JP5469569B2 - 電動車両用バッテリ - Google Patents

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Description

本発明は、電動車両用のバッテリに関し、特に、スイングアームを備えた電動車両に対してバッテリを配置する場合の固定構造に関する。
電気自動二輪車、燃料電池自動二輪車、ハイブリッド自動二輪車等の電動車両におけるバッテリの固定構造としては、例えば特許文献1に示されるように、スイングアームの一端を揺動軸に連結し、スイングアームの他端が後輪を支持し、スイングアームの他端側に後輪を駆動する電動モータを設置し、スイングアームの揺動軸近傍位置にバッテリを配置した構造が開示されている。
特開2008−221976号公報
特許文献1においては、スイングアームの揺動軸近傍位置にバッテリを配置することは記載されているものの、具体的にスイングアームに対してどのように固定するかについての開示はなく、揺動するスイングアームへのバッテリの固定手法については改善する余地が残されていた。
すなわち、動きがあるスイングアームに対してバッテリを固定する場合、固定に際して極力部品点数を少なくすることで、軽量化を図りながらコンパクトに搭載することが望まれていた。
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、電動車両のスイングアームにバッテリを固定する場合に、部品点数を減らして軽量化を図ることができる固定構造とした電動車両用バッテリを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、一端が揺動軸(19)に連結し他端が後輪(WR)を支持するスイングアーム(30)と、前記スイングアーム(30)の他端側に設置し前記後輪(WR)を駆動する電動モータ(M)とを備えた電動車両に対して、前記電動モータ(M)へ電力を供給するために装着する電動車両用バッテリであって、
前記スイングアーム(30)は、
前記スイングアーム(30)の揺動軸近傍に設けた収納空間(35)と、
前記収納空間内にバッテリを位置決めするガイド溝(44)とを備え、
前記収納空間内に位置決めされたバッテリ(56)をポッティング剤の介在により固定することでバッテリ(56)を前記スイングアーム(30)内に搭載することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1の電動車両用バッテリにおいて、前記バッテリ(56)は複数の方形板状のバッテリセルから構成され、前記収納空間(35)のガイド溝(62)をセル毎に設けることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の電動車両用バッテリにおいて、前記収納空間(35)に穿孔した貫通孔(38)aに塞栓(45)を嵌合し、収納空間内にポッティング剤を介在させた後に前記塞栓(45)を外すことで、前記バッテリ(56)を固定したポッティング剤によりバッテリ(56)の高圧圧力抜き用の逃がし通路を形成することを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリにおいて、前記スイングアーム(30)近傍位置には基板(50)が配置され、基板(50)は、主に前記電動モータ(M)を制御する制御基板(50a)又は、主にバッテリ(56)を充電する充電回路を有する発熱素子基板(50b)からなり、前記ポッティング剤で固定することを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項4の電動車両用バッテリにおいて、前記基板(50)は、前記スイングアーム(30)の側面又は後面に配置することを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5の電動車両用バッテリにおいて、前記基板(50)を前記バッテリ(56)に対して固定し、前記スイングアーム近傍位置に前記基板(50)を配置することを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項2の電動車両用バッテリにおいて、前記バッテリ(56)を構成する複数のバッテリセルは、長手方向を上下方向に向けて配置することを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1の電動車両用バッテリにおいて、前記ポッティング剤を樹脂としたことを特徴としている。
請求項9は、請求項8の電動車両用バッテリにおいて、前記樹脂を樹脂コーティングとし、バッテリ(56)を樹脂コーティングに対して圧入固定することを特徴としている。
請求項10は、請求項1の電動車両用バッテリにおいて、前記スイングアーム(30)の収納空間(35)は、上方に開口部を有して形成することを特徴としている。
請求項11は、請求項4の電動車両用バッテリにおいて、前記発熱素子基板(50b)は、前記制御基板(50a)より車体後方側で制御基板(50a)に固定されており、制御基板(50a)、発熱素子基板(50b)はポッティング剤により囲繞され、発熱素子基板(50b)の発熱部材の一部は、ポッティング剤より露出していることを特徴としている。
請求項12は、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリにおいて、前記バッテリ(56)は、1セルごとにパッキングされたラミネート型バッテリのセル集合体にて構成されていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、収納空間(35)内のガイド溝(44)により位置決めされたバッテリ(56)をポッティング剤の介在により固定することにより、バッテリ(56)を保持するための専用のケースを不要とし、スイングアーム(30)自体をバッテリ(56)の保持ケースとして活用することで、バッテリ(56)を確実にスイングアーム(30)へ固定しながらも部品点数の削減及び軽量化を行うことができる。
請求項2に記載の発明によれば、各ガイド溝(44)により各バッテリセルを固定することができる。
請求項3に記載の発明によれば、ポッティング剤を硬化させることでバッテリ(56)の高圧圧力抜き用の逃がし通路を形成することができる。
請求項4に記載の発明によれば、基板(50)を制御基板(50a)又は発熱素子基板(50b)で構成し、ポッティング剤で固定することで、基板(50)の専用固定部品を削減することができる。
請求項5に記載の発明によれば、基板(50)をスイングアーム(30)の側面又は後面に配置し、基板(50)に形成されるバッテリ(56)の関連部品を近接配置することで、配線等の部品点数を削減することができる。また、バッテリ(56)と電動モータ(M)との配線経路を短くすることができる。
請求項6に記載の発明によれば、基板(50)をバッテリ(56)に対して固定することで、基板(50)の専用固定部品の削減を図るとともに、スイングアーム近傍位置に基板(50)を確実に配置することができる。
請求項7に記載の発明によれば、バッテリ(56)を構成するバッテリセルの長手方向を上下方向に向けて配置可能とすることで、スイングアーム(30)の幅方向を短くすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、ポッティング剤を樹脂とすることでバッテリ(56)を軽量強固に固定することができる。
請求項9の記載の発明によれば、バッテリ(56)を樹脂コーティングに対して圧入させることで、樹脂コーティングが圧力を受けて隙間に満たされるので、バッテリを強固に固定することができる。
請求項10に記載の発明によれば、上方に収納空間(35)の開口を有する構成とすることで、バッテリの搭載性も向上し、また、従来のバッテリケースに相当する部分をスイングアーム(30)で代用することができ、専用部品の削減及び軽量化を行うことができる。
請求項11に記載の発明によれば、発熱素子基板(50b)の発熱部材の一部をポッティング剤より露出することで、放熱効果を向上させることができる。
請求項12に記載の発明によれば、セル集合体で構成されたラミネート型バッテリを使用することで、高いエネルギ密度や放熱性能の向上が期待できるほか、スイングアーム(30)への取付作業やバッテリの交換作業が容易になる。
本発明の電動車両用バッテリが搭載された電動二輪車の左側面図である。 本発明の電動車両用バッテリの実施形態の一例を示すもので、電動車両用バッテリが配置されたスイングアーム部分の左側面図である。 図2の電動車両用バッテリが配置されたスイングアーム部分の上面図である。 スイングアームの分解斜視図である。 ポッティング処理後の状態を示すスイングアームの上面図である。 電動二輪車に適用される電気系統の全体構成を示すブロック図である。 電動二輪車に適用される電気系統の充電器部分の構成を示すブロック図である。 本発明の電動車両用バッテリの実施形態の他の例を示すもので、電動車両用バッテリが配置されたスイングアーム部分の左側面図である。 図8の電動車両用バッテリが配置されたスイングアーム部分の上面図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動二輪車1の側面図である。電動二輪車1は、低床フロア16を有するスクータ型の鞍乗型車両であり、スイングアーム(ユニットスイング)30に収納された電動モータMによって後輪WRを駆動する。車体フレーム2の前部には、ステムシャフト(不図示)を回転自在に軸支するヘッドパイプ3が結合されている。ステムシャフトの上部には、ハンドルカバー11で覆われる操向ハンドル8が結合されており、一方の下部には、車軸7によって前輪WFを回動自在に軸支する左右一対のフロントフォーク6が結合されている。
車体フレーム2は、ヘッドパイプ3の後部から下方に延びるメインパイプ4と、該メインパイプ4の後端部に連結されて車体後部上方へ延びるリヤフレーム5とを備える。低床フロア16の下部に位置するメインパイプ4には、低床フロア16を支持するフロアフレーム15が取り付けられている。また、メインパイプ4とリヤフレーム5との結合部には、左右一対のピボットプレート17が取り付けられている。
スイングアーム30は、車幅方向左側のみにアーム部を有する片持ち式であり、ピボットプレート17に取り付けられたリンク18を貫通する揺動軸19を介して、車体フレーム2に揺動自在に軸支されている。スイングアーム30は、アルミ等の金属からなる一部中空構造体であり、車軸32の近傍に電動モータMが収納されると共に、電動モータMの車体前方には、制御装置としての基板50が配設されている。電動モータMに電力を供給するバッテリ56(図3参照)は、基板50の車幅方向右側に配設されている。
後輪WRは、車軸32によってスイングアーム30に回転自在に軸支されており、スイングアーム30の後端部は、リヤクッション26を介してリヤフレーム5に吊り下げられている。また、シート20の下部には、荷物入れスペースとなる収納ボックス21が、左右一対のリヤフレーム5に挟まれるように配設されている。
車体フレーム2のメインパイプ4は、車体前方側のフロントカウル13および車体後方側のレッグシールド12で覆われている。ハンドルカバー11の上部には、メータ装置9が配設されており、メータ装置9の車体前方側には前照灯10が取り付けられている。フロントフォーク6の上部には、前輪WFを覆うフロントフェンダ14が固定されている。
リヤフレーム5の車幅方向外側はシートカウル23で覆われており、シートカウル23の後端部には尾灯装置24が取り付けられている。尾灯装置24の上方には、リヤフレーム5に結合されたリヤキャリア22が突出しており、尾灯装置24の下方には、後輪WRの後方上方を覆うリヤフェンダ25が設けられている。
図2は、電動車両用バッテリを搭載するスイングアーム30の拡大側面図である。また、図3はスイングアーム30の上面図であり、図4は、スイングアーム30の分解斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。前記したように、スイングアーム30は、アルミ等の金属からなる一部中空構造体であり、後輪WRを車幅方向左側のアーム部39で支持する片持ち式とされる。スイングアーム30の車体前方側下部には、揺動軸19(図1参照)の貫通孔19aが形成された左右一対のピボットフランジ36が設けられている。
ピボットフランジ36の車体上方側には、複数のバッテリセル56が挿入される収納空間35が形成されており、この収納空間35の外殻部を形成する幅広ケース部38とアーム部39とは、湾曲部40を介して連続的に形成されている。収納空間35およびアーム部39の車幅方向左側には、基板50および電動モータMを一体的に覆う薄板状のスイングアームカバー57が取り付けられている。
アーム部39の後端部には、電動モータMの回転を減速する減速機が収納された減速機ケース33,41が取り付けられている。車軸32は、減速機ケース41から車幅方向右側に向けて突出しており、この車軸32の端部に、後輪WRのホイール34がナット32aによって固定されている。後輪WRにはチューブレスタイヤが使用され、ホイール34にはエアバルブ42が設けられている。また、減速機ケース33には、リヤクッション26(図1参照)を取り付けるための貫通孔26aが形成された取付フランジ37が設けられている。
スイングアーム30の一端側の揺動軸近傍には、内部に方形状の収納空間35が一体的に形成されている。収納空間35は、スイングアーム30を電動車両に装着した場合に、電動車両の側方側に収納空間35の開口側が位置し、この開口側からバッテリ56を挿入可能なようになっている。
本実施形態に係るバッテリ56は、複数のバッテリセルを接続することで所定の高電圧を得るようにしたモジュール構造を有する。板状のバッテリセル56は、その平面部を車体前後方向に指向させて積層された状態で、幅広ケース部38に形成された略直方体形状の収納空間35に収められる。これにより、重量物としてのバッテリ56がスイングアーム30の揺動軸19に近接配置されることとなり、スイングアーム30の揺動時の慣性モーメントを低減してスムーズな揺動動作が可能となる。また、各バッテリセルは、軟質のラミネートシートで1セル毎にパッキングされたラミネート型とされる。このラミネート型バッテリによれば、高いエネルギ密度や放熱性能の向上が期待できるほか、スイングアーム30への取付作業やバッテリの交換作業が容易になる。
本実施形態に係る制御装置としての基板50は、バッテリ56の車幅方向左側に近接配設されている。基板50は、制御基板50aと発熱素子基板50bとアルミ基板50cとからなり、それぞれの平面部が車幅方向に指向するように配置されている。制御基板50aは、バッテリ56の車幅方向左側に近接配置されており、発熱素子基板50bは、制御基板50aの車体後方側に連結されている。すなわち、図5に示されるように、発熱素子基板(50b)は、制御基板(50a)より車体後方側で制御基板(50a)に固定されている。また、アルミ基板50cは、バッテリ56の車幅方向左側に近接配置されている。
バッテリ56とアルミ基板50cとの間には、所定の厚みを有するスポンジラバー501が配設されている。スポンジラバー501には、各バッテリセルの図示左端部に設けられた板状端子を差し込むための複数のスリットが形成されている。板状端子501を各スリットに挿入することで、板状端子の位置が規定されることとなる。また、スポンジラバー500によれば、ラバー性のスポンジ内にポッティング剤が浸潤することがなく、結果、後述するポッティング処理時のポッティング剤59の使用量を低減して、スイングアーム30の軽量化を図ることができる。アルミ基板50cは、このスポンジラバー500に近接配置されている。
制御基板50aには、主に信号素子や半導体(FET)等の熱容量が小さい素子が実装されている。これに対し、発熱素子基板50bには、サーミスタ51、充電器用の入出力フィルタ群52、充電器力率改善用コンデンサ(PFC回路)53、充電器DC変換用コンデンサ(AC−DCトランス)54、各種トランス群(DC−DCトランス等)55等の発熱量が大きな素子、すなわち、発熱素子が実装されている。そして、アルミ基板50cには、発熱基板50bに実装される発熱素子に比して発熱量の小さな半導体素子等が配設されている。
このように、発熱量の大きい発熱素子のみを集中配置した発熱素子基板50bを設けることで、発熱素子の発熱が他の素子へ与える熱負荷を低減することが可能となる。また、発熱素子の配設位置と他の制御素子との配設位置を分けたことにより、ピボットフランジ39および貫通孔19a等のレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
バッテリ56を構成する各バッテリセルは、電動モータMを制御する制御基板50aに対してそれぞれ固定され、制御基板50aがスイングアーム近傍位置に配置するように構成されている。
制御基板50aの回路と各バッテリセルとは電気的に接続されることで、バッテリ56への充電や、バッテリ56からの電圧が制御基板50aに供給されて電動モータMの駆動を制御するようになっている。
また、制御基板50aの車体後方側に発熱素子基板50bを配置することにより、車体進行方向の上流側に位置する制御基板50aに発熱素子の熱影響が及ぶことを防ぐことができる。さらに、バッテリ56の車幅方向外側に制御基板50aが配置されることで、車幅方向の厚みを小さくできる。そして、発熱基板50bは、車体側面視で後輪WRとオーバーラップする位置に配設されているので、バッテリ56と電動モータMとの間に形成されるスペースを有効活用して発熱素子を配設することができ、スイングアーム長が長くなりすぎることを防止できる。
また、図4に示すように、バッテリ56は、車体前後方向に所定枚数が積層されることにより、その長手方向が車幅方向に指向する略直方体形状をなして、幅広ケース部38の収納空間35に収納される。収納空間35の内面43には、板状の各バッテリセルをそれぞれ所定位置に収めるためのガイド溝44が形成されている。
ガイド溝44は、収納空間35内の上面及び下面に、バッテリ56の挿入方向に沿って各バッテリセルに対応する複数の溝部を形成することにより、バッテリ56を構成する各バッテリセルを収納するに際して、各セル(セル毎)の側面部がガイド溝44に嵌合して位置が固定可能なようになっている。ガイド溝44を設けることで、セル保持用の専用部品の削減、及び、全体をコンパクトに構成することができる。
幅広ケース部38には、塞栓45を嵌合させる貫通孔38aが形成されている。一方、バッテリ56と基板50とを車体前方で連結する連結板46には、塞栓45が嵌合する貫通孔47が形成されている。この塞栓45および貫通孔38a,47は、スイングアーム30の組立時に行われる「樹脂ポッティング処理」において使用される。このポッティング処理は、バッテリ56および基板50をスイングアーム30に対して物理的に固定すると共に、基板50の絶縁および防振を図り、さらに各部の放熱性を高めるものである。
ポッティング処理は、幅広ケース部38にバッテリ56および基板50を挿入し、貫通孔38a,47に塞栓47を嵌合することによって位置決めを行った後、幅広ケース38の開口部を上方に向けて、時間の経過により硬化する液状樹脂によるポッティング剤59をバッテリ56の周囲に流し込むことで行われる。ポッティング剤59は、図5に示すように、制御基板50aおよびアルミ基板50cを覆うと共に、発熱基板50bに実装されたコンデンサ53や各種トランス群55等の実装面側の一部を覆うように注入される。ポッティング剤59は、バッテリ56等の放熱性を高める機能も有する。
すなわち、このポッティング処理により、制御基板(50a)、発熱素子基板(50b)はポッティング剤により囲繞され、発熱素子基板(50b)に形成された発熱部材(コンデンサ53や各種トランス群55等)の一部(上側部分)は、ポッティング剤より露出するようにしている。
そして、ポッティング剤59が硬化した後に塞栓45を除去すると、この塞栓45のあった位置に幅広ケース部38の内外を連通する連通孔が形成される。この連通孔によれば、バッテリ56からガスが排出されても、このガスがスムーズに外部へ排出されることとなり、スイングアーム30内の圧力上昇を防ぐことができる。
すなわち、高温となったバッテリの雰囲気温度が上昇した場合の空気圧力(高圧圧力抜き用)を外部に導く高圧圧力抜き用の逃がし通路をポッティング剤で形成することができ、逃がし通路形成のための専用部材を削減することができる。
収納空間35内に周囲から流し込まれたポッティング剤は、収納空間35内に収納されたバッテリ56の空間周囲に充填され、少なくともセル上部の制御基板50aとの連結部分を含む収納空間35内の空間周囲にポッティング剤が存在する状態で硬化することにより、ポッティング剤の介在により収納空間35に対してバッテリ56の位置が固定される。この状態で収納空間35の開口側に蓋体となるスイングアームカバー57を被せる。
この構造により、収納空間35内に位置決めされたバッテリ56をポッティング剤の介在により固定することで、バッテリ56をスイングアーム30内に一体的に搭載することができる。また、制御基板50aをバッテリ(各バッテリセル)56とともにポッティング固定を行うことで、専用固定部品を削減することができる。
ポッティング剤としては、バッテリ56を軽量強固に固定するため、例えば樹脂を使用することができる。ポッティング剤の量は、必ずしもバッテリセルの周囲空間の全ての部分に充填される必要はなく、バッテリセルの周囲空間の1/3以上の隙間を充填する程度であればよい。これは収納空間35内で、各バッテリセルの位置を確実に固定させるために十分な量であり、過剰充填を防止し省エネ化を図るためである。
上述の例では、収納空間35内にバッテリ56を挿入配置した後に、樹脂であるポッティング剤を流し込むようにしたが、収納空間35内に予め適量の樹脂コーティングを入れておき、バッテリ56を樹脂コーティングに対して圧入させ、樹脂コーティングが空間に圧入されてその後に樹脂コーティングが硬化することで、収納空間35内にバッテリ56を固定するようにしてもよい。
バッテリ56の各バッテリセルを樹脂コーティングに対して圧入させることで、樹脂コーティングが圧力を受けて隙間に満たされるので、バッテリを強固に固定することができる。
上述の例では、バッテリ56を構成する複数のバッテリセルは、バッテリ56の挿入方向に長い長方形状のセルとしたが、バッテリセルの長手方向をスイングアーム30の上下方向に向けて配置可能なように収納空間35の形状を構成してもよい。
この場合、スイングアーム30の幅方向を短くすることができ、スイングアーム30の基本寸法に対して特に幅方向で大きくならないように配置することができる。
図6および図7は、電動二輪車1に適用される電気系統の構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。図7は充電器のみの構成回路を示し、図6はそれ以外の全体構成を示している。図6,7では、制御基板50aに実装されている素子を「破線」で、アルミ基板50cに実装されている素子を「一点鎖線」で、発熱素子基板50bに実装されている素子を「実線」でそれぞれ示している。
制御基板50aには、制御信号用の小電流が流れる素子が実装される。これらの素子はほとんど発熱せず、制御基板50aはガラスエポキシ基板によって形成されている。また、アルミ基板50cには、主に、大電流が流れると共に自己放熱ができない素子が実装される。これらの電子部品は、例えば、半導体素子(FET、ダイオード)、抵抗、フィルムコンデンサ等であり、熱伝導性の高いアルミ基板50cに実装されることにより放熱性が高められる。さらに、発熱素子基板50bには、主に、大電流が流れると共に自己放熱ができる大型の電子部品が実装される。これらの電子部品は、例えば、インダクタ、トランス、電解コンデンサ等であり、発熱素子基板50bをバッテリ熱の影響を受けにくい位置に配設することで、発熱性の向上が図られている。
なお、図6,7のブロック図において、発熱素子基板50cに実装されるのは、充電器200の入力フィルタ209および出力フィルタ201(前記入出力フィルタ群52に相当)、PFC回路207(前記充電器力率改善用コンデンサ53に相当)、AC−DCトランス204(前記充電器DC変換用コンデンサ54に相当)、DC−DC部106のDC−DCトランス108(各種トランス群55に相当)および出力フィルタ110となる。
図6を参照して、リチウム・イオンのバッテリ56は、コンタクタ104を介してインバータ123の入力側に電気的に接続され、インバータ123の出力側は、三相交流ラインによって電動モータMに接続されている。電磁力で動作する機械的接点によりオン・オフ制御されるコンタクタ104には、供給電流の急な立ち上がりを防ぐプリチャージリレー105が並列接続されている。
BMU(バッテリ・マネージメント・ユニット)100には、バッテリ56の電圧や温度等の監視用回路(ASIC)101、バッテリセルの容量バラツキを補正するためのセルバランス放電部102およびこれらを制御するコントローラ103が含まれる。
BMU100内のコントローラ103と、インバータ123を制御する制御装置としてのコントローラ122との間には、常時系統116、制御系統117、メインスイッチ系統118、CAN通信119の各ラインが配設されている。また、BMU100のコントローラ103からは過充電のアラート信号120が発信され、インバータ123のコントローラ122からはコンタクタ制御信号121が発信される。
インバータ123のコントローラ122には、電動モータMの回転角度を検知するアングルセンサ124、乗員のスロットル操作量を検知するスロットルセンサ125、シート20に着座しているか否かを検知するシートSW(スイッチ)126、電動車両1のサイドスタンド(不図示)が格納されているか否かを検知するサイドスタンドSW127、電動車両の傾斜角(バンク角)を検知するバンクアングルセンサ129からのセンサ信号が入力される。警報装置としてのブザー128は、バッテリ56の過放電状態等が検知された際にコントローラ122からの作動信号に応じて作動する。
常時系統116は、バッテリ56から供給される大電流を制御用の電流に変換するDCDC部106に接続されている。DCDC部106には、1次側駆動部107、DC−DCトランス108、出力整流回路109、出力フィルタ110、前記1次側駆動部107にPWM信号を供給する1次側駆動IC113、前記出力整流回路109にPWM信号を供給する2次側駆動IC114が含まれる。1次側駆動IC113には、コントローラ122から起動信号115が供給される。また、常時系統116には、盗難防止アラームユニット133およびメインSW136の一端側が接続される。
制御系統117は、インバータ123のコントローラ122に接続されている。制御系統117には、盗難防止アラームユニット133の作動表示灯としてのメータインジケータ132の一端が接続される。また、メータインジケータ133には車速を検知するスピードセンサが接続されており、メータインジケータ133は車速が所定値を超えた際に速度警告灯として機能するように構成されている。
メインSW系統118には、ウインカ装置等の灯火器130、ヘッドライト(H/L)10、バッテリ冷却用ファン等の一般電装131が接続されている。メインSW系統118の端部は、メインSW136がオフにされても所定条件下でヘッドライト10等の作動を可能とするオートパワーオフリレー135に接続されている。
図7を参照して、充電器200には、バッテリ56に接続される直流電流の入出力ライン(A,B)と、商用交流電源等に接続されるACプラグ215とが接続される。充電器209には、入力フィルタ209、ブリッジダイオード208、力率改善回路としてのPFC回路207、1次側駆動部206、AC−DCトランス204、出力整流回路203、出力フィルタ201が含まれる。1次側駆動部206とAC−DCトランス204との間に配設される過電流検出回路212の信号は、PFC−PWM駆動IC213に入力され、一方、出力フィルタ201に接続された電圧検出回路202の信号は、フォトカプラ205を介してPFC−PWM駆動IC213に入力される。PFC回路207および1次側駆動部206は、PFC−PWM駆動IC213から出力されるPWM信号210,214によってそれぞれ駆動される。PFC−PWM駆動IC213には、インバータ123のコントローラ122からの起動信号214(C)が入力される。
図8及び図9は、本発明の他の実施形態の一例を示すものである。図8及び図9において、図2及び図3と同一構成を採る部分については同一符号を付している。
すなわち、図2及び図3の電動車両用バッテリの例では、収納空間35内にバッテリ56を側方から挿入配置することで、基板50をスイングアーム30の側面に配置するように構成したが、図8及び図9の例では、収納空間35の開口側(開口部)を上面若しくは前面(前輪WF側)に配置させることで、バッテリ56を上面側から若しくは前面側から挿入配置可能とし、基板50を後面に配置するようにしている。そして、バッテリ56において、長方形状のバッテリセルの長手方向が前後に長くなるようにすることで、スイングアーム30の幅方向が短くなるように配置することができる。
この構成によれば、基板50を収納空間35の最も後面に配置できるので、電力モータMの関連部品を極力近接配置することで、配線等の部品点数の削減を行うことができ、また、バッテリ56と電動モータMとの配線経路を短くできる。
また、電動車両の上面側に収納空間35の開口側を位置させ、この開口側からバッテリ56を挿入可能なように構成した場合、従来から使用される通常のバッテリケースは上方から挿入される形状となっているので、上方に収納空間35の開口部を有する構成とすることで、バッテリの搭載性も向上し、また、従来のバッテリケースに相当する部分をスイングアームで代用することができ、部品点数の削減及び軽量化に貢献することができる。
上述した電動車両用バッテリの構成によれば、バッテリ56を保持するための専用のケースを不要とし、スイングアーム30自体をバッテリ56の保持ケースとして活用することで、バッテリ56を確実にスイングアーム30へ固定しながらも部品点数の削減及び軽量化を行うことができる。
重量物であるバッテリ56を後から組み込める構造としたので、車両組立性の向上を図りつつ、バッテリ56の形状に合わせて部分的にスイングアーム30を膨出させる必要も無いことから、部品点数の削減、軽量化に貢献しながらバッテリを確実にスイングアーム30に固定することができる。
バッテリ56をスイングアーム30に直接固定することで、スイングアーム30を放熱体として使用可能となるので、バッテリ56の冷却効果を向上させることができる。
また、バッテリ56の搭載構造を簡略化したことで、バッテリユニット全体をコンパクトにでき、電装部品の配置等、他の構成に対する設計の自由度を向上できる。
1…電動二輪車、 2…車体フレーム、 8…操向ハンドル、 19…揺動軸、 30…スイングアーム、 32…車軸、 35…収納空間、 38…幅広ケース部、 38a…貫通孔、 39…アーム部、 40…湾曲部、 44…ガイド溝、 45…塞栓、 50…基板(制御装置)、 50a…制御基板、 50b…発熱素子基板、 50c…アルミ基板、 56…バッテリ、 57…スイングアームカバー、 59…ポッティング剤 M…電動モータ、 WR…後輪。

Claims (12)

  1. 一端が揺動軸(19)に連結し他端が後輪(WR)を支持するスイングアーム(30)と、前記スイングアーム(30)の他端側に設置し前記後輪(WR)を駆動する電動モータ(M)とを備えた電動車両に対して、前記電動モータ(M)へ電力を供給するために装着する電動車両用バッテリであって、
    前記スイングアーム(30)は、
    前記スイングアーム(30)の揺動軸近傍に設けた収納空間(35)と、
    前記収納空間内にバッテリを位置決めするガイド溝(44)とを備え、
    前記収納空間内に位置決めされたバッテリ(56)をポッティング剤の介在により固定することでバッテリを前記スイングアーム内に搭載する
    ことを特徴とする電動車両用バッテリ。
  2. 前記バッテリ(56)は複数の方形板状のバッテリセルから構成され、前記収納空間(35)のガイド溝(44)をセル毎に設ける請求項1に記載の電動車両用バッテリ。
  3. 前記収納空間(35)に穿孔した貫通孔(38a)に塞栓(45)を嵌合し、収納空間内にポッティング剤を介在させた後に前記塞栓(45)を外すことで、前記バッテリ(56)を固定したポッティング剤によりバッテリ(56)の高圧圧力抜き用の逃がし通路を形成する請求項1又は請求項2に記載の電動車両用バッテリ。
  4. 前記スイングアーム(30)近傍位置には基板(50)が配置され、基板(50)は、主に前記電動モータ(M)を制御する制御基板(50a)又は、主にバッテリ(56)を充電する充電回路を有する発熱素子基板(50b)からなり、前記ポッティング剤で固定する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリ。
  5. 前記基板(50)は、前記スイングアーム(30)の側面又は後面に配置する請求項4に記載の電動車両用バッテリ。
  6. 前記基板(50)を前記バッテリ(56)に対して固定し、前記スイングアーム近傍位置に前記基板(50)を配置する請求項4又は請求項5に記載の電動車両用バッテリ。
  7. 前記バッテリ(56)を構成する複数のバッテリセルは、長手方向を上下方向に向けて配置する請求項2に記載の電動車両用バッテリ。
  8. 前記ポッティング剤を樹脂とした請求項1に記載の電動車両用バッテリ。
  9. 前記樹脂を樹脂コーティングとし、バッテリ(56)を樹脂コーティングに対して圧入固定する請求項8に記載の電動車両用バッテリ。
  10. 前記スイングアーム(30)の収納空間(35)は、上方に開口を有して形成する請求項1に記載の電動車両用バッテリ。
  11. 前記発熱素子基板(50b)は、前記制御基板(50a)より車体後方側で制御基板(50a)に固定されており、制御基板(50a)、発熱素子基板(50b)はポッティング剤により囲繞され、発熱素子基板(50b)の発熱部材の一部は、ポッティング剤より露出していることを特徴とする請求項4に記載の電動車両用バッテリ。
  12. 前記バッテリ(56)は、1セルごとにパッキングされたラミネート型バッテリのセル集合体にて構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリ。
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