JP5482513B2 - 冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(A)熱間圧延直後に水冷により急冷するいわゆる直後急冷プロセスを経て製造された熱延鋼板、具体的には、熱間圧延完了から0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで急冷して製造された熱延鋼板を、冷間圧延し焼鈍すると、焼鈍温度の上昇に伴い、冷延鋼板の延性および伸びフランジ性が向上するが、焼鈍温度が高すぎると、オーステナイト粒が粗大化し、冷延鋼板の延性および伸びフランジ性が急激に劣化する場合がある。
以上の結果から、Siを一定量以上含有させた鋼を熱間圧延した後に直後急冷し、高温でコイル状に巻取り、冷間圧延し、(Ac3点−40℃)以上の温度で焼鈍した後、冷却することにより、主相が低温変態生成相であり第二相に微細なフェライトを含み、さらにMn含有量の高い鉄炭化物が多数分散する金属組織を備え、延性および伸びフランジ性に優れた冷延鋼板を製造することができる。
(1)質量%で、C:0.020%超0.20%未満、Si:0.10%超2.0%以下、Mn:1.50%以上3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.10%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、主相が低温変態生成相であり第二相がフェライトと残留オーステナイトとからなる金属組織を備え、前記金属組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置において析出物を抽出し、該析出物について、倍率20000倍で50μm 2 の視野を観察して得られた鉄炭化物の平均数密度であって、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である前記鉄炭化物の平均数密度が3.0×10−3個/μm2以上であり、さらに、前記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下であることを特徴とする冷延鋼板。
(A)上記(1)から(4)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブにAr3点以上
の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板を前記圧延の
完了後0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで冷却し、400℃以上の温度域で巻取
る熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に(Ac3点−40℃)以上の温度域で均熱処理を施す焼鈍工程。
1.金属組織
本実施の形態の冷延鋼板は、主相である低温変態生成相とフェライトを含有する第二相とからなるとともに、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物を3.0×10−3個/μm2以上の平均数密度で含有し、さらに、上記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織を有する。
主相である低温変態生成相とフェライトを含有する第二相とからなるとともに、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物を3.0×10−3個/μm2以上の平均数密度で含有し、さらに、前記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織とするのは、延性および伸びフランジ性を損なうことなく、高強度化することを可能にするためである。
C:0.020%超0.20%未満
C含有量が0.020%以下では上記の金属組織を得ることが困難となる。したがって、C含有量は0.020%超とする。好ましくは0.060%超、さらに好ましくは0.080%超、特に好ましくは0.10%超である。一方、C含有量が0.20%以上では鋼板の延性が損なわれるばかりか溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.20%未満とする。好ましくは0.17%未満、さらに好ましくは、0.15%未満、特に好ましくは0.13%未満である。
Siは、鉄炭化物の数密度およびMn含有量を高めることにより焼鈍中のオーステナイト粒成長を抑制する作用を有し、この作用を通じて冷延鋼板の延性および伸びフランジ性を高める。Si含有量が0.10%以下では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Si含有量は0.10%超とする。好ましくは0.25%超、さらに好ましくは0.50%超、特に好ましくは0.60%超である。一方、Si含有量が2.0%超では鋼板の表面性状が劣化する。さらに、化成処理性およびめっき性が著しく劣化する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.50%以下、さらに好ましくは1.25%以下、特に好ましくは1.00%未満である。
Mnは、鋼の焼入性を向上させる作用を有し、上記の金属組織を得るのに有効な元素である。Mn含有量が1.50%未満では上記の金属組織を得ることが困難となる。したがって、Mn含有量は1.50%以上とする。好ましくは2.10%超、さらに好ましくは2.20%超、特に好ましくは2.30%超である。一方、Mn含有量が3.50%超では、フェライトの体積率が過小となって延性が劣化するばかりか、Mnの偏析により曲げ性が損なわれ、さらには、素材コストの上昇を招く。したがって、Mn含有量は3.50%以下とする。好ましくは3.00%未満、さらに好ましくは2.70%未満、特に好ましくは2.50%未満である。
Pは、不純物として鋼中に含有される元素であり、粒界に偏析して鋼を脆化させる。このため、P含有量は少ないほど好ましい。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.020%未満であり、さらに好ましくは0.015%未満である。
Sは、不純物として鋼中に含有される元素であり、硫化物系介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる。このため、S含有量は少ないほど好ましい。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.001%以下である。
Alは、溶鋼を脱酸する作用を有する。本発明においては、Alと同様に脱酸作用を有するSiを含有させるため、Alは必ずしも含有させる必要はない。脱酸目的で含有させる場合には、sol.Alとして0.10%を超えて含有させても効果が飽和して不経済となるため、sol.Al含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下である。Alによる脱酸作用による効果をより確実に得るには、sol.Al含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Nは、不純物として鋼中に含有される元素であり、延性を劣化させる。このため、N含有量は少ないほど好ましい。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.006%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。
Ti:0.040%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、炭化物または窒化物として析出し、焼鈍中のオーステナイトの粗大化を抑制し、延性および伸びフランジ性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。そればかりか、再結晶温度が上昇し、冷延鋼板の金属組織が不均一化し、伸びフランジ性も損なわれる。さらには、炭化物または窒化物の析出量が増し、降伏比が上昇し、形状凍結性も劣化する。したがって、Ti含有量は0.040%未満、Nb含有量は0.030%未満、V含有量は0.50%以下とする。Ti含有量は好ましくは0.025%未満、さらに好ましくは0.020%未満であり、Nb含有量は好ましくは0.020%未満、特に好ましくは0.015%以下であり、V含有量は好ましくは0.30%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.005%以上、Nb:0.005%以上およびV:0.010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。Tiを含有させる場合には、Ti含有量を0.010%以上とすることがさらに好ましく、Nbを含有させる場合には、Nb含有量を0.010%以上とすることがさらに好ましい。
Cr、MoおよびWは、鋼の焼入性を向上させる作用を有し、上記の金属組織を得るのに有効な元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Cr含有量は1.0%以下、Mo含有量は0.50%以下、B含有量は0.010%以下とする。Cr含有量は好ましくは0.50%以下であり、Mo含有量は好ましくは0.20%以下であり、B含有量は好ましくは0.0030%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Cr:0.20%以上、Mo:0.05%以上およびB:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Ca、MgおよびREMは介在物の形状を調整することにより、Biは凝固組織を微細化することにより、ともに伸びフランジ性を改善する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ca含有量は0.010%以下、Mg含有量は0.010%以下、REM含有量は0.050%以下、Bi含有量は0.050%以下とする。好ましくは、Ca含有量は0.0020%以下、Mg含有量は0.0020%以下、REM含有量は0.0020%以下、Bi含有量は0.010%以下である。上記作用をより確実に得るには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上およびBi:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。なお、REMとは希土類元素を意味し、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REM含有量はこれらの元素の合計含有量である。
上述した化学組成を有する鋼は、公知の手段により溶製された後に、連続鋳造法により鋼塊とされるか、または、任意の鋳造法により鋼塊とした後に分塊圧延する方法等により鋼片とされる。連続鋳造工程では、介在物に起因する表面欠陥の発生を抑制するために、鋳型内にて電磁攪拌等の外部付加的な流動を溶鋼に生じさせることが好ましい。鋼塊または鋼片は、一旦冷却されたものを再加熱して熱間圧延に供してもよく、連続鋳造後の高温状態にある鋼塊または分塊圧延後の高温状態にある鋼片をそのまま、あるいは保温して、あるいは補助的な加熱を行って熱間圧延に供してもよい。本明細書では、このような鋼塊および鋼片を、熱間圧延の素材として「スラブ」と総称する。熱間圧延に供するスラブの温度は、オーステナイトの粗大化を防止するために、1250℃未満とすることが好ましく、1200℃以下とすればさらに好ましい。熱間圧延に供するスラブの温度の下限は特に限定する必要はなく、後述するように熱間圧延をAr3点以上で完了することが可能な温度であればよい。
急冷を行う設備は特に規定されないが、工業的には水量密度の高い水スプレー装置を用いることが好適であり、圧延板搬送ローラーの間に水スプレーヘッダーを配置し、圧延板の上下から十分な水量密度の高圧水を噴射する方法が例示される。
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し鋳造した。これらの鋼塊を、熱間鍛造により厚さ30mmの鋼片とした。鋼片を、電気加熱炉を用いて1200℃に加熱し60分間保持した後、表2に示される条件で熱間圧延を行った。
降伏応力(YS)、引張強度(TS)および全伸び(El)は、上記焼鈍を施した冷延鋼板から、圧延方向に沿ってJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行うことにより求めた。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.020%超0.20%未満、Si:0.10%超2.0%以下、Mn:1.50%以上3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.10%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
主相が低温変態生成相であり第二相がフェライトと残留オーステナイトとからなる金属組織を備え、
前記金属組織は、
鋼板表面から板厚の1/4深さ位置において析出物を抽出し、該析出物について、倍率20000倍で50μm 2 の視野を観察して得られた鉄炭化物の平均数密度であって、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である前記鉄炭化物の平均数密度が3.0×10−3個/μm2以上であり、さらに、前記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下であることを特徴とする冷延鋼板。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.040%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷延鋼板。
- 下記工程(A)〜(C)を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の冷延鋼板の製造方法:
(A)請求項1から請求項4のいずれかに記載の化学組成を有するスラブにAr3点以上の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板を前記圧延の完了後0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで冷却し、400℃以上の温度域で巻取る熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に(Ac3点−40℃)以上の温度域で均熱処理を施す焼鈍工程。
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