JP5477632B2 - ポリプロピレンワックス分散体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリプロピレンワックス分散体の製造方法に関する。
ワックスを塗料用あるいは印刷インキ用添加剤として使用する場合、通常、ワックスを有機溶剤中へ分散させ、ワックス分散体として用いる。
このようなワックス分散体の製造方法としては、粗粒子のワックスを、鋼球を詰めたボールミルを用いて、常温の有機溶剤中でボールの衝撃により微細化していく機械的粉砕方法と、ワックスを有機溶剤中で加熱溶解した後、撹拌冷却しながら微粒子状に晶析させる溶融冷却法が知られている。
また、この溶融冷却法(冷却晶析法)には、撹拌下で徐冷していく溶融徐冷法と、強撹拌下で有機溶剤を添加して急冷する溶融急冷法があり、特に溶融急冷法においてはバッチ方式又は連続方式がある。
例えば、溶融徐冷する方法として、ポリエチレン低分子量ワックス(分子量Mw:800〜7000)でポリエチレン結晶物が析出する温度領域の降温速度をその他の温度領域の降温速度の1/6〜1/30とすることで小粒径かつ粒度分布幅の狭いワックス粒子を得るポリエチレンワックス粒子の製造方法が提案されている(特許文献1)。
この方法によると、ポリエチレンワックスの有機溶剤への溶解方法としてはポリエチレンの融点+30℃、好ましくは融点+50℃以上の温度で撹拌しながら、ポリエチレンワックスを有機溶剤中で完全に溶解することが好ましいとされているが、ポリプロピレンワックスのような高分子量ワックスに対しては、均一かつ微細なワックス分散体を得ることが困難であった。
また、溶融急冷法については、撹拌機等の混合機能を備えた混合/冷却ゾーンに加熱溶解したワックスと有機溶剤の混合溶液を連続的に供給しながら、曇点より3℃以上低い温度に0.1〜10秒の短時間で急冷することにより、効率よくワックス微粒子を製造する製造方法も提案されている(特許文献2)。
しかしながら、機械的粉砕法や上述した徐冷又は急冷法では、均一に微細化できるワックス原料には限界があり、特に、ポリプロピレン(分子量Mw:350000)に代表されるようなポリマーの融点と結晶化温度との差が大きく(20℃以上)、かつ、結晶化速度の遅い高分子量ワックスについては、均一かつ微細なワックスの分散体を得ることが困難であった。
特開2004−059869公報 特開平05−186603号公報
本発明は、ポリプロピレンワックスのように高分子量のワックスであっても、均一かつ微細なワックス分散体が得られる製造方法及びワックス分散体を提供するものである。
本発明者等は、最終的に所望される配合比に相当するポリプロピレンと有機溶剤との混合物に対して、予め示差走査熱量計(DSC)で融点と結晶化温度とを測定しておき、混合物を撹拌しながら、融点以上の温度であって、かつ、ポリプロピレンの未溶解物が残らないように、できる限り融点に近い温度まで混合物の温度を上げ、ポリプロピレンを有機溶剤に加熱溶融させた後、結晶化温度まで温度を下げ、次いで、撹拌を停止して、ポリプロピレン粒子の結晶成長が止まる安定領域まで温度を下げていくことで、均一かつ微細な分散性に優れるポリプロピレンワックス分散体を得ることを見出した。
すなわち、本発明は、ポリプロピレンワックス分散体の製造方法において、
(1)最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体の配合比に相当するポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物に対して、予め示差走査熱量計(DSC)で融点Mt1と結晶化温度Ct1とを測定する工程Aと、
(2)次いで、撹拌しながら、融点Mt1以上の温度であって、かつ、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らないように、混合物の温度を「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃の範囲にある温度T1まで上げる工程Bと、
(3)次いで、撹拌しながら、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らなくなるまで、工程Bにおける混合物の温度を温度T1で一定時間保持する工程Cと、
(4)次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct1まで、混合物の温度を下げる工程Dと、
(5)次いで、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、結晶化温度Ct1よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度T2まで、混合物の温度を下げる工程Eと、
を有し、
15℃≦「融点Mt1−結晶化温度Ct1」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とすることを特徴とするポリプロピレンワックス分散体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、原料としてポリプロピレン分散体を使用する場合には、
(1)最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体のポリプロピレン固形物と有機溶剤との配合比に相当するポリプロピレン分散体に対して、予め示差走査熱量計(DSC)で融点Mt2と結晶化温度Ct2とを測定する工程aと、
(2)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」−3℃≦t2≦「融点Mt2」の範囲にある温度t2まで上げる工程bと、
(3)次いで、撹拌しながら、工程bにおけるポリプロピレン分散体の温度を温度t2で一定時間保持する工程cと、
(4)次いで、撹拌しながら、融点Mt2以上の温度であって、かつ、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らないように、0.1〜2.0℃/minの昇温速度で、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」+3℃≦t3≦「融点Mt2」+6℃の範囲にある温度t3まで上げる工程dと、
(5)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らなくなるまで、工程dにおけるポリプロピレン分散体の温度を温度t3で一定時間保持する工程eと、
(6)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2+15℃の範囲にある温度t4まで下げる工程fと、
(7)次いで、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度まで、ポリプロピレン分散体の温度を下げる工程gと、
を有し、
15℃≦「融点Mt2−結晶化温度Ct2」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とすることを特徴とするポリプロピレンワックス分散体の製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によるポリプロピレンワックス分散体は、均一かつ微細で分散性に優れるため、このポリプロピレンワックス分散体を使用した塗料用樹脂は、求められる要求品質である接着性、光沢、及び耐磨耗性に優れる。
示差走査熱量計(DSC)による融点(Mt)及び結晶化温度の測定例。 本発明の製造方法の工程を示す模式図。 実施例1によるポリプロピレン分散体の光学顕微鏡写真(写真1)。 実施例2によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真2)。 実施例3によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真3)。 実施例4によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真4)。 実施例5によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真5)。 実施例6によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真6)。 比較例1によるポリプロピレン分散体の光学顕微鏡写真(写真7)。 比較例2によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真8)。 比較例3によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真9)。 実施例7によるポリプロピレンワックス分散体の光学顕微鏡写真(写真10)。 実施例1によるポリプロピレン分散体のスラリーの状態を示す写真(写真11)。 実施例2によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真12)。 実施例3によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真13)。 実施例4によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真14)。 実施例5によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真15)。 実施例6によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真16)。 比較例1によるポリプロピレン分散体のスラリーの状態を示す写真(写真17)。 比較例2によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真18)。 比較例3によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真19)。 実施例7によるポリプロピレンワックス分散体のスラリーの状態を示す写真(写真20)。
高分子量のポリプロピレンでは、示差走査熱量計(DSC)による測定で、融点と結晶化温度とが異なるという特性を有しており(図1参照)、しかも、融点、結晶化温度、融点−結晶化温度の差などは、ポリプロピレンの形状の違い、ポリプロピレンの分子量の違い、有機溶剤との配合比の違いなどによって、異なってくる。
したがって、少なくとも融点以上の温度で加熱することにより、ポリプロピレンは有機溶剤に容易に溶融することになり、これを結晶化温度以下に下げることにより、ポリプロピレンワックス分散体が得られる。この場合におけるポリプロピレン粒子の粒子系は、一次粒子径でおおよそ10〜30μm、平均粒子径でおおよそ50〜100μmとなる。
ところが、驚くべきことに、ポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物、又はポリプロピレンワックス分散体を、DSC測定による融点よりも僅かに高い温度で加熱溶融処理することにより、得られるポリプロピレンワックス分散体中のポリプロピレン粒子径が、一次粒子径でおおよそ0.5〜5μm、平均粒子径で10〜20μmと大幅に微粒子化されることが判明した。
そこで、本発明においては、最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体の配合比に相当するポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物に対して、予めDSCでこの混合物の融点Mt1と結晶化温度Ct1とを測定しておくことが重要となる(工程A)。図2に、本発明の製造方法の工程の模式図を示す。
次に、ポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物を製造装置(例えば、反応釜など)に投入し、撹拌しながら、混合物の温度を上記DSCで測定した融点Mt1以上の温度であって、かつ、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らないように、できる限りこの融点Mt1に近い温度まで、混合物の温度を上昇させる(工程B)。具体的には、後述するように、混合物の温度を「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃の範囲にある温度T1まで上昇させればよい
未溶解物が見えなくなる温度T1は、ポリプロピレン固形物の状態にも影響されるが、例えば、0.5〜5mm程度のペレット状のものでは、常温からの昇温における加熱溶融で、上記DSCによる融点Mt1よりも10℃以上の温度で未溶解物がなくなる。また、この条件下で、最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体中のポリプロピレン粒子径を微細粒子に維持できる温度としては、未溶解物が確認できなくなる限界温度から+3℃以内である。すなわち、この場合には、混合物の温度を「融点Mt1+(10〜13℃)」まで上昇させていき、その条件下で加熱溶融すればよいことになる。なお、0.1mm程度の粉体状のものでは、ペレット状のものよりも融点は低くなるため、混合物の温度を「融点Mt1+(3〜10℃)」まで上昇させていき、その条件下で加熱溶融すればよい。したがって、混合物の温度を「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃の範囲にある温度T1まで上昇させればよいことになる。
上記工程Bにおける最終到達温度(混合物の温度T1)で直ちに未溶解物がなくなるわけではないので、この未溶解物が残らなくなるまで、上記工程Bにおける最終到達温度(混合物の温度T1)を一定時間保持しておく(工程C)。なお、未溶解物の有無は、内部状態確認可能な実験用ガラス製オートクレーブや、内部観察可能なルッキングガラスを装備した製造装置等で確認できる。
この工程Cにおける混合物は、ポリプロピレン溶液となっているが、いわばポリプロピレンの固相(結晶化)と液相(溶融状態)との平衡状態に近い状態と考えられる。この略平衡状態では、結晶化するためのポリプロピレンの結晶核の存在確率が高く、ポリプロピレン溶液全体で一様であると推測されるため、これを冷却することにより、ポリプロピレン溶液全体から結晶化が始まり、ポリプロピレン微粒子として一様に結晶化していくものと考えられる。
このとき、結晶化温度Ct1に到達するまでは、ポリプロピレン溶液からポリプロピレンが結晶化することはないため、ポリプロピレン溶液全体の温度を均一にするために、撹拌を継続しておくが(工程D)、結晶化温度Ct1よりも低い温度となったときには、ポリプロピレン溶液中から一様にポリプロピレンの結晶化を促進するために、撹拌を停止する。
ここで、上記ポリプロピレン溶液中からポリプロピレンの結晶が析出した状態のものは、ポリプロピレン分散体であるが、後述するように、このポリプロピレン分散体を原料と考えた場合には、必ずしもこの工程において撹拌停止する必要はなく、この工程に連続して、後述する工程a〜gを実施することで、最終的なポリプロピレンワックス分散体を製造することができる。したがって、結晶化温度Ct1よりも低い温度T2となったときは、撹拌を停止してもよく、撹拌を停止しなくてもよい(工程E)。なお、この工程に連続して後述する工程a〜gを実施する場合には、工程Eにおいて、撹拌を継続しつつ、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、結晶化温度Ct1よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度T2まで、混合物の温度を下げることで、ポリプロピレン分散体のDSCによる融点Mt2と結晶化温度Ct2とを安定して測定することができるので好ましい。以上、工程A〜工程Eまでの晶析工程を有するようにして、ポリプロピレンワックス分散体を製造することになる。
これに対し、単にポリプロピレン固形物を溶融するためだけの目的で、略平衡状態よりもかなり高い温度で加熱溶融をした場合には、結晶化するためのポリプロピレンの結晶核も消滅して存在確率が低くなり(結晶核の数が少なくなる)、ポリプロピレン溶液の一部から結晶化が始まり、ポリプロピレン微粒子の粒子径が大きくなると共に、ばらつきも大きくなるものと考えられる。
ポリプロピレンワックス分散体の原料としては、当初から、ポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物を使用することができるが、上述したように、工程A〜工程Eまでを実施して一度ポリプロピレン分散体を製造し、これを原料として使用することもできる。また、単に加熱溶融処理して得られたポリプロピレン分散体であっても、勿論使用することができる。
すなわち、最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体のポリプロピレン固形物と有機溶剤との配合比に相当するポリプロピレン分散体に対して、予めDSCで融点Mt2と結晶化温度Ct2とを測定しておく(工程a)。
次いで、このポリプロピレン分散体を製造装置(例えば、反応釜など)に投入し、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を上記DSCで測定した融点Mt2を超えない温度であって、かつ、融点Mt2よりも0〜3℃低い温度、すなわち、「融点Mt2」−3℃≦t2≦「Mt2」の範囲にある温度t2まで上昇させる(工程b)。なお、ポリプロピレン分散体を原料とすることから、この工程bの最終到達温度t2は、上述したポリプロピレン固形物を原料とする工程Bの最終到達温度T1よりも、若干低い温度となる(図2参照)
ここで、上述した工程Bと異なる点は、融点Mt2を超えない温度まで一度上昇させることである。これは、原料としてポリプロピレン分散体を使用していることから、すでにポリプロピレンがある一定の微粒子状に存在しているからである。この状態で、融点Mt2以上に温度を上昇させてしまうと、再度結晶化する際に、大きな粒子径のものしか得られなくなるからである。これは、ポリプロピレン分散体が融点Mt2以上の温度に上昇すると、結晶核をも消失してしまうと考えられるからである。
したがって、上記工程bにおける最終到達温度t2を一定時間保持して、ポリプロピレン分散体全体を、結晶核が消失しない程度な温度に一様に保持しておくことが重要となる(工程c)。したがって、特に保持する時間としては制限する必要はなく、長時間この状態に保持しておくことでも構わない。
次いで、撹拌しながら、融点Mt2以上の温度であって、かつ、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らないように、できる限り融点Mt2に近い温度まで0.1〜2.0℃/minの非常に緩やかな温度上昇をさせることにより、結晶核の消失を防ぎつつ、ポリプロピレン分散体全体が溶融状態(ポリプロピレン溶液)となるようにする(工程d)。0.1〜2.0℃/minのように、非常に緩やかに昇温する方法としては、例えば、所定の温度に到達するまで連続してこの昇温スピードで昇温させる方法や、この昇温スピードで昇温とホールドを段階的に繰り返す方法としてもよい。
上記工程dにおける最終到達温度で直ちに未溶解物がなくなるわけではないので、この未溶解物が残らなくなるまで、上記工程dにおける最終到達温度t3を一定時間保持しておく(工程e)。なお、未溶解物の有無は、内部状態確認可能な実験用ガラス製オートクレーブや、内部観察可能なルッキングガラスを装備した製造装置等で確認できる。
未溶解物が見えなくなる温度は、例えば、50μm以下の粒子状のポリプロピレン分散体では、常温からの昇温における加熱溶融で、上記DSCによる融点Mt2よりも5℃以上の温度で未溶解物がなくなる。また、この条件下で、最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体中のポリプロピレン粒子径を微細粒子に維持できる温度としては、未溶解物が確認できなくなる限界温度から+3℃以内である。すなわち、この場合には、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」+3℃≦t3≦「融点Mt2」+6℃の範囲にある温度t3まで上昇させていき、その条件下で加熱溶融すればよいことになる。
次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct2に対して−5〜15℃の範囲まで、好ましくは結晶化温度Ct2に対して±5℃の範囲まで、ポリプロピレン分散体(ポリプロピレン溶液)の温度を下げていく(工程f)。すなわち、「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+15℃の範囲にある温度t4まで、好ましくは、「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+5℃の範囲となる。この状態で、ポリプロピレン溶液としては、略平衡状態となっているものと考えられる。なお、この工程fにおける最終到達設定温度t4は、上述した工程Dにおける最終到達設定温度(結晶化温度Ct1)よりも、若干高い温度となる(図2参照)
次いで、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度まで、ポリプロピレン分散体の温度を下げる(工程g)ことにより、撹拌による粒子同士の衝突による合一及び凝集を抑制でき、均一かつ微細で分散性に優れるポリプロピレンワックス分散体を製造することができる。以上、工程a〜工程gまで、又は、工程A〜工程gまでの晶析工程を有するようにして、ポリプロピレンワックス分散体を製造することになる。
なお、1回晶析、2回晶析、・・・と晶析操作を繰り返すと、最終的に得られるポリプロピレンワックス分散体中のポリプロピレン粒子を更に微細化することができると共に、全体的に均一な微細粒子が得られるので、少なくとも、上述した工程b〜工程gまでを複数回実施することが好ましい。
本発明に使用される樹脂は、概念上は一般的なポリプロピレンに共通して適用可能であるが、特に結晶化速度の遅いポリプロピレン、即ちDSCで測定した有機溶剤中でのポリプロピレンの融点又はポリプロピレン分散体の融点と、その有機溶剤中で結晶物が析出する結晶化温度との温度差が15℃以上、好ましくは20℃以上、更に好適にはより温度差の広い30℃以上の高分子量ポリプロピレンに効果的である。具体的には結晶化速度の改善のために造核剤が用いられるような、核発生数が少ないかあるいは核の発生の遅い高分子量のポリプロピレン樹脂については、特にその効果が高い。すなわち、工程A〜工程Eにおいては15℃≦「融点Mt1−結晶化温度Ct1」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とし、工程a〜工程gにおいては15℃≦「融点Mt2-結晶化温度Ct2」であるポリプロピレンワックス分散体を対象し、工程A〜工程E〜工程a〜工程gにおいては15℃≦「融点Mt1−結晶化温度Ct1」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とするものである。
使用される有機溶剤としては特に限定されるものではなく、トルエン、O−キシレン、P−キシレン、m−キシレン、クメン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエステル;メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;などがあげられる。これらは1種単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることもできる。
ポリプロピレン固形物と有機溶剤の混合物又はポリプロピレン分散体を溶解する際は、十分に窒素置換した密閉装置あるいは窒素を定量的供給しながら酸素との接触を極力抑え、酸化による変質及び爆発等の安全性に十分注意した形で、その溶解状態を観察しながら、上述したような適正な温度域で溶解する。
そのための好適な撹拌条件と溶解に必要な溶解温度及びその温度でのホールド時間を選択する。できるだけ微細な粒子径を得るためには、できるだけ多くの結晶核が残留しかつ、未溶解物が発生しない平衡状態にある領域を的確に把握することが重要である。
効率よく適正な製造条件を確立するためには、内容物の状態が把握できるような昇温冷却の晶析操作可能なガラス製の実験装置及びポリプロピレンの未溶解の有無が判別できる内容物の目視が可能なのぞき窓のついた撹拌槽製造装置が好適である。あるいは未溶解の判定のできる屈折計及び濁度計を装備した装置が望ましい。
また、DSC測定においては、製造条件と同じ温度プロファイルをトレースして得られたポリプロピレン固形物と有機溶剤の混合物あるいはポリプロピレン分散体の融点と晶析時の結晶化温度を上記の観察結果と組み合わせることで、様々なポリプロピレン樹脂に適応したフォーミュラーがさらに効率よく確立される。
上述したように、未溶解物がない状態に溶解したポリプロピレン溶液を、実際の製造晶析条件と同じ温度プロファイル条件でDSC測定により得られる結晶化温度まで、槽内に温度分布ができないように均一に撹拌しながら冷却する。このときの冷却速度については、槽内の温度むらが±1℃以上発生しないようにすることが好ましい。
そして、槽内の温度がDSC測定の結晶化温度近傍に到達した時点で撹拌を停止し、凝集及び合一の起こらない安定した領域まで、好ましくは室温まで冷却した後、再度撹拌を開始して均一化してポリプロピレンワックス分散体を得る。なお、凝集を更に緩和するために高速ディスパー、ホモジナイザー、ビーズミル等の高速せん断混合機による再分散を組み合わせることが、均一で微細なポリプロピレンワックス分散体を製造する上で有効である。
このようにして得られたポリプロピレンワックス粒子の一次粒子径としては、通常の方法で得られる粒子径サイズが5〜20μmであるのに対して、0.5〜2.0μmとなることが、目視観察により分かる。また、レーザー解析式の粒度分布計の測定においても、通常の方法で得られる平均粒子径が50〜70μmに対して、20〜30μmとなっており、凝集の少ないものが得られることが分かる。さらに、ディスパー等の高速せん断混合機を使用することで容易に再分散でき、その平均粒子径は約半分の8〜15μmのものが得られる。
(実施例1)
重量平均分子量Mw35万のφ1mmの略粒状のポリプロピレン固形物1mgと、ブチルセロソルブとソルベッソ150とシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比40:30:30)19mgとを混合し、この混合物に対して、実際の製造条件と同様の1℃/minの昇温速度で145℃まで昇温していき、PERKIN ELMER社製DSC7で融点Mt1を測定した。混合物が完全に溶解したことを確認した後、1℃/minの降温速度で降温して、結晶化温度Ct1を測定した。測定結果は、融点Mt1が127℃、結晶化温度Ct1が103℃であった(工程A)。
・15℃≦「融点Mt1−結晶化温度Ct1」(=24℃)
上記のポリプロピレン固形物50gと上記の混合溶剤950gを2Lガラスオートクレーブに仕込み、アンカ−翼(翼径/槽径:0.8)で撹拌しながら、1℃/minの昇温速度で135℃(温度T1)まで昇温し(工程B)、内部のポリプロピレン固形物の未溶解物の有無を確認しながら30分間ホ−ルドして全量溶解した(工程C)。なお、融点Mt1の127℃よりも高い温度であっても、135℃よりも低い温度では、30分間ホールドしても全量を溶解することは困難であった。
・「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃
・ 130℃≦T1≦140℃
次いで、撹拌しながら103℃(Ct1)まで1℃/minの降温速度で降温し(工程D)、次いで、この時点で撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域まで放冷した(工程E)。
・結晶化温度Ct1よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度T2
次いで、室温まで下げて、再度、撹拌して均一にした後、ポリプロピレン分散体を取り出した。なお、上記製造工程においては、密閉系であるため、仕込みの配合比は、最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体の配合比と同じである。
このポリプロピレン分散体の光学顕微鏡写真、平均粒子径(レーザ解析式測定装置)、ポリプロピレン分散体のスラリ−状態の写真の評価結果を表1に示す。なお、平均粒子径については、測定前にディスパーで60分間、再分散させて測定した値とした。これにより軽く凝集しているものは、より粒子径に近い状態に分散されるからである。
また、接着強度については、得られたポリプロピレン分散体20部に対してエポキシ樹脂30部、硬化剤20部、ポリプロピレン分散体と同じ混合溶剤30部を混合し、ポリプロピレンフィルム上に塗布して熱融着させ、テンシロン万能試験機にてピール強度として測定した。この評価結果も併せて表1に示す。なお、このポリプロピレン分散体は、本来の所望するポリプロピレンワックス分散体ではないものの、この表1の結果から、一次粒子径も平均粒子径も十分に実用に供することができるものであり、接着剤用に使用する場合にも実用的な接着強度を有していることが分かる。
Figure 0005477632
(実施例2)
重量平均分子量Mw35万のφ1mmの略粒状のポリプロピレン固形物50gと、ブチルセロソルブとソルベッソ150とシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比40:30:30)950gとを2Lガラスオートクレーブにて混合し、この混合物に対して、1℃/minの昇温速度で145℃まで昇温し、30分間ホールドして完全に溶解し、次いで、撹拌しながら室温まで冷却してポリプロピレン分散体を得た。
このポリプロピレン分散体の一部を抜き取り、実際の製造条件と同様の1℃/minの昇温速度で130℃まで昇温していき、DSCで融点Mt2を測定した。未溶解物が残っていないことを確認した後、1℃/minの降温速度で降温して、結晶化温度Ct2を測定した。測定結果は、融点Mt2が123℃、結晶化温度Ct2が105℃であった(工程a)。
・15℃≦「融点Mt2−結晶化温度Ct2」(=18℃)
次いで、2Lガラスオートクレーブ内のポリプロピレン分散体を撹拌しながら、融点Mt2と同じ123℃(温度t2)まで1℃/minの昇温速度で昇温し(工程b)、30分間ホールドした(工程c)。
・「融点Mt2」−3℃≦t2≦「融点Mt2」
・ 120℃≦t2≦123℃
次いで、撹拌しながら、融点Mt2の123℃以上の温度である128℃(温度t3)まで1℃/minの昇温速度で昇温し(工程d)、未溶解物が残らないように、30分間ホ−ルドした(工程e)。なお、融点Mt2の123℃よりも高い温度であっても、128℃よりも低い温度では、30分間ホールドしても未溶解物が残っていた。
・「融点Mt2」+3℃≦t3≦「融点Mt2」+6℃
・ 126℃≦t3≦129℃
次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct2と同じ105℃(温度t4)まで1℃/minの降温速度で降温した(工程f)。
・「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+15℃
・ 100℃≦t4≦120℃
次いで、105℃に到達した時点で、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定な領域まで放冷した(工程g)。
・温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度
次いで、室温まで下げて、再度、撹拌して均一にした後、ポリプロピレンワックス分散体を取り出した。このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(実施例3)
実施例1における工程Dの後、撹拌しながら室温まで冷却した以外は、実施例1と同様にして、2Lガラスオートクレーブにてポリプロピレン分散体を得た。
このポリプロピレン分散体の一部を抜き取り、実際の製造条件と同様の1℃/minの昇温速度で130℃まで昇温していき、DSCで融点Mt2を測定した。未溶解物が残っていないことを確認した後、1℃/minの降温速度で降温して、結晶化温度Ct2を測定した。測定結果は、融点Mt2が125℃、結晶化温度Ct2が105℃であった(工程a)。
・15℃≦「融点Mt2−結晶化温度Ct2」(=20℃)
次いで、2Lガラスオートクレーブ内のポリプロピレン分散体を撹拌しながら、融点Mt2と同じ125℃(温度t2)まで1℃/minの昇温速度で昇温し(工程b)、30分間ホールドした(工程c)。
・「融点Mt2」−3℃≦t2≦「融点Mt2」
・ 120℃≦t2≦125℃
次いで、撹拌しながら、融点Mt2の125℃以上の温度である130℃(温度t3)まで1℃/minの昇温速度で昇温し(工程d)、未溶解物が残らないように、30分間ホ−ルドした(工程e)。なお、融点Mt2の125℃よりも高い温度であっても、130℃よりも低い温度では、30分間ホールドしても未溶解物が残っていた。
・「融点Mt2」+3℃≦t3≦「融点Mt2」+6℃
・ 128℃≦t3≦131℃
次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct2と同じ105℃(温度t4)まで1℃/minの降温速度で降温した(工程f)。
・「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+15℃
・ 100℃≦t4≦120℃
次いで、105℃に到達した時点で、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定な領域まで放冷した(工程g)。
・温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度
次いで、室温まで下げて、再度、撹拌して均一にした後、ポリプロピレンワックス分散体を取り出した。実施例1と同様に、このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3において工程fにおける撹拌停止温度を110℃とする以外は、実施例3と同様にして、ポリプロピレンワックス分散体を得た。このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(実施例5)
実施例3で得られたポリプロピレンワックス分散体について、1℃/minの昇温速度で130℃まで昇温していき、DSCで融点Mt3を測定した。未溶解物が残っていないことを確認した後、1℃/minの降温速度で降温して、結晶化温度Ct3を測定した。測定結果は、融点Mt3が125℃、結晶化温度Ct3が105℃で、実施例3におけるMt2、Ct2と同じ結果であった(工程a)。
次いで、実施例3で得られたポリプロピレンワックス分散体について、さらに工程bから工程gまで同じ操作を繰り返し行って、ポリプロピレンワックス分散体を得た。このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(実施例6)
重量平均分子量Mw35万のφ1mmの略粒状のポリプロピレン固形物1mgと、ブチルセロソルブとソルベッソ150の混合溶剤(質量比50:50)19mgとを混合し、この混合物に対して、実際の製造条件と同様の1℃/minの昇温速度で145℃まで昇温していき、PERKIN ELMER社製DSC7で融点Mt1を測定した。混合物が完全に溶解したことを確認した後、1℃/minの降温速度で降温して、結晶化温度Ct1を測定した。測定結果は、融点Mt1が131℃、結晶化温度Ct1が108℃であった(工程A)。
・15℃≦「融点Mt2−結晶化温度Ct2」(=23℃)
上記のポリプロピレン固形物50gと上記の混合溶剤950gを2Lガラスオートクレーブに仕込み、アンカ−翼(翼径/槽径:0.8)で撹拌しながら、1℃/minの昇温速度で139℃(温度T1)まで昇温し(工程B)、内部のポリプロピレン固形物の未溶解物の有無を確認しながら30分間ホ−ルドして全量溶解した(工程C)。なお、融点Mt1の131℃よりも高い温度であっても、139℃よりも低い温度では、30分間ホールドしても未溶解物が残っていた。
・「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃
・ 134℃≦T1≦144℃
次いで、撹拌しながら108℃(Ct1)まで1℃/minの降温速度で降温し(工程D)、次いで、この時点で撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域まで放冷した(工程E)。
・結晶化温度Ct1よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度T2
次いで、室温まで下げて、再度、撹拌して均一にした後、ポリプロピレン分散体を取り出した。なお、上記製造工程においては、密閉系であるため、仕込みの配合比は、最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体の配合比と同じである。このポリプロピレン分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(比較例1)
実施例1における工程Bで、温度を135℃より10℃上げた145℃とした以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン分散体を得た。このポリプロピレン分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(比較例2)
比較例1で得られたポリプロピレン分散の一部を抜き取り、実際の製造条件と同様の1℃/minの昇温速度で130℃まで昇温していき、DSCで融点Mt2を測定した。未溶解物が残っていないことを確認した後、1℃/minの降温速度で降温して、結晶化温度Ct2を測定した。測定結果は、融点Mt2が125℃、結晶化温度Ct2が105℃であった(工程a)。
・15℃≦「融点Mt2−結晶化温度Ct2」(=20℃)
次いで、比較例1で得られた2Lガラスオートクレーブ内のポリプロピレン分散体を撹拌しながら、融点Mt2の125℃よりも20℃高い145℃(温度t2)まで1℃/minの昇温速度で昇温し(工程b)、30分間ホールドした(工程c)。なお、この状態で、未溶解物は全く確認されなかった。
・「融点Mt2」<t2
・ 125℃<t2(=145℃)
次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct2と同じ105℃(温度t4)まで1℃/minの降温速度で降温した(工程f)。
・「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+15℃
・ 100℃≦t4≦120℃
次いで、105℃に到達した時点で、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定な領域まで放冷した(工程g)。
・温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度
次いで、室温まで下げて、再度、撹拌して均一にした後、ポリプロピレンワックス分散体を取り出した。このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(比較例3)
実施例1の原料及び混合溶剤を用いて、特許文献1に記載されている考え方に沿って、この混合物を180℃で完全に溶解し、ポリプロピレンの晶析領域の降温速度を他の温度範囲での降温速度の1/10、具体的には180℃から130℃まで1℃/minで撹拌しながら降温し、130℃から70℃まで0.1℃/minで降温し、70℃からは1℃/minで室温まで冷却した。このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
(比較例4)
実施例1の原料及び混合溶剤を用いて、特許文献2にあるように145℃で溶解したのち、分散と冷却を兼ねた高速せん断分散機であるビーズミル内に連続的に直接投入して40℃以下に冷却して、連続的にポリプロピレンワックス分散体を得ようとしたが、すぐにスクリ−ン内の目詰まりで評価サンプルが得られなかった。
(実施例7)
実施例2において、工程f以後の工程gにおいても撹拌を継続してポリプロピレンワックス分散体を得た。このポリプロピレンワックス分散体の各評価結果を実施例1と同様に表1に示す。
以上の結果から、本発明による各実施例においては、目視観察にはよるものの、各比較例よりも一次粒子径が微細化されていることが分かる(写真1〜写真10参照)。また、レーザー解析式による平均粒子径では、実施例1〜実施例6においては、いずれの比較例よりも微粒子化されていることが分かる。なお、実施例7においては、工程A〜工程Eまでを実施していることにより、工程gにおいて撹拌を停止している実施例2よりは微粒子化は劣るものの、いずれの比較例よりも優れていることが分かる。
スラリー状態については、各実施例においては水あめ状を呈しているが、各比較例においてはシャーベット状となっており、凝集状態となっていることが分かる(写真11〜20参照)。また、接着強度については、実施例1〜実施例6では、比較例1〜比較例3よりも約2.5倍以上の強度を有していることが分かる。なお、実施例7においては、工程gにおいて撹拌を継続しているため、却って凝集が進行して、平均粒子径が比較的大きくなってしまい、接着強度も低下することになるが、いずれの比較例よりも良好な特性を示していることが分かる。
ワックス原料として使用されるポリプロピレンは、通常の天然系のカルナバ、合成系のマイクロクリスタリン、同じ石油系のポリエチレンと比較して融点が高いため、高温での殺菌等の処理が求められるような食品用塗料としての接着性、耐摩耗性に優れている。さらに高分子量ポリプロピレンを使用することで、接着時の靭性及び耐衝撃緩和に優れた特性が付与される。この様な特性が求められる塗料用添加剤あるいはインキ用添加剤として有用である。また、本発明の方法によれば、100L〜1000Lの汎用的な製造釜においても、再現良く、製造することができる。

Claims (5)

  1. ポリプロピレンワックス分散体の製造方法において、
    (1)最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体の配合比に相当するポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物に対して、予め示差走査熱量計(DSC)で融点Mt1と結晶化温度Ct1とを測定する工程Aと、
    (2)次いで、撹拌しながら、融点Mt1以上の温度であって、かつ、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らないように、混合物の温度を「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃の範囲にある温度T1まで上げる工程Bと、
    (3)次いで、撹拌しながら、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らなくなるまで、工程Bにおける混合物の温度を温度T1で一定時間保持する工程Cと、
    (4)次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct1まで、混合物の温度を下げる工程Dと、
    (5)次いで、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、結晶化温度Ct1よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度T2まで、混合物の温度を下げる工程Eと、
    を有し、
    15℃≦「融点Mt1−結晶化温度Ct1」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とすることを特徴とするポリプロピレンワックス分散体の製造方法。
  2. ポリプロピレンワックス分散体の製造方法において、
    (1)最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体のポリプロピレン固形物と有機溶剤との配合比に相当するポリプロピレン分散体に対して、予め示差走査熱量計(DSC)で融点Mt2と結晶化温度Ct2とを測定する工程aと、
    (2)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」−3℃≦t2≦「融点Mt2」の範囲にある温度t2まで上げる工程bと、
    (3)次いで、撹拌しながら、工程bにおけるポリプロピレン分散体の温度を温度t2で一定時間保持する工程cと、
    (4)次いで、撹拌しながら、融点Mt2以上の温度であって、かつ、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らないように、0.1〜2.0℃/minの昇温速度で、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」+3℃≦t3≦「融点Mt2」+6℃の範囲にある温度t3まで上げる工程dと、
    (5)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らなくなるまで、工程dにおけるポリプロピレン分散体の温度を温度t3で一定時間保持する工程eと、
    (6)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+15℃の範囲にある温度t4まで下げる工程fと、
    (7)次いで、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度まで、ポリプロピレン分散体の温度を下げる工程gと、
    を有し、
    15℃≦「融点Mt2−結晶化温度Ct2」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とすることを特徴とするポリプロピレンワックス分散体の製造方法。
  3. ポリプロピレンワックス分散体の製造方法において、
    (1)最終的に所望されるポリプロピレンワックス分散体の配合比に相当するポリプロピレン固形物と有機溶剤との混合物に対して、予め示差走査熱量計(DSC)で融点Mt1と結晶化温度Ct1とを測定する工程Aと、
    (2)次いで、撹拌しながら、融点Mt1以上の温度であって、かつ、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らないように、混合物の温度を「融点Mt1」+3℃≦T1≦「融点Mt1」+13℃の範囲にある温度T1まで上げる工程Bと、
    (3)次いで、撹拌しながら、混合物中にポリプロピレン固形物の未溶解物が残らなくなるまで、工程Bにおける混合物の温度を温度T1で一定時間保持する工程Cと、
    (4)次いで、撹拌しながら、結晶化温度Ct1まで、混合物の温度を下げる工程Dと、
    (5)次いで、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、結晶化温度Ct1よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度T2まで、混合物の温度を下げる工程Eと、
    (6)工程Eで得られたポリプロピレン分散体に対して、示差走査熱量計(DSC)で融点Mt2と結晶化温度Ct2とを測定する工程aと、
    (7)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」−3℃≦t2≦「融点Mt2」の範囲にある温度t2まで上げる工程bと、
    (8)次いで、撹拌しながら、工程bにおけるポリプロピレン分散体の温度を温度t2で一定時間保持する工程cと、
    (9)次いで、撹拌しながら、融点Mt2以上の温度であって、かつ、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らないように、0.1〜2.0℃/minの昇温速度で、ポリプロピレン分散体の温度を「融点Mt2」+3℃≦t3≦「融点Mt2」+6℃の範囲にある温度t3まで上げる工程dと、
    (10)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体中に未溶解物が残らなくなるまで、工程dにおけるポリプロピレン分散体の温度を温度t3で一定時間保持する工程eと、
    (11)次いで、撹拌しながら、ポリプロピレン分散体の温度を「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+15℃の範囲にある温度t4まで下げる工程fと、
    (12)次いで、撹拌を停止して、ポリプロピレンの結晶成長が停止する安定領域となる、温度t4よりも低い温度であって室温以上の範囲にある温度まで、ポリプロピレン分散体の温度を下げる工程gと、
    を有し、
    15℃≦「融点Mt1−結晶化温度Ct1」であるポリプロピレンワックス分散体を対象とすることを特徴とするポリプロピレンワックス分散体の製造方法。
  4. 工程fから工程gに移行する際の撹拌を停止する温度t4を、「結晶化温度Ct2」−5℃≦t4≦「結晶化温度Ct2」+5℃の範囲とする請求項2又は3に記載のポリプロピレンワックス分散体製造方法。
  5. 少なくとも工程b〜工程gを複数回繰り返す請求項2〜4のいずれかに記載のポリプロピレンワックス分散体の製造方法。
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