以下、本発明に係るフィードフォワード制御装置およびフィードフォワード制御方法の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
本発明に係るフィードフォワード制御装置およびフィードフォワード制御方法(各実施の形態で後述するフィードフォワード制御装置50A,50B,50C,50D,50Eおよびフィードフォワード制御装置50A,50B,50C,50D,50Eを用いた制御方法)では、従来の微分器を備えた制御装置と比較してより単純な構成で変化量演算の取り扱いの容易化を図った制御装置を実現している。具体的には、図2〜図6で後述するようにディジタル演算器をサンプリング遅延器51として機能させて変化量演算の取り扱いを容易化している。
ディジタル演算器は、一般に100ミリ秒(=0.1秒)から500ミリ秒(=0.5秒)程度のサンプリング周期毎に所定のプログラム演算を実行するものであり、サンプリングデータを記憶する記憶部と所定のプログラムに従い演算を実行する演算処理部とを有する。このディジタル演算器の記憶部に所定のサンプリング周期毎にデータのサンプリングを行なったデータを記憶する一方で演算処理部に所定の周期前に取得したデータを出力するように演算処理させることによって、後述する図1に示されるようなサンプリング遅延器51を構成することができる。
図1は本発明に係るフィードフォワード制御装置およびフィードフォワード制御方法に適用されるサンプリング遅延器51を説明する図であり、図1(A)はサンプリング遅延器51のブロック図、図1(B)はサンプリング遅延器51の入力信号と出力信号との関係を示す説明図である。
図1(A)に示されるサンプリング遅延器51のブロック図に示される「Z−k」の記載はサンプリング遅延器51の出力が入力に対してk周期(ここでkは任意の自然数)遅延することを意味する。すなわち、サンプリング遅延器51は、図1(B)に示されるように、記憶したk周期前の入力を出力する処理を実行することによって、入力と同じ波形の出力をk周期遅延して出力するディジタル演算器である。
もし、ディジタル演算器のサンプリング周期が100ミリ秒(0.1秒)であり、その演算処理として10周期(k=10)前の入力を出力するように演算処理するサンプリング遅延器51を構成すれば、1秒(=0.1秒×10周期)の出力遅延が実現する。微分(変化量)の算出においては、どれだけの時間でそのプロセス量が変化したのかという時間要素の取り扱いがひとつのポイントであるが、このようなサンプリング遅延器51を使用することで、時間要素がサンプリング周期の整数倍に整理/集約されて取り扱いを容易化することができる。本発明はこの点に着目したものである。
以下、図7に示された発電プラントの主蒸気系統1の制御に本発明を適用した場合を例として、本発明に係るフィードフォワード制御装置およびフィードフォワード制御方法を実施形態毎に説明する。尚、以下の説明では、図7で示した主蒸気系統1および各構成要素2〜11については、同じ符号を付して説明を省略する。
[第1の実施形態]
図2は本発明の第1の実施形態に係るフィードフォワード制御装置の一実施例である第1のフィードフォワード制御装置50Aのブロック線図である。
図2に示される第1のフィードフォワード制御装置50Aは、図8に示される従来のフィードフォワード制御装置20に対して、フィードフォワード制御部21の代わりに第1のフィードフォワード制御部21Aを具備する点で相違するが、その他の構成要素については実質的に相違しない。そこで、本実施形態では従来のフィードフォワード制御装置20に対して相違する第1のフィードフォワード制御部21Aを中心に説明し、他の構成要素については同じ符号を付して説明を簡略または省略する。
第1のフィードフォワード制御装置50Aは、図2に示されるように、PID制御部22、記憶器23および減算器24で構成されるフィードバック制御系の出力であるPID制御部22からの出力と、フィードフォワード制御系からの出力である第1のフィードフォワード制御部21Aからの出力(先行要素)faとを加算器25で加算し、加算後の値を操作量として減温スプレー弁5へ出力する。
第1のフィードフォワード制御部21Aは、図8に示されるフィードフォワード制御部21の乗算器27の入力側に、減算器24と、サンプリング遅延器51aとをさらに付加して構成される。ここで、サンプリング遅延器51aは図1に示されるサンプリング遅延器51においてk=10の場合である。すなわち、サンプリング遅延器51aは10周期前にサンプリングした入力値を出力する機能を有する。
第1のフィードフォワード制御部21Aでは、まず、バイパス弁開度センサ10で検知される現在のタービンバイパス弁4の開度(プロセス量)pnが減算器24の正(+)側とサンプリング遅延器51aに入力される。現在のプロセス量pnが入力されたサンプリング遅延器51aでは、入力された現在のプロセス量pnに対する10周期前のプロセス量(過去のプロセス量)ppaが出力される。サンプリング遅延器51aから出力された10周期前のプロセス量ppaは減算器24の負(−)側に入力される。
現在のプロセス量pnと10周期前のプロセス量ppaが入力された減算器24では、現在のプロセス量pnから10周期前のプロセス量ppaが減算され、演算結果が出力される。減算器24の演算結果は、現在から過去10周期までの間に変化したプロセス量(変化量)vnであり、このプロセス量の変化量vnは減算器24からゲイン調整手段としての乗算器27に入力される。乗算器27は入力されたプロセス量の変化量vnに記憶器26から読み出したゲインを乗算してゲイン調整した結果を先行要素faとして出力する。加算器25以降の処理は図8に示される従来のフィードフォワード制御装置20と同様である。
このように、第1のフィードフォワード制御装置50Aは、タービンバイパス弁4の開度(プロセス量)を指標にして出力する先行要素の量を決定するフィードフォワード制御系としての第1のフィードフォワード制御部21Aを具備し、このフィードフォワード制御部21Aが、プロセス量pnを入力しサンプリング周期毎に逐次記憶する記憶部と記憶部に記憶した過去のプロセス量ppaを入力時から所定時間経過時に出力する遅延演算処理部とを有する第1の遅延演算処理手段としてのサンプリング遅延器51aと、このサンプリング遅延器51a(第1のフィードフォワード制御部21A)に入力された現在のプロセス量pnとサンプリング遅延器51aの出力である過去のプロセス量ppaとの差を演算して出力する減算器24を備え、先行要素(の量)faを減算器24の出力(プロセス量の変化量vn)の比例量に調整して出力するように構成されるので、プロセス量の変化量vnに応じて先行要素faを調整することができる。
従って、第1のフィードフォワード制御装置50Aによれば、プロセス量の変化量vnが大きいときは先行要素faを大きく、定常安定状態に入りプロセス量の変化量vnが小さいときは先行要素faを小さく作用させるフィードフォワード制御を実現することができる。
また、第1のフィードフォワード制御部21Aは、現在のプロセス量pnから所定時間(所定周期)でのプロセス量の変化量vnを算出する変化量算出手段、すなわち、微分器と実質的に等価な手段を一のサンプリング遅延器51aと一の減算器24によって実現することができるので、従来よりも比較的簡単な構成によって変化量の取り扱いが可能なフィードフォワード制御装置を実現することができる。
次に、第1のフィードフォワード制御装置50Aが行なうフィードフォワード制御方法(以下、「第1のフィードフォワード制御方法」と称する。)について説明する。尚、フィードフォワード制御方法とは、フィードフォワード制御装置が行なう制御のうち、フィードフォワード制御系が行なう制御をいう。
第1のフィードフォワード制御方法は、第1のフィードフォワード制御部21Aで行なわれる。第1のフィードフォワード制御部21Aでは、第1のフィードフォワード制御部21Aに入力される現在のプロセス量pnをサンプリング遅延器51aがサンプリング周期毎に記憶し、既に記憶された現在から10周期前のプロセス量ppaを出力する。続いて、減算器24が現在のプロセス量pnとサンプリング遅延器51aから出力された10周期前のプロセス量ppaとの差を求め、演算結果を出力する。続いて、減算器24から出力されたサンプリング周期10周期の間に変化したプロセス量の変化量vnに対して乗算器27が予め記憶器26に設定されたゲインを与えて先行要素faとして加算器25へ出力する。
このようなステップがなされる第1のフィードフォワード制御方法によれば、現在のプロセス量pnに基づいて、現在のプロセス量pnと現在から10周期前の過去のプロセス量ppaとの差、すなわち、(現在から)10周期前の時点から現在までの間におけるプロセス量の変化量vnを算出し、この変化量vnに比例する先行要素faをフィードフォワード制御系の出力とすることができるので、プロセス量の変化量vnが大きいときは先行要素faを大きく、定常安定状態に入りプロセス量の変化量vnが小さいときは先行要素faを小さく作用させるフィードフォワード制御を実現することができる。
尚、第1のフィードフォワード制御装置50Aの第1のフィードフォワード制御部21Aにおける適切なゲインが1である場合、第1のフィードフォワード制御部21Aが備える記憶器26および乗算器27は任意の構成とすることができる。すなわち、第1のフィードフォワード制御装置50Aにおいて、記憶器26および乗算器27を備えないフィードフォワード制御系が構成される場合もある。この点は、後述する第2のフィードフォワード制御装置50B〜第5のフィードフォワード制御装置50Eについても同様である。
また、図2に示されるサンプリング遅延器51aは、図1に示されるサンプリング遅延器51の一例にすぎず、k=10の場合に限られない。すなわち、kが10以外の自然数となる場合もある。また、サンプリング遅延器51aのサンプリング周期は、ディジタル演算器として実現可能な値であれば任意である。さらに、記憶可能なデータ容量については、少なくとも遅延させる周期分のデータを記憶できれば任意で良い。すなわち、入力に対して10周期分遅延させて出力する場合には最低10周期分のデータ(プロセス量)を記憶できれば良い。
[第2の実施形態]
図3は本発明の第2の実施形態に係るフィードフォワード制御装置の一実施例である第2のフィードフォワード制御装置50Bのブロック線図である。
図3に示されるように、第2のフィードフォワード制御装置50Bは、図2に示される第1のフィードフォワード制御装置50Aに対して、第1のフィードフォワード制御部21Aの代わりに第2のフィードフォワード制御部21Bを具備する点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、第2のフィードフォワード制御部21Bを中心に説明し、第1のフィードフォワード制御装置50Aの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第2のフィードフォワード制御装置50Bは、他のフィードフォワード制御装置50A,50C,50D,50Eと同様にPID制御部22、記憶器23および減算器24で構成されるフィードバック制御系と、フィードフォワード制御系としての第2のフィードフォワード制御部21Bを具備し、第2のフィードフォワード制御部21Bは、バイパス弁開度センサ10で検知されたタービンバイパス弁4の開度(プロセス量)を指標にして先行要素(の量)fbを決定する。
第2のフィードフォワード制御部21Bは、第1のフィードフォワード制御部21Aが備える変化量算出手段、すなわち、入力された現在のプロセス量を入力時から10周期遅延させて出力するサンプリング遅延器51aと、このサンプリング遅延器51aに入力される現在のプロセス量とサンプリング遅延器51aから出力される過去(10周期前)のプロセス量との差を演算して出力する減算器(以下、本実施形態において「第1の減算器」と称する。)24とを備える第1の変化量算出手段に加え、さらに、過去のプロセス量の変化分を算出する第2の変化量算出手段と、第1の変化量算出手段と第2の変化量手段の各出力を平均する平均値算出手段と、を備え、平均値算出手段から出力されるプロセス量の変化量の平均を記憶器26および乗算器27で適当なゲイン調整し先行要素fbを出力する。
ここで、第2の変化量算出手段は、変化量を算出する点で第1の変化量と共通するが、第1の変化量算出手段が現在から過去の所定時間(例えば10周期の時間)で変化したプロセス量(現在のプロセス量の変化量vn)を算出するのに対して、第2の変化量算出手段が過去のある時点から第1の変化量算出手段が出力を遅延させる時間(上記例ならばサンプリング周期の10周期分)におけるプロセス量の変化量(過去のプロセス量の変化量vp)を算出する点で第1の変化量算出手段とは相違する。
図3に示される第2のフィードフォワード制御部21Bの第2の変化量算出手段は、現在のプロセス量を入力してサンプリング周期毎に逐次記憶し、1周期遅延させて出力するサンプリング遅延器51bと、11周期遅延させて出力するサンプリング遅延器51cと、サンプリング遅延器51bの出力(1周期遅延)からサンプリング遅延器51cの出力(11周期遅延)を減算して出力する減算器(以下、本実施形態において「第2の減算器」と称する。)24とを備える。
すなわち、図3に示される第2の変化量算出手段は、サンプリング遅延器51bとサンプリング遅延器51cとから出力されるプロセス量の差を第2の減算器24から出力する構成であり、現在の1周期前から11周期前までの10周期間のプロセス量の変化量vpを出力する。
また、図3に示される第2のフィードフォワード制御部21Bの平均値算出手段は、プロセス量の変化量vn,vpを平均するため、二つの変化量vn,vpを加算する加算器25と、加算器25で加算した二つの変化量vn,vpの個数である2の逆数(=0.5)を記憶する記憶器53と、記憶器53から平均値算出用の係数である0.5を読み出して乗算する乗算器27とを備えて構成される。平均値算出手段からの出力は、第1のフィードフォワード制御部21Aと同様に、乗算器27でゲイン調整された後、加算器25でフィードバック制御系の出力と加算され、減温スプレー弁5へ送られる。
このように、第2のフィードフォワード制御装置50Bでは、第1のフィードフォワード制御部21Aに対し、さらに、過去のプロセス量の変化量vpを算出する第2の変化量算出手段と、第1の変化量算出手段からの出力、すなわち、第1の減算器24から出力される現在のプロセス量の変化量vnと、第2の変化量算出手段の出力、すなわち、第2の減算器24から出力される過去のプロセス量の変化量vpとの平均を算出する平均値算出手段とを備える第2のフィードフォワード制御部21Bを具備するので、複数のプロセス量の変化量を平滑化した変化量に基づいて先行要素(の量)fbを調整することができる。
第2のフィードフォワード制御装置50Bによれば、第1のフィードフォワード制御装置50Aによって得られる効果に加え、さらに、プロセス量の変化量vn,vpが過剰に変動している場合等において、これに応答して先行要素が過剰となる弊害を避けることができるので、第1のフィードフォワード制御装置50Aよりもさらに外乱ノイズの影響を受けにくくより安定した先行要素を生成できる効果を得ることができる。
次に、第2のフィードフォワード制御装置50Bが行なうフィードフォワード制御方法(以下、「第2のフィードフォワード制御方法」と称する。)について説明する。
第2のフィードフォワード制御方法は、第2のフィードフォワード制御部21Bで行なわれる。第2のフィードフォワード制御部21Bでは、第2のフィードフォワード制御部21Bに入力される現在のプロセス量pnをサンプリング遅延器51a,51b,51cのそれぞれがサンプリング周期毎に記憶し、サンプリング遅延器51aが現在から10周期前のプロセス量ppaを、サンプリング遅延器51bが1周期前のプロセス量ppbを、サンプリング遅延器51cが11周期前のプロセス量ppcをそれぞれ出力する。
続いて、第1の減算器24が現在のプロセス量pnとサンプリング遅延器51aから出力された10周期前のプロセス量ppaとの差を求め、演算結果を出力する一方、第2の減算器24がサンプリング遅延器51bの出力である現在から1周期前のプロセス量ppbとサンプリング遅延器51cの出力である現在から11周期前のプロセス量ppcとの差を求める。
続いて、第1の減算器24から出力されたサンプリング周期10周期(現在の10周期前から現在まで)の間に変化した現在のプロセス量の変化量vnと、第2の減算器24から出力されたサンプリング周期10周期(現在の11周期前から1周期前まで)の間に変化した現在から1周期前の過去のプロセス量の変化量vpとを加算器25で加算した後、乗算器27で0.5を乗じて変化量vn,vpの相加平均(単純平均)を求める。
続いて、乗算器27が出力したプロセス量の変化量vn,vpの相加平均に対して、乗算器27が予め記憶器26に設定されたゲインを与えて先行要素fbとして加算器25へ出力する。
このようなステップがなされる第2のフィードフォワード制御方法によれば、第1のフィードフォワード制御方法により得られる効果に加え、プロセス量の変化量vn,vpが過剰に変動している場合等においても、これに応答して先行要素が過剰となる弊害を避けることができ、第1のフィードフォワード制御方法よりもさらに外乱ノイズの影響を受けにくくより安定した先行要素を生成できる効果を得ることができる。
尚、第2の変化量算出手段を構成するサンプリング遅延器51b,51cの遅延させる周期は両者の遅延させる周期の差がサンプリング遅延器51aの遅延させる周期と一致する限り図3に示される例に限定されない。例えば、図3に示される第2のフィードフォワード制御部21Bでは、サンプリング遅延器51aが10周期遅延させる場合であっても、サンプリング遅延器51bが5周期、サンプリング遅延器51cが15周期遅延させるように構成される場合等もあり得る。
また、平均値算出手段は、相加平均を求めていたが、重み付け演算した加重平均を算出するようにしても良い。加重平均を算出する場合、現在のプロセス量の変化量vnおよび過去のプロセス量の変化量vpのそれぞれに重み付けをした後に加算器25で加算して重み付けを考慮した平均値算出用の係数を記憶器53に記憶させておくことによって実現することができる。例えば、3:2の重み付けをする場合には、平均値算出用係数は、3+2=5の逆数、すなわち、0.2となる。また、加重平均を算出するように平均値算出手段を構成しても良い点は他の実施形態に係る平均値算出手段についても同様である。
[第3の実施形態]
図4は本発明の第3の実施形態に係るフィードフォワード制御装置の一実施例である第3のフィードフォワード制御装置50Cのブロック線図である。
図4に示されるように、第3のフィードフォワード制御装置50Cは、図2に示される第1のフィードフォワード制御装置50Aに対して、第1のフィードフォワード制御部21Aの代わりに第3のフィードフォワード制御部21Cを具備する点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、第3のフィードフォワード制御部21Cを具備する点を中心に説明し、第1のフィードフォワード制御装置50Aの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第3のフィードフォワード制御装置50Cは、他のフィードフォワード制御装置50A,50B,50D,50Eと同様にPID制御部22、記憶器23および減算器24で構成されるフィードバック制御系と、フィードフォワード制御系としての第3のフィードフォワード制御部21Cを具備し、第3のフィードフォワード制御部21Cは、バイパス弁開度センサ10で検知されたタービンバイパス弁4の開度(プロセス量)を指標にして先行要素(の量)fcを決定する。
第3のフィードフォワード制御部21Cは、第1のフィードフォワード制御部21Aに対して、減算器24と乗算器27との間に、第2の変化量算出手段と、平均値算出手段とを備える点においては、第2のフィードフォワード制御部21Bと同じであるが、第2の変化量算出手段を第2のフィードフォワード制御部21Bとは異なる構成によって実現している。すなわち、第3のフィードフォワード制御部21Cは、第2のフィードフォワード制御部21Bと等価な作用を、異なる構成によって実現している。
具体的には、過去のプロセス量の変化量vpの算出を、二台のサンプリング遅延器51b,51cと減算器24とで行なわずに、現在のプロセス量の変化量vnを入力し、例えば1周期等の何周期分か遅延させるサンプリング遅延器51(51b)によって行なう。つまり、図4に示される第3のフィードフォワード制御部21Cは、図3に示される第2のフィードフォワード制御部21Bに対して、二台のサンプリング遅延器51b,51cと第2の減算器24とを削除し、第1の減算器24と加算器25との間に一台のサンプリング遅延器51bを並列に設けて、第1の減算器24の出力をサンプリング遅延器51bへ入力する一方、出力を加算器25へ出力する構成とする。
このように構成される第3のフィードフォワード制御装置50Cによれば、第2の変化量算出手段を一台のサンプリング遅延器51bで実現することができるので、第2のフィードフォワード制御装置50Bよりも少ない構成要素で第2のフィードフォワード制御装置50Bと実質的に同等の作用・効果を得ることができる第3のフィードフォワード制御装置50Cを提供することができる。
次に、第3のフィードフォワード制御装置50Cが行なうフィードフォワード制御方法(以下、「第3のフィードフォワード制御方法」と称する。)について説明する。
第3のフィードフォワード制御方法は、第3のフィードフォワード制御部21Cで行なわれる。第3のフィードフォワード制御部21Cでは、まず、サンプリング遅延器51aが、第3のフィードフォワード制御部21Cに入力される現在のプロセス量pnをサンプリング周期毎に記憶し、サンプリング遅延器51aが現在から10周期前のプロセス量ppaを出力する。
続いて、減算器24が現在のプロセス量pnとサンプリング遅延器51aから出力された10周期前のプロセス量ppaとの差を求め、演算結果(現在のプロセス量の変化量pn)を加算器25およびサンプリング遅延器51bへ出力する。
続いて、サンプリング遅延器51bが減算器24から出力された現在のプロセス量の変化量pnを1周期遅延させて、現在から1周期前(過去)のプロセス量の変化量vpaを加算器25へ出力する。
続いて、加算器25が、減算器24から出力される現在のプロセス量の変化量vnと、サンプリング遅延器51bから出力された過去のプロセス量の変化量vpaとを加算した後、乗算器27が0.5を乗じて変化量vn,vpaの相加平均(単純平均)を求める。
続いて、平均値算出手段である乗算器27が出力したプロセス量の変化量vn,vpaの相加平均に対して、ゲイン調整手段としての乗算器27が予め記憶器26に設定されたゲインを与えて先行要素fcとして加算器25へ出力する。
このようなステップがなされる第3のフィードフォワード制御方法によれば、第2のフィードフォワード制御方法と実質的に同じ効果を得ることができる。
尚、第2の変化量算出手段を構成するサンプリング遅延器51bの遅延させる周期は、任意に設定できるものであり、図4に示される1周期の場合に限定されない。
[第4の実施形態]
図5は本発明の第4の実施形態に係るフィードフォワード制御装置の一実施例である第4のフィードフォワード制御装置50Dのブロック線図である。
図5に示されるように、第4のフィードフォワード制御装置50Dは、図4に示される第3のフィードフォワード制御装置50Cに対して、第3のフィードフォワード制御部21Cの代わりに第4のフィードフォワード制御部21Dを具備する点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、第4のフィードフォワード制御部21Dを中心に説明し、第3のフィードフォワード制御装置50Cの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第4のフィードフォワード制御装置50Dは、他のフィードフォワード制御装置50A,50B,50C,50Eと同様にPID制御部22、記憶器23および減算器24で構成されるフィードバック制御系と、フィードフォワード制御系としての第4のフィードフォワード制御部21Dを具備し、第4のフィードフォワード制御部21Dは、バイパス弁開度センサ10で検知されたタービンバイパス弁4の開度(プロセス量)を指標にして先行要素(の量)fdを決定する。
図5に示されるように、第4のフィードフォワード制御部21Dは、図4に示される第3のフィードフォワード制御部21Cが第2の変化量算出手段として備えるサンプリング遅延器51(51b)が一台ではなく、遅延させる周期が異なる例えば四台等の複数台のサンプリング遅延器51(51b,51d,51e,51f)になっている点と、サンプリング遅延器51の設置台数の増加に伴い記憶器53に記憶させる平均値算出用の係数が0.2となっている点で相違するが、その他の点は実質的な相違はない。
すなわち、第3のフィードフォワード制御部21Cでは、過去のプロセス量の変化量vpの算出を一台のサンプリング遅延器51bで行なっているが、第4のフィードフォワード制御部21Dでは、第1の変化量算出手段を構成する減算器24と、平均値算出手段を構成する加算器54との間に複数台(四台)のサンプリング遅延器51(51b,51d,51e,51f)を並列に設けて、減算器24の出力である現在のプロセス量の変化量vnをそれぞれのサンプリング遅延器51b,51d,51e,51fへ入力する一方、それぞれの出力である過去のプロセス量の変化量vpb,vpd,vpe,vpfを加算器54へ出力する構成としている。
このように構成された第4のフィードフォワード制御装置50Dによれば、第2のフィードフォワード制御装置50Bおよび第3のフィードフォワード制御装置50Cと実質的に同等の作用・効果を得ることができる。また、より多くのプロセス量の変化量vn、vp(vpb,vpd,vpe,vpf)を用いて平滑化を行なっているので、プロセス量の変化量vn,vpが過剰に変動している場合等においても、これに応答して先行要素が過剰となる弊害を避けることができ、外乱ノイズの影響を受けにくくより安定した先行要素fdを生成できる。
次に、第4のフィードフォワード制御装置50Dが行なうフィードフォワード制御方法(以下、「第4のフィードフォワード制御方法」と称する。)について説明する。
第4のフィードフォワード制御方法は、第4のフィードフォワード制御部21Dで行なわれる。第4のフィードフォワード制御部21Dでは、まず、サンプリング遅延器51aが、第4のフィードフォワード制御部21Dに入力される現在のプロセス量pnをサンプリング周期毎に記憶し、サンプリング遅延器51aが現在から10周期前のプロセス量ppaを出力する。
続いて、減算器24が現在のプロセス量pnとサンプリング遅延器51aから出力された10周期前のプロセス量ppaとの差を求め、演算結果(現在のプロセス量の変化量pn)を加算器54および各サンプリング遅延器51b,51d,51e,51fへ出力する。
続いて、サンプリング遅延器51bは、減算器24から出力された現在のプロセス量の変化量pnを1周期遅延させて、現在から1周期前(過去)のプロセス量の変化量vpを加算器54へ出力する。他のサンプリング遅延器51d,51e,51fも同様にして、減算器24から出力された現在のプロセス量の変化量pnをそれぞれ2,3,4周期遅延させて、現在から2,3,4周期前(過去)のプロセス量の変化量vpを加算器54へ出力する。
続いて、加算器54が、減算器24から出力される現在のプロセス量の変化量vnと、サンプリング遅延器51b,51d,51e,51fから出力された過去のプロセス量の変化量vpb,vpd,vpe,vpfとを加算した後、乗算器27が0.2(=5の逆数)を乗じて変化量vn,vpb,vpd,vpe,vpfの相加平均(単純平均)を求める。
続いて、平均値算出手段である乗算器27が出力したプロセス量の変化量vn,vpb,vpd,vpe,vpfの相加平均に対して、ゲイン調整手段としての乗算器27が予め記憶器26に設定されたゲインを与えて先行要素fdとして加算器25へ出力する。
このようなステップがなされる第4のフィードフォワード制御方法によれば、第2のフィードフォワード制御方法および第3のフィードバック制御方法と実質的に同じ効果を得ることができる。また、より多くのプロセス量の変化量を用いて平滑化を行なっているので、プロセス量の変化量vn,vpが過剰に変動している場合等においても、これに応答して先行要素が過剰となる弊害を避けることができ、外乱ノイズの影響を受けにくくより安定した先行要素fdを生成できる。
尚、サンプリング遅延器51b,51d,51e,51fの遅延させる周期は、任意に設定できるものであり、図5に示される1,2,3,4周期の場合に限定されない。
[第5の実施形態]
図6は本発明の第5の実施形態に係るフィードフォワード制御装置の一実施例である第5のフィードフォワード制御装置50Eのブロック線図である。
図6に示されるように、第5のフィードフォワード制御装置50Eは、図2に示される第1のフィードフォワード制御装置50Aに対して、第1のフィードフォワード制御部21Aの代わりに第5のフィードフォワード制御部21Eを具備する点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、第5のフィードフォワード制御部21Eを中心に説明し、第1のフィードフォワード制御装置50Aの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
第5のフィードフォワード制御装置50Eは、他のフィードフォワード制御装置50A,50B,50C,50Dと同様にPID制御部22、記憶器23および減算器24で構成されるフィードバック制御系と、フィードフォワード制御系としての第5のフィードフォワード制御部21Eを具備し、第5のフィードフォワード制御部21Eは、バイパス弁開度センサ10で検知されたタービンバイパス弁4の開度(プロセス量)を指標にして先行要素(の量)feを決定する。
第5のフィードフォワード制御部21Eは、プロセス量の変化量vnが予め設定された閾(しきい)値よりも大きいときには先行要素を強く作用させる一方、当該閾値よりも小さいときは、定常安定状態にあると判断し先行要素を一定割合で減少させるように構成される。
具体的には、図6に示されるように、バイパス弁開度センサ10で検知されたタービンバイパス弁4の開度(プロセス量)を入力とする並列な信号経路として、図6に示される従来のフィードフォワード制御装置20のフィードフォワード部21に相当する第1の信号経路と、図2等に示される変化量算出手段(サンプリング遅延器51aおよび減算器24)を備えた第2の信号経路とが設けられ、第2の信号経路には変化量算出手段の出力側には、プロセス量の変化量の大小に応じて信号処理する信号処理手段が設けられる。
さらに、第1の信号経路に設けられた乗算器27の出力側と第2の信号経路の信号処理手段の出力側には、乗算器27の出力から信号処理手段の出力を減算して差を求める減算器24が設けられる。第5のフィードフォワード制御部21Eは、第1の信号経路の出力から第2の信号経路の出力を減算した減算器24からの出力をフィードフォワード制御における先行要素の量feとして出力する。すなわち、プロセス量の変化量vnが予め設定された閾値よりも小さいときは、第2の信号経路側で先行要素を一定割合で減少させるように作用する。
第1の信号経路と並列な第2の信号経路には、変化量算出手段と、その出力側に設けられ、変化量算出手段の出力が大きいか否かを判定する比較手段と、この比較手段の出力側に比較手段の判定結果に応じて出力を切り替える切替手段とが設けられる。具体的には、図6に一例として示されるように、比較手段は、予め比較判定用の閾値を記憶する記憶器56と、記憶器56に記憶される閾値εと変化量算出手段の出力とを比較して比較結果を出力する比較器57とを備えて構成される。また、切替手段は、入力が0(OFF)か1(ON)かに応じて出力を切り替えるスイッチ58で構成される。
比較器57は、プロセス量の変化量vnが閾値εより大きい場合は出力を0とする一方、プロセス量の変化量vnが閾値εより小さい場合は定常安定状態と判断して出力を1とする。スイッチ58は、ON側が乗算器27から出力される先行要素を減少させる減衰側であり、OFF側が乗算器27から出力される先行要素を減少させない非減衰側である。スイッチ58は、比較器57からの出力が1の場合、定常安定状態と判断し接点の接続を図6に示される接点b−c間(減衰側)に切り替える。一方、比較器57からの出力が0の場合、接点の接続を図6に示される接点a−c間(非減衰側)に切り替える。
このように構成される第5のフィードフォワード制御装置50Eによれば、第5のフィードフォワード制御部21Eが、変化量算出手段と、比較手段と、切替手段とを備えることで、比較手段が変化量算出手段で算出された変化量が比較判定基準となる閾値よりも小さい場合には、現在、制御対象が定常安定状態にあると判断して、切替手段が第1の信号経路から出力される先行要素の量を減少(減衰)させるように出力を切り替えることができる。従って、プロセス量の変化量vnが閾値εよりも小さい定常安定状態が継続する場合、先行要素を最終的に零にするようにすることができる。
次に、第5のフィードフォワード制御装置50Eが行なうフィードフォワード制御方法(以下、「第5のフィードフォワード制御方法」と称する。)について説明する。
第5のフィードフォワード制御方法は、第5のフィードフォワード制御部21Eで行なわれる。第5のフィードフォワード制御部21Eでは、第5のフィードフォワード制御部21Eに入力される現在のプロセス量pnが乗算器27側の第1の信号経路と、サンプリング遅延器51aおよび減算器24とを備える変化量算出手段側の第2の信号経路とに入力される。
そして、第2の信号経路側では、変化量算出手段がプロセス量の変化量vnを算出し、比較器57が、プロセス量の変化量vnと定常安定状態であるか否かを判定するための基準値となる閾値εとの大小比較を行なう。比較器57の比較判定の結果、vnがεよりも小さい場合、比較器57はスイッチ(SW)58のSWをONとするため、1を出力し、これを受け取ったスイッチ58はSWをONにして(図6に示される接点b−cを接続して)、正の定数を出力する。
一方、比較器57の比較判定の結果、vnがεよりも大きい場合、比較器57はスイッチ(SW)58のSWをOFFとするため、0を出力し、これを受け取ったスイッチ58はSWをOFFにして(図6に示される接点a−cを接続して)、0を出力する。
従って、定常安定状態(SWがONの状態)が継続すれば、第1の信号経路から出力される先行要素の量は、サンプリング周期毎に所定値(図6に示される例では0.1)ずつ減少していくことになり、やがて零となる。逆に出力が不安定な状態(SWがOFFの状態)にある場合には、第1の信号経路から出力される先行要素の量から減算する量は零ということなので、第1の信号経路から出力される先行要素の量がそのまま維持されることになる。
このようなステップがなされる第5のフィードフォワード制御方法によれば、プロセス量の変化が大きい場合には、第2の信号経路側から0を出力することによって第1の信号経路から出力される先行要素の量がそのまま維持される一方、プロセス量の変化が小さく定常安定状態にある場合には、第2の信号経路側から正の定数を出力することによって第1の信号経路から出力される先行要素の量が一定値で減少していくことになるので、定常安定状態(SWがONの状態)が継続する際には、第1の信号経路から出力される先行要素の量を徐々に減少させてやがて零とすることができる。
以上、フィードフォワード制御装置50A,50B,50C,50D,50Eおよびフィードフォワード制御方法によれば、フィードフォワード制御部21A,21B,21,C,21D,21Eがプロセス量の変化量に応じた先行要素を出力することができるので、プロセス量の変化量vnが大きいときは先行要素faを大きく、定常安定状態に入りプロセス量の変化量vnが小さいときは先行要素faを小さく作用させるフィードフォワード制御を実現することができる。
また、フィードフォワード制御部21A,21B,21C,21D,21Eは、現在のプロセス量pnに基づいて、所定時間(所定周期)におけるプロセス量の変化量vnを算出する手段、すなわち、微分器と実質的に等価な演算処理手段を従来よりも比較的簡単な構成によって実現することができるので、変化量を取り扱う従来のフィードフォワード制御装置よりも構成を複雑化させることなく、変化量の取り扱いが可能なフィードフォワード制御装置50A,50B,50C,50D,50Eを実現することができる。
また、フィードフォワード制御装置50B,50C,50Dおよび当該フィードフォワード制御装置50B,50C,50Dを用いたフィードフォワード制御方法によれば、プロセス量の変化量vn,vpが過剰に変動している場合等においても、これに応答して先行要素が過剰となる弊害を避けることができ、外乱ノイズの影響を受けにくくより安定した先行要素を生成できる効果を得ることができる。
特に、第3のフィードフォワード制御装置50Cおよびフィードフォワード制御方法によれば、第2のフィードフォワード制御装置50Bよりも少ない構成要素で構成される第3のフィードフォワード制御装置50Cによって、第2のフィードフォワード制御装置50Bおよび第2のフィードフォワード制御方法と実質的に同等の作用・効果を得ることができる。
さらに、第5のフィードフォワード制御装置50Eおよび第5のフィードフォワード制御方法によれば、定常安定状態では一定量で先行要素の量を減少させるように制御されるので、定常安定状態が継続する場合、先行要素を最終的に零とすることができ、常に先行要素を利かせていることに伴う制御系全体としての外乱要因を低減させることができる。
尚、本発明は上記の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化しても良い。また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。