JP5494917B2 - 炭素質材料の製造方法、この製造方法により製造した炭素質材料、及びこの炭素質材料を有する蓄電装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献4に記載の蓄電デバイスは、正極における電気的充電過程が、低電圧領域におけるアニオンの吸着過程と高電圧領域におけるインターカレーション過程を示し、負極における電気的充電が、カチオンの吸着によって生じるように構成されている。この蓄電デバイスでは、充電過程が吸着過程とインターカレーションの間で変わるときの電圧である遷移電圧を、蓄電デバイスを使用する電子機器の使用電圧を考慮して定めることによって、利用可能な放電容量及び放電エネルギを大きくするものである。
このように構成された本発明においては、層状構造を有する炭素質材料の(002)面に適切な面積の非晶質部が複数個分散しているので、イオンのインターカレーションサイトを増大させることができる。しかもこれら非晶質部は放電後も残存しているので、この炭素質材料を蓄電装置の電極として用いた場合には、炭素質材料の非晶質部に電解質のイオンが優先的に且つ容易にインターカレートするため、炭素質材料におけるインターカレーション量を増大させることができ、蓄電装置の放電容量を向上させることができる。
本発明において、好ましくは、(002)面に垂直な面のTEM観察をしたときに、(002)面内における非晶質部の総面積の、(002)面内における非晶質部及び結晶質部の面積の合計に対する割合が、42%以上である、ことを特徴としている。
このように構成された本発明においては、層状構造を有する炭素質材料の(002)面に適切な割合の非晶質部が複数個分散し、その面積割合が42%以上にも達しているので、イオンのインターカレーションサイトを増大させることができる。そしてこの非晶質部は、放電後も残存している。したがって、この炭素質材料を蓄電装置の電極として用いた場合には、炭素質材料の非晶質部に電解質のイオンが優先的に且つ容易にインターカレートするため、炭素質材料におけるインターカレーション量を増大させることができ、蓄電装置の放電容量を向上させることができる。
このように構成された本発明においては、蓄電装置が前述の炭素質材料を活物質として有するので、前述の炭素質材料の効果と同様の効果が得られ、インターカレーション量を増大させることができるから、蓄電装置の放電容量を向上させることができる。
まず、本発明の炭素質材料を製造するために、層状構造を有する炭素質材料を用意する。ここで、炭素質材料は、本実施形態ではグラファイトを使用する。図1は、本実施形態のグラファイトの層状構造を模式的に示す断面図である。グラファイトは、(002)面に図1に示すような層状構造を有する。なお、層状構造を有する炭素質材料としては、グラファイトに限らず、層状構造を有する炭素質材料を採用できる。
以上の方法により、正極より本発明の実施形態によるグラファイトを取り出す。
図3には、本実施形態に係る蓄電装置1の構成を概略的に示す。図3において、蓄電装置1は、一対の正極2と、負極4と、正極2及び負極4の間に設けられたセパレータ材6と、正極2及び負極4の間に満たされた非水電解液8と、を備える。正極2及び負極4は、集電体10,12と、集電体10,12上に形成された導電性材料層14,16と、をそれぞれ備えている。
なお、正極2及の導電性材料層14としては、グラファイトに限らず、(002)面に複数の非晶質部が形成された層状構造を有する炭素質材料であれば、任意のものを採用できる。また、負極4の導電性材料層16としても、活性炭に限らず、表面積が大きく、カチオンを吸着させることができる炭素質材料であれば、任意のものを採用できる。
層状構造を有する炭素質材料に所定条件で充放電サイクルを行うことにより、(002)面に非晶質部Aが形成された炭素質材料を得ることができる。したがって、この炭素質材料を蓄電装置に用いると、非晶質部によってイオンのインターカレーションサイトが増大しているため、この炭素質材料にインターカレートするイオンの量を増大させることができる。これにより、蓄電装置の高容量化を実現することができる。
前述の実施形態における炭素質材料の製造方法を用いて、以下のような条件で非晶質部が形成されたグラファイトを作成した。
活物質としてのグラファイト(KS6:ロンザ社製)と、バインダとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)を9:0.5:0.5の重量比で混合し、正極を作成した。また、活物質としての市販の活性炭(AG−1:宝泉社、比表面積約2200m2/g)と、バインダとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)を9:0.5:0.5の重量比で混合し、負極を作成した。ここで、負極の活性炭の重量を、正極のグラファイトの重量の4倍とした。非水電解液として、支持塩に0.71MーTEMAPF6(トリエチルメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)を使用し、溶媒としてPC/EMCが1/2vol%のものを使用した。
以上のような方法により、正極からグラファイトを得た。
負極の活性炭の重量を、正極のグラファイトの重量の8倍とした。その他の条件は、実施例1と同じである。
負極の活性炭の重量を、正極のグラファイトの重量の10倍とした。その他の条件は、参考例1と同じである。
負極の活性炭の重量を、正極のグラファイトの重量の12倍とした。その他の条件は、参考例1と同じである。
負極の活性炭の重量を、正極のグラファイトの重量の20倍とした。その他の条件は、参考例1と同じである。
比較例として、参考例1のような充放電サイクルを行わないグラファイト(KS6)を用意した。
負極の活性炭の重量を、正極のグラファイトの重量の1倍とした。その他の条件は、参考例1と同じである。
参考例1及び実施例1、並びに比較例2のグラファイトの(002)面におけるTEM観察を行い、グラファイトに形成された非晶質部の観察を行った。
図4は、上記参考例1で得たグラファイトの(002)面のTEM写真像である。図4に示すように、グラファイトの層状構造内には、層状構造が乱れて乱層構造となって、層がぼやけて観察される部分が複数個分散して存在しており、これらの部分を非晶質部と定義した。TEM観察では、この面内において、幅5nm、長さ10nmの領域Bを選択し、この領域B内に形成された非晶質部を目視で特定し、これらの非晶質部の個数と寸法を測定した。なお、図4においては、寸法等を特定し易くするため、非晶質部を太線で囲った。
これより、充放電サイクル時の正極(グラファイト):負極(活性炭)の重量比が大きいほど、非晶質部の数と総面積が向上し、グラファイトの表面積及び全細孔容積が増加することが確認できた。
次に、参考例1及び実施例1、並びに比較例1及び2のグラファイトを用いて、ピーク強度(ピーク強度面積)のピーク強度比を測定した。標準物質として市販試薬のMgOを用い、グラファイト:MgOを2:1の割合で混合したものを試料として用いた。
参考例1,実施例1,比較例1,2の各試料の解析各26.5°(2θ)のピークとMgOの45°のピークを用いて、ピーク強度比を求めた。ここで、ピーク強度比は、MgOのピーク強度が同じになるように乗じたときのグラファイトのピーク強度を求め、比較例1のピーク強度と比較することにより求めた。
以上より、充放電サイクル時の正極:負極の重量比が大きいほど、正極のグラファイト中に非晶質部がより多く形成されることが確認できた。
参考例1及び2、実施例2及び3、並びに比較例2のグラファイトを作成する際の充放電サイクルにおいて、充放電容量を測定した。
図7には、参考例1及び2、実施例2及び3、並びに比較例2のグラファイトを作成する際の充放電サイクル時の充放電容量を示す。図7に示すように、比較例2のグラファイトを作成する際の充放電サイクルの場合よりも、参考例1及び2、実施例2及び3のグラファイトを作成する際の充放電サイクルが、充電容量が増加した。これは、比較例2のグラファイトの作成方法では、正極の容量を十分に活かすことができないからであると考えられる。このため、アニオンがインターカレーションするサイト(非晶質部)が十分に形成されない。
一方、参考例1及び2、実施例2及び3では、この順で充電容量が増大した。これは、充電中のインターカレーションが促進され、正極の容量が増加し、形成される非晶質部が増大したからだと考えられる。
以上より、充放電サイクル時の正極:負極の重量比が大きいほど、充電容量が増加し、即ち正極のグラファイト中に非晶質部がより多く形成されていることが確認できた。
参考例1及び実施例3、並びに比較例2のグラファイトを作成する際の充放電サイクル中において、充電過程における充電電圧に対するグラファイトの層間距離を調査するため、充電過程における構造変化が可能なin−situ XRD測定を実施した。ここで、一般的にステージ構造は、化学種の挿入層にはさまれた黒鉛層の枚数nによって、1枚の場合はステージ1、2枚の場合はステージ2と称し、ステージ2→ステージ1となるにしたがってイオンのインターカレート量が増え、蓄電量が増加するという効果が得られる。また、XRD測定によって得られた、(002)面の回折ピーク強度とd値は、結晶度や(002)面の平均値として算出される層間距離の情報を提供する。非晶質部の形成に関しては、(002)面の回折ピークは正極:負極の重量比が大きくなると共に減少している。したがって、(002)面の一部に非晶質部が形成されていることは図4のTEM写真と併せて考えると確実であると云える。ここで、グラファイト内の非晶質部の形成の有無及び層間距離の拡大と、インターカレーション量に関連があることが推察される。即ち、本発明は非晶質部が増加することと層間距離が拡がることとが相俟って、単に層間距離が拡がる効果に止まらず、アニオンが非晶質部に対して優先的にインターカレートしやすくなって蓄電量が増加するということが云える。
実施例3及び比較例1のグラファイトを用いて、蓄電装置を作成し、蓄電装置の充電容量及び放電容量を測定した。
蓄電装置の正極には、活物質として実施例3及び比較例1のグラファイトをそれぞれ用い、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び導電材としてアセチレンブラック(AB)を用いた。負極には、活物質として活性炭(AG1)を用い、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び導電材としてアセチレンブラック(AB)を用いた。正極:負極の重量比を1:4とした。電解液には、支持塩として1M−nBPPF6を用い、溶媒としてPC:EMCが1.2容量%のPC/EMCを用いた。
以上より、本発明の炭素質材料を用いることにより、蓄電装置の充電容量を向上させることができることが確認できた。
2 正極
4 負極
8 非水電解液
Claims (6)
- 層状構造を有するグラファイトよりなる炭素質材料を電極板表面に被覆して正極を準備する工程と、
前記正極の前記炭素質材料の質量に対して10倍以上の質量であって比表面積が2000m 2 /g以上の活性炭を電極板表面に被覆して負極を準備する工程と、
前記正極の前記炭素質材料の層間にインターカレーション可能なアニオンを含む非水電解液中に前記正極及び負極を対向させる工程と、
充電時の充電電圧を2.25Vより大きく3.5V以下として、少なくとも1回の充放電サイクルを行わせる電圧印加工程と、を含む、
ことを特徴とする炭素質材料の製造方法。 - 請求項1に記載の炭素質材料の製造方法により製造した、前記正極から取り出され、且つ当該炭素質材料の(002)面に垂直な面のTEM観察をしたときに、非晶質部が複数個分散しており、前記TEM観察を基に算出した前記非晶質部の平均面積が1.91nm2以上である、
ことを特徴とする炭素質材料。 - 請求項2に記載の炭素質材料であって、
前記(002)面に垂直な面のTEM観察をしたときに、前記(002)面内における前記非晶質部の総面積の、前記(002)面内における前記非晶質部及び結晶質部の面積の合計に対する割合が、42%以上である、
ことを特徴とする炭素質材料。 - 請求項2または請求項3に記載の炭素質材料を活物質として有する、蓄電装置。
- 層状構造を有するグラファイトよりなる炭素質材料を電極板表面に被覆して正極を準備する工程と、
前記正極の前記炭素質材料の質量に対して10倍以上の質量であって比表面積が2000m 2 /g以上の活性炭を電極板表面に被覆して負極を準備する工程と、
前記正極の前記炭素質材料の層間にインターカレーション可能なアニオンを含む非水電解液中に前記正極及び負極を対向させる工程と、
充電時の充電電圧を2.25Vより大きく3.5V以下として、少なくとも1回の充放電サイクルを行わせる電圧印加工程と、を含んだ製造方法により製造され、
前記正極から取り出され、且つ当該炭素質材料の(002)面に垂直な面のTEM観察をしたときに、非晶質部が複数個分散しており、前記TEM観察を基に算出した前記非晶質部の平均面積が1.91nm 2 以上であるグラファイトを正極活物質として、
活性炭を負極活物質とし、
n−BPPF 6 (1−n−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(C 9 H 14 F 6 NP)を電解質として含む、ことを特徴とする蓄電装置。 - 請求項5に記載の蓄電装置であって、
前記正極活物質であるグラファイトは、前記(002)面に垂直な面のTEM観察をしたときに、前記(002)面内における前記非晶質部の総面積の、前記(002)面内における前記非晶質部及び結晶質部の面積の合計に対する割合が、42%以上である、ことを特徴とする蓄電装置。
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