JP5465562B2 - 建物の解体方法 - Google Patents

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本発明は、例えば、集合住宅、事務所ビル、デパート等の大型店舗ビルのような多層構造とされた既存の建物を最上階(屋上又はその下階の床スラブ)に搬入した解体重機により上階から下階へと順次解体して行く建物の解体方法に関し、詳しくは、既存の建物を最上階に搬入した解体重機により上階から下階へと順次解体して行くにあたり、既存の床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱を築造して、床スラブの垂直方向の補強を行った後、解体重機を搬入し、上階から下階へと順次、束柱ごと解体して行く建物の解体方法の改良に関する。
本発明の出願人は、既存の建物を最上階に搬入した解体重機により上階から下階へと順次解体して行くにあたり、既存の床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱を築造して、床スラブの垂直方向の補強を行った後、解体重機を搬入し、上階から下階へと順次、束柱ごと解体して行く建物の解体方法を、特許第4340243号として、既に提案している。
この解体方法は、解体重機を最上階に揚重し、上階から下階へと順次解体して行くにあたり、解体重機が作業する階から下の床スラブをセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱で支持し、上階から下階へと束柱ごと解体して行くので、特許文献1に詳細に記載されているとおり、解体重機が作業する階から下、何層分かの床スラブを当該床スラブに設置した鋼製の強力サポートで支持し、上階の解体終了後、取り外した強力サポートを順次、下階へと盛り替えて行く在来工法に比べると、以下のような多くの利点を有する。
即ち、強力サポートの設置・盛り替えの手間がなく、重量物である強力サポートを回収して、人力で仮設開口や階段から下層へと盛り替えて行くといった危険な重作業がなくなり、1フロア当りの面積が大きい建物であっても、解体重機直近での相伴作業が減少し、安全かつ迅速に解体できる。
また、セメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱であるため、1フロア当りの面積が大きい建物を解体する場合のように、束柱が数量的にかなり多くなっても、対応可能であり、膨大な数量の強力サポートを準備する在来工法のように資材調達に苦慮しないで済む。
殊に、セメント系固結性流動物として、高規格流動化処理土(建設発生土とセメントと水と粗骨材とから調製され、あるいは、これらに高性能AE減水剤等の混和剤を加えて調製されたもの)を使用すると、生コンクリートを使用する場合に比して資材費が遥かに安くて済み、低コストで実施できる。
ところで、建物を上階から下階へと順次解体して行く場合、束柱の築造や、束柱を築造する際の物理的な障害物となる天井パネルや床パネルなどの内装仕上げ材の撤去は、上階から下階へと順次行うことが、工程上、望ましく、合理的でもある。また、束柱を築造するにあたっては、特許文献1に記載の通り、上階の床スラブに貫通孔(コア孔)を穿設した後、貫通孔の下方に束柱用の捨型枠を建て込み、上階の床スラブから前記貫通孔を介して前記捨型枠内にセメント系固結性流動物を打設することが望ましい。
一方、各階の束柱は上下階間の床スラブを挟んで同一垂直線上に配置することが、床スラブの補強上、必要不可欠とされるが、特許文献1に記載の通り、束柱を同一垂直線上に
配置するために、各階の束柱用捨型枠を平面視において完全に重なり合った位置に建て込むと、上階の束柱用捨片枠が障害物になって、上階の床スラブから下階の束柱用捨片枠にセメント系固結性流動物を打設することができないことになり、束柱は下階から上階へと築造して行かざるを得ない。この点において、特許文献1に記載の発明には改良の余地があった。
特許第4340243号公報
本発明は、この点を改良したものであって、その目的とするところは、既存の建物を最上階に搬入した解体重機により上階から下階へと順次解体して行くにあたり、既存の床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱を築造して、床スラブの垂直方向の補強を行った後、解体重機を搬入し、上階から下階へと順次、束柱ごと解体して行く建物の解体方法において、束柱の築造を、上階から下階へと順次行うことができるようにすることにある。
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明は、既存の建物を最上階に搬入した解体重機により上階から下階へと順次解体して行くにあたり、既存の床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱を築造して、床スラブの垂直方向の補強を行った後、解体重機を搬入し、上階から下階へと順次、束柱ごと解体して行く建物の解体方法において、上下階間の床スラブを挟んで立設される束柱用の捨型枠を平面視において互に一部が重なり合う状態に交互にずらして配置し、床スラブには、互に重なり合わない位置で且つ下階の束柱用捨型枠の内法寸法の範囲内に下階の束柱用捨型枠に対するセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を形成することを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の解体方法であって、上階の床スラブに形成されたセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を基準にして下階の束柱用捨型枠を立設した後、この束柱用捨型枠を基準にして下階の床スラブにセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を穿設することを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の建物の解体方法であって、束柱用捨型枠としてダクト用スパイラル管を使用することを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、上下階間の床スラブを挟んで立設される束柱用の捨型枠を平面視において互に一部が重なり合う状態に交互にずらして配置し、床スラブには、互に重なり合わない位置で且つ下階の束柱用捨型枠の内法寸法の範囲内に下階の束柱用捨型枠に対するセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を形成するので、上階の束柱用捨型枠にセメント系固結性流動物を打設した後でも、下階の束柱用捨型枠に前記貫通孔からセメント系固結性流動物を流し込むことができ、束柱の築造を、上階から下階へと順次行うことができる。
即ち、各階の束柱用捨型枠が平面視において互に一部が重なり合う状態に交互にずらして配置されるので、各階の束柱をそれらの一部が同一垂直線上に配置された状態に築造でき、それでいて、上下階の束柱用捨型枠を交互にずらすことで、下階の束柱用捨型枠に対
するセメント系固結性流動物の流し口(貫通孔)を確保でき、束柱の築造を、上階から下階へと順次行うことができるのである。
請求項2に記載の発明によれば、上階の床スラブに形成されたセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を基準にして下階の束柱用捨型枠を立設した後、この束柱用捨型枠を基準にして下階の床スラブにセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を穿設するので、全フロアで必要とされた貫通孔の墨出し作業が殆ど不要となる。
即ち、特許文献1に記載のように、床スラブの所定位置に必要個数の貫通孔を形成した後、これらの貫通孔の真上に束柱用捨型枠を建て込む作業手順であれば、各フロアごとに夫々、コア抜きする位置(貫通孔を形成する位置)の墨出し作業が必要となるが、請求項2に記載の発明によれば、貫通孔の形成と束柱用捨型枠の建て込みの工程を逆転し、所定位置に建て込まれた束柱用捨型枠を基準にして、例えば、或る階では束柱用捨型枠から西に15mmずらして貫通孔を形成し、その下階においては、前記貫通孔の下方に建て込んだ束柱用捨型枠から東に15mmずらして貫通孔を形成するといったように、束柱用捨型枠を基準に交互に位置をずらしてコア抜き(貫通孔の形成)を行うことにより、貫通孔を形成する位置の墨出し作業は最上階で行うだけで済み、それより下の階における墨出し作業を省略することができるのである。
束柱用捨型枠としては、種々の材料のものを使用できるが、請求項3に記載のようにダクト用スパイラル管を使用すれば、軽量かつ安価であり、解体重機で束柱を解体する際、捨型枠ごと容易に解体できる等の利点がある。また、ダクト用スパイラル管として、公知のスライド式スパイラル管を使用すれば、任意の長さに調節することができて、施工が容易となる。
本発明に係る建物の解体方法を例示する概略縦断側面図である。 本発明に係る建物の解体方法を例示する概略縦断側面図である。 5階まで解体が進んだ状態を示す概略縦断側面図である。 床スラブを挟んで建て込まれた束柱用捨型枠の要部斜視図である。 上下階の束柱用捨型枠と貫通孔との位置関係を説明する平面図である。 束柱用捨型枠の建て込み作業を説明する縦断側面図である。 床スラブに対する貫通孔の形成作業を説明する縦断側面図である。 束柱の築造作業を説明する縦断側面図である。 他の実施形態を示す束柱用捨型枠の搬入作業の説明図である。 束柱用捨型枠の建て込み作業を説明する縦断側面図である。 束柱用捨型枠の固定方法と床スラブに対する貫通孔の形成作業を説明する縦断側面図である。
図1〜図3は、本発明に係る建物の解体方法を示す。図において、1は、例えば、集合住宅、事務所ビル、デパート等の大型店舗ビルのような多層構造とされた既存の建物を示す。図示の建物は、地上8階建てであり、F〜Fは1階〜8階の床スラブ、Rは屋上の床スラブ(屋根スラブ)である。2は柱、3は梁であり、建物の躯体フレームを構成している。
上記の建物1を最上階(屋上又はその下階の床スラブ)に搬入した解体重機Aにより上階から下階へと順次解体して行くにあたり、この実施形態においては、解体重機Aが作業する階から下、何層分かの床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱4を築造して、床スラブの垂直方向の補強を行った後、解体重機Aを屋上の床スラブ(屋根ス
ラブ)Rに搬入し、当該解体重機Aで、図3に示すように、上階から下階へと順次、束柱4ごと解体して行くようにしている。
尚、解体ガラを床スラブF2〜Fに形成した開口(図示せず)から1階に投下し、こ
れを解体ガラ搬出車両Bで建物外に搬出する場合には、1階の床スラブFに束柱が林立していると、解体ガラ搬出車両Bの走行の障害物となるので、2階の床スラブF2の上面
に、既存の躯体フレームに力を伝えるための補強床5を構築し、1階の床スラブFには束柱を設けないことになる。
この実施形態は、上記の解体方法において、図4〜図8に示すように、上下階間の床スラブF3〜Fを挟んで立設される束柱用の捨型枠6を平面視において互に一部が重なり
合う状態に交互にずらして配置し、床スラブF3〜Fには、互に重なり合わない位置で
且つ下階の束柱用捨型枠6の内法寸法の範囲内に下階の束柱用捨型枠6に対するセメント系固結性流動物S打設用の貫通孔(コア孔用ドリルを使用して開けたコア孔)7を形成する点に特徴がある。セメント系固結性流動物Sとしては、生コンクリートでもよいが、高規格流動化処理土(建設発生土とセメントと水と粗骨材とから調製され、あるいは、これらに高性能AE減水剤等の混和剤を加えて調製されたもの)を使用することが低コスト化を図る上で望ましい。
束柱用の捨型枠6としては、図4に示すように、ダクト用スパイラル管が使用されており、上階の捨型枠6の下端部は、アングル状の取付け金物8とコンクリート釘9により床スラブの上面に固定される。下階の捨型枠6の上端部は、スパイラル管の外側にスライド自在に套嵌した筒状部分10aとその上端から半径方向外方へ折れ曲った水平な取付け片10bとで構成された長さ調節用金物10とコンクリート釘9により床スラブの下面に固定される。
束柱用の捨型枠6として用いるスパイラル管の直径、上下階間の床スラブF3〜F
挟んで立設されるスパイラル管の互にずらす距離L、貫通孔(コア孔)7の内径は、任意に設定できるが、図示の実施形態においては、スパイラル管の直径が250mm、上下階のスパイラル管の互にずらす距離Lを125mm、貫通孔7の内径を10mmに設定してある。
上記の構成によれば、束柱4の築造を、図1、図2、図8に示すように、上階から下階へと順次行うことができる。即ち、図5の(A)、図6に示すように、上階の床スラブに形成された貫通孔7の下方に束柱用の捨型枠6を建て込み、しかる後、図5の(B)、図7に示すように、前記捨型枠6を基準にして下階の床スラブの所定位置(更に下階の束柱用捨型枠の内法寸法の範囲内)に貫通孔7を開け、図5の(C)、図8に示すように、前記床スラブの下面に下階の捨型枠6の上端部を固定する。このようにして、上下階間の床スラブF3〜Fを挟んで立設される束柱用の捨型枠6を平面視において互に一部が重な
り合う状態に交互にずらして配置し、床スラブF3〜Fには、互に重なり合わない位置
で且つ下階の束柱用捨型枠6の内法寸法の範囲内に下階の束柱用捨型枠6に対するセメント系固結性流動物打設用の貫通孔7を形成することになる。
従って、各階の束柱4を一部が同一垂直線上に配置された状態(平面視において部分的に重なり合った状態)に築造でき、それでいて、図8に示すように、上階の束柱用捨型枠6にセメント系固結性流動物Sを打設した後でも、下階の束柱用捨型枠6に前記貫通孔7からセメント系固結性流動物Sを流し込むことができ、束柱4の築造を、上階から下階へと順次行うことができるのである。
また、束柱用の捨型枠6を基準にして、例えば、或る階では、捨型枠6から西に15m
mずらして貫通孔7を形成し、その下階においては、前記貫通孔7の下方に建て込んだ捨型枠6から東に15mmずらして貫通孔7を形成するといったように、束柱用の捨型枠6基準にして交互に位置をずらしてコア抜き(貫通孔の形成)を行うので、貫通孔7を形成する位置の墨出し作業は最上階で行うだけで済み、それより下の階における墨出し作業を省略することができる。
図9〜図11は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、束柱用の捨型枠6として用いるダクト用スパイラル管として、互にスライド自在に嵌合した内側スパイラル管6aと外側スパイラル管6bとから成る公知のスライド式スパイラル管を使用した点に特徴がある。
前記スパイラル管(捨型枠6)における外側スパイラル管6bの上端近傍部には、円周方向に間隔を開けて3個の小孔を開けて、図10に示すように、これらの小孔に番線11を通し、番線11の上端側を一まとめにして上方へ延出した状態に起立させてある。そして、番線11の上端側を上階の床スラブに形成された貫通孔7に下階から差し入れ、この状態で、上階に居る作業員が番線11の上端側を貫通孔7に掛け渡した鉄筋12に、スパイラル管上端が床スラブ下面に当接するまで巻き取ることにより、図11に示すように、スパイラル管(捨型枠6)の上端部を上階の床スラブに固定するように構成してある。また、内側スパイラル管6aと外側スパイラル管6bは、階高に合致する長さに調節した状態で、タッピングビスによりビス止めしてある。
上記の構成によれば、束柱用の捨型枠6として用いるダクト用スパイラル管として、互にスライド自在に嵌合した内側スパイラル管6aと外側スパイラル管6bとから成るスライド式スパイラル管を使用するので、階高に合わせてスパイラル管の長さを調節できる。
従って、既存の建物における各部位での階高を実測して、それに対応する長さのスパイラル管を発注するといった煩わしさがなくなり、単一種類での発注となるので、納期が短くて済む。
また、長さを短縮した状態で、ダクト用スパイラル管の現場搬入を行えるので、既存のエレベータEによるダクト用スパイラル管の揚重に便利である。即ち、エレベータEにおける昇降ケージの天井高さは、居室の床パネルから天井パネルまでの高さに対応しているので、階高よりもかなり低いのが普通である。そのため、階高に対応する長さの1本物のスパイラル管をエレベータEで揚重する場合であれば、図9に仮想線で示すように、昇降ケージの天井の点検口を開けてスパイラル管の上端側を差し込むことになり、一度にせいぜい2本しか揚重できないが、長さを昇降ケージの天井高さ以下に短縮して積み込むことにより、一度に多数本のスパイラル管を揚重できることになる。
殊に、内側スパイラル管6aと外側スパイラル管6bとから成るスライド式スパイラル管であるから、図10、図11に示す作業手順によって、上階の床スラブの上からスパイラル管(捨型枠6)の上端部を固定することが可能であり、前述した長さ調節用金物10とコンクリート釘9により床スラブの下面にスパイラル管(捨型枠6)の上端部を固定する高所作業を省略できる。その他の構成、作用は、図1〜図8の実施形態と同じであるため、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
1 建物
2 柱
3 梁
4 束柱
5 補強床
6 捨型枠
6a 内側スパイラル管
6b 外側スパイラル管
7 貫通孔
8 取付け金物
9 コンクリート釘
10 長さ調節用金物
10a 筒状部分
10b 取付け片
11 番線
12 鉄筋
A 解体重機
B 解体ガラ搬出車両
E エレベータ
1〜F 床スラブ
L ずらす距離
R 床スラブ(屋根スラブ)
S セメント系固結性流動物

Claims (3)

  1. 既存の建物を最上階に搬入した解体重機により上階から下階へと順次解体して行くにあたり、既存の床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱を築造して、床スラブの垂直方向の補強を行った後、解体重機を搬入し、上階から下階へと順次、束柱ごと解体して行く建物の解体方法において、上下階間の床スラブを挟んで立設される束柱用の捨型枠を平面視において互に一部が重なり合う状態に交互にずらして配置し、床スラブには、互に重なり合わない位置で且つ下階の束柱用捨型枠の内法寸法の範囲内に下階の束柱用捨型枠に対するセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を形成することを特徴とする建物の解体方法。
  2. 上階の床スラブに形成されたセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を基準にして下階の束柱用捨型枠を立設した後、この束柱用捨型枠を基準にして下階の床スラブにセメント系固結性流動物打設用の貫通孔を穿設することを特徴とする請求項1に記載の建物の解体方法。
  3. 束柱用捨型枠としてダクト用スパイラル管を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の解体方法。
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