以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<(1)第1実施形態>
<(1-1)画像表示装置の概略構成>
図1で示されるように、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置1は、制御部2、記憶部3、表示部4、電源回路5、および電圧検出部6を備える。
制御部2は、表示部4の動作の制御、および画像信号の処理等を行う。この制御部2は、例えば、CPUおよびRAM等を備え、記憶部3に記憶されるプログラム等をCPUで実行することで、各種機能を実現する。なお、制御部2の各種機能は、専用の電子回路等で実現されても良い。
記憶部3は、不揮発性のメモリ等によって構成され、制御部2における各種機能を実現するための各種データ等が記憶される。
表示部4は、略長方形の輪郭を有し、複数の画素回路41が、マトリックス状に配列されて構成される。各画素回路41には、例えば、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型の発光素子としての有機発光ダイオードOLEDが含まる。なお、複数の画素回路41には、赤色の光を発する画素回路、緑色の光を発する画素回路、および青色の光を発する画素回路が含まれる。また、表示部4には、複数の画像信号線LDATAと複数の走査信号線LSELとが相互に略直交するように設けられる。なお、画像信号線LDATAが、垂直方向に並ぶ画素回路41のライン(垂直ライン)毎に設けられるとともに、走査信号線LSELが、水平方向に並ぶ画素回路41のライン(水平ライン)毎に設けられる。
また、表示部4では、表示部4の一辺(長辺または短辺)に沿って配置されるXドライバにより、画像信号線LDATAを介して、出力画像信号SOUTが画素回路41に対して適宜供給される。また、表示部4の他の一辺(短辺または長辺)に沿って配置されるYドライバにより、走査信号線LSELに対して走査信号が付与される。この走査信号は、各画像信号線LDATAを介して各画素回路41に出力画像信号SOUTを供給するタイミングを制御する信号である。また、表示部4には、水平ライン毎に、電源線LVDD,LVSS、および補償制御信号線LTHが設けられる。
電源回路5は、電源(例えば、バッテリー等のDC電源)から供給される電力を、表示部4に含まれる各画素回路41に対して供給する。具体的には、電源線LVDDと電源線LVSSとの間に電圧が印加されることで、該電圧が各有機発光ダイオードOLEDの両端に供給され、該各有機発光ダイオードOLEDが発光する。電源線LVDDと電源線LVSSとの間に印加される電圧は、Yドライバによって調整される。なお、補償制御信号線LTHに付与される電位も、Yドライバによって調整される。また、電源回路5は、制御部2からの指示に応じて、各画素回路41に一定の電流を供給する回路(定電流駆動回路)としても機能する。
電圧検出部6は、各有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される電圧(駆動電圧)を検出する。有機発光ダイオードOLEDに流れる電流は、各画素回路41に設けられる抵抗R1の両端における電圧を検出することで求められる。例えば、有機発光ダイオードOLEDに基準となる電流(基準電流)が流れるように該有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される駆動電圧が制御部2によって制御され、基準電流が流れる際の駆動電圧VREALが検出される。該駆動電圧VREALを示す情報は、制御部2に対して送出される。なお、表示部4において有機発光ダイオードOLEDの劣化に応じた輝度ムラが発生しないように、制御部2が、電圧検出部6で検出される駆動電圧VREALに応じた補正係数CVを適宜設定し、該補正係数CVを入力画像信号に乗じる。この輝度ムラの抑制処理については更に後述する。
<(1-2)画素回路の構成>
図2で示されるように、画素回路41は、有機発光ダイオードOLED、第1トランジスタTDR、第2トランジスタTTH、第3トランジスタTSEL、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、および抵抗R1を備える。なお、図2では、有機発光ダイオードOLEDが発光する際に電流が流れる方向が矢印Ar1によって示されている。
有機発光ダイオードOLEDのアノード電極は、第1トランジスタTDRおよび抵抗R1を順次に介して、電源線LVDDに対して電気的に接続される。また、有機発光ダイオードOLEDのカソード電極は、電源線LVSSに対して電気的に接続される。具体的には、第1トランジスタTDRの一方電極が、抵抗R1を介して電源線LVDDに対して電気的に接続されるとともに、第1トランジスタTDRの他方電極が、有機発光ダイオードOLEDのアノード電極に対して電気的に接続される。なお、有機発光ダイオードOLEDが発光する際には、電源線LVDDに付与される電位が電源線LVSSに付与される電位よりも高くなるとともに、第1トランジスタTDRの一方電極がドレインとして働き、第1トランジスタTDRの他方電極がソースとして働く。
有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される駆動電圧は、図2のノードTAと電源線LVSSとの電位差が、サンプルホールド回路などによって構成される電圧検出部6によって検出されることで求められる。各画素回路41のノードTAを選択的に電圧検出部6に接続するためには、公知のスイッチ回路またはスキャナ回路を用いても良いし、電圧検出部6内に、複数のスイッチを備えたサンプルホールド回路を設ける構成としても良い。あるいは、ノードTAを選択する目的のトランジスタを各画素回路41に更に設ける構成としても良い。
第2トランジスタTTHは、第1トランジスタTDRのゲートと他方電極との間に設けられる。具体的には、第2トランジスタTTHの一方電極が第1トランジスタTDRのゲートに対して電気的に接続されるとともに、第2トランジスタTTHの他方電極が第1トランジスタTDRの他方電極に対して電気的に接続される。そして、第2トランジスタTTHのゲートが補償制御信号線LTHに対して電気的に接続される。
第1コンデンサC1の一方電極が、第3トランジスタTSELを介して画像信号線LDATAに対して電気的に接続され、第1コンデンサC1の他方電極が、第1トランジスタTDRのゲートに対して電気的に接続される。つまり、第1トランジスタTDRのゲートが、第1コンデンサC1の他方電極に対して電気的に接続されるとともに、第1コンデンサC1および第3トランジスタTSELを介して画像信号線LDATAに対して電気的に接続される。具体的には、第3トランジスタTSELの一方電極が、画像信号線LDATAに対して電気的に接続されるとともに、第3トランジスタTSELの他方電極が、第1コンデンサC1の一方電極に対して電気的に接続される。また、第3トランジスタTSELのゲートが、走査信号線LSELに対して電気的に接続される。
第2コンデンサC2は、第1コンデンサC1の一方電極と第1トランジスタTDRの他方電極との間に設けられる。具体的には、第2コンデンサC2の一方電極が、第1コンデンサC1の一方電極および第3トランジスタTSELの他方電極に対して電気的に接続されるとともに、第2コンデンサC2の他方電極が、第1トランジスタTDRおよび第2トランジスタTTHの各他方電極に対して電気的に接続される。
そして、第1トランジスタTDRは、他方電極の電位を基準とした該他方電極とゲートとの間の電圧(ゲート電圧)の設定に応じて、有機発光ダイオードOLEDを流れる電流を調整する。
有機発光ダイオードOLEDを流れる電流は、各画素回路41に設けられる抵抗R1の両端における電圧を検出することで求められるが、より具体的には、図2のノードTRと電源線LVDDとの電位差が、サンプルホールド回路などによって構成される電圧検出部6によって検出されることで求められる。各画素回路41のノードTRを選択的に電圧検出部6に接続するためには、公知のスイッチ回路またはスキャナ回路を用いても良いし、電圧検出部6内に、複数のスイッチを備えたサンプルホールド回路を設ける構成としても良い。あるいは、ノードTRを選択する目的のトランジスタを各画素回路41に更に設ける構成としても良い。
第2トランジスタTTHは、第1コンデンサC1を介して第1トランジスタTDRのゲートに対して出力画像信号の電位を印加する直前に、第1トランジスタTDRのゲート電圧をいわゆる閾値電圧に設定する。第3トランジスタTSELは、画像信号線LDATAからの電位の付与により、第1コンデンサC1の一方電極と第2コンデンサC2の一方電極との間に出力画像信号に応じた電位を設定する。つまり、有機発光ダイオードOLEDが発光する際には、第1トランジスタTDRのゲート電圧は、第1トランジスタTDRのゲートと第1コンデンサC1の他方電極との間に設定された閾値電圧に相当する電位と、第1コンデンサC1の一方電極と第2コンデンサC2の一方電極との間に設定された出力画像信号に応じた電位とが加算された電位に応じた電圧となる。
<(1-3)発光素子の劣化の態様>
一具体例として、赤色の光を発する有機発光ダイオードOLEDの劣化の態様について説明する。
ここで赤色の光を発する有機発光ダイオードOLEDは、アノード電極としての第1電極層、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソード電極としての第2電極層、および有機質保護層の8層が、この順番に積層されて構成される。具体的には、第1電極層は、ネオジムを含有するアルミニウム合金をスパッタ成膜した厚さ70nmの層である。正孔注入層は、厚さ7nmのトリフェニレン誘導体からなる蒸着層である。正孔輸送層は、厚さ45nmの芳香族アミン誘導体からなる蒸着層である。発光層は、赤色の蛍光を発する物質をドーパント材料としてホスト材料に含有させた厚さ22nmの共蒸着膜である。なお、発光層におけるドーパント材料の濃度は、1.1%とされている。電子輸送層は、厚さ55nmのトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)からなる蒸着層である。電子注入層は、厚さ0.5nmのフッ化リチウムからなる蒸着層である。第2電極層は、厚さ20nmのマグネシウムと銀からなる共蒸着層である。有機質保護層は、厚さ70nmの芳香族アミン誘導体からなる蒸着層である。なお、有機発光ダイオードOLEDのうちの発光する部分(発光部)を1辺が6mmの略正方形の形状とすることで、発光部の面積は0.36cm2とされる。
ここで、有機発光ダイオードOLEDの劣化の態様を観測する条件について説明する。有機発光ダイオードOLEDの発光輝度については、一般的な輝度計を用いて測定した。また、有機発光ダイオードOLEDに印加される電圧(駆動電圧)Vを検出した。更に、抵抗R1に流れる電流を検出することで、有機発光ダイオードOLEDにおける電流密度を検出した。
そして、有機発光ダイオードOLEDを定電流駆動回路に接続し、有機発光ダイオードOLEDにおける電流密度が30mA/cm2となるように、10.8mAの一定電流が流れるように設定した。有機発光ダイオードOLEDが発光し始めた際(駆動開始時)の発光輝度(初期発光輝度)L0は3882cd/m2であったが、発光開始から3132時間経過後には、発光輝度が初期発光輝度L0の約38%の値まで低下した。なお、測定時における有機発光ダイオードOLEDの周囲の温度については、自動測定の結果、測定期間中における平均温度が28.2℃、最低温度が21.0℃、最高温度が34.0℃であった。そして、最低温度と最高温度の間に位置する第1四分位数の温度が25.0℃、第3四分位数の温度が32.5℃であった。このため、測定期間における半数の温度の測定値が、第1四分位数と第3四分位数の範囲内に含まれるので、標準的な室内環境に近い条件で観測を行ったことになる。
このような測定条件における測定結果に基づいて、各時点における発光輝度Lを初期発光輝度L0で除した値(L/L0)を規格化輝度として算出した。その結果、発光開始から経過した時間(駆動時間)tと規格化輝度L/L0との関係は、図3で示されるようなものとなった。また、駆動時間tと駆動電圧Vとの関係は、図4で示されるようなものとなった。
また、上記測定中、約100時間経過する度に、駆動電圧と電流密度との関係、および駆動電圧と発光輝度との関係を測定した。図5に駆動電圧と電流密度との関係が示され、図6に駆動電圧と発光輝度との関係が示されている。なお、図5および図6では、駆動開始時の測定結果が黒塗りの菱形のプロット、駆動開始から600時間経過後の測定結果が黒塗りの三角のプロット、駆動開始から1000時間経過後の測定結果が白抜きの菱形のプロット、駆動開始から1665時間経過後の測定結果が黒塗りの正方形のプロット、駆動開始から2065時間経過後の測定結果が白抜きの三角のプロット、駆動開始から2665時間経過後の測定結果が白抜きの丸のプロット、駆動開始から3065時間経過後の測定結果が白抜きの正方形のプロットでそれぞれ示されている。
図5で示されるように、ある駆動電圧における電流密度は、駆動時間が長くなるにつれて、次第に低下した。そして、測定の後期である測定開始から1800時間以上経過した時間帯では、電流密度の低下量が著しく大きかった。また、図6で示されるように、ある駆動電圧における発光輝度は、駆動時間が長くなるにつれて、次第に低下した。そして、測定の後期である測定開始から1800時間以上経過した時間帯では、発光輝度の低下量が著しく大きかった。また、図5および図6で示される測定結果について、同一の駆動電圧における電流密度と発光輝度とを比較すると、電流密度の低下量よりも、発光輝度の低下量の方が相対的に大きいことが分かった。なお、図6で示されるように、例えば、2000cd/m2の発光輝度を実現するためには、駆動開始時点(駆動時間t=0h)では約5Vの駆動電圧が必要であり、駆動時間t=2665h(時間)の時点では約7Vの駆動電圧が必要であり、駆動時間t=3065hの時点では約9.5Vの駆動電圧が必要であることが分かった。
また、所定の駆動電圧における駆動時間と電流密度との関係は、図7で示されるようなものとなり、所定の駆動電圧における駆動時間と発光輝度との関係は、図8で示されるようなものとなった。なお、図7および図8では、駆動電圧が5.5Vである場合の測定結果が白抜きの丸のプロット、駆動電圧が6.5Vである場合の測定結果が白抜きの三角のプロット、および駆動電圧が7.5Vである場合の測定結果が白抜きの四角のプロットでそれぞれ示されている。図7で示されるように、一定の駆動電圧に対して、駆動時間が長くなるにつれて、電流密度が次第に低下した。そして、測定の後期である測定開始から1800時間以上経過した時間帯では、電流密度の低下量が著しく大きかった。また、図8で示されるように、一定の駆動電圧に対して、駆動時間が長くなるにつれて、発光輝度が次第に低下した。そして、測定の後期である測定開始から1800時間以上経過した時間帯では、発光輝度の低下量が著しく大きかった。なお、図8で示されるように、例えば、3000cd/m2の発光輝度を実現するためには、駆動時間t=750hの周辺の時点では約5.5Vの駆動電圧が必要であり、駆動時間t=2300hの周辺の時点では約6.5Vの駆動電圧が必要であり、駆動時間t=2700hの周辺の時点では約7.5Vの駆動電圧が必要であることが分かった。
<(1-4)輝度ムラの抑制処理に係る構成>
図9で示されるように、制御部2は、輝度ムラの抑制処理に係る機能的な構成として、予測発光輝度導出部21、基準値決定部22、補正値設定部23、信号補正部24、およびガンマ(γ)変換部25を有する。また、記憶部3は、輝度ムラの抑制処理に係るデータとして、第1関数データ31、第2関数データ32、および補正値テーブル33を格納する。
第1関数データ31は、図3で示されたような有機発光ダイオードOLEDに係る駆動時間tと規格化輝度L/L0との関係を近似的に示す関数のデータである。第2関数データ32は、図4で示されたような有機発光ダイオードOLEDに係る駆動時間tと駆動電圧Vとの関係を示すデータが記述されたものである。したがって、本実施形態では、第1関数データ31と第2関数データ32とが、有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される電圧(ここでは、駆動電圧V)と、該有機発光ダイオードOLEDの発光輝度に係る値(ここでは、規格化輝度L/L0)との関係を示すデータ(関係データ)となる。また、補正値テーブル33は、補正値設定部23で画素回路41毎に設定される補正値としての補正係数CVが記述されるものである。
導出部としての予測発光輝度導出部21は、基準電流が有機発光ダイオードOLEDに流れる際の駆動電圧VREAL、第1関数データ31、および第2関数データ32に基づいて、各有機発光ダイオードOLEDにおける予測発光輝度に係る値(ここでは、規格化輝度L/L0)を導出する。なお、ここでは、導出される各有機発光ダイオードOLEDの規格化輝度L/L0のうち、駆動電圧VREALが最小となる有機発光ダイオードOLEDの規格化輝度(規格化輝度の最大値)をLmaxとするとともに、駆動電圧VREALが最大となる有機発光ダイオードOLEDの規格化輝度(規格化輝度の最小値)をLminとする。
基準値決定部22は、予測発光輝度導出部21で導出される規格化輝度の最大値Lmaxおよび規格化輝度の最小値Lminのうちの少なくとも一方の値に基づいて、基準値THSを決定する。なお、この基準値THSの決定方法については、規格化輝度の最小値Lminの大小によって異なる。
補正値設定部23は、基準値THSに基づいて、予測発光輝度導出部21で導出される複数の規格化輝度L/L0における最大値Lmaxと最小値Lminとの差が縮まるように、各有機発光ダイオードOLEDに対して補正値としての補正係数CVを設定する。具体的には、補正値設定部23は、各有機発光ダイオードOLEDについて、予測発光輝度導出部21によって導出される規格化輝度L/L0を基準値THSに一致させる値に基づいて求まる補正係数CVを補正値として設定する。
ここで設定される補正係数CVは、対応する各有機発光ダイオードOLEDに関連付けられた形式で補正値テーブル33に記述される。なお、本実施形態では、基準値決定部22と補正値設定部23とが機能することで、各有機発光ダイオードOLEDに対して補正値としての補正係数CVを設定する設定部としてはたらく。また、補正係数CVについては、画像表示装置1の使用開始時点では初期値としての1に設定されており、駆動時間tの経過に応じて、補正値設定部23によって補正係数CVが初期値から変更される。
補正部としての信号補正部24は、補正値テーブル33において各有機発光ダイオードOLEDに関連付けられている補正係数CVに基づいて、各有機発光ダイオードOLEDに対応する画像信号を補正する。具体的には、各有機発光ダイオードOLEDに対応する画像信号が示す階調に補正係数CVが乗じられるような補正が行われる。なお、補正後の画像信号は、画像信号SCとしてγ変換部25に対して出力される。
γ変換部25は、信号補正部24から出力される画像信号SCに対して所謂ガンマ変換を施すことで、出力画像信号SOUTに変換した上で、表示部4のXドライバに対して該出力画像信号SOUTを出力する。
<(1-5)輝度ムラの抑制処理方法>
<(1-5-1)データの事前準備>
有機発光ダイオードOLEDに基準電流を流した際の駆動電圧と発光輝度とを予め測定することで、図3および図4で示されるような実測結果を得る。ここで、図3で示されたような駆動時間tと規格化輝度L/L0との関係を示す曲線については、単純な指数関数で記述することができない。このため、規格化輝度L/L0を、駆動時間tと駆動電圧Vとを用いて表す関数と、駆動時間tと駆動電圧Vとの関係を表す関数とを求める。そして、画像表示装置1の出荷前に、規格化輝度L/L0を駆動時間tと駆動電圧Vとを用いて表す関数のデータを第1関数データ31として記憶部3に記憶するとともに、駆動時間tと駆動電圧Vとの関係を表す関数のデータを第2関数データ32として記憶部3に記憶する。なお、第1および第2関数データ31,32については、赤、緑、青の各色の有機発光ダイオードOLEDについて、図3および図4で示されるような実測結果に沿って設定される。
ここでは、赤色の有機発光ダイオードOLEDについての第1および第2関数データ31,32を例に挙げて説明する。
例えば、図3および図4で示された実測結果に基づいて、該実測結果を近似的な数式で表される関数で表現することを想定する。ここで、有機発光ダイオードOLEDの駆動開始時点(駆動時間t=0h)における駆動電圧を定数V0とすると、規格化輝度L/L0は、下式(1)で示されるように、駆動電圧Vと駆動時間tとを用いて近似的に表すことができる。実測結果から該実測結果を近似的に示す関数を求める手法としては、例えば、実測値を用いて、規格化輝度L/L0が線形的に変化する部分の傾き、および規格化輝度L/L0の変化を示す指数関数の係数等を順次に算出するような公知の種々の手法を採用すれば良い。
上式(1)で示される関数は、図10で示されるような駆動時間tに対する規格化輝度L/L0の関係を示すものである。そして、上式(1)の値と実測値との誤差を算出すると、誤差の平均は、0.000034と極めて小さい。なお、ここでは、上式(1)の関数を示すデータが、第1関数データ31に相当する。また、駆動電圧Vと駆動時間tとの関係が、駆動時間tが1800hよりも大きな条件下では近似的に下式(2)で示され、駆動時間tが1800h以下である条件下では近似的に下式(3)で示される。ここでは、下式(2),(3)の関数を示すデータが、第2関数データ32に相当する。
ここで、上式(2),(3)で示されるような数式を求める方法について具体的に説明する。図4で示されるような実測結果には、通常、直線を用いて近似できる平坦な部分が存在する。このような部分については、公知の表計算ソフトウェア、または統計解析ソフトを用いることによって、簡便な方法で数式を求めることができる。
図4で示される実測結果は、駆動時間tが1800h以下の第1の範囲については、直線を用いて近似できる平坦な部分である。このため、駆動時間tを横軸の変数xとするとともに、駆動電圧Vを縦軸の変数yとして、その部分のグラフを散布図として描き、その回帰直線を求めることで、下式(4)で示される回帰式が算出される。
y=2.9758×10-4x+5.4058 ・・・(4)
なお、第1の範囲について、回帰直線の傾きである2.9758×10-4を求め、回帰直線の切片である5.4058を求めてもよい。
次に、横軸の変数xを駆動時間tに書き換えるとともに、縦軸の変数yを駆動電圧Vに書き換えることで、上式(3)が求められる。これを電圧関数1(t)と呼ぶことにする。
図4で示される実測結果のうち、駆動時間tが1800h以上の第2の範囲に係る曲線部分を表す数式である上式(2)を求めるためには、駆動電圧Vの実測結果と、上式(3)で表される電圧関数1(t)との差分を抽出し、これを数式で表せばよい。ここでは、差分{駆動電圧−電圧関数1(t)}を表す散布図を求める。
まず、電圧関数1(t)の取り扱いを簡単にするため、第2の範囲について、電圧関数1(t)の独立変数である駆動時間tを、0から始まる変数u=t−1800に変換することで、電圧関数1(u)を求める。更に、電圧関数1(t)の取り扱いを簡単にするため、第2の範囲について、電圧関数1(t)の独立変数である駆動時間tを、0から始まる変数w=(t−1800)/100に変換することで、電圧関数1(w)を求める。
ここで、差分{駆動電圧−電圧関数1(w)}を引数として、自然対数loge{(駆動電圧−電圧関数1(w)}を求め、その回帰曲線を求めることで、下式(5)で示される回帰式が算出される。
y=2.3446×loge(x)−4.9491 ・・・(5)
上式(5)の回帰式は、下式(6)で示される近似関係を表している。
loge{駆動電圧−電圧関数1(w)}≒2.3446×loge(w)−4.9491 ・・・(6)
ここで、上式(6)の両辺を、底がネイピア数eである指数関数exと、wの累乗関数とを用いて書き換えると、下式(7)が得られる。
{駆動電圧−電圧関数1(w)}≒exp(−4.9491)×w2.3446=7.0898×10-3×(w2.3446) ・・・(7)
以下では、上式(7)の右辺を、wに係る累乗関数1(w)と呼ぶことにする。
ここで、上式(7)の2つの係数を少量ずつ増減して、上式(7)の左辺と右辺とが、全体として精度良く一致するように調整する。具体的には、wの累乗関数の係数である2.3446を更に大きくすると、変数wの増加に伴って、wの累乗関数の値がより急激に上昇するようになるため、図4の実測結果を示す曲線の右端における近似の精度を向上させることができる。ただし、そのままでは、差分{駆動電圧−電圧関数1(w)}に対して、wの累乗関数の値が大きくなり過ぎるので、指数関数の係数である(−4.9491)を少量ずつ逓減させて、上式(7)の左辺と右辺とが、全体として精度良く一致するように調整する。
このような調整を行った結果、wの累乗関数の係数の最適な値は2.5となり、指数関数の係数の最適な値は(−5.203)となった。これらの係数を用いて、上式(7)を書き換えると、下式(8)が得られる。
{駆動電圧−電圧関数1(w)}≒exp(−5.203)×w2.5=0.0055×(w 2.5) ・・・(8)
以下では、上式(8)の右辺を、wの累乗関数2(w)と呼ぶことにする。
ここで、式(8)の累乗関数2(w)の変数wを、駆動時間tに書き換えると、下式(9)が得られる。これを駆動時間tの電圧関数2(t)と呼ぶことにする。
{駆動電圧−電圧関数1(w)}≒0.0055×{(t−1800)/100}2.5 ・・・(9)
そして、上式(9)について、電圧関数1(w)を右辺に移項すると、下式(10)が得られる。
駆動電圧≒電圧関数1(w)+0.0055×{(t−1800)/100}2.5 ・・・(10)
ここで、上式(10)に電圧関数1(t)を表す上式(3)を代入すると、上式(2)が求められる。
次に、数式(1)を求める方法について具体的に説明する。図3で示される実測結果のうちの駆動時間tが1800h以下の第1の範囲については、関数を用いて近似することができる。この関数を用いて近似できることは次のようにして確認できる。
まず、駆動時間tが増加するにつれて、近似曲線が示す値が逓増するように、差分(1−規格化輝度L/L0)を求める。次に、差分(1−規格化輝度L/L0)を引数として、自然対数loge(1−規格化輝度L/L0)を求める。そして、駆動時間tを横軸の変数xとし、自然対数を縦軸の変数yとして、第1の範囲についてのグラフを散布図として描き、回帰曲線を求めることで、下式(11)の回帰式が算出される。
y=0.65192×loge(x)−4.2155 ・・・(11)
なお、上式(11)で示される回帰式は、下式(12)で示される近似関係を表している。
loge(1−規格化輝度L/L0)≒0.65192×loge(t)−4.2155 ・・・(12)
ここで、上式(12)の両辺を、底がネイピア数eである指数関数exと、tの累乗関数とを用いて書き換えると、下式(13)が得られる。
1−規格化輝度L/L0≒exp(−4.2155)×t0.65192=0.01476×(t0.65192) ・・・ (13)
上式(13)は、第1の範囲についての近似式である。このため、図3で示される実測結果のうちの右端およびloge(1−規格化輝度L/L0)≒−0.5付近については、近似の精度を更に高めるために、別の式を用いた近似を行なう。
図3で示される実測結果のうちの駆動時間tが1800h以上の第2の範囲については、図4で示された駆動電圧Vの傾きの絶対値の増大と、(1−規格化輝度L/L0)の傾きの絶対値の増大とが呼応していることが把握された。従って、駆動電圧Vと呼応する成分の寄与を、係数mを用いた下式(14)で表すことで、近似式を求める。
m×(V−V0)/V0 ・・・(14)
ここでは、係数mは、駆動時間tの定義域の右端(定義域内でのtの最大値の近傍)で、上式(14)の値が、差分(1−規格化輝度L/L0)を超えない範囲内で求められる。
ここで、差分(1−規格化輝度L/L0)の駆動時間tの変化に対する傾きと、上式(14)で示される値の駆動時間tの変化に対する傾きとを比較する。駆動時間tの定義域の左端(定義域内でのtの最小値の近傍)では、差分(1−規格化輝度L/L0)の傾きの方が、上式(14)で示される値の傾きよりも大きい。また、駆動時間tが1000時間の近傍からそれ以上の時間帯については、差分(1−規格化輝度L/L0)の傾きと、上式(14)で示される値の傾きとが、ほぼ等しくなる。このとき、駆動時間tと差分(1−規格化輝度L/L0)との関係を示す曲線と、駆動時間t上式(14)で示される値との関係を示す曲線とが、並行した状態にあることになる。
従って、ある関数d(t)を考え、駆動時間tが1000時間未満の範囲内で増加する際には、d(t)の値が、下式(15)で示される値に近づくように増加するとともに、駆動時間tが1000時間以上の範囲内で増加する際には、d(t)の値が一定値に収束するような関数を用いれば、近似の精度が高められる。
(1−規格化輝度L/L0)−m×(V−V0)/V0 ・・・(15)
そこで、関数d(t)を表す式として、係数jおよびkを用いた下式(16)を考える。下式(16)の係数kの逆数は、関数d(t)の収束に要する時間を規定する時定数を意味する。ここでは、係数kの逆数を300時間程度に対応するように調整すれば、上記の近似の精度を高める要請が満たされることになる。
d(t)=j×{1−exp(−k×t)} ・・・(16)
また、駆動時間tが正の無限大の値に向けて増大するとき、関数d(t)は係数jに漸近するから、係数jは、上式(15)の最大値よりも小さな値でなければならないという制約条件が存在する。そして、この制約条件に基いて、係数m、jおよびkを調整することで、上式(14)の値と上式(16)の値との和と、差分(1−規格化輝度L/L0)との間の誤差がなるべく小さくなるように調整することができる。つまり、上式(14)と上式(16)とに基づいて、下式(17)が得られる。
(1−規格化輝度L/L0)≒m×(V−V0)/V0+j×{1−exp(−k×t)} ・・・(17)
この上式(17)を規格化輝度L/L0について解くと、下式(18)が得られる。
規格化輝度L/L0≒1−m×(V−V0)/V0−j×{1−exp(−k×t)} ・・・(18)
そして、上式(18)に、係数m、jおよびkを代入することで、上式(1)が求められる。なお、ここでは、m=0.658,j=0.0856,k=0.0035となる。
このようにして、第1および第2関数データ31,32が、赤、緑、青の各色の有機発光ダイオードOLEDについて求められ、画像表示装置1の出荷前等において、記憶部3に格納される。ここでは、第1および第2関数データ31,32を数式で表したが、ある値xに対して、ただ1つの値yが対応するような関係が得られればよい。従って、駆動時間tに対する規格化輝度L/L0の関係を表す第1関数データ31、および/または、駆動電圧Vと駆動時間tとの関係を表す第2関数データ32を、配列などのデータ構造によって表されるルックアップテーブル(Lookup table)方式によって、記憶部3に格納してもよい。第1および第2関数データ31,32を表現する方式として、数式で表す方式とルックアップテーブル方式のうちの何れの方式を選択するかについては、数式に従った計算時におけるプロセッサに対する負荷や、記憶部3に必要とされる記憶容量などを勘案して決めれば良い。
<(1-5-2)使用時における発光輝度の補正方法>
画像表示装置1では、上述したように、使用時間の経過とともに各色の有機発光ダイオードOLEDが劣化する。このため、適時、第1および第2関数データ31,32を用いた補正係数CVの設定および更新が行われる。これにより、有機発光ダイオードOLEDの発光輝度の補正が行われ、表示画面における輝度ムラが精度良く抑制される。以下、画像表示装置1の使用時における発光輝度の補正方法について説明する。なお、ここでは、赤色の有機発光ダイオードOLEDについての発光輝度の補正方法を例示しつつ説明する。
表示部4にスクリーンセーバーが表示されるタイミング等といった特定のタイミングにおいて、制御部2によって電源回路5が制御されることで、有機発光ダイオードOLEDを流れる電流密度が基準の電流密度である30mA/cm2に設定される。そして、このとき、電圧検出部6によって各画素回路41の駆動電圧VREALが測定される。
次に、予測発光輝度導出部21において、電圧検出部6によって測定される任意の駆動電圧VREALに対して、上式(2),(3)を用いて駆動時間tが推定される。更に、駆動電圧VREALと推定される駆動時間tとが、上式(1)のVとtに代入されることで、各有機発光ダイオードOLEDについての規格化輝度L/L0が推定される。
ここで、9つの画素回路41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h,41iについて、基準電流が流れる際に電圧検出部6によってそれぞれ駆動電圧VREALが測定される場合を想定する。ここで、画素回路41aについて駆動電圧Va、画素回路41bについて駆動電圧Vb、画素回路41cについて駆動電圧Vc、画素回路41dについて駆動電圧Vd、画素回路41eについて駆動電圧Ve、画素回路41fについて駆動電圧Vf、画素回路41gについて駆動電圧Vg、画素回路41hについて駆動電圧Vh、画素回路41iについて駆動電圧Viが、それぞれ測定されるものとする。
そして、例えば、駆動電圧Vaが5.598Vであれば、駆動時間t=645hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.9が推定される。駆動電圧Vbが5.936Vであれば、駆動時間t=1782hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.85が推定される。駆動電圧Vcが6.346Vであれば、駆動時間t=2271hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.80が推定される。駆動電圧Vdが6.757Vであれば、駆動時間t=2461hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.75が推定される。駆動電圧Veが7.168Vであれば、駆動時間t=2598hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.70が推定される。駆動電圧Vfが7.578Vであれば、駆動時間t=2708hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.65が推定される。駆動電圧Vgが7.989Vであれば、駆動時間t=2802hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.60が推定される。駆動電圧Vhが8.399Vであれば、駆動時間t=2885hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.55が推定される。駆動電圧Viが8.810Vであれば、駆動時間t=2960hが推定され、更に規格化輝度L/L0=0.50が推定される。
なお、全ての画素回路41に係る駆動電圧Vが、駆動電圧Va〜Vcの範囲に分布している場合には、仮に発光輝度の補正が行われず、全ての画素回路41に対して単に最大階調の出力画像信号が付与されると、規格化輝度L/L0が0.80〜0.90の範囲に分布することになる。つまり、画素回路41aの発光輝度と画素回路41cの発光輝度との間において、1.125倍(=0.90/0.80)程度の発光輝度のズレが観察されることになる。
また、全ての画素回路41に係る駆動電圧Vが、駆動電圧Vd〜Vfの範囲に分布している場合には、仮に発光輝度の補正が行われず、全ての画素回路41に対して単に最大階調の出力画像信号が付与されると、規格化輝度L/L0が0.65〜0.75の範囲に分布することになる。つまり、画素回路41dの発光輝度と画素回路41fの発光輝度との間において、1.154倍(=0.75/0.65)程度の発光輝度のズレが観察されることになる。
また、全ての画素回路41に係る駆動電圧Vが、駆動電圧Vg〜Viの範囲に分布している場合には、仮に発光輝度の補正が行われず、全ての画素回路41に対して単に最大階調の出力画像信号が付与されると、規格化輝度L/L0が0.50〜0.60の範囲に分布することになる。つまり、画素回路41gの発光輝度と画素回路41iの発光輝度との間において、1.2倍(=0.60/0.50)程度の発光輝度のズレが観察されることになる。
このような発光輝度のズレの発生に対して、本実施形態に係る画像表示装置1では、発光輝度のズレの大きさに応じて、複数の発光輝度の補正方法の中から1つの補正方法が選択的に実行される。
詳細には、まず、基準値決定部22によって、駆動電圧VREALが最小となる画素回路41に対応する規格化輝度(すなわち、規格化輝度の最大値)Lmaxと、駆動電圧VREALが最大となる画素回路41に対応する規格化輝度(すなわち、規格化輝度の最小値)Lminとが求められる。次に、基準値決定部22によって、最大値Lmaxと最小値Lminとの比(Lmax/Lmin)が、発光輝度のズレとして認識される。その次に、基準値決定部22によってLmax/Lminの値が判定基準値R0以下(R0の値は、例えば1.03等)であるか否かが判定される。そして、基準値決定部22によって、Lmax/Lmin≦R0の関係が成立する場合には、発光輝度のズレが軽微であるものと認識され、発光輝度の補正が行われない。一方、Lmax/Lmin>R0の関係が成立する場合には、規格化輝度の最小値Lminの値の大小に応じて、下記第1〜第3補正処理のうちの何れか1つの補正処理が選択的に実行される。
具体的には、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1以上である場合には、第1補正処理が実行される。また、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1未満であり且つ第2閾値S2以上である場合には、第2補正処理が実行される。更に、規格化輝度の最小値Lminが第2閾値S2未満である場合には、第3補正処理が実行される。なお、第1閾値S1としては、例えば0.75等が挙げられ、第2閾値S2としては、例えば0.6等が挙げられる。この第1および第2閾値S1,S2については、有機発光ダイオードOLEDの特性、および画像表示装置1の使用目的等に応じて適宜ユーザーによって設定可能としても良い。
<(1-5-2-1)第1補正処理>
規格化輝度の最小値Lminの値が第1閾値S1以上である場合には、表示部4の全体として、有機発光ダイオードOLEDの劣化が軽度であるため、表示部4の画面全体として高輝度を得ることを優先とした第1補正処理が行われる。以下、第1補正処理の具体的な内容について説明する。
表示部4では、基準電流が流れる際に駆動電圧VREALが最小となる有機発光ダイオードOLEDが、最も劣化していない。このため、この有機発光ダイオードOLEDの規格化輝度の値、すなわち規格化輝度の最大値Lmaxが、基準値決定部22によって補正の基準値THSとして決定される。そして、補正値設定部23によって、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を最大値Lmaxに一致させる値に基づいて求まる補正係数CVが補正値として設定される。
ここで、仮に、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を最大値Lmaxに一致させるための補正値を単純に補正係数CVとして設定すると、規格化輝度の最大値Lmaxと最小値Lminとの比(Lmax/Lmin)が補正係数CVの最大値となる。しかしながら、各画素回路41に対応する画像信号が示す階調(輝度レベル)が、所定数のビットで表される場合には、各画素回路41に対応する画像信号が示す階調に、発光輝度を補正するための補正係数が単に乗じられると、画像信号が示す階調が上限値を超える。すなわち、輝度レベルのオーバーフローが生じてしまう。例えば、画像信号が示す階調が、8ビットで表される場合には、階調は、例えば0〜255の256段階で示される。そして、上限値である255およびその近傍の数値に発光輝度を補正するための補正係数が単に乗じられると、上限値である255を超える値になる。そして、階調が255を超える値が多く発生すると、高輝度のコントラストが表現されない白飛びと言われる不具合が発生する。したがって、画質を維持するために、輝度レベルのオーバーフローを避ける必要がある。
そこで、画像を構成する最も明るい画素において輝度レベルのオーバーフローが生じないように、信号補正部24において、入力画像信号SINが示す階調Yに対して、圧縮係数Zを乗じる圧縮演算が行われる。ここでは、圧縮係数Zは、規格化輝度の最小値Lminを、補正の基準値THSである最大値Lmaxで除した値(Lmin/Lmax)に設定される。例えば、入力画像信号SINが示す階調が、8ビットで表される場合には、最大階調である255については、圧縮係数Zが乗じられた階調(255×Z=255×Lmin/Lmax)が圧縮後の階調となる。
なお、入力画像信号SINが示す階調に対して、圧縮係数Zを乗じる圧縮演算と、発光輝度を補正する補正係数を乗じる演算とは、別々に行われても良いが、圧縮係数Zが補正係数CVに含まれるような態様であっても良い。ここでは、圧縮係数Zが補正係数CVに含まれることで、入力画像信号SINが示す階調に対して補正係数CVが乗じられることで、圧縮演算と発光輝度の補正とが同時に行われるものとする。ここで、任意の規格化輝度の値をLxとすると、圧縮係数Zが含まれる補正係数CVは、補正値設定部23において、下式(19)に従った演算によって算出される。
CV=(Lmax/Lx)×(Lmin/Lmax)=(Lmin/Lx) ・・・(19)
なお、例えば、第1閾値S1として0.80未満の値が設定されている場合において、Lmin=0.80、Lmax=0.90である場合、画素回路41cについては、補正係数CVのうち、発光輝度の補正に係る数値(Lmax/Lx)が1.125(=0.90/0.80)となる。そして、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/Lmax)を乗じて求まる値(階調)が160であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は180となる。また、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/Lmax)を乗じて求まる値(階調)が200であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は225となる。
また、例えば、Lmax=0.90である場合、画素回路41bについては、補正係数CVのうち、発光輝度の補正に係る数値(Lmax/Lx)が1.059(=0.90/0.85)となる。そして、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/Lmax)を乗じて求まる値(階調)が160であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は169となる。また、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/Lmax)を乗じて求まる値(階調)が200であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は212となる。
このように、有機発光ダイオードOLEDの劣化の度合いが小さな場合に実行される第1補正処理では、劣化の程度が最も小さい有機発光ダイオードOLEDに合わせた発光輝度の補正が行われる。これにより、有機発光ダイオードOLEDによって生じる発光輝度の低下を補償することができ、表示画面における輝度ムラが抑制される。そして、有機発光ダイオードOLEDの劣化による輝度の低下が解消され、画質の向上が図られる。つまり、画質の向上に比重が置かれた輝度の補償が実現される。
<(1-5-2-2)第2補正処理>
規格化輝度の最小値Lminの値が第1閾値S1未満であり且つ第2閾値S2以上である場合には、表示部4の全体として、有機発光ダイオードOLEDの劣化が中程度であるため、表示画面における輝度をある程度確保することと、表示部4の寿命を延長することとの両立を図る第2補正処理が行われる。以下、第2補正処理の具体的な内容について説明する。
まず、基準値決定部22によって、規格化輝度の最大値Lmaxと規格化輝度の最小値Lminの幾何平均値(√(Lmax×Lmin))が算出され、この幾何平均値(√(Lmax×Lmin))が補正の基準値THSとして決定される。そして、補正値設定部23によって、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を幾何平均値(√(Lmax×Lmin))に一致させる値に基づいて求まる補正係数CVが補正値として設定される。
ここで、仮に、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を幾何平均値(√(Lmax×Lmin))に一致させるための発光輝度を補正する値を単純に補正係数CVとすると、幾何平均値(√(Lmax×Lmin))と最小値Lminとの比(√(Lmax×Lmin)/Lmin)が補正係数CVの最大値となる。しかしながら、上述したように、各画素回路41に対応する画像信号が示す階調(輝度レベル)が、所定数のビットで表される場合には、各画素回路41に対応する画像信号が示す階調に、発光輝度を補正するための補正係数が単に乗じられると、画像信号が示す階調が上限値を超えて、輝度レベルのオーバーフローが生じてしまう。したがって、第2補正処理においても、画質を維持するために、輝度レベルのオーバーフローを避ける必要がある。
そこで、画像を構成する最も明るい画素において輝度レベルのオーバーフローが生じないように、信号補正部24において、入力画像信号SINが示す階調Yに対して、圧縮係数Zを乗じる圧縮演算が行われる。ここで、圧縮係数Zは、規格化輝度の最小値Lminを、補正の基準値THSである幾何平均値(√(Lmax×Lmin))で除した値(Lmin/√(Lmax×Lmin))となる。例えば、入力画像信号SINが示す階調が、8ビットで表される場合には、最大階調である255については、圧縮係数Zが乗じられた階調(255×Z=255×Lmin/√(Lmax×Lmin))が圧縮後の階調となる。
なお、入力画像信号SINが示す階調に対して、圧縮係数Zを乗じる圧縮演算と、発光輝度を補正する補正係数を乗じる演算とは、別々に行われても良いが、圧縮係数Zが補正係数CVに含まれるような態様であっても良い。ここでは、圧縮係数Zが補正係数CVに含まれることで、入力画像信号SINが示す階調に対して補正係数CVが乗じられることで、圧縮演算と発光輝度の補正とが同時に行われるものとする。ここで、任意の規格化輝度の値をLxとすると、圧縮係数Zが含まれる補正係数CVは、補正値設定部23において、下式(20)に従った演算によって算出される。
CV=(√(Lmax×Lmin)/Lx)×(Lmin/√(Lmax×Lmin))
=(Lmin/Lx) ・・・(20)
なお、例えば、第1閾値S1として0.65を超える値が設定され、第2閾値S2として0.65未満の値が設定されている場合において、Lmin=0.65、Lmax=0.75である場合、幾何平均値(√(Lmax×Lmin))は、0.6982となる。そして、画素回路41dにおいては、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/√(Lmax×Lmin))を乗じて求まる値(階調)が160であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調が149(≒160×0.6982/0.75)となる。また、画素回路41eにおいては、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/√(Lmax×Lmin))を乗じて求まる値(階調)が160であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は160(≒160×0.6982/0.70)となる。また、画素回路41fにおいては、入力画像信号SINの階調に対して圧縮演算に係る数値(Lmin/√(Lmax×Lmin))を乗じて求まる値(階調)が160であるような条件では、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は172(≒160×0.6982/0.65)となる。
なお、基準値決定部22、補正値設定部23、および信号補正部24において、幾何平均値(√(Lmax×Lmin))に係る平方根の計算が行われることで計算精度が低くなる場合には、幾何平均値(√(Lmax×Lmin))に代えて、規格化輝度の最大値Lmaxと規格化輝度の最小値Lminの算術平均値((Lmax+Lmin)/2)を用いるようにしても良い。但し、上式(20)で示されるように、圧縮係数Zが加味された形で補正係数CVが設定される場合には、平方根の計算が不要となるため、幾何平均値と算術平均値の何れが用いられても実質的には差が生じない。
このように、有機発光ダイオードOLEDの劣化が中程度の場合に実行される第2補正処理では、劣化の程度が中程度の有機発光ダイオードOLEDに合わせた発光輝度の補正が行われる。これにより、有機発光ダイオードOLEDによって生じる発光輝度の低下を補償することができ、表示画面における輝度ムラが抑制される。
<(1-5-2-3)第3補正処理>
規格化輝度の最小値Lminの値が第2閾値S2未満である場合には、表示部4の全体として、有機発光ダイオードOLEDの劣化が重度であるため、画面全体として輝度を低減することで表示部4の寿命を延長することを優先とした第3補正処理が行われる。以下、第3補正処理の具体的な内容について説明する。
表示部4では、基準電流が流れる際に駆動電圧VREALが最大となる有機発光ダイオードOLEDの劣化の程度が最も大きい。このため、この有機発光ダイオードOLEDの規格化輝度の値、すなわち規格化輝度の最小値Lminが、基準値決定部22によって補正の基準値THSとして決定される。そして、補正値設定部23によって、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を規格化輝度の最小値Lminに一致させるための値に基づいて求まる補正係数CVが補正値として設定される。
ここで、仮に、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を規格化輝度の最小値Lminに一致させるような発光輝度を補正する値を単純に補正係数CVとすると、補正係数CVの最大値が1となる。しがたって、輝度レベルのオーバーフローの問題が生じない。このため、第3補正処理では、圧縮演算が不必要である。そこで、補正値設定部23によって、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度L/L0を規格化輝度の最小値Lminに一致させる補正係数CVが補正値として設定される。具体的には、任意の規格化輝度の値をLxとすると、補正係数CVは、補正値設定部23において、下式(21)に従った演算によって算出される。
CV=(Lmin/Lx) ・・・(21)
なお、例えば、第2閾値S2として0.50を超える値が設定されている場合において、Lmin=0.50である場合、画素回路41gについては、補正係数CVが0.8333(=Lmin/Lx=0.50/0.60)となる。そして、入力画像信号SINの階調が160であれば、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は133となる。また、画素回路41hについては、補正係数CVが0.9090(=Lmin/Lx=0.50/0.55)となる。そして、入力画像信号SINの階調が200であれば、信号補正部24で補正された後の画像信号SCの階調は182となる。
このように、有機発光ダイオードOLEDの劣化の度合いが大きな場合に実行される第3補正処理では、劣化の程度が最も大きな有機発光ダイオードOLEDに合わせた発光輝度の補正が行われる。これにより、有機発光ダイオードOLEDにおける劣化の進行を抑制しつつ、表示画面における輝度ムラを精度良く抑制することができる。つまり、有機発光ダイオードOLEDの劣化の度合いが大きな場合には、劣化の進行の抑制にも配慮した発光輝度の補償が行われるため、画像表示装置1の寿命の延長と、表示画面における輝度ムラの抑制とを両立させることができる。
<(1-6)補正係数の設定動作フロー>
図11から図15は、画像表示装置1における補正係数の設定動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部2によって制御され、表示部4においてスクリーンセーバーが表示されるタイミング等といった特定のタイミングにおいて実行される。
図11のステップS1では、制御部2の制御により、各画素回路41の有機発光ダイオードOLEDに流れる電流が基準電流に一致するように、有機発光ダイオードOLEDの駆動電圧がフィードバック制御などによって設定され、この状態における各有機発光ダイオードOLEDの駆動電圧VREALが電圧検出部6によって検出される。
ステップS2では、予測発光輝度導出部21により、各有機発光ダイオードOLEDについて、駆動電圧VREALと第2関数データ32とに基づいて、駆動時間tが推定される。ここでは、駆動電圧VREALが、上式(2),(3)のVに代入されるような演算によって、各有機発光ダイオードOLEDについての駆動時間tが推定される。
ステップS3では、予測発光輝度導出部21により、各有機発光ダイオードOLEDについて、基準電流が流れる場合の規格化輝度L/L0が推定される。ここでは、第1関数データ31を用いて、駆動電圧VREALと、ステップS2で推定された駆動時間tとが、上式(1)のVとtに代入されるような演算によって、各有機発光ダイオードOLEDについての規格化輝度L/L0が推定される。
ステップS4では、基準値決定部22により、ステップS3で推定された規格化輝度L/L0の最大値Lmaxと最小値Lminとの比(Lmax/Lmin)が、発光輝度のズレとして算出される。
ステップS5では、基準値決定部22により、Lmax/Lminの値が判定基準値R0以下であるか否かが判定される。ここで、Lmax/Lmin≦R0の関係が成立する場合には、発光輝度のズレが軽微であるものと認識され、発光輝度の補正の必要性がないため、本動作フローが終了される。一方、Lmax/Lmin≦R0の関係が成立しない場合には、発光輝度のズレがある程度以上のものであると認識され、発光輝度の補正が必要であるため、図12のステップS11に進む。
ステップS11では、基準値決定部22により、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1以上であるか否か判定される。ここで、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1以上であれば、ステップS12に進み、基準値決定部22および補正値設定部23によって図13で示される第1補正処理が行われる。一方、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1以上でなければ、ステップS13に進む。
ステップS13では、基準値決定部22により、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1未満であり且つ第2閾値S2以上であるか否か判定される。ここで、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1未満であり且つ第2閾値S2以上であれば、ステップS14に進み、基準値決定部22および補正値設定部23によって図14で示される第2補正処理が行われる。一方、規格化輝度の最小値Lminが第1閾値S1未満であり且つ第2閾値S2以上でなければ、ステップS15に進む。なお、ステップS15に進む場合には、規格化輝度の最小値Lminが第2閾値S2未満の場合となる。
ステップS15では、基準値決定部22および補正値設定部23によって図15で示される第3補正処理が行われる。
図13のステップS121では、基準値決定部22により、基準値THSが決定される。ここでは、ステップS3で推定された規格化輝度のうちの最大値Lmaxが、基準値THSとして決定される。
ステップS122では、補正値設定部23により、補正係数CVを設定する対象、すなわち補正の対象となる画素回路41が指定される。なお、このステップS122が1回目の場合には、基準となるアドレスの画素回路41が指定される。また、このステップS122では、ステップS124から戻ってくる度に、順次に次のアドレスの画素回路41が指定される。
ステップS123では、補正値設定部23により、各有機発光ダイオードOLEDについて、補正係数CVが設定される。ここでは、上式(19)で示されるように、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度Lxを規格化輝度の最大値Lmaxに一致させるような係数(Lmax/Lx)と圧縮演算の係数Z(Lmin/Lmax)とを乗じることで求められる補正係数CVが設定される。
ステップS124では、補正値設定部23により、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されたか否か判定される。ここで、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されていなければ、ステップS122に戻り、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されるまで、ステップS122〜S124の処理が繰り返される。そして、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されれば、本動作フローが終了される。
図14のステップS141では、基準値決定部22により、基準値THSが決定される。ここでは、ステップS3で推定された規格化輝度の最大値Lmaxと最小値Lminの幾何平均値(√(Lmax×Lmin))が、基準値THSとして決定される。
ステップS142では、補正値設定部23により、補正係数CVを設定する対象、すなわち補正の対象となる画素回路41が指定される。なお、このステップS142が1回目の場合には、基準となるアドレスの画素回路41が指定される。また、このステップS142では、ステップS144から戻ってくる度に、順次に次のアドレスの画素回路41が指定される。
ステップS143では、補正値設定部23により、各有機発光ダイオードOLEDについて、補正係数CVが設定される。ここでは、上式(20)で示されるように、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度Lxを規格化輝度の幾何平均値(√(Lmax×Lmin))に一致させるような係数(√(Lmax×Lmin)/Lx)と圧縮演算の係数Z(Lmin/√(Lmax×Lmin))とを乗じることで求められる補正係数CVが設定される。
ステップS144では、補正値設定部23により、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されたか否か判定される。ここで、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されていなければ、ステップS142に戻り、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されるまで、ステップS142〜S144の処理が繰り返される。そして、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されれば、本動作フローが終了される。
図15のステップS151では、基準値決定部22により、基準値THSが決定される。ここでは、ステップS3で推定された規格化輝度の最小値Lminが、基準値THSとして決定される。
ステップS152では、補正値設定部23により、補正係数CVを設定する対象、すなわち補正の対象となる画素回路41が指定される。なお、このステップS152が1回目の場合には、基準となるアドレスの画素回路41が指定される。また、このステップS152では、ステップS154から戻ってくる度に、順次に次のアドレスの画素回路41が指定される。
ステップS153では、補正値設定部23により、各有機発光ダイオードOLEDについて、補正係数CVが設定される。ここでは、上式(21)で示されるように、各有機発光ダイオードOLEDについて、規格化輝度Lxを規格化輝度の最小値Lminに一致させるような係数(Lmin/Lx)が補正係数CVとして設定される。
ステップS154では、補正値設定部23により、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されたか否か判定される。ここで、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されていなければ、ステップS152に戻り、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されるまで、ステップS152〜S154の処理が繰り返される。そして、全ての画素回路41について補正係数CVが設定されれば、本動作フローが終了される。
以上のように、第1実施形態に係る画像表示装置1では、基準電流が流れる際の実測結果から得られる有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される駆動電圧Vと該有機発光ダイオードOLEDの規格化輝度L/L0との関係を示す第1および第2関数データ31,32が、予め記憶部3に格納される。その後、画像表示装置1の使用時の特定のタイミングにおいて、各有機発光ダイオードOLEDに基準電流が流れる際に該各有機発光ダイオードOLEDに印加される駆動電圧VREALが検出される。そして、劣化の状況に応じて、この駆動電圧VREALと、第1および第2関数データ31,32とに基づいて、各有機発光ダイオードOLEDに対する補正係数CVが設定される。その結果、発光素子の劣化によって生じる発光輝度の低下を容易かつ精度良く補償することができる。したがって、輝度計等の特別な構成を含まない簡易な構成で、表示画面における輝度ムラを容易に精度良く抑制することが可能となる。
また、駆動電圧VREALと第2関数データ32とに基づいて、各有機発光ダイオードOLEDの駆動時間tが推定される。このため、各有機発光ダイオードOLEDの駆動時間を計測するためのカウンタや、階調積算手段等といった特別な構成が不要である。
また、第1〜3補正処理では、規格化輝度の最大値Lmaxおよび最小値Lminのうちの少なくとも一方の値に基づいて基準値THSが決定される。そして、各有機発光ダイオードOLEDについて推定される規格化輝度Lxを基準値THSに一致させる値に基づいて補正係数CVが設定される。つまり、全ての画素回路41に対する統一基準として基準値THSが設定され、該統一基準に合わせて、全ての画素回路41に対して補正係数CVが設定される。このような補正係数CVの設定により、表示画面における輝度ムラが精度良く抑制される。
また、補正係数CVを設定する動作が、表示部4にスクリーンセーバーが表示されるタイミング等といった特定のタイミングにおいて実行される。このため、ユーザーが表示部4に表示中の画像を視認している際に、補正係数CVを設定するために各有機発光ダイオードOLEDに基準電流が流れてしまうような不具合が生じない。したがって、ユーザーによる画像の視認が阻害されず、表示画面における輝度ムラが精度良く抑制される。
<(2)第2実施形態>
上記第1実施形態に係る画像表示装置1では、有機発光ダイオードOLEDに基準電流を流した際における駆動電圧Vと駆動時間tとの関係が上式(2),(3)のような関数で精度良く近似的に示すことが可能な例を挙げて説明した。しかしながら、有機発光ダイオードOLEDの構成によっては、有機発光ダイオードOLEDに基準電流を流した際における駆動電圧Vと駆動時間tとの関係が関数で精度良く近似的に示すことができない場合もある。このような有機発光ダイオードOLEDを採用する場合であっても、第2実施形態に係る画像表示装置1Aでは、簡易な構成で、表示画面における輝度ムラを容易に精度良く抑制することができるように構成されている。
なお、第2実施形態に係る画像表示装置1Aは、第1実施形態に係る画像表示装置1と比較して、表示部4が表示部4Aに変更されるとともに、制御部2が、実現される機能が異なる制御部2Aに変更されたものである。具体的には、第2実施形態に係る表示部4Aについては、第1実施形態に係る表示部4と比較して、画素回路41が有機発光ダイオードOLEDの構成を異ならせた画素回路41Aに変更されたものとなっている。第2実施形態に係る制御部2Aについては、第1実施形態に係る制御部2と比較して、予測発光輝度導出部21が異なる演算処理を行う予測発光輝度導出部21Aに変更されるとともに、階調積算部26Aが追加されたものとなっている。また、第2実施形態に係る記憶部3については、第1実施形態に係る記憶部3と比較して、記憶されるデータ内容が異なる。具体的には、第2実施形態に係る記憶部3では、第1および第2関数データ31,32の代わりに、階調基準積算データ34Aおよび第3関数データ35Aが記憶されるとともに、階調積算データ36Aが更に記憶される。
このように、第2実施形態に係る画像表示装置1Aは、第1実施形態に係る画像表示装置1の一部の構成を変更したものに相当する。このため、第2実施形態に係る画像表示装置1Aの構成のうち、第1実施形態に係る画像表示装置1と同様な部分については同じ符号を付して説明を省略する。以下、第2実施形態に係る画像表示装置1Aのうち、第1実施形態に係る画像表示装置1と異なる点について説明する。
<(2-1)発光素子の劣化の態様>
第2実施形態に係る画素回路41Aの一具体例として、赤色の光を発する有機発光ダイオードOLEDの劣化の態様について説明する。
ここで、赤色の光を発する有機発光ダイオードOLEDの構成のうち、第1実施形態に係る有機発光ダイオードOLEDと異なる構成について説明する。ここでは、正孔輸送層が、厚さ54nmの蒸着層とされ、発光層が、厚さ25nmの共蒸着膜とされるとともに、該発光層におけるドーパント材料の濃度が、2.0%とされる。また、電子輸送層が、厚さ45nmの蒸着層とされ、第2電極層が、厚さ25nmのマグネシウムと銀からなる共蒸着層とされる。また、有機質保護層が、厚さ70nmの芳香族アミン誘導体からなる蒸着層とされる。更に、有機質保護層の上には、窒化ケイ素からなる厚さ1.0μmの無機質保護層がCVDによって形成される。
なお、有機発光ダイオードOLEDの劣化の態様を観測する条件については、第1実施形態と同様な方法が採用される。そして、有機発光ダイオードOLEDが定電流駆動回路に接続され、有機発光ダイオードOLEDを流れる電流密度が10mA/cm2となるように、3.6mAの一定電流が流れるように設定した。有機発光ダイオードOLEDが発光し始めた際(駆動開始時)の発光輝度(初期発光輝度)L0は1012cd/m2であったが、発光開始から2838時間経過後には、発光輝度は初期発光輝度L0の約89.1%の値まで低下した。なお、測定時における有機発光ダイオードOLEDの周囲の温度については、自動測定の結果、測定期間中における平均温度が24.0℃、最低温度が23.5℃、最高温度が26.0℃であった。そして、最低温度と最高温度の間に位置する第1四分位数の温度が24.0℃、第3四分位数の温度が24.0℃であった。このため、測定期間における半数以上の温度の測定値が、第1四分位数と第3四分位数の範囲内に含まれるので、標準的な室内環境に近い条件で観測を行ったことになる。
このような測定条件における測定結果に基づいて、各時点における発光輝度Lを初期発光輝度L0で除した値(L/L0)を規格化輝度として算出した。発光開始から経過した時間(駆動時間)tと規格化輝度L/L0との関係は、図16で示されるようなものとなった。また、駆動時間tと駆動電圧Vとの関係は、図17で示されるようなものとなった。図16で示されるように、駆動時間tの経過に対して、規格化輝度L/L0が小刻みに波打つような変動を示した。また、図17で示されるように、駆動時間tの経過に対して、駆動電圧Vが激しく波打つような変動を示した。
<(2-2)輝度ムラの抑制処理に係る構成>
図18で示されるように、制御部2Aは、第1実施形態に係る制御部2と異なり、輝度ムラの抑制処理に係る機能的な構成として、予測発光輝度導出部21A、および階調積算部26Aを有する。また、記憶部3は、第1実施形態とは異なり、輝度ムラの抑制処理に係るデータとして、階調基準積算データ34A、第3関数データ35A、および階調積算データ36Aを格納する。
階調基準積算データ34Aは、有機発光ダイオードOLEDに対応する画像信号の基準となる輝度データ(基準階調)が、有機発光ダイオードOLEDの基準となる発光態様に応じて積算されることで求まる値(基準積算値)ISTを示すデータを含む。ここでは、有機発光ダイオードOLEDの基準となる発光態様は、基準時間(ここでは1時間)における発光であり、基準階調が、基準時間(ここでは1時間)における発光回数分、積算されることで基準積算値ISTが求まる。例えば、画像表示装置1Aで毎秒60フレームが表示され、入力画像信号が示す階調が8ビットで表されて、階調が0〜255の256段階で示されるものとし、基準階調が255であるものとすると、基準積算値ISTは、下式(22)で求められる。
IST=3600×60×255=55080000 ・・・・(22)
第3関数データ35Aは、図16で示されるような駆動時間tと規格化輝度L/L0との関係を、駆動電圧Vを加味して近似的に示す関数のデータである。つまり、本実施形態では、第3関数データ35Aが、有機発光ダイオードOLEDに基準電流が流れる際に該有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される駆動電圧Vと、該有機発光ダイオードOLEDの駆動時間tと、該有機発光ダイオードOLEDの発光輝度に係る値(ここでは、規格化輝度L/L0)との関係を示す基準関係データに相当する。
階調積算データ36Aは、信号補正部24から出力される画像信号SCが示す階調が、有機発光ダイオードOLEDの発光態様に応じて積算されることで求まる値(階調実積算値)ILTを示すデータが、画素回路41A毎に格納されたものである。ここでは、有機発光ダイオードOLEDの発光態様は、任意の時間における発光であり、信号補正部24から出力される画像信号SCが示す階調が、有機発光ダイオードOLEDの発光回数分、積算されることで階調実積算値ILTが求まる。
積算部としての階調積算部26Aは、各有機発光ダイオードOLEDについて、信号補正部24から出力される画像信号SCが示す階調を、有機発光ダイオードOLEDの発光態様に応じて積算することで、階調実積算値ILTを導出する。ここでは、信号補正部24から出力される画像信号SCが示す階調が、該階調に応じて有機発光ダイオードOLEDが発光する回数(発光回数)分、積算されることで、階調実積算値ILTが導出される。ここで導出される階調実積算値ILTは、記憶部3において、有機発光ダイオードOLED毎に記憶される。
予測発光輝度導出部21Aは、第3関数データ35Aと、階調実積算値ILTと、基準積算値ISTと、基準電流が有機発光ダイオードOLEDに流れる際の駆動電圧VREALとに基づいて、各有機発光ダイオードOLEDにおける予測発光輝度に係る値(ここでは、規格化輝度L/L0)を導出する。
<(2-3)輝度ムラの抑制処理方法>
<(2-3-1)データの事前準備>
有機発光ダイオードOLEDに基準電流を流した際の駆動電圧と発光輝度とを予め測定することで、図16および図17で示されるような実測結果を得る。ここで、図16で示されたような駆動時間tと規格化輝度L/L0との関係を示す曲線については、駆動時間tのみを変数とする関数では近似的に表すことができない。このため、規格化輝度L/L0を、駆動時間tと駆動電圧Vとを用いて表す関数を求める。そして、画像表示装置1Aの出荷前に、規格化輝度L/L0を駆動時間tと駆動電圧Vとを用いて表す関数のデータを第3関数データ35Aとして記憶部3に記憶する。
例えば、図16および図17で示された実測結果に基づいて、該実測結果を近似的な数式で表される関数で表現することを想定する。ここで、有機発光ダイオードOLEDの駆動開始時点(駆動時間t=0h)における駆動電圧を定数V0とすると、規格化輝度L/L0は、下式(23)で示されるように、駆動電圧Vと駆動時間tとを用いて表すことができる。実測結果から該実測結果を近似的に示す関数を求める手法としては、例えば、実測値を用いて、規格化輝度L/L0が線形的に変化する部分の傾き、および規格化輝度L/L0の変化を示す指数関数の係数等を順次に算出するような公知の種々の手法を採用すれば良い。なお、下式(23)は、上式(1)を求める手順と同様にして求めることができる。
上式(23)で示される関数は、図19で示されるような駆動時間tに対する規格化輝度L/L0の関係を示すものである。そして、上式(23)の値と実測値との誤差を算出すると、誤差の平均は、−0.00098と極めて小さい。なお、ここでは、上式(23)の関数を示すデータが、第3関数データ35Aに相当する。
一方、図17で示される駆動電圧Vと駆動時間tとの関係については、駆動時間tの経過に対して、駆動電圧Vが激しく波打つような変動を示す。このため、駆動電圧Vを駆動時間tを変数とする関数で精度良く近似的に表すことが難しい。このため、階調実積算値ILTを用いて、駆動時間tを推定することを目的として、予め基準積算値ISTを算出しておき、階調基準積算データ34Aとして記憶部3に記憶する。
<(2-3-2)駆動時間の推定方法>
ここでは、画像信号の階調が0〜255の256段階の値で表されるものとして説明する。まず、画像信号の階調を最大値の255として有機発光ダイオードOLEDを駆動させた場合に、有機発光ダイオードOLEDに基準電流が流れて該有機発光ダイオードOLEDが発光し、その際に図16および図17で示される実測値が得られるものとする。
ここで、例えば、有機発光ダイオードOLEDが、階調の平均値が127である画像信号SCに基づいて1時間発光した場合を想定する。このとき、階調の平均値127と発光回数(60×3600)との積(60×3600×127=27432000)が、階調実積算値ILTとなる。そして、上式(22)で示されたように、1時間に係る基準積算値ISTは55080000である。そこで、階調実積算値ILTを基準積算値ISTで除した値(0.49804≒27432000/55080000)が、最大階調255に従って有機発光ダイオードOLEDを発光させた場合に換算した発光時間に相当する。このため、本実施形態では、階調実積算値ILTを基準積算値ISTで除することで、有機発光ダイオードOLEDにおいて基準電流が流れて発光した駆動時間tが推定される。
例えば、有機発光ダイオードOLEDが、階調の平均値が64である画像信号SCに基づいて1000時間発光した場合を想定する。このとき、階調の平均値64と発光回数(60×3600×1000)との積(60×3600×1000×64=1382400000)が、階調実積算値ILTとなる。そして、階調実積算値ILTを基準積算値ISTで除した値(250.980≒1382400000/55080000)が、駆動時間tとして算出される。
ここでは、信号補正部24から出力される画像信号SCの階調を平均値で表して説明したが、実際には、有機発光ダイオードOLED毎に階調値が積算されることで、階調実積算値ILTが算出されれば良い。
<(2-3-3)使用時における発光輝度の補正方法>
画像表示装置1Aでは、上述したように、使用時間の経過とともに各色の有機発光ダイオードOLEDが劣化する。このため、階調基準積算データ34A、第3関数データ35A、および階調積算データ36Aを用いた補正係数CVの設定および更新が適時行われる。これにより、有機発光ダイオードOLEDの発光輝度の補正が行われ、表示画面における輝度ムラが精度良く抑制される。以下、画像表示装置1Aの使用時における発光輝度の補正方法について説明する。なお、ここでは、赤色の有機発光ダイオードOLEDについての発光輝度の補正方法を例示しつつ説明する。
階調積算部26Aによって信号補正部24から出力される画像信号SCの階調が順次に積算されて階調実積算値ILTが算出される。この階調実積算値ILTは、記憶部3の階調積算データ36Aにおいて有機発光ダイオードOLED毎に記憶される。つまり、階調積算データ36Aに含まれる有機発光ダイオードOLED毎の階調実積算値ILTが、1フレームの入力画像信号SINが入力される度に更新される。
これと並行して、表示部4Aにスクリーンセーバーが表示されるタイミング等といった特定のタイミングにおいて、制御部2Aによって電源回路5が制御されることで、有機発光ダイオードOLEDを流れる電流密度が基準の電流密度である10mA/cm2に設定される。そして、電圧検出部6によって各画素回路41Aの駆動電圧VREALが測定される。このとき、予測発光輝度導出部21Aにおいて、階調実積算値ILTが基準積算値ISTで除されることで、有機発光ダイオードOLEDの駆動時間tが推定される。そして、予測発光輝度導出部21Aにおいて、駆動電圧VREALと推定される駆動時間tとが、上式(23)のVおよびtにそれぞれ代入されることで、各有機発光ダイオードOLEDについての規格化輝度L/L0が推定される。その後の処理については、第1実施形態と同様なものになるため、ここでは説明を省略する。
<(2-4)補正係数の設定動作フロー>
図20は、画像表示装置1Aにおける補正係数の設定動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部2Aによって制御され、表示部4においてスクリーンセーバーが表示されるタイミング等といった特定のタイミングにおいて実行される。
図20のステップS21では、図11のステップS1と同様に、制御部2Aの制御により、有機発光ダイオードOLEDに基準電流が流れている状態に各画素回路41Aが設定され、この状態における各有機発光ダイオードOLEDの駆動電圧VREALが電圧検出部6によって検出される。
ステップS22では、予測発光輝度導出部21Aにより、階調基準積算データ34Aと階調積算データ36Aとが参照されることで、基準積算値ISTと、各有機発光ダイオードOLEDの階調実積算値ILTとが認識される。
ステップS23では、予測発光輝度導出部21Aにより、階調実積算値ILTが基準積算値ISTで除されることで、各有機発光ダイオードOLEDの駆動時間tが推定される。
ステップS24では、予測発光輝度導出部21Aにより、各有機発光ダイオードOLEDについて、第3関数データ35Aと、ステップS21で検出された駆動電圧VREALと、ステップS23で推定された駆動時間tとに基づいて、基準電流が流れている場合の規格化輝度L/L0が推定される。ここでは、第3関数データ35Aが用いられて、ステップS21で検出された駆動電圧VREALと、ステップS23で推定された駆動時間tとが、上式(23)のVとtに代入されるような演算によって、各有機発光ダイオードOLEDについての規格化輝度L/L0が推定される。
ステップS25では、図11のステップS4と同様に、基準値決定部22により、ステップS24で推定された規格化輝度L/L0の最大値Lmaxと最小値Lminとの比(Lmax/Lmin)が、発光輝度のズレとして算出される。
ステップS26では、図11のステップS5と同様に、基準値決定部22により、Lmax/Lminの値が判定基準値R0以下であるか否かが判定される。ここで、Lmax/Lmin≦R0の関係が成立する場合には、発光輝度のズレが軽微であるものと認識され、発光輝度の補正の必要性がないため、本動作フローが終了される。一方、Lmax/Lmin≦R0の関係が成立しない場合には、発光輝度のズレがある程度以上のものであると認識され、発光輝度の補正が必要であるため、図12のステップS11に進む。
なお、図12のステップS11以降の動作については、上述した第1実施形態の動作と同様であるため、ここでは説明を省略する。
以上のように、第2実施形態に係る画像表示装置1Aでは、基準階調が基準時間(ここでは1時間)における発光回数分、積算されることで求まる基準積算値ISTを準備しておく。その後、画像表示装置1Aの使用時において、有機発光ダイオードOLED毎に、信号補正部24から出力される画像信号SCが示す階調が順次に積算されて、階調実積算値ILTが算出される。この算出と並行して、特定のタイミングで、基準電流が流れる際の各有機発光ダイオードOLEDに係る駆動電圧VREALが検出されるとともに、階調実積算値ILTが基準積算値ISTで除されることで、各有機発光ダイオードOLEDの駆動時間tが推定される。そして、予め準備された第3関数データ35Aと、検出された駆動電圧VREALと、推定された駆動時間tとに基づいて、各有機発光ダイオードOLEDに係る規格化輝度L/L0が推定され、該規格化輝度L/L0に応じた補正係数CVが、各有機発光ダイオードOLEDに対して設定される。このような構成により、有機発光ダイオードOLEDの劣化による発光輝度の低下が時間の経過に対して波打つように不安定に進行するような場合であっても、表示画面における輝度ムラをより精度良く抑制することができる。
<(3)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
◎例えば、上記第1および第2実施形態では、発光輝度のズレを示す指標としてのLmax/Lminの値が、判定基準値R0と比較されることで、発光輝度の補正を実行するか否かが判定されたが、これに限られない。例えば、発光輝度のズレを示す指標として、Lmax−Lminの値が採用され、該Lmax−Lminの値が、判定基準値R0(例えば、R0=0.03)と比較されることで、発光輝度の補正をするか否かが判定されても良い。
◎また、上記第1および第2実施形態では、スクリーンセーバーが表示されるタイミングにおいて、補正係数CVが設定されたが、これに限られない。例えば、有機発光ダイオードOLEDの累積発光時間が、一定時間(例えば、20時間)に到達する度などといった特定のタイミングにおいて、補正係数CVの設定が行われても良い。また、人感センサなどを用いてユーザーの不在を検知したタイミングにおいて、補正係数CVが設定されても良い。また、有機発光ダイオードOLEDの累積発光時間が一定時間に到達した後にスクリーンセーバーが最初に表示されるタイミングにおいて、補正係数CVが設定されても良い。このような何れの構成であっても、画質の向上と維持とが図られる。
◎また、上記第1および第2実施形態では、第1〜3補正処理を選択的に実行するための基準として用いられた第1および第2閾値S1,S2がそれぞれ0.7,0.6に設定されたが、これに限られない。例えば、駆動時間tの経過に対する規格化輝度L/L0の変化の度合いが大きく変わるポイントに合わせて、第1および第2閾値S1,S2の値がそれぞれ設定されても良い。
◎また、上記第1および第2実施形態では、第1〜3補正処理において、予測発光輝度導出部21,21Aによって導出される規格化輝度L/L0を基準値THSに一致させる値に基づいて補正係数CVが設定されるとは、規格化輝度L/L0を、基準値THSを中心とした所定の範囲(例えば、±1.5%以内の範囲)に入らせる値に基づいて補正係数CVが設定される場合も含まれる。すなわち、規格化輝度L/L0の最大値Lmaxと最小値Lminとの差が縮まるように各有機発光ダイオードOLEDに対して補正係数CVが設定されれば良い。
◎また、上記第1および第2実施形態では、電源回路5を定電流駆動回路として機能させることで、各有機発光ダイオードOLEDは基準電流が流れる状態に設定されたが、これに限られない。例えば、有機発光ダイオードOLEDの両端に印加される駆動電圧と、抵抗R1に流れる電流とを検出しつつ、駆動電圧を徐々に変更して、抵抗R1に流れる電流が基準電流に一致する際の駆動電圧が検出されるようにしても良い。
◎また、上記第2実施形態では、1フレームの表示開始から次の1フレームの表示開始までの期間(フレーム期間)を占める有機発光ダイオードOLEDの発光期間の割合を示すデューティ比が一定であることを前提として説明したが、これに限られない。例えば、表示部4Aの温度変化に応じてデューティ比が変更される態様も考えられる。具体的には、表示部4Aの温度が標準の温度範囲にある場合には、デューティ比が標準値である127/255に設定される。また、表示部4Aの温度上昇に伴って有機発光ダイオードOLEDの発光輝度が上昇するような条件ではデューティ比が標準値から低減される。一方、表示部4Aの温度低下に伴って有機発光ダイオードOLEDの発光輝度が低下するような条件ではデューティ比が標準値から上昇される。このようなデューティ比の制御により、表示部4Aで表示される画像の明るさが入力画像信号に応じたものとなる。
但し、このようなデューティ比の制御が行われる場合には、上述した基準積算値ISTおよび階調実積算値ILTの算出において、デューティ比の増減による影響分を反映させる必要がある。例えば、デューティ比が標準値である127/255に設定されている場合には、基準積算値ISTが、下式(24)で算出される。この基準積算値ISTが、駆動時間tが1時間である場合の階調の積算値に相当する。
IST=127/255×3600×60×255=27432000 ・・・(24)
ここで、例えば、有機発光ダイオードOLEDが、階調の平均値が127である画像信号SCに基づいて1000時間発光した場合を想定する。このとき、デューティ比が平均で170/255であれば、デューティ比の平均値(170/255)と階調の平均値127と発光回数(60×3600×1000)との積(170/255×60×3600×1000×127=18288000000)が、階調実積算値ILTとなる。そして、階調実積算値ILTを基準積算値ISTで除した値(666.667≒18288000000/27432000)が、駆動時間tとして算出される。
◎また、上記第2実施形態では、信号補正部24から出力される画像信号SCの階調を積算することで算出される階調実積算値ILTを、基準積算値ISTで除することで、有機発光ダイオードOLEDの駆動時間tが推定されたが、これに限られない。例えば、有機発光ダイオードOLEDが発光する回数をカウントすることで、駆動時間tが推定されても良い。例えば、有機発光ダイオードOLEDが発光している際に、垂直同期信号に応じたパルス(フレームパルス)の数をカウンターを用いて積算する方法が考えられる。具体的には、信号補正部24から出力される画像信号SCの階調が所定の閾値以上の値である場合に、フレームパルスの数をカウントし、このカウント数にフレーム期間およびデューティ比を適宜乗じることで、駆動時間tが推定される。なお、例えば、所定の閾値が、最大階調の50%以上の階調の値に設定されることで、中間階調以上の画像信号に応じて有機発光ダイオードOLEDが発光した時間が求められる。
◎また、上記第1および第2実施形態では、劣化の度合いに応じて第1〜3補正処理が選択的に行われたが、これに限られない。例えば、劣化の度合いに拘わらず、第1〜3補正処理のうちの何れか1つの補正処理が行われても良い。
◎また、上記第1および第2実施形態では、有機発光ダイオードOLEDの発光輝度および予測発光輝度に係る値として、規格化輝度L/L0が採用されたが、これに限られない。例えば、発光輝度Lが初期発光輝度L0で除されて規格化されることなく、発光輝度Lがそのまま使用されて、各種演算が行われることで、補正係数CVの設定が行われても良い。
◎また、上記第1および第2実施形態では、画素回路41,41Aにおいて、発光時に高電位側となる方から、第1トランジスタTDRおよび有機発光ダイオードOLEDが、この順番で配置されたが、これに限られない。例えば、発光時に高電位側となる方から、有機発光ダイオードOLEDおよび第1トランジスタTDRが、この順番で配置されても良い。
◎また、上記第1および第2実施形態では、複数の画素回路41において、赤色の光を発する有機発光ダイオードOLED、緑色の光を発する有機発光ダイオードOLED、および青色の光を発する有機発光ダイオードOLEDが配置されたが、これに限られない。例えば、全ての画素回路41に対して、白色の光を発する有機発光ダイオードOLEDと、所定の色の光を透過するカラーフィルターとが組み合わされたものが採用されても良い。このような組み合わせの第1の例としては、赤色、緑色、青色の光を透過する3色のカラーフィルターを設けることが考えられる。また、第2の例としては、赤色、緑色、青色の光を透過する3色のカラーフィルターと、全ての光を透過する部分の4種類の部分を設け、赤色、緑色、青色、白色の4色の画素によって画像を構成することが考えられる。このように白色の光を発する有機発光ダイオードOLEDを用いる実施形態のうち、上記第1実施形態の変形例では、記憶部3に記憶する第1および第2関数データ31,32を、赤、緑、青の各色の有機発光ダイオードOLEDに対して、図3および図4で示されるような実測結果に沿って設定する代わりに、白色の有機発光ダイオードOLEDについての関数データのみを記憶すればよいので、簡略な構成とすることができる。また、上記第2実施形態の変形例では、各色に対応する第3関数データ35Aを記憶する代わりに、白色の有機発光ダイオードOLEDについての関数データのみを記憶すればよいので、簡略な構成とすることができる。更に、異なる色の光を発する複数の種類の有機発光ダイオードOLEDを、蒸着マスクなどの非常に高い精度を要求する製造手段を用いて作り分ける必要が無いので、製造プロセスが簡単となり、コストを低減できる利点がある。
◎また、上記第1および第2実施形態では、発光素子として有機発光ダイオードOLEDが採用されたが、これに限られず、例えば、無機材料によって構成される発光素子が採用されても良い。
◎なお、上記第1および第2実施形態および上記変形例をそれぞれ構成する一部の構成が、矛盾しない範囲で適宜組み合わされても良い。