以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、例えば、酸成分や酸クロライド成分とアミン成分との反応で得られるアミン法、酸成分とイソシアナート成分との反応で得られるイソシアナート法などの通常の方法により合成される。従って本発明で言う「アミン成分」とは対応する「ジイソシアネート成分」を包含する。なお、反応時の重合安定性等の観点からイソシアネート法により合成することが好ましい。
本発明のポリアミドイミド樹脂の合成に用いられる酸成分としては、全酸成分100モル%に対して、無水トリメリト酸40〜80モル%、ならびにアルキレングリコールのビスアンヒドロトリメリテートおよび/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸20〜60モル%である。無水トリメリト酸が40モル%未満では、耐熱性が低く、80モル%を超えると分解温度と軟化温度との温度差が小さくなる傾向にある。酸成分として、無水トリメリト酸を、45〜75モル%含有すると、耐熱性と軟化温度のバランスが良く、溶融成形において特に好ましい。
酸成分として、無水トリメリト酸と共にアルキレングリコールのビスアンヒドロトリメリテートおよび/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸20〜60モル%を用いることが、耐熱性と軟化温度を調整する上で好ましい。ここで、アルキレングリコールのビスアンヒドロトリメリテートとしては、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ジエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなどが挙げられる。これらの中では、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが耐熱性の上で特に好ましい。
エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートは、通常エチレングリコールと無水トリメリト酸の反応により得られる。従って、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートには、原料成分やエチレングリコールモノアンヒドロトリメリテート、エチレングリコールモノトリメリテート、エチレングリコールビストリメリテート等の混合物として入手が可能である。ここで本発明のポリアミドイミド樹脂を得るための原料としてのエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートは、該成分が90〜97%含まれているものを用いることが好ましい。エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートの純度が90%未満では低分子量のポリアミドイミド樹脂しか得られず、ポリアミドイミド樹脂が脆くなることがある。一方、純度が97%を越えるものは精製工程に起因するコストが高い上に、成形体の伸度が低下する傾向にある。不純物が適量含まれることにより成形品の物性が向上する理由は不明であるが、不純物として含まれるエチレングリコールモノトリメリテートが共に反応することによって、ポリアミドイミド樹脂が柔軟になるためと推定される。
本発明に用いられる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸としてはシス構造体とトランス構造体の混合物であることが好ましい。特に、シス構造体が30%以上であることが好ましく、更に好ましくは40%以上である。トランス構造体が70%以上になると軟化点が高くなり、溶剤溶解性も低下することから重合時に分子量が上がりにくく、得られるポリアミドイミド樹脂は脆くなる傾向にあるからである。
この他に、酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4´−ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリト酸、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3´,4,4´−ジフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸、前記多価カルボン酸の酸クロリド、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4´−オキシジフタル酸無水物などを、上記の範囲を満足する範囲で共重合してもよい。
一方、アミン成分としては、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、3,3´−ジメチルビフェニル−4,4´−ジアミン及びこれらのジイソシアネートから選ばれた1種又は1種以上の組み合わせが使用される。これらの中で、アミン成分として単独で用いられる場合は、4,4´−ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアナート)、イソホロンジアミン(ジイソシアナート)が好ましく、3,3´−ジメチルビフェニル−4,4´−ジアミン(ジイソシアネート)は10〜60モル%を用いて、残りを他のアミン(イソシアナート)と共重合して使用されることが好ましい。この他ジアミン成分としてジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,3´−ジクロロジフェニル−4,4´−ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン及びこれらのジイソシアネートを共重合モノマーとして使用してもよい。
また、上記の酸成分やイソシアナート成分の他に、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、オルトクロロパラフェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、3,4´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,4´−ジアミノベンゾフェノン、2,2´−ビス(アミノフェニル)プロパン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、p−キシレンジアミン等のジアミン(ジイソシアネート)が50モル%未満共重合されてもよい。
これらの酸成分とジアミン(ジイソシアナート)成分の組み合わせの中でも特には、酸成分として、全酸成分100モル%に対して、無水トリメリト酸40〜70モル%とシクロヘキサンジカルボン酸60〜30モル%、ジアミン(ジイソシアネート)成分として全アミン成分100モル%に対して、イソホロンジアミン(ジイソシアナート)を50モル%以上からなるポリアミドイミド樹脂は、無色透明性に優れ顔料により着色して使用される外装部品として用いる場合に特に好ましい。
また、酸成分として、無水トリメリト酸50〜75モル%とエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート50〜25モル%を組み合わせたポリアミドイミド樹脂は、軟化温度と耐熱性のバランスが非常に良い。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、溶液中、固相中いずれにおいても重合が可能であるが、汎用性の観点から溶液重合が好ましい。本発明のポリアミドイミドを合成する際に使用する溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチル尿素、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルイミダゾリルジノン等の高沸点極性溶媒の単独又は混合溶媒を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、上記溶媒中、50〜250℃、好ましくは80〜230℃で攪拌することにより合成されるが、反応を促進するためにトリエチルアミン、ルチジン、ピコリン、トリエチレンジアミン等のアミン類、リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、リチウムエチラート、ナトリウムエチラート、マグネシウムエチラート、カリウムブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物、あるいはコバルト、チタニウム、スズ、亜鉛等の金属、半金属化合物等の触媒存在下に行ってもよい。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、対数粘度(N−メチルピロリドン溶液中、25℃、ポリマー濃度0.5g/100mlで測定)が、0.30〜0.90dl/gである。溶融成形時の流動性と物性バランスからこの範囲が好ましい。0.30dl/g未満では、得られた成形品が脆く工業用部品として使用が制限されるおそれがある。また0.90dl/gを超えると、溶融体の流動性が不足するため、成形性が低下し、本発明の目的のひとつである部品の薄肉化に制限が生じることがある。ポリアミドイミド樹脂の対数粘度を調整する手段としては、例えば反応成分の当量比、添加順序、反応時間や反応温度等を制御する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、上述の溶液重合の後、固形樹脂として取り出す必要がある。例えば、そのまま溶剤を蒸発乾燥しても良いが、後の成形時の安定性等を考慮すると、溶液を水等の貧溶剤中へ投入して凝固させて、ろ過で固形樹脂を取り出し、乾燥する手法を用いることが好ましい。乾燥後のポリアミドイミド樹脂は粉砕して粉末状としても良いし、溶融混練によりペレット化しても良い。貧溶剤としては水、グリコール類、セルソルブ類、アルコール類等を使用することが出来る。
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、有機溶剤に溶解するものが好ましい。用いる有機溶剤としては、例えば従来より用いられているN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド等の溶解力の大きな極性溶剤有機溶剤が用いることができるが、N−メチルピロリドン等の含窒素系極性溶剤等にしか溶解しないイミド樹脂は吸湿性による白化等の問題があり、保存安定性が不十分である。この為、この樹脂を用いて得られた塗膜(フィルム)は本来のイミド樹脂の有する強靭な塗膜や優れた電気特性等得られないという問題が生じる。よってガンマブチロラクトン(γーブチロラクトン)等の比較的弱い溶解力の有機溶剤に可溶なイミド樹脂がより好ましい。
また本発明で用いるポリイミド樹脂(A)としては、常温付近、例えば、10〜30℃で溶解するポリイミド樹脂が好ましいが加温、例えば、100〜150℃にて溶解する結晶性があるイミド樹脂も使用することが可能である。中でも、塗膜を形成させる作業性が良好となることから10〜120℃で溶解性のあるイミド樹脂がより好ましい。
本発明においては、本発明で用いるポリイミド樹脂(A)が有機溶剤に溶解するか否かの判定は、有機溶剤に本発明のポリイミド樹脂濃度を10質量%となるように加え、25℃で7日間時間静置した後、目視にて外観を観察することにより行うことができる。
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)はガンマブチロラクトンに溶解するポリイミド樹脂が保存安定性に優れるポリイミド樹脂となることから好ましく、ガンマブチロラクトンに25℃で10質量%となるように溶解したときにガンマブチロラクトンに可溶であるポリイミド樹脂が好ましい。ガンマブチロラクトンに溶解するポリイミド樹脂を得るには、例えば、後述するポリイミド樹脂の製造方法により得る事ができる。
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は線状の構造を有するポリイミド樹脂でも良いし、分岐状の構造を有するポリイミド樹脂でもよい。また、共重合成分としてポリエステル変性したポリエステルイミドやウレタン変性したポリウレタンイミドの構造を有していても良い。
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)の末端の構造としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸の無水物、イソシアネート基、アミン基等の構造が挙げられる。末端の構造としては、本発明のポリイミド樹脂自体の安定性や、有機溶剤や他の樹脂との配合後の安定性が良好なことからカルボン酸やその無水物の構造が好ましい。末端構造がカルボン酸やその無水物の構造のときは、酸価は、固形分酸価で1〜50が取り扱いやすいポリイミド樹脂となり、機械強度と寸法安定性に優れるフィルムや成型品が得られることから好ましい。
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)の分子量は、取り扱いやすいポリイミド樹脂となり、機械強度と寸法安定性に優れるフィルムや成型品が得られることから1000〜200000が好ましく、2000〜100000がより好ましい。分子量は、GPCや末端の官能基の定量で測定することが可能である。
本発明で用いるホウ素化合物(B)は下記一般式(b1)〜(b3)からなる群から選ばれる一種以上のホウ素化合物である。このような構造を有するホウ素化合物を選択することにより特に寸法安定性に優れ、難燃性、高温での耐熱分解性、寸法安定性、機械物性に優れる特性を有する硬化物を得る事ができる。このような特性を有する硬化物が得られる理由としては、イミド部位もしくはアミド部位がホウ素部位と錯形成するためであると本発明の発明者は考えている。
(式中R
1はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
(式中R
2は、それぞれ独立して水素、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。Yは含窒素複素環化合物を表す。)
(式中R
3はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。Zは含窒素複素環化合物を表す。)
含窒素複素環化合物としては、例えばピリジン、ピロール、イミダゾールを代表とする各種イミダゾール化合物類、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリダジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、ピリシジン等例示することが可能である。
前記(b2)で表される化合物においてYはピリジンが好ましい。また、前記(b3)で表される化合物において(Z)はイミダゾリウム塩であることが好ましい。
前記(b1)で表される化合物としては、例えば、R1が水素原子、メチル基、エチル基等で表される環状ホウ素化合物で、例えば、トリス(フェニルホウ酸)無水物やトリス(メチルフェニルホウ酸)無水物などが挙げられる。
前記(b2)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホウ素のピリジン塩、トリ(モノメチルフェニル)ホウ素のピリジン塩、トリフェニルホウ素のピラゾール塩等が挙げられる。
前記(b3)で表される化合物としては、例えば、テトラフェニルホウ素のイミダゾール塩としてテトラフェニルホウ素の2エチル−4−メチル−イミダゾール塩、テトラメチルフェニルホウ素の2エチル−4−メチル−イミダゾール塩等が挙げられる。
ホウ素化合物(B)の中でも式(b2)及び(b3)で表されるホウ素化合物が溶解性に優れる樹脂組成物が得られ、機械物性にも優れる硬化物が得られることから好ましい。式(b2)で表されるホウ素化合物の中でもトリフェニルホウ素のピリジン塩がより好ましく、式(b3)で表されるホウ素化合物の中でもテトラフェニルホウ素の2エチル−4−メチル−イミダゾール塩がより好ましい。
前記ポリイミド樹脂(A)とホウ素化合物(B)の組成物配合割合としては、ポリイミド樹脂(A)固形分合計100質量部に対して0.5〜30質量部が好ましい。中でも0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製するには、例えば、前記ポリイミド樹脂(A)とホウ素化合物(B)を単に混合しても良いし、混合後、加熱して溶解してもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物としては、ホウ素化合物(B)が溶解している方が好ましい。ホウ素化合物(B)を溶解させるには、例えば、ポリイミド樹脂(A)とホウ酸および/またはホウ素化合物(B)とを混合後、50〜200℃、好ましくは80〜180℃で1分〜60分攪拌すればよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物にはホウ素化合物(B)以外においてもホウ酸および/またはホウ酸エステルなどのホウ素化合物を併用することが可能である。このような化合物としては、例えば、ホウ酸;トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリブチルボレート、トリn−オクチルボレート、トリ(トリエチレングリコールメチルエーテル)ホウ酸エステル、トリシクロヘキシルボレート、トリメンチルボレート等のトリアルキルホウ酸エステルに代表される直鎖脂肪族系ホウ酸エステル;トリo−クレジルボレート、トリm−クレジルボレート、トリp−クレジルボレート、トリフェニルボレート等の芳香族系ホウ酸エステル、トリ(1,3−ブタンジオール)ビボレート、トリ(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)ビボレート、トリオクチレングリコールジボレートなどのホウ素原子を2個以上含み、かつ、環状構造を含むホウ酸エステル;ポリビニルアルコールホウ酸エステル、へキシレングリコール無水ホウ酸等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物にホウ素化合物(B)以外の化合物を加える場合、保存安定性が良好な熱硬化性樹脂組成物が得られ、且つ、寸法安定性に優れる硬化塗膜が得られることからホウ酸、直鎖脂肪族系ホウ酸エステルが好ましい。直鎖脂肪族系ホウ酸エステルの中でも、炭素原子数が4〜20のトリアルキルホウ酸エステルが好ましく、中でも、トリブチルボレート(ホウ酸トリブチル)が好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に、その他の熱硬化性樹脂成分を添加することができる。具体的には、例えば、エポキシ樹脂(D)、イソシアネート化合物、シリケート、およびアルコキシシラン化合物、メラミン樹脂、等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のエポキシ基を有していることが好ましい。こうしたエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型ノボラック等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;2,2′,6,6′−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂やこれら芳香族系エポキシ樹脂の水素添加物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のごときヘテロ環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、芳香族系エポキシ樹脂が、硬化塗膜の機会物性に優れる熱硬化性ポリイミド樹脂組成物が得られることから好ましく、中でもノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
前記本発明で用いるポリイミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(D)との配合量は、樹脂分の質量比として(A)/(D)が1/50から50/1の割合で使用することができ、さらに好ましくは、1/10から10/1である。
前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のイソシアネート化合物、脂肪族系のイソシアネート化合物および脂環族系のイソシアネート化合物等が使用できる。好ましくは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物も使用可能である。
上述のアルキルアルコキシシランとしては、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
前記アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等が挙げられる。
前記ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジプロポキシシラン、メチルフェニルジブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
また、アルキルアルコキシシランの縮合物も使用可能であり例えば、前記したアルキルトリアルコキシシランの縮合物や、ジアルキルジアルコキシシランの縮合物等が挙げられる。
前記メラミン樹脂としては、例えば、メラミンやベンゾグアナミン等のトリアジン環含有のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応により得られるメチロール化物の一部乃至全部をアルコール化合物との反応により得られるアルコキシ化メラミン樹脂を使用することができる。ここで用いるアルコール化合物としては、炭素原子数が1〜4程度の低級アルコールが使用することができ具体的には、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロール化メラミン樹脂等使用することができる。分子構造としては、完全にアルコキシ化されても良く、メチロール基が残存していても良く、さらにはイミノ基が残存していても良い。
このアルコキシ化メラミン樹脂は、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、架橋成分としての耐熱性や物性の改良以外にもホウ酸および/またはホウ酸エステル等の添加した場合の経時析出防止効果があり、熱硬化性樹脂組成物としての安定性を改良する。
前記アルコキシ化メラミン樹脂の樹脂構造としては、メトキシメチロール化メラミン樹脂がポリイミド樹脂との相溶性と硬化時の硬化性が良好となることから好ましく、さらに好ましくは、メトキシ化率80%以上のメトキシメチロール化メラミン樹脂がより好ましい。
また、樹脂構造としては、自己縮合して多核体であっても良い。この時の重合度は相溶性や安定性の面で1〜5程度が好ましく、さらに1.2〜3程度がより好ましい。
前記アルコキシ化メラミン樹脂の数平均分子量としては、100〜10000のものが使用できる。好ましくは、300〜2000がポリイミド樹脂との相溶性と硬化時の硬化性の面で好ましく、さらに400〜1000がより好ましい。
前記アルコキシ化メラミン樹脂としては、メラミンやベンゾグアナミン、ホルマリン及びアルコールを同時に仕込んで反応させても、メラミンやベンゾグアナミンとホルマリンを予め反応させてメチロール化メラミン化合物を得てからアルコール化合物とのアルコキシ化を行っても良い。
アルコキシ化メラミン樹脂の市販品としては、例えば、メトキシメチロール化メラミン樹脂としては、具体的には、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル300、301、303、305等が挙げられる。また、メチロール基含有のメトキシメチロール化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル370、771等が挙げられる。イミノ基含有メトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、三井サイテック(株)製の商品サイメル325、327、701、703、712等が挙げられる。メトキシ化ブトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル232、235、236、238、266、267、285等が挙げられる。ブトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品ユーバン20SE60等が挙げられる。
アルコキシ化メラミン樹脂の使用量としては、機械物性と高TGの優れることから、前記ポリイミド樹脂(A)とホウ素化合物(B)の合計100質量に対して1〜80質量部、好ましくは1〜50質量部、1〜30質量部が好ましい。
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物にはポリエステル、フェノキシ樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリアリレーン樹脂等のバインダー樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルコキシシラン系硬化剤、多塩基酸無水物、シアネート化合物等の硬化剤あるいは反応性化合物やメラミン、ジシアンジアミド、グアナミンやその誘導体、イミダゾール類、アミン類、水酸基を1個有するフェノール類、有機フォスフィン類、ホスホニュウム塩類、4級アンモニュウム塩類、光カチオン触媒等の硬化触媒や硬化促進剤、さらにフィラー、その他の添加剤として消泡材、レベリング剤、スリップ剤、ぬれ改良剤、沈降防止剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等添加することも可能である。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて、種々の充填材、有機顔料、無機顔料、体質顔料、防錆剤等を添加することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
前記充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化けい素酸粉、微粒状酸化けい素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルムニウム、雲母、アルミナ等が挙げられる。
充填材としては、各種粒子径のものが使用可能であり、本樹脂やその組成物の物性を阻害しない程度に添加することが可能である。かかる適正な量としては、質量で5〜80%程度の範囲であり、好ましくは均一に分散してから使用することが好ましい。分散方法としては、公知のロールによる分散やビーズミル、高速分散等により行うことが可能であり、粒子表面を予め分散処理剤で表面改質しても良い。
前記有機顔料としては、アゾ顔料;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。
また、その他の着色、防錆、体質顔料のいずれも使用することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は塗工や成形物とした後、100〜300℃で加熱することで乾燥あるいは硬化させることができる。
前記塗膜の形成方法で用いる基材は特に制限無く用いることができる。基材としては、例えば、プラスチック、金属、木材、ガラス、無機材、およびこれら複合材料等が挙げられる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、フレキシブル回路基板の製造用として好適な形態である、樹脂及びその組成物層(A層)及び支持体フィルム(B層)からなるフィルム(接着フィルム)の形態としても使用することができる。
接着フィルムは、種々の方法に従って、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体フィルムにこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
支持体フィルム(B層)は、接着フィルムを製造する際の支持体となるものであり、フレキシブル回路基板の製造において、最終的には剥離または除去されるものである。支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、更には離型紙や銅箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、銅箔を支持体フィルムとして使用する場合は、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより除去することができる。支持フィルムはマット(mat)処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよいが、剥離性を考慮すると離型処理が施されている方がより好ましい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。
ワニスを調製するための有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合が通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、通常80〜120℃で3〜13分程度乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
樹脂組成物層(A層)の厚さは通常5〜500μmの範囲とすることができる。A層の厚さの好ましい範囲は接着フィルムの用途により異なり、ビルドアップ工法により多層フレキシブル回路基板の製造に用いる場合は、回路を形成する導体層の厚みが通常5〜70μmであるので、層間絶縁層に相当するA層の厚さは10〜100μmの範囲であるのが好ましい。
A層は保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムはラミネートの際に剥離される。保護フィルムとしては支持フィルムと同様の材料を用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜40μmの範囲である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる接着フィルムは特に多層フレキシブル回路基板の製造に好適に使用することができる。以下に、多層フレキシブル回路基板を製造する方法について説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる接着フィルムは真空ラミネーターにより好適にフレキシブル回路基板にラミネートすることができる。ここで使用するフレキシブル回路基板は、主として、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ポリアミドイミド基板、液晶ポリマー基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)はもちろん、回路と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面が回路形成されている多層フレキシブル回路基板を更に多層化するために使用することもできる。なお回路表面は過酸化水素/硫酸、メックエッチボンド(メック(株)社製)等の表面処理剤により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、日立テクノエンジニアリング(株)製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
ラミネートにおいて、接着フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、接着フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。ラミネートの条件は、接着フィルム及び回路基板を必要によりプレヒートし、圧着温度を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2とし、空気圧20mmHg以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
接着フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却し支持体フィルムを剥離する。次いで、回路基板にラミネートされた熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。なお支持体フィルムが離型処理やシリコン等の剥離層を有する場合は、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化後あるいは加熱硬化及び穴開け後に支持体フィルムを剥離することもできる。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物である絶縁層が形成された後、必要に応じて回路基板にドリル、レーザー、プラズマ、又はこれらの組み合わせ等の方法により穴開けを行いビアホールやスルーホールを形成してもよい。特に炭酸ガスレーザーやYAGレーザー等のレーザーによる穴開けが一般的に用いられる。
次いで絶縁層(熱硬化性樹脂組成物の硬化物)の表面処理を行う。表面処理はデスミアプロセスで用いられる方法を採用することができ、デスミアプロセスを兼ねた形で行うことができる。デスミアプロセスに用いられる薬品としては酸化剤が一般的である。酸化剤としては、例えば、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて処理を行うのが好ましい。酸化剤で処理する前に、膨潤剤による処理を行うこともできる。また酸化剤による処理の後は、通常、還元剤による中和処理が行われる。
表面処理を行った後、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成する。導体層形成は無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で実施することができる。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。サブトラクティブ法の場合、無電解銅メッキ層の厚みは0.1乃至3μm、好ましくは0.3乃至2μmである。その上に電気メッキ層(パネルメッキ層)を3乃至35μm、好ましくは5乃至20μmの厚みで形成した後、エッチングレジストを形成し、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより導体パターンを形成した後、エッチングレジストを剥離することにより、回路基板を得ることが出来る。また、セミアディティブ法の場合には、無電解銅メッキ層の厚みを0.1乃至3μm、好ましくは0.3乃至2μmで無電解銅メッキ層を形成後、パターンレジストを形成し、次いで電気銅メッキ後に剥離することにより、回路基板を得ることができる。
支持体フィルムを耐熱樹脂層(耐熱樹脂フィルム)で置き換えた形態のフィルム、すなわち、本発明の熱硬化性組成物層(A層)及び耐熱樹脂層(C層)からなるフィルムは、フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。本発明の熱硬化性樹脂組成物層(A層)、耐熱樹脂層(C層)及び銅箔(D層)からなるフィルムも同様にフレキシブル回路基板のベースフィルムとして使用できる。この場合ベースフィルムはA層、C層、D層の順の層構成を有する。以上のようなベースフィルムでは、耐熱樹脂層は剥離されずに、フレキシブル回路基板の一部を構成することとなる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層(A´層)が耐熱樹脂層(C層)上に形成されたフィルムは片面フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。また、A´層、C層及びA´層の順の層構成を有するフィルム、及びA´層、C層及び銅箔(D層)からなり、A´層、C層及びD層の順の層構成を有するフィルムも同様に両面フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。
耐熱樹脂層に用いられる耐熱樹脂は、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマーなどを挙げることができる。特に、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が好ましい。またフレキシブル回路基板に用いる特性上、破断強度が100MPa以上、破断伸度が5%以上、20〜150℃間の熱膨張係数が40ppm以下、およびガラス転移温度が200℃以上又は分解温度が300℃以上である耐熱樹脂を用いるのが好ましい。
このような特性を満たす耐熱樹脂としては、フィルム状で市販されている耐熱樹脂を好適に用いることができ、例えば、宇部興産(株)製ポリイミドフィルム「ユーピ レックス−S」、東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム「カプトン」、鐘淵化学工業(株)製ポリイミドフィルム「アピカル」、帝人アドバンストフィルム(株)製「アラミカ」、(株)クラレ製液晶ポリマーフィルム「ベクスター」、住友ベークライト(株)製ポリエーテルエーテルケトンフィルム「スミライトFS−1100C」等が知られている。
耐熱樹脂層の厚さは、通常2〜150μmであり、好ましくは10〜50μmの範囲とするのがよい。耐熱樹脂層(C層)は表面処理を施したものを用いてもよい。表面処理としては、マット(mat)処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の乾式処理、溶剤処理、酸処理、アルカリ処理等の化学処理、サンドブラスト処理、機械研磨処理などが挙げられる。特にA層との密着性の観点から、プラズマ処理が施されているのが好ましい。
絶縁層(A´)と耐熱樹脂層(C)からなる片面フレキシブル回路基板用のベースフィルムは以下のようにして製造することができる。まず、前述した接着フィルムと同様に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、耐熱樹脂フィルム上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化性樹脂組成物層を形成させる。有機溶剤、乾燥条件等の条件は前記接着フィルムの場合と同様である。樹脂組成物層の厚さは5〜15μmの範囲とするのが好ましい 。
次に熱硬化性樹脂組成物層を加熱乾燥させ、熱硬化性樹脂組成物の絶縁層を形成させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
絶縁層(A´層)、耐熱樹脂層(C)層及び銅箔(D層)の3層からなる両面フレキシブル回路基板用フィルムのベースフィルムの製造は、耐熱樹脂層(C層)と銅箔(D層)よりなる銅張積層フィルム上に樹脂組成物を層形成し、上記と同様にして製造すればよい。銅張積層フィルムとしては、キャスト法2層CCL(Copper-clad laminate)、スパッタ法2層CCL、ラミネート法2層CCL、3層CCLなどが挙げられる。銅箔の厚さは12μm、18μmのものが好適に使用される。
市販されている2層CCLとしては、エスパネックスSC(新日鐵化学社製)、ネオフレックスI<CM>、ネオフレックスI<LM>(三井化学社製)、S´PERFLEX(住友金属鉱山社製)等が挙げられ、また市販されている3層CCLとしては、ニカフレックスF−50VC1(ニッカン工業社製)等が挙げられる。
絶縁層(A´層)、耐熱樹脂層(C層)及び絶縁層(A´層)の3層からなる両面フレキシブル回路基板用フィルムのベースフィルムの製造は以下のようにして行うことができる。まず前述した接着フィルムと同様に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体フィルム上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させる。有機溶剤、乾燥条件等の条件は前記接着フィルムの場合と同様である。樹脂組成物層の厚さは5〜15μmの範囲とするのが好ましい。
次に、この接着フィルムを耐熱樹脂フィルムの両面にラミネートする。ラミネートの条件は前記と同様である。また耐熱フィルムの片面に予め樹脂組成物層が設けられていれば、ラミネートは片面のみでよい。次に樹脂組成物層を加熱硬化させ、樹脂組成物の層である絶縁層を形成させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
フレキシブル回路基板用のベースフィルムからフレキシブル回路基板を製造する方法について説明する。A´層、C層及びA´層からなるベースフィルムの場合は、まず加熱硬化後、回路基板にドリル、レーザー、プラズマ等の方法により穴開けし、両面の導通のためのスルーホールを形成する。A´層、C層及びD層からなるベースフィルムの場合は、同様の方法により穴開けし、ビアホールを形成する。特に炭酸ガスレーザーやYAGレーザー等のレーザーによる穴開けが一般的に用いられる。
次いで絶縁層(樹脂組成物の層)の表面処理を行う。表面処理については、前述した接着フィルムの場合と同様である。表面処理を行った後、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成する。メッキによる導体層形成については、前述した接着フィルムの場合と同様である。導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
次に、導体層をパターン加工し回路形成しフレキシブル回路基板とする。A層、C層及びD層からなるベースフィルムを使用した場合は、D層である銅箔にも回路形成を行う。回路形成の方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。詳細は前述の接着フィルムの場合と同様である。
このようにして得られた片面又は両面フレキシブル回路基板は、例えば、前述したように、本発明の接着フィルムを用いて多層化することで、多層フレキシブル回路基板を製造することができる。
また、本発明の樹脂組成物は半導体とサブストレート基板間の応力緩和層を形成するための材料としても有用である。例えば、前記と同様にして、本発明の樹脂組成物を用いて得られた接着フィルムによりサブストレート基板の最も上部の絶縁層の全部または一部を形成し、半導体を接続することにより、該樹脂組成物の硬化物を介して半導体とサブストレート基板が接着された半導体装置を製造することができる。この場合、接着フィルムの樹脂組成物層の厚みは10〜1000μmの範囲で適宜選択される。本発明の樹脂組成物はメッキにより導体層の形成が可能であり、サブストレート基板上に設けた応力緩和用の絶縁層上にも簡便にメッキにより導体層を形成し回路パターンを作製することも可能である。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。以下において、部および「%」は特に断りのない限り、すべて質量基準である。
合成例1〔ポリアミドイミド樹脂(A)の調製〕
反応容器にトリメリト酸無水物0.7モル、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート(新日本理化製リカシッドTMEG200;純度95%)0.3モル、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアナート1モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ−ブチロラクトンと共に仕込み攪拌しながら、1.5時間かけて200℃まで昇温した。200℃で5時間反応させた後、固形分濃度が25%となるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈して室温まで冷却し、ポリアミドイミド樹脂(A1)の溶液を得た。ポリアミドイミド樹脂(A1)の対数粘度は0.62dl/gであった。
合成例2〜4(同上)
第1表に示す配合で行った以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂(A2)の溶液〜ポリイミド樹脂(A4)の溶液を得た。
第1表中の脚注。
TMA:無水トリメリト酸
TMEG:エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート
CHDA:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸。イーストマンケミカル社製のシス構造体/トランス構造体=55/45(モル比)。
MDI:4,4´−ジフェニルメタンジイソシアナート
IPDI:イソホロンジイソシアナート
TODI:3,3´−ジメチルジフェニル−4,4´−ジイソシアナート
実施例1
第2表に示す配合にて本発明の熱硬化性樹脂組成物1を調製した。尚、組成物の調整においては室温にて配合、攪拌して調整を行った。得られた熱硬化性樹脂組成物1の耐熱性、難燃性、機械物性及び寸法安定性を下記方法に従って評価した。その結果を第5表に示す。
(1)耐熱性の評価(1)
熱硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が30μmになるように銅泊がラミネートされたガラスエポキシ基板上に塗装し、200℃の乾燥機で60分間乾燥した後、室温まで冷却し試験片を作成した。この試験片を260℃の溶融ハンダ浴に30秒浸漬し、室温に冷却した。このハンダ浴の浸漬操作を合計3回行い、硬化塗膜の外観について以下の評価基準で評価した。また、耐熱性は後述するTgを測定する事でも評価した。Tgが高いほど耐熱性に優れる。
○:塗膜に外観異常は見られない。
△:塗膜にフクレ、はがれ等異常が若干見られる。
×:塗膜全面にフクレ、はがれ等異常が見られる。
(2)耐熱性評価(2)
熱分解測定を行うことにより評価した。
<試験片の作製>
熱硬化型樹脂組成物1を得られる塗膜の膜厚が30μmになるようにブリキ基板上に塗装した。次いで、この塗装板を50℃の乾燥機で30分間、100℃の乾燥機で30分間、200℃の乾燥機で60分間乾燥して塗膜(フィルム)を作成した。室温まで冷却した後、塗膜(フィルム)を基板から単離して測定用試料とした。
<熱分解測定方法>
示差熱‐熱重量同時測定(TG−DGA)により熱分解測定を行った。具体的には、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製TG/DTA6200にて500℃における熱重量減少率を測定した。測定は試料を測定用アルミ製容器(70μl)に内包できる大きさに切り出し、初期試料質量は、5.5から5.8mgの間に調整を行った。室温から500℃まで10℃/分の昇温速度で窒素気流下加熱し測定を行った。評価は、質量の減量%で行い、その値が小さい程、耐熱性が良好であることを示す。
(3)機械物性の評価
機械物性は塗膜(フィルム)の引張試験を行い、弾性率と破断強度と破断伸度を求めることにより評価した。
<試験片の作製>
熱硬化型樹脂組成物を得られる塗膜の膜厚が30μmになるようにブリキ基板上に塗装した。次いで、この塗装板を50℃の乾燥機で30分間、100℃の乾燥機で30分間、200℃の乾燥機で60分間乾燥して塗膜(フィルム)を作成した。室温まで冷却した後、塗膜(フィルム)を所定の大きさに切り出し、基板から単離して測定用試料とした。
<引張試験測定方法>
測定用試料を5枚作成し、下記の条件で引張試験を行い、弾性率と破断強度と破断伸度を求めた。弾性率の値が低いほど柔軟性に優れる塗膜であることを表す。破断伸度の値が高いほど柔軟性に優れる塗膜であることを表す。そして、破断強度の値が高いほど強靭な塗膜であることを表す。
測定機器:東洋ボールドウィン社製テンシロン
サンプル形状:10mm×70mm
チャック間:20mm
引張速度:10mm/min
測定雰囲気:22℃、45%RH
(4)寸法安定性の評価
<試験用試験片の作製>
熱硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が30μmになるようにブリキ基板上に塗装し、70℃の乾燥機で20分間乾燥した後、200℃で1時間硬化させ冷却した後、剥離した硬化塗膜を幅5mm、長さ30mmに切り出し、測定用試料とした。
<TG及び線膨張係数測定方法>
セイコー電子(株)製熱分析システムTMA−SS6000を用いて、試料長10mm、昇温速度10℃/分、荷重30mNの条件でTMA(Thermal Mechanical Analysis)法により測定した。なお、TGは、TMA測定での温度−寸法変化曲線からその変極点を求め、その温度をTGとした。さらに線膨張係数に使用した温度域は50〜60℃、及び110〜120℃での試料長の変位より求めた。線膨張係数が小さいほど寸法安定性に優れることを示す。
(5)難燃性の評価
<試験用試験片の作製>
熱硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が30μmになるようにブリキ基板上に塗装し、70℃の乾燥機で20分間乾燥した後、200℃で1時間硬化させ冷却した後、剥離した硬化塗膜を幅10mm、長さ40mmに切り出し、このフィルムを長手方向に半分に折り曲げ測定用試料とした。
<難燃性の評価方法>
折り曲げたフィルム試料の方端をクランプでつかんで水平に固定して別の方端にライターでゆっくり炎を近づけ着火し、以下の基準で評価を行った。
○:フィルム試料に着火するがすぐ消える。
△:フィルム試料に着火するがクランプの手前で消える。
×:フィルム試料がクランプまで燃え尽きる。
実施例2〜8及び比較例1〜5
第2表から第4表に示す配合にて調製した以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物2〜9及び比較対照用熱硬化性樹脂組成物1´〜5´を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第5表〜第7表に示す。
第2〜第4表の脚注
TEPBIZ:2−エチル−4−メチルイミダゾリウム・テトラフェニルボレート
TRBB:ピリジン・トリフェニルボラン
TBBP:フェニルホウ酸無水物(3量体)
CNE:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量214、軟化点80℃
TPP:トリフェニルフォスフィン