JP5482513B2 - 冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5482513B2
JP5482513B2 JP2010149700A JP2010149700A JP5482513B2 JP 5482513 B2 JP5482513 B2 JP 5482513B2 JP 2010149700 A JP2010149700 A JP 2010149700A JP 2010149700 A JP2010149700 A JP 2010149700A JP 5482513 B2 JP5482513 B2 JP 5482513B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
cold
rolled steel
rolling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010149700A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012012656A (ja
Inventor
拓也 西尾
純 芳賀
泰明 田中
規雄 今井
俊郎 富田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2010149700A priority Critical patent/JP5482513B2/ja
Publication of JP2012012656A publication Critical patent/JP2012012656A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5482513B2 publication Critical patent/JP5482513B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、冷延鋼板およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、プレス加工等により様々な形状に成形して利用される高張力冷延鋼板、特に、延性と伸びフランジ性とに優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法に関する。
産業技術分野が高度に分業化した今日、各技術分野において用いられる材料には、特殊かつ高度な性能が要求されている。例えば、プレス成形して使用される冷延鋼板についても、プレス形状の多様化に伴い、より優れた成形性が必要とされている。また、高い強度が要求されるようになり、高張力冷延鋼板の適用が検討されている。特に、自動車用鋼板に関しては、地球環境への配慮から、車体を軽量化して燃費を向上させるために、薄肉高成形性高張力冷延鋼板の需要が著しく高まってきている。プレス成形においては、使用される鋼板の厚さが薄いほど、割れやしわが発生しやすくなるため、より延性や伸びフランジ性に優れた鋼板が必要とされる。しかし、これらのプレス成形性と鋼板の高強度化とは、背反する特性であり、これらの特性を同時に満足させることは困難である。
これまでに、高張力冷延鋼板のプレス成形性を改善する方法として、ミクロ組織の微細粒化に関する技術が多く提案されている。例えば特許文献1には、熱間圧延工程においてAr点近傍の温度域で合計圧下率80%以上の圧延を行う、極微細粒高強度熱延鋼板の製造方法が開示されており、特許文献2には、熱間圧延工程において、圧下率40%以上の圧延を連続して行う、超細粒フェライト鋼の製造方法が開示されている。
しかし、これらの技術の様に熱間圧延工程で大圧下を行う方法は、圧延機へ過度の負荷がかかるため、工業的生産に適用することは困難である。また、冷延鋼板を微細粒化する方法については何ら記載されておらず、本発明者らの検討によると、大圧下圧延によって得られた細粒熱延鋼板を母材として、冷間圧延および焼鈍を行うと結晶粒が容易に粗大化し、プレス成形性に優れた冷延鋼板を得ることが困難である。特に、Ac点以上の高温域で焼鈍することが必要な、フェライト相と低温変態生成相からなる金属組織を有する二相組織冷延鋼板の製造においては、結晶粒の粗大化が顕著であり、延性に優れるという二相組織冷延鋼板の利点を享受することができない。
特許文献3には、熱間圧延工程において、動的再結晶域での圧下を5スタンド以上の圧下パスで行う、超微細粒を有する熱延鋼板の製造方法が開示されている。しかし、熱間圧延時の温度低下を極度に低減させる必要があり、通常の熱間圧延設備で実施することは困難である。また、熱間圧延後、冷間圧延および焼鈍を行った例が示されているが、引張強度と穴拡げ性のバランスが悪く、プレス成形性が不十分である。
冷延鋼板を微細粒化する方法に関しては、特許文献4に、TiまたはNbを多量に含有させ、焼鈍工程でフェライトを細粒化する技術が開示されている。微細なフェライト中にマルテンサイトやベイナイトが分散する二相組織鋼板が得られ、降伏比が低く形状凍結性が改善され、さらに、強度と延性のバランス、および強度と伸びフランジ性のバランスのいずれかを向上させることができるとされているが、延性と伸びフランジ性の双方を同時に確保することは困難である。また、TiおよびNbの添加により製造コストが上昇するばかりか、高温で焼鈍するとオーステナイト粒が粗大化するために焼鈍の適正温度範囲が狭く、製造安定性を確保し難い。
特許文献5には、冷間圧延後にAe点以上Ae点以下の温度に加熱した後急冷する前処理を少なくとも1回施し、さらにAe点以上Ae点以下の温度に保持し急冷する焼鈍を行い、二相型高張力鋼板を微細粒化する方法が開示されており、特許文献6には、熱延鋼板に600℃以上Ac点以下の熱処理を施した後、冷延および焼鈍を行い、二相型高張力鋼板を微細粒化する方法が開示されている。これらの方法では、前処理または熱処理を行う工程が追加されるため、生産性の劣化および製造上コストの上昇が著しい。
特許文献7には、熱間圧延直後に720℃以下まで急冷し600〜720℃の温度域に2秒間以上保持し、得られた熱延鋼板に冷間圧延および焼鈍を施す、粒度分布の小さい微細粒組織を有する冷延鋼板の製造方法が開示されている。
特開昭58−123823号公報 特開昭59−229413号公報 特開平11−152544号公報 特開2004−250774号公報 特開2004−232022号公報 特開2005−213603号公報 国際公開第2007/15541号
上述の特許文献7において開示される技術は、熱間圧延終了後、オーステナイトに蓄積された加工歪みを解放させず、加工歪みを駆動力としてフェライト変態させることにより、粒径分布の小さい微細粒組織が形成され、優れた延性および熱的安定性が得られる優れた発明である。しかし、本発明者らが検討を重ねた結果、鋼の化学組成および製造条件によっては、冷間圧延および焼鈍後に、高い強度と良好な延性と良好な伸びフランジ性を同時に確保することができない場合があることが判明した。
本発明は、そのような問題点を解決するためになされたものであり、さらに具体的にはその課題は、優れた延性および伸びフランジ性を有する引張強度が590MPa以上の高張力冷延鋼板およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、高張力冷延鋼板の機械特性に及ぼす化学組成および製造条件の影響について詳細な調査を行った。なお、本明細書において、化学組成における各元素の含有量を示す「%」とはすべて質量%を意味する。
一連の供試鋼は、質量%で、C:0.20%未満、Si:2.0%以下、Mn:1.50%以上3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.010%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するものであった。
このような化学組成を有するスラブを、1200℃に加熱した後、Ar点以上の温度範囲で板厚2.0mmまで熱間圧延し、熱間圧延後、種々の冷却条件で720℃以下の温度域まで冷却し、5〜10秒間空冷した後、90℃/s以下の冷却速度で種々の温度まで冷却してこれを巻取温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して30分間保持した後、20℃/hの冷却速度で炉冷却して巻取後の徐冷をシミュレートした。得られた熱延鋼板を酸洗し、50%の圧延率で板厚1.0mmまで冷間圧延した。連続焼鈍シミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板を種々の温度に加熱し、95秒間保持する均熱処理を施した後、冷却する焼鈍を施した。
熱延鋼板および上記焼鈍を施した冷延鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な縦断面を研磨した後、光学顕微鏡および走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置において金属組織を観察した。また、上記焼鈍を施した冷延鋼板の鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における析出物を、レプリカ法により抽出し、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。また、上記焼鈍を施した冷延鋼板から、圧延方向に平行に引張試験片を採取して引張試験を行った。さらに、上記焼鈍を施した冷延鋼板の伸びフランジ性を穴拡げ試験により評価した。穴拡げ試験では、クリアランス12.5%で直径10mmの打ち抜き穴を開け、先端角60°の円錐ポンチで打ち抜き穴を押し拡げ、板厚を貫通する割れが発生したときの穴の拡大率を測定した。
これらの予備試験の結果、次の(A)ないし(E)のような知見を得た。
(A)熱間圧延直後に水冷により急冷するいわゆる直後急冷プロセスを経て製造された熱延鋼板、具体的には、熱間圧延完了から0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで急冷して製造された熱延鋼板を、冷間圧延し焼鈍すると、焼鈍温度の上昇に伴い、冷延鋼板の延性および伸びフランジ性が向上するが、焼鈍温度が高すぎると、オーステナイト粒が粗大化し、冷延鋼板の延性および伸びフランジ性が急激に劣化する場合がある。
(B)直後急冷後の巻取工程において、巻取温度を上昇させると、冷間圧延後、高温で焼鈍した際、オーステナイト粒の粗大化が抑制される。この理由は明らかではないが、次に説明するように鉄炭化物が関与していると推測される。すなわち、直後急冷により熱延鋼板が細粒化するため、巻取温度の上昇に伴い熱延鋼板中の鉄炭化物の析出量が顕著に増加する。この鉄炭化物は、焼鈍中、フェライトからオーステナイトへの変態における核生成サイトとして機能するため、鉄炭化物の析出量が多いほど核生成頻度が上昇し、オーステナイトが細粒化する。また、析出する鉄炭化物中のMn含有量が顕著に上昇するため、焼鈍時に未固溶の鉄炭化物が増加する。この未固溶の鉄炭化物は、オーステナイトの粒成長を抑制する。
(C)鋼中のSi含有量が多いほど、オーステナイト粒の粗大化の抑制効果が強くなる。この理由は明らかではないが、次のように推測される。すなわち、Si含有量の増加に伴い、鉄炭化物が微細化し数密度が増加する。これにより、フェライトからオーステナイトへの変態における核生成頻度がさらに上昇する。また、Si含有量の増加に伴い、鉄炭化物中のMn含有量が上昇し、焼鈍時に未固溶の鉄炭化物が増加する。このため、オーステナイトの粒成長がさらに抑制され、オーステナイトがさらに細粒化する。
(D)オーステナイト粒の粗大化を抑制しながら(Ac点−40℃)以上の温度域で均熱して冷却すると、微細な低温変態生成相を主相とし第二相に微細なフェライトを含み、さらにMn含有量の高い鉄炭化物が多数分散する金属組織が得られる。
(E)この様な金属組織を有する冷延鋼板は、高強度でありながら良好な延性および良好な伸びフランジ性を示す。
以上の結果から、Siを一定量以上含有させた鋼を熱間圧延した後に直後急冷し、高温でコイル状に巻取り、冷間圧延し、(Ac点−40℃)以上の温度で焼鈍した後、冷却することにより、主相が低温変態生成相であり第二相に微細なフェライトを含み、さらにMn含有量の高い鉄炭化物が多数分散する金属組織を備え、延性および伸びフランジ性に優れた冷延鋼板を製造することができる。
以上の知見に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.020%超0.20%未満、Si:0.10%超2.0%以下、Mn:1.50%以上3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.10%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、主相低温変態生成相であり第二相がフェライトと残留オーステナイトとからなる金属組織を備え前記金属組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置において析出物を抽出し、該析出物について、倍率20000倍で50μm の視野を観察して得られた鉄炭化物の平均数密度であって、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である前記鉄炭化物の平均数密度が3.0×10−3個/μm以上であり、さらに、前記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下であることを特徴とする冷延鋼板。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.040%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)に記載の冷延鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の冷延鋼板。
(4)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の冷延鋼板。
(5)下記工程(A)〜(C)を有することを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の冷延鋼板の製造方法:
(A)上記(1)から(4)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブにAr点以上
の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板を前記圧延の
完了後0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで冷却し、400℃以上の温度域で巻取
る熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に(Ac点−40℃)以上の温度域で均熱処理を施す焼鈍工程。
本発明によれば、プレス成形などの加工に適用できる十分な延性および伸びフランジ性を有する高張力冷延鋼板が得られる。本発明は自動車の車体軽量化を通じて地球環境問題の解決に寄与できるなど産業の発展に寄与するところ大である。
本発明に係る冷延鋼板における金属組織、化学組成およびその鋼板を効率的、安定的かつ経済的に製造しうる製造方法における圧延、焼鈍条件等について以下に詳述する。
1.金属組織
本実施の形態の冷延鋼板は、主相である低温変態生成相とフェライトを含有する第二相とからなるとともに、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物を3.0×10−3個/μm以上の平均数密度で含有し、さらに、上記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織を有する。
ここで、低温変態生成相とは、マルテンサイトやベイナイト等といった低温変態により生成される相および組織をいう。これら以外に、アシキュラーフェライト、ベイニティックフェライトや焼戻しマルテンサイトが例示される。この低温変態生成相は、2種以上の相および/または組織、例えば、マルテンサイトとベイナイトとを含んでいてもよい。
なお、主相とは体積率が最大であることを意味し、第二相とは主相以外の相および組織を意味する。低温変態生成相が2種以上の相および/または組織を含む場合は、これらの相および/または組織の体積率の合計を低温変態生成相の体積率とする。
また、鉄炭化物とは、主としてFeとCからなる化合物を意味し、FeC(セメンタイト)、Fe(C,B)やFe23(C,B)が例示される。
主相である低温変態生成相とフェライトを含有する第二相とからなるとともに、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物を3.0×10−3個/μm以上の平均数密度で含有し、さらに、前記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織とするのは、延性および伸びフランジ性を損なうことなく、高強度化することを可能にするためである。
主相である低温変態生成相の体積率は、一層優れた伸びフランジ性を確保するために60.0%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは70.0%以上、特に好ましくは80.0%以上である。一方、低温変態生成相の体積率が過剰であると延性が劣化する傾向を示す。しかしながら、この傾向が顕著となる主相の体積率は第二相を構成する他の相や組織の体積率との関係で変化するため、確定的に規定することは困難である。したがって、優れた延性を安定的に達成する観点から、低温変態生成相の体積率は95.0%未満であることが好ましい。さらに好ましくは90.0%未満である。
第二相に含有されるフェライトの平均結晶粒径が5.0μmを超えると、延性劣化が顕著となる。したがって、フェライトの平均結晶粒径は5.0μm以下とする。好ましくは4.0μm未満、さらに好ましくは3.0μm未満である。フェライトの平均結晶粒径の下限は特に規定する必要はないが、フェライトを著しく細粒化するには、Mn、Ti、Nb等を多量に含有させることが必要となって素材コストの上昇を招く。したがって、フェライトの平均結晶粒径は0.5μm以上とすることが好ましい。なお、延性をさらに向上させるためには、フェライトの体積率は3.0%超とすることが好ましい。さらに好ましくは8.0%超、特に好ましくは14.0%超である。
[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度を3.0×10−3個/μm以上とするのは、焼鈍中のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、延性および伸びフランジ性を向上させるためである。[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度が3.0×10−3個/μm未満では、オーステナイトの粗大化抑制が不十分となり、延性および伸びフランジ性が劣化する。[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度は、5.0×10−3個/μm以上であることが好ましく、1.0×10−2個/μm以上であることがさらに好ましい。[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度の上限は特に規定する必要はないが、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度を増加させるには、熱間圧延工程において巻取温度を高くする必要があるところ、巻取温度が高すぎると、スケール生成による歩留まりの低下が顕著となることが懸念される。したがって、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度は3.0×10−1個/μm以下とすることが好ましい。
なお、[Mn]/[Fe]が0.04未満である鉄炭化物には延性および伸びフランジ性を向上させる作用がほとんどないため、その平均数密度は特に規定しない。[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物は、主相および/または第二相中に存在する。また、該鉄炭化物はCr等の鋼成分を含有していてもよい。
引張強度を高めるために、低温変態生成相はマルテンサイトを含むことが好ましい。この場合、組織全体に占めるマルテンサイトの体積率は3.0%以上とすることが好ましく、6.0%以上とすることがさらに好ましく、10.0%以上とすることが特に好ましい。一方、マルテンサイトの体積率が過剰になると伸びフランジ性が劣化する傾向を示す。しかしながら、この傾向が顕著となるマルテンサイトの体積率は他の相や組織の体積率との関係で変化するため、確定的に規定することは困難である。したがって、優れた伸びフランジ性を安定的に達成する観点から、組織全体に占めるマルテンサイトの体積率の上限は50.0%未満とすることが好ましく、30.0%未満とすることがさらに好ましく、20.0%未満とすることが特に好ましい。
また、低温変態生成相がベイナイトを含む場合において、その体積率が過剰になると引張強度が低下する場合がある。この場合には高い引張強度を確保するためにMn、Ti、Nb等を多量に含有させることが必要となって素材コストの上昇を招く。したがって、組織全体に占めるベイナイトの体積率は85.0%未満とすることが好ましく、80.0%未満とすることがさらに好ましく、75.0%未満とすることが特に好ましい。
第二相としては、フェライト以外に残留オーステナイトを含んでいてもよい。残留オーステナイトが含まれると、延性が向上する。その一方で、残留オーステナイトの体積率が過剰になると伸びフランジ性が劣化する傾向を示す。しかしながら、この傾向が顕著となる残留オーステナイトの体積率は他の相や組織の体積率との関係で変化するため、確定的に規定することは困難である。したがって、優れた伸びフランジ性を安定的に達成する観点から、残留オーステナイトを含む場合におけるその体積率の上限は15.0%未満であることが好ましく、11.0%未満であればさらに好ましく、9.0%未満であれば特に好ましい。残留オーステナイトによる延性向上作用をより確実に得るには、残留オーステナイトの体積率を2.0%超とすることが好ましく、3.0%超とすることがさらに好ましく、5.0%超とすることが特に好ましい。
本発明に係る冷延鋼板の金属組織は、次のようにして測定する。すなわち、鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な縦断面を研磨し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置においてSEMを用いて金属組織を観察し、画像処理により低温変態生成相およびフェライトの体積率ならびにフェライトの平均結晶粒径を測定する。また、X線回折用試験片を採取し、X線回折により、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における残留オーステナイト量を測定する。
鉄炭化物の平均数密度は、次のようにして測定する。すなわち、鋼板から試験片を採取し、圧延方向に平行な縦断面を研磨し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置においてレプリカ法により析出物を抽出する。この析出物について、TEMを用いて、倍率20000倍で50μmの視野を10視野観察し、電子線回折およびEDSを用いて析出物の同定と組成分析を行い、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度を測定する。
なお、本実施の形態では、冷延鋼板の場合は鋼板表面から板厚の1/4深さ位置、めっき鋼板の場合は基材である鋼板とめっき層との境界から基材である鋼板の板厚の1/4深さ位置において、上述の金属組織を規定する。
以上の金属組織上の特徴に基づいて実現されうる機械特性として、本実施の形態の鋼板は、衝撃吸収性を確保するために、590MPa以上の引張強度(TS)を有していることが好ましく、780MPa以上であればさらに好ましく、980MPa以上であれば特に好ましい。また、延性を確保するために、TSは1180MPa未満であることが好ましい。また、プレス成形性の観点から、鋼板の全伸びをEl、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠して測定される穴拡げ率をλとしたとき、TS×El×λの値が7.5×10MPa以上であることが好ましく、8.0×10MPa以上であることはさらに好ましく、8.5×10MPa以上であれば特に好ましい。形状凍結性の観点からは、降伏比が80%未満であることが好ましく、75%未満であることはさらに好ましく、70%未満であれば特に好ましい。
2.鋼の化学組成
C:0.020%超0.20%未満
C含有量が0.020%以下では上記の金属組織を得ることが困難となる。したがって、C含有量は0.020%超とする。好ましくは0.060%超、さらに好ましくは0.080%超、特に好ましくは0.10%超である。一方、C含有量が0.20%以上では鋼板の延性が損なわれるばかりか溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.20%未満とする。好ましくは0.17%未満、さらに好ましくは、0.15%未満、特に好ましくは0.13%未満である。
Si:0.10%超2.0%以下
Siは、鉄炭化物の数密度およびMn含有量を高めることにより焼鈍中のオーステナイト粒成長を抑制する作用を有し、この作用を通じて冷延鋼板の延性および伸びフランジ性を高める。Si含有量が0.10%以下では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Si含有量は0.10%超とする。好ましくは0.25%超、さらに好ましくは0.50%超、特に好ましくは0.60%超である。一方、Si含有量が2.0%超では鋼板の表面性状が劣化する。さらに、化成処理性およびめっき性が著しく劣化する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.50%以下、さらに好ましくは1.25%以下、特に好ましくは1.00%未満である。
Mn:1.50%以上3.50%以下
Mnは、鋼の焼入性を向上させる作用を有し、上記の金属組織を得るのに有効な元素である。Mn含有量が1.50%未満では上記の金属組織を得ることが困難となる。したがって、Mn含有量は1.50%以上とする。好ましくは2.10%超、さらに好ましくは2.20%超、特に好ましくは2.30%超である。一方、Mn含有量が3.50%超では、フェライトの体積率が過小となって延性が劣化するばかりか、Mnの偏析により曲げ性が損なわれ、さらには、素材コストの上昇を招く。したがって、Mn含有量は3.50%以下とする。好ましくは3.00%未満、さらに好ましくは2.70%未満、特に好ましくは2.50%未満である。
P:0.10%以下
Pは、不純物として鋼中に含有される元素であり、粒界に偏析して鋼を脆化させる。このため、P含有量は少ないほど好ましい。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.020%未満であり、さらに好ましくは0.015%未満である。
S:0.010%以下
Sは、不純物として鋼中に含有される元素であり、硫化物系介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる。このため、S含有量は少ないほど好ましい。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.001%以下である。
sol.Al:0.10%以下
Alは、溶鋼を脱酸する作用を有する。本発明においては、Alと同様に脱酸作用を有するSiを含有させるため、Alは必ずしも含有させる必要はない。脱酸目的で含有させる場合には、sol.Alとして0.10%を超えて含有させても効果が飽和して不経済となるため、sol.Al含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下である。Alによる脱酸作用による効果をより確実に得るには、sol.Al含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
N:0.010%以下
Nは、不純物として鋼中に含有される元素であり、延性を劣化させる。このため、N含有量は少ないほど好ましい。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.006%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。
本実施の形態に係る鋼板は、以下に列記する元素を任意元素として含有してもよい。
Ti:0.040%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、炭化物または窒化物として析出し、焼鈍中のオーステナイトの粗大化を抑制し、延性および伸びフランジ性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。そればかりか、再結晶温度が上昇し、冷延鋼板の金属組織が不均一化し、伸びフランジ性も損なわれる。さらには、炭化物または窒化物の析出量が増し、降伏比が上昇し、形状凍結性も劣化する。したがって、Ti含有量は0.040%未満、Nb含有量は0.030%未満、V含有量は0.50%以下とする。Ti含有量は好ましくは0.025%未満、さらに好ましくは0.020%未満であり、Nb含有量は好ましくは0.020%未満、特に好ましくは0.015%以下であり、V含有量は好ましくは0.30%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.005%以上、Nb:0.005%以上およびV:0.010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。Tiを含有させる場合には、Ti含有量を0.010%以上とすることがさらに好ましく、Nbを含有させる場合には、Nb含有量を0.010%以上とすることがさらに好ましい。
Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択された1種または2種以上
Cr、MoおよびWは、鋼の焼入性を向上させる作用を有し、上記の金属組織を得るのに有効な元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Cr含有量は1.0%以下、Mo含有量は0.50%以下、B含有量は0.010%以下とする。Cr含有量は好ましくは0.50%以下であり、Mo含有量は好ましくは0.20%以下であり、B含有量は好ましくは0.0030%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Cr:0.20%以上、Mo:0.05%以上およびB:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択された1種または2種以上
Ca、MgおよびREMは介在物の形状を調整することにより、Biは凝固組織を微細化することにより、ともに伸びフランジ性を改善する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ca含有量は0.010%以下、Mg含有量は0.010%以下、REM含有量は0.050%以下、Bi含有量は0.050%以下とする。好ましくは、Ca含有量は0.0020%以下、Mg含有量は0.0020%以下、REM含有量は0.0020%以下、Bi含有量は0.010%以下である。上記作用をより確実に得るには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上およびBi:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。なお、REMとは希土類元素を意味し、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REM含有量はこれらの元素の合計含有量である。
3.製造条件
上述した化学組成を有する鋼は、公知の手段により溶製された後に、連続鋳造法により鋼塊とされるか、または、任意の鋳造法により鋼塊とした後に分塊圧延する方法等により鋼片とされる。連続鋳造工程では、介在物に起因する表面欠陥の発生を抑制するために、鋳型内にて電磁攪拌等の外部付加的な流動を溶鋼に生じさせることが好ましい。鋼塊または鋼片は、一旦冷却されたものを再加熱して熱間圧延に供してもよく、連続鋳造後の高温状態にある鋼塊または分塊圧延後の高温状態にある鋼片をそのまま、あるいは保温して、あるいは補助的な加熱を行って熱間圧延に供してもよい。本明細書では、このような鋼塊および鋼片を、熱間圧延の素材として「スラブ」と総称する。熱間圧延に供するスラブの温度は、オーステナイトの粗大化を防止するために、1250℃未満とすることが好ましく、1200℃以下とすればさらに好ましい。熱間圧延に供するスラブの温度の下限は特に限定する必要はなく、後述するように熱間圧延をAr点以上で完了することが可能な温度であればよい。
熱間圧延は、圧延完了後にオーステナイトを変態させることにより熱延鋼板の組織を微細化するために、Ar点以上の温度域で完了させる。圧延完了の温度が低いと、熱延鋼板の集合組織が発達し、冷間圧延および焼鈍後における伸びフランジ性が劣化する。このため、熱間圧延は(Ar点+20℃)以上の温度で完了することが好ましい。(Ar点+30℃)以上の温度で完了することがさらに好ましい。また、熱間圧延の温度が低すぎると、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、熱間圧延を780℃以上で完了することが好ましく、800℃以上で完了することがさらに好ましい。
なお、熱間圧延が粗圧延と仕上圧延とからなる場合には、仕上圧延を上記温度で完了するために、粗圧延と仕上圧延との間で粗圧延材を加熱してもよい。この際、粗圧延材の後端が先端よりも高温となるように加熱することにより仕上圧延の開始時における粗圧延材の全長にわたる温度の変動を140℃以下に抑制することが望ましい。これにより、コイル内の製品特性の均一性が向上する。
粗圧延材の加熱方法は公知の手段を用いて行えばよい。例えば、粗圧延機と仕上圧延機との間にソレノイド式誘導加熱装置を設けておき、この誘導加熱装置の上流側における粗圧延材長手方向の温度分布等に基づいて加熱昇温量を制御してもよい。
熱間圧延の圧下量は、オーステナイトに導入される加工歪み量を増大し、熱延鋼板の組織微細化を促進するために、高いほど好ましい。しかし、圧下量が高くなりすぎると、圧延荷重が増大して圧延が困難となる。したがって、熱間圧延の最終1パスの圧下量を板厚減少率で15%超50%未満とすることが好ましく、20%超40%未満とするとさらに好ましい。
熱間圧延後は、圧延完了後0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで急冷する。これは、圧延によりオーステナイトに導入された加工歪みの解放を抑制し、加工歪みを駆動力としてオーステナイトを変態させ、熱延鋼板の組織を微細化し、冷間圧延および焼鈍後における延性および伸びフランジ性を向上させるためである。好ましくは、圧延完了後0.3秒間以内に720℃以下の温度域まで急冷することであり、さらに好ましくは、圧延完了後0.2秒間以内に720℃以下の温度域まで急冷することである。
また、加工歪みの解放は、急冷中の平均冷却速度が速いほど抑制されるので、急冷中の平均冷却速度を400℃/s以上とすることが好ましく、これにより、熱延鋼板の組織を一層微細化することができる。急冷中の平均冷却速度を500℃/s以上とすればさらに好ましく、700℃/s以上とすれば特に好ましい。
なお、圧延完了から急冷を開始するまでの時間および、その間の冷却速度は、特に規定する必要がない。
急冷を行う設備は特に規定されないが、工業的には水量密度の高い水スプレー装置を用いることが好適であり、圧延板搬送ローラーの間に水スプレーヘッダーを配置し、圧延板の上下から十分な水量密度の高圧水を噴射する方法が例示される。
急冷停止後は、鋼板を400℃以上の温度域で巻取る。これは、Mn含有量が高い鉄炭化物の析出を促し、冷間圧延および焼鈍後における延性および伸びフランジ性を向上させるためである。巻取温度は500℃超とすることが好ましく、550℃超とすることがさらに好ましく、600℃超とすることが特に好ましい。一方、巻取温度が高すぎると、スケール生成による歩留まりの低下が顕著となることが懸念される。したがって、優れた生産性を安定的に実現する観点から、巻取温度は700℃未満とすることが好ましい。
急冷停止から巻取りまでの条件は特に規定しないが、急冷停止後、720〜600℃の温度域で1秒間以上保持することが好ましい。これにより、微細なフェライトの生成が促進される。一方、保持時間が長くなりすぎると生産性が損なわれるので、720〜600℃の温度域における保持時間の上限を10秒間以内とすることが好ましい。720〜600℃の温度域で保持した後は、生成したフェライトの粗大化を防止するために、巻取温度までを20℃/s以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
以上のようにして製造された熱延鋼板は、微細なフェライトを主体とし鉄炭化物を含む金属組織を有する。焼鈍中のオーステナイトの粗大化をより抑制し、冷延鋼板の延性および伸びフランジ性をさらに向上させるためには、フェライトの平均結晶粒径を3.0μm以下とすることが好ましく、2.0μm以下とするとさらに好ましい。また、フェライトの体積率は、85%以上とすることが好ましく、90%以上とするとさらに好ましい。
熱間圧延された鋼板は、酸洗等により脱スケールされた後に、常法に従って冷間圧延される。冷間圧延は、再結晶を促進して冷延鋼板の金属組織を均一化し、伸びフランジ性を向上させるために、冷圧率を40%以上とすることが好ましい。冷圧率が高すぎると、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、冷圧率の上限を70%未満とすることが好ましく、60%未満とすることはさらに好ましい。
冷間圧延後の鋼板は、必要に応じて公知の方法に従って脱脂等の処理が施された後、焼鈍される。焼鈍における均熱温度は、(Ac点−40℃)以上とする。これは、主相が低温変態生成相であって第二相にフェライトを含む金属組織を得るためである。低温変態生成相の体積率を増加させ、伸びフランジ性を向上させるために、均熱温度は(Ac点−20℃)超とすることが好ましく、Ac点超とするとさらに好ましい。一方、均熱温度が高くなり過ぎると、オーステナイトが過度に粗大化して延性および伸びフランジ性が劣化する傾向を示す。しかしながら、その傾向が顕著となる温度は鋼の化学組成などにより変化するため、確定的に規定することは困難である。したがって、優れた延性および伸びフランジ性を安定的に達成する観点から、均熱温度は(Ac点+100℃)未満とすることが好ましく、(Ac点+50℃)未満とするとさらに好ましい。
焼鈍における均熱温度までの加熱速度は、700℃以上の温度域を10℃/s未満とすることが好ましい。均熱温度到達までの加熱速度が速すぎると冷延鋼板の金属組織が不均一となり、伸びフランジ性の劣化を招くおそれがある。
焼鈍における均熱後の冷却過程では、微細なポリゴナルフェライトの生成を促進するため、750〜650℃の温度域のある温度まで5℃/s未満の冷却速度で冷却してもよい。また、低温変態生成相を得るために、650〜450℃の温度範囲を15℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で冷却することが好ましい。さらに好ましい冷却速度は30℃/s超150℃/s未満であり、特に好ましい冷却速度は50℃/s超130℃/s未満である。また、冷延鋼板の金属組織を調整するために、450〜200℃の温度域で60秒間以上保持しても良い。引張強度を高めるためには、保持温度を400℃以下とすることが好ましい。一方、低温変態生成相とフェライトの硬度差を小さくし、伸びフランジ性を向上させるためには、保持温度を300℃以上とすることが好ましく、350℃以上とすることはさらに好ましい。
めっき鋼板を製造する場合には、上述した方法で製造された冷延鋼板に、常法に従って電気めっきや溶融めっきを行えばよく、めっき方法やめっき被膜の化学組成、めっき後の合金化処理の有無には限定されない。電気めっきとしては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっきとしては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。
なお、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、焼鈍における均熱後の冷却過程では、600〜460℃の温度域のある温度まで4℃/s以上の冷却速度で冷却し、この温度域で10秒間以上保持してから溶融亜鉛めっきを施すことが好ましい。これにより、低温変態生成相が得られやすくなる。また、塗装後の耐食性を向上させるために、溶融亜鉛めっき後再加熱して合金化処理することが好ましい。
このようにして得られた冷延鋼板およびめっき鋼板には、常法にしたがって調質圧延を行ってもよい。しかし、調質圧延の伸び率が高いと延性の劣化を招く。そこで、調質圧延の伸び率は1.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましい伸び率は0.5%以下である。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し鋳造した。これらの鋼塊を、熱間鍛造により厚さ30mmの鋼片とした。鋼片を、電気加熱炉を用いて1200℃に加熱し60分間保持した後、表2に示される条件で熱間圧延を行った。
Figure 0005482513
Figure 0005482513
具体的には、実験用熱間圧延機を用いて、Ar点以上の温度域で6パスの圧延を行い、厚さ2〜3mmに仕上げた。最終1パスの圧下率は、板厚減少率で22〜25%とした。熱間圧延後、水スプレーを使用して種々の冷却条件で650〜720℃まで冷却し、5〜10秒間放冷した後、60℃/sの冷却速度で種々の温度まで冷却してこれを巻取温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して30分間保持した後、20℃/hの冷却速度で室温まで炉冷却して巻取後の徐冷をシミュレートすることにより、熱延鋼板を得た。
得られた熱延鋼板を酸洗して冷間圧延母材とし、圧下率50〜60%で冷間圧延を施し、厚さ1.0〜1.2mmの冷延鋼板を得た。連続焼鈍シミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板を、10℃/sの加熱速度で550℃まで加熱した後、2℃/sの加熱速度で表2に示される種々の温度まで加熱して95秒間保持する均熱処理を施し、その後、700℃からの平均冷却速度を60℃/sとして表2に示される種々の冷却停止温度まで冷却し、その温度に330秒間保持した後、室温まで冷却する焼鈍を施した。
得られた熱延鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な縦断面を研磨した後、光学顕微鏡およびSEMを用いて、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における金属組織を観察し、画像処理によりフェライトの体積分率、およびフェライトの平均結晶粒径を測定した。
また上記焼鈍を施した冷延鋼板から、SEM観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な縦断面を研磨した後、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における金属組織を観察し、画像処理により、低温変態生成相とフェライトの体積分率および、フェライトの平均結晶粒径を測定した。
また、上記焼鈍を施した冷延鋼板から、析出物観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な縦断面を研磨した後、3%ナイタール溶液にて10秒間腐食し、アセチルセルロースフィルムを用いたブランクレプリカ法により、析出物を抽出し、カーボン蒸着膜に支持した。このレプリカ試料を用い、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における析出物を、TEM観察した。倍率20000倍で50μmの視野を10視野観察し、電子線回折およびEDSを用いて析出物の同定と組成分析を行い、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度を測定した。
さらに、X線回折用試験片を採取し、X線回折により、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における残留オーステナイト量を測定した。
降伏応力(YS)、引張強度(TS)および全伸び(El)は、上記焼鈍を施した冷延鋼板から、圧延方向に沿ってJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行うことにより求めた。
伸びフランジ性は、以下の方法で穴拡げ率(λ)を測定することにより評価した。上記焼鈍を施した冷延鋼板から100mm角の正方形素板を採取し、クリアランス12.5%で直径10mmの打ち抜き穴を開け、先端角60°の円錐ポンチでダレ側から打ち抜き穴を押し拡げ、板厚を貫通する割れが発生したときの穴の拡大率を測定し、これを穴拡げ率とした。
表3に冷延鋼板の金属組織観察結果および性能評価結果を示す。
Figure 0005482513
本発明が規定する範囲内の鋼板についての試験結果(試番1、4、7、8、11、13〜17)は、いずれも、TS×El×λの値が9.0×10MPa以上であり、良好な延性および伸びフランジ性を示した。なお、冷延鋼板の金属組織は、いずれも低温変態生成相が主相であり、低温変態生成相はベイナイトおよびマルテンサイトを含んでいた。
鋼組成または製造方法が、本発明の規定する範囲から外れる鋼板についての試験結果(試番2、3、5、6、9、10、12)は、いずれも、TS×El×λの値が5.3×10MPa以下であり、延性および伸びフランジ性が劣っていた。
具体的には、試番2(鋼A)、試番5(鋼B)および試番9(鋼D)は、熱間圧延完了から急冷停止までの時間が長すぎるために、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度が低く、冷延鋼板のフェライトが粗大であり、延性および伸びフランジ性が悪い。
試番3(鋼A)および試番10(鋼D)は、焼鈍中の均熱温度が低すぎるために低温変態生成相を主相とする金属組織が得られておらず、冷延鋼板のフェライトが粗大であり、延性および伸びフランジ性が悪い。
試番6(鋼B)および試番10(鋼D)は、巻取温度が低すぎるために、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物が存在せず、冷延鋼板のフェライトが粗大であり、延性および伸びフランジ性が悪い。
試番12(鋼F)は、鋼中のSi含有量が少ないために、[Mn]/[Fe]が0.04以上である鉄炭化物の平均数密度が低く、冷延鋼板のフェライトが粗大であり、延性および伸びフランジ性が悪い。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.020%超0.20%未満、Si:0.10%超2.0%以下、Mn:1.50%以上3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.10%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    主相低温変態生成相であり第二相がフェライトと残留オーステナイトとからなる金属組織を備え
    前記金属組織は、
    鋼板表面から板厚の1/4深さ位置において析出物を抽出し、該析出物について、倍率20000倍で50μm の視野を観察して得られた鉄炭化物の平均数密度であって、Mn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)の比の値である[Mn]/[Fe]が0.04以上である前記鉄炭化物の平均数密度が3.0×10−3個/μm以上であり、さらに、前記フェライトの平均結晶粒径が5.0μm以下であることを特徴とする冷延鋼板。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.040%未満、Nb:0.030%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷延鋼板。
  4. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷延鋼板。
  5. 下記工程(A)〜(C)を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の冷延鋼板の製造方法:
    (A)請求項1から請求項4のいずれかに記載の化学組成を有するスラブにAr点以上の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板を前記圧延の完了後0.4秒間以内に720℃以下の温度域まで冷却し、400℃以上の温度域で巻取る熱間圧延工程;
    (B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
    (C)前記冷延鋼板に(Ac点−40℃)以上の温度域で均熱処理を施す焼鈍工程。
JP2010149700A 2010-06-30 2010-06-30 冷延鋼板およびその製造方法 Active JP5482513B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010149700A JP5482513B2 (ja) 2010-06-30 2010-06-30 冷延鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010149700A JP5482513B2 (ja) 2010-06-30 2010-06-30 冷延鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012012656A JP2012012656A (ja) 2012-01-19
JP5482513B2 true JP5482513B2 (ja) 2014-05-07

Family

ID=45599433

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010149700A Active JP5482513B2 (ja) 2010-06-30 2010-06-30 冷延鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5482513B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2831292B2 (en) 2012-03-30 2022-08-10 voestalpine Stahl GmbH High strength cold rolled steel sheet and method of producing such steel sheet
CN104169444B (zh) 2012-03-30 2017-03-29 奥钢联钢铁有限责任公司 高强度冷轧钢板和生产这种钢板的方法
KR101656977B1 (ko) * 2012-04-10 2016-09-12 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 충격 흡수 부재에 적합한 강판과 그 제조 방법
JP2013216945A (ja) * 2012-04-10 2013-10-24 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 鋼板および衝撃吸収部材
JP5880235B2 (ja) * 2012-04-10 2016-03-08 新日鐵住金株式会社 鋼板の製造方法
JP5949253B2 (ja) * 2012-07-18 2016-07-06 新日鐵住金株式会社 溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法
SE1651545A1 (en) * 2016-11-25 2018-03-06 High strength cold rolled steel sheet for automotive use

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4158737B2 (ja) * 2004-04-16 2008-10-01 住友金属工業株式会社 微細粒熱延鋼板の製造方法
JP5446885B2 (ja) * 2010-01-06 2014-03-19 新日鐵住金株式会社 冷延鋼板の製造方法
JP5187320B2 (ja) * 2010-01-06 2013-04-24 新日鐵住金株式会社 冷延鋼板の製造方法
JP5446886B2 (ja) * 2010-01-06 2014-03-19 新日鐵住金株式会社 冷延鋼板の製造方法
JP5655358B2 (ja) * 2010-04-16 2015-01-21 Jfeスチール株式会社 耐海水腐食性に優れた鋼材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012012656A (ja) 2012-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3214197B1 (en) High-strength steel sheet and method for manufacturing same
EP3214196B1 (en) High-strength steel sheet and method for manufacturing same
JP5446885B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
KR101621639B1 (ko) 강판, 도금 강판 및 그들의 제조 방법
WO2013005714A1 (ja) 冷延鋼板の製造方法
KR101597058B1 (ko) 냉연 강판
JP5446886B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5648597B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5825205B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5825206B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5482513B2 (ja) 冷延鋼板およびその製造方法
WO2013005670A1 (ja) 溶融めっき冷延鋼板およびその製造方法
JP6398210B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5187320B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5664482B2 (ja) 溶融めっき冷延鋼板
JP5648596B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5825204B2 (ja) 冷延鋼板
JP5708320B2 (ja) 冷延鋼板
JP6314511B2 (ja) 冷延鋼板
JP6326837B2 (ja) 冷延鋼板
JP5644704B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5708318B2 (ja) 冷延鋼板
JP5708319B2 (ja) 冷延鋼板
JP5644703B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120528

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121011

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20121011

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A132

Effective date: 20130917

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131115

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20131115

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140121

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140203

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5482513

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350