以下、図1〜図4を用いて、本発明の第1の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成を示す要部断面図である。図2は、発明の第1の実施形態による電子油圧制御モジュールに用いるコントロールバルブを含む油圧回路の回路図である。図3は、本発明の第1の実施形態による電子油圧制御モジュールに用いる電子制御装置の構成を示す斜視図である。図4は、本発明の第1の実施形態による電子油圧制御モジュールに用いる電子制御装置の構成を示す要部断面図である。
最初に、図1を用いて、本実施形態による電子油圧制御モジュールの全体構成について説明する。
本実施形態の電子油圧制御モジュール1は、主として、配線プレート2と、ロアコントロールバルブ6と、セパレートプレート5とから構成される。
配線プレート2は、複数の配線部材22,センサ31やスイッチ32等の電装部品,電子制御装置4及びコネクタ23が、樹脂21によりインサート成形されて、形成されている。樹脂21は、絶縁性を有する熱可塑性樹脂である。樹脂21により、複数の配線部材22の間や、電子制御装置4の複数の端子間が絶縁される。
配線部材22は、熱伝導率の良い銅、または銅系の合金材のバスバーからなる。なお、配線部材22としては、ワイヤーハーネス、ケーブル、配線基板等を用いることもできるが、熱可塑性樹脂によるインサート成形が容易なバスバーが好適である。
配線部材22には、センサ31,スイッチ32,ソレノイド33等の制御対象部品である電装部品や、電子制御装置4や、コネクタ23が溶接により、電気的に接続されている。なお、接続方法としては、溶接以外に、コネクタ、圧着、ロウ付け等を用いることもできる。センサ31,スイッチ32は、図示の例では、樹脂21に埋設されているが、樹脂21の上に搭載してもよいものである。
センサ31、スイッチ32、ソレノイド33等は、制御対象部品である各種電装部品である。センサ31は、変速機の内部にある入力や出力軸の回転体を測定する回転センサ、フルードの温度を測定する油温センサ、フルードの圧力を測定する油圧センサ、傾斜角を測定する傾斜角センサ等が含まれる。スイッチ32は、フルードの圧力を測定する油圧スイッチ、変速機のレンジ信号を測定するレンジスイッチ等が含まれる。ソレノイド33は、変速制御するために、弁を開閉させてフルードの流量を制御する。
また、樹脂21には、貫通穴29が形成されている。ソレノイド33は、樹脂21の上に搭載されるとともに、その可動部が貫通孔29に挿入されている。貫通穴29は、油路として用いられる。ソレノイド33は、油路の開閉に用いられる。ソレノイド33の本体は、樹脂21にネジ等により固定されている。なお、ソレノイド33の本体を、樹脂21に埋設するようにして固定してもよいものである。また、ソレノイド33を、ロアコントロールバルブ6の側に設けることもできる。その場合、電気的な接続は、コネクタを介しての接続となる。以上のように、ソレノイド33の取付け場所は、配線プレート2またはロアコントロールバルブ6でも良い。ソレノイド33の取付け方向は、縦方向でも横方向でも良い。図示の例では、ソレノイド33は、配線プレート2に縦方向に取付けている。
コネクタ23は、外部等に接続する外部コネクタ201と接続部材202を介して接続されている。接続部材202としては、バスバーを用いている。なお、接続部材202としては、ワイヤーハーネス、配線基板等を用いることもできる。また、接続部材202を削減して外部コネクタ201を直接配線プレート2に取付け、一体成形してもよいものである。また、センサ31,スイッチ32等の各種電装部品の最適配置が不可能な場合は、各種電装部品のコネクタと、コネクタ201を接続部材により電気的に接続してもよいものである。
外部コネクタ201は、変速機ケース9に間口を設けて、車両側と電気的に接続されている。変速機ケース9とのシール性は、外部コネクタ201に設けたOリング等で気密と油密している。
配線プレート2の樹脂21のセパレートプレート5と接する面側の一部に、油圧を制御するための油路用に凹部24A,24B,24Cが設けられている。油路とは、変速機用フルードを流すための溝である。樹脂21のセパレートプレート5と接する面は、油密できる平面度を備えている。
ロアコントロールバルブ6は、変速機の油圧を制御するために用いられる。ロアコントロールバルブ6は、油圧を制御するためのフルードを通す凹部63A,63B,63Cが形成されている。凹部63A,63B,63Cは、油路の機能を持っている。ロアコントロールバルブ6は、アルミ材を用いてアルミダイカスト法で成形している。なお、ロアコントロールバルブ6としては、他の金属材により形成してもよく、また、樹脂製としてもよいものである。ロアコントロールバルブ6は、図示のように、配線プレート2の下部に取り付けられるため、ロアと称しているが、配線プレート2の上部に取り付けられる構造の場合には、アッパコントロールバルブと称せられるものである。
ロアコントロールバルブ6の凹部63A,63B,63Cは、それぞれ、配線プレート2の凹部24A,24B,24Cと対応する位置に設けられている。
配線プレート2と、ロアコントロールバルブ6の間には、セパレートプレート5が挟み込まれている。セパレートプレート5は、配線プレート2とロアコントロールバルブ6に設けられた油路の中のフルードを漏らさないように油密している機能を持っている。要するに、セパレートプレート5と接触している部品は、接触面で油密されている。
セパレートプレート5の材料は、上下の油密が確保できれば、金属でも弾性体でも良く、一枚板で構成されているものが好適である。本実施例では、鉄板で示している。板厚は、薄くても厚くても良いが、挟むときに変形せずに、ある程度の強度を持つ厚さである。また、セパレートプレート5は、配線プレート2とロアコントロールバルブ6と接する面は、フルードを油密する平面度を備えている。
セパレートプレート5は、配線プレート2の凹部24A,24B,24Cにより構成される油路と、ロアコントロールバルブ6の凹部63A,63B,63Cにより構成される油路を連通する連通部51A,51B,51Cを備えている。連通部51A,51B,51Cの形状は、円でも四角でも良く、貫通又は斜めに連通していればよいものである。
樹脂21の厚さは、最薄で配線部材をインサート成形できる厚さでも良いが、油路用の凹部24が成形でき、可能な限り肉厚を一定にし、電子制御装置や各種電装部品が埋設できる厚さであっても良い。
配線プレート2に設けられた複数の凹部の内、凹部24Cには、油圧スイッチ等のスイッチ32のセンサ部分が面している。これにより、凹部24Cにより形成される油路内を流れるフルードの油圧等を検出することができる。
また、配線プレート2に設けられた複数の凹部に関しては、ダミー油路用の凹部を設けてもよいものである。樹脂21は、インサートモールド成形されるため、ダミー油路用の凹部を設けることで、成形性を向上させることができる。
ここで、図2を用いて、本実施形態による電子油圧制御モジュールに用いるコントロールバルブを含む油圧回路について説明する。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。図2において、太い実線は油路を示し、細い実線は信号線を示している。
オイルポンプOPは、オイルパン8から、ストレーナー7を介して、フルードを吸い上げる。オイルポンプOPにより昇圧されたフルードは、コントロールバルブの油路F1を通して、ソレノイド33に供給される。ソレノイド33は、電子制御装置4から制御信号に基づいて開閉され、油圧を制御する。ソレノイド33により制御された油圧は、コントロールバルブの油路F2を通して、SW31(油圧スイッチ)や、センサ32(油圧センサ)に供給される。SW31や、センサ32等で検知された油圧は、電子制御装置4に取り込まれる。電子制御装置4は、検出された油圧が所定油圧となるように、ソレノイド33を制御する。所定圧に制御されたフルードは、コントロールバルブの油路F3を通して、アクチュエータ等の負荷Lに供給され、負荷Lを動作させる。
ここで、例えば、油路F1,F2が、図1に示した貫通穴29によって形成される油路に相当し、油路F2,F3が、図1に示した凹部24C,63Cによって形成される油路に相当する。図1に示した凹部24A,24B,63A,63Bも、それぞれ、所定の油路を構成している。
以上のように、本実施形態では、ロアコントロールバルブ6の凹部63A,63B,63Cと、配線プレート2の凹部24A,24B,24Cとにより、油路を構成している。
従来は、ロアコントロールバルブ6と、アッパコントロールバルブと、セパレートプレート5により、コントロールバルブを構成していた。ここで、アッパコントロールバルブは、ロアコントロールバルブ6と同様にアルミダイカスト製であり、ロアコントロールバルブ6と面対称に凹部が形成されている。そして、ロアコントロールバルブ6とアッパコントロールバルブとの間に、セパレートプレート5が挟み込まれることで、コントロールバルブの油路が構成されている。
それに対して、本実施形態では、配線プレート2に凹部24A,24B,24Cを形成し、これらの配線プレート2の凹部24A,24B,24Cと、ロアコントロールバルブ6の凹部63A,63B,63Cとにより、油路を構成している。そのため、コントロールバルブの片方の部材(上述の例では、アッパコントロールバルブ)を削減でき、部品点数を削減できる。
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態による電子油圧制御モジュールに用いる電子制御装置4の構成について説明する。
図3に示すように、電子制御装置4は、封止樹脂47により封止され、その外部にリード端子部46aとフランジ部46bとからなるリード部材が突出している。また、図4に示すように、電子制御装置4は、電子部品43A,43Bと、多層配線基板41と、リード部材46bと、封止樹脂47を主な部材として構成されている。
そして、電子制御装置4は、リード端子部46aとフランジ部46bを有するリード部材に、電子部品43A,43Bを搭載した多層配線基板を、接着剤を介して接着し、多層配線基板とリード端子部を電気的な接続をし、リード端子部46aとフランジ部46bの一部を露出するように、封止樹脂47で覆った構成としている。
電子制御装置4は、センサ31やスイッチ32からの信号を入力したり、制御対象部品であるソレノイド33を制御する回路部と、他制御装置との通信する回路部を備えている。
電子部品は、チップ部品43Aやパッケージ部品43Bの混載であり、多層配線基板41の両面または片面に搭載されている。チップ部品43Aは、ベアチップのCPUや電源ICなどで、多層配線基板41に半田あるいは導電性接着剤により固着されている。チップ部品43Aの電極部分と多層配線基板41の電気的な接続は、細線ワイヤ44を用いて行われる。なお、細線ワイヤ44に代えて、半田ボールや金バンプ、導電接着剤等を用いたフリップチップ接続も用いることができる。
パッケージ部品43Bは、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどで、多層配線基板41に半田により固着されている。なお、これらのパッケージ部品43Bは、導電性接着剤を用いて固定することも可能である。特に、変速機等を制御する電子制御装置4においては、電子部品(チップ部品43Aやパッケージ部品43B)の数は、100個を超えるような比較的大きい規模の回路で形成され、比較的サイズや回路規模の小さい半導体装置や集積回路装置のようなサイズとは異なる。すなわち、従来の半導体装置等では、基板サイズが10×10mm程度であり、高さが3mm程度であるのに対して、本実施形態の電子制御装置4では、基板サイズが30×30mm程度であり、高さが8mm程度と大型である。従って、従来のヒートシンクを備えた半導体装置で、異種材料の線膨張係数差による反りを吸収できるのに対して、本実施形態では、反りの影響が大きいものである。
多層配線基板41は、例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂の素材を用いたガラスエポキシ基板を用いている。ガラスエポキシ基板とすることで、両面実装、多層配線が可能であり、コストを低減できる。なお、アルミナ等の素材を用いたセラミック基板や、ポリイミド等を用いたフレキシブル基板や、金属コア層を用いたメタルコア基板等を用いることもできる。
多層配線基板41の構造は、スルーホールで層間の回路を接続する貫通多層板、Interstitial Via Hole(IVH)で層間を接続するIVH多層板としている。層数は、4層から8層程度である。これにより、実装効率とコスト低減を図れる。なお、ビルドアップ工法により成形されるビルドアップ多層板等を用いることもできる。板厚は、電子部品43の発熱を熱伝導率の高い部材へ速やかに逃がすため、薄い方が好ましい。
フランジ部46b及びリード端子部46aからなるリード部材の材料は、熱伝導率の良い銅、または銅系の合金材が好適である。フランジ部46bは、外部への取付け固定と熱の伝導パスとを兼用させるために備えている。
リード端子部46aは、リード部材の一部を切り離して形成された端子であってもよいし、また異なった部材でもよい。リード端子部46aの露出方向は、1〜4方向でも良いが、図3に示す例では、向かい合う2方向に露出し、配線プレート2や電子制御装置4を薄くするために、露出方向は、横方向に露出している。リード端子部46aは、図3より、両側から20本を設けているが、システムに合わせて本数を増やすこともできるし、減らすこともできる。
接着剤は、多層配線基板41とリード部材を固着できるものであれば何を用いても良いが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性の樹脂組成物が、熱伝導率、応力緩和、作業の面で好適である。電子部品43のリフローと同時に、接着する場合は、半田や導電性接着剤でも可能である。接着剤の塗布は、リード部材46に塗布し、多層配線基板41を所定の位置に載せ、熱をかけて硬化させる。電子部品43の発熱を熱伝導率の高いリード部材のフランジ部46bに放熱する経路が形成される。
接着後、多層配線基板41とリード端子部46bとは、熱圧着、ワイヤボンディング法等で細線ワイヤ44を介して電気的に接続されている。細線ワイヤ44は、アルミ、金、銅の材料でもよい。アルミ細線をワイヤボンディング接続するための表面部分には、表面が酸化されないようにに、ニッケルメッキ、銀メッキ等が部分的に施される。
封止樹脂47は、トランスファーモールド成形によって製作する。トランスファーモールド成形は、一般に封止樹脂47としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を使用する。特に、線膨張係数の低い樹脂とし、内部部品を全体的に包む。また、封止樹脂47は、内部部品との密着力を常に保持するため、または、半田付け部やチップ部品と多層配線基板41との細線ワイヤボンディング接続部等に熱応力によって剥れ及び断線が生じないようにするため、最適な物性値が選定される。
変速機用の電子制御装置4では、使用時の熱応力繰り返しにより、封止樹脂47から露出しているリード部材のリード端子部46aあるいはフランジ部46bと封止樹脂47の各々の密着界面からの水、油等の浸入が懸念されるため、リード部材と封止樹脂47との線膨張係数差を極力小さくし、さらに、フランジ部46bとリード端子部46aの露出する断面積を少なくし、それら部材間の熱応力を低減し、リード部材に粗化等の表面処理を施し、封止樹脂47との境界部分で共有結合させる。例えば、ヒートシンクを用いた片面モールド構造では、回路規模が大きく、外形サイズが比較的大きい変速機用の電子制御装置4では、露出する断面積と界面の面積が増えるため、異種材料の線膨張係数差による熱応力より、反り、剥離、クラックが発生し、気密性と油密性を損なう。それに対して、トランスファーモールド成形することで、これらの問題を解決できる。
次に、図1を用いて、本実施形態の電子油圧制御モジュールの組立工程について説明する。
最初に、各種電装部品と電子制御装置4を搭載した配線プレート2とコントロールバルブ6とにより、セパレートプレート5を挟み、配線プレート2とコントロールバルブ6を数本のボルトで固定して、コントロールバルブアッシーを形成する。コントロールバルブアッシーのロアコントロールバルブ6には、図1に示したように、変速機オイル中のゴミ等を除去するためのオイルストレナー7がネジ固定される。このようにして形成されたコントロールバルブアッシーは、変速機ケース9の内部で、オイルパン8の内部に、数本のボルトで固定される。なお、外部コネクタ201との接続は、変速機ケースへ9の固定の前後のいずれでもよいものである。
従来は、ロアコントロールバルブと、セパレートプレートと、アッパコントロールバルブとにより、コントロールバルブを組み立てた後、配線プレートを取り付けていたので、工程数が増えている。
それに対して、本実施形態では、配線プレートと、ロアコントロールバルブの組立のみでよいため、工程数を低減できる。
また、従来の電子油圧制御モジュールでは、配線プレートは、次のように構成されていた。すなわち、配線部材のインサートモールドされた樹脂材に、電子制御装置が設置できるような矩形の貫通穴が形成されている。この貫通孔の内周には、配線部材の一端が露出している。電子制御装置は、貫通孔に設置されると共に、電子制御装置のリード端子部が、配線部材に接続される。そして、配線部材や電子制御装置のリード端子部に、導電性異物の侵入を防ぐために、貫通穴の下部にベース部材を取り付け、また貫通穴の上部にカバー部材を取り付け、ベース部材やカバー部材にラビリンス構造を設けている。従って、カバー部材やベース部材が必要となり、部品点数が増加している。また、カバー部材やベース部材の取り付けが必要であるため、工程数が増加している。
それに対して、本実施形態では、電子制御装置は、配線部材とともに、配線プレート内にインサートモールド成形しているため、カバー部材やベース部材が不要となる。従って、部品点数も低減できるとともに、工程数も低減できる。
また、油路24A,24B,24Cは、アルミより比重の低い樹脂でインサートした配線プレートに備えるようにしたため、電子油圧制御モジュールの重量を軽くすることができる。
配線プレートに電子制御装置を埋設したことで、変速機ケースの内部構造部品や各種電装部品の配置によるレイアウトの制約を受けることなく、電子制御装置を搭載することができる。
以下、本実施形態による電子油圧制御モジュールの効果について整理すると、次の通りである。
第1に、一般的にアルミダイカストで成形され、2部品以上で分割構成されるコントロールバルブについて、油路を配線プレートに設け、配線プレートとロアコントロールバルブでセパレートプレートを挟むことで、アッパコントロールバルブを不要とでき、部品点数を低減できる。
第2に、配線部材を樹脂でインサートした配線プレートに電子制御装置を埋設したことで、導電性異物の侵入を防ぐためのカバー部材とベース部材を不要とでき、部品点数を低減できる。
第3に、油路を配線プレートに備えることで、従来別々に組立てていた配線プレートをコントロールバルブの組立と同時に組立てることができ、工程数を低減できる。
第4に、油路をアルミより比重の小さい樹脂でインサートした配線プレートに備えることで、電子油圧制御モジュールの重量を軽くすることができる。
第5に、油圧制御用のフルードをセパレートプレートで油密しているため、配線プレートのセパレートプレートと接する面側の一部に凹部を設けて、凹部に電子制御装置を搭載したことで、高温フルードによる腐食が懸念される電子部品や基板を過剰に保護する必要がなくなる。
第6に、配線プレートのバスバーを樹脂でインサート成形したことで、端子間ショートを防止することができる。また、配線プレートに電子制御装置を埋設したことで、電子制御装置の端子間ショートを防止することができる。
第7に、レイアウト制約低減の効果として、配線プレートに電子制御装置を埋設したことで、変速機ケースの内部構造や各種電装部品の配置による制約を受けることなく、電子制御装置を搭載することができる利点がある。また、電子制御装置のサイズが大きくて、電子制御装置を搭載できるサイズの凹部を準備できなくても、配線プレートの凹部を複数設け、電子制御装置の回路部を分割し、凹部に電子制御装置の回路部を分散配置したことで、電子制御装置の搭載エリアを確保できる。
第8に、放熱の効果として、板状のベース部材を介さずに、セパレートプレートと接する面側のコントロールバルブに、セパレートプレートと接する面より高い凸部を設け、セパレートプレートに凸部と干渉しない穴部を設けたことで、配線プレートのセパレートプレートと接する面側の一部に凹部を設けて、その凹部に搭載した電子制御装置を、凸部と接することで、電子制御装置の発熱を熱伝導率の高いアルミダイカストで成形されたコントロールバルブに直接放熱することができる。
次に、図5を用いて、本発明の第2の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成を示す要部断面図である。なお、図5において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の電子油圧制御モジュール1Aは、図1に示した電子油圧制御モジュール1に対して、配線プレート2Aに埋設していた電子制御装置4の搭載位置と配線プレート2Aの形状が異なるものであり、他の構成部品は同じである。
本実施形態では、配線プレート2Aには、セパレートプレート5と接する面側の一部に凹部25を設けられている。電子制御装置4は、凹部25に搭載される。凹部25の体積は、電子制御装置4のサイズが搭載できる体積であり、凹部25は矩形形状であることが好適である。すなわち、油路用の凹部24とは、サイズが異なる。凹部25の側壁には、配線部材22が樹脂21より露出して成形されている。配線部材22の露出部は、電子制御装置4のリード部材46と、溶接により電気的な接続される。なお、接続方法としては、ロウ付け、圧接、圧入でもよいものである。配線プレート2Aまたはロアコントロールバルブ6とセパレートプレート5によりフルードや導電性異物等の浸入を防ぐため、リード部材のリード端子間46aに対して絶縁壁を設ける必要がなくなる。
本実施形態によれば、図1に示した実施形態の効果に加えて、次の効果が得られる。すなわち、配線プレートのセパレートプレートと接する面側の一部に凹部を設けるとともに、この凹部は油圧制御用のフルードをセパレートプレートで油密されている。そして、この凹部に電子制御装置を搭載することで、電子制御装置の搭載位置には、フルードや導電性異物が浸入せず、端子間ショートを防止することができる。
さらに、変速機ケースの内部構造部品や各種電装部品の配置によるレイアウトの制約を受けることなく、配線プレートとコントロールバルブ内にある油路を避ければ、電子制御装置を搭載することができる。
次に、図6を用いて、本発明の第3の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成を示す要部断面図である。なお、図6において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の電子油圧制御モジュール1Bは、図5に示した電子油圧制御モジュール1Aに対して、配線プレート2Bの凹部24Bにおいて、セパレートプレート5と接する面側に、凹部型金属部品27をインサートしている。凹部型金属部品27は、高圧なフルードに耐えうるように、樹脂21を補強するために用いられている。凹部24Bの油路の形状や補強程度によって、凹部型金属部品27のサイズや形状を決める。また、流路を流れるフルードの圧力によっては、凹部24Aのように、凹部型金属部品が不要な箇所も存在する。
また、セパレートプレート5と面する側であって、ソレノイド33の取付け部にリング状の金属部品26Aをインサートすることで、ソレノイド33の油路を補強している。
さらに、凹部25のセパレートプレート5と面する側に、直方体の金属部品26Bをインサートしている。金属部品26Bには、ネジ山を複数個設けている。図3に示した電子制御装置4のフランジ部46bを用いて、複数のネジで電子制御装置4を固定することができる。
また、樹脂21の肉厚部や中央部に、金属部品26Bをインサートすることで、樹脂21で成形された配線プレート2Bの反りを防止することができる。金属部品26Bの線膨張係数により、配線プレートの反りを低減するように金属部品26Bの材料を選定する。さらに、金属部品26Bは、電子制御装置4に対するヒートシンクとしての機能も有する。
なお、樹脂21に金属製のカラー等をインサート成形しても良い。これにより、組立時にコントロールバルブアッシーの固定や変速機ケース9への固定するときに、強度を確保できる。また、強度やシールで金属同士の接触が必要なところにも、金属部品26A,26Bをインサート成形してもよいものである。
本実施形態によれば、図5に示した実施形態の効果に加えて、次の効果が得られる。すなわち、本実施形態の電子油圧制御モジュール1Bは、図2に示した電子油圧制御モジュール1Aに対して、配線プレートの油路用の凹部において、セパレートプレートと接する面側に、凹部型金属部品をインサートすることで補強となり、高圧なフルードにも耐えることができる。
また、ソレノイド33の取付け部にリング状の金属部品26Aをインサートすることで、ソレノイド33の油路を補強することができる。
さらに、金属部品26Bをインサートすることで、ネジによる電子制御装置4の固定ができ、配線プレート2Bの反りを抑えることができる。
次に、図7を用いて、本発明の第4の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成について説明する。
図7は、本発明の第4の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成を示す要部断面図である。なお、図7において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の電子油圧制御モジュール1Cは、図6に示した電子油圧制御モジュール1Bに対して、電子制御装置4の油密構造が異なっている。図1,図5及び図6に示した電子制御装置4は、エポキシ等の熱硬化性樹脂によるトランスファーモールド成形により成形されている。それに対して、本実施形態の電子制御装置は、配線プレート2Cの凹部25の中に、直方体の金属部品26Bをインサートし、その上に、電子部品43を搭載した多層配線基板41を接着剤で直接接着している。
配線プレート2Cの樹脂21より露出して成形した配線部材22に、細線ワイヤ44を用いて、多層配線基板41と配線部材22は電気的に接続されている。細線ワイヤ44は、アルミ、金、銅の材料でもよい。アルミ細線をワイヤボンディング接続するための配線部材22の表面部分には、表面が酸化されないように、ニッケルメッキ、銀メッキ等が部分的に施される。
細線ワイヤ44の接続後、凹部25にポッティング材45を充填し、カバー42を接着している。ポッティング材45は、熱を加えることで硬化する。また、ポッティング材45は、細線ワイヤ44を保護するために、充填している。細線ワイヤ44の信頼性が高い場合は、ポッティング材45を不要としても良い。カバー42は、配線プレート2の樹脂21と同じ材料で成形されている。カバー42の接着方法は、接着剤でも良いし、樹脂同士のレーザー溶接でも良い。
本実施形態によれば、図6に示した実施形態の効果に加えて、次の効果が得られる。すなわち、油圧制御用のフルードをセパレートプレートで油密しているため、配線プレートのセパレートプレートと接する面側の一部に凹部を設けて、凹部に電子制御装置を搭載したことで、ポッティング材とカバーが増えるが、高温フルードによる腐食が懸念される電子部品や基板をトランスファーモールド成形のように、過剰に保護する必要がなくなる。リード部材を削減することができ、トランスファーモールド成形用の金型を不要にできる。
次に、図8を用いて、本発明の第5の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成について説明する。
図8は、本発明の第5の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成を示す要部断面図である。なお、図8において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の電子油圧制御モジュール1Dは、図6に示した電子油圧制御モジュール1Bに対して、ロアコントロールバルブ6Dは、セパレートプレート5Dと接する面側に、セパレートプレート5Dと接する面より高い凸部64を設けている。セパレートプレート5Dには、凸部64と干渉しない穴部を設けている。そして、電子制御装置4の一部とロアコントロールバルブ6Dの凸部64が接している。電子制御装置4の一部とは、封止樹脂47でも良いし、リード部材46のフランジ部46bでも良い。
ロアコントロールバルブ6Dの材料は、アルミであるため、電子制御装置4の発熱を熱伝導率の高い材料に別部品を介さず直接放熱することができる。
なお、従来の構成では、電子制御装置の発熱をまず配線プレートのベース部材に伝導し、その後、アッパコントロールバルブに放熱しているため、熱伝導率の高い部品に直接放熱できないものである。
本実施形態によれば、図6に示した実施形態の効果に加えて、次の効果が得られる。すなわち、板状のベース部材を介さずに、セパレートプレートと接するロアコントロールバルブに、セパレートプレートと接する面より高い凸部を設け、セパレートプレートに凸部と干渉しない穴部を設けたことで、配線プレートのセパレートプレートと接する面側の一部に凹部を設けて、その凹部に搭載した電子制御装置を、凸部と接することで、電子制御装置の発熱を熱伝導率の高いアルミダイカストで成形されたコントロールバルブに直接放熱することができる。
次に、図9を用いて、本発明の第6の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成について説明する。
図9は、本発明の第6の実施形態による電子油圧制御モジュールの構成を示す要部断面図である。なお、図9において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の電子油圧制御モジュール1Eは、図8に示した電子油圧制御モジュール1Dに対して、電子制御装置4は、多層配線基板41や電子部品43等の回路部を複数に分割して、複数の電子制御装置4を備えている。分割方法は、回路ブロック毎でも、各種電装部品3を制御する対象部品の配置毎に分割したりしても良い。さらに、多層配線基板41の部品コストを下げるために、多層配線基板41の最適取数で分割しても良い。
電子制御装置4は、個数は増えるが、1個あたりの電子制御装置4のサイズは小さくなる。サイズが小さくなることで、金型を用いたトランスファーモールド成形の場合は、電子制御装置4の生産性が上がる。また、異種材料の線膨張係数差による熱応力が低減し、反り、剥離、クラックが発生しない気密性と油密性の信頼性を上げることができる。
配線プレート2の凹部25を複数個設け、凹部25に分割してサイズが小さくなった電子制御装置4を分散配置している。
電子制御装置4のサイズが小さくなることで、凹部25のサイズを小さくでき、油路や各種電装部品3の配置に、レイアウトの制約を少なくすることができる。
本実施形態によれば、図8に示した実施形態の効果に加えて、次の効果が得られる。すなわち、電子制御装置のサイズが大きくて、電子制御装置を搭載できるサイズの凹部を準備できなくても、配線プレートの凹部を複数設け、電子制御装置の回路部を分割し、凹部に電子制御装置の回路部を分散配置したことで、電子制御装置の搭載エリアを確保できる。