JP5477002B2 - 冷延鋼板 - Google Patents
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Description
YRave=(YR0+2×YR45+YR90)/4 (2)
rave=(r0+2×r45+r90)/4 (3)
Δr=(r0−2×r45+r90)/2 (4)
|Δr|≦0.20 (5)
rave/|Δr|≧4.7 (6)
上記式中、
TS0:圧延方向の引張強度、TS45:圧延方向に対して45°方向の引張強度、TS90:圧延方向に対して90°方向の引張強度;YR0:圧延方向の降伏比、YR45:圧延方向に対して45°方向の降伏比、YR90:圧延方向に対して90°方向の降伏比、r0:圧延方向の塑性ひずみ比、r45:圧延方向に対して45°方向の塑性ひずみ比、r90:圧延方向に対して90°方向の塑性ひずみ比である。
YRave×rave/|Δr|≧4.7 (7)。
(A)上記化学組成を有する鋼材に多パス熱間圧延を施して熱延鋼板となす熱間圧延工程、ただし最終直前圧延パスと最終圧延パスとの圧延パス間時間が0.3秒以上、4.0秒以下であり、最終圧延パスの完了温度がAr3点以上かつ780℃以上であり、圧延完了後720℃までの冷却時間が0.4秒以内である;
(B)前記熱延鋼板に圧下率40%以上、90%以下の冷間圧延を施して冷延鋼板となす冷間圧延工程;ならびに
(C)前記冷延鋼板に、Ac1点以上、Ac3点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程。
(A)化学組成
C:0.015%以上、0.15%以下
Cは、鋼の強度を高める作用を有する元素である。Cはまた、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させる作用を有するので、熱間圧延の圧延完了温度を低下させることを可能にし、フェライト結晶粒の微細化を促進するのに有用である。C含有量が0.015%未満では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、C含有量は0.015%以上とする。好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.025%以上である。一方、C含有量が0.15%超では、r値や延性の低下が著しくなる。したがって、C含有量は0.15%以下とする。好ましくは0.135%以下、さらに好ましくは0.12%以下である。
Siは、鋼中に不純物として含有される元素であるが、フェライトの強化と延性の向上に寄与する元素でもある。したがって、Siを積極的に含有させてもよい。しかし、Si含有量が2.0%超では、熱間圧延時の表面酸化の問題が顕在化してくる。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。
Mnは、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させる作用を有するので、熱間圧延における圧延完了温度を低下させることを可能にし、フェライト結晶粒の微細化を促進するのに有用な元素である。Mn含有量が0.1%未満では上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Mn含有量は0.1%以上とする。一方、Mn含有量が3.0%超では、Mnの偏析に起因する成形性の低下や、フェライト体積率の低下に起因する成形性の低下が著しくなる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは、2.0%以下である。
Pは、鋼中に不純物として含有される元素であるが、強度を高める作用を有するので、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、P含有量が0.05%超では、粒界偏析による脆化が著しくなる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
Sは、鋼中に不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる作用を有する。S含有量が0.05%超では加工性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.05%以下とする。一段と優れた加工性を確保したい場合には、S含有量を0.008%以下とすることが好ましく、0.003%以下とすることがさらに好ましい。
Alは鋼を脱酸する作用を有し、鋼を健全化するのに有効な元素である。sol.Al含有量が0.001%未満では、上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。好ましくは0.010%以上、さらに好ましくは0.015%以上である。一方、sol.Al含有量が0.1%超では、オーステナイトからフェライトへの変態温度の上昇が著しくなり、熱間圧延の圧延完了温度を上昇させざるをえなくなって、フェライト結晶粒の微細化が困難となる。また、連続鋳造法を適用する場合には、安定した操業が困難となる。したがって、sol.Al含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.080%以下、さらに好ましくは0.060%以下である。
Nは、鋼中に不純物として含有される元素であり、延性や深絞り性を低下させる作用を有する。N含有量が0.01%超では延性や深絞り性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下、さらに好ましくは0.007%以下である。一方、TiやNb等を含有させた場合には、Nは窒化物または炭窒化物として析出することにより、冷間圧延の母材である熱延鋼板を細粒化し、その結果、冷延鋼板の機械特性の向上に寄与する。したがって、N含有量は0.001%以上とする。好ましくは0.0015%以上、さらに好ましくは0.002%以上である。
O(酸素)は、鋼中に不純物として含有される元素であり、鋼の清浄度を低下させて、その機械特性を劣化させる。O含有量が0.01%超では機械特性の低下が著しくなるので、O含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Ti、Nb、V、MoおよびBは、炭化物、窒化物または炭窒化物として析出し、鋼組織の微細化やYS向上に寄与する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を場合により鋼に含有させてもよい。しかし、Ti含有量が0.1%超、Nb含有量が0.1%超、V含有量が0.5%超、Mo含有量が0.5%超、またはB含有量が0.005%超になると、炭化物、窒化物または炭窒化物が鋼中に多量に析出して面内異方性が大きくなったり、深絞り性が低下したりする。そのため、それぞれの元素の含有量は、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.005%以下とする。TiおよびNbの含有量は、それぞれ0.05%以下とすることが好ましく、0.03%以下とすることがさらに好ましい。VおよびMoの含有量は、0.3%以下とすることが好ましく、0.1%以下とすることがさらに好ましい。Bの含有量は0.003%以下とすることが好ましく、0.001%以下とすることがさらに好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti、Nb、MoおよびVの何れかを0.001%以上含有させるか、Bを0.0001%以上含有させることが好ましい。
Crは、固溶強化により鋼材の強度を一層高める作用を有するので、場合により鋼に含有させてもよい。しかし、Cr含有量が2.0%超では、加工性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、Cr含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはCr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Ca、MgおよびREM(希土類元素)は、凝固中に析出する酸化物や窒化物を微細化して、鋼塊または鋼片の健全性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を場合により鋼に含有させてもよい。しかし、いずれの元素も0.01%を超えて含有させても上記作用による効果は飽和してしまい、徒にコスト上昇を招く。したがって、それぞれの元素の含有量は0.01%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、いずれかの元素の含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。ここで、REMとは、ランタノイドの15元素とYおよびScを合わせた17元素を意味する。
TSave:300MPa以上
耐疲労性の高い鋼板を得るには、その引張強度(TS)が高いほど好ましい。そして、様々な方向の繰り返し応力に対して高い耐疲労性を得るには、鋼板の面内の各方向における引張強度が全体的に高いことが好ましい。そのため、本発明では下記式(1)で規定されるTSaveを300MPa以上とする。耐疲労性はTSaveが高いほど良好であるため、TSaveは好ましくは340MPa以上、より好ましくは390MPa以上である。
ここで、TS0:圧延方向の引張強度、TS45:圧延方向に対して45°方向の引張強度、TS90:圧延方向に対して90°方向の引張強度である。
鋼鈑が用いられる部品の要求特性に従って鋼板のTSは決定されるが、同じTSであってもYSが高いほど疲労特性は向上する。そのため、本発明では下記式(2)で規定されるYRaveを0.67以上とする。YRaveは好ましくは0.69以上、さらに好ましくは0.71以上、特に好ましくは0.73以上である。
ここで、YR0:圧延方向の降伏比、YR45:圧延方向に対して45°方向の降伏比、YR90:圧延方向に対して90°方向の降伏比である。
Δr=(r0−2×r45+r90)/2で規定されるΔRの絶対値|Δr|が低減することによって、鋼板を深絞り成形をした際のイヤリングの発生が低減される。そのため、本発明では、|Δr|を0.20以下とする。|Δr|は好ましくは0.15以下である。
一般に、平均r値[rave=(r0+2×r45+r90)/4]が大きいほど鋼板の深絞り成形限界が大きくなり、|Δr|が大きくなるほどそのイヤリング量は大きくなる。鋼板のr値は集合組織に強く影響を受け、r値を向上させる面方位の発達に伴い、平均r値が上昇して深絞り性が向上するが、|Δr|も大きくなって面内異方性が低下する場合がある。そのため、良好な深絞り性と小さい面内異方性とを両立させるには、そのバランスを限定することが必要である。本発明では、raveと|Δr|の比(rave/|Δr|)を4.7以上とする。この比は好ましくは5.4以上、より好ましくは6.1以上である。
上述したように、耐疲労性の観点からはYRが高いほど好ましく、深絞り性の観点からはrave/|Δr|が高いほど好ましい。Mnなどの焼入性を高める元素の含有量を増加させて鋼板を高強度化すると、YRが低下するため、耐疲労性向上の効果は小さい。一方、TiやNbなどの析出強化元素を含有させると、YRは向上するが、raveおよび|Δr|が低下する。したがって、YRとrave/|Δr|とのバランスが高いほど、疲労特性と深絞り性を高レベルで有することになる。その指標として、YRave×rave/|Δr|を用いることができ、これを4.7以上とすることが好ましい。この値はさらに好ましくは5.0以上である。
(1)熱間圧延工程
熱間圧延は、レバースミルもしくはタンデムミルを用いて、オーステナイト域で多パス圧延により行う。工業的生産性の観点からは、少なくとも最終の数段はタンデムミルを用いて圧延するのが好ましい。
上記式中、Dは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置におけるフェライトの平均粒径(μm)を意味し、CおよびMnは鋼中の各元素の含有量(質量%)を意味する。
熱間圧延工程で得られた熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を得る。冷間圧延における圧下率が小さすぎると、冷間圧延および焼鈍後の結晶粒が粗大化してしまい、所望の機械特性が得られなくなる。そのため、冷間圧延における圧下率の下限を40%とする。一方、この圧下率が大きすぎると、冷間圧延設備の負荷が過大となり、操業が困難となる。したがって、冷間圧延における圧下率の上限を90%とする。
冷間圧延により得られた冷延鋼板を常法に従って焼鈍すると、本発明に係る冷延鋼板が得られる。焼鈍温度がAc1点未満では、フェライトの再結晶に長時間を要するため生産効率が低下する。一方、Ac3点を超える温度で焼鈍を行うと、焼鈍時の組織がオーステナイト単相となるため、冷延鋼板の細粒化の効果が得難くなる。したがって、焼鈍温度はAc1点以上、Ac3点以下のいわゆる二相域の温度とする。焼鈍時間は、フェライトの再結晶に要する時間を確保できればよく、特に規定する必要はないが、フェライトの再結晶をより確実なものとするために5秒以上とすることが好ましい。一方、フェライトの粒成長を抑制する観点からは、300秒以下とすることが好ましい。焼鈍後の冷却条件は特に限定しない。
また、連続溶融めっきラインを用いて、焼鈍後の高温の冷延鋼板に続けて溶融めっきを施してもよい。溶融めっきとしては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。また、焼鈍後の冷延鋼板に電気めっきを施すこともできる。電気めっきとしては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。これらのめっき鋼板は必要に応じて耐食性向上のために化成処理を施すことができる。
(D)構造部材
本発明に係る冷延鋼板は、深絞り加工や穴拡げ加工などのプレス成形や打ち抜き加工などの公知の加工法により構造部材を製造するのに適しており、特に深絞り加工が施される構造部材の素材として好適である。上記構造部材としては自動車用鋼板部材が典型的である。
表1に示す化学組成を有する鋼種A〜Hの鋼を溶製し、熱間鍛造によって30mm厚さの鋼片にした。この鋼片を1050℃以上に再加熱後、試験用小型タンデムミルにて熱間圧延を実施して2mm〜3.5mm厚に仕上げた。全ての圧延において、熱間圧延完了温度〜[熱間圧延完了温度+100℃]の温度域内で3パス以上の多パス圧延を行った。圧延完了後720℃までの冷却は水冷または空冷により行った。
フェライト粒径は、走査電子顕微鏡を用いて鋼板板厚の断面を観察し、板表面から板厚の1/4の深さにて、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いた結晶方位解析により求めた。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.015%以上、0.15%以下;Si:2.0%以下;Mn:0.1%以上、3.0%以下;P:0.05%以下;S:0.05%以下;sol.Al:0.001%以上、0.1%以下;N:0.001%以上、0.01%以下;およびO:0.01%以下を含有し、さらに、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、下記式(1)で規定されるTSaveが300MPa以上、下記式(2)で規定されるYRaveが0.67以上、下記式(3)および(4)で規定されるraveおよびΔrが下記式(5)および(6)を満たす機械特性を有することを特徴とする冷延鋼板。
TSave=(TS0+2×TS45+TS90)/4 (1)
YRave=(YR0+2×YR45+YR90)/4 (2)
rave=(r0+2×r45+r90)/4 (3)
Δr=(r0−2×r45+r90)/2 (4)
|Δr|≦0.20 (5)
rave/|Δr|≧4.7 (6)
上記式中、
TS0:圧延方向の引張強度、TS45:圧延方向に対して45°方向の引張強度、TS90:圧延方向に対して90°方向の引張強度;YR0:圧延方向の降伏比、YR45:圧延方向に対して45°方向の降伏比、YR90:圧延方向に対して90°方向の降伏比、r0:圧延方向の塑性ひずみ比、r45:圧延方向に対して45°方向の塑性ひずみ比、r90:圧延方向に対して90°方向の塑性ひずみ比である。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:2.0%以下を含有する請求項1に記載の冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2のいずれかに記載の冷延鋼板。
- さらに、下記式(7)式を満足することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の冷延鋼板。
YRave×rave/|Δr|≧4.7 (7)
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