JP5468695B1 - 無線通信システムの送信装置および送信方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】運用中にも振幅・位相の校正状態を維持しながら、複数の送信機を用いて送信性能を向上させることができる無線通信システムの送信装置および送信方法を提供する。
【解決手段】送信信号のスペクトラムを周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分割するスペクトラム分割手段と、各サブスペクトラムのそれぞれの振幅および位相を校正して出力する振幅・位相調整手段と、振幅・位相調整手段が出力した各サブスペクトラムを無線信号として送信する複数の送信機とを備えた送信装置において、スペクトラム分割手段は、分割したサブスペクトラムの分割周波数において位相反転する特性を与え、振幅・位相調整手段は、折り返し受信信号の分割周波数における受信レベルが最小となる振幅および位相を校正係数として順次更新し、運用中に該校正状態を維持する構成である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、無線通信において、送信能力(EIRP:アンテナ利得と送信電力の積)の低い送信機を複数用いて連係動作させることにより、広帯域かつ大容量の伝送信号を送信する無線通信システムの送信装置および送信方法に関する。
無線通信においてリッチ・コンテンツ等を伝送する場合、従来のテキストベースの場合に比べて、広帯域かつ大容量の信号を伝送することが求められる。無線通信システムでは、このような広帯域かつ大容量の信号を伝送するためには、EIRPの高い送信装置が必要となる。
従来の無線通信システムにおいて、所望のトラヒック量に相当する信号を伝送するためには、回線設計に応じたEIRPが必要である。必要とされるEIRPは、変調方式を固定した場合は、通信容量に比例して増大する。また、多値化を行うことで1ビット当たりの周波数を減らすことができるが、その反面、より大きいEIRPが必要となる。
EIRPの向上には、アンテナ利得と送信出力の向上が必要であるが、アンテナ利得はアンテナの開口面積に比例するため、アンテナの大型化を招く。また、送信出力の向上にも物理的な限界があり、また送信装置を構成するコンポーネントにも送信出力の増大に耐えうる強度が求められ、いずれにしても送信装置の大幅な改修が必要となる。
そこで、送信装置の大幅な改修を行わずに、送信装置の送信性能を向上させる手法として、特許文献1および非特許文献1に記載されるように、複数の送信機を連係させることにより送信性能を向上させるアプローチが提案されている。
図5は、従来の無線通信システムの送信装置の構成例を示す。
図5において、変調器11から出力される送信信号をスペクトラム分割部12に入力し、送信信号のスペクトラムを周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分割して振幅・位相調整部13に入力する。振幅・位相調整部13は、各サブスペクトラムの振幅と位相を設定してそれぞれ送信機14に入力する。各送信機14は電力増幅器を含み、互いに異なるサブスペクトラムの信号をそれぞれ電力増幅してアンテナから送信する。このように複数の送信機14を用いて送信能力を向上させる。
ここで、スペクトラム分割部12は、送信信号のスペクトラムを分割する際に、各送信機14の送信性能(EIRP)に応じた各サブスペクトラムの帯域幅を決定して分割する。振幅・位相調整部13は、各送信機14から送信されたサブスペクトラムが空間合成された結果、元の送信信号のスペクトラムが形成されるように各サブスペクトラムの振幅および位相を調整する。
図6は、本発明の無線通信システムの送信装置の詳細構成を示す。
図6において、フーリエ変換回路(DFT)21は、変調器11から入力する送信信号を周波数軸上の信号に変換し、複数の送信機14と同数の複数のスペクトラム分割回路22−1〜22−nに分配する。各スペクトラム分割回路は、送信信号と帯域分割重み係数とを乗算する乗算器を備え、送信信号をそれぞれの帯域分割重み係数に応じた帯域のサブスペクトラムの信号に分割する。すなわち、スペクトラム分割回路22−1〜22−nは、各サブスペクトラムの帯域を通過させる特性を有するフィルタの機能と同等である。各スペクトラム分割回路22−1〜22−nの出力は、振幅・位相調整回路23−1〜23−nを介してフーリエ逆変換回路(IDFT)24−1〜24−nで時間軸上の送信信号に変換して各送信機14−1〜14−nに送出される。
複数のサブスペクトラムに分割された送信信号が空間合成により正確に復元されるための具体的なフィルタ特性(スペクトラム分割回路における帯域分割重み係数)について、分割数を2として図7を参照して説明する。
図7(a) は、元の送信信号スペクトラムを示す。fd は分割周波数である。図7(b) がサブスペクトラムの分割例である。この場合、分割周波数fd における規格化した信号電圧が 0.5となるようにし、かつ、fd からの離調周波数δf に依らず、2つのサブスペクトラムの周波数毎の信号電圧V1(δf)、V2(δf)が以下の関係となるようにフィルタリングすると、空間合成後に送信信号スペクトラムが正確に復元される。
V1(δf)+V2(δf)=1
この関係となる具体的な例として、コサイン・ロールオフフィルタの適用が挙げられる。
特開2013−048348号公報
鈴木他、「帯域分散伝送における複数地球局連係送信に関する検討」、2012年電子情報通信学会総合大会、B-3-2
図7に示すように、変調信号を各送信機のEIRPに応じて分割してサブスペクトラムを生成し、各送信機からそれぞれ送信され、空間合成により元の変調信号のスペクトラムが復元されるには、各送信機の通過特性が一致するように校正することが必要である。各送信機の通過特性にばらつきがあると、合成後のスペクトラムは振幅・位相が歪んだ信号となり、その振幅位相誤差に応じて伝送特性が劣化する。
特許文献1および非特許文献1に示す従来技術では、個々の送信機の通過特性を揃えるために、隣接するサブスペクトラムの位相を反転させ、逆相等振幅合成により分割周波数fd における信号電力が最小になる(零点が形成される)ように、サブスペクトラムの振幅・位相を制御する。その後、隣接するサブスペクトラムの位相を元に戻すことにより同相等振幅状態が確立され、送信機の通過特性に対する校正が完了する。
ところで、この校正手順は、初期設定時に例えばトレーニング信号等を用いて行われ、得られた校正値を用いて運用される。一方、運用時はすべてのサブスペクトラムが同相であり、位相の反転を伴う従来の校正手順では、位相歪を伴うため運用中の校正はできない。なお、送信機間の相対位相の時間変化を図8に示すが、時々刻々と位相誤差の変化が見られ、空間合成された信号には位相歪を含むため、運用中の校正が必要であることがわかる。
本発明は、運用中にも振幅・位相の校正状態を維持しながら、複数の送信機を用いて送信性能を向上させることができる無線通信システムの送信装置および送信方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、周波数軸上において送信信号のスペクトラムを分割周波数ごとに複数のサブスペクトラムに分割するスペクトラム分割手段と、各サブスペクトラムのそれぞれの振幅および位相を校正して出力する振幅・位相調整手段と、振幅・位相調整手段が出力した各サブスペクトラムを無線信号として送信する複数の送信機とを備えた無線通信システムの送信装置において、スペクトラム分割手段は、分割後のサブスペクトラムの分割周波数における位相を反転させる構成であり、振幅・位相調整手段は、折り返し受信信号の分割周波数における受信レベルが最小となる振幅および位相を校正係数として順次更新し、送信装置として運用されている際にも該校正状態を維持する構成である。
第1の発明の無線通信システムの送信装置において、スペクトラム分割手段は、校正を行うときに、分割したサブスペクトラムの分割周波数において位相反転する特性を与え、校正を実施しないときにサブスペクトラムの位相を一定にする構成である。
第2の発明は、周波数軸上において送信信号のスペクトラムを分割周波数ごとに複数のサブスペクトラムに分割するスペクトラム分割ステップと、各サブスペクトラムのそれぞれの振幅および位相を校正して出力する振幅・位相調整ステップと、振幅・位相調整ステップにより振幅および位相が校正された各サブスペクトラムを複数の無線機に入力し、無線信号として送信するステップとを有する無線通信システムの送信方法において、スペクトラム分割ステップは、分割後のサブスペクトラムの分割周波数における位相を反転させ、振幅・位相調整ステップは、折り返し受信信号の分割周波数における受信レベルが最小となる振幅および位相を校正係数として順次更新し、送信装置として運用されている際にも該校正状態を維持する。
第2の発明の無線通信システムの送信方法において、スペクトラム分割ステップは、校正を行うときに、分割したサブスペクトラムの分割周波数において位相反転する特性を与え、校正を実施しないときにサブスペクトラムの位相を一定にする。
本発明は、分割したサブスペクトラムの分割周波数において位相反転させ、逆相等振幅合成により分割周波数において受信レベルが最小となる零点が形成されるように、複数の送信機間の通過特性の校正を行うことにより、運用中でも校正状態を維持することができる。これにより、運用中に個々の送信機の特性変動に伴う復調時のC/N劣化を、分割周波数における逆相等振幅合成による僅かなC/N劣化で校正することが可能となる。
本発明の無線通信システムの送信装置における校正処理のための構成例を示す図である。 本発明による振幅・位相校正の原理を説明する図である。 信号スペクトラムの例を示す図である。 本発明における誤り訂正特性を示す図である。 従来の無線通信システムの送信装置の構成例を示す図である。 従来の無線通信システムの送信装置の詳細構成を示す図である。 サブスペクトラムの分割例を示す図である。 送信機間の相対位相の時間変化を示す図である。
図1は、本発明の無線通信システムの送信装置における校正処理のための構成例を示す。
図1において、変調器11、フーリエ変換回路(DFT)21、スペクトラム分割回路22−1〜22−n、振幅・位相調整回路23−1〜23−n、フーリエ逆変換回路(IDFT)24−1〜24−n、送信機14−1〜14−nは、図6に示す送信装置の詳細校正に対応する。
複数の送信機14を連携して送信する場合、個々の送信機14に対応するスペクトラム分割回路22の通過特性(位相および利得)に差が生じると、空間合成したスペクトラムと元の送信信号のスペクトラムとに差が生じ、復調時の特性(例えば所要C/N)に劣化が生じる。そのため各送信機14に対応する振幅・位相調整回路23で校正を行い、通過特性を揃えることが重要となる。図1の例では、スペクトラム分割回路22の後段に振幅・位相調整回路23を配置しているが、前段に配置してもよく、さらに、スペクトラム分割回路22の特性を決定する重み係数を調整することで、スペクトラム分割回路22と振幅・位相調整回路23をまとめる構成としてもよい。
振幅・位相調整回路23は、送信機14−1〜14−nの送信信号を受信する受信機31およびスペクトラム分析機32で生成される校正係数により、送信するサブスペクトラムの振幅と位相を補正する。本発明は、この処理を後述するように運用中に可能にしたところに特徴がある。なお、衛星通信の場合は、自局の送信信号の衛星折り返し信号を、自身の無線装置の1つで受信する構成としてもよい。
本発明の送信装置では、運用中において、従来は各サブスペクトラムの位相係数(フィルタリンク時の周波数成分ごとの通過位相)を一定(同相)としていたものを、図2(a) のように分割周波数fd においてのみ位相が逆相になるように重み係数を変更する。このとき、通過位相および利得が揃っている送信機から出力され、空間合成された信号のスペクトラムは、分割周波数fd において逆相等振幅合成となるため、図2(b) に示すように零点が形成される。なお、零点とは、分割周波数fd において信号レベルが小さくなる点(理想ではゼロ(−∞dB))である。
送信機14−1〜14−nから送信された送信信号は受信機31に受信され、さらにスペクトラム分析器32で受信信号の周波数特性が分析される。ここで、分割周波数fd で常に零点が形成されるように、振幅・位相調整回路23−1〜23−nにフィードバックする校正係数(減衰量および位相量)を順次更新することにより校正状態を維持する。
この零点形成には、校正係数(減衰量および位相量)に正負一定量の偏差を与え、分割周波数における受信レベルが小さくなる方を採用するステップトラック制御を適用することが好ましい。なお、合成スペクトラムに零点が形成されるため、元の送信信号スペクトラムを完全に復元することができないが、零点が形成される比帯域はわずかのため、誤り訂正処理を施すことで復調時のC/N劣化を最小限に抑えることができる。
なお、本発明では、運用中に校正状態を維持できるように、分割周波数で零点を形成しているが、校正を実施するときのみに零点が形成されるようにフィルタリングを行い、校正を実施しない間は、零点を形成しない状態にフィルタリング係数(従来例のフィルタリング係数)を適用することで、零点に伴いエネルギーが損失している時間を短縮することができる。
本発明の有効性を実験的に検証した例を示す。
図3は、FPGAを用いて変調信号を生成後、2つのサブスペクトラムに分割し、校正およびスペクトラム合成した結果を示す。図3(a) は生成した変調信号のスペクトラムであり、QPSK変調、変調速度 3.2Mbaud、ロールオフ率0.2 の帯域制限フィルタを用いている。図3(b),(c) は、分割したサブスペクトラム1,2であり、スペクトラム分割回路22のフィルタ特性として、ロールオフ率0.2 のコサイン・ロールオフフィルタを実現しているが、図3(c) のサブスペクトラム2は分割周波数において位相を反転させている。図3(d) は、合成スペクトラムを示すが、分割周波数(相対周波数0)において零点が形成されていることが確認できる。
図4は、本発明における誤り訂正特性を示す。なお、本測定では誤り訂正符号として、符号化率0.66のターボプロダクト符号を使用した。この結果、本発明において、0.2dB 程度の劣化が確認できるが、運用中にも校正が可能となることが確認できる。
11 変調器
12 スペクトラム分割部
13 振幅・位相調整部
14 送信機
21 フーリエ変換回路(DFT)
22 スペクトラム分割回路
23 振幅・位相調整回路
24 フーリエ逆変換回路(IDFT)
31 受信機
32 スペクトラム分析器

Claims (4)

  1. 周波数軸上において送信信号のスペクトラムを分割周波数ごとに複数のサブスペクトラムに分割するスペクトラム分割手段と、
    前記各サブスペクトラムのそれぞれの振幅および位相を校正して出力する振幅・位相調整手段と、
    前記振幅・位相調整手段が出力した各サブスペクトラムを無線信号として送信する複数の送信機と
    を備えた無線通信システムの送信装置において、
    前記スペクトラム分割手段は、分割後のサブスペクトラムの前記分割周波数における位相を反転させる構成であり、
    前記振幅・位相調整手段は、折り返し受信信号の前記分割周波数における受信レベルが最小となる振幅および位相を校正係数として順次更新し、送信装置として運用されている際にも該校正状態を維持する構成である
    ことを特徴とする無線通信システムの送信装置。
  2. 請求項1に記載の無線通信システムの送信装置において、
    前記スペクトラム分割手段は、前記校正を行うときに、分割した前記サブスペクトラムの前記分割周波数において位相反転する特性を与え、前記校正を実施しないときに前記サブスペクトラムの位相を一定にする構成である
    ことを特徴とする無線通信システムの送信装置。
  3. 周波数軸上において送信信号のスペクトラムを分割周波数ごとに複数のサブスペクトラムに分割するスペクトラム分割ステップと、
    前記各サブスペクトラムのそれぞれの振幅および位相を校正して出力する振幅・位相調整ステップと、
    前記振幅・位相調整ステップにより振幅および位相が校正された各サブスペクトラムを複数の無線機に入力し、無線信号として送信するステップと
    を有する無線通信システムの送信方法において、
    前記スペクトラム分割ステップは、分割後のサブスペクトラムの前記分割周波数における位相を反転させ
    前記振幅・位相調整ステップは、折り返し受信信号の前記分割周波数における受信レベルが最小となる振幅および位相を校正係数として順次更新し、送信装置として運用されている際にも該校正状態を維持する
    ことを特徴とする無線通信システムの送信方法。
  4. 請求項3に記載の無線通信システムの送信方法において、
    前記スペクトラム分割ステップは、前記校正を行うときに、分割した前記サブスペクトラムの前記分割周波数において位相反転する特性を与え、前記校正を実施しないときに前記サブスペクトラムの位相を一定にする
    ことを特徴とする無線通信システムの送信方法。
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