JP5473711B2 - 樹脂成形用積層金型およびその製造法 - Google Patents

樹脂成形用積層金型およびその製造法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂の射出成形に用いる金型およびその製造方法に関するものである。
熱可塑性樹脂の射出成形においては、金型に注入された溶融状態の樹脂を冷却することによって樹脂成形製品が得られる。金型は冷却水などで冷却され、その冷却能力によって生産性が大きく左右される。また、熱硬化性樹脂の射出成形においても、金型から製品を取り出した後、次の樹脂を金型に注入する前に金型をできるだけ迅速に冷却することが生産性向上につながる。
金型に注入された樹脂を迅速に冷却するためには、金型内部の樹脂成形面に近い位置に冷媒流路を配置することが効果的であることから、冷媒流路を三次元的に配置することが容易な積層金型を採用するケースが増えている。積層金型は、樹脂製品の形状および冷媒流路の配置に基づいて設計されたカットパターンを有する個々の金属シート部材を複数枚重ね合わせて、それぞれの金属シート部材同士を接合する手法を用いて作製される金型である。
積層金型に用いる金属シート部材としては、銅材や鋼材が使用されるが、強度および材料コストの面からは鋼材が有利となる。金属シート部材同士の接合方法としては、金属シートの間に低融点のインサート材(ろう材)を挟んでろう付けする方法、金属シート部材同士を直接拡散接合する方法、金属シートの間にインサート材を介在させて拡散接合する方法などが挙げられる。
特開2004−195720号公報 特開2006−69084号公報 特開2006−82096号公報 特開2009−96023号公報
ろう付けによる金属シート部材同士の接合では、比較的低融点のろう材(はんだ等)を用いることによって、あまり高温に保持することなく接合を行うことができる。しかし、溶融したろう材が金属シート端部から外部にはみ出したり、冷媒流路などの空隙部にはみ出したりする現象が生じやすく、寸法精度の高い積層金型を作製することは必ずしも容易ではない。また、冷媒流路やエアー抜き穴にはみ出したろう材は必要な空隙を塞ぐ要因となる。また、薄いインサート材(ろう材)を各金属シート間に正確に挿入するには手間が掛かり、生産性を高めることは困難である。
一方、拡散接合によれば溶融金属がはみ出すことがなく、寸法精度の高い積層金型を得る上で有利となる。しかし、健全な拡散接合部を形成するためには、真空チャンバー内で、例えば7MPa程度以上といった高い面圧を金属シート部材間に付与しながら、高温に加熱する技術が必要となる。金属シート部材として銅材を使用する場合、高面圧・高温の加熱に供すると材料軟化による塑性変形が起こりやすく、寸法精度に問題が生じることが懸念される。鋼材のシート同士を直接拡散接合する場合は、より高面圧・高温条件とすることが望まれる(例えば面圧10MPa、加熱温度1200℃)。また鋼材表面は酸化されやすいので、予め鋼材シートの表面を研磨することによって酸化膜を除去し、且つ適切な表面粗さの凹凸を付与しておく処理(活性化処理)が必要となる。活性化処理は全ての鋼材シート表面に施す必要があり、研磨に多大なコストと時間を要する。一方、適切なインサート材を使用すると鋼材同士の直接的な拡散接合が回避され、活性化処理の条件は緩和される。しかしこの場合、インサート材を挿入することによる前述のデメリットを伴う。
本発明は、上述のような問題に鑑み、鋼材を素材に用いた高強度の積層金型であって、より効率的に低コストで生産できるものを提供する。また、その効率的な製造技術を提供する。
発明者らは詳細な検討の結果、金属シート部材として銅めっき鋼板を使用することにより、従来より低面圧・低温で健全な拡散接合が実現できることを見出し、本発明に至った。
本発明では、銅めっき鋼板からなる複数のシート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように重ね合わせて1.5〜6.0MPaの積層方向圧力が付与された状態として拡散接合してなる積層構造体を持ち、その積層構造体の内部には冷媒流路が三次元的に配置されている樹脂成形用積層金型が提供される。前記積層構造体を構成する銅層の厚さは1層当たり例えば5〜100μmである。鋼層は300HV以上の断面硬さを有する鋼あるいはCr含有量が10.5〜32.0質量%のステンレス鋼からなるものとすることができる。前記積層構造体の樹脂成形面に対して背面側に、肉厚3mm以上の金属プレート部材が接合されている金型が好適な対象となる。
また本発明では、上記の積層金型の製造方法として、
片面当たり2.5〜50.0μm厚さの銅めっき層を両面に持つ銅めっき鋼板を素材として、樹脂成形製品の形状および冷媒流路の配置に基づいて設計されたカットパターンを形成してなる複数の金属シート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように重ね合わせて積層体とする工程(積層工程)、
前記積層体を1.5〜6.0MPaの積層方向圧力が付与された状態として、10Pa以下の減圧雰囲気下で780〜950℃に加熱保持することにより、各銅めっき層密着部分で拡散接合させる工程(拡散接合工程)、
を有する樹脂成形用積層金型の製造法が提供される。
前記銅めっき鋼板は、例えば厚さ0.05〜4.0mmの鋼板をめっき原板とするものが適用できる。また、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を施したときに硬さ300HV以上となる化学組成を有する鋼板をめっき原板とするものが適用できる。その場合、拡散接合工程により得られた積層構造体に、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を施し、当該積層体を構成する鋼層の硬さを300HV以上とすればよい(調質熱処理工程)。焼入れ性の良好な鋼種を適用すれば、拡散接合工程で加熱保持した後の冷却過程を利用して硬さ300HV以上とすることも可能である。
なお、本明細書において「積層体」とは金属シート部材などを重ね合わせた段階にある接合されていない状態のものをいい、「積層構造体」とは前記積層体を構成する各部材が接合されて一体化したものをいう。
本発明によれば金属シート部材として銅めっき鋼板を使用することにより、以下のようなメリットが得られる。
(1)従来より低面圧・低温で健全な拡散接合が可能となり、低コスト化とともに、積層金型の大型化にも対応しやすくなる。
(2)接合時に溶融金属が生成しないので、ろう付け接合で問題となるろう材のはみ出しに起因する寸法精度の悪化および流路の狭窄化が回避される。
(3)鋼材を主体とする積層構造により、高強度の金型が低コストで得られる。
(4)研磨などの活性化処理を行うことなく健全な拡散接合が実現できるので、金型の生産性向上および生産コスト低減が図れる。
(5)金属シート部材間にインサート材を挟む必要がないので、金型の生産性向上および生産コスト低減が図れる。
本発明の積層金型を用いて射出成形を実施する際の金型断面構造を模式的に例示した図。 図1中の破線20部分の拡大断面を模式的に示した図。 銅めっき鋼板同士を800℃で拡散接合して得られた積層構造体の断面光学顕微鏡写真。 図3の一部領域を拡大した断面光学顕微鏡写真。 (1)式の接合不良率の定義を説明するために概念的に示した断面図。 接合界面上に複数の非接合箇所が近い距離で隣接している部分の拡大断面を模式的に示した図。
図1に、本発明の積層金型を用いて射出成形を実施する際の金型断面構造を模式的に例示する。この例は、キャビティー側の積層金型1Aとコア側の積層金型1Bがともに本発明に相当する積層金型であり、これらを組み合わせることによって樹脂充填空洞2が形成されている。積層金型1Aは、銅めっき鋼板からなる複数のシート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように重ね合わせて拡散接合してなる積層構造体11Aを有している。積層構造体11Aの樹脂成形面4Aに対して背面側には必要に応じて金属プレート部材12Aが接合され、強度や耐久性が高められる。この背面側の金属プレート部材12Aは、例えば板厚3mm以上のものを適用することが効果的である。材質はステンレス鋼等の鋼材とすることが好ましい。その板厚の上限は特に規定されないが、実用的には30mm以下とすればよい。また、相手側の積層金型と密着させる部分にも必要に応じて金属プレート部材13Aが接合され、取り扱い時の耐久性が高められる。
積層金型1Aの相手側に相当する積層金型1Bも同様に、銅めっき鋼板からなる複数のシート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように重ね合わせて拡散接合してなる積層構造体11Bを有し、積層構造体11Bの樹脂成形面4Bに対して背面側には必要に応じて金属プレート部材12Bが接合される。また、相手側の積層金型と密着させる部分にも必要に応じて金属プレート部材13Bが接合される。ここでは一対の積層金型がともに本発明品である場合を例示したが、いずれか一方のみに本発明品を適用しても構わない。
積層構造体11A、11Bの内部には冷媒流路3が三次元的に配置されている。「三次元的に」とは、積層構造体11A、11Bの内部において一本の冷媒流路3の中心線が一平面内にとどまらないことを意味する。冷媒流路3は樹脂充填空洞2のできるだけ近傍に配置することにより、冷却能力を高めることができる。
図2に、図1中に破線20で示した部分の拡大断面を模式的に示す。銅めっき鋼板のめっき原板の部分に由来する鋼層21の間に、銅めっき層に由来する銅層22が存在し、積層構造を形成している。銅層22は銅めっき層同士を密着させて拡散接合することにより得られた層であり、健全な拡散接合部において、銅めっき層同士の界面の形跡はほとんど確認できない。鋼層21と銅層22の界面はめっき鋼板を製造する段階でタイトに接合されている。したがって、積層構造体11A、12Aは各層が極めてタイトに接合されているものである。
参考のため、図3に、銅めっき鋼板同士を800℃で拡散接合して得られた積層構造の断面写真を示す。グレーの部分が鋼層、白いライン状に見える部分が銅層である。図4に、図3の一部を拡大した断面写真を示す。銅めっき層同士の界面の形跡は確認できない。
鋼層21は、積層構造体11A、11Bの強度を担う。ただし、発明者らの詳細な検討によれば、鋼層と銅層を交互に接合した積層構造体を構築することにより、積層方向(すなわち鋼板の厚さ方向)の強度レベルが、鋼層と同じ材質の鋼材からなるバルク体と比べ飛躍的に向上する(特許文献4)。したがって、樹脂成形製品の形状やサイズによっては、鋼層21を特段の高強度鋼で構成しなくても、十分な強度を有する積層金型とすることが可能である。例えば、一般的な普通鋼やSUS304に代表されるステンレス鋼をめっき原板とする市販の銅めっき鋼板を使用することができる。
ここで、「ステンレス鋼」とは、JIS G0203:2009の番号3801に示されているように、Cr含有量10.5質量%以上、C含有量1.2質量%以下として耐食性を向上させた合金鋼である。本発明において積層金型の耐食性を重視する場合には、ステンレス鋼をめっき原板とする銅めっき鋼板を使用することが好ましい。一般的にはCr含有量の増大に伴って耐食性が向上するが、過剰なCr含有は製造性を低下させコスト増となる。本発明の用途においてはCr含有量が32.0質量%以下の範囲で鋼種を選択すればよい。具体的なステンレス鋼種としては、JIS G4305:2005に規定されるオーステナイト系、オーステナイト・フェライト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系の各鋼種、およびJIS G4312:1991に規定されるオーステナイト系、フェライト系の各鋼種のうち、Cr含有量が32.0質量%以下のものを採用することができる。
また、特に高強度を重視する場合は、鋼層21の断面硬さが300HV以上であることが効果的である。そのためには積層構造体11A、11Bを構築した後に行う熱処理によって高強度化が可能な鋼種を選定することが好ましい。すなわち、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を施したときに硬さ300HV以上となる化学組成を有する鋼種が好適な対象となる。例えばJIS規格鋼種を例示すれば、S35C、S55C、SCM415、SCM435、SNCM420、SK85、SUJ2、などが挙げられる。
鋼層21の厚さは例えば0.05〜4.0mmの範囲とすればよい。0.20〜2.0mmに範囲に管理してもよい。薄いほど冷媒流路3や、エアー抜き穴の配置をきめ細かく設定するうえで有利となるが、後述の積層工程に要する時間と労力は増加する。
銅層22は、鋼層21の間の接合を担うことに加え、良好な熱伝導を担う。熱伝導性を向上させる観点からは銅層22の厚さは厚い方が有利となる。種々検討の結果、銅層22の厚さは1層当たり5μm以上であることが好ましく、10μm以上が一層好ましい。ただし、過度に厚くすることは不経済であり、また、あまり厚くなると拡散接合時に付加される荷重により銅層が塑性変形しやすくなる。このため、銅層22の厚さは例えば100μm以下の範囲で設定すればよく、50μm以下に管理しても構わない。
本発明の積層金型は以下のようにして製造することができる。
〔積層工程〕
まず、両面に銅めっき層を有する銅めっき鋼板を素材として、金属シート部材を作製する。銅めっき鋼板としては、前述の鋼層21を構成するための鋼種をめっき原板とする電気銅めっき鋼板が採用できる。銅めっき層の銅純度は例えば99.0%以上であることが好適である。通常の電気銅めっき鋼板はこの要求を満たすものである。銅めっき層の片面当たりの厚さは前述の銅層22の目標厚さを考慮して概ねその1/2とすればよい。具体的には片面当たりの銅めっき層の厚さは例えば2.5〜50.0μmの範囲とすることができる。
各金属シート部材は、前記銅めっき鋼板を素材として、冷媒流路の配置に基づいて設計されたカットパターンを形成することによって作製される。樹脂注入流路や、エアー抜き穴を有する積層構造とする場合は、それらの配置も考慮に入れる。また、図1の符号13A、13Bで示したような金属プレート部材と接合する場合は、その金属プレート部材の配置も考慮する。
各金属シート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように、正確な位置関係で重ね合わせて積層体とする。樹脂成形面(図1では4A、4B)については拡散接合後に切削などによって平滑化するので、この段階で段差が生じていても構わない。各金属シート部材間にインサート材は介在させない。金属プレート部材(図1の12A、12Bや、13A、13Bなど)を接合した積層金型を製造する場合は、金属プレート部材を各金属シート部材と共に拡散接合により接合することもできる。その場合、当該金属プレート部材と各金属シート部材とを重ね合わせて積層体を作る。なお、金属プレート部材と金属シート部材の界面には必要に応じて適切なインサート材を介在させることができる。
〔拡散接合工程〕
次に、上記の積層体を真空炉に装入し、真空引きを行って10Pa以下の減圧雰囲気とする。1Pa以下とすることがより好ましく、0.5Pa以下とすることが一層好ましい。積層体に1.5〜6.0MPaの積層方向圧力を付与した状態で、780〜950℃の温度範囲に保持する。積層方向圧力は、各銅めっき層間に付与される面圧の平均(平均面圧)である。均等な積層方向圧力が付与されるように、樹脂成形面(図1では4A、4B)に勘合する形状の表面を有する治具などを用いて圧力を付与することが望ましい。必要に応じて治具との間の拡散接合を防止するために離型剤を塗布することができる。
積層方向圧力が1.5MPaを下回ると800℃未満の温度域では拡散接合部に欠陥が残留しやすい。積層方向圧力を増大させると拡散の進行が促進されるが、あまり高い圧力を付与することは装置への負担が増大し、大型の積層金型を製造する際には問題となる。発明者らの検討によれば、銅めっき層同士の拡散接合は、比較的低面圧・低温で健全な拡散接合部が得られるという特長がある。この特長を活かすためには例えば4.0MPa以下、あるいは3.0MPa以下という比較的低い積層方向圧力で実施することが好ましい。なお、冷媒流路や樹脂注入流路などの空洞の、積層方向近傍に位置する銅めっき層間では面圧が低下しやすいが、積層方向に直交する方向(積層面に平行な方向)における幅が10mm以下の空洞であれば、面圧の低下はほとんど問題ない。
加熱温度については780℃を下回ると比較的高い積層方向圧力を付与して長時間保持する必要があるので、780℃以上の温度とすることが好ましい。790℃以上とすることがより好ましい。一方、950℃を超える高温加熱はコスト増の要因となり、銅めっき鋼板を使用するメリットが活かせない。900℃以下の加熱温度とすることがより好ましく、840℃以下に管理することもできる。上記温度に保持する時間は高面圧・高温ほど短縮できる。付与する積層方向圧力と加熱温度に応じて、例えば30〜300minの範囲で適正保持時間を設定すればよい。適正保持時間は予備実験のデータに基づいて設定することができる。所定時間の加熱保持が終了した後、材料温度が200℃以下となるまでは外気を遮断した炉内で冷却することが好ましい。めっき原板として焼入れ性が良好な鋼を採用した場合には、拡散処理の加熱保持後の冷却を利用して焼入れ処理を施すことも可能である。
〔調質熱処理工程〕
めっき原板として、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理(これらを調質熱処理と呼ぶ)により硬質化させることができる鋼種を適用した場合は、拡散処理によって得られた積層構造体を調質熱処理に供することができる。恒温変態処理の代表例としてはオーステンパーが挙げられる。銅層22は調質熱処理の影響を受けないので、調質熱処理の条件は通常のバルク鋼材に対して行われている条件に準じることができる。ただし、加熱温度は銅層22が溶融しないように1050℃を超えない範囲とする。このような熱処理によって鋼層21の断面硬さが300HV以上となるようにすることが好ましい。鋼種や熱処理条件によって鋼層21の断面硬さを350HV以上、あるいはさらに400HV以上にコントロールすることも可能である。
〔金属プレート部材の接合〕
積層構造体と金属プレート部材(図1の12A、12Bや、13A、13Bなど)を接合した積層金型を製造する場合は、前述のように拡散接合の工程で両者を接合することもできるが、積層構造体を作製した後、別途、積層構造体と金属プレート部材とを接合することもできる。その接合方法としてはろう材を用いたろう付け法や、ボルト・ナットなどの締結部品により締結する方法などが挙げられる。
銅めっき鋼板からなる金属シート部材を用いて拡散接合処理を行い、内部に冷媒流路を模擬した空洞が三次元的に配置される積層構造体を作製し、拡散接合部の健全性を評価した。具体的な実験方法を以下に示す。
片面当たりの銅めっき層厚さが5.0〜20.0μmの電気銅めっき鋼板を用意した。めっき原板の鋼種としてはJIS規格材の中から、S55C(機械構造用炭素鋼)、SK85(炭素工具鋼)、SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)、SUS430(フェライト系ステンレス鋼)を選んだ。めっき原板の板厚は0.25〜1.0mmである。
各銅めっき鋼板から、冷媒流路を模擬した空洞の配置に基づいて設計されたカットパターンを有する140mm×140mmの金属シート部材を切り出した。冷媒流路を模擬した空洞の積層方向に直行する方向の幅は8mmとした。これらを脱脂後に重ね合わせて積層体を構成した。積層枚数は、厚さ140mmの積層構造体が得られる枚数とした。例えば、めっき原板の板厚が0.25mm、片面当たりのめっき層厚さが10.0μmの場合、560枚の金属シート部材を重ね合わせた。この場合、加圧前の積層体の計算上のトータル厚さは0.27mm×560枚=151.2mmとなる。
上記の積層体を真空ホットプレス炉に装入し、真空引きにより0.1Paの減圧雰囲気として、所定の積層方向圧力を付与した状態で780〜900℃の種々の温度で保持することにより拡散接合を行い、厚さ140mmの積層構造体を得た。積層方向圧力は0.5〜4.0MPaの範囲で設定した。加熱保持時間は60〜300minの範囲で設定した。
得られた積層構造体を積層方向に対して平行に中央部で切断し、その断面内に存在する銅層の全長(元の界面の全長)について接合欠陥(元の銅めっき層同士の界面が明瞭で、拡大観察したときに非接合部であると判定される部分)のトータル長さを測定し、下記(1)式により接合不良率を求めた。
接合不良率(%)=[接合欠陥のトータル長さ]/[断面内銅層の全長]×100 …(1)
具体的な接合不良率の求め方を図5、図6に基づいて説明する。図5は説明の便宜のため5枚の銅めっき鋼板を拡散接合した積層体(接合面に平行方向の長さがLである直方体を想定し、その断面を模式的に示したものである。図5において銅層の記載は省略してあり、破線が元の界面、破線上に黒っぽく塗りつぶした部分が欠陥(非接合箇所)である。欠陥のサイズは誇張して描いてある。元の界面の数は4層であることから[断面内銅層の全長]=4Lである。また、接合欠陥が全部で6箇所あり、それぞれの接合欠陥の長さをP1、P2、・・・、P6とするとき、[接合欠陥のトータル長さ]=P1+P2+P3+P4+P5+P6である。このとき、(1)式より接合不良率(%)=(P1+P2+P3+P4+P5+P6)/4L×100となる。図5の例では、1つの接合欠陥としての長さが最大である接合欠陥の長さ(以下「最大欠陥長さ」という)はP1である。ただし、図5中、長さP1の接合欠陥および長さP5の接合欠陥は、隣接する複数の非接合箇所が一体となって1つの接合欠陥を構成しているものである。
上述の長さP1の接合欠陥や長さP5の接合欠陥のように、接合界面上に複数の非接合箇所が近い距離で隣接している場合には、以下のように取り扱う。図6に、複数の非接合箇所が隣接している部分の拡大断面を模式的に例示する。長さPiの非接合箇所および長さPiiの非接合箇所が隣接しており、その間に長さSの接合箇所が存在しているとする。接合箇所の長さSを隣接する両方の非接合箇所の長さPiおよびPiiと比較する。SがPi、Piiのいずれよりも短い場合、当該長さSの接合箇所は非接合箇所であるとみなす。図6の例ではPi>Pii>Sであるから、長さSの接合箇所は非接合箇所であるとみなされる。そして、長さPiの欠陥の左側および長さPiiの欠陥の右側の接合箇所がそれぞれ同様の判定方法により、いずれも非接合箇所であるとはとみなされない場合、図6に記入されているように、長さPiの非接合箇所と、長さSの接合箇所と、長さPiiの非接合箇所からなる部分は、長さP=Pi+S+Piiの1つの接合欠陥であると判定される。
本実施例では、最大欠陥長さ(上述)が2.0mm以下であり、かつ(1)式による接合不良率が5.0%以下であるものを拡散接合性;良好(○評価)、それ以外を不良(×評価)とした。○評価のものは樹脂成形用積層金型としての実用的な耐久性を有すると判断される。結果を表1に示す。
表1からわかるように、銅めっき鋼板を使用した拡散接合では比較的低面圧・低温で健全な接合部が得られ、樹脂成形用積層金型に適した積層構造体を構築することができる。
実施例1のNo.4で得られた積層構造体について調質熱処理を施し、調質熱処理後の積層構造体を積層方向に対して平行に中央部で切断し、その断面内の鋼層の断面硬さをマイクロビッカース硬度計により測定した。調質熱処理は以下の2通りを実施した。
〔熱処理A〕
オーステンパー処理(鋼層500HV狙い); 810℃×20分保持→300℃×30分保持→空冷
〔熱処理B〕
焼入れ・焼戻し処理(鋼層450HV狙い); 850℃×20分保持→油冷(60℃)→400℃×60分保持→空冷
結果は以下のとおりであった。
・熱処理Aによる鋼層の平断面の平均硬さ;495HV
・熱処理Bによる鋼層断面均硬さ;452HV
また、銅層は調質熱処理前の段階と同様に健全な拡散接合状態が保たれ、鋼層/銅層界面についての接合状態にも異常はみられなかった。
1A、1B 積層金型
2 樹脂充填空洞
3 冷媒流路
4A、4B 樹脂成形面
11A、12A 積層構造体
12A、12B 金属プレート部材
13A、13B 金属プレート部材
21 鋼層
22 銅層

Claims (9)

  1. 銅めっき鋼板からなる複数のシート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように重ね合わせて1.5〜6.0MPaの積層方向圧力が付与された状態として拡散接合してなる積層構造体を持ち、その積層構造体の内部には冷媒流路が三次元的に配置されている樹脂成形用積層金型。
  2. 前記積層構造体を構成する鋼層は、300HV以上の断面硬さを有する鋼からなる請求項1に記載の樹脂成形用積層金型。
  3. 前記積層構造体を構成する鋼層は、Cr含有量が10.5〜32.0質量%のステンレス鋼からなる請求項1または2に記載の樹脂成形用積層金型。
  4. 前記積層構造体を構成する銅層の平均厚さが1層当たり5〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形用積層金型。
  5. 前記積層構造体の樹脂成形面に対して背面側に、肉厚3mm以上の金属プレート部材が接合されている請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形用積層金型。
  6. 内部に冷媒流路を有する樹脂成形用積層金型を製造するに際し、
    片面当たり2.5〜50.0μm厚さの銅めっき層を両面に持つ銅めっき鋼板を素材として、冷媒流路の配置に基づいて設計されたカットパターンを形成してなる複数の金属シート部材を、それぞれの銅めっき層同士が密着するように重ね合わせて積層体とする工程(積層工程)、
    前記積層体を1.5〜6.0MPaの積層方向圧力が付与された状態として、10Pa以下の減圧雰囲気下で780〜950℃に加熱保持することにより、各銅めっき層密着部分で拡散接合させる工程(拡散接合工程)、
    を有する樹脂成形用積層金型の製造法。
  7. 前記銅めっき鋼板は、厚さ0.05〜4.0mmの鋼板をめっき原板とするものである請求項6に記載の樹脂成形用積層金型の製造法。
  8. 前記銅めっき鋼板は、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を施したときに硬さ300HV以上となる化学組成を有する鋼板をめっき原板とするものである請求項6または7に記載の樹脂成形用積層金型の製造法。
  9. 前記拡散接合工程により得られた積層構造体に、焼入れ・焼戻し処理または恒温変態処理を施し、当該積層構造体を構成する鋼層の硬さを300HV以上とする工程(調質熱処理工程)を有する、請求項8に記載の樹脂成形用積層金型の製造法。
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