は、トラクタに牽引されてほ場を走行しながら播種する播種機であって、前記ほ場に種子を条播する播種部の後方に、播種位置の側方の片側または両側に土壌を山形に押し固めて播種床を形成する播種床形成部が設けられていることを特徴とする播種機を提供する。
また、前記トラクタの進行方向後方の、前記播種部よりも前方に、施肥作溝器を備えた施肥部が設けられ、前記播種部に備えられて播種位置を鎮圧する鎮圧輪は、前記播種床形成部の内側裾部よりも内側に配置され、前記播種床形成部は、前記施肥作溝器によって掘り起こされた土壌を山形に押し固めることが好ましい。
前記播種床形成部は、互いに異なる軸を備えるとともに正面から見て底辺が山形を形成する一対のローラを有し、前記一対のローラは互いに独立懸架であることが好ましい。
本発明によれば、通常の播種作業によって、甜菜等の播種位置の側方の片側または両側に播種床が形成されるので、風自体や強風により飛散した土粒子等から発芽期の子葉や根を保護し、安定した出芽を得ることができる。
本発明にかかる播種機を示す側面図である。 図1の播種床形成部の正面図である。 播種床形成部の異なる実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。 図1の播種機による播種の手順を説明する断面図である。 播種の手順の異なる実施形態を説明する断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明の播種機の例を示す。播種機1は、トラクタTの進行方向後方に連結され、トラクタTの稼働により回転する駆動輪Wの回転を動力源として、トラクタTに牽引されながら稼働する。すなわち、例えば図示するように、駆動輪Wの回転が、駆動輪Wに連結されたリンク部材LからチェーンCを介して播種フレームFに伝えられる。播種フレームFは、地面方向に加圧する弾性体Sにより連結され、ほ場面の凹凸に対応しながら走行および稼働することができる。尚、本明細書において、前方または後方とは、トラクタTの進行方向Aにおける前方または後方を指す。
本発明の播種機1は、トラクタTの進行方向前方側から順に、施肥部2、播種部3、播種床形成部4を有し、これらは上下方向に移動可能にトラクタTに連結されている。播種機1は、トラクタTの左右方向に例えば4列に設けられ、同時に4条の施肥および播種作業が行える。
施肥部2は、ほ場に施肥するための施肥溝を掘る施肥作溝器11、その施肥溝に向けて肥料を送り出す肥料繰り出し機構を備えた肥料タンク12、施肥後に施肥溝上を覆土する施肥覆土器13で構成される。施肥作溝器11は、例えばそれぞれ一対のディスクが播種位置の両側方に例えば200mm程度の間隔で設けられ、播種後の作物の根に肥料が行き渡る深さの施肥溝を形成する。施肥覆土器13は、両側方の施肥作溝器11の後方に、それぞれの施肥作溝器11の左右両側に対向させて設けられる。尚、施肥部2は、モータ駆動としてもよい。
播種部3は、播種位置鎮圧輪14、播種作溝器15、種子繰り出し機構を備えた種子繰り出し部16、種子鎮圧輪17、播種覆土器18、覆土鎮圧輪19で構成される。
播種位置鎮圧輪14は、播種位置付近の地均しをするローラであり、甜菜の種子を播種する場合、例えば20cm程度の幅のローラが用いられる。播種位置鎮圧輪14の後方には、深さ1〜2cm程度のV字状の溝を形成する例えばシュー型作溝器等の周知の作溝器による播種作溝器15が設けられ、さらに、播種作溝器15で形成した播種溝内に種子を送り出す種子繰り出し機構を備えた種子繰り出し部16が設けられる。
甜菜は、コーティング種子の大きさが直径5mm程度と小さく、種子周辺の土壌から、発芽のための水分を吸収しにくい。そのため、播種した種子を鎮圧して確実に土壌に定着させて土壌から水分を吸収させることが必要であり、播種作溝器15および種子繰り出し部16の後方に種子鎮圧輪17が設けられる。種子鎮圧輪17は、例えば種子溝と同程度の幅を有し外周に溝が形成されたローラの外周にOリングがはめ込まれたものが用いられ、例えばゴム等からなるOリングによって、種子を傷付けずに押さえ付けて土壌に定着させる。
種子鎮圧輪17の後方に、播種位置を覆土する播種覆土器18が設けられ、さらにその後方に、覆土鎮圧輪19が設けられる。覆土鎮圧輪19は、前方の播種位置鎮圧輪14と同様のローラであり、両側方の施肥溝の間隔よりも狭い幅、例えば100mm程度の幅のローラが用いられる。播種位置鎮圧輪14、種子鎮圧輪17、覆土鎮圧輪19は、いずれも、トラクタTの進行方向に対して直交する回転軸を中心として、進行方向に向けて回転する。
本発明の播種機1には、上記の播種部3の後方に、播種床形成部4が設けられる。播種床形成部4は、例えば図2に示すように、播種位置の両側方にそれぞれ設けられた一対のローラ21を有している。本実施形態において、各ローラ21は、正面形状が等脚台形であり、外側の径が内側の径よりも大きい。また、各ローラ21の軸22は、ローラ21の台形状の正面形状の中心軸であり、一対のローラ21,21は左右対称の異なる軸22,22を有している。そして、一対のローラ21,21の底辺23,23が、図示するように正面から見て中央が高い山形を形成する。両側方の山形同士の間隔が、施肥覆土器13で形成された施肥後の覆土部分の間隔、例えば30cmになるように、各ローラ21が配置される。このローラ21が回転することにより、施肥位置の覆土部分の土壌が押さえ付けられて、山形の播種床が形成される。ローラ21の軸22は、図1に示すように連結部材24およびアーム25を介して、もう一方のローラ21とは独立して播種フレームFに連結され、播種部3と同様にトラクタTに牽引されながら、ローラ21が回転する。また、アーム25の先端側(ローラ21側)を地面に向けて押さえる加圧ばね26が設けられ、これにより、ローラ21が、適宜圧力で土壌を押さえ付ける。
図3は、播種床形成部4の異なる実施形態を示し、(a)が側面図、(b)が正面図である。この播種床形成部4は、播種位置の両側方にそれぞれ設けられた播種床成形板31を、平行リンク部材32を介して播種フレームFに連結して構成されたものである。播種床成形板31は、前面31aおよび背面31bの形状が、それぞれ底面の下方に山形の空間を形成する板材であり、図示するように、前面31aに形成される山形空間は、高さ、底面ともに、背面31bに形成される山形空間よりも大きい。すなわち、後ろ方向に向かって山形空間が狭くなる形状であり、平行リンク部材32により矢印B方向に移動可能である。また、図1の実施形態と同様に、播種床成形板3を土壌に押さえ付ける加圧ばね26が設けられている。これにより、播種床成形板31の裏面で施肥位置の覆土部分の土壌が押さえ付けられて、山形の播種床が形成される。
上記のような播種床形成部4を設けることにより、従来の播種作業と同様にトラクタTで播種機1を牽引するだけで、播種位置の両側方に播種床が形成される。この播種床が、風や風によって飛散する土砂が子葉に衝突するのを防ぎ、発芽期の芽や根の損傷を減少させる。なお、播種床形成部4は、播種位置の片側の側方みに設けられても構わない。
以上の構成を有する播種機1を用いた甜菜の播種手順を、図4にしたがって以下に説明する。
播種機1は、ほ場においてトラクタTに牽引されて走行し、施肥作溝器11によって播種位置の両側方に帯状に施肥溝41を形成する。両側の施肥溝41の間隔は例えば20cmであり、甜菜の根に肥料が行き渡る深さに形成される。図4(a)に示すように、施肥溝41内に、肥料タンク12の肥料繰り出し機構から肥料42を放出し、施肥覆土器13によって、施肥溝41の上に、作溝時に掘り起こして例えば側方に寄せておいた土壌43を被せて図4(b)に示すように覆土する。
その後、播種部3の播種位置鎮圧輪14により、播種位置の周囲の地均しを行う。この播種位置鎮圧輪14の幅は例えば15cmであり、図4(c)に示すように、両側の覆土部分44よりも幅が狭いため、覆土部分44の盛り上がりが崩れることなく残ったまま、鎮圧が行われる。
播種位置鎮圧輪14で均された播種位置に、播種作溝器15でV字状に播種溝45を形成し、種子繰り出し部16の種子繰り出し機構から甜菜の種子46を放出して図4(d)に示すように播種する。甜菜の場合、播種間隔が例えば18〜20cm程度になるように、種子溝45内に条播する。その後、図4(e)に示すように種子鎮圧輪17で種子46を土壌に定着させ、播種覆土器18で播種位置を覆土する。その後、図4(f)に示すように、覆土鎮圧輪19で、播種位置の覆土部分を鎮圧する。覆土鎮圧輪19の幅は例えば100mmであり、図示するように、覆土鎮圧輪19は、両側の覆土部分44を鎮圧しない。覆土部分44が片側の側方のみの場合にも、覆土鎮圧輪19は、覆土部分44よりも内側に配置され、覆土部分44を鎮圧しない幅とする。
次に、播種部3の後方に配置された播種床形成部4により、図4(g)に示すように、施肥位置の覆土部分44の土壌を押さえ付けて山形の播種床47を形成する。これにより、播種位置の両側方に、山形の播種床47が連続形成され、出芽時の風害から甜菜の芽を保護することができる。山形の播種床47を形成する土壌は、施肥溝41の覆土部分44をそのまま利用するため、新たに土壌をかき集める必要がなく、簡易に播種床47を形成することができる。播種床形成部4が播種位置の片方のみに設けられている場合には、播種位置の片方に播種床47が形成される。
図5は、播種手順の異なる実施形態を示し、施肥溝41と種子溝45が同じ位置に設けられる場合である。即ち、播種位置に、施肥作溝器11で施肥溝41を形成し、図5(a)に示すように、施肥溝41の両脇に肥料42を放出する。その後、図5(b)に示すように、施肥覆土器13によって、施肥作溝器11で掘り起こした土壌を、施肥溝41とその両側方にはみ出すようにして覆土する。
次に、図5(c)に示すように、播種位置鎮圧輪14によって、施肥溝41の上部を鎮圧する。このとき、両側方にはみ出した土壌を側方に寄せて、土壌の盛り上げ部分48が形成される。尚、盛り上げ部分48を形成する土壌は、他の場所から運搬された土でも構わない。
図5(d)に示すように、鎮圧された播種位置に、播種作溝器15で種子溝45を形成し、図5(e)に示すように、種子溝45に種子46を放出する。そして、図5(f)に示すように、種子鎮圧輪17で種子46を土壌に定着させ、図5(g)に示すように、播種覆土器18で種子溝45を覆土する。
その後、図5(h)に示すように、覆土鎮圧輪19で、播種位置の覆土部分を鎮圧する。覆土鎮圧輪19は、図示するように、盛り上げ部分48よりも内側に配置され、盛り上げ部分48を鎮圧しない。
次に、播種床形成部4により、図5(i)に示すように、盛り上げ部分48の土壌を押さえ付けて山形の播種床47を形成する。これにより、播種位置の側方に、山形の播種床47が形成される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。施肥部2および播種部3の構成は前述のものに限らず、例えば施肥覆土器13および播種位置鎮圧輪14を省略して、図5の実施形態において施肥溝41内に種子を放出し、播種覆土器18で覆土した後に播種床形成部4で播種床47を形成してもよい。
ほ場において、播種位置の両側方を想定して30cm間隔で高さ5cmの、防風壁としての播種床を形成し、その播種床間の中心と、播種床の無い平地において、高さ1cm、5cm、10cmの位置の風速を測定した。結果を表1に示す。なお、測定は2009年5月19日の12時25分から12時40分の間に行い、当日の最大瞬間風速は、帯広測候所の気象データによると19.1m/sであった。
Figure 0005506614
表1に示すように、ほ場内の高さ150cmにおける最大風速18.6m/s時の、平地での高さ1cmの位置の風速は9.9m/sであったが、播種床間の高さ1cmの位置では3.9m/sと大幅に減少した。また、高さ5cmの位置でも、平地で11.7m/s、播種床間で7.1m/sと大きく減少した。1989〜2009年の帯広測候所の気象データによると、当該地区の5月の最大瞬間風速が18m/s以上の日が月平均1.5日、最大瞬間風速の平均が19.8m/sであった。したがって、表1の結果により、甜菜の出芽期である5月の最大風速に近い状態でも、播種床を設けることにより、地面に近い高さ1cmおよび5cmの位置の風速が大幅に減少し、発芽期の芽および子葉の位置付近の風速を減少させて、風害を防止する効果があることがわかった。
また、播種床形成部を有する播種機と、播種床形成部を有しない従来の播種機によって甜菜の播種を行った。2009年5月2日に播種し、同年6月28日に生育調査を行った際の草丈および生葉数は表2に示す通りであり、播種床間に播種された甜菜の方が大幅に生長した。
Figure 0005506614
本発明は、出芽時に強風を受けやすい甜菜等の作物の播種床を形成する播種機に適用でき、風害を防止して出芽率向上に寄与する。
1 播種機
2 施肥部
3 播種部
4 播種床形成部
11 施肥作溝器
12 肥料タンク
13 施肥覆土器
14 播種位置鎮圧輪
15 播種作溝器
16 種子繰り出し部
17 種子鎮圧輪
18 播種覆土器
19 覆土鎮圧輪
21 ローラ
F 播種フレーム
T トラクタ

Claims (3)

  1. トラクタに牽引されてほ場を走行しながら播種する播種機であって、
    前記ほ場に種子を条播する播種部の後方に、播種位置の側方の片側または両側に土壌を山形に押し固めて播種床を形成する播種床形成部が設けられていることを特徴とする、播種機。
  2. 前記トラクタの進行方向後方の、前記播種部よりも前方に、施肥作溝器を備えた施肥部が設けられ、
    前記播種部に備えられて播種位置を鎮圧する鎮圧輪は、前記播種床形成部の内側裾部よりも内側に配置され、
    前記播種床形成部は、前記施肥作溝器によって掘り起こされた土壌を山形に押し固めることを特徴とする、請求項1に記載の播種機。
  3. 前記播種床形成部は、互いに異なる軸を備えるとともに正面から見て底辺が山形を形成する一対のローラを有し、前記一対のローラは互いに独立懸架であることを特徴とする、請求項2に記載の播種機。
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