JP5475944B2 - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを収容したボールペン - Google Patents
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Description
前記インキ組成物に剪断減粘性を付与する物質(剪断減粘性付与剤)としては、キサンタンガム等の多糖類が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記剪断減粘性付与剤は耐ドライアップ性能を阻害することがあり、水溶性有機溶剤等の湿潤剤や尿素等の固体湿潤剤といった添加剤を併用して耐ドライアップ性能を向上させる試みがなされるとしても、乾燥防止効果は不十分であり、しかも、インキ粘度が上昇してかすれ等の筆記不良を生じ易くなる。
具体的には、尿素を過度に添加すると、筆記先端部から水分が蒸発して水溶性有機溶剤の濃度が上昇し、固形分が前記筆記先端部に析出する、所謂、花咲き現象を生じて見栄えが悪くなると共にかすれ等を生じる。更に、水溶性有機溶剤や尿素を多量に添加すると、多湿環境下で筆記先端部を下向きに放置した際、垂れ下がりが発生するなどの弊害を生じ易くなる。
前述のように、インキ組成物に耐ドライアップ性を向上させる手段は多々存在するものの、筆跡のかすれや垂れ下がり等のボールペンに要求される他の性能の低下をもたらすことがあった。
更に、非筆記時に筆記先端部(ボールペンチップ)が常に大気中に開放された状態のキャップを要しない構成のボールペン(出没式ボールペン)に使用する場合、耐ドライアップ性能は重要な要件となる。
更には、前記インキ組成物中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し3〜15質量%であること、前記顔料をインキ組成物全量中1〜30質量%含んでなること、前記剪断減粘性付与剤が多糖類であること、前記剪断減粘性付与剤がキサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカンから選ばれること等を要件とする。
更には、前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンレフィルを軸筒内に収容したボールペン、前記ボールペン用水性インキ組成物を軸筒内に内蔵したボールペン、前記ボールペン用水性インキ組成物をボールペンレフィル内に収容してなり、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式ボールペン等を要件とする。
ポリビニルアルコールは、完全けん化型、部分けん化型のいずれであってもよく、また、重合度も1000以下の低分子量のものから1500以上の高重合度、高分子量のものまで用いることができる。
前記ポリビニルアルコールとして具体的には、日本合成化学(株)製、商品名:ゴーセノールKP−06(けん化度:71.0〜75.0モル%)、KL−05(けん化度:78.5〜81.5モル%)等のK型シリーズ(部分けん化型)、GL−03(けん化度:86.5〜89.0モル%)等のG型シリーズ(部分けん化型)、C−500(けん化度:95.0〜97.0モル%)、A−300(けん化度:97.0〜98.5モル%)等のA型シリーズ(準完全けん化型)、NL−05(けん化度:98.5モル%以上)等のN型シリーズ(完全けん化型)を例示できる。
ポリビニルピロリドンは、平均分子量が約8000〜300万の範囲のものを用いることができる。
前記ポリビニルピロリドンとして具体的には、BASFジャパン社製、商品名:ルビテック(Luvitec)K17(K値:15.0〜19.0、低分子量)、K30(K値27.0〜33.0)、K80(K値74.0〜82.0)、K85(K値84.0〜88.0)、K90(K値88.0〜92.0)、K90HM(K値92.0〜96.0、高分子量)を例示できる。なお、平均分子量が大きくなるとそれ自身の粘度が大きくなり、インキ組成物の粘度上昇を伴うため、K値が88以下のものが好ましく、K値が33以下のものがより好ましい。
セルロース系高分子化合物としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
ポリアルキレンオキサイド基を有する高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド・ポリプロピレンオキサイド共重合体等が挙げられ、平均分子量が2万を超え、500万までの範囲のものが用いられる。
前記ポリエチレンオキサイドとして具体的には、明成化学工業(株)製、商品名:アルコックスR−150(平均分子量:10〜17万)、R−400(平均分子量:18〜25万)、R−1000(平均分子量:25〜30万)、E−30(平均分子量:30〜50万)、E−45(平均分子量:60〜80万)、E−60(平均分子量:100〜120万)、E−75(平均分子量:200〜250万)、E−100(平均分子量:250〜300万)、E−130(平均分子量:300〜350万)、E−160(平均分子量:360〜400万)、E−240(平均分子量:400〜500万)を例示できる。
前記ポリエチレンオキサイド・ポリプロピレンオキサイド共重合体として具体的には、明成化学工業(株)製、商品名:アルコックスEP−10X(平均分子量:約100万)、EP−20X(平均分子量:約80万)を例示できる。
前記ポリアルキレンオキサイド基を有する高分子化合物は、平均分子量が大きくなるとそれ自身の粘度が大きくなり、インキ組成物の粘度上昇を伴うため、平均分子量は2万を超え、300万以下の範囲のものが好ましく、2万を超え、100万以下の範囲のものがより好ましい。
前記増粘抑制剤はインキ全量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲で用いられる。0.1質量%より少ないと耐ドライアップ性の効果が少なく、10質量%より多いと初期からインキ中で剪断減粘性付与剤が膨潤不良状態となり、所望のインキ粘度を示し難い。
また、水溶性有機溶剤の吸水性によって筆記先端部にインキが溜まり(垂れ下がり)、良好な筆跡の形成を損なったり、誤って衣類を汚染する不具合を防止することもできる。
剪断減粘性付与剤と増粘抑制剤を含む系において、前記イオン性物質を含有することによって、初期及び経時後も永続して耐ドライアップ性能を維持することができる。
前記イオン性物質は、インキ組成物中でイオン化して陽イオンと陰イオンを生ずるが、2価以上の陽イオンはインキ組成物中の他の成分と反応して不溶性塩を形成し易く、それによって筆記時にかすれ等を生じることもあるため、イオン性物質はイオン化して一価陽イオンを生じる物質が筆記性能を維持しつつ、経時後の耐ドライアップ性能を維持する効果に優れる。
なお、一価陽イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンが用いられる。
前記イオン性物質を以下に示す。
無機塩類としては、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸ニ水素カリウム、リン酸水素ニカリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を例示できる。前記無機塩のうち、インキ組成物のpHに影響を与えない中性無機塩が好適であり、ハロゲン化アルカリが挙げられる。
有機塩類としては低分子量の各種有機酸の塩類や界面活性剤、水溶性樹脂等が挙げられる。
低分子量の有機酸の塩類としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。
前記カルボン酸塩としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、安息香酸、p−ブチル安息香酸、p−フェニル安息香酸等の置換安息香酸類、α−ナフタレン酢酸、シュウ酸、コハク酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメシン酸、乳酸、りんご酸、グリコール酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシイソ酪酸、酒石酸、メバロン酸、クエン酸、イソクエン酸、ソルビン酸等から得られるカルボン酸塩が挙げられる。
前記スルホン酸塩としては、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸ジスルホン酸等のナフタレンジスルホン酸、1−ナフトール−3−スルホン酸等のナフトールスルホン酸、1−ナフトール−2,5−ジスルホン酸等のナフトールジスルホン酸、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンスルホン酸のアミノナフトールスルホン酸等の芳香族スルホン酸から得られるスルホン酸塩が挙げられる。
前記硫酸エステル塩としては、モノヘキシル硫酸、モノオクチル硫酸、モノデシル硫酸、モノドデシル硫酸等から得られる塩類が挙げられる。
前記リン酸エステル塩としては、モノラウリルリン酸、モノステアリルリン酸、モノデシルリン酸、モノイソデシルリン酸等から得られる塩類が挙げられる。
これらの塩類は塩としてインキ中に添加することができるが、インキを調製する際に前記カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル等の有機酸に水酸化アルカリ等を加えて中和し、インキ中で直接、塩を形成してもよい。
前記界面活性剤には非イオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤があり、イオン性界面活性剤が本発明のイオン性物質として有効である。前記イオン性界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、より好ましくはインキ組成物はアルカリ性に調整されることが多いことや種類の多様性等の点からアニオン性界面活性剤が用いられる。
前記アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等があり、カルボン酸塩としては脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、高分子ポリカルボン酸塩等が挙げられる。スルホン酸塩としてはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩等が挙げられる。硫酸エステル塩としては硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩等が挙げられる。リン酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては脂肪族アミン塩、脂肪族第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはカルボキシベタイン型両性界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
水溶性樹脂としては分子中にイオン性基を有するものが有効であり、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシル基を有するセルロース誘導体の塩類、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合樹脂やスルホン酸−アクリル酸共重合樹脂等のアクリル酸共重合樹脂の塩類、エチレン−マレイン酸共重合樹脂等のマレイン酸共重合樹脂の塩類等が挙げられる。
前記イオン性物質は増粘抑制剤と共にボールペン用水性インキ組成物に添加されることにより増粘抑制効果が発現させるものであり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し3質量%以上であることが必要であり、インキ組成物全量に対し3〜15質量%の範囲、好ましくは3〜10質量%の範囲が実用的な範疇である。
15質量%を超えると、初期のインキ粘度が十分ではなく(高い数値を示さず)、よって、顔料の分散安定性を損なったり、筆跡に滲みを生じたり、垂れ下がりを生じ易くなるといった不具合を生じる。
また、2種類以上のイオン性物質を併用することもできる。
C.I.Pigment Blue 15:3B〔商品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分22%、山陽色素(株)製〕、
C.I. Pigment Red 146〔商品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分24%、山陽色素(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔商品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔商品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業(株)製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black
A250、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属光沢顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した金属光沢顔料(パール顔料)、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断した虹彩性を有する金属光沢顔料が例示できる。
前記顔料は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%、より好ましくは3〜20質量%の範囲で用いられる。
また、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子等が用いられる。
着色剤として顔料を用いたインキ組成物は、染料を用いたインキ組成物と比較して固形分が多いため、インキ中の水分が蒸発するとインキ粘度が上昇して筆跡のかすれを生じ易い。本願発明のインキ組成物は、顔料を用いても耐ドライアップ性を維持することができると共に、かすれを生じ難いため、顔料系ボールペン用水性インキ組成物としての有用性に優れたものである。
これらの化合物にはイオン性物質が含まれており、増粘抑制剤と併用することにより増粘抑制効果を奏する化合物については、イオン性物質として兼用して用いたり、前記したイオン性物質と併用して用いることができる。
なお、剪断減粘性付与剤と前記増粘抑制剤とイオン性物質を含有するインキ組成物において、インキ全量中から水が40質量%蒸発した時の粘度/初期のインキ粘度(EMD型粘度計、1rpm、20℃で測定)で示される数値(x)が2以下、好ましくは0.01〜1.5、より好ましくは0.01〜1である。
数値(x)が2以下であるとボールペンに収容して実用に供した際、耐ドライアップ性能に優れ、初期及び経時後の書き出しが良好であると共に、安定した筆記性能を持続させることができる。
前記数値が2を越えるとインキ中の水が40質量%蒸発した時の粘度と初期のインキ粘度の変化が大きく、よって、粘度上昇によりかすれや筆記不能を生じ易くなる。
特に、筆記先端部にボールを抱持したボールペンは、筆記時の高剪断応力下においてはボール近傍のインキが筆記に適した低粘度となり、ボールとボールハウスの間隙を毛細管力によって移動して紙面に転移されるインキ特性が必要であり、また、非筆記時には、ボール近傍も含めてすべてのインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防止する必要があり、E型回転粘度計による100rpmにおけるインキ粘度が20〜200mPa・s(25℃)を示し、且つ、剪断減粘性指数が0.1〜0.8を示すインキ組成物が好適である。
尚、剪断減粘性指数nは実験式T=Kjn(T:剪断応力値、j:剪断速度、Kは計算された定数)に数値をあてはめることにより得られる。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20質量%の範囲で用いることができる。
前記剪断減粘性付与剤と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース系高分子化合物、ポリアルキレンオキサイド基を有する高分子化合物から選ばれる増粘抑制剤と、インキ中で解離して形成される陽イオンが一価アルカリ金属イオンであるイオン性物質を併用することにより、インキ中の水分が減少した際、剪断減粘性付与剤は半膨潤状態となり、その結果、インキ粘度は殆ど上昇しない。
なお、前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカンが好適に用いられ、インキの安定性に優れる。
単糖や二糖は乾燥皮膜の形成が充分ではなく、吸水性が高いためにボールペンに適用した場合、筆記先端部を下向きで放置すると垂れ下がりが発生しやすい。また、3糖〜8糖程度では、単糖や二糖に比べて吸水性は低くなるが、十分な垂れ下がり防止性能を得るには至らない。
前記糖類は分子量が大きくなるに従い吸湿性が低くなり、乾燥皮膜を形成し易くなることから、10糖以上の糖類を用いることによりキャップオフ性能を維持したままインキの垂れ下がりを防止できる。
前記10糖以上の糖類としては、澱粉の酵素分解等によって得られる澱粉糖化物、又は、澱粉糖化物の末端基を還元した還元澱粉糖化物を用いることができる。
なお、澱粉を分解していくと、様々な重合度の糖類が生成するため、10糖以上の糖類のみを完全に単離することは技術的に困難であり、製造コストもかかってしまう。そこで9糖以下の糖類が存在する糖混合物において、前記10糖以上の糖類を40質量%以上含有することにより、前記性能を十分に発現させることができる。
前記糖混合物はインキ組成物全量に対して0.5〜10.0質量%、好ましくは1.0〜8.0質量%の範囲で配合される。0.5質量%未満では垂れ下がり防止効果が得られ難く、10.0質量%を超えるとインキの粘度が上昇して泣き出しやボテを生じたり、筆記時のインキ追従性を損なうことがある。
ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではないが、例えば、インキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に抱持したボールペンチップに連通しており、さらにインキ組成物の端面にはインキ逆流防止体組成物が密接しているボールペンレフィルを軸筒内に収容したボールペンを例示できる。
更に、インキ組成物を充填した軸筒を有し、該軸筒はボールを先端部に抱持したボールペンチップに連通しており、さらにインキ組成物の端面にはインキ逆流防止体組成物が密接しているボールペンであってもよい。
前記した構造のボールペンはキャップを備えることが好ましい。
ボールペンチップの構造は、従来より汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持する機構、金属材料のドリル等による切削加工により、チップ部を形成して、ボール抱持部にボールを抱持する機構、バネ体によりボールを前方に付勢させた機構、或いは、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けた機構を例示できる。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜3.0mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.15〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1.0mmのものが用いられる。
前記インキ組成物を収容するインキ収容管、或いは、軸筒は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
更に、前記インキ収容管、或いは、軸筒として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
また、前記ボールペン用水性インキ組成物を出没式ボールペンに収容する場合、出没式ボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に
設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
なお、前記ボールペンレフィルを構成するインキ収容管や軸筒は樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
なお、表中の数値は質量%を示す。
(1)C.I.ピグメントブラック7
(2)C.I.ピグメントレッド254
(3)C.I.ピグメントブルー15:3
(4)日本触媒(株)製、商品名:エポカラーFP−10
(5)BASF社製、商品名:ルビテックK−30
(6)三晶(株)製、商品名:ケルザン
(7)BASF社製、商品名:ルビテックK−17
(8)日本合成化学工業(株)製、商品名:ゴーセノールKP−06
(9)第一工業製薬(株)製、商品名:セロゲン5A
(10)花王(株)製、商品名:デモールN
(11)The Dow Chemical Company製、商品名:Dowfax2A1(有効成分47%)
(12)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフM208B、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステルのエタノールアミン塩
可逆熱変色性顔料Aの調製
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)電子受容性化合物として1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン8.0部、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体としてラウリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、酢酸エチル40部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を攪拌しながら徐々に添加し、さらに液温を90℃に保って約6時間攪拌を続けて可逆熱変色性顔料Aの懸濁液を得た。
前記懸濁液から、遠心分離により可逆熱変色性顔料を単離し、青色から無色に変色する可逆熱変色性顔料Aを得た(固形分:60%、平均粒子径:3μm)。
可逆熱変色性顔料Aは無色の状態から冷却すると6℃から青色に発色し始めて、−2℃で青色の完全発色状態となり、この状態から加温すると56℃から消色し始めて70℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料Aを予め−2℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
可逆熱変色性顔料Bの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン5.0部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン10.0部、(ハ)成分をカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料Aと同様の方法により黒色から無色に変色する可逆熱変色性顔料Bを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料Bは無色の状態から冷却すると−14℃から黒色に発色し始めて、−22℃で黒色の完全発色状態となり、この状態から加温すると32℃から消色し始めて58℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料Bを予め−22℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
前記実施例1、比較例1のインキ組成物を直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填してボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、ボールペンを得た。
なお、前記ボールペンはキャップを備えてなる。
前記実施例2及び3、比較例2及び3のインキ組成物を直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填してボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、ボールペンを得た。
なお、前記ボールペンはキャップを備えてなる。
前記実施例4乃至6、比較例4乃至5のインキ組成物を直径0.7mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填してボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、ボールペンを得た。
なお、前記ボールペンはキャップを備えてなる。
前記実施例7乃至9、比較例6及び7のインキ組成物を直径0.7mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填してボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを軸筒内に組み込み、出没式ボールペンを得た。
なお、前記出没式ボールペンは、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後端部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造である。
なお、前記可逆熱変色性顔料を着色剤として用いたインキ組成物を収容したボールペンを用いて筆記して得られる筆跡は、SEBS製ゴム等の摩擦具を用いて摩擦することにより消色させることができる。
前記インキ組成物の各x値〔インキ中の水がインキ全量に対して40質量%蒸発した時の粘度/初期のインキ粘度(EMD型粘度計、1rpm、20℃で測定)〕を測定した。
耐ドライアップ試験
前記のようにして得たボールペン及び出没式ボールペンを倒立状態(筆記先端部が下向き)で50℃で30日間放置した後、筆記を行ない、筆跡の状態を目視により観察した。
なお、ボールペンについては、キャップを外した状態で試験を行った。
前記インキ組成物の各x値、耐ドライアップ試験結果を以下の表に示す。
耐ドライアップ試験
◎:均一でかすれのない良好な筆跡が得られる。
○:かすれのない筆跡が得られる。
×:筆跡にかすれが見られる。
Claims (11)
- 着色剤として顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤と、イオン性物質がインキ中で解離して形成される陽イオンが一価アルカリ金属イオンであるイオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し3質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤及びイオン性基を有する染料を含有せず、且つ、増粘抑制剤がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース系高分子化合物、ポリアルキレンオキサイド基を有する高分子化合物から選ばれるボールペン用水性インキ組成物。
- 前記インキ組成物中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し3〜15質量%である請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記顔料をインキ組成物全量中1〜30質量%含んでなる請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記剪断減粘性付与剤が多糖類である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記剪断減粘性付与剤がキサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカンから選ばれる請求項4記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンレフィルを軸筒内に収容したボールペン。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を軸筒内に内蔵したボールペン。
- ボールペン用水性インキ組成物後端面にインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を配設してなる請求項6又は7記載のボールペン。
- キャップを備えてなる請求項6乃至8のいずれかに記載のボールペン
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物をボールペンレフィル内に収容してなり、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式ボールペン。
- ボールペン用水性インキ組成物の後端面にインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を配設してなる請求項10記載の出没式ボールペン。
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