JP5500961B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、成形体製造方法に関し、詳細には、回折、偏光、拡散等の光学特性を有する光学物品として使用される光学フィルム等の成形体製造方法に関する。
高分子材料は、選択できる種類が豊富であり、高分子材料を原料とした製品に多様な機能を付与できるため、近年、高分子材料を光学用途へ適用しようとする試みが盛んになされている。例えば、高分子材料で形成され一次元あるいは二次元の微細構造が内部に形成された成形体を、光制御素子や光回折素子として利用することが提案されている。
このような成形体として、高分子材料のマトリックス中に、マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体が略同一方向に配向された構造を有するフィルムが知られている。このような構造を有するフィルムは、入射角度に応じて、構造体の配置に起因した角度で光を散乱、回折させることができるので、異方性光散乱素子、異方性光回折素子等として利用されている。
このようなフィルムを、異方性光回折素子として利用するためには、柱状構造体が、配向方向と垂直な面において規則的な格子状に配置される必要がある。このような構造を有するフィルムの製造方法として、薄膜状に配置された光重合性組成物(光重合性組成物材料すなわち未反応の光重合性組成物)にフォトマスクを介して平行光を照射する工程(第1光照射ステップ)と、フォトマスクを取除いて光重合性組成物に平行光を照射し光重合性組成物の硬化を完了させて成形体(フィルム)とする工程(第2光照射ステップ)とを有する製造方法が知られている(特許文献1)。
特開2008−134630号公報
しかしながら、上記製造方法では、少なくともフォトマスクを用いる第1光照射ステップはバッチ処理で行わざるを得ないため、成形体を連続的に生産することができず、生産効率が向上させることが困難であった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、上記成形体を、連続的に製造することができる成形体製造方法を提供するものである。
本発明によれば、
光重合性組成物の硬化物からなるマトリックス中に、該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体が略同一方向に配向された構造を有する成形体の製造方法であって、
未硬化の光重合性組成物を、スペーサで所定間隔に維持されて搬送される2枚の長尺状フィルムの間に供給するステップと、
前記光重合性組成物が供給されたフィルムを搬送しながら、マスクパターンを介して前記フィルム間の光重合性組成物に光照射を行う第1光照射ステップと、
前記フィルム間の光重合性組成物に、光強度分布が略一定の平行光を照射し、前記フィルム間の光重合性組成物の硬化を完了させる第2光照射ステップと、を備え
前記第1光照射ステップが、間に前記光重合性組成物が配置された前記2枚のフィルムの搬送速度と同じ速度で回転するマスクパターンが表面に配置されたロールの表面に搬送しながら、ロールの内部に配置された光源からの前記マスクパターンを介した光照射によって行われ
ことを特徴とする成形体の製造方法が提供される。
このような構成によれば、光重合性組成物がマスクパターンを介して光照射される第1光照射ステップを連続的に行うことができるので、高分子材料のマトリックス中に、マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体が略同一方向に配向された構造を有する成形体を連続的に生産することが可能となる。
本発明の他の態様によれば、
光重合性組成物の硬化物からなるマトリックス中に、該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体が略同一方向に配向された構造を有する成形体の製造方法であって、
未硬化の光重合性組成物をスペーサで所定間隔に維持されて搬送される2枚の長尺状フィルムの間に供給するステップと、
前記光重合性組成物が供給されたフィルムを搬送しながら、マスクパターンを介して前記フィルム間の光重合性組成物に光照射を行う第1光照射ステップと、
前記フィルム間の光重合性組成物に、光強度分布が略一定の平行光を照射し、前記フィルム間の光重合性組成物の硬化を完了させる第2光照射ステップと、を備え、
前記第1光照射ステップが、間に前記光重合性組成物が配置された前記2枚のフィルムをマスクパターンが表面に配置された無端ベルト上を搬送しながら、無端ベルトの内部に配置された光源からの前記マスクパターンを介した光照射によって行われる、
ことを特徴とする成形体の製造方法が提供される。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記光源が、棒状光源であって、該棒状光源に複数枚の円盤状の光遮蔽板が、前記光源の径方向に取付けられている。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記フィルム間の光重合性組成物に到達する光の拡がり角が0.1rad以下である。
本発明によれば、上記成形体を、連続的に製造することができる成形体製造方法が提供される。
本発明の好ましい実施形態の成形体製造方法によって製造される成形体1の構成を示す模式的な斜視図である。 本発明の実施形態の成形体製造方法を実施する成形体製造装置の構成を概略的に示す図面である。 本発明の実施形態で使用されるフォトマスクの模式的な図面である。 本発明の実施形態で使用される光源の構成を示す模式的な図面である。 第1光照射装置の他の構成例を示す模式的な図面である。
以下、本発明の好ましい実施形態の成形体製造方法を図面に沿って詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態の成形体製造方法によって製造される成形体1の構成を示す模式的な斜視図である。
図1に示されているように、成形体1は、光重合性組成物の硬化物からなる薄板状のマトリックス2と、略同一方向に配向され、且つ、該配向方向と垂直な面において規則的な格子状に配置された光重合性組成物の硬化物からなる多数の柱状構造体4と、を備えた相分離構造を備えている。
マトリックス2は、10μmないし500μm程度の範囲の略均一な厚さを備えている。また、柱状構造体4は、マトリックス2とは異なった屈折率を有する。この柱状構造体4の径、ピッチ、形状は特に定められたものではないが、柱状構造体4の断面を真円形とした場合、その円の直径は80nm〜20μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜10μmであり、ピッチは120nm〜30μmが好ましく、さらに好ましくは2μm〜20μmである。
各柱状構造体4は、略同一形状を有し、その軸線が、薄板(フィルム)形状の成形体1を厚さ方向に貫通して延び、10以上のアスペクト比を有していることが好ましい。詳細には、柱状構造体4は、軸線方向の断面形状が略一定である円柱形状を有し、その軸線が同一方向となるように、即ち互いに略平行に配向され、規則的な三角格子状に配置されていることが好ましい。
本実施態様では、柱状構造体4は、その配向方向(軸線方向)が、成形体1の厚さ方向と略同一方向となるように配向されているが、成形体1の厚さ方向に対して所定角度を成すように配向されてもよい。
さらに、複数の柱状構造体4が、規則的な三角格子状に配列されているが、他の規則的なパターンで配置されていてもよいし,不規則に配置されていてもよい。例えば、正方格子等の、他の任意の格子状に配置されていてもよい。
次に、成形体1の製造方法について説明する。図2は、本実施形態の成形体製造方法を実施する成形体製造装置10の構成を概略的に示す図面である。
図2に記載されているように、成形体製造装置10は、成形体1の原料である光重合性組成物(未硬化の光重合性組成物)を支持体上に供給(塗布)する材料給装置12と、光重合性組成物が配置された支持体を搬送しながら、マスクパターンを介して支持体上の光重合性組成物に光照射を行う第1光照射装置14と、支持体上の光重合性組成物に光強度分布が略一定の平行光をさらに照射し、支持体上の光重合性組成物の硬化を完了させ成形体とする第2光照射装置16と、を備えている。
本実施形態の成形体製造装置10の材料給装置12では、成形体1の原料である流動性を有する未硬化の光重合性組成物18をディスペンサのノズル20から、一定速度でロール22、24から巻き出されて搬送される2枚の長尺状のフィルム26、28間に吐出することによって、支持体としての下方フィルム26、28上に供給している。
材料給装置12では、ニップロール30で、間に光重合性組成物18が吐出された2枚のフィルム26、28を加圧し、光重合性組成物18を所定の厚さで下方および下方フィルム(支持体)26、28に配置する。
光重合性組成物18とこれを挟持した上方フィルム28および下方フィルム26からなる積層体Lは、搬送ローラ32等によって、矢印Aで示されるように、第1光照射装置14に向けて一定速度で搬送される。
下方フィルム26は、照射装置14、16において光源側に配置されるので、光重合性組成物18に含まれる光重合開始剤の感光波長の光を90%以上透過する透明性の材料で形成されていることが好ましい。さらに、下方フィルム26は、光重合性組成物18に照射される光が、回折作用により拡がって劣化しないよう、厚さは100μm以下であることが好ましい。
そのような透明性のフィルム材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリイミド(PI)、芳香族ポリアミド、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、セロファン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、シクロオレフィン樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
上方フィルム28の光透過率は特に規定されないが、光重合性組成物18が硬化した後にソリを生じにくくするために、下方フィルム26と同じ材質、同じ厚みであることが好ましい。
2枚のフィルム26、28間の光重合性組成物18の厚みは、例えば、上方フィルム28と下方フィルム26の間にスペーサSを挟むことにより制御可能である。この際に用いるスペーサとしては、圧力により大きく変形しないものであれば何を用いてもよく、例えば、SUS製シムやプラスチックフィルム等を用いることができる。
スペーサは、厚みが10〜500μmのものが好ましく、形状は、例えば幅が0.5〜5cm程度のテープ状のものが好ましい。
上記実施形態の材料給装置12に代えて、バーコータ、スリットダイコータ、スピンコータ、円コータ、グラビアコータ、CAPコータ等を用いて支持体上に光重合性組成物を塗布する構成でもよい。この場合は、光重合性組成物が塗布された支持体を、光照射工程で不活性ガス雰囲気下に置くことが望ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などが挙げられる。尚、不活性ガスを用いる目的は酸素による重合阻害の防止であるので、酸素を含まない他の気体であれば不活性ガス以外の気体を用いることができる。
本実施形態で使用される光重合性組成物18としては、例えば、特開2008−134630号公報に示された光重合性モノマーあるいはオリゴマーの単体物、または組成物と、光重合開始剤とを含有したものが挙げられる。
光重合性組成物18には、多官能モノマーが含まれることが好ましい。このような多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリルモノマーや、ビニル基、アリル基等を含有するものが特に好ましい。
多官能モノマーの具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能のエポキシ(メタ)アクリレート、多官能のウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート、N、N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート等が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
中でも、分子内に3個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性モノマーは、重合度差による架橋密度の粗密がより大きくなりやすく、上述の柱状構造体が形成されやすくなる。
特に好ましい3個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがある。
光重合性組成物18として2種以上の多官能モノマーあるいはそのオリゴマーを使用する場合には、それぞれの単独重合体としたときに互いに屈折率が異なるものを使用することが好ましく、その屈折率差が大きいものを組み合わせることがより好ましい。
回折、偏向、拡散などの機能を高効率で得られるようにする為には屈折率差を大きくとることが必要であり、その屈折率差が0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。また、重合過程でモノマーが拡散することにより屈折率差が大きくなるので、拡散係数の差が大きい組み合わせが好ましい。
なお、3種以上の多官能モノマーあるいはオリゴマーを使用する場合は、それぞれの単独重合体の少なくともいずれか2つの屈折率差が上記範囲内となるようにすればよい。また、単独重合体の屈折率差が最も大きい2つのモノマーあるいはオリゴマーは、高効率な回折、偏向、拡散などの機能を得る為に、重量比で10:90〜90:10の割合で用いることが好ましい。
また、光重合性組成物18には、上記のような多官能モノマーあるいはオリゴマーとともに、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結合を有する単官能モノマーあるいはオリゴマーを使用してもよい。このような単官能モノマーあるいはオリゴマーとしては、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリルモノマーや、ビニル基、アリル基等を含有するものが特に好ましい。
単官能モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、フェニル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ブロモベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2、2、3、3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;スチレン、p−クロロスチレン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ビニルナフタレン等のビニル化合物;エチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート等のアリル化合物等が挙げられる。
これら単官能モノマーあるいはオリゴマーは成形体1に柔軟性を付与するために用いられ、その使用量は多官能モノマーあるいはオリゴマーとの合計量のうち10〜99質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましい。
また、光重合性組成物18には、前記多官能モノマーあるいはオリゴマーと重合性炭素−炭素二重結合を持たない化合物を含む均一溶解混合物を用いることもできる。
重合性炭素−炭素二重結合を持たない化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ナイロン等のポリマー類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランのような低分子化合物、有機ハロゲン化合物、有機ケイ素化合物、可塑剤、安定剤のような添加剤等が挙げられる。
これら重合性炭素−炭素二重結合を持たない化合物は、成形体1を製造する際に光重合性組成物18の粘度を調節し取り扱い性を良くする為や、光重合性組成物18中のモノマー成分比率を下げて、硬化性を良くする為に用いられ、その使用量は多官能モノマーあるいはオリゴマーとの合計量のうち1〜99質量%の範囲とすることが好ましく、取り扱い性も良くしつつ規則的な配列を持った柱状構造体を形成させる為には1〜50質量%の範囲がより好ましい。
光重合性組成物18に使用する光重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合を行う通常の光重合で用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ジベンゾスベロン等が挙げられる。
これら光重合開始剤の使用量は、その他の光重合性組成物の重量に対して0.001〜10質量%の範囲とすることが好ましく、成形体1の透明性を落とさないようにする為に0.01〜5質量%とすることがより好ましい。
第1光照射装置14は、前記積層体Lの幅より長い中空円筒状のロール34と、ロール34の内部に配置された光源36とを備えている。第1光照射ステップは、積層体Lがロール34の回転駆動速度と同一速度でロール34へ搬送され、ロールの内部に配置された光源からの前記マスクパターンを介した光照射によって実施される。
ロール34の基材は、ロール34の内部に配置された光源36からの光でロール34の径方向外方に配置された積層体Lを照射して光重合性組成物を光重合させることができるようにするため、光重合開始剤の感光波長を90%以上透過する材料であり、且つ光源36からの光で劣化しない基材であるのが好ましく、本実施形態では、石英ガラスが使用されている。
ロール34の表面には、図3に示されているような、孔38が規則的に配置されたマスクパターンを有するフォトマスク40が配置されている。フォトマスク40は、従来のバッチ処理による成形体製造で使用されていたフォトマスクと同様に、めっきしたクロムをエッチングする方法や、レーザー描画法等によって製造される。また、フォトマクスとして、光を通さないフィルムに印刷法、レーザー描画法等によって孔を形成したマスクパターンを有するフィルムを使用してもよい。
孔38のサイズ、配置、ピッチ、形状は特に限定されるものではないが、孔が円孔の場合、直径は80nm〜50μm、ピッチは120nm〜75μmが好ましい。また、孔38の配置は、本実施形態の六方格子に限らず他のパターンでもよい。
光重合性組成物を挟持したフィルム(積層体L)は、ロール34の外周に直接巻き付けられる。フィルム1枚で片面側に光重合性組成物が塗布される構成では、フィルム側がロール34に沿うように配置される。
光源36としては、棒状光源が好ましい。ランプの種類としては,高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。光源36が発生させる光の波長は、光重合開始剤の感光波長と合致していることが好ましい。具体的には、通常水銀ランプの365nmや、313nmの波長の光が使用される。
本実施形態では、複数枚の円盤状の光遮蔽板42が、光源36の径方向に延びるように一定間隔で光源36に取付けられている(図4)。このような構成によれば、光源36からの光のうち拡がり角が大きい光は光遮蔽板に吸収されるが、拡がり角が小さい(指向性が高い)光は、吸収されずに光遮蔽板42の間を抜けて光重合性組成物に到達する。
薄板状の光遮蔽板42を用いる場合は、隣接する光遮蔽板42の取付け間隔及び大きさが、光遮蔽板42に吸収されずに光重合性組成物に到達する光の拡がり角が0.1rad以下となるようにすることが好ましい。
光遮蔽板42の材質は、特に限定されるものではなく、ガラス、金属等が使用可能であるが、光や熱に対して耐久性がある材質が好ましい。
光遮蔽板42は、光源36から放射される光の軸方向への拡がりを抑えるために用いられるため、光を反射させないよう黒色化処理を施したものが好ましい。
第2照射装置16は、積層体Lの搬送方向下流側に設けられ、積層体L内の光重合性組成物18に、平行光源44から光強度分布が略一定の平行光Hを照射し、光重合性組成物18の硬化を完了させ、光重合性組成物が成形体(フィルム)となった積層体L2とするように構成されている。
平行光源は、例えば、点光源からの光の進行方向をレンズやミラー等を用いて揃えることにより得られる。
さらに、第2照射装置16の下流側には、第2照射ステップを終えた積層体L2を巻き取る巻取りロール46が設けられている。
次に、本実施形態の成形体製造装置10の動作について説明する。
材料給装置12で、一定速度でロール22、24から巻き出された2枚の長尺状のフィルム26、28を搬送しながら、2枚の長尺状のフィルム26、28間に、成形体1の原料である液状の光重合性組成物(未反応の光重合性組成物)18がディスペンサのノズル20から吐出され、2枚の長尺状のフィルム(支持体)26、28間に配置される。
さらに、ニップロール30によって2枚のフィルム26、28を加圧が加圧され、2枚のフィルム26、28間に挟持された光重合性組成物18が所定の厚さに調整される。
光重合性組成物18とこれを挟持した上方フィルム28および下方フィルム26からなる積層体Lは、搬送ローラ32等によって、矢印Aで示されるように、第1光照射装置14に向けて一定速度で搬送され、第1光照射装置14内においても、下流側の搬送ローラ等の作用により一定速度で搬送される。
第1光照射装置14内では、積層体Lは、下方のフィルム26を内方に向けた状態で中空円筒状のロール34の外周に沿って搬送されながら、ロール34の内部に配置された光源36からの光でフォトマスク40を介して照射される(第1光照射ステップ)。光重合性組成物18は、2枚のフィルムに挟持されているので、下方のフィルム26を介して光が照射される。この第1光照射ステップで、柱状構造体4の形成位置が定められる。
尚、光重合性組成物を挟持したフィルム(積層体L)は、ロール34の外周に直接巻き付けられる。
第1光照射ステップに必要な時間は、光重合性組成物、開始剤の種類等によって変化するが、光源の照射強度や、ロールの直径、ベルトの長さ、回転速度等により調節することが可能である。
光源36からの光の照射強度が高いほど生産速度を上げることが可能となるが、第1光照射ステップで光重合性組成物が全体的に硬化してしまうと、マトリックス2と柱状構造体4との間に有意な屈折率差が得られず、目的とする光学特性が得られない場合があるので、マトリックス2と柱状構造体4との間に有意な屈折率差が得られるように、照射強度は設定される。
具体的には、第1光照射ステップでは、光重合性組成物の硬化度が10%〜80%の範囲となるまで、より好ましくは、20%〜60%の範囲となるまで光照射を行う。
本実施形態では、光DSC法で、光重合性組成物が完全に反応し光照射してもそれ以上発熱しない状態を硬化率100%としている。そして、第1光照射ステップでは、光DSC法での発熱量から計算した硬化率が、所定の硬化度(10%〜80%)となるまで、光重合性組成物に対して、所定量の光照射を行う。
次いで、第2光照射装置16で、波長半値全幅が100nm以下であり光強度分布が略一定の平行光源44からの平行光Hが、下方のフィルム26側から、積層体Lに照射される(第2光照射ステップ)。このとき、平行光源44と積層体Lの間には、フォトマスク等は配置されていない。
この第2光照射ステップにより、第1光照射ステップで形成位置が定められた柱状構造体4の部位と、それ以外のマトリックス2の部位からなる柱状相分離構造が膜厚方向に形成され、マトリックス2と複数の柱状構造体4との間の屈折率差を高めつつ光重合性組成物の硬化が完全に終了させられる。この結果、上下のフィルム26、28間に挟持された光重合性組成物18が長尺状の成形体L2とされる。
さらに、成形体L2は、上下のフィルム26、28間に挟持された状態で巻取りロール46に巻き取られる。
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更又は変形が可能である。
例えば、図5に示されているように、マスクパターンを有するフィルム48を回転駆動可能な無端ベルト状に配置し、さらに、無端ベルト状のフィルムの内方に2本の光源50を設けることによって、第1光照射装置を構成し、フィルムを積層体Lの搬送速度と同一速度で回転させながら、光源50からマスクパターンを介して積層体Lに光を照射することによって、第1光照射ステップを行う構成でもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
フェノキシエチルアクリレート30質量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート70質量部からなる混合物に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.6質量部を溶解させ、光重合性組成物を得た。
得られた光重合性組成物を、図2に示した成形体製造装置10を用いて成形体を製造した。まず,光重合性組成物の厚みが0.2mmとなるようSUS製シムを用いて上方フィルム上に充填し、上方フィルム26と下方フィルム28とで把持してロールで搬送した。上方及び下方フィルムは、表面、裏面ともに0.05mm厚のPETを用いた。
ロール表面に配置するマスクパターンは、2μmφの光通過域が5μmピッチで六方格子状に配列したものを用いた。マスクは基材石英ガラスの厚さ10mm、ロール直径400mmのものを用いた。光源は直径20mm、長さ1500mmの高圧水銀ランプを用い、周囲に厚さ1mmの黒色処理した円盤状のSUS板を10mm間隔で配置した。SUS板の直径は300mmであった。第1の光照射工程通過後の硬化度が40%となるようロールスピードや光照射強度を調節して第1の光照射を行い、続いて、第2光照射工程で全体が完全に硬化するまで光照射を行った。具体的には,ロールスピードは1m/minとし,第1の光照射は照射強度20mW/cm2にて行った。第1の光照射工程の積算光量はおよそ800mJ/cm2であった。第2の光照射は照射エリア長1m、照射強度100mW/cm2にて行い、第2の光照射工程の積算光量はおよそ6000mJ/cm2であった。
以上の手順により得られたフィルムの光学特性を以下に示す。フィルムは内部の規則的相分離構造に起因した回折点を示し、1次回折点の合計強度が全透過光の75%であった。
1:成形体
2:マトリクス
4:柱状構造体
10:成形体製造装置
12:材料給装置
14:第1光照射装置
16:第2光照射装置
18:光重合性組成物
26:下方フィルム
28:上方フィルム
34:ロール
36:光源
40:フォトマスク
42:光遮蔽板
44:平行光源

Claims (4)

  1. 光重合性組成物の硬化物からなるマトリックス中に、該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体が略同一方向に配向された構造を有する成形体の製造方法であって、
    未硬化の光重合性組成物を、スペーサで所定間隔に維持されて搬送される2枚の長尺状フィルムの間に供給するステップと、
    前記光重合性組成物が供給されたフィルムを搬送しながら、マスクパターンを介して前記フィルム間の光重合性組成物に光照射を行う第1光照射ステップと、
    前記フィルム間の光重合性組成物に、光強度分布が略一定の平行光を照射し、前記フィルム間の光重合性組成物の硬化を完了させる第2光照射ステップと、を備え
    前記第1光照射ステップが、間に前記光重合性組成物が配置された前記2枚のフィルムの搬送速度と同じ速度で回転するマスクパターンが表面に配置されたロールの表面に搬送しながら、ロールの内部に配置された光源からの前記マスクパターンを介した光照射によって行われ
    ことを特徴とする成形体の製造方法。
  2. 光重合性組成物の硬化物からなるマトリックス中に、該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体が略同一方向に配向された構造を有する成形体の製造方法であって、
    未硬化の光重合性組成物をスペーサで所定間隔に維持されて搬送される2枚の長尺状フィルムの間に供給するステップと、
    前記光重合性組成物が供給されたフィルムを搬送しながら、マスクパターンを介して前記フィルム間の光重合性組成物に光照射を行う第1光照射ステップと、
    前記フィルム間の光重合性組成物に、光強度分布が略一定の平行光を照射し、前記フィルム間の光重合性組成物の硬化を完了させる第2光照射ステップと、を備え
    前記第1光照射ステップが、間に前記光重合性組成物が配置された前記2枚のフィルムをマスクパターンが表面に配置された無端ベルト上を搬送しながら、無端ベルトの内部に配置された光源からの前記マスクパターンを介した光照射によって行われる、
    ことを特徴とする成形体の製造方法。
  3. 前記光源が、棒状光源であって、前記棒状光源に複数枚の円盤状の光遮蔽板が、前記光源の径方向に取付けられている
    請求項1または2に記載の成形体の製造方法。
  4. 前記フィルム間の光重合性組成物に到達する光の拡がり角が0.1rad以下である、
    請求項3に記載の成形体の製造方法。
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