JP5485130B2 - 滅菌紙 - Google Patents

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本発明は医療器具等を滅菌する際に使用される滅菌紙に関し、特に、合成樹脂フィルムと組み合わせたコンビネーションタイプの滅菌用包装袋、あるいは合成樹脂製の成型滅菌容器の蓋材等として好適に用いられる滅菌紙に関する。
医療の現場において、注射器、手術用手袋、手術に使用する器具類等の医療器具は、滅菌用包装材に封入され、その後、エチレンオキサイドガス等を用いたガス滅菌、γ線や電子線を用いた放射線滅菌を施され、使用されるまで包装材内に収納され、使用される際に開封される。そして、包装材としては、合成樹脂フィルムと滅菌紙のコンビネーションタイプの包装紙、あるいは合成樹脂を成型加工した容器に滅菌紙で蓋をした容器、等が用いられている。近年、エチレンオキサイドガス滅菌の問題点がクローズアップされたり、滅菌処理時間短縮の効果から、電子線滅菌等による放射線滅菌が普及してきている。
このような用途の滅菌紙に要求される特性としては、(1)菌の進入を防ぎ、且つ滅菌用ガスの通気性が良好なこと、(2)ピンホールがないこと、(3)滅菌後に医療器具等を取り出すときのピール性(開封時に紙繊維の脱落なく、きれいに剥がれること)が良いこと、(4)ヒートシールが可能なこと、(5)滅菌後の包装体の流通・保管中に破損が起きないよう、適当な強度を持っていること、(6)電子線滅菌して徐々に強度劣化が進行しても、十分に強度を維持していること、などである。
かかる要求に応えるものとして、例えば、特許文献1には、フィルムとヒートシールする基紙の表面に無機系填料を含有する熱可塑性樹脂層を設けることにより、通気性、ピール性、ヒートシール性を満足する滅菌バック紙が提案されている。しかしながら、この方法では、エチレンオキサイドガス滅菌では満足する特性が得られるが、放射線滅菌では、基紙に樹脂含浸を施して基材の補強を行っても、セルロースが劣化してピール性が悪化する場合があった。
特開2000−246840号公報
本発明は、通気性、ピール性、ヒートシール性に優れ、コンビネーションタイプの滅菌用包装袋のみならず成型滅菌容器の蓋材としても使用出来、エチレンオキサイドガス等を用いたガス滅菌に用いられる滅菌紙、さらに電子線滅菌にも用いることができる滅菌紙を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、特定の塗布剤を使用することによりかかる課題が解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、基紙の表面に、合成イソプレンゴム及びエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂を主成分とし、合成イソプレンゴム含有量がエマルジョン固形分の35〜55重量%であるエマルジョン100乾燥重量部に対して、無機系填料を10〜50重量部の割合で含む塗布剤を、固形分として1〜10g/m塗布した滅菌紙、を提供するものである。
本発明の滅菌紙は通気性が良好でエチレンオキサイドガス等を用いたガス滅菌に好適に使用出来、合成樹脂フィルムあるいは合成樹脂成型品のいずれについても、ピール性、ヒートシール性が優れたものである。さらには、紙の劣化を引き起こしやすい電子線滅菌に使用してもピール性、ヒートシール性が優れた滅菌紙を得ることもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。
発明で用いられる基紙は、晒木材パルプを湿式抄紙したものであるが、必要に応じて他の天然繊維、合成繊維等を使用・併用することができる。これらに、各種製紙用薬品を添加することもできる。
基紙に要求される特性としては、良好な通気性、加工時や使用時に伸びたり破断しない程度の強度、耐水性を付与する事などが要求される。なお、本発明の塗布剤を施せば、基紙に樹脂含浸処理は要らないが、塗布後の通気性を損なわない程度であれば含浸処理を行っても良い。特に、基材としては未塗工滅菌紙、上質紙、ラテックス等の樹脂含浸紙などを挙げることができるが、中でも含浸紙、特にアクリル系樹脂含浸紙が好ましい。
基紙に樹脂を含浸する場合、望ましい含浸率は、当該樹脂の種類や、その後に施す熱可塑性樹脂層の組成
によっても異なる。本発明では含浸剤が、含浸後の重量に対して2〜6重量%になるように行った。含浸率が高すぎると、通気性が劣るものとなる。
無機系填料としては、白土、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどが例示され、これらは単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。これら無機系填料は、粒子径が0.1〜15μm、好ましくは5〜15μm、のものが、良好な通気性、ピール性が得られるので望ましい。無機系填料は、フィルムまたは容器に完全にシールできていたことを示すシール痕を残させるためにも添加される。
本発明で用いられるイソプレンゴム及びエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂を主成分としたエマルジョンは、イソプレンゴム含有量がエマルジョン固形分の35〜55重量%のものが好適である。エマルジョン固形分中のイソプレンゴム含有量が35重量%未満ではピール性が十分に得られず、55重量%を超えるとシール強度が低下する。かかるイソプレンゴム及びエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂を主成分としたエマルジョンを作製するには、イソプレンゴムラテックス、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョンそれぞれを塗布前に混合して用いても良いし、また予めイソプレンゴムとエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂を配合してあるエマルジョンを用いても良い。
エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂と混合するゴム系ラテックスは、イソプレンゴムの他に天然ゴムでも良いが、イソプレンゴムを使用した場合、ラテックスアレルギー物質や臭い物質に対する懸念がなく好ましい。
無機系填料の配合比は、イソプレンゴム及びエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂を主成分としたエマルジョン100乾燥重量部に対し、10〜50重量部、好ましくは20〜45重量部添加される。無機系填料が10重量部未満であると通気性が劣ったりシール痕が残り難くなり、50重量部を越して用いると無機系填料が脱落したりヒートシール強度が低下したりする。
本発明では、塗布液の発泡を抑えるために消泡剤を添加しても支障はない。
本発明の無機系填料を含有する塗布剤は固形分として1〜10g/m2塗布するのが望ましい。塗布量が1g/m2未満であるとヒートシール性が悪く、10g/m2を越えると通気性が悪くなる。
本発明の塗工方法としては、抄紙機に備えているオンマシン塗工あるいは抄紙後のオフマシン塗工が可能で
ある。塗工方法は特に限定されるものではなく、例えば、エアナイフコータ、ロッドバーコータ、ブレードコータなど
コータ及びその他の公知の塗工方法が利用できる。
本発明による滅菌紙の用途は紙とフィルムを組み合わせたタイプの滅菌用包装材に最適であるが、紙と成形したプラスチック容器を組み合わせたタイプや紙単独の滅菌用包装材に用いてもなんら支障はない。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
なお、実施例における特性は、以下の方法で評価した。
(1)ヒートシール性
滅菌紙とフィルムのポリエチレン面をヒートシール機(オートミニAM−300RW改)で1.5秒間(120℃)ヒートシールし、テンシロン引張試験機(下降速度300mm/min)により手離しでシール強度を測定した。
ヒートシール強度は、1.5〜3.0N/15mmが望ましい。
(2)ピール性
ヒートシール性評価で作製したものと同様のヒートシールサンプルを、テンシロン引張試験機(下降速度300mm/min)を用いて90°剥離し、紙破れの状況を目視により判定した。
5:紙破れなし。
4:毛羽立ちがわずかに見える。
3:毛羽立ちがはっきり見える。
2:一部で紙破れあり。
1:全体で紙破れ。
ピール性は、4回の平均値で4以上であれば実用上問題ない。
(3)シール痕
ピール性を評価したサンプルについて、シール痕の状態を目視により判定した。
○:白い痕が均一に残る ×:それ以外
(4)透気度
JIS−P8117に準じて測定した。透気度は300秒以下が望ましい。
製造例1
NBKP60%、LBKP40%のパルプ配合で550mlCSFに叩解し、パルプに対してアクリルアミド紙力増強剤(星光PMC社製ポリアクロンST−13)1.0重量%、アルキルケテンダイマー(荒川化学工業社製サイズパインK−287)0.8重量%、エピクロル樹脂湿潤紙力増強剤(星光PMC社製WS−525)1.0重量%を添加して、坪量70g/m2、透気度12秒の基紙を抄造し、基紙1を得た。
製造例2
NBKP60%、LBKP40%のパルプ配合で550mlCSFに叩解し、パルプに対してアクリルアミド紙力増強剤(星光PMC社製ポリアクロンST−13)1.0重量%、アルキルケテンダイマー(荒川化学工業社製サイズパインK−287)0.8重量%、エピクロル樹脂湿潤紙力増強剤(星光PMC社製WS−525)1.0重量%を添加して、坪量70g/m2、透気度12秒の基紙を抄造し、この基紙に、アクリル樹脂(ガンツ化成社製ウルトラゾールB−600)90重量%にアクリル樹脂(ガンツ化成社製ウルトラゾールUL−637)10重量%を配合した含浸液を、含浸後の重量に対して4重量%になるように含浸して基紙2を作製した。
実施例1
基紙1に、イソプレンゴムラテックス(住友精化社製セポレックスIR100K)50乾燥重量部、タルク43重量部、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン(東洋モートン社製AD37R345J)50乾燥重量部、界面活性剤(日本乳化剤製、ニューコールTN−6618)1重量部からなる塗布液を、固形分として7g/m2塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
得られた滅菌紙の評価結果を、他の実施例、比較例と併せて表1に示す。
実施例2
実施例1において、塗布液中のタルクの添加量を43重量部から10重量部にかえた以外は実施例1と同様に実施し、本発明の滅菌紙を得た。
実施例3
実施例1において、塗布液の塗布量を10g/m2とした以外は実施例1と同様に実施し、本発明の滅菌紙を得た。
実施例4
実施例1において、基紙1にかえて基紙2を用いた以外は実施例1と同様に実施し、本発明の滅菌紙を得た。
実施例5
実施例1において、塗布液中のイソプレンゴムラテックス添加量を50乾燥重量部から35乾燥重量部にかえ、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン添加量を50乾燥重量部から65乾燥重量部にかえた以外は実施例1と同じ配合の塗布液を、固形分として7g/m2塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
実施例
実施例1において、塗布液中のイソプレンゴムラテックス添加量を50乾燥重量部から55乾燥重量部にかえ、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン添加量を50乾燥重量部から45乾燥重量部にかえた以外は実施例1と同じ配合の塗布液を、固形分として6g/m2塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
比較例1
実施例1において、塗布液からイソプレンゴムラテックスを除き、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン添加量を50乾燥重量部から100乾燥重量部にかえた以外は実施例1と同じ配合の塗布液を、固形分として8g/m2塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
比較例2
実施例1において、塗布液からタルクを除いた以外は実施例1と同じ配合の塗布液を、固形分として6g/m 2 塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
比較例3
実施例1において、塗布液中のイソプレンゴムラテックス添加量を50乾燥重量部から30乾燥重量部にかえ、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン添加量を50乾燥重量部から70乾燥重量部にかえた以外は実施例1と同様に実施し、本発明の滅菌紙を得た。
比較例4
基紙2に、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン100乾燥重量部、タルク186重量部、界面活性剤1重量部からなる塗布液を、固形分として8g/m2塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
比較例5
実施例1において、塗布液中のイソプレンゴムラテックス添加量を50乾燥重量部から60乾燥重量部にかえ、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂エマルジョン添加量を50乾燥重量部から40乾燥重量部にかえた以外は実施例1と同じ配合の塗布液を、固形分として6g/m2塗布し、本発明の滅菌紙を作製した。
比較例6
実施例1において、塗布液の塗布量を14g/m2とした以外は実施例1と同様に実施し、本発明の滅菌紙を得た。

Figure 0005485130
評価例(電子線処理)
実施例及び比較例で得られた滅菌紙に対し、電子線照射装置(RDI社製ダイナミトロン 5MeV電子加速器)を用いて、照射線量60kGyで電子線処理を行い、60℃で10日間促進劣化処理した後、シール強度とピール性を測定した。
評価結果を、表2に示す。
Figure 0005485130
表1の結果が示すように、実施例と比較例との比較において、電子線処理前のピール性については大きな差は見られなかったが、表2の結果が示すように、電子線処理後のピール性については格段の差が生じた。
以上詳述したように、この発明によれば通気性が良好で、優れたピール性、ヒートシール性を有し、容器を開封した時にシール痕が残りやすい滅菌紙が得られる。また、電子線処理してもピール性が低下しないため、紙の劣化を引き起こしやすい電子線滅菌に使用してもピール性、ヒートシール性が優れた滅菌紙を得ることができる。

Claims (1)

  1. 基紙の表面に、合成イソプレンゴム及びエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂を主成分とし、合成イソプレンゴム含有量がエマルジョン固形分35〜55重量%であるエマルジョン100乾燥重量部に対して、無機系填料を10〜50重量部の割合で含む塗布剤を、固形分として1〜10g/m塗布した滅菌紙。
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