JP5320824B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、保存安定性に優れ、長期間の保存後にも溶剤への溶解性が良好で、しかも、塗膜化した際に強靭性、耐熱性、寸法安定性及び機械物性にも優れる熱硬化性樹脂組成物に関する。
耐熱性コーティング材料、プリント配線基板の層間絶縁材料や半導体の絶縁材料等の電気絶縁材料、ビルドアップ材料、プリプレグ用樹脂、耐熱性接着剤等の電気電子産業分野では用いる樹脂組成物の保存安定性と共に、得られる硬化物の強靭性、耐熱性の向上が要望されてきている。特に、コンピューター等の電子機器産業分野ではフレキシブルフィルム基板やリジット基板の極薄基化等のダウンサイジングの要望が強く、この要望に答える為に基板の保護層、接着層、絶縁層での機械強度(強靭性)、耐熱性、寸法安定性の向上は必要である。
樹脂の安定性に優れ、得られる硬化物の強靭性、耐熱性、寸法安定性にも優れるポリイミド樹脂として、例えば、無水トリメリット、3、3´、4,4´ージフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3、3´ージメチルー4,4´ービフェニルジイソシアネート及びトリエチレンジアミンを反応させてなる芳香族系ポリアミドイミド樹脂が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら該特許文献1で開示されたポリアミドイミド樹脂はNMP(N−メチルピロリドン)等の含窒素系極性溶剤等にしか溶解しない為、本溶剤の影響による吸湿性による白化等の問題があり、保存安定性が不十分である。この為、この樹脂を用いて得られた塗膜(フィルム)は本来のイミド樹脂の有する強靭な塗膜や優れた電気特性等得られないという問題が生じる。
またNMP等の含窒素系極性溶剤等を使用しないことでこうした吸湿性の課題を改良した樹脂としてブロック共重合ポリイミド樹脂が開示されている(例えば、特許文献2参照。)該特許文献2では。酸無水物化合物とジアミン化合物との脱水反応による直接イミド化を行い、ブロック共重合の為に多段反応を行っている。その為、ポリイミド樹脂の製造工程が煩雑でかつ脱水反応による残存水分の影響があり前記特許文献1と同様の物性不良等の問題がある。
さらに有機溶剤としてN−ビニル−2ピロリドンを含有するポリイミド樹脂組成物が開示されている(例えば特許文献3参照。)。前記特許文献3のポリイミド樹脂組成物を用いて得られる塗膜は、吸湿による白化現象は低減されている。しかしながら、N−ビニル−2ピロリドンの塗膜中への残存する影響、及び合成中や乾燥中に重合性モノマーでもあるN−ビニル−2ピロリドンが重合することで同様な物性等への悪影響があり問題が残されている。
更に、汎用の有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂としてカルボキシル基と線状炭化水素構造とウレタン結合とイソシアヌレート構造とを有するポリイミド樹脂が開示されている(例えば、特許文献4参照)。該特許文献4に開示されたポリイミド樹脂はNMP以外の溶剤にも溶解するものの該ポリイミド樹脂単独では造膜性が悪く、エポキシ樹脂による硬化が必要である。エポキシ樹脂を併用することにより得られる硬化塗膜は優れた耐熱性を有するものの、寸法安定性や強靭性等の機械物性が十分ではなかった。
国際公開第2003/072639号パンフレット 国際公開第2003/060010号パンフレット 特開2003−292779号公報 特開2003−292575号公報
本発明は、保存安定性に優れ、長期間の保存後にも溶剤への溶解性が良好で、しかも、塗膜化した際に強靭性、耐熱性、寸法安定性及び機械物性にも優れる熱硬化型樹脂組成物を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、下記(1)〜(4)の知見を見出した。
(1)イミド環にシクロヘキサン環が直結した構造を有するポリイミド樹脂は保存安定性に優れ、長期間の保存後にも溶剤への溶解性が良好である。
(2)前記ポリイミド樹脂を用いて得られる塗膜等の硬化物は強靭性、耐熱性、寸法安定性にも優れる。
(3)前記ポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物を用いて得られる硬化物もまた強靭性、耐熱性、寸法安定性に優れる。
(4)前記ポリイミド樹脂はジイソシアネート化合物とシクロヘキサントリカルボン酸無水物とを反応させる製造方法により容易に製造することができる。
(5)前記ポリイミド樹脂にメラミン樹脂を含んでなる組成物は、機械物性をより向上し、通常イミドの乾燥物よりさらにTG等上昇し、より耐熱性に優れる塗膜を得ることができる。
本発明は上記知見によって完成したものである。
即ち、本発明は、一般式()で表される構造を有するポリイミド樹脂とアルコキシ化メラミン樹脂とを含有することを特長とする熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
Figure 0005320824
(式中n、mはそれぞれ1〜1000である。)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は保存安定性に優れ、長期間の保存後にも溶剤への溶解性が良好である。しかも、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、塗膜化した場合、該塗膜は強靭性、耐熱性、寸法安定性に優れ、塗装剤、配線層間絶縁膜、接着剤等に有用である。また、本発明の製造方法により保存安定性に優れ、また、強靭性、耐熱性、寸法安定性、機械物性にも優れる硬化物が得られるポリイミド樹脂が容易に製造できる。
本発明のポリイミド樹脂は、一般式(1)で表される構造を有する。本発明のポリイミド樹脂は一般式(1)で表されるようにシクロヘキサン環に直結したイミド結合を有した構造を有する。このような構造を有することにより本発明のポリイミド樹脂は溶剤溶解性と強靭性、耐熱性等物性バランスに優れた顕著な効果を有する。
前記一般式(1)で表される構造としては、例えば、一般式(2)〜一般式(2−1)で表される構造等が挙げられる。
Figure 0005320824
Figure 0005320824
そして、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミド樹脂としては、例えば、一般式(5)〜一般式(5−1)で表される構造を有するポリイミド樹脂等が挙げられる。
Figure 0005320824
本発明のポリイミド樹脂としては、引っ張り強度や伸度等の機械物性に優れた塗膜が得られる理由から一般式(2)で表される構造を有するポリイミド樹脂が好ましい。
また、本発明のポリイミド樹脂が有する一般式(2)で表される構造や一般式(2−1)で表される構造等の一般式(1)の構造の含有量は、本発明のポリイミド樹脂の重量を基準として1〜50重量%が、溶剤溶解性に優れるポリイミド樹脂となり、且つ、耐熱性、引っ張り強度や伸度等の機械物性及び寸法安定性に優れる硬化物が得られることから好ましく、2〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
また、本発明のポリイミド樹脂が有する一般式(2)で表される構造や一般式(2−1)で表される構造等の一般式(1)の構造の含有量は、ポリイミド樹脂固形分重量を基準として(該ポリイミド樹脂中に)0.1〜2.0mmol/gが、溶剤溶解性に優れるポリイミド樹脂となり、且つ、耐熱性、引っ張り強度や伸度等の機械物性及び寸法安定性に優れる硬化物が得られることから好ましく、0.2〜1.5mmol/gがより好ましく、0.3〜1.5mmol/gが更に好ましい。
前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミド樹脂の中でも、更に一般式(5)で表される構造を有するポリイミド樹脂が、引っ張り強度や伸度等の機械物性及び寸法安定性に優れる等の理由から好ましい。
Figure 0005320824
本発明のポリイミド樹脂は、一般式(5)の構造を、本発明のポリイミド樹脂中に重量を基準として10〜100重量%含有するポリイミド樹脂が、溶解性や機械物性の理由から好ましく、20〜80重量%がより好ましい。
本発明のポリイミド樹脂は、一般式(5)の構造を、本発明のポリイミド樹脂中に0.1〜2.0mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が溶解性や機械物性の理由から好ましく、0.2〜1.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂がより好ましく、0.3〜1.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が更に好ましい。
更に、本発明のポリイミド樹脂は一般式(3)で表される構造を合わせ有するポリイミド樹脂が低線膨張率で寸法安定性に優れる塗膜が得られる事から好ましい。
Figure 0005320824
前記一般式(3)で表される構造としては、例えば、一般式(4)〜一般式(4−1)で表される構造等が挙げられる。
Figure 0005320824
Figure 0005320824
本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも、一般式(1)で表される構造及び一般式(3)で表される構造を、ポリイミド樹脂の固形分重量を基準としてそれぞれ0.1〜2.0mmol/g、0.5〜2.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が保存安定性、溶剤溶解性に優れ、耐熱性、機械物性、寸法安定性に優れる熱硬化性樹脂組成物を得られることから好ましく、一般式(1)で表される構造及び一般式(3)で表される構造を、ポリイミド樹脂の重量を基準としてそれぞれ0.2〜1.5mmol/g、1.0〜2.3mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂がより好ましい。
本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも、一般式(4)で表される構造を、ポリイミド樹脂の固形分重量を基準としてそれぞれ0.5〜2.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が保存安定性、溶剤溶解性に優れ、耐熱性、機械物性、寸法安定性に優れる熱硬化性樹脂組成物を得られることから好ましく、一般式(4)で表される構造を、ポリイミド樹脂の重量を基準としてそれぞれ1.0〜2.3mmol/g、の濃度で含有するポリイミド樹脂がより好ましい。
前記一般式(4)で表される構造を有するポリイミド樹脂の中でも、更に一般式(6)で表される構造を有するポリイミド樹脂が、引っ張り強度や伸度等の機械物性に優れる硬化物が得られることから好ましい。
Figure 0005320824
本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも、一般式(6)の構造を本発明のポリイミド樹脂中に0.5〜2.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が、良好な機械物性を発現する理由から好ましく、1.0〜2.3mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂がより好ましい。
また、本発明で用いるポリイミド樹脂が有する一般式(6)の構造の含有量は、本発明で用いるポリイミド樹脂の樹脂固形分を基準として2〜95重量%が、良好な機械物性を発現する理由から好ましく、10〜80重量%がより好ましい。
更に、本発明で用いるポリイミド樹脂は、更に、一般式(7)で表されるポリイミド樹脂が溶剤溶解性に優れるポリイミド樹脂となり、且つ、低線膨張率で、機械物性に優れる塗膜が得られる事から好ましい。
Figure 0005320824
(式中n、mはそれぞれ1〜1000である。)
前記n、mはそれぞれ、より溶剤溶解性に優れるポリイミド樹脂となり、且つ、より低線膨張率で、より機械物性に優れる塗膜が得られる事から10〜100が好ましい。尚、一般式(7)で表される構造において、便宜上、共重合体を構成する各イミド単位を組成単位として表した。各イミド単位の配列は特定の規則性と定序性を有していても有していなくてもよい。従って、各共重合体のイミド単位(nまたはm)はポリイミド樹脂中に複数回出現していても良い。その場合、一般式(7)中のnとmは、それぞれ各共重合体のイミド単位の合計となる。前記nとmとの比(n/m)としては、0.05〜3が機械物性、耐熱性、寸法安定性に優れるポリイミド樹脂となることから好ましく、0.1〜1がより好ましい。
更に、本発明で用いるポリイミド樹脂は、一般式(8)および/または一般式(9)で表される構造を有するポリイミド樹脂が強靭性に優れる塗膜が得られる事から好ましく、中でも、一般式(9)で表される構造を有するポリイミド樹脂がより好ましい。
Figure 0005320824
本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも一般式(8)で表される構造や一般式(9)で表される構造を、0.1〜1.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が、溶剤溶解性と高強度を発現する理由から好ましく、0.15〜1.0mmol/gがより好ましい。
また、本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも、一般式(2)、一般式(4)及び一般式(9)で表される構造を含有するポリイミド樹脂で、且つ、一般式(2)、一般式(4)及び一般式(9)で表される構造を、それぞれ0.1〜2.0mmol/g、0.5〜2.5mmol/g及び0.1〜1.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が溶剤溶解性が良好で機械強度に優れるポリイミド樹脂となることから好ましい。
更に、前記一般式(8)および/または一般式(9)で表される構造の中でも、一般式(10)および/または一般式(11)で表される構造を有するポリイミド樹脂が低線膨張率で強靭な塗膜が得られることから好ましく、中でも、一般式(10)で表される構造を有するポリイミド樹脂がより好ましい。
Figure 0005320824
本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも、一般式(10)で表される構造や一般式(11)で表される構造を該ポリイミド樹脂中に0.1〜1.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が、溶剤溶解性と良好な機械物性を発現する理由から好ましく、0.2〜1.2mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂がより好ましい。
また、本発明で用いるポリイミド樹脂の中でも、一般式(5)、一般式(6)及び一般式(10)で表される構造を含有するポリイミド樹脂で、且つ、一般式(5)、一般式(6)及び一般式(10)で表される構造を、それぞれ0.1〜2.0mmol/g、0.5〜2.5mmol/g及び0.1〜1.5mmol/gの濃度で含有するポリイミド樹脂が好ましい。
更に、本発明で用いるポリイミド樹脂は、一般式(12)で表される構造を有するポリイミド樹脂が強靭性等の機械物性と寸法安定性とに優れる硬化塗膜が得られることからから好ましい。
Figure 0005320824
(n、mおよびpはそれぞれ1〜1000である。)
前記n、m及びpはそれぞれ溶剤溶解性に優れるポリイミド樹脂となり、且つ、低線膨張率で、機械物性に優れる塗膜が得られることから10〜100が好ましい。尚、一般式(12)で表される構造において、便宜上、共重合体を構成する各イミド単位を組成単位として表した。各イミド単位の配列は特定の規則性と定序性を有するものであってもあるいはなくても良い。 従って、各共重合体のイミド単位(n、mまたはp)はポリイミド樹脂中に複数回出現していても良い。その場合、一般式(12)中のn、m及びpは、それぞれ各共重合体のイミド単位の合計となる。
前記一般式(12)で表されるポリイミド樹脂の中でも、式中のn、m、pの値が、n、m、pの合計(n+m+p)に対してそれぞれ0.02〜0.9、0.02〜0.9、0.03〜0.5であるポリイミド樹脂が溶剤溶解性、機械物性、耐熱性、寸法安定性に優れるポリイミド樹脂となることから好ましい。更に、式中のn、m、pの値が、n、m、pの合計(n+m+p)に対してそれぞれ0.1〜0.8、0.1〜0.8、0.05〜0.3であるポリイミド樹脂がより好ましく、式中のn、m、pの値が、n、m、pの合計(n+m+p)に対してそれぞれ0.2〜0.5、0.4〜0.7、0.1〜0.3であるポリイミド樹脂が更に好ましい。
本発明で用いるポリイミド樹脂は保存安定性に優れる樹脂であるが、有機溶剤に溶解しやすいという特性を持たせやすい。本発明で用いるポリイミド樹脂を用いる有機溶剤も、従来より用いられているN−メチルピロリドンやジメチルホルムアミド等の溶解力の大きな極性溶剤有機溶剤が用いることができるが、従来使用できなかったガンマブチロラクトン(γーブチロラクトン)等の比較的弱い溶解力の有機溶剤も用いることができる。
本発明においては、本発明で用いるポリイミド樹脂が有機溶剤に溶解するか否かの判定は、有機溶剤に本発明のポリイミド樹脂濃度を10重量%となるように加え、25℃で7日間時間静置した後、目視にて外観を観察することによりおこなった。
本発明で用いるポリイミド樹脂はガンマブチロラクトンに溶解するポリイミド樹脂が保存安定性に優れるポリイミド樹脂となることから好ましく、ガンマブチロラクトンに25℃で10重量%となるように溶解したときにガンマブチロラクトンに可溶であるポリイミド樹脂が好ましい。ガンマブチロラクトンに溶解するポリイミド樹脂を得るには、例えば、後述するポリイミド樹脂の製造方法により得る事ができる。
本発明で用いるポリイミド樹脂は線状の構造を有するポリイミド樹脂でも良いし、分岐状の構造を有するポリイミド樹脂でもよい。また、共重合成分としてポリエステル変性したポリエステルイミドやウレタン変性したポリウレタンイミドの構造を有していても良い。
本発明で用いるポリイミド樹脂の末端の構造としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸の無水物、イソシアネート基、アミン基等の構造が挙げられる。末端の構造としては、本発明のポリイミド樹脂自体の安定性や、有機溶剤や他の樹脂との配合後の安定性が良好なことからカルボン酸やその無水物の構造が好ましい。末端構造がカルボン酸やその無水物の構造のときは、酸価は、固形分酸価で5〜50が取り扱いやすいポリイミド樹脂となり、機械強度と寸法安定性に優れるフィルムや成型品が得られることから好ましい。
本発明で用いるポリイミド樹脂の分子量は、取り扱いやすいポリイミド樹脂となり、機械強度と寸法安定性に優れるフィルムや成型品が得られることから1000〜200000が好ましく、2000〜100000がより好ましい。分子量は、GPCや末端の官能基の定量で測定することが可能である。尚、本発明において分子量は末端に存在するカルボン酸基の定量として酸価より求めた。
本発明で用いるポリイミド樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
製法1:ポリイソシアネート化合物とシクロヘキサントリカルボン酸無水物とを用いて直接イミド化する方法(イソシアネート法)。
製法2:シクロヘキサントリカルボン酸無水物とジアミン化合物とを反応させ、アミック酸を合成した後に、このアミック酸の脱水反応を行いイミド閉環させる方法。
本発明で用いるポリイミド樹脂を製造するには、残存する水分量を減少させ物性を良好に保てる事、反応の制御がしやすい事、各種変性を施したポリイミド樹脂を作成しやすい等の理由から、上記イソシアネート法(ジイソシアネート化合物とシクロヘキサントリカルボン酸無水物とを反応させるポリイミド樹脂の製造方法。)が好ましい。以下、製法1を詳細に説明する。製法1としては、例えば、ジイソシアネート化合物とシクロヘキサントリカルボン酸無水物とを用いて直接イミド化する方法等が挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4′−ジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートおよびノルボヌレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、前記ポリイソシアネート化合物と各種ポリオール成分とをイソシアネート基過剰で予め反応させたイソシアネートプレポリマーを使用することも可能である。
本発明で用いるポリイミド樹脂は、溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性を向上させるため分岐構造をとっても良い。かかる分岐の手法としては、ポリイソシアネート化合物として、例えば、前記ジイソシアネート化合物等のイソシアヌレート体であるイソシアヌレート環を有する3官能以上のポリイソシアネート化合物や前記ジイソシアネートのビュレット体、アダクト体、アロハネート体、あるいはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)等を使用すればよい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、得られる硬化物の機械強度や破断伸度等の機械物性と耐熱性が向上することから芳香族系ジイソシアネートを用いることが好ましく、さらに芳香族系ジイソシアネートの中でも4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
ポリイソシアネート化合物は単独で使用しても良いし2種以上を併用しても良い。2種以上併用する事で、溶解性や各種樹脂との相溶性を向上させたポリイミド樹脂を容易に得ることが期待できる。併用する際も、この時、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート化合物の重量を基準として50重量%以上使用すると、機械強度や破断伸度等の機械物性、耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましい。
ポリイソシアネート化合物の使用量としては、ポリイミド樹脂を構成する全ての原料のモル量を基準として10〜70モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましく、30〜60モル%が更に好ましい。
前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えば、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸無水物-3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸無水物-3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸無水物-2,3−無水物等が挙げられる。中でも、溶剤溶解性に優れ、機械強度や破断伸度等の機械物性と耐熱性に優れる硬化物が得られることからシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸無水物-3,4−無水物が好ましい。
ここで上述のシクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、以下の一般式(13)の構造で示されるものであり、製造原料として用いるシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸等の不純物が本発明の硬化を損なわない範囲、例えば、10重量%以下、このましくは5重量%以下であれば混入しても良いものである。
Figure 0005320824
前記製造方法では、前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物以外のポリカルボン酸無水物を本発明の効果を損なわない範囲で併用できる。その他のポリカルボン酸無水物としては、例えば、1個の酸無水物基を有するポリカルボン酸無水物や2個の酸無水物基を有するポリカルボン酸無水物等が挙げられる。前記1個の酸無水物基を有するポリカルボン酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等の芳香族トリカルボン酸無水物等が挙げられる。
前記2個の酸無水物基を有するポリカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、
エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレンレングリコールビスアンヒドロトリメリテートやその他アルキレングリコールビスアンヒドロキシトリメリテート等が挙げられる。
前記ポリカルボン酸無水物のなかでも、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、およびエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが好ましく、無水トリメリット酸がより好ましい。
また、溶剤溶解性と機械物性、耐熱物性のバランスの面で上述のシクロヘキサントリカルボン酸無水物と無水トリメリット酸との併用、シクロヘキサントリカルボン酸無水物とベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物との併用、シクロヘキサントリカルボン酸無水物とピロメリット酸二無水物との併用等がより好ましく、さらにシクロヘキサントリカルボン酸無水物と、無水トリメリット酸、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる2種以上の併用がより好ましく、さらにシクロヘキサントリカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物の3種類の併用がより好ましい。
前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物の使用量は、イミド樹脂を構成する全酸無水物化合物中の5〜100モル%が溶剤溶解性に優れたポリイミド樹脂となり、かつ、機械物性、耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、10〜80モル%がより好ましい。また、前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物の使用量は、ポリイミド樹脂を構成する全ての原料のモル量を基準として2〜60モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましい。
シクロヘキサントリカルボン酸無水物と共に酸無水物として無水トリメリット酸を併用する場合の使用量は、同様に全酸無水物化合物のモル量を基準としてシクロヘキサントリカルボン酸無水物5〜90モル%、無水トリメリット酸20〜90モル%が好ましく、シクロヘキサントリカルボン酸無水物10〜50モル%、無水トリメリット酸40〜90モル%がより好ましい。また、前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物と無水トリメリット酸の使用量は、ポリイミド樹脂を構成する全ての原料のモル量を基準としてそれぞれ2〜60モル%、2〜60モル%が好ましい。
シクロヘキサントリカルボン酸無水物と共に酸無水物として無水トリメリット酸とベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物を併用する場合は、イミド樹脂を構成する全酸無水物のモル量を基準としてシクロヘキサントリカルボン酸無水物5〜90モル%、無水トリメリット酸2〜80モル%、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物3〜50モル%が好ましく、シクロヘキサントリカルボン酸無水物10〜80モル%、無水トリメリット酸10〜80モル%、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物5〜30モル%がより好ましい。また、前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物と無水トリメリット酸とベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物の使用量は、ポリイミド樹脂を構成する全ての原料のモル量を基準としてそれぞれ2〜60モル%、2〜60モル%及び2〜60モル%が好ましい。
上記ポリイミド樹脂の製造方法では、ポリイソシアネート化合物とシクロヘキサントリカルボン酸無水物とが反応する。ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数(ma)とシクロヘキサントリカルボン酸無水物中の無水酸基とカルボキシル基との合計のモル数(mb)の割合(ma)/(mb)は、分子量の大きいポリイミド樹脂が得やすく、機械物性に優れる硬化物が得られるポリイミド樹脂となることから0.7〜1.2の割合が好ましく、さらに0.8〜1.2の割合がより好ましい。また、保存安定性に優れるポリイミド樹脂が得やすいことから前記(ma)/(mb)は0.9〜1.1の範囲がより好ましい。尚、シクロヘキサントリカルボン酸無水物と併用して他のカルボン酸無水物を併用する場合は、前記(mb)は全てのカルボン酸無水物の中の無水酸基とカルボキシル基との合計のモル数である。
前記製法1において1段反応で製造を行う場合は、例えば、反応容器にポリイソシアネート化合物とシクロヘキサントリカルボン酸無水物とを仕込み、攪拌を行いながら昇温することで脱炭酸させながら反応を進行させる。
反応温度としては、50℃から250℃の範囲で行うことが可能であり、反応速度と副反応防止の面から70℃から180℃の温度で行うことが好ましい。
反応は、イソシアネート基がほぼ全て反応するまで行った方が得られるポリイミド樹脂の安定性が良好となることから好ましい。また、若干残存するイソシアネート基に対して、アルコールやフェノール化合物を添加し反応させても良い。
本発明で用いるポリイミド樹脂の製造方法において、有機溶剤を使用すると均一な反応を進行できるため好ましい。ここで有機溶剤は、系中にあらかじめ存在させてから反応を行っても、途中で導入してもよい。また、適切な反応速度を維持するためには、系中の有機溶剤の割合は、反応系の98重量%以下であるが好ましく、10〜90重量%であることがより好ましい。かかる有機溶剤としては、原料成分としてイソシアネート基を含有する化合物を使用するため、水酸基やアミノ基等の活性プロトンを有しない非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
前記非プロトン性極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、およびγ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を使用することができる。また、上記溶媒以外に、溶解可能であれば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、および石油系溶剤等を使用しても良い。また、各種溶剤を混合して使用しても良い。
特に溶剤の臭気や毒性の面と塗膜乾燥及び塗膜硬化時の残存溶剤量の低減、塗膜の溶剤の吸湿量低減等の理由からγ−ブチロラクトンの使用が好ましい。また得られるポリイミド樹脂においてもγ−ブチロラクトンに溶解する構造が好ましい。かかるγ−ブチロラクトンに溶解し、各種物性(耐熱特性、低線膨張率、機械物性)において良好な性能を有するポリイミド樹脂としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分を使用し、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物と、無水トリメリット酸とを反応させる事により得られる。このときの4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物と、無水トリメリット酸の使用割合としては、ポリイミド樹脂を構成する全ての原料のモル量を基準として、それぞれ10〜60モル%、2〜60モル%及び2〜60モル%が好ましい。
更に、かかるγ−ブチロラクトンに溶解し、各種物性(耐熱特性、低線膨張率、機械物性)において良好な性能を有するポリイミド樹脂は、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,4−無水物と、無水トリメリット酸と、ベンゾフェノン−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより好ましく得る事ができる。このときの4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,4−無水物と、無水トリメリット酸と、ベンゾフェノン−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物の使用割合としては、ポリイミド樹脂を構成する全ての原料のモル量を基準として、それぞれ10〜60モル%、2〜60モル%、2〜60および2〜60モル%が好ましい。
本発明で用いるポリイミド樹脂の製造方法で用いる事ができるエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン−プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;および共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノン等が挙げられる。また、石油系溶剤としては、トルエン、キシレンやその他高沸点の芳香族溶剤等や、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族および脂環族溶剤を使用することも可能である。
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)を製造する際に有機溶剤を用いる場合の系中の有機溶剤の割合は、反応系の98重量%以下であるが好ましく、40〜90重量%であることがより好ましい。
本発明で用いるアルコキシ化メラミン樹脂としては、メラミンやベンゾグアナミン等のトリアジン環含有のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応により得られるメチロール化物の一部乃至全部をアルコール化合物との反応により得られるアルコキシ化メラミン樹脂を使用することができる。ここで用いるアルコール化合物としては、炭素原子数が1〜4程度の低級アルコールが使用することができ具体的には、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロール化メラミン樹脂等使用することができる。分子構造としては、完全にアルコキシ化されても良く、メチロール基が残存していても良く、さらにはイミノ基が残存していても良い。
本発明で用いるアルコキシ化メラミン樹脂の樹脂構造としては、メトキシメチロール化メラミン樹脂がポリイミド樹脂との相溶性と硬化時の硬化性が良好となることから好ましく、さらに好ましくは、メトキシ化率80%以上のメトキシメチロール化メラミン樹脂がより好ましい。
また、樹脂構造としては、自己縮合して多核体であっても良い。この時の重合度は相溶性や安定性の面で1〜5程度が好ましく、さらに1.2〜3程度がより好ましい。
本発明で用いるアルコキシ化メラミン樹脂の数平均分子量としては、100〜10000のものが使用できる。好ましくは、300〜2000がポリイミド樹脂との相溶性と硬化時の硬化性の面で好ましく、さらに400〜1000がより好ましい。
本発明で用いるアルコキシ化メラミン樹脂としては、メラミンやベンゾグアナミン、ホルマリン及びアルコールを同時に仕込んで反応させても、メラミンやベンゾグアナミンとホルマリンを予め反応させてメチロール化メラミン化合物を得てからアルコール化合物とのアルコキシ化を行っても良い。
本発明で用いるアルコキシ化メラミン樹脂の市販品としては、例えば、メトキシめチロール化メラミン樹脂としては、具体的には、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル300、301、303、305等が挙げられる。また、メチロール基含有のメトキシメチロール化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル370、771等が挙げられる。イミノ基含有メトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、三井サイテック(株)製の商品サイメル325、327、701、703、712等が挙げられる。メトキシ化ブトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル232、235、236、238、266、267、285等が挙げられる。ブトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品ユーバン20SE60等が挙げられる。
本発明で用いるアルコキシ化メラミン樹脂の使用量は、ポリイミド樹脂の物性とアルコキシ化メラミン樹脂の硬化による相乗効果が得られ、特段優れた機械物性と高TGを両立することができることからポリイミド樹脂の樹脂固形分換算で100重量部に対し、1〜30重量部配合するのが好ましく、1〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部が更に好ましく、2〜7重量部が特に好ましい。
本発明のポリイミド樹脂には、更に、その他の熱硬化性樹脂成分を添加することができる。具体的には、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、シリケート、およびアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のエポキシ基を有していることが好ましい。こうしたエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型ノボラック等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;2,2′,6,6′−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂やこれら芳香族系エポキシ樹脂の水素添加物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のごときヘテロ環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、芳香族系エポキシ樹脂が、硬化塗膜の機会物性に優れる熱硬化性ポリイミド樹脂組成物が得られることから好ましく、中でもノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
前記本発明で用いるポリイミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(D)との配合量は、樹脂分の重量比として(A)/(D)が1/100から50/1の割合で使用することができ、さらに好ましくは、1/10から20/1である。
前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のイソシアネート化合物、脂肪族系のイソシアネート化合物および脂環族系のイソシアネート化合物等が使用できる。好ましくは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物も使用可能である。
上述のアルキルアルコキシシランとしては、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
前記アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等が挙げられる。
前記ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジプロポキシシラン、メチルフェニルジブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
また、アルキルアルコキシシランの縮合物も使用かのうであり例えば、前記したアルキルトリアルコキシシランの縮合物や、ジアルキルジアルコキシシランの縮合物等が挙げられる。
さらに本発明の樹脂にはポリエステル、フェノキシ樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリアリレーン樹脂等のバインダー樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルコキシシラン系硬化剤、多塩基酸無水物、シアネート化合物等の硬化剤あるいは反応性化合物やメラミン、ジシアンジアミド、グアナミンやその誘導体、イミダゾール類、アミン類、水酸基を1個有するフェノール類、有機フォスフィン類、ホスホニュウム塩類、4級アンモニュウム塩類、光カチオン触媒等の硬化触媒や硬化促進剤、さらにフィラー、その他の添加剤として消泡材、レベリング剤、スリップ剤、ぬれ改良剤、沈降防止剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等添加することも可能である。
また、本発明の樹脂組成物は、更に必要に応じて、種々の充填材、有機顔料、無機顔料、体質顔料、防錆剤等を添加することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
前記充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化けい素酸粉、微粒状酸化けい素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルムニウム、雲母、アルミナ等が挙げられる。
充填材としては、各種粒子径のものが使用かのうであり、本樹脂やその組成物の物性を阻害しない程度に添加することが可能である。 かかる適正な量としては、重量で5〜80%程度の範囲であり、好ましくは均一に分散してから使用することが好ましい。分散方法としては、公知のロールによる分散やビーズミル、高速分散等により行うことが可能であり、粒子表面を予め分散処理剤で表面改質しても良い。
前記有機顔料としては、アゾ顔料;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。
また、その他の着色、防錆、体質顔料のいずれも使用することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂の処理方法は本発明の樹脂単独あるいはその組成物を調整し塗工や成形物とした後、100〜300℃で加熱することで乾燥あるいは硬化させることができる。
前記塗膜の形成方法で用いる基材は特に制限無く用いることができる。基材としては、例えば、プラスチック、金属、木材、ガラス、無機材、およびこれら複合材料等が挙げられる。
また、本発明の樹脂およびその組成物は、フレキシブル回路基板の製造用として好適な形態である、樹脂及びその組成物層(A層)及び支持体フィルム(B層)からなるフィルム(接着フィルム)の形態としても使用することができる。
接着フィルムは、種々の方法に従って、例えば、本発明の樹脂およびその組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体フィルムにこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
支持体フィルム(B層)は、接着フィルムを製造する際の支持体となるものであり、フレキシブル回路基板の製造において、最終的には剥離または除去されるものである。支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、更には離型紙や銅箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、銅箔を支持体フィルムとして使用する場合は、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより除去することができる。支持フィルムはマット(mat)処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよいが、剥離性を考慮すると離型処理が施されている方がより好ましい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。
ワニスを調製するための有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合が通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、通常80〜120℃で3〜13分程度乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
樹脂およびその組成物層(A層)の厚さは通常5〜500μmの範囲とすることができる。A層の厚さの好ましい範囲は接着フィルムの用途により異なり、ビルドアップ工法により多層フレキシブル回路基板の製造に用いる場合は、回路を形成する導体層の厚みが通常5〜70μmであるので、層間絶縁層に相当するA層の厚さは10〜100μmの範囲であるのが好ましい。
A層は保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムはラミネートの際に剥離される。保護フィルムとしては支持フィルムと同様の材料を用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜40μmの範囲である。
本発明の接着フィルムは特に多層フレキシブル回路基板の製造に好適に使用することができる。以下に、多層フレキシブル回路基板を製造する方法について説明する。本発明の接着フィルムは真空ラミネーターにより好適にフレキシブル回路基板にラミネートすることができる。ここで使用するフレキシブル回路基板は、主として、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ポリアミドイミド基板、液晶ポリマー基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)はもちろん、回路と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面が回路形成されている多層フレキシブル回路基板を更に多層化するために使用することもできる。なお回路表面は過酸化水素/硫酸、メックエッチボンド(メック(株)社製)等の表面処理剤により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、日立テクノエンジニアリング(株)製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
ラミネートにおいて、接着フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、接着フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。ラミネートの条件は、接着フィルム及び回路基板を必要によりプレヒートし、圧着温度を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cmとし、空気圧20mmHg以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
接着フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却し支持体フィルムを剥離する。次いで、回路基板にラミネートされた熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を加熱硬化させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。なお支持体フィルムが離型処理やシリコン等の剥離層を有する場合は、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の加熱硬化後あるいは加熱硬化及び穴開け後に支持体フィルムを剥離することもできる。
熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の硬化物である絶縁層が形成された後、必要に応じて回路基板にドリル、レーザー、プラズマ、又はこれらの組み合わせ等の方法により穴開けを行いビアホールやスルーホールを形成してもよい。特に炭酸ガスレーザーやYAGレーザー等のレーザーによる穴開けが一般的に用いられる。
次いで絶縁層(熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の硬化物)の表面処理を行う。表面処理はデスミアプロセスで用いられる方法を採用することができ、デスミアプロセスを兼ねた形で行うことができる。デスミアプロセスに用いられる薬品としては酸化剤が一般的である。酸化剤としては、例えば、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて処理を行うのが好ましい。酸化剤で処理する前に、膨潤剤による処理を行うこともできる。また酸化剤による処理の後は、通常、還元剤による中和処理が行われる。
表面処理を行った後、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成する。導体層形成は無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で実施することができる。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。サブトラクティブ法の場合、無電解銅メッキ層の厚みは0.1乃至3μm、好ましくは0.3乃至2μmである。その上に電気メッキ層(パネルメッキ層)を3乃至35μm、好ましくは5乃至20μmの厚みで形成した後、エッチングレジストを形成し、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより導体パターンを形成した後、エッチングレジストを剥離することにより、回路基板を得ることが出来る。また、セミアディティブ法の場合には、無電解銅メッキ層の厚みを0.1乃至3μm、好ましくは0.3乃至2μmで無電解銅メッキ層を形成後、パターンレジストを形成し、次いで電気銅メッキ後に剥離することにより、回路基板を得ることができる。
支持体フィルムを耐熱樹脂層(耐熱樹脂フィルム)で置き換えた形態のフィルム、すなわち、ポリイミド樹脂およびその組成物層(A層)及び耐熱樹脂層(C層)からなるフィルムは、フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。また樹脂およびその組成物層(A層)、耐熱樹脂層(C層)及び銅箔(D層)からなるフィルムも同様にフレキシブル回路基板のベースフィルムとして使用できる。この場合ベースフィルムはA層、C層、D層の順の層構成を有する。以上のようなベースフィルムでは、耐熱樹脂層は剥離されずに、フレキシブル回路基板の一部を構成することとなる。
本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層(A'層)が耐熱樹脂層(C層)上に形成されたフィルムは片面フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。また、A'層、C層及びA'層の順の層構成を有するフィルム、及びA'層、C層及び銅箔(D層)からなり、A'層、C層及びD層の順の層構成を有するフィルムも同様に両面フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。
耐熱樹脂層に用いられる耐熱樹脂は、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマーなどを挙げることができる。特に、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が好ましい。またフレキシブル回路基板に用いる特性上、破断強度が100MPa以上、破断伸度が5%以上、20〜150℃間の熱膨張係数が40ppm以下、およびガラス転移温度が200℃以上又は分解温度が300℃以上である耐熱樹脂を用いるのが好ましい。
このような特性を満たす耐熱樹脂としては、フィルム状で市販されている耐熱樹脂を好適に用いることができ、例えば、宇部興産(株)製ポリイミドフィルム「ユーピ レックス−S」、東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム「カプトン」、鐘淵化学工業(株)製ポリイミドフィルム「アピカル」、帝人アドバンストフィルム(株)製「アラミカ」、(株)クラレ製液晶ポリマーフィルム「ベクスター」、住友ベークライト(株)製ポリエーテルエーテルケトンフィルム「スミライトFS−1100C」等が知られている。
耐熱樹脂層の厚さは、通常2〜150μmであり、好ましくは10〜50μmの範囲とするのがよい。耐熱樹脂層(C層)は表面処理を施したものを用いてもよい。表面処理としては、マット(mat)処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の乾式処理、溶剤処理、酸処理、アルカリ処理等の化学処理、サンドブラスト処理、機械研磨処理などが挙げられる。特にA層との密着性の観点から、プラズマ処理が施されているのが好ましい。
絶縁層(A')と耐熱樹脂層(C)からなる片面フレキシブル回路基板用のベースフィルムは以下のようにして製造することができる。まず、前述した接着フィルムと同様に、本発明の樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、耐熱樹脂フィルム上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化性ポリイミド樹脂組成物層を形成させる。有機溶剤、乾燥条件等の条件は前記接着フィルムの場合と同様である。樹脂組成物層の厚さは5〜15μmの範囲とするのが好ましい 。
次に樹脂組成物層を加熱乾燥させ、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の絶縁層を形成させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
絶縁層(A'層)、耐熱樹脂層(C)層及び銅箔(D層)の3層からなる両面フレキシブル回路基板用フィルムのベースフィルムの製造は、耐熱樹脂層(C層)と銅箔(D層)よりなる銅張積層フィルム上に樹脂組成物を層形成し、上記と同様にして製造すればよい。銅張積層フィルムとしては、キャスト法2層CCL(Copper-clad laminate)、スパッタ法2層CCL、ラミネート法2層CCL、3層CCLなどが挙げられる。銅箔の厚さは12μm、18μmのものが好適に使用される。
市販されている2層CCLとしては、エスパネックスSC(新日鐵化学社製)、ネオフレックスI<CM>、ネオフレックスI<LM>(三井化学社製)、S'PERFLEX(住友金属鉱山社製)等が挙げられ、また市販されている3層CCLとしては、ニカフレックスF−50VC1(ニッカン工業社製)等が挙げられる。
絶縁層(A'層)、耐熱樹脂層(C層)及び絶縁層(A'層)の3層からなる両面フレキシブル回路基板用フィルムのベースフィルムの製造は以下のようにして行うことができる。まず前述した接着フィルムと同様に、本発明の樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体フィルム上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させる。有機溶剤、乾燥条件等の条件は前記接着フィルムの場合と同様である。樹脂組成物層の厚さは5〜15μmの範囲とするのが好ましい。
次に、この接着フィルムを耐熱樹脂フィルムの両面にラミネートする。ラミネートの条件は前記と同様である。また耐熱フィルムの片面に予め樹脂組成物層が設けられていれば、ラミネートは片面のみでよい。次に樹脂組成物層を加熱硬化させ、樹脂組成物の層である絶縁層を形成させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
フレキシブル回路基板用のベースフィルムからフレキシブル回路基板を製造する方法について説明する。A'層、C層及びA'層からなるベースフィルムの場合は、まず加熱硬化後、回路基板にドリル、レーザー、プラズマ等の方法により穴開けし、両面の導通のためのスルーホールを形成する。A'層、C層及びD層からなるベースフィルムの場合は、同様の方法により穴開けし、ビアホールを形成する。特に炭酸ガスレーザーやYAGレーザー等のレーザーによる穴開けが一般的に用いられる。
次いで絶縁層(樹脂組成物の層)の表面処理を行う。表面処理については、前述した接着フィルムの場合と同様である。表面処理を行った後、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成する。メッキによる導体層形成については、前述した接着フィルムの場合と同様である。導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
次に、導体層をパターン加工し回路形成しフレキシブル回路基板とする。A層、C層及びD層からなるベースフィルムを使用した場合は、D層である銅箔にも回路形成を行う。回路形成の方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。詳細は前述の接着フィルムの場合と同様である。
このようにして得られた片面又は両面フレキシブル回路基板は、例えば、前述したように、本発明の接着フィルムを用いて多層化することで、多層フレキシブル回路基板を製造することができる。
また、本発明の樹脂組成物は半導体とサブストレート基板間の応力緩和層を形成するための材料としても有用である。例えば、前記と同様にして、本発明の樹脂組成物を用いて得られた接着フィルムによりサブストレート基板の最も上部の絶縁層の全部または一部を形成し、半導体を接続することにより、該樹脂組成物の硬化物を介して半導体とサブストレート基板が接着された半導体装置を製造することができる。この場合、接着フィルムの樹脂組成物層の厚みは10〜1000μmの範囲で適宜選択される。本発明の樹脂組成物はメッキにより導体層の形成が可能であり、サブストレート基板上に設けた応力緩和用の絶縁層上にも簡便にメッキにより導体層を形成し回路パターンを作製することも可能である。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。以下において、部および「%」は特に断りのない限り、すべて「重量%」である。
合成例1
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、GBL(ガンマブチロラクトン)1422.8gとMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)250g(1.0モル)とTMA(無水トリメリット酸)134.3(0.7モル)とTMA−H(シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物)59.4g(0.3モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して80℃に昇温し、この温度で1時間かけて溶解、反応させ、更に2時間かけて160℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度が10Pa・sの樹脂固形分20%で溶液酸価が1.8(KOHmg/g)のポリイミド樹脂(A−1)の溶液(ポリイミド樹脂がγーブチロラクトンに溶解した樹脂組成物)を得た。尚、樹脂の酸価は1.8(KOHmg/g)であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定の結果、重量平均分子量64000であった。
得られたポリイミド樹脂(A−1)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトル(図1)を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1とにイミド環の特性吸収が確認された。また炭酸ガスの発生量は、フラスコ仕込み重量の変化で追跡し、88g(2モル)であった。これよりイソシアネート基の全量である2モルの全量がイミド結合およびアミド結合に変換していると結論される。さらにC13−NMR(図2)による分析を行った結果原料であるMDI:TMA:TMA−Hの組成比が52:35:15モル比である下記構造に代表されるポリイミド樹脂であることが確認された。
Figure 0005320824
但しn:m=3:7
上記構造中nのセグメントは0.843mmol/g、mのセグメントは1.967mmol/gであった。
合成例2
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、GBL 1420.5gとMDI 240g(0.96モル)とTMA 134.3(0.7モル)とTMA−H 39.6g(0.2モル)及びBTDA(ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物)32.2g(0.1モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて170℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度が8Pa・sの樹脂固形分20%で溶液酸価が2.48(KOHmg/g)のポリイミド樹脂(A−2)の溶液(ポリイミド樹脂がγーブチロラクトンに溶解した樹脂組成物)を得た。尚、樹脂の酸価は2.48(KOHmg/g)であった。また、GPC測定により重量平均分子量は52000であった。
得られたポリイミド樹脂(A−2)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトル(図3)を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1とにイミド環の特性吸収が確認された。また炭酸ガスの発生量は、フラスコ仕込み重量の変化で追跡し、84.5g(1.92モル)であった。これよりイソシアネート基の全量がイミド結合およびアミド結合に変換していると結論される。さらにC13−NMR(図4)による分析を行った結果原料であるMDI:TMA:BTDA:TMA−Hの組成比が50:35:5:10モル比である下記構造に代表されるポリイミド樹脂であることが確認された。
Figure 0005320824
但しn:m:p=2:7:1
上記構造中nのセグメントは0.558mmol/g、mのセグメントは1.954mmol/g、pのセグメントは0.297mmol/gであった。
比較合成例1
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、GBL 337.8gとMDI 225g(0.9モル)とTMA 192(1モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて160℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度を測定しようとしたが、結晶化し粘度が測定できなかった。樹脂固形分は50%であった。これをポリイミド樹脂(a−1)の溶液(ポリイミド樹脂がγーブチロラクトンに溶解した樹脂組成物)と略記する。尚、樹脂溶液酸価〔16.6(KOHmg/g)〕より平均分子量は3400と結論される。
得られたポリイミド樹脂(a−1)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1とにイミド環の特性吸収が確認された。また炭酸ガスの発生量は、フラスコ仕込み重量の変化で追跡し、79.2g(1.8モル)であった。これよりイソシアネート基の全量である1.8モルの全量がイミド結合およびアミド結合に変換していると結論される。
得られたポリイミド樹脂(a−1)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド樹脂(a−1)を評価した。その結果を第2表に示す。
比較合成例2
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、GBL 345.9gとMDI 237.5g(0.95モル)とTMA 192(1モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて160℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度を測定しようとしたが、結晶化し粘度が測定できなかった。樹脂固形分は50%であった。これをポリイミド樹脂(a−2)の溶液(ポリイミド樹脂がγーブチロラクトンに溶解した樹脂組成物)と略記する。尚、樹脂溶液酸価〔8.1(KOHmg/g)〕より平均分子量は6900と結論される。
得られたポリイミド樹脂(a−2)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1とにイミド環の特性吸収が確認された。また炭酸ガスの発生量は、フラスコ仕込み重量の変化で追跡し、83.6g(1.9モル)であった。これよりイソシアネート基の全量である1.9モルの全量がイミド結合およびアミド結合に変換していると結論される。
得られたポリイミド樹脂(a−2)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド樹脂(a−2)を評価した。その結果を第2表に示す。
比較合成例3
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、GBL 292.32gとMDI 190g(0.76モル)とTMA 130.56(0.68モル)及びBTDA 38.64g(0.12モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて160℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体から濁りを発生した。25℃での粘度を測定しようとしたが、結晶化し粘度が測定できなかった。樹脂固形分は50%であった。これをポリイミド樹脂(a−3)の溶液(ポリイミド樹脂がγーブチロラクトンに溶解しなかった樹脂組成物)と略記する。尚、樹脂溶液酸価〔7.7(KOHmg/g)〕より平均分子量は7300と結論される。
得られたポリイミド樹脂(a−3)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1とにイミド環の特性吸収が確認された。また炭酸ガスの発生量は、フラスコ仕込み重量の変化で追跡し、66.88g(1.52モル)であった。これよりイソシアネート基の全量である1.52モルの全量がイミド結合およびアミド結合に変換していると結論される。
得られたポリイミド樹脂(a−3)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド樹脂(a−3)を評価した。その結果を第2表に示す。
比較合成例4
攪拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、EDGA(エチルジグリコールアセテート) 4951gと、イソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート(イソシアネート基含有率18.2%、イソシアヌレート環含有トリイソシアネート含有率85%)2760g(イソシアネート基として12モル)と、ポリテールHA〔三菱化学(株)製の両末端に水酸基を有する水素添加液状ポリブタジエン、数平均分子量2,100、水酸基価51.2mgKOH/g〕2191g(水酸基として2モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して80℃に昇温した。この温度で3時間ウレタン化反応を行った。次いで、さらにEDGA1536gとTMA 1536g(8モル)を仕込み、160℃まで昇温し4時間反応させて薄茶色のポリイミド樹脂(a−4)の溶液(ポリイミド樹脂がEDGAに溶解した樹脂組成物)を得た。樹脂固形分は48.2%であった。尚、樹脂溶液酸価〔38.1(KOHmg/g)〕であり、GPCより数平均分子量は5,900、重量平均分子量は24,000であった。
得られた比較対照用ポリイミド樹脂(a−4)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、725cm−1と1780cm−1と1720cm−1にイミド環の吸収、1690cm−1と1460cm−1にイソシアヌレート環の特性吸収、1550cm−1にウレタン結合の特性吸収が確認された。また、ポリイミド樹脂の酸価は固形分換算で79mgKOH/g、イソシアヌレート環の濃度は0.66mmol/g(樹脂固形分換算)であった。
得られたポリイミド樹脂(a−4)の溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド樹脂(a−4)を評価した。その結果を第2表に示す。
比較例5
ポリイミド樹脂(a−4)80部、N680(大日本インキ化学工業株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量214 軟化点81℃)20部及びトリフェニルフォスフィン0.5部を混合し、比較対象用ポリイミド樹脂組成物(a−5)を調製した。
得られたポリイミド樹脂組成物(a−5)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド樹脂組成物(a−5)を評価した。その結果を第2表に示す。
実施例1
第1表に示す配合にて本発明の熱硬化性樹脂組成物1を調製した。尚、組成物の調整においては室温にて配合、攪拌して調整を行った。得られた熱硬化性樹脂組成物1の保存安定性、塗装作業性、塗膜造膜性、耐熱性、機械物性、電気特性及び寸法安定性を下記方法に従って評価した。その結果を第3表に示す。
(1)保存安定性
保存安定性試験は調製直後の熱硬化型樹脂組成物の溶剤溶解性及び長期間静置後の溶剤溶解性を評価する事により行った。調製直後の熱硬化型組成物をガンマブチロラクトンにて樹脂濃度を10%の溶液に調整し、これを蓋付ガラス瓶に25ml入れ、その外観を観察し、以下の評価基準にて評価した。これを調製直後の熱硬化型樹脂組成物の溶剤溶解性とした。その後、熱硬化型樹脂組成物が入った蓋付ガラス瓶を25℃で7日間静置した後、その外観を観察し、経時溶剤溶解性として以下の評価基準にて評価した。
○ :樹脂溶液が透明であり、流動性がある。
△ :流動性があるが濁りが発生する。
× :透明感が無く、流動性もない。
(2)塗装作業性の評価
熱硬化型樹脂組成物をブリキ板に0.152ミルのアプリケーターで室温にて塗装した。塗装外観について以下の評価基準で評価した。尚、以下の実施例及び比較例において調製した樹脂溶液に固形分が混じっている時は樹脂溶液の温度を120℃まで上げて固形分を一度溶解させてから塗装した。
○:透明で表面に光沢がありフラットな面である。
△:不透明であるがフラットな面である。
×:不透明で表面がフラットな面ではない。
(3)塗膜造膜性の評価
熱硬化型樹脂組成物を乾燥後の膜厚が30μmになるようにブリキ板にアプリケーターにて塗布後、110℃で30分間乾燥させて試験片を作成した。この試験片を、25℃にて24時間放置し、塗膜外観を以下の評価基準で評価した。
○:塗膜にクラック等の異常は見られない。
△:塗膜に若干クラックが見られる。
×:塗膜全面にクラックが発生した。
(4)耐熱性の評価
熱硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が30μmになるように銅泊がラミネートされたガラスエポキシ基板上に塗装し、200℃の乾燥機で60分間乾燥した後、室温まで冷却し試験片を作成した。この試験片を260℃の溶融ハンダ浴に30秒浸漬し、室温に冷却した。このハンダ浴の浸漬操作を合計3回行い、硬化塗膜の外観について以下の評価基準で評価した。
○:塗膜に外観異常は見られない。
△:塗膜にフクレ、はがれ等異常が若干見られる。
×:塗膜全面にフクレ、はがれ等異常が見られる。
(5)機械物性の評価
機械物性は塗膜(フィルム)の引張試験を行い、弾性率と破断強度と破断伸度を求めることにより評価した。
<試験片の作製>
熱硬化型樹脂組成物を得られる塗膜の膜厚が30μmになるようにブリキ基板上に塗装した。次いで、この塗装板を50℃の乾燥機で30分間、100℃の乾燥機で30分間、200℃の乾燥機で60分間乾燥して塗膜(フィルム)を作成した。室温まで冷却した後、塗膜(フィルム)を所定の大きさに切り出し、基板から単離して測定用試料とした。
<引張試験測定方法>
測定用試料を5枚作成し、下記の条件で引張試験を行い、弾性率と破断強度と破断伸度を求めた。弾性率の値が低いほど柔軟性に優れる塗膜であることを表す。破断伸度の値が高いほど柔軟性に優れる塗膜であることを表す。そして、破断強度の値が高いほど強靭な塗膜であることを表す。
測定機器:東洋ボールドウィン社製テンシロン
サンプル形状:10mm×70mm
チャック間:20mm
引張速度:10mm/min
測定雰囲気:22℃、45%RH
(6)TGおよび線膨張係数の測定
<試験用試験片の作製>
熱硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が30μmになるようにブリキ基板上に塗装し、70℃の乾燥機で20分間乾燥した後、200℃で1時間硬化させ冷却した後、剥離した硬化塗膜を幅5mm、長さ30mmに切り出し、測定用試料とした。
<TG及び線膨張係数測定方法>
セイコー電子(株)製熱分析システムTMA−SS6000を用いて、試料長10mm、昇温速度10℃/分、荷重30mNの条件でTMA(Thermal Mechanical Analysis)法により測定した。なお、TGは、TMA測定での温度−寸法変化曲線からその変極点を求め、その温度をTGとした。さらに線膨張係数に使用した温度域は50〜60℃、及び110〜120℃での試料長の変位より求めた。TGが高いほど耐熱性に優れ線膨張係数が小さいほど寸法安定性に優れることを示す。
実施例2〜4及び比較例1〜4
第1表及び第2表に示す配合にて調製したい該は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物2〜4及び比較対照用熱硬化性樹脂組成物1〜4を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第3表及び第4表に示す。
Figure 0005320824























表2
Figure 0005320824
第1表、第2表の脚注
ヘキサメチロール化メラミン樹脂:数平均分子量600、メチロール化率100%、粘度Z(25℃、ガードナー法)
CNE:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量214、軟化点80℃
Figure 0005320824
Figure 0005320824
合成例1で得られた本発明のポリイミド樹脂の赤外線吸収スペクトルである。 合成例1で得られた本発明のポリイミド樹脂の核磁気共鳴吸収スペクトルである。 合成例2で得られた本発明のポリイミド樹脂の赤外線吸収スペクトルである。 合成例2で得られた本発明のポリイミド樹脂の核磁気共鳴吸収スペクトルである。

Claims (8)

  1. 一般式()で表される構造を有するポリイミド樹脂とアルコキシ化メラミン樹脂とを含有することを特長とする熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0005320824
    (式中n、mはそれぞれ1〜1000である。)
  2. 前記ポリイミド樹脂が、一般式(10)および/または一般式(11)で示される構造を有するポリイミド樹脂である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0005320824
  3. 前記ポリイミド樹脂が、下記一般式(12)で表されるポリイミド樹脂である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0005320824
    (n、mおよびpはそれぞれ1〜1000である。)
  4. ガンマブチロラクトンに25℃で10重量%となるように溶解したときに、ガンマブチロラクトンに可溶である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 更に有機溶剤を含有する請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記有機溶剤がガンマブチロラクトンである請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記アルコキシ化メラミン樹脂がメトキシ化メチロールメラミン樹脂である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 前記アルコキシ化メラミン樹脂の含有量が樹脂固形分換算でポリイミド樹脂100重量部に対して1〜30である請求項7記載の熱硬化性樹脂組成物。
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