JP5506013B2 - 骨粗鬆症感受性遺伝子、及び骨粗鬆症罹患リスクの測定方法 - Google Patents
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本発明は、骨密度の減少を含む疾患又は症状、例えば、骨粗鬆症の罹患リスクの遺伝的要因の有無を判定するための方法であり、本方法は、ヒトSMAD6遺伝子、ヒトTGFβR1遺伝子、ヒトSyntaxin18遺伝子、WDSOF1の遺伝子、ADAMTS1遺伝子、FAM5C遺伝子近傍、GPR98遺伝子近傍、GPR98遺伝子、SLC25A32遺伝子、CTHRC1遺伝子近傍、CTHRC1遺伝子、又はFDZ6遺伝子のいずれかに存在する遺伝子多型における遺伝子多型を見出し、これらの遺伝子多型に着目したものである。
本発明の方法において好ましく利用できる遺伝子多型の情報を、下記の表1及び表2に例示列挙する(配列番号1〜19)。表1及び表2に示される多型情報は、一塩基多型(SNP)に関するものである。表1及び2に示される遺伝子多型の中でも、配列番号1、2、7、8、9、16、18及び19の塩基配列中に示される多型が特に好ましい。また、表3は、rs755451と連鎖不平衡にある遺伝子多型を列挙している。表3にあるSNPは、すべて第15染色体にあり、染色体位置は、NW_925884.1における位置を示している。表中の、「遺伝子多型名」とは、ゲノム上の位置におけるSNP名であり、いずれも全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて確認されるアクセッション番号で示している。染色体における位置とは、特定の染色体中の位置(NW_925884.1)を示している。表中の「配列」には51塩基からなる塩基配列が表示されており、その26番目にSNP部位を表示している。[G/T]とあるのは、「G」と「T」のSNPであることを示している。
以下に、本発明の診断マーカーやマイクロアレイを利用した、遺伝子多型の検出法を例示する。なお、患者や被験者からの遺伝子サンプルの入手や調整方法については、実施例で後述する。
本発明においては、PCR法を用いた検出することもできる。PCRにより被験サンプルを増幅するには、Fidelityの高いDNAポリメラーゼ等を用いることが好ましい。プライマーは、被験サンプル中の対象SNPを増幅できるようにプライマーの任意の位置に遺伝子多型が含まれるように設計し合成する。増幅反応終了後は、増幅産物の検出を行い、多型の有無を判定する。
本発明においては、ジデオキシ法に基づく塩基配列決定法により本発明の多型を検出することもできる。塩基配列決定に用いるシークエンサーには、市販のABIシリーズ(アマシャムバイオサイエンス)等を用いることができる。
マイクロアレイは、支持体上にポリヌクレオチドプローブが固定されたものであり、DNAチップ、Gene チップ、マイクロチップ、ビーズアレイなどを含む。
TaqMan PCR法は、5′末端を蛍光物質(FAMなど)で、3′末端をクエンチャー物質(TAMRA など)で修飾したオリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)をPCR反応系に加える方法である。まず、TaqManプローブが鋳型DNAとハイブリダイゼーションし、その後、PCRプライマーからの伸長反応が起こる。そうすると、Taq DNAポリメラーゼの5′ヌクレアーゼ活性により蛍光色素結合部分が切断されて、蛍光色素が遊離し、クエンチャーの影響を受けなくなり発色する。この蛍光を検出することで特定の多型(SNP等)を同定し、ゲノムタイプを判定することができる。TaqMan PCR法で用いるアレル特異的オリゴ(TaqManプローブという)は、前記遺伝子多型情報に基づいて設計することができる。
インベーダー法は、塩基配列の標的部位においてオリゴヌクレオチドによる特異的な構造を作り、その構造を酵素クリベース等が認識し、切断することを利用している。SNPを検出する部位の周辺において、2種類のオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ)が重なり合った構造を作りながらハイブリダイズします。すなわち、標的部位において片方のオリゴ(インベーダーオリゴ)が、もう一方のオリゴの下に1塩基のみ侵入する。酵素クリベース等は、この侵入構造を認識し、はみ出した部位を切断し、フラップ断片を放出する。この放出されたフラップ断片を検出することで、多型を検出するができる。
本発明において、遺伝子多型(例えばSNP)部位を含む診断マーカーは、骨粗鬆症罹患リスク判定キットに含めることができる。
例えば、本発明のキットは、酵素を保存若しくは供給するためのもの、遺伝子多型検出を実施するために必要な反応成分を含むことができる。そのような成分としては、限定されるものではないが、本発明のオリゴヌクレオチド、酵素緩衝液、dNTP、コントロール用試薬(例えば、組織サンプル、ポジティブ及びネガティブコントロール用標的オリゴヌクレオチドなど)、標識用又は検出用試薬、固相支持体、説明書などが挙げられる。
本発明の骨粗鬆症薬、若しくはそのキットに含まれる医薬、若しくは候補品として、(1)カルシウム製剤、(2)女性ホルモン製剤(エストロゲン)、(3)活性型ビタミンD3製剤、ED−71(4)ビタミンK2製剤、(5)ビスフォスネート剤(エチドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ミノドロン酸水和物)、(6)SERM(塩酸ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、酢酸バセドキシフェン)、(7)カルシトニン製剤、(8)イプリフラボン、(9)蛋白同化ホルモン製剤(アンドロゲン、デカン酸ナンドロロン)、(10)ヒトPTH(1−34)(テリパラチド)皮下注射製剤、(11)抗RANKL抗体、デノスマブ(AMG162)、(12)ラネル酸ストロチウムなどが挙げられる。本発明では、骨粗鬆症の罹患リスクについて、遺伝子多型に関する情報を開示しているが、これを利用した医薬品等として提供してもよい。具体的には、医薬品のパッケージに用量・用法に当該遺伝子多型情報を記載することや、上記の骨粗鬆症罹患リスク判定キットをこれら医薬品とともに関連付けて、パッケージとすることが挙げられる。
本発明では、閉経後女性を対象として、ヒト遺伝子上に多数存在する一塩基置換遺伝子多型(SNP)のうち代表的な約5万個に対してGenotypingを行い、SNPと骨量との相関解析を行った。さらに、本解析により統計上有意であった、遺伝子多型に関しては対象者数を増やして、同様の検討を行った。
上記の解析方法により、日本人閉経後の女性253名の遺伝子上に多数存在する遺伝子多型のうち、約5万SNPにおけるGenotypeを決定した。その結果、ヒトSMAD6遺伝子のイントロン3に存在するSNP(rs755451)が全身骨骨量と有意に相関することが判明した(P=0.0002、図1(A))。各群間の有意差検定に関しては、スチューデントのt検定を行い、P値が0.05未満の場合を統計上有意とした。T検定は、2つの母集団がいずれも正規分布に従うと仮定した上での、平均が等しいかどうかの検定であるが、骨量はこれに従うものであるので、本検定を採用した。さらに、本解析で有意差が見出されたSNPについて、対象者数を703名まで増やし、相関解析を行った。その結果、当該SNPは、全身骨骨量と強い相関があることが判明した(図1(B))。表中のTotal BMDは、全身骨骨量を指し、値が高いほど骨量が多いことにあるが、個々人の体重及び身長の値で補正したものである。また、カッコ内は人数を指し、「AC+CC」とは、母方由来及び父方由来のゲノムが、「AC」又は「CC」のSNPである場合を指す。さらに、ヒトSMAD6遺伝子のイントロン3に存在するSNP(rs755451)と連鎖不平衡にある遺伝子多型を調べ、第15染色体に存在する遺伝子多型を同定できた(表3)。これらの遺伝子多型を用いることでも、骨粗鬆症の罹患診断をすることができる。
ヒトSMAD6遺伝子のイントロン1に存在するSNP(rs17264185)が全身
骨骨量と有意に相関することが判明した(P=0.0002、図2)。
ヒトTGFβR1遺伝子のイントロン1に存在するSNP(rs10512263)が全身骨骨量(P=0.0154、図3(A))及び腰椎骨量(P=0.0091、図3(B))と有意に強い相関することが判明した。この結果を見ると、SNP(rs10512263)は、全身骨骨量に比して、腰椎骨量に強い相関があり、診断マーカーとしてより有効なものと思われる。なお、TGFβは、骨形成因子(bonemorphogenetic protein;BMP)に関連するものと考えられている。なお、TGFβR11遺伝子は骨代謝において重要な役割をはたす液性因子TGFβに対する受容体として働く。またSMAD6はTGFβからTGFβR11を介したシグナル伝達を調節する因子である。従って、両遺伝子は骨代謝において重要な機能をはたしていると推測される。
ヒトSyntaxin18遺伝子のイントロン1に存在するSNP(rs689484)が全身骨骨量(P=0.0014、図4)と有意に強い相関することが判明した。なお、TGFβは、骨形成因子(bonemorphogenetic protein;BMP)に関連するものと考えられている。また、syntaxin18は細胞の小胞体に存在し、細胞内物質の輸送などに関与する因子であることが明らかにされており、細胞機能における重要性が示唆されている。
全身骨骨量との相関解析を行い、骨量と関係する候補遺伝子を選択する方法は、実施例1から5までの手順と同様である。DXA法にて測定した骨密度の値に関連する遺伝的要因を見出すものであるが、骨量の分布は年齢の増加や体重に影響を受けるので、これを補正するために、測定値を体重と年齢で補正したZスコアとして用いた。また、スクリーニングするSNPsは、AFFYMETRIX社のGeneChipMapping100K Setに含まれる約5万個のSNPについて、同社GeneChipMappingAssay法を用いて決定した。
本発明において、ヒトADAMTS1遺伝子に存在するSNP(rs229042)も骨量との相関が見出された(表5)。ADAMTS1遺伝子の遺伝子産物は、細胞外マトリクスに存在するaggrecanなどと結合し蛋白分解酵素として機能することが知られており、骨や軟骨代謝において重要な役割することが示唆されている。
本発明において、ヒトFAM5C遺伝子近傍に存在するSNP(rs10494622)も骨量との相関が見出された(表5)。本遺伝子に関する機能は不明である。
本発明において、ヒトGPR98近傍遺伝子に存在するSNP(rs10514346)も骨量との相関が見出された。また、GPR98の遺伝子上イントロン87に存在するSNP(rs10514345)と骨量の相関を検討したところ、このSNPも骨量と有意に相関した(表6)。GPR98遺伝子の機能は、G−protein−coupled receptorsのなかで1967アミノ酸を有する巨大タンパク質である。脳神経において高発現しているがその機能の詳細は不明である。
本発明において、ヒトSLC25A32遺伝子に存在するSNP(rs2241777、rs3133817)も骨量との相関が見出された(表4)。SLC25A32遺伝子の機能は、ミトコンドリアに存在する葉酸のトランスポーターであり、葉酸は骨代謝に重要で、葉酸の代謝に関与する酵素NTHFRが骨粗鬆症の発症と関与することが知られている。
本発明において、ヒトCTHRC1遺伝子及びヒトCTHRC1近傍遺伝子に存在するSNPs(rs3098233、rs3098230)も骨量との相関が見出された(表4)。ヒトCTHRC1遺伝子の機能は、血管損傷時に血管において高発現する遺伝子であり、高発現したマウスは骨における基質蛋白の分泌が低下し骨が折れ易くなることが知られている。
本発明において、ヒトFDZ6遺伝子に存在するSNPs(rs3736047、rs3808553)も骨量との相関が見出された(表4)。FDZ6遺伝子の機能は、骨において重要な役割を果たすWntシグナルを制御する因子であることが知られている。なお、rs3808553は、34番目のLeuをMetに変化させるSNPである。
表7〜13は、本発明で診断マーカーとなるSNPに対して連鎖不平衡にあるSNPであり、これらのSNPについてアクッセションナンバーを示した。これらの連鎖不平衡にあるSNPを用いても、診断マーカーの機能をする。
Claims (6)
- ヒトWDSOF1遺伝子のイントロン7に存在する遺伝子配列(配列番号5)であって、第8染色体における位置が99645339番目の遺伝子多型及び該遺伝子多型と連鎖不平衡にある遺伝子多型のいずれかの遺伝子多型を同定することにより、骨粗鬆症罹患のリスクを判定する方法であって、上記連鎖不平衡にある遺伝子多型が、
WDSOF1の遺伝子のイントロン10に存在する遺伝子配列(配列番号6)であって、第8染色体における位置が99655131番目の遺伝子多型、
WDSOF1の遺伝子のエクソン1に存在する遺伝子配列(配列番号7)であって、第8染色体における位置が99627708番目の遺伝子多型、
WDSOF1の遺伝子のエクソン1に存在する遺伝子配列(配列番号8)であって、第8染色体における位置が99627890番目の遺伝子多型、
WDSOF1の遺伝子のエクソン2に存在する遺伝子配列(配列番号9)であって、第8染色体における位置が99632879番目の遺伝子多型、
SLC25A32の遺伝子のエクソン7に存在する遺伝子配列(配列番号14)であって、第8染色体における位置が99612739番目の遺伝子多型、
SLC25A32の遺伝子のイントロン1に存在する遺伝子配列(配列番号15)であって、第8染色体における位置が99626596番目の遺伝子多型、および、
CTHRC1遺伝子のエクソン4に存在する遺伝子配列(配列番号16)であって、第8染色体における位置が99595146番目の遺伝子多型
からなる、上記方法。 - 下記(a)〜(i)からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドからなる骨粗鬆症の罹患診断マーカーであって、
PCR法を用いた検出おけるプライマーセットとして使用するか、
塩基配列決定法による検出におけるプライマーとして使用するか、
マイクロアレイによる検出におけるPCR増幅産物として使用するか、
TaqMan PCR法による検出におけるTaqManプローブとして使用するか、及び/又は
インベーダー法による検出における2種類のオリゴヌクレオチドとして使用する、上記診断マーカー:
(a)WDSOF1の遺伝子のイントロン7に存在する遺伝子配列(配列番号5)であって、第8染色体における位置が99645339番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(b)WDSOF1の遺伝子のイントロン10に存在する遺伝子配列(配列番号6)であって、第8染色体における位置が99655131番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(c)WDSOF1の遺伝子のエクソン1に存在する遺伝子配列(配列番号7)であって、第8染色体における位置が99627708番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(d)WDSOF1の遺伝子のエクソン1に存在する遺伝子配列(配列番号8)であって、第8染色体における位置が99627890番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(e)WDSOF1の遺伝子のエクソン2に存在する遺伝子配列(配列番号9)であって、第8染色体における位置が99632879番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(f)SLC25A32の遺伝子のエクソン7に存在する遺伝子配列(配列番号14)であって、第8染色体における位置が99612739番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(g)SLC25A32の遺伝子のイントロン1に存在する遺伝子配列(配列番号15)であって、第8染色体における位置が99626596番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(h)CTHRC1遺伝子のエクソン4に存在する遺伝子配列(配列番号16)であって、第8染色体における位置が99595146番目のヌクレオチドを含む18〜300塩基からなるポリヌクレオチド。
(i)上記(a)〜(h)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。 - 配列番号5乃至9及び14乃至16のいずれかに示す遺伝子配列を有し、いずれの配列においても塩基番号26の遺伝子多型を検出することにより骨粗鬆症の罹患リスクを判定することを特徴とする、請求項2に記載の骨粗鬆症の罹患診断マーカー。
- 下記のいずれかの遺伝子多型であれば骨粗鬆症の罹患率が高いと判定することを特徴とする、請求項2又は3に記載の診断マーカー。
(a)配列番号5の遺伝子多型が、TGアレルのうちGアレルである。
(b)配列番号6の遺伝子多型が、ACアレルのうちCアレルである。
(c)配列番号7の遺伝子多型が、ACアレルのうちCアレルである。
(d)配列番号8の遺伝子多型が、CTアレルのうちTアレルである。
(e)配列番号9の遺伝子多型が、AGアレルのうちGアレルである。
(f)配列番号14の遺伝子多型が、CAアレルのうちAアレルである。
(g)配列番号15の遺伝子多型が、AGアレルのうちGアレルである。
(h)配列番号16の遺伝子多型が、AGアレルのうちGアレルである。 - ポリヌクレオチドが支持体に固定された、骨粗鬆症の罹患診断用のマイクロアレイであって、
該ポリヌクレオチドが、請求項2に記載の(a)〜(i)からなる群から選択される少なくとも1つからなる、前記マイクロアレイ。 - 請求項2に記載の(a)〜(i)からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド及び/又は請求項5に記載のマイクロアレイのみからなる、骨粗鬆症罹患リスク判定キット。
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