JP5472987B2 - 組織内光線力学的光線治療パラメータを制御し、且つ、調整するためのシステム及び方法 - Google Patents

組織内光線力学的光線治療パラメータを制御し、且つ、調整するためのシステム及び方法 Download PDF

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Description

本発明は、一般に、光線力学的光線治療(PDT)及び関連するシステム、デバイス、コンピュータプログラム製品並びに方法の分野に関する。より詳細には、本発明は、PDTシステムなどにおける光線の制御及び調整に関する。さらにより詳細には、本発明は、組織内腫瘍PDTシステムにおける光線を制御するためのシステム及び方法に関する。
光線力学的治療(PDT)は、選択性及び有効性に関して有望な結果を示している癌治療モダリティであり、たとえばDougherty TJ等のPhotodynamic therapy、Journal of the National Cancer Institute 1998;90:889〜905を参照されたい。
PDTでは、酸素中の光線によって活性化され、毒性一重項酸素遊離基を生成する光感作体物質の使用を利用する。これらの毒性一重項酸素遊離基に起因するアポトーシス、壊死及び血管損傷によって組織が破壊されるが、これについては、たとえばNoodt BB等のApoptosis and necrosis induced with light and 5−aminolaevulinic acid−derived protoporphyrin IX、 British Journal of Cancer 1996;74:22〜29を参照されたい。
PDTが抱えている一般的な問題は、組織中への活性化光線の透過が限られていることである。表面照射によって治療することができる腫瘍の厚さは、約5mm未満にすぎない。もっと分厚い腫瘍及び/又はより深い部分に位置している腫瘍を治療する場合、組織内PDTを利用することができる。組織内PDTの場合、たとえば、その管腔内にファイバが配置された注射針を使用して光伝導性光ファイバが腫瘍の中に導入される。これについては、たとえば、本出願の出願人と同じ出願人のPCT/SE2006/050120に記載されている。
有効な治療を達成するために、毒性一量状態が得られるよう、複数のファイバを使用して、すべての腫瘍細胞が十分な放射線量に照射されることが確認されている。スウェーデン特許SE 503408に、6本のファイバを使用して治療が施され、且つ、他のファイバから組織を貫通透過して所与のファイバに到達する光束が測定される組織内PDTシステムが記載されている。SE 503408の開示によれば、極めて多数の機械コンポーネント及び光学コンポーネントを備えたビームスプリッタシステムを使用して、単一のレーザからの光線が6つの異なる部分に分割される。光線は、次に、6つの個別の治療ファイバの各々に集束する。1本のファイバがトランスミッタとして使用され、他のファイバは、組織を透過する放射のレシーバとして使用される。SE503408に開示されている組織内PDTシステムによれば、光散乱からのフィードバックが可能であるが、この文書には、光線治療を制御し、且つ、調整するための重要なパラメータに関する情報、或いは光線治療を制御し、且つ、調整する必要性に関する情報については全く開示されておらず、或いはこれらのパラメータに関するガイダンスを何ら与えていない。
組織内PDTにおける生物学的効果を最適化するためは、正確な線量測定法が必要である。たとえば固定光線線量を使用することができ、また、PDT治療中、使用される治療光線の治療波長におけるラジアンスを常に一定に維持することができる。さらに、J/cmで表される所定の入射光線線量を引き渡すための要求事項によって照射時間を決定することも可能である。単純化されたこのような線量測定の場合、PDT治療中における治療条件の変化は無視されている。たとえば、このような変化は、場合によっては、PDTによって処置されるターゲット組織全体の組織光透過率の治療誘導変動、感作体濃度の変動及び組織酸素化状態の変動を含んでもよい。このような変動は、場合によっては、観察される可変PDT効果の中でもとりわけ高度な可変PDT効果を説明している。たとえば、Calzavara−Pinton PGのRepetitive photodynamic therapy with topical α−aminolaevulinic acid as an appropriate approach to the routine treatment of superficial non−melanoma skin tumors、Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology 1995;29: 53〜57に示されているように、再現率は、光線線量が同じであるにもかかわらず大きな変動を示している。さらに、Curnow A等のOxygen monitoring during 5−aminolaevulinic acid induced photodynamic therapy in normal rat colon,Comparison of continuous and fractionated light regimes、Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology 2000;58:149〜155によれば、壊死体積は、光線線量が同じであるにもかかわらず大きな変動を示している。
Tulip等のEP 1470837に、スイッチ光線力学的治療装置及び方法が開示されている。光毒性薬剤がターゲット組織の動脈サプライに供給され、且つ、ターゲット組織へのプローブを介した薬剤活性化光線の引渡しがプローブの動作を連続的に選択することによって制御される光線力学的治療装置及び方法が記載されている。さらに、ターゲット組織を光学的に有効に特性化するために自動ラジアンスプローブが使用されており、また、トランスミッタ及びレシーバとしてプローブを連続的に選択することによって光線線量がモニタされている。しかしながら、これらの装置及び方法は、引き渡される治療の有効性フィードバックを提供していない。さらに、この開示には、プローブを所定の一定の速度で連続的に動作させる際に、光線の引渡しをどのように制御し、また、その制御をいつ実施するのかについての実際的なガイダンスが欠けている。さらに、治療部位の組織特性を測定するためには、臨床環境で実施することは事実上困難と思われる特定の回転プローブを使用しなければならない。
したがって、生体内PDTの間、又は試験管内PDTの間、光線治療及び/又は関連するパラメータを制御し、且つ、調整するための有利な方法及び/又はシステムが必要である。
したがって、本発明の実施形態によれば、好ましいことには、添付の特許請求の範囲に記載されているシステム、方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム及び医療ワークステーションを提供することにより、上で識別したような当分野における1つ又は複数の欠陥、欠点又は問題が、単独又は何らかの組合せで軽減され、緩和され、或いは除去される。
より詳細には、本発明は、PDT治療の間、組織の状態を決定するための計算方法が組み込まれた方法からなっている。この計算方法は、腫瘍又は感作体に関連する少なくとも1つのパラメータの評価に基づいている。また、光線治療を制御するための方法であって、感作体濃度又はフルエンス率のいずれかから、或いは組織酸素化から総治療時間が決定される方法が開示される。
本発明の第1の態様によれば、身体の組織に組織内光線力学的治療を提供するためのシステムが提供される。システムは、前記組織中の光感作体物質と相互作用する治療光線を前記組織に引き渡すための少なくとも1本の光ファイバであって、その遠位端領域が前記組織中に組織内的に挿入されるように工夫された光ファイバと、前記光ファイバの前記遠位端領域における前記組織内光線力学的治療の少なくとも1つの光線力学的治療パラメータを評価するためのデバイスと、前記光線力学的治療パラメータの評価に応答して前記組織内光線力学的治療の前記治療光線の特性を修正するためのデバイスと、前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの少なくとも1つの属性に応じて、治療光線治療の前記引渡しを少なくとも一時的に制限するようになされた制御デバイスとを備えている。
本発明の他の態様によれば、コンピュータによって処理するためのコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、身体の組織に組織内光線力学的治療を提供するためのシステムの中に、被検者の光線力学的治療における光線治療を制御し、且つ、調整するためのコードセグメントを備えている。コンピュータプログラムは、前記光ファイバの前記遠位端領域における前記組織内光線力学的治療の少なくとも1つの光線力学的治療パラメータを評価するための第1のコードセグメントと、前記光線力学的治療パラメータの評価に応答して前記組織内光線力学的治療の前記治療光線の特性を修正するための第2のコードセグメントと、前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの少なくとも1つの属性に応じて、治療光線治療の前記引渡しを少なくとも一時的に制限するための第3のコードセグメントとを備えている。
本発明のさらに他の態様によれば、組織内光線力学的治療のための本発明の上記態様のコンピュータプログラムを実行するように構成された医療ワークステーションが提供される。
本発明の一実施形態によれば、光線力学的光線治療の間、治療パラメータをモニタし、且つ、調整するための計算方法が開示される。測定されたパラメータから光線線量分布が得られ、前記パラメータを使用して光線引渡し条件を修正することにより、治療を制御することができる。
一実施形態によれば、本発明は、被検者の光線力学的治療における光線治療を制御し、且つ、調整するための方法に関する。この方法は、生体内又は試験管内で実施することができ、
a)治療のための少なくとも1つの治療光線放出源を提供するステップであって、前記治療光線放出源が組織部位内に組織内的に挿入されるように適合され、前記治療光線放出源がその光線線量を制御するための手段を有するステップと、
b)少なくとも1つの決定光線放出源を提供するステップであって、前記決定光線放出源が組織部位内に組織内的に挿入されるように適合され、且つ、組織状態又は感作体パラメータを決定するように適合されたステップと、
c)組織状態又は感作体に関連する少なくとも1つのパラメータを直接又は間接的に決定するステップと、
d)測定されたパラメータから光線線量分布を計算し、且つ、前記パラメータから光線引渡し条件の修正を計算するステップと、
e)前記パラメータのうちの少なくとも1つが所定のレベルに到達するまで前記決定ステップ(c)及び計算ステップ(d)を繰り返すステップと、その後、
f)前記光線力学的治療を少なくとも部分的に終了するステップと
が含まれている。
この方法は、初期パラメータ値及び閾値レベルを測定し、且つ、計算することによって開始され、次に、治療のための光線引渡し条件に変換される。これは、治療に使用される個々の光線放出源の時間及びパワーが、光線放出源がオンである時間間隔中に設定されることを意味している。次に、治療中、組織状態又は感作体に関連するパラメータが実時間で測定され、新しい光線引渡し条件が新たに計算される。
本発明の他の実施形態は従属請求項に定義されており、第1の態様の特徴に必要な変更を加えたものが本発明の第2の態様及び後続する態様の特徴をなしている。
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療の中断が患者に提供される。また、本発明のいくつかの実施形態によれば、危険にさらされる健康な器官の損傷が回避されるため、患者の安全性が向上する。
「備えた/備えている」という用語が本明細書の中で使用されている場合、それは、言及されている特徴、完全体、ステップ又はコンポーネントの存在を特定しているものと解釈すべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、完全体、ステップ、コンポーネント若しくはそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことに留意されたい。
本発明の実施形態を可能にしているこれら及び他の態様、特徴並びに利点は、添付の図面を参照して行う本発明の実施形態についての以下の説明から明らかになるであろう。
組織内PDT装置の略図である。 引き渡されるエネルギーを関数とした患者ファイバ間の正規化光線透過率を示すグラフである。この測定は、組織中のフルエンス率分布に関係している。 図3aは、光源として635nmダイオードレーザを使用した診断測定からの生スペクトルを示すグラフである。スペクトル間隔λ及びλIIは、それぞれ、635nmにおける光の透過率を研究するために使用された領域及び光感作体の蛍光信号を示している。図3bは、一人の患者からの、引き渡される光線線量(D)を関数とした隣接する患者ファイバ間の正規化光透過率の平均を示すグラフである。領域T内の信号は、最終光透過率の測度を構成するために平均化されている。図3cは、一人の患者からの、引き渡される光線線量(D)を関数とした、隣接する患者ファイバ間で測定された正規化PpIX蛍光の平均を示すグラフである。図3b及び図3cでは、誤差バーは、±1標準偏差を表している。 図4aは、総ヘモグロビン含有量の平均変化を示すグラフである。図4bは、組織酸素飽和レベルの平均変化を示すグラフである。 PDT治療中のフルエンス率の一時的な進行を示すグラフである。Φ及びtで画定された長方形は、ターゲット線量Dt=Φに達するまでの初期線量計画を表している。PDT治療の間、フルエンス率が小さくなり、また、ターゲット線量に到達するためには、曲線の下側の面積と長方形の面積が同じ面積になるよう、光線放出時間を時間tまで延長しなければならない。 実時間線量測定モジュールを構成している前処置計画並びに治療及びモニタリングのシーケンスを示す流れ図である。 図7aは、前立腺線量測定モデルに組み込まれた器官の略図である。図7bは、患者のターゲット部位の再現幾何構造を示す三次元グラフである。 図8aは、図7bに示されているモデル化データセットから評価された個別μeff(i)を示す三次元グラフである。図8bは、18本のソースファイバに対する吸収レベル毎の平均データを示すグラフである。 図9aは、評価されたμeffと真のμeffの間で評価された相対誤差と共にソースファイバ毎に正規化された、ファイバ及び組織のタイプに特化されたヤコビアンを示すバープロットである。図9bは、ファイバ6、14及び17に対してz方向に合計されたヤコビアンの等表面を示す略グラフである。 図10aは、直腸、前立腺、尿道及び正常組織に引き渡される光線線量の線量体積ヒストグラム(DVH)を示すグラフである。図10bは、α(直腸)が変化する場合の組織のタイプ毎の治療分画を示すグラフである。図10cは、異なるα(直腸)に対するソースファイバ毎の照射時間を示すバープロットである。 図11aは、前立腺内における吸収が変化する場合の、引き渡される光線線量の線量体積ヒストグラム(DVH)を示すグラフである。図11bは、異なるμに対するソースファイバ毎の照射時間を示すバープロットである。 図12aは、前立腺内における光の減衰のレベルが異なる場合の総光エネルギーを示すグラフである。図12bは、真の実効減衰係数及び評価された実効減衰係数に対応する、引き渡される光線線量の線量体積ヒストグラム(DVH)を示すグラフである。 図13aは、前処置計画のために使用されるデフォルト実効減衰係数と比較した模擬治療セッションの間のμeffを示すグラフである。図13bは、治療フィードバックがない場合とある場合の引き渡される光線線量の線量体積ヒストグラム(DVH)を示すグラフである。図13cは、フィードバックがない場合とある場合のソースファイバ毎の照射時間を示すグラフである。 PDTを制御する方法の一実施形態を示す流れ図である。 図14に示されている方法の実際的なアプリケーションを示すタイミング図である。 図14に示されている方法の実際的なアプリケーションを示す他のタイミング図である。
以下、本発明の特定の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することが可能であり、本明細書において説明されている実施形態に限定されるものと解釈してはならない。そうではなく、これらの実施形態は、本開示を余すところのない完全なものにするために提供されたものであり、また、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供されたものである。添付の図面に示されている実施形態についての詳細な説明の中で使用されている専門用語には、本発明を制限することは意図されていない。図面の中の同様の番号は同様の構成要素を表している。
以下の説明は、PDTシステム及び方法に適用することができ、詳細には、前立腺癌の治療の一実施形態を参照した組織内PDTシステム及び方法に適用することができる本発明の一実施形態に的が絞られている。しかしながら、本発明は、このアプリケーションに限定されず、たとえば肝臓、食道、膵臓、胸、脳、肺、気管、眼、尿路、脳幹、脊髄、骨髄、腎臓、胃、腸、膵臓、胆嚢、等々を始めとする他の多くの器官に適用することができることは理解されよう。
光線力学的治療(PDT)は、部分的には反復治療の可能性及び照射部位に対する治療誘導組織損傷の制限などの利点のため、様々な器官の特定のタイプの悪性腫瘍を治療するための臨床的にますます受け入れられた方法になっている。PDT効果は、治療誘導アポトーシス及び直接壊死、 血管損傷及び場合によっては誘導免疫反応の組合せによってもたらされ、組織損傷の範囲は、光線線量、組織酸素化及び感作体濃度で決まる。PDTの場合、臨床治療プロトコルには、光線閾値モデルがしばしば利用される。この簡易モデルは、損傷するのは、定義済み閾値を超えた光線線量に露光された組織領域のみである、という前提に基づいている。閾値光線線量は、組織のタイプ及び使用される光感作体によって決まるように思われる。堆積する光線線量の観点から、PDT治療の前及びPDT治療の間、組織の光学的特性をモニタすることが肝要である。前立腺組織の吸収係数及び散乱係数の患者間及び同じ患者間での大きな変動が多くのグループによって測定されている。さらに、血液含有量の変化及び組織酸素化状態の変化によって生じることもある吸収及び散乱のいかなる治療誘導変動も、治療進行中における光線の分布に直接影響を及ぼすことになる。治療の前及び治療中、個々の患者の組織の光学的特性をモニタする必要があることは明らかである。
最近、いくつかのグループが、PDTが前立腺癌を治療するための極めて有効な代替であることを証明した。Bown等は、光感作体mTHPCを使用して続発性及び原発性前立腺癌を治療した。光線線量は、1治療部位当たり20〜100Jであり、重大な治療誘導壊死及びPSAレベルの低下をもたらした。治療に伴う合併症には、一時的な刺激性排尿症状、緊張性失禁及び性機能の障害の一症例が含まれていた。著者によれば、より詳細な薬剤及び光線線量測定によって、ターゲット組織とその周囲の敏感な器官の間のより良好な弁別が可能になる。Weersink等は、血管をターゲットにした光感作体Tookad、(WST09)を使用した再発性前立腺癌の治療に関して報告している。フェーズI臨床試験の間、光線(100〜360J/cm)及び薬剤(2mg/kg以下)の両方の投与量エスカレーション研究が実施された。最大薬剤投与量で、病変の形成は主として光線線量に依存することが観察された。さらに、Hahn等は、光感作体Motexafin Lutetiumを光フルエンス、薬剤レベル及び酸素分布のモニタリングと組み合わせて利用して再発性前立腺癌を治療している。前立腺組織に対する異なるPDT試験に共通しているのは、引き渡される薬剤投与量及び光線線量が同様であるにもかかわらず、同じ患者間及び患者間での治療誘導壊死量の変動が大きいことであった。これらの変動は、場合によっては、前立腺組織内における光線の分布に直接影響する組織組成の生物学的な相違及び短期治療反応によるものである。
PDTにおける線量測定で役割を担っているいくつかのパラメータには、重要な体積中におけるフルエンス率分布、感作体濃度、血流、温度及び組織酸素化が含まれている。これらのパラメータのうちのいくつかは知られているが、このような光線治療パラメータを制御し、且つ、調整するための方法については知られていない。
光線力学的治療の間、組織の光透過率が著しく小さくなることがあるが、これは、組織の平均血液含有量の増加及び組織脱酸素化によって説明することができる。最終的には、吸収が増加して光線の透過に影響を及ぼし、延いては治療体積を制限することになる。また、良好な治療結果を得るためには、PDT治療部位への良好な酸素供給が必要である。
PDTの間、針電極を使用して腫瘍酸素化が測定されるが、この酸素の腫瘍内における分布については知られていない。2〜3分程度の暗い時間間隔を有する照射分割法は、連続治療照射の場合の3倍の壊死をもたらし、暗い期間中における組織再酸素化によって説明されている効果をもたらすことが分かっている。最後に、感作体は、一重項酸素介在プロセスを介して光漂白するため、その蛍光レベルは、組織酸素化のインジケータと見なすことができる。
「PDTに関連するパラメータの測定」
以下は、PDTの異なるパラメータを直接又は間接的に測定するために使用することができる測定方法を記述したいくつかの実施例を示したものである。測定されたパラメータを使用して、PDT治療の間、ターゲット組織の状態が決定される。また、これらのパラメータは、場合によっては、光線力学的光線治療の間、治療パラメータをモニタし、且つ、調整するための計算方法における入力データとして有用である。これらの測定方法は、本明細書において説明されている方法に限定されない。本発明による計算方法の実施形態における入力データとして有用なパラメータを提供するために適した他の適切な任意の測定方法を実施することができる。
酸素化及び血流
酸素ルミネセンスのための適切な任意の技法を使用して、光線力学的治療における局部酸素濃度を決定することができる。
近赤外拡散反射分光学及び拡散相関分光学(DCS)を使用して、血球の濃度、酸素化及び流れ特性を同時に測定することができる。
レーザドップラー流量測定及びレーザドップラー画像化は、血流の非侵襲性連続評価のための一方法である。この技法は、組織を透過照射している単色光は、移動する血球による散乱のためにスペクトル的に広がる現象に基づいている。PDTにおけるレーザドップラー測定の使用については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ出願人のPCT/SE2006/050121により詳細に記載されている。
感作体濃度
組織中の感作体濃度を測定するための適切な任意の技法を使用することができる。感作体濃度は、蛍光分光学技法を使用して測定することができる。好ましい方法は、たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ所有者の米国特許第7037325号に記載されているように、治療部位の近くに配置された一組の光ファイバを使用することである。
フルエンス率分布
適切な任意の光学的方法を使用することができる。好ましい方法は、米国特許第7037325号に開示されているように、治療部位の近くに配置された一組の光ファイバを使用することである。
温度
適切な任意の光学的方法を使用して、光線力学的治療における組織の温度を決定することができる。光線力学的治療は、光熱治療と組み合わせることができる。治療すべき組織の温度は、たとえば米国特許第7037325号に記載されているように、たとえば、治療のために使用されるPDTシステムのファイバと同じファイバを使用してモニタすることができる。
本発明の一実施形態によれば、光線力学的光線治療の間、治療パラメータをモニタし、且つ、調整するための計算方法が提供される。測定されたPDTパラメータから光線線量分布が得られ、また、前記パラメータからの光線引渡し条件の修正を使用してPDT治療を制御することができる。
「システム及び装置」
たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ所有者のスウェーデン特許SE 503408に、本発明の実施形態を実施するためには場合によっては有用であるシステムが記載されている。
参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ出願人の国際公開第04100789号パンフレットに、本発明の実施形態を実施するために適した他のPDTシステムが開示されている。国際公開第04100789号パンフレットには、光スイッチを使用したPDTシステムが開示されている。
参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ出願人の国際公開第04101069号パンフレットに、本発明の実施形態を実施するために少なくとも部分的に適したさらに他のPDTシステムが開示されている。国際公開第04101069号パンフレットには、並進スイッチを使用したPDTシステムが開示されている。
参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ出願人の国際公開第04100761号パンフレットに、本発明の実施形態を実施するために適したさらに他のPDTシステムが開示されている。国際公開第04100761号パンフレットには、単なる機械的なスイッチング解決法及び単なる非機械的なスイッチング解決法を共働方式で使用したPDTシステムが開示されている。
参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の出願人と同じ出願人の国際公開第03041575号パンフレットに、本発明の実施形態を実施するために少なくとも部分的に適した他のPDTシステムが開示されている。国際公開第03041575号パンフレットには、回転スイッチを使用したPDTシステムが開示されている。
また、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているTulipのEP 1470837に開示されている上記PDTシステムも、本発明の実施形態を実施するために適している。
図1は、組織内光線力学的治療装置のセットアップを略図で示したものである。装置100は、治療光線を引き渡すことができ、また、光ファイバ105を介して治療をモニタすることができる。装置が治療モードにある間、治療光線ユニット102からの光線が分配モジュール104に案内され、且つ、患者ファイバの中へ導かれる。治療照射は、測定シーケンスを実行するために間欠的に遮断され、その間に、診断光源の各々からの光が個々の光ファイバの中に連続的に結合される。「診断」という用語は、ここでは、治療の進捗状況を記述するために使用されており、患者の状態の診断を意味しているわけではない。
診断光源を利用して、フルエンス率分布、感作体の濃度及び分布、組織の血液含有量並びに酸素化などのPDTパラメータに関連する測定値がモニタされる。適切な測定方法の実施例は、たとえば上で説明したような測定方法である。
装置及び方法のいくつかの実施形態では、治療光線の引渡し開始に先立って測定シーケンスを実行することができ、また、全治療期間の間の様々な時間間隔で測定シーケンスを実行することができるため、フルエンス率、感作体レベル及び組織酸素化などのPDTパラメータの一時的なプロファイルに関する情報が得られる。また、装置のいくつかの実施形態では、PDTパラメータのこれらの測定は、治療光線がPDTパラメータの診断測定を妨害することなくこのようなPDTパラメータ測定が可能である範囲への治療光線の引渡しと同時に実時間で実行することができる。
したがって、特定の実施形態を参照して本明細書において説明されている、実質的に実時間制御を有する手段によれば、治療すべき組織に、制御され、且つ、幾何学的に分布した方法で所望の総光線線量が引き渡されるまでPDTを制御することができる。
さらに、PDTを実質的に実時間で制御するために、図14ないし16を参照して以下で説明する方法で総PDT治療セッションを制御することも可能である。ここでは、光線力学的治療パラメータの閾値などの特定の属性に応じて、PDTセッションを中断し、再開し、制限し或いは中止することができる。たとえば、光感作物質の活性化が組織中の酸素の欠乏のために無効になるレベル未満まで組織酸素化が低下するとPDT治療が中断され、また、治療すべき組織に十分なレベルの酸素が再び出現するとPDT治療が再開される。これは、ファイバ−ファイバベース、つまり治療中の組織全体の体積に対して局部的に実行することも可能である。
PDT治療が開始されると、以下で説明するように実質的に実時間で制御された方法でターゲット組織を照射することによってPDTが開始される。
図14は、PDTを制御する方法の一実施形態を示す流れ図である。光線力学的治療パラメータの値は、使用されるすべての治療ファイバ又はそれらのうちの選択された治療ファイバ、たとえばPDTセッションにおけるPDT治療中の総組織体積の特定のサブ領域の1本又は複数本のファイバのいずれかへのPDT光線の引渡しの制御を基本として取得される。光線力学的治療パラメータの値は、絶対値であっても、或いはたとえばPDT治療セッションの開始時における初期絶対値の比率としての相対値であってもよい。
制御デバイスは、PDTシステムにおけるレギュレータ又は閾値化デバイスとして構成することができ、それにより、光線力学的治療パラメータの少なくとも1つの閾値を少なくとも一時的に超えた場合に、治療光線治療の前記引渡しを停止又は少なくし、さもなければ制限することができる。この実施形態では、少なくとも1つの閾値は、第1の閾値th、第2の閾値th及び第3の閾値thからなっており、第3の閾値thは第2の閾値thより小さく、また、第2の閾値thは第1の閾値thより小さい。第1の閾値th、第2の閾値th及び第3の閾値thは、所定の固定値であってもよい。別法としては、組織内PDTセッションの間、これらの閾値を動的に調整することも可能である。また、これらの値は、最初は固定された値にし、次に、セッションの間、動的に変化させることも可能である。閾値の動的適合は、光線力学的治療パラメータの値に応じて、その値を反復して変化させることを含んでもよい。たとえば、Pが第3の閾値に近く、且つ、第3の閾値より小さく、また、特定の定義済み時間の間、この状態が優勢である場合、治療光線の引渡しを再開するために第3の閾値をもっと小さくすることができる。
また、光線の引渡しを停止する代わりに、治療の最終段階の間、最大出力動作、たとえばtの近傍に設定することも可能である。
PDTセッション開始110後の第1のステップ110で、光線力学的治療パラメータの現在のPの値と第3の閾値thの値が比較される。Pの方がthより小さい場合、セッションを継続してもそれ以上治療が改善されることはないため、治療が中止される。これは、たとえば、すべての光感作体物質が使い果たされた場合がそうである。Pの方がthより大きい場合、この方法は、第2のステップ120を継続する。
第2のステップ120で、光線力学的治療パラメータの現在のPの値と第2の閾値thの値が比較される。Pの方がthより小さい場合、この方法はステップ160を継続し、Pが第1の閾値thより大きい十分なレベルに到達するか、或いはタイマが治療を停止するまでの間、治療光線の引渡しがスイッチオフされる。Pの方がthより大きい場合、この方法は、第3のステップ130を継続する。
第3のステップ130で、光線力学的治療パラメータの現在のPの値と第1の閾値thの値が比較される。Pの方がthより小さい場合、この方法はステップ160を継続する。Pの方がthより大きい場合、この方法は、第4のステップ140でPDTを継続する。
第4のステップ140で、引き渡された光線線量Dと、たとえばBlock−Cimminoアルゴリズムなどによって決定されるその定義済みレベルが比較される。Dが十分であると見なされる場合、ステップ190でPDT治療セッションが終了する。もっと多くの光線線量を組織に引き渡す必要がある場合、ステップ150で、Pが第2の閾値thより大きい間、治療光線の引渡しが継続される。Pが第2の閾値thより小さくなると、この方法はステップ160を継続する。別法としては、他の基準、たとえば時間制限或いは十分な光線線量の引渡しによってPDTセッションを終了することも可能である。
図15及び16は、それぞれ、図14に示されている方法の実際的なアプリケーションを示すタイミング図1500及び1600である。グラフの上の部分には、曲線1510及び1610で示されているように、時間に対するPがプロットされている。グラフの下の部分には、光線引渡しのオン又はオフを設定するための制御信号、或いは引渡しを制限するための制御信号が示されている。上記基準によれば、図15では、時間t、t及びtで治療光線1520がスイッチオフされ、或いは制限される。治療光線の引渡しは、時間t及びtで再開される。時間tで治療セッションが終了する。同様に、図16では、時間t、t、t10及びt12で治療光線1620がスイッチオフされ、或いは制限される。時間t、t及びt11で治療光線の引渡しが再開され、時間tで治療セッションが終了する。
値Pの範囲は、A:正規治療、B:引渡しを停止又は再開するための準備、C:治療の一時的な停止、及びD:治療セッションの中止、として識別することができる。
前記閾値化デバイスの代替又は追加として、値Pの前記範囲AないしDによって前記システムの動作範囲を識別し、且つ、制御するための範囲識別デバイスを前記PDTシステムの実施形態に提供することも可能である。
前記閾値化デバイスの代替又は追加として、微分決定デバイスを提供することも可能であり、それによりPの曲線の勾配及び方向を考慮することができ、たとえば、範囲Aにあり、また、曲線が負の勾配即ち範囲Bに向かう傾きを有している場合、それは、この効果を補償するためには高レベルの照射を維持し、さらには光線の強度をより強力にする必要があることを示している可能性があることを考慮することができる。もう1つの例は、Pが範囲Bにあり、また、勾配が正即ち曲線が範囲Aに向かって大きくなっている場合であり、再開される光線引渡しの起動をPDTシステムの中で準備することができる。
制御デバイスは、前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの少なくとも1つの属性に応じて少なくとも一時的に治療光線治療の引渡しを制限するように構成することができる。制限は、治療光線源のうちの1つ又は複数の出力パワーを小さくする、照射時間を短くする、等々によって実施することができる。制御デバイスは、治療光線治療の引渡しを完全に停止するのではなく、少なくとも一時的にその引渡しを抑制するように構成することができる。制御デバイスは、少なくとも一時的に治療光線治療の引渡しを停止するように構成することができる。制御デバイスは、前記光線力学的治療パラメータの実際の値と所望の値との間の差に基づくレギュレータであってもよい。
図14ないし16を参照して上で説明した実施形態の光線力学的治療パラメータは、治療すべき組織の酸素化であってもよい。代替又は追加として、この制御方法は、組織内の血流、前記組織の光減衰、前記組織内の感作体濃度、前記組織内の温度、等々などの異なる光線力学的治療パラメータに基づくことも可能である。
複数の光線力学的治療パラメータがPDTセッション全体を制御する場合、治療光線の引渡しをオン又はオフする設定基準は、第一検出ベースに基づくことになる。これは、前記制御ループのうちの1つが治療セッションを一時保留する信号を与える特定のパラメータに基づいていることを意味しており、このパラメータは、他のパラメータに無関係に再び治療セッションを再開することができるパラメータである。セッションが再開されると、すべての制御ループが同等の優先権を再度有することになる。
図2は、患者ファイバ間で測定された光透過率の一時的プロファイルの一例を示したものである。曲線210は、その初期値に正規化されている。測定値は、7mmのソース−検出器分離で得られたものである。ファイバは、検出される光が病変の中心を探針するよう、ターゲット体積の反対側の象限に置かれた。測定値は、光線の引渡しが進行する際に組織の減衰が大きくなる典型的な挙動を示している。したがって、この測定は、組織中におけるフルエンス率分布に関連している。
図3aの300は、635nmで放出するダイオードレーザを診断光源として使用した場合に記録された典型的なスペクトル310の一例を示したものである。図2と同様の図3bの320は、引き渡される光線線量を関数とした光透過率曲線330を示したものである。
図3cは、典型的な感作体物質即ちプロトポルフィリンIXの光漂白曲線350を示したもので、一人の患者内の隣接する患者ファイバ間で検出された正規化蛍光信号の平均が、引き渡される光線線量の関数としてプロットされている340。この治療データは、迅速な初期光漂白及びそれに続く緩やかな蛍光レベルの崩壊を示している。他の光感作体は他の光漂白特性を示すことができること、また、本発明の特定の実施形態による方法は、上で説明した感作体プロトポルフィリンIXに限定されないことに留意されたい。
図4は、近赤外波長領域における酸素飽和ヘモグロビン及び非酸素飽和ヘモグロビンの吸収特性のスペクトル解析によって評価された平均組織血液容積の変化400及び酸素化状態の変化420を示したものである。図4aのグラフ400を参照すると、治療中、血液容積が増加し、一方、図4bのグラフ420を参照すると、酸素飽和が減少していることが分かる。
「治療パラメータを決定する方法」
PDT治療パラメータを決定する目的は、所定の特定の光線線量を腫瘍中の個々のポイントに確実に引き渡すことである。組織の状態は、上で示したようにPDT治療中に変化する。したがって、フルエンス率分布も同じくPDTターゲット組織即ち腫瘍の個々のポイントで変化することになる。したがって、ターゲット線量を確実に到達させるためには、PDT治療パラメータを調整しなければならない。実施形態では、これは、放出される光パワーを調整するか、総光放出時間を調整するか、或いはその両方を調整することによって実施される。
計算方法の一実施形態についての以下の説明では、調整される治療パラメータは治療光線放出時間であるが、同じ原理を適用して治療光線パワーが調整される。それは、一般に、光パワーに光線放出時間を掛け合わせることによって光線線量が定義されることによるものである。
図5は、初期フルエンス率φから始まる組織中の一点に対する線量計画の一例を示したものである。ターゲット組織を治療するためのターゲット線量はDである。Dに到達するためには、tの光線放出時間が必要であり、したがってDt=φである。これは、図5に示されているグラフ500の長方形領域520の下側の面積を表している。この例では、フルエンス率510は、たとえば上で示した理由のためにPDT治療中に小さくなり、したがって治療時間tに到達した時点で組織中のポイントに引き渡される線量は、

にすぎない。したがって、ターゲット組織は、最初のターゲットDより少ない線量で治療されることになる。したがって、総線量がDに等しくなるよう、つまり曲線の下側の面積と長方形の下側の面積が同じ面積になるよう、延長治療時間tまで治療時間を延長しなければならない。
フルエンス率の変化を考慮するために、フルエンス率の新しい測定毎に総治療時間が更新される。この計算方法のいくつかの実施形態では、この更新は、実時間で実施され、つまり治療が進行している間、フルエンス率が測定される。治療光線パラメータは、測定されたPDT治療パラメータに基づいてフィードバックループの中で調整される。
フルエンス率は、たとえば、上で説明した方法のうちの任意の方法、若しくは追加又は代替として、同様又は等価の測定方法によって測定値から決定又は予測することができる。
一実施例では、方法を使用して、組織中を長い距離にわたって透過した光線の崩壊が記録され、且つ、光伝搬モデルに当てはめられる。使用可能なモデルは、A.J.Welch及びM.J.C.van GemertのOptical−Thermal Response of Laser−Irradiated Tissue (Plenum Press 1995)に記載されているような放射伝搬のための輸送方程式であり、より詳細には、拡散光伝搬の仮定に基づく近似即ち拡散方程式である。得られるデータは、式

を使用して評価される組織の実効減衰係数μeffである。上式で、指標iは、検出器ファイバiからの測定値を表しており、また、rは、光源から個々の検出器ファイバまでの距離である。iは1以上の整数であり、PDTシステムに使用されているファイバの数を表しており、たとえば6本、12本、18本又はそれ以上のファイバの数を表している。さらに、Pは、ファイバIのために使用されている治療光線源の光出力パワーを表しており、また、μは吸収係数である。したがって、μeff及び拡散方程式を使用することにより、組織内におけるフルエンス率を計算することができる。
もっと複雑な記述によれば、ターゲット線量のためのモデルは、フルエンス率だけではなく、感作体濃度及び/又は酸素濃度及び/又は血流などの他のPDT治療パラメータの関数として記述することができる。
酸素は光線力学的プロセスで消費されるため、有効な治療のためには、有効な治療をもたらすだけの十分な高濃度の酸素が存在している場合にのみ光線を放出することが重要である。したがって、組織がその酸素供給を補給することができる時間間隔の間、光線の放出を中断することができる。したがって、酸素の濃度及び分布の測定に基づいて、組織の酸素飽和が第1の所定の閾値未満であり、たとえば約40%である場合、治療光線の放出が中断される。酸素飽和が第2の所定の閾値を超え、たとえば約50%になると治療光線の放出を再開することになる。この方法によれば、酸素が十分な治療環境を提供することにより、利用可能な感作体物質を最適利用するための制御の提供が考慮された、より有効な治療が提供される。
光線力学的効果を得、且つ、PDT治療を成功させるためには、組織中における感作体物質の可用性が前提条件である。感作体物質は、治療中に退色する。PDT治療の制御方法の場合は、治療を終了させることができるのは、所定の少量の感作体物質がターゲット組織の中に残っている場合のみである。PDT治療のこの終了は、治療光線の放出を終了させることによって実施される。また、腫瘍中の感作体物質のリザーバを補給することをオペレータに表示することができ、また、PDT治療を再開することができる。
治療パラメータのこの調整の一実施形態の場合、測定された予測感作体濃度が所定の終了閾値未満であり、たとえば初期レベルの10%未満の場合、PDT治療が中断又は停止され、また、治療光線の放出が中止される。
上で説明した方法によれば、組織内のすべてのポイントにおける光線線量を考慮するために、多くのポイントの治療パラメータを同時に決定するための同時決定方法が提供される。また、この方法によれば、多くの光源に対する治療パラメータを同時に決定することも可能である。すべての腫瘍ポイントに対する治療パラメータを決定する際の複雑な問題は、過剰な光線線量へのその腫瘍の周囲の健康な組織の露出を回避しなければならないことである。したがってもう1つの問題は、十分な光線線量を腫瘍の中に到達させ、且つ、周囲の組織に対する線量を最少にするための適切な光線引渡し時間(即ち光パワー)を決定することである。
この場合も、光線放出時間がこの制御方法における治療パラメータとして使用されるが、光パワーにも同じ原理が適用される。言及されている問題は、所望の結果(光線線量)が分かり、また、この結果に到達するために必要な光線放出時間が探求される点でインバースプロブレムである。
離散的説明では、組織中のjの指標が付されている個々のポイントにおける線量は、
=<α,t>
で表すことができる。上式で、

であり、a は、ポイントjにおけるソースiによるフルエンス率を表しており、tは、ソースiの光線放出時間を表している。i個の光源が存在しており、iは1以上の整数である。
目的は、ターゲット腫瘍組織の個々のポイントで十分な光線線量D に到達し、且つ、ターゲット腫瘍組織の周囲の健康な組織中の個々のポイントにおける過剰線量D への到達を回避することである。この要求事項は、

で表される。Jは総離散ポイント数である。閾値線量D 及びD は、個々に定義することも、或いは組織中のポイントのブロックに対して定義することもできる。不等式の系が得られるが、これはこのような系を解くための方法によって数学的に解くことができる。
この実施形態では、ブロック作用に基づいて不等式の系を解くために、Cimminoの方法の変形形態が使用されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれているY.Censor等の「On the use of Cimmino’s simultaneous projections method for computing a solution of the inverse problem in radiation therapy treatment planning」、Inverse Problems 4、607 (1988)に、Cimminoの方法が記載されている。
ブロックとは、同じ閾値線量値を共有している組織中のポイントのブロックを意味している。Cimminoの方法は、個々の不等式によって表される超平面によって境界が付けられた個々の半空間に対して現在の予測が反映される反復アルゴリズムである。十分な収歛が到達すると、Cimminoの方法によって、個々のポイントに所望の光線線量を与えるための最適時間に近い光線放出時間の解が得られる。
本発明のこの記載された実施形態は、関連する組織体積中のあらゆるポイントを考慮することによってすべての光源に対する治療パラメータが決定される方法を開示している。治療パラメータの決定は、治療光線の放出を開始する前に実施することができ、次に、測定シーケンス毎に反復することにより、治療又は他の生理学的プロセスの結果として生じた組織状態の変化が反映された更新治療パラメータを提供することができる。
定義
PDT 光線力学的治療
Φ フルエンス率(W/m
ターゲット線量(J/m
周囲の健康な組織に対する閾値線量(J/m
t 時間(s)
ポイントjにおける光源iによるフルエンス率
i 光源に対する指標
j 組織中の離散ポイントに対する指標
I 総光源数
J 総離散組織ポイント数
μeff 実効減衰係数(l/m)
μ 吸収係数(l/m)
以下、実施形態のより特定の実施例について、前立腺治療を参照して説明する。
本発明の以下の実施形態は、治療線量測定が実時間で実施される組織内光線力学的治療(IPDT)を使用した前立腺癌の治療に関する。
組織内PDT(IPDT)は、限局性前立腺癌を治療するための根治的前立腺切除術、外部放射線及び化学治療の代替と見なされている。たとえば、光感作体物質Temoporfin(mTHPC、メソ−テトラ(ヒドロキシフェニル)クロリン)を使用して続発性及び原発性前立腺癌が治療されている。ベア−エンドファイバを利用して1治療部位当たり20Jないし100Jの光線線量が引き渡され、その結果、重大な治療誘導壊死がもたらされ、また、前立腺特化抗原(PSA)レベルが低下した。6つの原発性症例のうち、4つの症例に、一時的な刺激性排尿症状を含む極めて些細な合併症が併発し、一方、より重大な合併症には緊張性失禁が含まれており、一症例は、性機能の悪化であった。続発性症例の場合、PDT後の抗男性ホルモン治療が必要な14人の患者のうち、13人の患者に対して、最終的にはPSAが再び増加を開始し、腫瘍が再発した。著者によれば、より詳細な薬剤及び光線線量測定によって、ターゲット組織とその周囲の敏感な器官の間のより良好な弁別が可能になる。
IPDTは、血管をターゲットにした光感作体物質Tookad(WST09)を使用した再発性前立腺癌のために実行されている。フェーズI臨床試験の間、光線(100J/cmないし360J/cm)及び薬剤(2mg/kg以下)の両方の投与量エスカレーション研究が実施された。最大薬剤投与量で、病変の形成は主として総光線線量に依存することが観察された。さらに、Hahn等の「Preliminary results of interstitial motexafin lutetium−mediated PDT for prostate cancer」Laser Surg.Med.38(5)、427〜434(2006)には、光感作体物質モテキサフィンルテチウムを光フルエンス、薬剤レベル及び酸素分布のモニタリングと組み合わせて利用して再発性前立腺癌が治療されている。しかしながら、これらのパラメータは、単にモニタされたにすぎず、これらのパラメータを使用してIPDT自体を制御する方法については何ら示していない。
光感作体物質アミノレブリン酸(ALA)−PDTが調査され、その結果、PSAレベルが低下し、また、PDT後における失禁又は排尿障害は報告されていない。それだけではないが、とりわけ記載されている参考文献は、IPDTが、前立腺内に著しい組織壊死を誘導することができる比較的安全な治療モダリティであることを示している。
PDTによれば、コラーゲンなどの構造的結合組織が保持され、前立腺の完全性が維持されることが分かっている。理想的には、光線の線量測定を慎重に実施することにより、再発及び治療に関連する合併症を最小限にするべく、敏感な周囲の器官を節約しつつ前立腺全体をターゲットにすることができる。しかしながら、前立腺PDT線量測定に関連する複雑性の初期証拠を与えるものとして、前立腺組織に対する多くのPDT試験によれば、同様の薬剤及び光線線量が引き渡されているにもかかわらず、同じ患者間又は患者間で治療誘導壊死量が大きく変動することが報告されている。これらの効果は、部分的には、前立腺組織内における光線の分布に直接影響を及ぼす光線吸収係数及び光線散乱係数の患者間又は同じ患者間での変動によって説明することができる。さらに、血液容積及び組織酸素化状態の変化などのあらゆる治療誘導組織組成変動も、ターゲット組織中における光線レベルに影響を及ぼしている。
したがって、前立腺組織に対するPDT及びより一般的な意味の両方において、より正確で、且つ、個別化された実時間線量測定が必要である。PDT効果、たとえば光線フルエンス率、感作体分布及び組織酸素化並びに血流及び血液容積に関連するパラメータの前立腺生体内分光学測定に関する多くの報告書が存在している。このような研究は、前立腺組織に対するPDTに関連するプロセスについてますます多くの事柄を理解する大きな可能性を有しており、また、同じく個別化された治療線量測定及び実時間治療フィードバックを組み込むために臨床前立腺PDTを拡張する大きな可能性を有している。
前立腺組織に対するIPDTのための、光線線量閾値モデルに基づく治療フィードバックを使用した実時間線量測定モジュールを構成しているアルゴリズムについて説明する。前提条件は、治療光線の引渡しに利用することができ、且つ、治療が進行している間、組織の光学的特性、感作体濃度及び組織の酸素飽和をモニタリングするために利用することができる最大18本の細い光ファイバを備えた機器の開発である。
上で言及したように、光実効減衰係数を評価するために治療ファイバ間の光透過信号の実時間モニタリングを組み込んだ、IPDTのための装置が提供される。これらのデータが組織の幾何構造に関する情報と共に、個々のファイバの照射時間を予測するBlock−Cimmino最適化アルゴリズムに対する入力として使用される。したがって、測定、光実効減数係数の計算及びBlock−Cimmino最適化手順を反復することにより、治療セッションの間、ソースファイバ毎の照射時間を連続的に更新することができる。
有限要素法(FEM)を利用して、組織の光学的特性を一時的に、且つ、空間的に変化させるための現実に即した前立腺モデルの中で光透過信号が模擬される。模擬されたデータセットに基づいて、アルゴリズムの前立腺内における実効減衰係数の増加を追跡することができるその能力が検証される。さらに、Block−Cimminoアルゴリズム内における組織重要性重み付けを介して、ターゲット組織と、堆積する光線線量の点で危険にさらされる器官(OAR)との間を弁別する可能性が評価される。最後に、IPDT治療中に引き渡された光線線量の線量体積ヒストグラム(DVH)と模擬された吸収の増加が、治療フィードバックがある場合とない場合とで比較される。この方法によれば、組織吸収のあらゆる治療誘導変化に無関係に、ターゲット組織内における所定の特定の光線線量を確認するIPDT線量測定モデルに対する実行可能性が決定される。
「方法及びアルゴリズム」
本発明者等の実時間線量測定ソフトウェアの序文を提供すると、節Aでは、臨床治療手順並びにIPDT計装に関連するいくつかの技術的な詳細の概要が簡単に記述されている。節B、C、D及びEでは、それぞれ、三次元幾何構造を生成し、前立腺内におけるファイバ位置を計算し、光実効減衰係数を評価し、そして最後に個々のファイバの照射時間を計算するために使用される手順及びソフトウェアモジュールが記述されている。これらのソフトウェアモジュールの組合せが、いわゆる実時間線量測定モジュールを構成している。節Fでは、現実に即した前立腺幾何構造内における光線の分布を模擬するためのFEMの使用が記述されており、したがって実時間線量測定モジュールを構成しているアルゴリズムのための現実に即した試験データが提供されている。
A.治療手順
上で言及した、最大18本の光患者ファイバを利用したIPDT装置上で実行するべく、図6にその概要が示されている線量測定ソフトウェアからなるIPDT治療600が開発された。患者ファイバは、たとえば、治療光線を引き渡すための直径400μmのベア−エンド光ファイバであってもよい。治療光線は、光感作体Temoporfinの吸収帯域のうちの1つと整合するほぼ652nmの光線であってもよい。内部光学ユニットにより、機器は、治療モード(このモードの間、すべてのファイバが治療照射を放出する)と診断測定モード(このモードではその時に1本のファイバがアクティブになり、隣接する6本のファイバが透過する光を検出する)の間を切り換えることができる。検出ユニットは、630nmと840nmの間のスペクトル間隔をカバーする6つの分光計からなっている。
治療セッションは、前処置及び治療手順からなっており、泌尿器科専門医は、治療手順の間、グラフィカルユーザインタフェースによって導かれる。
最初に、ステップ(1)で、前立腺の超音波調査が実施され、ターゲット組織の幾何構造並びにその近傍のOARが評価される。泌尿器科専門医は、一組の6個ないし10個の超音波画像に、前立腺、尿道、直腸、上部括約筋、下部括約筋及び空洞性神経束の範囲を正確に線で描くことができる。次に、ステップ(2)で、組織の輪郭が、すべての器官を含んだ幾何構造の三次元ボクセル表現でパッチされる。患者の外科手術の準備が整うと、ステップ(3)で、ランダム探索アルゴリズムによって、復元された幾何構造内における最適に近いソースファイバ位置が計算される。
図7は、サンプル三次元幾何構造モデル720を1mmボクセル辺長で示したもので、ターゲット組織725即ち前立腺711と、尿道713、直腸715及び周囲の正常な組織からなるOAR、並びにソースファイバ位置730が含まれている。このワークに使用されている「試験」幾何構造を表しているこの幾何構造は、腺の体積が約27cmの患者から、節Cで記述されているアルゴリズムによって計算された位置に治療ファイバを使用して得られた8つの超音波画像に基づいて生成されたものである。
ステップ(4)で、治療ファイバとも呼ばれている光ファイバが、中空の鋼製の針を利用して所定の位置へ導かれる。ファイバの位置は、ランダム探索最適化アルゴリズムによって計算された一組の位置から若干逸脱することがあるため、この第4のステップの中で、最終的なファイバ位置を更新する機会が泌尿器科専門医に与えられる。ステップ(5)で、幾何構造及び実際のファイバ位置に関する情報がBlock−Cimmino最適化アルゴリズムの入力として使用され、必要な照射時間がすべてのソースファイバに対して予測される。
IPDTセッションには、前処置計画に続いて、ステップ(6)の反復測定シーケンス及びステップ(7)の治療シーケンスが含まれている。測定は、治療光線の引渡しを開始する前に実施され、また、治療光線の引渡しが開始された後の様々な時間間隔で実施される。測定シーケンスの直ぐ後のステップ(7)で、治療照射の引渡しが実行され、それと並行してステップ(8)で測定データが評価され、それにより前立腺の容量サブセット内における実効減衰係数が評価される。次に、ステップ(9)で、ファイバ照射時間を更新するためにBlock−Cimminoアルゴリズムが実行される。ステップ(6)ないし(9)は、Block−Cimminoアルゴリズムによって予測された残りの治療時間がゼロになるまで反復される。また、実施される、ステップ(8)及び(9)が実時間線量測定モジュールを構成しているスキームは、逐次評価による対話型線量測定(IDOSE)とも呼ばれている。
B.幾何構造モデル
幾何構造モデルは、ここでは前立腺であるターゲット器官と、危険にさらされる器官として、隣接する尿道、直腸、上部括約筋、下部括約筋及び空洞性神経束の三次元ボクセル表現である。三次元患者データセットの中で器官の位置を手動又は半自動で決定する場合、内科医は、6個ないし10個の超音波画像の中にたとえば5個ないし20個のポイントをマークし、その特定の断面に存在している異なる組織タイプの周囲に正確に線を描く。次に、これらのポイントが線形補間によって接続され、それにより接続された器官の輪郭が形成される。超音波調査から、横方向の画像が身体の上の方から下に向かって5mm毎に分割される。
組織の輪郭は、超音波断面間の領域に対して線形補間することができ、それにより3つのすべての寸法が1mmのボクセル辺長が得られる。充填技法を適用して、正確に線で描かれた輪郭内のボクセルに対する組織タイプが特定される。最初に、三次元マトリックス内のすべてのボクセルが、他のあらゆる組織タイプの輪郭を含んだボクセルを除き、正常組織に加えられる。次に、輪郭ポイントの個々のセットの中心が計算される。組織タイプ毎に以下の手順が実行される。最初に、現在の組織タイプの中心点がバッファの中に置かれる。次に、バッファ中の第1のポイントが抜き取られ、現在の組織タイプと同じ組織タイプに設定される。次に、その6つの接続された隣同士のその組織タイプが試験される。1つのポイントが現在の輪郭ポイントの組織タイプと同じ組織タイプに属していない場合、また、輪郭ポイントの他のセットにも属していない場合、そのポイントはバッファ中に置かれる。この手順は、バッファが空になるまで反復され、したがってその中心から外側に向かってすべての組織タイプが充填される。再現されるボクセルモデルは、60〜65ボクセルの典型的な辺長を有している。
C.ファイバ位置
最適ファイバ位置を見出すタスクは、ターゲット器官、ここでは前立腺内における光線フルエンス率の最大化として、また、治療すべきターゲット器官に隣接する、危険にさらされる器官(OAR)内における光線分布の最小化として、明確に系統立てて説明することができる。最適化アルゴリズムは、模擬アニーリングタイプアルゴリズムと同様の反復ランダム探索アルゴリズムである。最適ファイバ位置の探索は、前立腺内におけるソース位置のランダム構成を生成することによって初期化される。ベア−エンドファイバは等方性点光源としてモデル化され、ボクセルiにおけるソースによるボクセルjにおけるフルエンス率φijは、無限同次媒体中における拡散方程式に対する解析的な解によって近似される。

Pは光源効果を表しており、この例では0.15Wに設定されている。また、実効減衰係数は、

で与えられる。μ及びμ’は、それぞれ0.5cm−1及び9.7cm−1に設定された。個々のファイバは、反復毎に限られた長さだけ無作為の方向に移動された。
この移動は前立腺内のボクセルに限定され、1ボクセル当たり1本のソースファイバのみが許容される。ファイバの移動に引き続いて、構成の品質を評価するために適合値が計算される。
式(2)の第1の合計には、最小フルエンス率で前立腺ボクセルの25%が含まれている。ターゲット組織重み

は正であり、この特定の領域に光線を引き渡す際の適合値に建設的に寄与している。したがって式(2)の第2の合計には、最大フルエンス率を特徴とする、OAR即ち尿道、直腸、上部括約筋、下部括約筋及び空洞性神経束内のボクセルの25%が含まれている。対応する組織重みは上の表1に示されており、それぞれ

であり、それにより危険にさらされる器官内のあらゆるフルエンス率は総合適合関数値に罰則を与えている。したがって式(2)は、前立腺内における最小フルエンス率値の最大化を探求し、且つ、ターゲット組織外の最大フルエンス率値の最小化を探求している。
反復スキームの場合、新しいファイバ位置が受け入れられるのは、ファイバを移動させることによってより大きい適合関数値がもたらされる場合のみである。光線の分布は、早くても、ファイバの先端から

における拡散と見なすことができるため、得られるファイバ位置は、この距離だけ短くなった深さ座標を使用して提供される。
このタイプのランダム探索アルゴリズムは、全面的な最適条件を見出すことを必ずしも保証していない。しかしながら、この確率的移動により、この探索が局部的な最適条件から全面的な最適条件にたどりつく確率が大きくなる。現在の実施態様では、最大ステップサイズは、局部的最適条件を取り巻く能力を犠牲にすることにはなるが、解が最適条件に収斂することを保証するために3つのボクセルから1つのボクセルに漸減している。典型的な実行時間は、45分ないし60分程度であったが、代替又は将来的な計算ハードウェアの改善によって最短化することができる。
D.光学的特性
治療セッションの間に測定シーケンスが実行されるため、光透過信号から組織の光学的特性を評価するために使用されるスキームは、高速で、且つ、限られた計算コストを必要とするものであることが極めて重要である。測定は、すべて、ソース−検出器分離が10mmないし25mm程度の定常状態で実施され、拡散光伝搬であることが仮定されている。したがって吸収係数と散乱係数を分離する可能性は存在していない。その代わりに、評価スキームが、前立腺の体積全体にわたって一定の縮小散乱係数が維持されることを条件として、実効減衰係数μeffの定量化を目的としている。測定シーケンスの間、個々の個別ソースファイバとその6本の隣接するファイバの間の光透過信号がモニタされる。検出ファイバの数を6本に制限することにより、探針される組織の体積がソースファイバの近くの領域に限定される。透過信号は、ソースファイバ毎に逐次モニタされ、したがって局部化され、且つ、部分的に重畳した18個のサブ幾何構造が生成される。個々のサブ幾何構造内では、組織は均質であることが仮定されており、また、ファイバ特化μeffを特徴としている。さらに、組織内的に配置されるソースファイバを等方性点光源としてモデル化することにより、拡散方程式に対するGreen解を使用してフルエンス率を記述することができる。
ここで、φijは、rにおける点光源による位置rにおけるフルエンス率を表している。さらに、Pはファイバ出力パワーであり、また、実効減衰係数は、

で定義される。
φij及びφjiの両方が測定され、したがって12個の測定値を使用してファイバiのファイバ特化μeff(i)を評価することができる。理想的には、ソース−検出器分離|r−r|を掛け合わせたフルエンス率の対数は、|r−r|に対する一次多項式であり、勾配はμeffを表している。
ここで、記号法は、式(3)の記号法に対応している。ソースファイバ毎に線形適合が実施され、18個の異なる係数μeff(i)が得られる。この手順は、腺全体をソースファイバを中心とする18個のサブ幾何構造に離散化させる手順と見なすことができ、個々のサブ幾何構造は、均質で、無限に大きいことが仮定されており、また、ファイバ特化減衰係数を特徴としている。ファイバの位置は、たとえば、前立腺頂端からの距離が長くなるにつれて、ファイバの一部、たとえばファイバ1ないし9が腺の横方向の左側の葉の中に位置するように分類することができる。この実施例ではファイバ10ないし18である残りのファイバは、たとえば、頂端からの距離が短くなるにつれて腺の横方向の右側の葉の中に位置するように分類することができる。個々のソースファイバiに対して、光透過率を測定するために使用される6本の隣接するファイバは、i−3、...、i+3である。この方法によれば、尿道を透過する探針光が最少化される。したがって活性化光への望ましくない露光から尿道が保護され、延いては尿道内の光感作体物質の活性化が最小化される。光感作体は、静脈注射によって投薬されることがしばしばであり、したがって血流によって輸送され、身体全体に存在する。したがって、さもなければ探針光によって活性化されることになる毒性一重項酸素への不必要な露出から尿道が保護される。他のOARも、同様の方法で、それらの照射を回避することによってこの毒性負荷から保護することができる。この方法によれば、PDT治療の有効性が有利に改善される。
有効ではない測定値を排除するために、信号対雑音比(SNR)が十分に大きい透過信号のみを使用してμeff(i)が評価される。この実施例では、SNRは、648nmと656nmの間で合計された光透過率を検出器暗雑音の標準偏差(SD)で割った値として定義されている。また、必要なソース−検出器分離が十分に長い距離に及んでおり、頑丈な線形適合を可能にし、また、式(4)を妥当なものにしている。したがって、この実施態様の場合、μeff(i)を評価するために使用されるアルゴリズムには、SNR閾値並びに|r−r|の標準偏差(SD)に対する閾値を規定する必要がある。特定のソースファイバからのすべての透過信号が十分なSNR及び十分な範囲のソース−検出器分離を特徴としている場合、線形適合が実施され、且つ、計算された実効減衰係数がそのソースファイバに割り当てられる。雑音除去又はソース−検出器距離の過度の制限のいずれかのために有効な測定値の数が6個未満である場合、2本のソースファイバからの透過信号が結合され、線形適合に組み込まれる。これにより、事実上、解析されるサブ幾何構造の体積が膨張する。膨張したサブ幾何構造内の有効な測定値の数が依然として6個未満である場合、サブ幾何構造がさらに追加される。含まれているサブ幾何構造の最大数が18個である場合、すべての組織幾何構造が1つのユニットとして解析される。データを後処理する場合、評価された実効減衰係数が定義済みの範囲内に入っていることが確認され、定義済みの範囲内に入っていない場合、すべてのμeff(i)がデフォルト値に設定される。表2は、このソフトウェアモジュールの中で使用される特定のパラメータをリストにしたものである。
他の実施形態では、この実施例における数以外の他の数のファイバ及びサブ幾何構造を選択することができる。
E.照射時間
Cimmino最適化アルゴリズムを使用して放射線治療の治療を計画することができ、また、前立腺IPDT治療計画における光線ディフューザの位置、長さ及び強度を決定することができる。この実施形態では、I個の等方性点光源の個々の照射時間tを見出すインバースプロブレムのためにBlock−Cimmino最適化アルゴリズムが利用されている。このアルゴリズムは、治療ファイバi毎の照射時間を計算するために、組織の光学的特性及び組織の幾何構造に関する情報を受け取っている。最適化条件は、ターゲット組織、つまりこの実施形態では前立腺組織に、所定の閾値線量を超える光線線量を引き渡し、且つ、ここでは尿道、直腸及び周囲の正常組織として定義されているOARへの線量を最少化するための要求事項として表すことができる。したがって最適化問題は、フルエンスの不等式の以下の系、つまり、すべての組織ボクセル内において、照射時間tが掛け合わされたフルエンス率φ

を満足するものとして、明確に系統立てて説明することができる。

上式で、Jは組織ボクセル数であり、L及びUは、それぞれ、組織のタイプに特化された下位閾値線量及び上位閾値線量を表している。表3は、この実施例に使用されている閾値を示したものである。これらの閾値レベルは、臨床ワークから合理的に見出されたものである。φijは式(3)によって与えられ、個々のソースファイバは、節Dで説明した特定のμeff(i)を特徴としている。この実施例では、すべてのファイバに対して、0.15Wのファイバ出力パワーが仮定されている。他の実施形態では、他のファイバ出力を選択するか、或いは個々のファイバ毎に異なる出力パワーを選択することができる。フルエンス率分布を計算する場合、吸収係数及び縮小散乱係数が分離される。ここでは、μ’=8.7cm−2が設定され、また、μeff(i)からμa(i)が決定される。
問題に含まれている組織ボクセルの数が極めて多いため、ほとんどの場合、式(5)には実行可能な解が存在しないことがしばしばである。しかしながら、Cimmino最適化アルゴリズムは、最小強度実行可能解の近近似値に収斂する。この実施形態では、Censor等が略述しているブロック作用スキームが実施されており、個々のボクセルがその組織タイプに対応するブロックに帰属され、前立腺、尿道、直腸及び正常組織を区別している。このアルゴリズムは、I次元空間中の任意のポイントから始まる反復スキームに基づいている。非侵害制約は新しい解に影響を及ぼさないが、ボクセルは特定の範囲外の光線線量に遭遇し、式(5)によって定義される最適解により近い逐次代入をもたらす。式(6)及び(7)は、この手順を数学的に記述したものである。

であり、上式で

である。
対話は、解が収斂するか、或いは対話の回数が規定の最大数に到達すると停止する。λは、収斂速度を制御する緩和パラメータである。λは、初期収斂を改善するためにたとえば20に設定されるが、対話と対話の間で発振が生じる場合、このパラメータは連続的に小さくされる。個々の組織タイプ即ちブロックBに、許容された時間間隔外の光線線量の引渡しに関連する罰則を反映している特定の重みαが与えられる。これらの組織重みの合計は正規化されている。前立腺から遠く離れた正常な組織ボクセルに式(6)の反復に影響を及ぼさせないようにするために、最大光線線量に遭遇する特定の数の正常な組織ボクセルのみを含むことができる。この数は、前立腺の体積と同じ体積を有する球の表面のボクセルの数として計算することができる。表3は、この実施例に使用されている明確なα値を示したものである。
Block−Cimminoアルゴリズムによって、入力パラメータとして使用される特定のμeff(i)に基づいて個々のファイバの総照射時間が計算される。初回を除き、アルゴリズムを実行して、先行する1つ又は複数の治療シーケンスの間に既に完了したすべての治療セッションの分画が新たに計算された照射時間から控除される。出力は、したがって、現在のセットのμeff(i)に基づく残りの照射時間を構成している。すべてのμeff(i)が先行する測定シーケンスと比較して10%未満に変化するか、或いは最初の測定シーケンスの場合であれば、表2に示されているμeffのデフォルト値を利用している前処置計画に対して10%未満に変化すると、Block−Cimminoアルゴリズムは実行されない。その代わりに、先行する治療シーケンスの継続期間を控除することによって残りのファイバ照射時間が更新される。
Cimminoアルゴリズムは、線量体積ヒストグラム(DVH)制約を示す簡単な実施態様を許容しないが、得られるDVHを使用して光線線量分布がチェックされる。通常、DVHによって、特定の治療線量を受け取る組織分別体積に関する情報が提供される。ここでは、線量はフルエンスとして定義されており、同じく式(5)を参照されたい。tはBlock−Cimminoアルゴリズムによって計算され、また、φijは、図7に示されている幾何構造720内のFEMによってモデル化されている。これらのシミュレーションについては、節Fに記述されている。重要性重みαは、異なるOARの感度を反映し、且つ、これらの器官をターゲット組織から弁別するべく、実験によって調整することができる。この実施形態では、目的は、ターゲット組織の85%に、定義済み閾値を超える光線線量を引き渡し、且つ、直腸715を表しているボクセルのうちの最大25%にこの光線線量を許容することである。正常な組織725及び尿道713には線量制限は課されない。
F.光線分布のモデル化
実時間線量測定モジュールに現実に即した入力を提供するために、FEM(Multiphysics 3.3 R、Comsol AB、スウェーデン、ストックホルム)を使用して、図7に示されている幾何構造720内におけるフルエンス率分布φijをモデル化することができる。ターゲット器官及び危険にさらされる器官は、正常な組織を表す組織ブロックによって囲まれている。辺長が60mmであるこの実施例の場合、このブロックは、解に影響を及ぼさない境界効果のためには十分な大きさである。フルエンス率は、定常状態拡散方程式
−▽・(D▽φij)+μφij=S(r) i=1,...,18 (8)
を解くことによって決定される。
この実施例の場合、拡散係数D=[3(μ+μ’)]−1及び18個のソース項S(r)を構成しているベア−エンドファイバ730が、出力パワーが0.15Wの等方性点光源としてモデル化されている。部分現行境界条件は、境界

で実施された。
空気充填尿道をモデル化するために、Reff=0.493である前立腺−尿道界面を除き、すべての境界に対してReff=1である。式(8)は、18個のソースの各々によるフルエンス率分布を得るために、18回、つまり1本のソースファイバを交互にアクティブにして解かれる。詳細には、治療ファイバ間の光透過率を定量化するための手段として、隣接する6本のファイバの位置におけるフルエンス率が評価される。臨床設定の場合、実効減衰係数を評価するソフトウェアモジュールのための入力は、検出ユニット内の分光計からの18×6個の透過スペクトルからなっている。これらの分光計は、630nmないし840nmの波長間隔をカバーしており、一方、FEMシミュレーションが実施されたのは、Temoporfinmediated PDTの場合の治療波長である652nmの波長の光学的特性と整合するように選択された光学的特性を有する1つの波長に対してのみである。したがって、652nmを中心とするガウス関数を2nmのHWHM及びFEMシミュレーションからのフルエンス率によって与えられるピーク値で当てはめることにより、18×6個の全スペクトルが構築された。さらに、検出器暗雑音を示すために、標準偏差が最大透過信号の0.1%に等しい白色ガウス雑音が個々のスペクトルに加えられた。
FEMシミュレーションプロセスは、前立腺内における異なる光吸収レベルに対して実施された。表4は、シミュレーションに使用された光学的特性をリストにしたものである。シミュレーション毎に、それぞれμ及びμ’の10%及び5%のSDを白色ガウス雑音に加えることによって前立腺組織の光学的特性の空間変化がモデル化された。これらの雑音データは、幾何構造ボクセルモデル内の5番目のボクセル毎に生成され、且つ、それらの間のボクセルに対して線形補間された。この方法によれば、前立腺組織内に典型的に見出される光学的特性の空間変化を正しくモデル化することができる。したがってこれらのシミュレーションによって、実効減衰係数を評価するソフトウェアモジュールのための入力として使用される、治療ファイバ間の光透過率に関するデータが提供された。明確に定義された、空間的に変化する吸収係数及び散乱係数を組み込み、且つ、組織の非均質性を組み込む可能性は、組織影像中における実験データの代わりに、光透過率レベルに対するFEM模擬データを選択するための主な動機であった。
結果
以下の最初の2つの節は、それぞれ、ターゲット組織の光学的特性及び個々のファイバの照射時間の評価に関する結果を示したものである。それに続く節では、2つのソフトウェアモジュールが結合され、したがって、IDOSEモジュールとも呼ばれている、異なる模擬治療シナリオで試験され、且つ、検証される実時間線量測定モジュールが示されている。
光学的特性
前立腺内における5つの光減衰レベルに対するFEMによって模擬された光透過データが、実効減衰係数を評価するために開発されたソフトウェアモジュールのための入力として使用された。図8aは、前立腺711内における異なる吸収レベル800に対してモデル化されたデータセットから評価された個々のμeff(i)を示したものである。FEMを利用して、現実に即した前立腺幾何構造内における光透過信号に関するデータが提供された。ここでは、すべてのシミュレーションに対して、前立腺内においてμ’=8.7cm−1である。図8bでは、データは、18本のソースファイバに対して吸収レベル820毎に平均化されている。
ここでは、マーカ821及び誤差バー822は、それぞれ平均μeff及び±1SDを表している。ダッシュ線823は、前立腺内における真のμeffを示している。透過率の測定に対する非均質幾何構造の影響を調査するために、感度解析が実施された。吸収の非均質性を考慮すると、rにおけるボクセル内の吸収の変化即ちΔμa(k)による、rの点光源からrにおけるフルエンス率の変化即ちφijは、

で与えられる。
ここで、Gikは、式(3)で示されている、位置rにおける等方性点光源によるボクセルk内のフルエンス率のための拡散方程式に対するGreenの解である。Gkj及びGijも同様に定義され、Jはヤコビアンである。式(10)は、すべてのソース−検出器対に対するFEM−メッシュの中で計算された。透過信号がターゲット組織及び異なるOARを探針する範囲を定量化するために、ファイバ及び組織タイプ特化ヤコビアンが評価された。
は、幾何構造の中に含まれているすべての組織タイプを表しており、また、指標jは、隣接する検出ファイバに関係しており、この実施形態では6本の隣接する検出ファイバに関係している。
図9aは、治療ファイバ毎のヤコビアンの総和に対して正規化されたi、Bsを示すバープロット900である。完全性を期すために、評価されたμeffと真のμeffの間の相対誤差も組み込まれている。実効減衰係数の過小評価は、たとえば、とりわけ、尿道と、前立腺の周囲のうちのいずれかに近いファイバ間の光透過に影響を及ぼす、空気が充填された尿道の存在及び残りの器官内におけるより小さい総合減衰によって説明することができる。ほとんどのソースファイバに対して、評価されたμeffの大きな誤差は、尿道及び/又は正常な組織に対する高いJに対応している。
図9bは、ファイバ6、14及び17に対応するサブ幾何構造をモニタリングするためにz方向に合計されたJを示す略グラフ920である。ここでは、ファイバ6が主として前立腺組織を探針しており、したがって関連する評価済みμeffの誤差は小さい。一方、ファイバ14及び17も、周囲の正常な組織及び尿道を介して透過した光を検出しており、価値が小さい実効減衰係数の予測をもたらしている。
図9aから、ファイバ12は、尿道組織と同様のJを有しているにもかかわらず、ファイバ14よりはるかに小さい誤差と関連していることが分かる。より詳細な解析によれば、ソースファイバ14の場合、尿道を探針しているのは唯一の検出ファイバへの透過信号であり、一方、ソースファイバ12の場合、6本のすべての検出ファイバへの透過が狭い範囲を一様に尿道を探針していることを示している。したがって、μeff(i)を引き出すために実施された線形適合は、異なる誤差値を特徴としている。
探針される組織体積は組織の光学的特性で決まり、図9の場合、前立腺内ではμeff=3.7cm−1である。全く均質な媒体に対する模擬データの評価に際して、μeffは過小評価されていない。また、1と10の間のSNR閾値の変化による平均μeffに対する影響は無視することができることが分かった。
B.照射時間
直腸に対する重要性重みを変化させた後の予測照射時間及び引き渡される光線線量を研究することにより、危険にさらされる器官(OAR)に可変感度を課す可能性が調査された。一例として、図10aは、直腸に対する重要性重みが0.01の場合に引き渡される光線線量の線量体積ヒストグラム(DVH)1000を示したものである。残りの器官に対する重みは、表3に示されている値で一定に維持された。すべての計算に対して、ターゲット組織内ではμeff(i)=3.7cm−1である。Block−Cimmino最適化アルゴリズムによって予測された照射時間及びFEMによってモデル化されたフルエンス率に基づいてすべてのDVHが計算された。ダッシュ線は、このセットの重要性重みの場合、直腸の約43%が閾値光線線量に露出されることを示すために使用されている。以下では治療分画として参照されている対応する図は、前立腺組織の場合は98%であり、このセットの重要性重みの場合、ほとんど腺全体がターゲットにされることを示している。
次に、α(直腸)が1e−4と500の間で変更され、組織タイプ毎に治療分画が図10bにプロットされた1020。
α(直腸)>1の場合、ターゲット組織からより良好に直腸が弁別され、前立腺の治療分画は、依然として十分な大きさである。図10cは、α(直腸)=1e−4(白いバー)及び500(黒いバー)に対する個々のファイバの照射時間を示したものである1040。このプロットから、2つの観察を強調しておかなければならない。第1に、直腸により近いソースファイバ即ちファイバ2、6、12、13及び16は、直腸に対する感度が高くなるにつれてより短い照射時間を特徴としている。第2に、直腸から最も遠くに配置されたソースファイバ、つまり腺の前方部分に配置されたファイバ1、4、5、8、11、15、17及び18の照射時間は、直腸の重要性重みが重い場合ほど長くなっている。これらの効果は、理論的にはターゲット組織の可能な限り大きい分画として取り扱うことになる解に向かって常にBlock−Cimmino最適化アルゴリズムを導いている、前立腺に対する比較的重いαによって説明される。直腸に対する重要性重みが最も重い場合、ソースファイバの位置が最適ではない可能性が最も高くなり、したがって直腸からのファイバの隔たりが大きいほど、はるかに大量の光線線量の引渡しが強制される。これは、すべてのファイバの照射時間の合計にこの実施例で使用されている0.15W出力パワーを掛け合わせた865Jから1350Jまでのエネルギーとして定義されている、引き渡される総光エネルギーの著しい増加の説明を補足している。
最長照射時間によって決定される総治療時間は、重要性重みの変化にはそれほど左右されない。特定のμeffの場合、総治療時間は、主として幾何構造即ちターゲット組織のサイズ並びにソースの位置で決まる。等方性点光源からのフルエンス率の1/r exp(−μeff r)依存性のため、総治療時間は、腺の体積によって急激に長くなる。結果の残りの部分に対して、α(直腸)は5に固定されている。
図11a、1100及び11b、1120は、それぞれDVHに対する結果及び前立腺内における吸収係数を大きくする照射時間を示したものである。ここでは、μは、0.3cm−1(点線)、0.5cm−1(ダッシュ−点線)又は0.7cm−1(実線)の一定の値に設定され、μ’s=8.7cm−1であった。したがって、μeff(i)=2.8cm−1、3.7cm−1又は4.4cm−1がすべてのソースファイバに対するBlock−Cimmino最適化アルゴリズムのための入力として使用された。すべてのDVHには、フルエンス率に対するFEMモデル化データが利用されている。図11aのDVHは、直腸の若干の過剰治療並びに前立腺内におけるより高いレベルの光減衰に対する前立腺のより大きい治療分画を示したものである。これらの効果は、Block−Cimmino最適化アルゴリズムのこの実施態様に固有の無限均質媒体の前提によって説明される。第1に、FEMモデルに使用された前立腺の外側のより低い吸収レベル及び散乱レベルがBlock−Cimminoアルゴリズムに光の伝搬を過小評価させる。したがってターゲット組織とOARの間のμeffの差が大きいほど過剰治療が顕著になる。第2に、より高い吸収レベルに対する大きいターゲット組織治療分画は、拡散フルエンス率が点光源からの距離によってより急激に崩壊し、μeffが大きくなることによるものである。式(4)から引き出される式

から、治療された、つまり閾値を超える光線線量と、未治療、つまり閾値に満たない光線線量との間の移行ゾーン即ち領域は、実効減衰係数が大きいほどより狭くなることは明らかである。したがって、無限均質媒体の前提の下では、ターゲット組織とOARの間を弁別することは、理論的にはより簡単である。この効果は、ソース距離が長い場合にとりわけ顕著であり、Cimmino最適化アルゴリズムにその影響が及んで同じく前立腺の周囲がターゲットになる。要するにμが大きくなり、OARの過剰治療を犠牲にして前立腺のより良好なターゲッティングが得られる。
図11bは、ターゲット組織のより高いレベルの吸収を得るためにはより長い照射時間が必要であることを示したものである。μ=3cm−1及び0.7cm−1の場合、総光エネルギーはそれぞれ約420J及び1065Jである。吸収が増加すると、個々の照射時間の相対的な増加は、直腸の近くに置かれた、短い初期照射時間を特徴とするファイバが最も大きくなる。最も長い照射時間を特徴とするファイバは、前立腺の周辺の、直腸から遠く離れた領域に配置される。しかしながら、最長照射時間によって決定される治療時間は、最も低い吸収レベルから最も高い吸収レベルへ進行させる場合、90sしか長くならない。この効果は、等方性点光源からの距離と共に急激に崩壊するフルエンス率と相俟った、最小強度実行可能解の近近似値に収斂させるCimmino最適化アルゴリズムの能力によって説明することができる。治療体積を最適化する観点からすると、数本のソースファイバのみに負荷を担わせる代わりに、必要なより大量の光線線量をすべての治療ファイバの間で分配する方がより「費用有効的」である。また、可変μeff−レベルの場合、これには、治療される組織体積の空間シフトの導入が必然的に伴うことになる。
C.IDOSEモジュール
実際の治療手順の間、光透過データから実効減衰係数が評価され、個々のソースファイバの照射時間を予測するためにBlock−Cimmino最適化アルゴリズムのための入力として使用される。
この手順については節Aに記述されており、また、実時間治療フィードバックを前立腺組織に対する臨床IPDTに組み込む努力の一環として実施されている。この節では、IDOSEモジュールの性能つまり図16のステップ(8)及び(9)が、一時的不変量及び可変ターゲット組織光学的特性の両方を表示する治療シナリオで検証される。節「光学的特性」の場合と同様、FEMシミュレーションから得られた光透過信号が、ターゲット組織の光学的特性を評価するモジュールのための入力として利用された。得られたDVHは、IDOSEモジュールによって計算された総照射時間及びFEMによってモデル化されたフルエンス率分布に基づいて計算された。
図12aは、前立腺μeffを関数としてBlock−Cimmino最適化アルゴリズムによって予測された総光エネルギーを示したもので、この係数は、グラフ1200における全治療セッションを通して一定を維持することが仮定されている。ファイバの照射時間を合計し、それに0.15W出力パワーを掛け合わせることによって得られた総光エネルギーが、真即ちFEMシミュレーションに使用された実効減衰係数及び評価されたμeff(i)の両方に対して、それぞれ(菱形マーカ)1202及び(正方形マーカ)1204で示されている。このグラフは、より大きい総合吸収と共に、光エネルギーの劇的な増加、延いては総照射時間の劇的な延長を示している。
図8に既に示されているように、μeffの過小評価により、正方形マーカによって示されている総光エネルギーに対する要求が減少している。この効果は、μeff−レベルがより高い場合により顕著である。図12bのグラフ1220は、真のμeff=3.7cm−1の場合に引き渡される光線線量のDVHを比較したものである。ダッシュ線及び実線は、それぞれ真のμeff及び評価されたμeffに対応しており、光線の減衰係数を過小評価することによるより低い前立腺治療分画を示している。一方、残りの器官の治療分画は、μeff−評価に関連する誤差に対して、どちらかと言えば鈍感である。光線の減衰を過小評価することに起因する前立腺治療分画に対する影響は、ターゲット組織の重要性重みを重くすることによって小さくすることができる(データは示されていない)。
また、一時的可変μeffを表示する治療シナリオでIDOSEモジュールが検証された。これらの模擬治療セッションの場合、測定シーケンスは、現実に即した臨床治療手順に整合させるために、治療照射後の、0分後、2分後、4分後、9分後...に実施される。個々の測定シーケンスに引き続いて、FEMモデル化光透過信号からμeff(i)が評価され、Block−Cimminoアルゴリズムのための入力として使用される。
したがって、測定シーケンス毎に個々のファイバの照射時間が更新される。この手順は、Block−Cimminoモジュールによって予測された残りの治療時間がゼロになるまで反復される。
図13aの実線1311のグラフ1300は、時間依存μeffを示したものである。このような状況は、場合によっては、PDT治療の血管効果によって血流が制限されると徐々に減少する平均血液含有量の初期増加に対応している。グラフの陰影が施された領域は治療シーケンスを示している。ダッシュ線は、デフォルト実効減衰係数を表しており、図6の前処置計画即ちステップ(3)及び(5)は、このデフォルト実効減衰係数に基づいている。
図13bは、治療フィードバック、つまり前処置計画によって予測された照射時間がない場合に引き渡される光線線量の得られたDVH(ダッシュ線)と、光透過信号及び評価されたμeff(i)に基づく治療フィードバックがある場合に引き渡される光線線量の得られたDVH(実線)とを比較したものである1320。ターゲット組織の治療分画は、治療フィードバックがない場合(約91%)と比較すると、治療フィードバックがある場合の方が大きい(約98%)。
最後に、図13cは、治療フィードバックがない場合のファイバ照射時間(白いバー)及び治療フィードバックがある場合のファイバ照射時間(黒いバー)を示したものである1340。吸収が大きいほど総光エネルギーに対する要求が増加し、そのためにほとんどのファイバの照射時間が長くなっている。しかしながら、このフィードバックは、ソースファイバ10、14、16及び17に対してより短い照射時間を設定しており、図8aの場合と同様、これらのファイバのμeff−過小評価によって説明される1つの効果をもたらしている。
要約すると、IPDTのための治療手順のための方法及びシステムが、光線線量閾値モデルに基づく実時間治療モニタリング及びフィードバックを組み込んだ前立腺組織のための実施形態の中に提供される。ターゲット組織内における実効減衰係数を評価するために、治療ファイバ間の光透過信号を利用したアルゴリズムが実施された。次に、計算された減衰係数がBlock Cimmino最適化アルゴリズムのための入力として利用され、したがって個々のファイバの照射時間が更新される。全治療セッションの間、このような測定シーケンスを繰り返すことにより、引き渡される光線線量が個別化され、また、ターゲット組織内における光減衰の治療誘導変化が補償される。
実時間線量測定モジュールの性能を検証するために、FEMを利用して、可能な限り現実に即した前立腺モデル内における拡散光分布がモデル化された。使用されたモデル幾何構造には、空気が充填された尿道、前立腺の周囲の組織内におけるより低レベルの吸収及び散乱、並びに前立腺組織の光学的特性の局部変動が含まれている。さらに、FEMの使用は、個々の治療シナリオにおける予測照射時間からの真のDVHの評価には不可欠であった。
図8に明確に示されているように、μeffの増加を追跡することは可能であったが、このμeffの増加は終始一貫して過小評価された。この効果は、いくつかのソース−検出器ファイバ構成による透過信号が、同じく、より低いレベルの吸収又は散乱を特徴とする、空気が充填された周囲組織又は正常な周囲組織としてモデル化された尿道を探針したことによって説明された。空間解像分光学の方法には、透過した光線によって探針される組織体積全体にわたるあらゆる非均質性の影響を平均化する傾向がある。
これらの結果から引き出される1つの結論は、前立腺が十分に小さく、周囲の器官による拡散光分布への影響を許容していることである。空間解像分光学及び拡散光伝搬を利用してターゲット組織の光学的特性を評価する場合、これらの効果について十分に心得ておかなければならない。さらに、図12bのDVHから分かるように、μeffの過小評価は、前立腺の若干の過小治療の原因になっている。しかしながら、臨床上の立場からすると、前立腺全体の治療が本質的に期待されており、ターゲット組織に対する重要性重みを重くすることによって過小治療を抑制することが可能である。
カルシウム沈着及び局部血液滞留などの他の組織非均質性の存在は、μeffを評価するアルゴリズムに対するさらなる課題を構成している。ヘモグロビンによる強力な吸収のために、遮られたファイバへの光透過信号及び遮られたファイバからの光透過信号は、貧弱なSNRを特徴とすることになる。透過信号を包含するためのSNR閾値は、ファイバチップの前部に大量の血液を有するファイバを排除するべく調整することができる。1本のファイバからのデータを無視する場合、このアルゴリズムは、SNR閾値を調整する代わりに、μeff(i)を評価するためのより多くのディスタントファイバを備えており、それにより、より大きい体積にわたって光減衰のレベルを平均化し、いくつかの局部非均質性の存在に対して手順をより鈍感にしている。SNR閾値は、たとえば、拡張シミュレーション及び生体内臨床データによって最適化することができる。
所定の光線線量をターゲット組織に引き渡し、且つ、周囲の敏感な器官を節約することを要求された場合、個々のファイバの照射時間を解くためにBlock−Cimmino最適化アルゴリズムが使用される。
重要性重みαを調整してOARの相対感度が反映された。図10bから分かるように、直腸の重要性重みを重くすると、この器官内における光線線量が減少した。
このコンテキストにおいては、尿道は、導尿の一過性期間のため、とりわけ敏感な器官とは見なされなかった。
たとえばFEMをベースとするモデルと比較すると、φijのための解析的表現式を利用した場合に達成可能なより短い計算時間は、ここで略述されている実時間フィードバックスキームのためには最も重要である。
実効減衰係数の変化によるDVH及び照射時間に対する影響が図11で研究された。2倍を超える吸収係数にもかかわらず、前立腺の治療分画は相対的に一定の治療分画を維持し、Block−Cimminoアルゴリズムのある程度の頑丈性を示した。しかしながら、OARの治療分画は、前立腺内における吸収が大きいほど大きくなる。この過剰治療は、無限均質媒体の前提によるものであり、したがってターゲット組織の周囲の器官内における光の伝搬の過小評価によるものである。
実時間治療フィードバックの概念は、実時間線量測定モジュールを構成しているアルゴリズムを、模擬治療セッション上で、吸収を一時的に変化させて実行することによって検証された。ここでは、治療開始時における実効減衰係数は、生体内前立腺組織内で一般的に観察される実効減衰係数より著しく大きかったが、徐々に小さくなった。治療フィードバックがない場合、ターゲット組織の顕著な過小治療が注目された。一方、実時間フィードバックを可能にした後は、個々のファイバの照射時間を調整することによって、閾値線量を超える光線線量が90%を超えるターゲット組織ボクセルに引き渡された。
したがって、IPDT手順中に生じる実効減衰係数の変化を検出し、且つ、補償するIDOSEモジュールの能力が立証された。
図6の治療流れ図によって示されているように、測定された光透過信号の評価及び照射時間の更新は、治療シーケンスと並行して実施される。この手順は、総治療時間を制限するために実施されたものであるが、同じく、測定シーケンスと比較すると、照射時間の更新が1サイクルだけ遅れることを意味している。したがって、あり得ない事象ではあるが、治療セッションの終了時に光の減衰が著しく低下する場合に、いくつかの組織領域に若干の過剰治療が生じる可能性がある。
本明細書のコンテキストの中で記述されているソフトウェアモジュールは、IPDTのための臨床的に適合されたシステム上で実施され、また、前立腺組織に対する実施形態の中で実施される。IPDT装置は、グラフィカルユーザインタフェースと共に提供され、泌尿器科専門医は、図6に示されているすべての治療ステップ並びに前処置較正手順を通して、このグラフィカルユーザインタフェースによって導かれる。
さらに、実時間線量測定モジュールを構成しているソフトウェアパッケージは、高度な柔軟性を可能にしている。第1に、閾値線量を変更することによって光線線量エスカレーション研究を実施することができる。第2に、個々の組織の重要性重みを調整することにより、ある程度攻撃的な治療を容易に実現することができる。最後に、とりわけターゲットにされる必要のある組織領域に関するあらゆる事前知識を、それらの組織領域の個々の重要性重みを重くすることによってBlock−Cimminoアルゴリズムに組み込むことができる。
この実施形態には、光線線量のみに基づく線量測定モデルが利用されている。この単純なモデルは、臨床的に使用されることが最もしばしばであるが、広範囲にわたる研究により、同じく、ターゲット組織内における感作体濃度及び組織酸素化などのパラメータを含めることの重要性が立証されている。
また、IPDT装置は、光感作体物質濃度をモニタしており、たとえば、測定シーケンスの間、Temoporfin蛍光及び近赤外波長領域内の組織吸光度をモニタしている。
また、PDT線量モデルは、光感作体分布及びターゲット組織酸素飽和レベルを組み込むように拡張することも可能である。たとえば、蛍光及び近赤外透過信号を低解像度光拡散断層放射線写真と結合し、感作体及び組織酸素化レベルの空間分布を写像することができる。次に、これらのパラメータをBlock−Cimminoアルゴリズム中に重み付けし、たとえば、光感作体濃度が低い領域に対する治療光線の要求を増し、また、低酸素性組織体積内における治療を停止することができる。
要するに、IPDTのための実時間線量測定モジュールを構成する方法及びシステムが前立腺組織全体に対する一実施形態の中に提供される。18ファイバIPDT装置上で実施される線量測定ソフトウェアには、治療手順中における光減衰のモニタリング及び個々のファイバの照射時間の更新が含まれている。したがって、引き渡される光線線量を調整することにより、治療自体の間、組織光透過率の患者に固有の治療誘導変化を考慮することができる。現実に即した前立腺モデル内でFEMによって模擬された光線分布に関するデータを利用することにより、光の減衰レベルの上昇を追跡することができることが立証された。Block−Cimminoアルゴリズムは、組織の光学的な特性に無関係に、十分な大きさの前立腺体積がターゲットになるように照射時間を予測することを立証した。最後に、模擬治療セッションの間、組織光透過率を連続的にモニタし、且つ、照射時間を連続的に更新することにより、治療フィードバックがない場合に明らかである過小治療が回避される。
当業者には理解されるように、本発明は、デバイス、システム、方法又はコンピュータプログラム製品として具体化することができる。したがって本発明は、完全なハードウェア実施形態、ソフトウェア実施形態又はソフトウェア態様とハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形態を取ることができ、本明細書においては、これらはすべて一括して「回路」又は「モジュール」と呼ばれている。さらに、本発明は、コンピュータ使用可能プログラムコードが中に具体化されたコンピュータ使用可能記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態を取ることも可能である。ハードディスク、CD−ROM、光学記憶装置、インターネット又はイントラネットをサポートしている媒体などの伝送媒体、或いは磁気記憶装置を始めとする適切な任意のコンピュータ可読媒体を利用することができる。
本発明の実施形態は、本明細書においては、流れ図及び/ブロック図を参照して説明されている。図に示されているブロックのうちのいくつか又はすべてをコンピュータプログラム命令によって実施することができることは理解されよう。コンピュータのプロセッサ又は他のプログラマブルデータ処理装置を介して実行する命令が、流れ図及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックの中に明記されている機能/行為を実施するための手段を生成するよう、これらのコンピュータプログラム命令を汎用コンピュータのプロセッサ、専用コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置に提供してマシンを製造することができる。
また、これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読記憶装置に記憶されている命令が、流れ図及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックの中に明記されている機能/行為を実施する命令手段を始めとする製造物品を製造するよう、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置を特定の方法で機能するように導くことができるコンピュータ可読記憶装置に記憶することも可能である。また、コンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置にロードし、コンピュータ又は他のプログラマブル装置上で、コンピュータ又は他のプログラマブル装置上で実行する命令が、流れ図及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックの中に明記されている機能/行為を実施するためのステップを提供するよう、コンピュータが実施するプロセスを生成するための一連の動作ステップを実行させることも可能である。
線図に示されている機能/行為は、動作説明の中で示されている順序以外の順序で生じることがあることを理解されたい。たとえば、連続して示されている2つのブロックは、実際、実質的に同時に実行することができ、或いは場合によっては、必要な機能/行為に応じてこれらのブロックを逆の順序で実行することも可能である。いくつかの線図には、通信の主方向を示すために、通信経路上に矢印が含まれているが、図に示されている矢印とは逆方向の通信も可能であることを理解されたい。
以上、本発明について、特定の実施形態を参照して説明した。しかしながら、上で説明した以外の実施形態も本発明の範囲内で同様に可能である。ハードウェア又はソフトウェアが方法を実行する、上で説明した方法ステップとは異なる方法ステップを本発明の範囲内で提供することができる。本発明の異なる特徴及びステップを上で説明した組合せ以外の他の組合せで組み合わせることも可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。

Claims (22)

  1. 身体の組織に組織内光線力学的治療を提供するためのシステムであって、
    前記組織中の光感作体物質と相互作用する治療光線を前記組織に伝達するための少なくとも1本の光ファイバであって、その遠位端領域が前記組織中に挿入される、光ファイバと、
    前記光ファイバの前記遠位端領域における前記組織内光線力学的治療の少なくとも1つの光線力学的治療パラメータを評価するためのデバイスと、
    前記光線力学的治療パラメータの評価に応答して前記組織内光線力学的治療の前記治療光線の特性を修正するためのデバイスと、
    前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの少なくとも1つの属性に応じて、前記治療光線の前記伝達を少なくとも一時的に制限するようになされた制御デバイスと
    を備えており、
    前記制御デバイスが閾値デバイスであり、前記属性が前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの現在の値(P)に対する閾値であり、
    前記閾値が、第1の閾値(th1)、第2の閾値(th2)及び第3の閾値(th3)からなり、前記第3の閾値(th3)が前記第2の閾値(th2)より小さく、前記第2の閾値(th2)が前記第1の閾値(th1)より小さく、
    前記組織内光線力学的治療の間、前記第1の閾値(th1)、前記第2の閾値(th2)及び前記第3の閾値(th3)を動的に調整することができる、システム。
  2. 前記閾値デバイスが、前記治療光線の前記伝達を、完全に停止することなく少なくとも一時的に抑制するようになされた、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記閾値デバイスが、前記治療光線の前記伝達を少なくとも一時的に停止するようになされた、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記閾値デバイスが、前記光線力学的治療パラメータの実際の値と所望の値の間の差に基づくレギュレータである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
  5. 前記第1の閾値(th1)、前記第2の閾値(th2)及び前記第3の閾値(th3)が、それぞれ、前記少なくとも1つの光線力学的治療パラメータのうちの1つの所望の初期値又は測定値の一部である、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記閾値デバイスが、前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの前記値(P)が前記少なくとも1つの光線力学的治療パラメータの前記1つの前記第3の閾値(th3)未満である場合、前記治療光線の前記伝達を停止するようになされた、請求項5に記載のシステム。
  7. 前記少なくとも1つの光線力学的治療パラメータの前記1つが前記組織中における前記光感作体物質の濃度である、請求項6に記載のシステム。
  8. 前記第3の閾値が前記組織中における前記光感作体物質の初期濃度の定義済み部分である、請求項7に記載のシステム。
  9. 前記閾値デバイスが、前記光線力学的治療パラメータの前記1つの前記値(P)が前記第2の閾値(th2)未満で、且つ、前記第3の閾値(th3)より大きい場合、前記治療光線の前記伝達を少なくとも一時的に制限するようになされ、また、前記閾値デバイスが、次に、前記光線力学的治療パラメータの前記1つの前記値(P)が前記第3の閾値(th3)より大きい場合、前記治療光線の非制限の伝達動作を再開するようになされた、請求項1、5及び6のいずれか一項に記載のシステム。
  10. 前記光線力学的治療パラメータの前記1つの前記値(P)が前記第2の閾値(th2)未満になって前記治療光線の前記伝達が少なくとも一時的に停止されるとタイマを起動するようになされ、また、前記タイマが動的に調整可能な時間値を最終的に超えると前記治療光線の前記伝達を停止するようになされたタイマデバイスを備える、請求項9に記載のシステム。
  11. 前記光線力学的治療パラメータが、前記組織の状態又は前記組織中の光感作体物質の状態に関するパラメータである、請求項10に記載のシステム。
  12. 前記光線力学的治療パラメータが前記組織の実効減衰係数であり、
    前記光線力学的治療パラメータを評価するための前記デバイスが、前記治療中に、前記組織の実効減衰係数を評価するためのデバイスであり、
    前記治療光線の前記特性を修正するための前記デバイスが、前記組織の前記実効減衰係数の評価に応答して前記治療光線の前記特性を修正するためのデバイスである、
    請求項1又は11に記載のシステム。
  13. 前記組織内光線力学的治療のための少なくとも1つの治療光線放出源であって、前記少なくとも1本の光ファイバを介して前記治療光線を前記組織に提供するようになされた治療光線放出源と、
    光線線量及び/又は前記治療光線放出源からの前記治療光線の照射の一時的な放出を制御するためのデバイスと
    を備える、請求項11又は12に記載のシステム。
  14. 前記閾値デバイスが、
    少なくとも1つの決定光線放出源であって、組織部位内に挿入されるように適合され、且つ、組織状態又は感作体パラメータを決定するように適合された決定光線放出源と、
    測定されたパラメータから光線線量分布を計算し、且つ、前記パラメータから光線伝達条件の修正を計算するためのデバイスと
    を備え、前記少なくとも1つの決定光線放出源及び光線線量分布を計算するための前記デバイスが、前記パラメータのうちの少なくとも1つが所定のレベルに到達するまで前記決定及び計算を反復し、その後、前記光線力学的治療を少なくとも部分的に終了するように動作接続され、且つ、配置された、請求項1又は13に記載のシステム。
  15. 前記少なくとも1つの光線力学的治療パラメータが、光線フルエンス率分布、前記組織の実効減衰係数、前記組織の酸素化、前記組織の血流、前記組織の温度又は前記組織中の感作体濃度のリストに含まれ、当該システムが、
    前記少なくとも1つの光線力学的治療パラメータを測定するためのデバイス
    を備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
  16. 前記少なくとも1つの光線力学的治療パラメータが複数の前記光線力学的治療パラメータからなる、請求項13に記載のシステム。
  17. 光線フルエンス率分布と、前記治療のために前記治療光線放出源の治療光線がターンオンされている時間を掛け合わせた初期光パワーとから後者を計算するようになされた、光線線量分布を計算するためのデバイスを備える、請求項13又は16に記載のシステム。
  18. 前記光線力学的治療パラメータが前記組織の酸素化であり、
    前記閾値デバイスが、前記光線力学的治療パラメータの前記1つの前記値(P)が前記第2の閾値(th2)未満であり、且つ、前記第3の閾値(th3)より大きい場合、光線治療を少なくとも一時的に中断するか或いは抑制するようになされ、
    前記閾値デバイスが、次に組織酸素化が前記光線力学的治療パラメータの前記第1の閾値(th1)より大きくなると、前記光線治療を再開するようになされた、請求項1に記載のシステム。
  19. 前記治療中、組織の状態を決定するための計算デバイスを備え、且つ/又は
    前記組織内光線力学的治療の少なくとも1つの光線力学的治療パラメータを評価するための前記デバイスが、実際の総光線線量又は測定された総光線線量が前記光ファイバの前記遠位端で前記組織に伝達されると、前記光ファイバによる前記組織内光線力学的治療を停止するようになされ、且つ/又は
    前記組織と、前記組織と隣接する、堆積する光線線量の点で危険にさらされる器官との間を弁別するようになされたBlock−Cimminoアルゴリズム内における組織重要性重み付けのためのデバイスを備える、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシステム。
  20. コンピュータによって処理するためのコンピュータプログラムであって、
    身体の組織に組織内光線力学的治療を提供するためのシステムにおいて、被検者の光線力学的治療における光線治療を前記コンピュータに制御させ、且つ、調整させるためのコードセグメントを備え、前記システムが、前記コンピュータと、前記組織中の光感作体物質と相互作用する治療光線を前記組織に伝達するための少なくとも1本の光ファイバを備え、前記光ファイバが、その遠位端領域が前記組織中に挿入される、コンピュータプログラムにおいて、前記コードセグメントは、
    前記光ファイバの前記遠位端領域における前記組織内光線力学的治療の少なくとも1つの光線力学的治療パラメータを前記コンピュータに評価させるための第1のコードセグメントと、
    前記光線力学的治療パラメータの評価に応答して前記組織内光線力学的治療の前記治療光線の特性を前記コンピュータに修正させるための第2のコードセグメントと、
    前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの少なくとも1つの属性に応じて、前記治療光線の前記伝達を少なくとも一時的に前記コンピュータに制限させるための第3のコードセグメントであって、該第3のコードセグメントが閾値化セグメントであり、前記属性が前記光線力学的治療パラメータのうちの1つの現在の値(P)に対する閾値であり、前記閾値が、第1の閾値(th1)、第2の閾値(th2)及び第3の閾値(th3)からなり、前記第3の閾値(th3)が前記第2の閾値(th2)より小さく、前記第2の閾値(th2)が前記第1の閾値(th1)より小さく、前記組織内光線力学的治療の間、前記第1の閾値(th1)、前記第2の閾値(th2)及び前記第3の閾値(th3)が動的に調整可能である、第3のコードセグメントと
    を備えたコンピュータプログラム。
  21. コンピュータ可読媒体上に記憶された、請求項20に記載のコンピュータプログラム。
  22. 組織内光線力学的治療のための請求項20に記載のコンピュータプログラムを実行するように構成された医療ワークステーション。
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