以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明を行なう。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、種々の変形を行ない実施することが可能である。
(本発明の原理)
図1は、本発明の原理を説明するための図である。図1(A)は、本発明の一実施形態において使用されるスピーカの正面図である。図1(A)において、スピーカ100に、複数の超音波発生素子101、102が配置されている。それぞれの超音波発生素子としては、例えば、圧電素子を用いることができる。圧電素子にパルス信号などの、時間と共に変化する信号を加えることにより、物理的な変位が生じる。そこで、スピーカから放射する超音波と同じ周波数で変化するパルス信号などの電気信号を加えることにより、空気などの媒質に超音波を放射することができる。
なお、図1(A)において、超音波発生素子を正面から見た図形は円形となっているが、任意の図形を用いることができる。例えば、楕円形、三角形、正方形や長方形などの四角形、正六角形を用いることができる。また、図1(A)において、超音波発生素子の列は、隣の列に対して超音波発生素子の半径だけ上下にずれて隣接して配置されている。すなわち、隣接する超音波発生素子を正面から見た円形の中心を、線分により相互に接続すると、正三角形が並んだ形状が得られる。しかし、超音波発生素子の配置は、これに限定されることはなく、例えば、マトリクス状に配置したり、同心円状に配置したり、任意の配置を用いることができる。
図1(B)は、スピーカ100の左側面図である。図1(B)に示されるように、複数の超音波発生素子は、スピーカ100に平面を形成するように配置されている。例えば、超音波発生素子が圧電素子であれば、物理的な変位を生じる部分が平面を形成するように配置される。このような配置により、複数の超音波発生素子に同じ位相で変化する信号を供給すると、ホイヘンスの原理により、スピーカ100の正面方向に平面波を放射することができる。
なお、複数の超音波発生素子のスピーカ100における配置は、平面を形成するものに限定されることはない。後に説明する実施形態にあるように、一部の超音波発生素子を、他の超音波発生素子に対して、放射される超音波の半波長の整数倍の長さ、前後に配置することもできる。
本発明の一実施形態においては、複数の超音波発生素子が配列された領域を、第1の領域と、その第1の領域に隣接する第2の領域と、に分ける。第1の領域に配置された超音波発生素子には、第2の領域に配置された超音波発生素子に供給される信号とは逆位相の信号を供給して超音波を放射する。第2の領域に配置された超音波発生素子から放射された超音波のうち、第1の領域に隣接して配置された超音波素子から放射された超音波素子から放射された超音波が、第1の領域に配置された超音波素子から放射された超音波素子と干渉する。これにより、第1の領域に隣接して配置された超音波素子から放射された超音波が、広がらないようにできる。すなわち、スピーカ100から放射される超音波の指向性の特性を向上させることができる。
例えば、図1(A)において、第1の領域を、符号103と105とにより示される領域であって、スピーカ100の左側と右側との領域であり、超音波発生素子がそれぞれ一列に配列されている領域とする。また、第2の領域を、符号104により示される領域であって、スピーカ100の中央部分に超音波素子が3列に配置されている領域とする。この場合、左右それぞれ1列の超音波発生素子を、中央部分の3列の超音波発生素子が放射する超音波とは位相が逆位相となる超音波を放射させるように駆動することができる。
なお、第1の領域と第2の領域とに配置される超音波発生素子の数は同じである必要はない。一般的には、第2の領域は、スピーカの中央部に配置されるのが好ましい。そして、第1の領域は、第2の領域を取り囲むように配置されるのが好ましい。このため、第1の領域に配置される超音波発生素子の数は、第2の領域に配置される超音波発生素子の数よりも小さくなる場合が多い。
また、第1の領域に配置された超音波素子それぞれには同じ位相の信号が供給される必要はない。第2の領域に配置された超音波素子それぞれには同じ位相の信号が供給される必要もない。例えば、第2の領域に配置された超音波発生素子のうち、第1の領域に隣接する超音波発生素子に、第2の領域に隣接して第1の領域に配置されている超音波発生素子とは位相が逆転した信号を供給し、第2の領域に配置された他の超音波発生素子には、別の位相の信号が供給されるようになっていてもよい。このような場合の一例は、第2の領域の超音波発生素子それぞれに、配置されている位置に応じて位相が徐々に変化するように信号を供給し、第2の領域の超音波発生素子から放射される超音波の放射される方向を制御する場合である。
例えば、符号10の領域の中央部分の3列それぞれに配置された超音波発生素子には、列毎に異なる位相の信号が供給されてもよい。例えば、隣り合う列には、位相が15°異なる信号を供給する。この場合、符号103の領域に配置された超音波発生素子には、符号104の領域の左の一列に配置された超音波発生素子に供給される信号とは逆位相の信号が供給される。
同様に、第1の領域に配置された超音波発生素子のうち、第2の領域に隣接する超音波発生素子に、第1の領域に隣接して第2の領域に配置されている超音波発生素子とは位相が逆転した信号を供給し、第1の領域に配置された他の超音波発生素子には、別の位相の信号が供給されるようになっていてもよい。
また、第1の領域および第2の領域の形状は固定されていてもよいし、それぞれの超音波発生素子に供給される信号を制御することにより、第1の領域および第2の領域の形状が変化してもよい。これにより、第1の領域および第2の領域の配置されている超音波発生素子の数、配置の範囲を制御することができる。
例えば、図1(A)では、符号103の領域は、左の1列の超音波発生素子が配置されている領域であるが、符号103の領域を、左の2列の超音波素子が配置されている領域となるように、超音波発生素子に供給する信号を制御してもよい。
なお、中央部分の3列の超音波発生素子が放射する超音波と、左右それぞれ1列の超音波発生素子が放射する超音波とは、正確に逆位相である必要はない。例えば、中央部分の3列の超音波素子のうち左の一列の超音波素子(以後、第1の超音波素子という)と左の一列の超音波発生素子(以後、第2の超音波素子という)とから等距離にある位置において、第1の超音波素子から放射された超音波と第2の超音波素子から放射された超音波との干渉で得られる音波の大きさが、充分に小さくなればよいからである。
第1の超音波素子から放射される音波をsin(x)で表わし、第2の超音波素子から放射される音波を、sin(x)と逆位相の音波sin(x+π)=sin(−x)=−sin(x)と位相差aを有する音波の式−sin(x−a)により表わす場合、sin(x)で表わされる音波と−sin(x−a)で表わされる音波との干渉で得られる音波は、(sin(x)−sin(x−a))で表わすことができる。そこで、(sin(x)−sin(x−a))の絶対値の平均値((sin(x)−sin(x−a))の絶対値を、xが0から2πまでの範囲で積分した値)がsin(x)の絶対値の平均値の10分の1になる場合、すなわち、
が成り立つ場合を求めると、aはおよそ0.1となる。実際、(sin(x)−sin(x−a))の絶対値を0から2πまで積分することを考える。例えばaが0.10であれば、積分値は0.399833となり、aが0.11であれば、積分値は0.439778となるからである。
なお、(sin(x)−sin(x−a))の絶対値の平均値が、sin(x)の絶対値の平均値の10分の1以下であれば、音声信号により変調された超音波が放射され、音声が復調されたとしても、超音波の干渉により、人間には聞こえることがなくなると考えられる。
したがって、第1の領域に配置されている超音波発生素子の放射する超音波の逆位相の音波と、第2の領域に配置されている超音波発生素子の放射する超音波と、の位相差の絶対値が、0.1ラジアン以下であれば、スピーカから放射される超音波の指向性の特性を向上させることができる。言い換えると、第1の領域に配置されている超音波発生素子に供給される電気信号の逆位相の信号と、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される電気信号と、の位相差の絶対値が、0.1ラジアン以下であれば、スピーカから放射される超音波の指向性の特性を向上させることができる。そこで、本明細書の以下の説明において、「略逆位相」は、正確な逆位相、または、正確な逆位相を中心に位相差が0.1ラジアンの範囲内の位相差を表わすこととする。
なお、第1の領域は、左右の列に超音波発生素子が配置されている領域に限定されることはない。例えば、第2の領域向かって右の所定の数の列の超音波発生素子が配置されている領域が第1の領域であってもよい。あるいは、第2の領域向かって左の所定の数の列の超音波発生素子が配置されている領域が第1の領域であってもよい。また、第2の領域の上側及び/又は下側に第2の領域が位置していてもよい。また、第2の領域を取り囲むように第1の領域が位置していてもよい。
図1(C)は、従来技術におけるスピーカの指向性特性と、図1(A)に示すように第1の領域が第2の領域の左右に位置している例におけるスピーカの指向性特性とを示す。従来技術におけるように、スピーカ100に配置された超音波発生素子に同じ位相の信号を供給する場合に放射される超音波の音圧レベルは、符号106として示される。符号106は、所定の音圧と等しい音圧が得られる位置を曲線で結んだ図形として得られる。この場合における可聴範囲は(放射される超音波が放射される範囲)はスピーカ100を端点とする2つの半直線107で挟まれる範囲となる。従来技術においては、2つの半直線107のなす角は20°前後となる。
一方、上述したように、左右1列の超音波発生素子を、中央部分の3列の超音波発生素子が放射する超音波とは略逆位相の超音波を放射さるように駆動すると、符号103の領域に配置された超音波発生素子からは、符号108で示される音圧レベルの超音波が放射され、符号105の領域に配置された超音波発生素子からは、符号109で示される音圧レベルの超音波が発生する。しかし、符号103の領域に配置された超音波発生素子および符号105の領域に配置された超音波発生素子は、符号104の領域に配置された超音波発生素子が放射する超音波とは略逆位相の超音波を放射する。このため、スピーカ100から放射される超音波の指向性特性を図示すると、干渉により、符号106で示される形状よりも図1(C)において幅が小さくなり、符号110で示されるものとなる。これにより、可聴範囲は、2つの半直線111で挟まれる範囲となり、従来技術における範囲よりも狭くなることになる。
無変調の超音波を放射する信号を超音波発生素子101、102に供給することにより、人に気付かれないように、人の存在などをセンシングするための超音波を放射することができる。本発明の一実施形態によれば、センシングするための超音波を放射する範囲を従来技術よりも小さくすることができる。
また、スピーカ100に配列された超音波発生素子101、102には、音声信号で変調された超音波を放射する信号が供給されてもよい。これにより、より狭い範囲で音声が復調され、より狭い範囲に音声を伝達することが可能となる。
(実施形態1)
本発明の一実施形態として、スピーカと、信号供給回路とを備える音響装置について説明する。スピーカには、図1に示したように、同一平面内の第1の領域と、その第1の領域に隣接する第2の領域と、に複数の超音波発生素子が配置されている。信号供給回路は、第1の領域に配置された超音波発生素子に第1の信号を供給し、第2の領域に配置された超音波発生素子には、第1の信号とは略逆位相の第2の信号を供給する。
図2(A)、図2(B)それぞれは、本発明の一実施形態に係る音響発生装置の、より詳細な構成の機能ブロック図の一例を示す。
まず、図2(A)を参照して説明する。音響発生装置は、搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203と、位相反転部204と、位相反転制御部205と、スピーカ200とを有する。搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203と、位相反転部204と、位相反転制御部205とが信号供給回路に相当すると言える。
スピーカ200には、複数の超音波発生素子210が配置されている。また、配置されている複数の超音波発生素子210は、第1の領域に配置された超音波発生素子と、第2の領域に配置された超音波発生素子とに分けられる。第1の領域と第2の領域とは同一平面内になるとする。
図2(A)において、スピーカ200は、図1(A)に示したスピーカ100の左側面図として示されている。この場合は、スピーカ200の中央部分の領域104が第1の領域であり、左右の列の領域103、105が第2の領域となる。ただし、第1の領域、第2の領域は、ここで説明されたものに限定されることはない。上述したように、第2の領域の上または/および下に第1の領域が配置されていてもよいし、第2の領域は第1の領域により囲まれていてもよい。
図3は、第1の領域に配置された超音波発生素子と第2の領域に配置された超音波発生素子との位置関係の例を2つ示している。図3(A)において、超音波発生素子は同心円状に配置されている。この場合、第1の領域の一例としては、最外周のうち、同心円の中心から所定の角度αの範囲内の領域があり、その他の領域が第2の領域となる。なお、超音波発生素子が第1の領域と第2の領域との両方に配置されている場合には、例えば、超音波発生素子の形状が円形であれば、その中心が第1の領域に入っていれば、第1の領域に配置されていると定義することができる。この定義では、図3(A)に示すように超音波発生素子301、302、303、304、305、306、307が第1の領域に配置されている超音波発生素子となる。
図3(A)において、超音波発生素子301、302、303、304、305、306、307に供給される信号は、それらの内側の超音波発生素子に供給される信号とは略逆位相になる。
図3(B)において、超音波発生素子は、超音波発生素子の列は、隣の列に対して超音波発生素子の半径だけ上下にずれて配置されている。この場合、第1の領域の一例として、一つおきの列の最上部に配置されている超音波発生素子308、109、310、311が配置されている領域がある。
図3(B)において、超音波発生素子308、109、310、311に供給される信号は、超音波発生素子312、313、314に供給される信号とは略逆位相になる。
搬送信号生成部201は、所定の周波数の超音波をスピーカ100から放射するための信号を生成する。周波数が例えば40kHzのパルス波又は正弦波の信号を生成する。音源供給部202は、搬送信号生成部201により生成された信号を変調するための音声信号を変調部203に供給する。変調部203は、搬送信号生成部201により生成された信号を、音源供給部202により供給された音声信号により変調を行なう。変調部203は、搬送信号生成部201により生成された信号を、例えば、振幅変調、周波数変調または位相変調などを用いて変調を行なう。なお、スピーカ200から無変調の超音波を放射する場合には、音源供給部202、変調部203は必須の構成ではない。
音源供給部202により供給される音声信号の周波数が20Hz以上20kHz以下であり、搬送信号生成部201により生成される信号の周波数が40kHzであれば、変調部203は、40kHzの±20kHzの範囲を含む20kHz以上の変調された超音波を表わす信号を出力することになる。ただし、変調部203において抑圧搬送波単側波帯変調が用いられれば、40kHz以上の変調された超音波を表わす信号が出力されるようにすることができる。
なお、変調部203が出力する信号から搬送信号生成部201が生成する信号よりも周波数が小さい成分を取り除くフィルターが変調部203とスピーカ400との間に配置されていてもよい。
また、音響発生装置が、無変調の超音波を発生させるのであれば、音源供給部202と変調部203とは、必須ではない。搬送信号生成部201により生成される信号が直接位相反転部204や超音波発生素子230に供給されるようになっていてもよい。
位相反転部204は、第1の領域に配置された超音波発生素子に供給される信号の位相と、第2の領域に配置された超音波発生素子に供給される信号の位相と、が略逆位相になるように、変調部203の出力する信号の位相の制御を行なう。この結果、例えば、第1の領域に配置されている超音波発生素子のそれぞれから放射される超音波は、同じ位相となるが、第2の領域に配置されている超音波発生素子のそれぞれから放射される超音波と略逆位相となる。
このような位相の制御方法には、いくつかの方法があり、いずれを用いてもよい。例えば、変調部203の出力する信号が、変調部203の出力端子である第1の端子と第2の端子との間の電圧として表わされている場合、第1の領域に配置されている超音波発生素子の第1の極性端子、第2の極性端子それぞれを変調部203などの第1の端子、第2の端子に接続し、第2の領域に配置されている超音波発生素子の第1の極性端子、第2の極性端子それぞれを変調部203の第2の端子、第1の端子に接続する。これにより、第1の領域に配置されている超音波発生素子の生成する物理的変位と第2の領域に配置されている超音波発生素子の生成する物理的変位とは、大きさが同じで、符号が異なることとなる。
あるいは、変調部203から第1の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を遅延させることにより、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号の位相を、第1の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号とは略逆位相とすることができる。あるいは、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を遅延させてもよい。
位相反転制御部205は、位相反転部204の動作を制御し、結果として第1の領域と第2の領域との形状を制御する。例えば、位相反転制御部205は、変調部203の出力信号が位相反転を行なわずに供給される超音波発生素子と、変調部203の出力信号が位相反転されて供給される超音波発生素子との数、分布範囲を変化させる。また、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を、第1の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を略逆位相とするかどうかの制御を行なってもよい。
なお、第1の領域と第2の領域との形状が固定されており、常に第2の領域に配置されている超音波発生素子から放射される超音波を、第1の領域に配置されている超音波発生素子から放射される超音波の略逆位相とするならば、位相反転制御部205により位相反転部206を制御することは必須ではない。
また、第1の領域に配置されている超音波発生素子それぞれから放射される超音波は、同位相である必要はない。例えば、特定の方向に超音波を放射させるために、超音波発生素子の配置されている位置に応じて、徐々に放射される超音波の位相を変化させるようになっていてもよい。この場合、第2の領域に配置されている超音波発生素子のうち、第1の領域に隣接して配置されている超音波発生素子は、第1の領域に隣接して配置されている超音波発生素子の放射する超音波とは略逆位相の超音波を放射するのが好ましい。
次に、図2(B)を参照して説明する。音響発生装置は、搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203と、位相反転部206と、位相反転制御部205と、スピーカ220とを有する。図2(B)に示されている音響発生装置と図2(A)に示されている音響発生装置との違いは、位相反転制御部205の出力する信号は、上部の多くても2行に配置されている超音波発生素子240に供給され、その他の超音波発生素子230には供給されない。このような構成により、位相反転制御部205が信号を供給する超音波発生素子の数が減少し、回路としての大きさや消費電力を低減させることができる。
なお、図2(B)の場合、位相反転制御部205は、位相反転部206によって、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号が、第1の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号と略逆位相となるのか、同位相となるのかの制御を行なう。
例えば、位相反転制御部205は、第1の領域に配置されている超音波発生素子に、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号とは略逆位相となる信号に換えて、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を供給してもよい。また、位相反転制御部205は、第1の領域に配置されている超音波発生素子に、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号とは略逆位相となる信号に換えて、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を供給することを、所定の時間間隔にて行なってもよい。例えば3秒間隔で、第1の領域に配置されている超音波発生素子に、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号とは略逆位相となる信号を供給することと、第2の領域に配置されている超音波発生素子に供給される信号を供給することとが交互に繰り返されてもよい。
また、図2(B)において、第1の領域の大きさを変化させ、第1の領域に配置されている超音波発生素子が放射する超音波と略逆位相の超音波を発生する超音波発生素子を、スピーカの最上行の超音波発生素子とするか、上部の2行に配置されている超音波発生素子とするかを選択することができる。これにより、スピーカ220から放射される超音波が伝わる範囲の大きさなどを変化させることができる。上述したように、この変化は、所定の時間間隔で行なわれてもよい。このようにすることにより、一定の大きさの音声信号が音源供給部202により供給される場合、スピーカ100より放射される超音波により再生される音声の大きさが変化するかどうかを知ることにより、スピーカ100に対する相対的な位置を知ることができる。すなわち、音声の大きさの変化が大きければ、スピーカ100の斜め方向に位置していると判断でき、音声の大きさの変化がより小さければ、スピーカ100の正面に位置していると判断することができる。
(実施形態2)
本発明の別の一実施形態として、スピーカと信号供給回路とを備える音響発生装置について説明する。本実施形態においては、スピーカは、基板を有している。その基板には、突出部がある。第1の領域は、その突出部上に位置する。また、基板には、突出部に隣接する第2の領域がある。第1の領域と第2の領域とには、複数の超音波発生素子が配置されている。また、信号供給回路は、所定の距離が、超音波の半波長の偶数倍であれば、第1の領域に配置された超音波発生素子に第1の信号を供給し、第2の領域に配置された超音波発生素子には、第1の信号とは略逆位相の第2の信号を供給する。また、信号供給回路は、所定の距離が、超音波の半波長の奇数倍であれば、第1の領域に配置された超音波素子と第2の領域に配置された超音波素子には、同じ位相の信号を供給する。
図4(A)、図4(B)それぞれは、本発明の一実施形態に係る音響発生装置の、より詳細な機能ブロック図の一例を示す。
図4(A)において、音響発生装置は、搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203と、位相反転部204と、位相反転制御部205と、スピーカ400とを有する。また、図4(B)において、音響発生装置は、搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203と、スピーカ400とを有する。搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203と、位相反転部204と、位相反転制御部205は、実施形態1と同じものを使用することができるので、説明は省略する。
本実施形態では、図4(B)に示すように、スピーカ400の基板に突出部としてスペーサ401を設けることができる。この突出部によりスピーカ400の前面に突出している部分が第1の領域となる。言い換えると突出部上が第1の領域となる。また、突出部に隣接して第2の領域が設けられる。すなわち、第1の領域に配置された超音波発生素子は、第2の領域に配置された超音波発生素子よりもスピーカの向いている方向に飛び出て配置される。言い換えると、第2の領域は、第1の領域よりも所定の距離だけ後方に位置する。これにより、第1の領域に配置された超音波発生素子が放射する超音波と、第2の領域に配置された超音波発生素子が放射する超音波とに位相差を生じさせることができる。
図4(A)において、スピーカ400の一部にスペーサ401が設けられ、一部の超音波発生素子420がスペーサ401の上に配置されている。スペーサ401の厚さΔは、超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長の半分の整数倍である。なお、一般には、超音波発生素子410、超音波発生素子420が放射する超音波は、搬送信号生成部201が発生する信号を変調部203により変調した信号により放射されるので、波長は一義的には定まらないことがある。その場合には、変調部203が出力する信号の周波数の範囲の中央の周波数に対応する波長を用いるのが好ましい。例えば、搬送信号生成部201が生成する信号の周波数が40kHzであり、音源供給部202が変調部203に供給する音声信号の周波数が20Hz以上20kHz以下であれば、変調部203が出力する信号の周波数の範囲は、約40kHz以上60kHz以下となる。したがって、中央の周波数は、約50kHzとなり、空気中での50kHzの超音波の波長は、約6.64mmとなる。したがって、Δは3.32mmの整数倍とするのが好ましい。
以下では、「超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長」を、上記のように、変調部203が出力する信号の周波数の範囲のいずれかの周波数(例えば、中央の周波数、あるいは、エネルギーの最も高い周波数など)を有する超音波の波長と定義して説明を行なう。
Δを、超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長の半分の偶数倍とした場合、超音波発生素子410および超音波発生素子420に同位相の信号を供給すると、超音波発生素子420から放射される超音波は、超音波発生素子410から放射される超音波と波長の整数倍の位相差を有することになる。そこで、Δが超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長の半分の偶数倍である場合には、位相反転部206は、変調部203の出力する信号の位相を反転させることにより、実施形態1と同様に、スピーカ400の指向性を高めることができる。
また、本実施形態では、スペーサ401を設けていることにより、図4(A)において、超音波発生素子410から放射させる超音波がスペーサ401の下側の面に反射し、上方へ超音波が広がるのを阻止することができ、より指向性を高めることができる。
Δを、超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長の半分の奇数倍とした場合、超音波発生素子410および超音波発生素子420に同位相の信号を供給した場合、超音波発生素子420から放射される超音波は、超音波発生素子410から放射される超音波と略半波長の位相差が生じる。したがって、超音波発生素子410および超音波発生素子420に同位相の信号を供給することにより、実施形態1と同様に、スピーカ400の指向性を高めることができる。また、超音波発生素子410に供給する信号と超音波発生素子420に供給する信号との位相差を反転させることにより、通常の指向性とすることができる。
もし、常に指向性を高くするのであれば、図4(B)に示すように変調部203の出力する信号を、変調部を介さずに超音波発生素子410および超音波発生素子420へ直接供給し、Δを超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長の半分の奇数倍とする。これにより、回路構成などが簡略化し、消費電力を小さくすることなどができる。
なお、ここまで、Δは超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長の奇数倍または偶数倍として説明したが、これに限定されることはない。例えば、Δを超音波発生素子420が放射する超音波の波長の奇数倍または偶数倍以外の値にして、かつ、超音波発生素子410に供給する信号と超音波発生素子420に供給する信号とが位相差を有するようにしてもよい。
例えば、超音波発生素子410および超音波発生素子420が放射する超音波の波長をλとし、超音波発生素子410に供給する信号と超音波発生素子420に供給する信号との位相差をδとする。また、超音波発生素子420が、超音波発生素子420の位置において放射する超音波を、時間tの関数としてsin(t)であるとする。このとき、超音波発生素子410が、超音波発生素子410の位置において放射する超音波は、sin(t−δ)と表わすことができる。超音波発生素子410が放射する超音波が、超音波発生素子410の前方Δの距離に到達すると、その波形は、sin(t−δ−2πΔ/λ)となる。
したがって、超音波発生素子410から放射された超音波と超音波発生素子420から放射された超音波との位相差の値は、2πΔ/λ+δにより表わすことができる。この値が略逆位相を表わせば、スピーカ400から放射される超音波の指向性の特性を向上させることができる。すなわち、ある奇数が存在し、その奇数にπを乗じた値と、2πΔ/λ+δと、の差の絶対値が0.1以下になるようにすれば、スピーカ400から放射される超音波の指向性の特性を向上させることができる。なお、ここで奇数は1、3、5、…の正の整数に限定されず、−1、−3、−5、…の負の整数であってもよい。
特にΔが、λ/2の偶数倍、すなわち、ある整数nが存在し、Δがλのm倍であるとする。このとき、2πΔ/λは、2mλとなるので、ある奇数にπを乗じた値と2mλ+δとの値の絶対値が0.1以下となれば、指向性の特性を向上させることができる。2mは偶数であるので、δの範囲を考えると、ある整数nに対して、(2n+1)π−0.1≦δ≦(2n+1)π+0.1が成り立つことになる。
また、Δが、λ/2の奇数倍であるとすると、2πΔ/λは、ある奇数pが存在し、pπとなるので、ある奇数にπを乗じた値とpλ+δとの値の絶対値が0.1以下となれば、指向性の特性を向上させることができる。奇数と別の奇数との差は偶数になるので、δの範囲を考えると、ある整数nに対して、2nπ−0.1≦δ≦2nπ+0.1が成り立つことになる。
また、特にδが0である場合には、ある奇数が存在し、その奇数にπを乗じた値と、2πΔ/λと、の差の絶対値が0.1以下になるようにすれば、スピーカ400から放射される超音波の指向性の特性を向上させることができる。
(応用例1)
図5は、本発明の一実施形態に係る音響発生装置を、歩行者用信号機へ応用する例の概念図である。柱501に信号制御装置502が設置されている。また、柱501には、歩行者用信号機503と、スピーカ504と、超音波検出器505も設置されている。
信号制御装置502には、信号供給回路が配置される。例えば、信号制御装置502には、搬送信号生成部201と、音源供給部202と、変調部203とが配置され、また、必要に応じて、位相反転部204と、位相反転制御部205も配置される。これらの部により生成された信号は、歩行者用信号機503の近傍に配置されたスピーカ504に供給される。スピーカ504は、超音波発生素子を縦に並べた複数の列を用いて構成されている。歩行者用信号機503が青信号を表示する場合に、左右1列の超音波発生素子に、中央部分の列の超音波発生素子が放射する超音波とは位相が略逆位相となる超音波を放射させることができるようになっている。なお、スピーカ504は、横断歩道の幅などに応じて、左右に複数個が配置されていてもよい。
このように、本発明の一実施形態に係る音響発生装置を歩行者用信号機に用いて、中央の超音波発生素子が放射する超音波とは位相が略逆位相となる超音波を放射されると、スピーカ504から高い指向性により、音声を所定の範囲の歩行者に伝達することができる。したがって、従来技術を用いる場合よりも狭い範囲で超音波から音声が復調することができ、音声によって歩行者を、横断歩道上を安全に誘導することができる。
なお、スピーカ504は垂直に設置される必要はない。超音波発生素子が配置されている面を若干、例えば8°ほど下に向けてもよい。これは、スピーカ504から放射される超音波が横断歩道の長さよりも長い距離の位置に到達してしまうことを防止するためである。
なお、超音波検出器505は必須の構成ではない。超音波検出器505を用いることにより、スピーカ504から放射される超音波の反射波を検出し、横断歩道上に人が居るかどうかなどを検出することができる。これにより、人が横断歩道を渡りきる前に歩行者用信号機が赤信号を表示してしまうことを防止することができる。また、車の通行状況に応じて、信号を変えることができる。
また、スピーカ504を用いて歩行者を誘導する際に、(1)スピーカ504の超音波発生素子から同位相の超音波を放射させる場合と、(2)左右1列の超音波発生素子に、中央の超音波発生素子が放射する超音波とは位相が略逆位相となる超音波を放射させる場合とを交互に繰り返してもよい。このとき(1)のときには歩行者から反射する超音波が、超音波検出器505により検出され、かつ、(2)のときには歩行者から反射する超音波が、超音波検出器505により検出されないことが検出された場合、歩行者が横断歩道を逸れていると判断し、適切な処置を行なうことができる。例えば、別のスピーカから注意を促すメッセージを放送したり、交差点であれば、全ての車道の信号を赤の表示にしたりすることができる。
また、上述したように、スピーカ504から放射される超音波により再生される音声の大きさの変化により、音声を聞いている歩行者が、スピーカ504の正面に位置しているのか、正面から斜め方向に位置しているのかを判断することができる。これにより、目の不自由な歩行者を横断歩道の上を適切な方向に移動するように、誘導を行なうことができる。
(応用例2)
図6は、本発明の一実施形態に係る音響発生装置を、デジタルサイネージシステムへ応用する例の概念図である。デジタルサイネージとは、液晶ディスプレイやスピーカ、ネットワークを用いた広告媒体である。デジタルサイネージは、情報の提供がリアルタイムで行え、紙などのポスターを張り替える手間が掛からないなどのメリットを有する。
図6においては、歩道に沿って、複数のモニタ601、602、603、604を配置し、歩行者の移動速度に基づいて、コンテンツの1フレームに所定の時間長(例えば2秒)を割り当ててモニタにコンテンツの表示を行なう。また、天井には、本発明の一実施形態に係る音響発生装置のスピーカ605、606、607、608をそれぞれのモニタに対応付けて配置する。そして、例えば、スピーカから放射される超音波を対応するそれぞれのモニタに向けて放射する。
このような構成により、モニタ間の距離が小さくても、モニタの前に居る人には、別のモニタに対応するスピーカからの音声が聞こえることを防止することができ、効果的な情報の提供ができる。
(測定例1)
図7は、搬送信号生成部201の生成する40kHzの信号を、ホワイトノイズにより変調した後、図1に示すように、スピーカの左右の領域103、105に配置された超音波発生素子が放射する超音波の位相が、中央部分の領域104に配置された超音波発生素子が放射する超音波の逆位相となる超音波を放射した場合に、スピーカ前で復調されるホワイトノイズの大きさを測定した結果である。
この測定例では、円形の超音波発生素子を、左の列から、5個、4個、5個、4個、5個、4個、5個、4個、5個、4個、5個を矩形の範囲内に並べたスピーカを用いている。この場合、隣り合う列では、超音波発生素子の上下の位置を超音波発生素子の半径だけ上下にずらしている。
図7においては、ホワイトノイズの大きさを測定した位置が、「加工横1m」、「加工横2m」、「加工横3m」は、スピーカから正面から、スピーカの面と垂直方向に、それぞれ1m、2m、3m離れていることを意味する。また、「−80cm」、「−60cm」、「−40cm」、「−20cm」、「0cm」、「20cm」、「40cm」、「60cm」、「80cm」は、測定した位置が、スピーカの面に平行な方向に右へどれだけ移動した位置であるかを示す。縦軸は、測定した位置それぞれにおける、ホワイトノイズの大きさを示す。
図7を参照すると、加工横1mかつ0cmの位置において最も大きい約65dB程度が測定されたことを示しているが、左右に移動すると急激に測定値が低下し、音声が狭い範囲に伝達されていることがわかる。
一方、図8は、図7の測定結果が得られたのと同じ条件で測定を行ない、図7の場合と異なる条件は、全ての超音波発生素子に同位相の信号を供給した場合の測定例である。図8を図7と比較すると、例えば、20cmにおける「加工横1m」および「無加工横1m」の近傍の形状からわかるように、全体の形状が横方向に広がっていることがわかる。したがって、図7の場合が、図8の場合よりも指向性が高いことがわかる。
また、図9は、図7および図8の測定例に使用したスピーカを縦にして、その場合における左右の列に配置された超音波発生素子が放射する超音波の位相が、中央部分の列に配置された超音波発生素子が放射する超音波の逆位相となるようにして超音波を放射した場合の測定結果である。
また、図10は、図9の測定結果が得られたのと同じ条件で測定を行ない、異なる条件は、全ての超音波発生素子に同位相の信号を供給した場合の測定例である。
図9と図10とを比較すると、図9の方が狭い範囲に音声が伝達されていることもわかる。
(実施形態3)
本発明の実施形態3として、以上説明した実施形態におけるスピーカの防滴カバーについて説明する。
スピーカを図5に示すように、信号機に応用する場合、信号機は外での使用が前提であり、雨ざらしとなる。そこで、防滴性についての考察、実験を以下のように行なった。
図11(A)は、防滴カバー1100の正面図であり、図11(B)は、その平面図であり、図11(C)は、その底面図であり、図11(D)は、その左側面図である。右側面図は、左側面図と対称なので省略する。また、背面図は、正面図から網1101を示す線分を除去した矩形の図がその一例となる。また、図11(E)は、図11(B)のI−I断面線における防滴カバーの断面を示す。
図11(A)〜(E)からわかるように、防滴カバーの全体形状は、直方体ではなく、βの角で垂直方向から直方体を斜めに切断した形状となっており、切断して現れる斜面に対する法線が斜め下を向くようになっている。この斜面の反対側にスピーカが設置される。すなわち、防滴カバー1100を正面から見た場合、防滴カバーの奥の方に、複数の超音波発生素子が配置されたスピーカ1110が設置される。
スピーカ1110の前方には、シート1102、1103が、垂直方向から斜めにβの角を有するように平行に配置されている。言い換えると、シート1102、1103の上辺は下辺よりもスピーカ1110の前方に位置する。またシート1103の前方には、網1101がシート1102、1103と平行に設置されている。
本実施形態において、βは、防滴カバーの正面から雨などの水が侵入しないようにするために設けられ、20°以上60°以下、好ましくは、25°以上35°以上である。60°より大きい場合には、防滴カバーの前後の長さが大きくなり、製造コストなどが大きくなる。また、20°未満である場合には、水滴が水平に侵入しようとするとき、その侵入を防ぐことが困難となる。また、次に示す実験例から、βは30°が最も好ましいことがわかった。
また、βを0より大きくすることにより、防滴カバーの上面が底面よりもスピーカ1110の前方に延びることになる。これにより、スピーカ1110から放射される超音波が上方に広がることを防止することもできる。
ここで、シート1102、1103は、スピーカ1110から放射される超音波をできるだけ減衰させないようにするのが好ましい。この条件に適合するシートを探したところ、ナイロン製のメッシュシートが好ましいことがわかった。また、特に、次のような特性を有するナイロン製メッシュシートが好ましいことがわかった。シートの厚さは380μmであり、シートに用いられる糸の線径は200μmであり、糸と糸との距離は308μmであり、メッシュクロスの空間率(オープニングエリアの割合)は37%である。
また、実験例から、シートは、1枚設置する場合よりも2枚設置する場合が、防滴シートの正面からの水の侵入をより確実に防止することができることがわかった。これは、水滴が防滴カバー正面から侵入しても、シート1103のオープニングエリアにより、水滴がさらに小さな水滴に分割されるとともに、シート1103に運動量が吸収される。したがって、仮にシート1103を水滴が通過しても、シート1102を通過することができず、スピーカ1110に水滴が到達することが防止される。
網1101は、必須の構成要件ではないが、大きな水滴が網1101に衝突することにより、小さな水滴に分割する作用を有し、シート1103、1102の通過をより確実に阻止することができる。この作用を達成するために、網1101は金網や、複数の孔が設けられた金属板とすることが好ましい。
(実験例)
シート1102、1103として、株式会社テックジャムより購入した2枚のナイロンメッシュシート(製品番号NB50)を所定の距離だけ離して平行に配置し、垂直にすることと、垂直方向から斜めに30°傾斜させることとができる箱を用意した(図12参照)。実験では、図12の写真に示すように、段ボール箱を用いている。このような段ボールを用いて、垂直方向から斜めに30°傾斜させることにより、防滴カバー1100の正面と同じ形状を作出することができる。
このように設置したナイロンメッシュシートに、水流を変えられるホースノズルを用いて、(1)ジョロ水流、(2)シャワー水流、(3)弱ストレート水流のそれぞれを水平にして、垂直にしたナイロンメッシュシートと、30°傾斜させたナイロンメッシュシートとに噴射させてみた。
(垂直にした場合)
図13は、ジョロ水流を噴射した後の、1枚目のナイロンメッシュシート(直接水が噴射されるナイロンメッシュシート)の写真を示す。噴射後、幅13cm縦11.5cmの範囲で水滴がつき、特に幅11cm縦6.3cmの範囲において大量の水が裏面まで到達していた。なお、2枚目のナイロンメッシュシートは水が通過(貫通)しなかった。
図14は、シャワー水流を噴射した後の、1枚目のナイロンメッシュシートの写真を示す。噴射後、幅16cm縦21cmの範囲に水滴がつき、特に幅11cm横7cmの範囲において大量の水が裏面まで到達していた。なお、2枚目のナイロンメッシュシートは水が貫通しなかった。
図15は、弱ストレート水流を噴射した後の、1枚目のナイロンメッシュシートの写真を示す。図15に示すように、広範囲において、大量の水が裏面まで到達していた。なお、2枚目のナイロンメッシュシートは水が貫通しなかった。
(30°傾斜させた場合)
図16は、ジョロ水流を噴射した後の、1枚目のナイロンメッシュシートの写真を示す。噴射後、幅65mm横18mmの範囲において、図13の場合よりもはるかに少ない水が裏面まで到達していた。なお、2枚目のナイロンメッシュシートは水が貫通しなかった。
図17は、シャワー水流を噴射した後の、1枚目のナイロンメッシュシートの写真を示す。噴射後、幅11cm横4.6cmの範囲において、図14の場合よりもはるかに少ない水が裏面まで到達していた。なお、2枚目のナイロンメッシュシートは水が貫通しなかった。
図18は、弱ストレート水流を噴射した後の、1枚目のナイロンメッシュシートの写真を示す。噴射後、幅9cm横45mmの範囲において、水滴が付着していた。特に幅5.5cm幅2cmの範囲で水が裏面に到達していた。なお、2枚目のナイロンメッシュシートは水が貫通しなかった。
以上からわかるように、全ての場合において、2枚目のナイロンメッシュシートには水が貫通しなかった。このため、ナイロンメッシュシートをすくなくとも2重にすることにより、防滴効果が期待できる。また、ナイロンメッシュシートの傾斜の有無によって一枚目のナイロンメッシュシートの水の貫通の程度が異なっていた。すなわち、ナイロンメッシュシートを30°傾斜させた場合は、垂直にした場合よりも効果的に水滴の侵入を防ぐことができる。
また、ナイロンメッシュシートを2重にして傾斜を30°よりも大きくしてストレート水流を強くして噴射してみたが、どの場合も2枚目のナイロンメッシュシートを貫通した。しかし、ナイロンメッシュシートの前に、金属性の金網を取り付けることにより、侵入する水の量を減少させることができる。