JP5460385B2 - 樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法 - Google Patents

樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法 Download PDF

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本発明は、射出成形金型を始めとする樹脂成形品を成形するための樹脂成形用金型とその温度制御機構とを備えた樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法に関するものである。
合成樹脂を成形材料とした射出成形においては、成形条件や樹脂成形品の形状によって、種々の成形欠陥を生ずることがある。例えば、貫通孔を有する樹脂成形品や角張った段差を有する樹脂成形品においては、貫通孔で分流した溶融樹脂の流れが貫通孔の後方で合流することによってウエルドラインが形成される可能性があり、段差の角部を残して溶融樹脂が充填された後に残された角部に溶融樹脂が充填されることによっても、ウエルドラインが形成される可能性がある。
更に、厚さの薄い樹脂成形品を成形する場合や、エンジニアリングプラスチック等の融点の高い合成樹脂を成形材料とする場合には、ショートショットや転写不良等の成形欠陥を生じて、精密な樹脂成形品が得られないという問題もあった。
特許文献1においては、このようなウエルドラインの形成やショートショットや転写不良等を防止するとともに、金型のパーティング面からのバリの発生をも抑制して外観が良好で精密な樹脂成形品を得ることを目的として、溶融樹脂をキャビティに充填する際には金型温度を高く保ち、充填完了とともに金型を冷却する所謂ヒートサイクル成形法を実施しつつ、金型のパーティング面のみは常に冷却することを特徴とする金型装置及び成形方法の発明について開示している。
しかし、特許文献1に開示されている技術においては、金型を加熱から冷却に切り替えるタイミングをキャビティに溶融樹脂を充填完了して保圧を開始してからとしているため、金型を冷却するタイミングが遅れて成形サイクルが長くなるとともに、保圧開始の信号を射出成形機から取り出す必要があることから、そのための配線によって装置周りが煩雑になるという問題を有していた。
そこで、このような問題を解決するために、特許文献2においては、金型にキャビティの樹脂の温度を測定するための赤外線温度センサを設けて、キャビティの樹脂の温度をリアルタイムで監視し、キャビティの樹脂の温度が予め設定した所定の温度になったら、金型の加熱と冷却を切り替えることを特徴とする射出成形方法及び金型温度調節装置の発明について開示している。
これによって、樹脂温度を正確に測定して充填完了の時期を正確に判断し、冷却開始のタイミングを早めることによって、冷却時間を短くして生産性を向上させることができるとともに、射出成形機の制御盤から信号線を取り出さなくても良いので装置周りが煩雑にならず、またメーカーの異なる射出成形機にも容易に対応できるとしている。
特開2005−297386号公報 特開2009−137075号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術においては、冷却のタイミングを決定するために、キャビティの樹脂の温度をリアルタイムで正確に測定する手段として赤外線温度センサを用いていることから、設備費用が高くなる。また、加熱媒体と冷却媒体を流して金型を加熱及び冷却する金型温調用流路を可動側金型の全体に亘って設けているため、必要であるキャビティ周辺のみでなく可動側金型の全体を加熱・冷却しなければならず、熱エネルギを無駄にすることとなる。この結果、イニシャルコストもランニングコストも増大してしまうという問題点があった。
そこで、この発明はかかる問題点を解決するためになされたもので、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法を提供することを目的とする。
請求項1に係る樹脂成形用金型ユニットは、溶融した合成樹脂で該合成樹脂からなる樹脂成形品を成形するための成形キャビティを形成する樹脂成形用金型を有する樹脂成形用金型ユニットであって、前記樹脂成形用金型に設けられた前記成形キャビティを形成する入子と、前記入子のみに設けられた温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路と、前記入子と前記入子を除く前記樹脂成形用金型との間を断熱する断熱手段と、前記温度制御用の媒体を加熱して循環させる加熱・循環手段と、前記温度制御用の媒体を冷却して循環させる冷却・循環手段と、前記媒体通路と前記加熱・循環手段とを接続する加熱媒体配管と、前記媒体通路と前記冷却・循環手段とを接続する冷却媒体配管と、前記樹脂成形用金型が開いたことを検出して型開信号を出力する型開検出手段と、前記溶融樹脂によって前記成形キャビティが充填されたことを検出してキャビティ充填信号を出力するキャビティ充填検出手段と、前記型開検出手段から型開信号が出力されたときに前記冷却・循環手段から前記冷却された媒体を流すのを中断して前記媒体通路に前記加熱・循環手段から加熱された媒体を流し、前記キャビティ充填検出手段からキャビティ充填信号が出力されたときに前記加熱・循環手段から加熱された媒体を流すのを中断して前記媒体通路に前記冷却・循環手段から冷却された媒体を流すように前記加熱・循環手段及び前記冷却・循環手段を制御する制御手段とを具備するものである。
ここで、「合成樹脂」は、大きく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分類され、熱可塑性樹脂は更に汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック(以下、「エンプラ」ともいう。)、スーパーエンプラに分けることができる。また、本明細書及び特許請求の範囲においては、所謂繊維強化プラスチック(FRP)をも「合成樹脂」に含めるものとする。
汎用プラスチックとしては、ポリエチレン(PE:高密度、中密度、低密度)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合)樹脂、AS(アクリロニトリル、スチレン)樹脂、アクリル樹脂、PFA,FEPを始めとするフッ素樹脂等がある。
また、エンプラとしては、ポリアミド(ナイロン等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、FRPの一種であるガラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン等がある。
更に、スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等がある。
一方、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等がある。
また、「樹脂成形用金型」としては、射出成形用金型、トランスファー成形用金型、ブロー成形(中空成形)用金型、圧縮成形用金型等があり、これらの金型は一般的には1対の金型(固定側金型と可動側金型)によって構成されるが、樹脂成形用金型は3個以上の金型から構成されていても良い。
更に、ここで「成形キャビティ」の「キャビティ(cavity)」とは、射出成形技術の用語としては、『英語ではCavityとは穴(凹)を意味し、Coreは芯とか入子(凸)を意味し、一般的にはキャビティを固定側、コアを可動側として使うことが多い。』(有方広洋・著『射出成形加工の不良対策』15頁〜17頁,2003年11月30日,日刊工業新聞社発行)であるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、上記著書の17頁にも例示されているように、「キャビティ」という用語を「溶融樹脂が入り込む型の空間自体」という意味で使用する。
なお、成形キャビティは、樹脂成形用金型に1つだけ形成しても良いし、複数形成することもできる。
更に、「入子(いれこ)」という用語は、技術分野によって種々の意味で使用されるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、『金型工作法(新版)』(高木六弥・著,1980年6月30日,日刊工業新聞社発行)の55頁に記載されているように、型彫り部(成形キャビティ)を形成する金型の重要部分を意味するものとする。
入子は、一般的には1つの成形キャビティを形成するのに1対設けられるが、1つの成形キャビティを形成するのに三個以上に分割された入子を用いることもできる。また、1つの成形キャビティを形成する入子の組み合わせ(1対の入子または三個以上に分割された入子)は、樹脂成形用金型に成形キャビティが複数形成される場合には、成形キャビティと同じ数だけ設けられることになる。
また、「断熱手段」としては、入子と入子を除く樹脂成形用金型との間に装着される断熱材や、入子と入子を除く樹脂成形用金型との間に形成される隙間や溝等の空間等がある。更に、断熱材としては、グラスウール、ロックウール、羊毛断熱材、セルロース断熱材等の繊維系断熱材、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等の発泡系断熱材、押出し法ポリスチレン(XPS)、真空断熱材等がある。
また、「媒体通路」は、1つの成形キャビティを形成する入子が複数(1対以上)ある場合には全ての入子に設けても良いし、1つの成形キャビティを形成する入子のうち一部のみに設けても良く、媒体通路としては入子の内部に成形キャビティに連通しないように貫通孔として設けることもでき、入子の外周を取り巻く配管状に設けることもできる。
更に、加熱された媒体が流される媒体通路と冷却された媒体が流される媒体通路とは、それぞれ別個独立に設けても良いし、加熱される媒体と冷却される媒体とが同一の物質からなる場合や、両方の媒体を混合しても問題がない場合には、共通の媒体通路とすることもできる。
また、「温度制御用の媒体」としては、水、液体窒素、有機溶剤、オイル(例えば、ジベンジルトルエン等)、水蒸気、空気、窒素ガス等がある。
更に、「加熱・循環手段」としては、銅パイプ等の金属製の配管の周囲をヒーターで包んだ構造とダイヤフラムポンプ、ホースポンプ等の循環用ポンプを組み合わせたもの等があり、「冷却・循環手段」としては、銅パイプ等の金属製の配管の周囲をチラー(フロン冷媒を使った冷凍機)で包んだ構造とダイヤフラムポンプ、ホースポンプ等の循環用ポンプを組み合わせたもの等がある。
また、「加熱媒体配管」及び「冷却媒体配管」としては、銅パイプ等の金属製の配管や、加熱・冷却に耐えられるエンプラ製やスーパーエンプラ製のパイプ等を用いることができる。
そして、「制御手段」としては、キャビティ温度測定手段から出力される電気信号が入力する入力ポートと、アナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、中央処理装置(CPU)とメモリ装置を有する演算部と、演算部における演算結果を示すデジタル信号をアナログ信号である電気信号に変換するD/A変換器と、電気信号を出力する出力ポートとを備えたコンピュータシステム等を用いることができる。
更に、樹脂成形用金型ユニットの稼働開始時には、冷却・循環手段から冷却された媒体を流す動作は未だ実施されていないため、キャビティ温度測定手段によって測定される成形キャビティ内の温度が所定の下限温度を下回ったときには、最初は媒体通路に加熱・循環手段から加熱された媒体を流す動作のみが実施される。
加えて、「型開検出手段」としては、公知の接触センサや近接センサ等を用いることができる。なお、樹脂成形用金型が1対の固定側金型及び可動側金型から形成されている場合には固定側金型・可動側金型のそれぞれに1対の接触センサや1対の近接センサ等を取付ければ良いが、樹脂成形用金型が3個以上の金型の組み合わせで構成されている場合には、型開検出手段は成形キャビティを形成する入子が開いたことを検出できるように取付ける必要がある。
また、樹脂成形用金型ユニットの稼働開始時には、冷却・循環手段から冷却された媒体を流す動作は未だ実施されていないため、型開信号が出力されたときには、最初は媒体通路に加熱・循環手段から加熱された媒体を流す動作のみが実施される。
更に、「キャビティ充填検出手段」としては、例えば成形キャビティの末端部分(成形キャビティの湯口(ゲート)から最も離れた部分)に、圧力センサを設置しても良いし、成形キャビティの末端部分の近傍の入子に、キャビティ温度測定手段を設置しても良い。
この「キャビティ温度測定手段」としては、赤外線温度センサに比べて安価な熱電対や測温抵抗体等を用いることができる。
請求項2に係る樹脂成形用金型ユニットは、請求項1の構成において、前記加熱・循環手段によって加熱される媒体と前記冷却・循環手段によって冷却される媒体とは同じ物質からなる媒体であり、前記媒体通路を通過して前記入子の外に出てくる媒体を前記加熱・循環手段または前記冷却・循環手段のいずれかに流す切替手段と、前記媒体通路を通過して前記入子の外に出てくる媒体の温度を測定する媒体温度測定手段と、前記媒体温度測定手段によって測定される媒体の温度が所定温度以上であれば前記媒体を前記加熱・循環手段に流し、前記温度測定手段によって測定される媒体の温度が所定温度未満であれば前記媒体を前記冷却・循環手段に流すように、前記切替手段を制御する切替制御手段とを具備するものである。
ここで、「同じ物質からなる媒体」とは、媒体が加熱状態でも冷却状態でも液体である場合には有機溶媒なら同一の有機溶媒、オイルなら同一のオイルという意味であり、媒体が加熱状態では気体の場合は、例えば水蒸気と水のように同じH2Oという物質からなるという意味である。
また、「切替手段」としては、三方弁、三方電磁弁等を用いることができる。
更に、「媒体温度測定手段」としては、媒体通路の出口側に接続されている加熱媒体配管及び冷却媒体配管の入子の近傍において、配管に熱電対または測温抵抗体を接触させて配置したり、配管に熱電対または測温抵抗体を差し込んで媒体温度を直接測定したりする等の手段を用いることができる。
また、「切替制御手段」としては、媒体温度測定手段から出力される電気信号が入力する入力ポートと、アナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、中央処理装置(CPU)とメモリ装置を有する演算部と、演算部における演算結果を示すデジタル信号をアナログ信号である電気信号に変換するD/A変換器と、電気信号を出力する出力ポートとを備えたコンピュータシステム等を用いることができる。
請求項3に係る樹脂成形用金型ユニットは、請求項2の構成において、前記所定温度は、前記合成樹脂の軟化温度またはガラス転移温度であるものである。
ここで、「軟化温度」とは、『軟化温度は、何度でポリマーが軟らかくなるかを示すもので、実用的には重要な特性である。この試験法でよく使われるのが、荷重たわみ温度(DTUL)である。所定の形状の試験片を水平におき、中央部に所定の荷重を加えて、一定の速度で試験片の温度を上げていき、たわみが所定の値に達した温度をDTULとする。……』(社団法人日本化学会・編「化学便覧 応用化学編(第6版)」809頁,平成15年1月30日丸善株式会社発行)である。
請求項4に係る樹脂成形用金型の温度制御方法は、溶融した合成樹脂で該合成樹脂からなる樹脂成形品を成形するための成形キャビティを形成する樹脂成形用金型の温度制御方法であって、前記樹脂成形用金型には前記成形キャビティを形成する入子を設け、前記入子のみに温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路を設けて、前記入子と前記入子を除く前記樹脂成形用金型との間を断熱し、前記樹脂成形用金型が開いたら前記媒体通路に低温の冷却媒体を流すのを中断して前記媒体通路に高温の加熱媒体を流し、前記成形キャビティに前記溶融樹脂が充填されたら前記媒体通路に高温の加熱媒体を流すのを中断して前記媒体通路に低温の冷却媒体を流して、前記高温の加熱媒体と前記低温の加熱媒体を前記媒体通路に交互に流すものである。
ここで、樹脂成形用金型の稼働開始時には、媒体通路に低温の冷却媒体を流す動作は未だ実施されていないため、樹脂成形用金型が開いたときには、最初は媒体通路に高温の加熱媒体を流す動作のみが実施される。
請求項5に係る樹脂成形用金型の温度制御方法は、請求項4の構成において、前記加熱媒体と前記冷却媒体とは同じ材料からなる媒体であり、前記樹脂成形用金型の外部に前記媒体通路に接続された前記媒体を加熱する加熱手段と前記媒体を冷却する冷却手段とを配置し、前記媒体通路を通過して前記入子の外に出てくる前記媒体の温度を測定して、所定の温度以上であれば前記媒体を前記加熱手段に流し、所定の温度未満であれば前記媒体を前記冷却手段に流すものである。
請求項6に係る樹脂成形用金型の温度制御方法は、請求項5の構成において、前記所定の温度は、前記合成樹脂の軟化温度またはガラス転移温度であるものである。
請求項1に係る樹脂成形用金型ユニットは、樹脂成形用金型に設けられた成形キャビティを形成する入子と、入子のみに設けられた温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路と、入子と入子を除く樹脂成形用金型との間を断熱する断熱手段と、温度制御用の媒体を加熱して循環させる加熱・循環手段と、温度制御用の媒体を冷却して循環させる冷却・循環手段と、媒体通路と加熱・循環手段とを接続する加熱媒体配管と、媒体通路と冷却・循環手段とを接続する冷却媒体配管と、樹脂成形用金型が開いたことを検出して型開信号を出力する型開検出手段と、溶融樹脂によって成形キャビティが充填されたことを検出してキャビティ充填信号を出力するキャビティ充填検出手段と、型開検出手段から型開信号が出力されたときに冷却・循環手段から冷却された媒体を流すのを中断して媒体通路に加熱・循環手段から加熱された媒体を流し、キャビティ充填検出手段からキャビティ充填信号が出力されたときに加熱・循環手段から加熱された媒体を流すのを中断して媒体通路に冷却・循環手段から冷却された媒体を流すように加熱・循環手段及び冷却・循環手段を制御する制御手段とを具備する。
このように、周囲と断熱された入子のみに温度制御用の媒体を通す媒体通路を設けて、この媒体通路に加熱媒体配管を介して加熱・循環手段から加熱された媒体が通されて入子のみが加熱され、この媒体通路に冷却媒体配管を介して冷却・循環手段から冷却された媒体が通されて入子のみが冷却されるため、熱エネルギが極めて効率良く用いられて、成形キャビティ内を迅速に加熱・冷却することができる。
したがって、省エネルギに貢献するとともに、成形サイクルを短縮化してランニングコストを低減することができる。
また、樹脂成形用金型が開いたことを検出する型開検出手段と、溶融樹脂で成形キャビティが充填されたことを検出するキャビティ充填検出手段とを設けて、型開検出手段から型開信号が出力されたときには入子が加熱され、キャビティ充填検出手段からキャビティ充填信号が出力されたときには入子が冷却されるため、最も適切なタイミングで加熱と冷却を切り替えることができる。
そして、型開検出手段には接触センサや近接センサ等を用いることができ、キャビティ充填検出手段には圧力センサや熱電対、測温抵抗体等を用いることができるため、赤外線温度センサに比べて安価であることから、イニシャルコストを低減することができる。
このようにして、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる樹脂成形用金型ユニットとなる。
請求項2に係る樹脂成形用金型ユニットにおいては、加熱・循環手段によって加熱される媒体と冷却・循環手段によって冷却される媒体とは同じ物質からなる媒体であり、媒体通路を通過して入子の外に出てくる媒体を加熱・循環手段または冷却・循環手段のいずれかに流す切替手段と、媒体通路を通過して入子の外に出てくる媒体の温度を測定する媒体温度測定手段と、媒体温度測定手段によって測定される媒体の温度が所定温度以上であれば媒体を加熱・循環手段に流し、温度測定手段によって測定される媒体の温度が所定温度未満であれば媒体を冷却・循環手段に流すように、切替手段を制御する切替制御手段とを具備する。
したがって、所定温度以上の媒体は加熱・循環手段に流され、所定温度未満の媒体は冷却・循環手段に流されることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、加熱・循環手段において必要とされる加熱のためのエネルギも、冷却・循環手段において必要とされる冷却のためのエネルギも、ともに節約することができ、より一層省エネルギ化を図ることができて、ランニングコストを低減することができる。
請求項3に係る樹脂成形用金型ユニットにおいては、所定温度が合成樹脂の軟化温度またはガラス転移温度であることから、請求項2に係る発明の効果に加えて、媒体通路を通過して入子の外に出てくる媒体を、より適切に加熱・循環手段と冷却・循環手段とに振り分けることができ、より一層省エネルギ化を図ることができる。
なお、合成樹脂によっては軟化温度が明確に定義されないものも存在するため、その場合には軟化温度の代わりにガラス転移温度を所定温度とするものである。
請求項4に係る樹脂成形用金型の温度制御方法は、樹脂成形用金型には成形キャビティを形成する入子を設け、入子のみに温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路を設けて、入子と入子を除く樹脂成形用金型との間を断熱し、樹脂成形用金型が開いたら媒体通路に低温の冷却媒体を流すのを中断して媒体通路に高温の加熱媒体を流し、成形キャビティに溶融樹脂が充填されたら媒体通路に高温の加熱媒体を流すのを中断して媒体通路に低温の冷却媒体を流して、高温の加熱媒体と低温の加熱媒体を媒体通路に交互に流すものである。
このように、周囲と断熱された入子のみに温度制御用の媒体を通す媒体通路を設けて、この媒体通路に高温の加熱媒体が流されて入子のみが加熱され、この媒体通路に低温の冷却媒体が流されて入子のみが冷却されるため、熱エネルギが極めて効率良く用いられて、成形キャビティ内を迅速に加熱・冷却することができる。
したがって、省エネルギに貢献するとともに、成形サイクルを短縮化してランニングコストを低減することができる。
また、樹脂成形用金型が開いたときには入子が加熱され、溶融樹脂で成形キャビティが充填されたときには入子が冷却されるため、最も適切なタイミングで加熱と冷却を切り替えることができる。
そして、樹脂成形用金型が開いたことを検出する手段としては接触センサや近接センサ等を用いることができ、成形キャビティに溶融樹脂が充填されたことを検出する手段としては圧力センサや熱電対、測温抵抗体等を用いることができるため、赤外線温度センサに比べて安価であることから、イニシャルコストを低減することができる。
このようにして、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる樹脂成形用金型の温度制御方法となる。
請求項5に係る樹脂成形用金型の温度制御方法においては、加熱媒体と冷却媒体とは同じ材料からなる媒体であり、樹脂成形用金型の外部に媒体通路に接続された媒体を加熱する加熱手段と媒体を冷却する冷却手段とを配置し、媒体通路を通過して入子の外に出てくる媒体の温度を測定して、所定の温度以上であれば媒体を加熱手段に流し、所定の温度未満であれば媒体を冷却手段に流すものである。
したがって、所定温度以上の媒体は加熱手段に流され、所定温度未満の媒体は冷却手段に流されることから、請求項4に係る発明の効果に加えて、加熱手段において必要とされる加熱のためのエネルギも、冷却手段において必要とされる冷却のためのエネルギも、ともに節約することができ、より一層省エネルギ化を図ることができて、ランニングコストを低減することができる。
請求項6に係る樹脂成形用金型の温度制御方法においては、所定温度が合成樹脂の軟化温度またはガラス転移温度であることから、請求項5に係る発明の効果に加えて、媒体通路を通過して入子の外に出てくる媒体を、より適切に加熱手段と冷却手段とに振り分けることができ、より一層省エネルギ化を図ることができる。
なお、合成樹脂によっては軟化温度が明確に定義されないものも存在するため、その場合には軟化温度の代わりにガラス転移温度を所定温度とするものである。
図1は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの全体構成を示す模式図である。 図2は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの制御手段の全体構成を示すブロック図である。 図3は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの制御手段において実行される制御プログラムのフローチャートである。 図4(a)は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットによって成形される樹脂成形品(射出成形体)を示す斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 図5は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの樹脂成形用金型において上型と下型が閉じた状態の縦断面を示す縦断面図である。 図6は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの樹脂成形用金型における入子及び媒体通路の形状を示す斜視透視図である。 図7は図6の4個の入子を組み合わせた状態を示す斜視図である。 図8は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの成形キャビティにおいて、射出成形が開始された直後の状態を示す部分拡大縦断面図である。 図9は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの成形キャビティにおいて、射出成形が完了した時点の状態を示す部分拡大縦断面図である。 図10(a)は本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットにおいて、射出成形が開始された直後のガスベント部分を示す部分拡大縦断面図、(b)は射出成形が完了した時点のガスベント部分を示す部分拡大縦断面図である。 図11は本発明の実施例2に係る樹脂成形用金型ユニットの全体構成を示す模式図である。 図12は本発明の実施例2に係る樹脂成形用金型ユニットの切替制御手段において実行される制御プログラムのフローチャートである。 図13は本発明の実施例3に係る樹脂成形用金型ユニットの全体構成を示す模式図である。 図14は本発明の実施例3に係る樹脂成形用金型ユニットの制御手段において実行される制御プログラムのフローチャートである。
本発明に係る樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法は、溶融樹脂を成形キャビティ内に流入させて固化させることによって樹脂成形品を得る樹脂成形方法であれば、どのような樹脂成形方法にも適用することができる。
このような樹脂成形方法としては、射出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形(中空成形)法、圧縮成形法等がある。特に、射出成形法に応用することによって、イニシャルコスト及びランニングコストの低減効果が如実に現れることから、より好ましい。
なお、合成樹脂として、本明細書及び特許請求の範囲においては、所謂FRP(繊維強化プラスチック)も含まれることは前述した通りであるが、セラミック粒子と合成樹脂を混練して射出成形法や圧縮成形法によってセラミック・合成樹脂混合成形体を成形する方法についても、本発明に係る樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法を応用することができる。
本発明に係る樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法を実施するためには、樹脂成形用金型の中に成形キャビティを形成する入子を設けるとともに、入子を周囲から断熱する必要がある。
一般に、樹脂成形用金型の材料としては、機械構造用炭素鋼(S45C,S50C,S55C等)、クロムモリブデン鋼(SCM4等)、炭素工具鋼(SK7等)等が使用されるが、入子の材料としてはより精密性・耐摩擦性等が要求されることから、ダイス鋼(SKD4,SKD5,SKD6,SKD61等)、高速度鋼(SKH2等)等を使用することがより好ましい。
また、入子を周囲から断熱する手段としては、断熱材や空間を設ける等の方法がある。断熱材としては、グラスウール、ロックウール、羊毛断熱材、セルロース断熱材等の繊維系断熱材、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等の発泡系断熱材、押出し法ポリスチレン(XPS)、真空断熱材等がある。
更に、入子のみを加熱・冷却するための媒体通路を設ける必要があり、媒体通路としては入子の内部に成形キャビティに連通しないように貫通孔として設けることもでき、入子の外周を取り巻く配管状に設けることもできるが、構造が簡単であり加熱・冷却の効率も良いことから、入子の内部に貫通孔として設けることが好ましい。
ここで、加熱・冷却の効率をより向上させるためには、貫通孔を入子の中で複雑に蛇行させて、媒体通路の流域体積をできるだけ大きくすることが好ましい。
このような複雑な媒体通路を形成する方法としては、例えば、平板形状の鋼材の片面に蛇行した通路の下半分を彫り込んで、もう一枚の平板形状の鋼材の片面に蛇行した通路の上半分を彫り込んで、これらの鋼板を合わせて蛇行した貫通孔としての媒体通路を形成する方法がある。
これを更に発展させて、鋼板の上下方向にも貫通孔を設けて、三次元的に蛇行した媒体通路を形成することがより好ましい。このためには、四枚以上の鋼板を重ね合わせて入子を形成する必要がある。
また、本発明を実施するためには、赤外線温度センサに比べて安価で、かつ、応答速度が同等レベルの「キャビティ温度測定手段」または「キャビティ充填検出手段」としての熱電対や測温抵抗体等が必要となる。このような応答速度が速く安価な熱電対としては、(株)マイセック製のPT−100/550UN、日本電測(株)製のT36Sシース熱電対、山里産業(株)製のシース熱電対(THERMIC)及びセラサーモ熱電対、(株)誠計器製の成形機用熱電対SMT−13S、(株)ツールハウス製のシース熱電対TCSシリーズ、(株)アンベエスエムティ製の極細熱電対KFGシリーズ等を用いることができる。
また、応答速度が速く安価な測温抵抗体としては、シース形測温抵抗体Pt100Ω(JIS−C1606−1989)、(株)アオイ電熱製の白金測温抵抗体マイカ型及びセラミック型、細管形測温抵抗体(JIS−C1604−1997)、山里産業(株)製のシース測温抵抗体(RESIMIC)及び細管形測温抵抗体(RESISLIM)、(有)測温工業製の薬品温度測定用測温抵抗体等を用いることができる。
[実施例1]
以下、本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット及び樹脂成形用金型の温度制御方法について、図1乃至図10を参照して説明する。
まず、本発明の実施例1に係る樹脂成形用金型ユニットの全体構成について、図1の模式図を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1においては、機械構造用炭素鋼(S45C)からなる上下1対の樹脂成形用金型としての射出成形金型2A(上型),2B(下型)の内部に、ダイス鋼(SKD1)からなる上下1対の入子3A,3Bが設けられ、上下1対の入子3A,3Bが閉じられることによって成形キャビティ5が形成される。
入子3Aには媒体通路6Aが設けられており、入子3Bには媒体通路6Bが設けられ、これらの媒体通路6A,6Bは、加熱媒体配管8a及び冷却媒体配管9aを介して、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9に接続されている。
ここで、入子3Aと入子3Bには媒体通路6A,6Bがそれぞれ一本ずつしかなく、また加熱媒体配管8aと冷却媒体配管9aも合流しており、加熱された媒体と冷却された媒体が共通の通路を流れるように構成されている。
本実施例1においては、温度制御用の媒体として、Neo−SK Oil 1400とも呼ばれるジベンジルトルエン(メチルビス(フェニルメチル)ベンゼン)を用いた。
加熱・循環手段8は、加熱機構としてのヒーター及び加熱された媒体を蓄えるタンク、加熱された媒体の温度を測定してヒーターをオンオフさせる温度制御装置と、循環機構としてのタンクに蓄えられた加熱された媒体を加熱媒体配管8aに圧送するダイヤフラムポンプから構成されている。
冷却・循環手段9は、冷却機構としてのチラー及び冷却された媒体を蓄えるタンク、冷却された媒体の温度を測定してチラーをオンオフさせる温度制御装置と、循環機構としてのタンクに蓄えられた冷却された媒体を冷却媒体配管9aに圧送するダイヤフラムポンプから構成されている。
また、本実施例1においては、下型2B及び入子3Bには、ガスベント11及びガスベント11から下型2Bの外部につながる排気孔13が設けられている。
更に、本実施例1においては、入子3A,3Bと、入子3A,3Bを除く樹脂成形用金型2A,2Bとの間を断熱する断熱手段として、複数個の空間7を設けている。具体的には、樹脂成形用金型2A,2Bの内面と接する入子3A,3Bの外面には複数本の溝7が設けられている。
なお、図1は模式図であり、図1においては射出成形金型2A,2Bの右側面から、ゲートキャビティ4を介して溶融樹脂MRが流入するように描かれているが、実際は図5において説明するように、射出成形金型2A,2Bは成形キャビティ5を複数個有する多数個取りの金型であり、射出成形機の射出ノズルは上型2Aの上面に接して、上型2Aの上面から溶融樹脂MRが流入する。
また、成形キャビティ5の近傍には、キャビティ温度測定手段10が設けられている。本実施例1においては、キャビティ温度測定手段10として、応答速度の速い熱電対(Kタイプ)((株)アンベエスエムティ製の極細熱電対KFGシリーズ)を、図1に示されるように、入子3Bの成形キャビティ5の近傍に設置した。
更に、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1においては、キャビティ温度測定手段10によって測定された成形キャビティ5内の温度に応じて、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9を制御する制御手段12が設けられている。
図2のブロック図に示されるように、制御手段12は、キャビティ温度測定手段10及び加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9から出力される電気信号が入力する入力ポート51と、アナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器52と、中央処理装置(CPU)54とメモリ装置を有するマイクロプロセッサからなる演算部53と、デジタル信号をアナログ信号である電気信号に変換するD/A変換器58と、電気信号を出力する出力ポート59とを備えたコンピュータシステムである。
マイクロプロセッサからなる演算部53は、演算及び制御を行うCPU54、CPU54が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用するRAM55、制御用プログラム等が記憶されたROM56、タイマ57等を備えている。RAM55、ROM56としては半導体メモリ、磁気コア等が使用され、演算及び制御を行うCPU54は、MPU等の演算機能を有するものの使用が可能である。
ROM56には各種のプログラムが記憶され、RAM55には各種のデータが記憶されるようになっており、ROM56がEEPROMの場合には、外部記憶装置からプログラムやデータ等を読み出してROM56に書き込むことも可能である。
キャビティ温度測定手段10としての熱電対によって測定された温度のアナログ信号は、電気配線によって制御手段12の入力ポート51に入力され、A/D変換器52でデジタル信号に変換されて、演算部53においてROM56に記憶された制御用プログラムにしたがって所定の下限温度及び上限温度と比較され、その演算結果を示すデジタル信号がD/A変換器58でアナログ信号に変換されて、出力ポート59から出力され、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9が制御される。
なお、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9からは、それぞれの加熱機構及び冷却機構が稼働している場合には、稼働信号が制御手段12の入力ポート51に入力される。
かかる構成を有する本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1において、ROM56に記憶された制御用プログラムにしたがって実行される樹脂成形用金型2A,2Bの温度制御方法について、上記図1,上記図2及び図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、射出成形が開始されるに当たって、射出成形機の電源が入れられるとともに、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9の加熱機構及び冷却機構の稼働スイッチが入れられる(射出成形が終了される場合には、加熱機構及び冷却機構の稼働スイッチが切られる)。これによって、樹脂成形用金型ユニット1が稼働して、図3のフローチャートのステップS1で制御が開始され、ステップS2で射出成形中か否か、即ち加熱・循環手段8の加熱機構及び冷却・循環手段9の冷却機構が稼働しているか否かが判断される。
具体的には、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9から稼働信号が制御手段12に入力されているか否かで判断される。そして、射出成形中でなければステップS7で加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9を完全に停止させて、ステップS8で制御を終了する。
なお、射出成形中か否かを判断する方法として、射出成形機の電源が入っているか否かによって判断する方法も考えられるが、射出成形機から配線を取り出さなければならないという難点がある。
一方、射出成形中であれば、ステップS3で成形キャビティ5内の温度が所定の下限温度を下回っているか否かが判断される。即ち上型2Aと下型2Bとが閉じられて成形キャビティ5内が空の状態で、キャビティ温度測定手段10としての熱電対から測定温度の電気信号が出力され、制御手段12に入力される。
この時点においては、成形キャビティ5内の温度は所定の下限温度(100℃)を下回っているため、ステップS3からステップS4へ進み、制御手段12から加熱・循環手段8のうちの循環機構を稼働させる信号が出力され、加熱・循環手段8から加熱媒体配管8aを介して媒体通路6A,6Bに、280℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンが流される。
そして、ステップS2で再び射出成形中か否かが判断されて、射出成形中であれば、再びステップS3で成形キャビティ5内の温度が所定の下限温度を下回っているか否かが判断される。媒体通路6A,6Bに280℃に加熱されたジベンジルトルエンが流されることによって、成形キャビティ5内の温度が所定の下限温度である100℃以上になれば、ステップS3からステップS5へ進み、成形キャビティ5内の測定温度が所定の上限温度(300℃)を上回っているか否かが判断される。
射出成形が実施されるまでは、成形キャビティ5内の測定温度が所定の上限温度である300℃を上回ることはないため、ステップS5からステップS2へ戻って、上型2Aと下型2Bの加熱が続行される。
一方、これと並行して上型2Aと下型2Bとが閉じられて成形キャビティ5が形成され、図示しない射出成形機から400℃に加熱溶融された溶融樹脂MRとしてのポリエーテルエーテルケトン(以下、「PEEK」ともいう。)(融点334℃)が、ゲートキャビティ4を介して成形キャビティ5内に流入し、充填される。
これによって、キャビティ温度測定手段10としての熱電対から出力される成形キャビティ5内の測定温度は所定の上限温度である300℃を上回るため、ステップS5からステップS6へ進み、制御手段12から加熱・循環手段8のうちの循環機構を停止させるとともに冷却・循環手段9のうちの循環機構を稼働させる信号が出力され、280℃に加熱されたジベンジルトルエンの流れが停止するとともに、冷却・循環手段9から冷却媒体配管9aを介して、媒体通路6A,6Bに50℃に冷却された媒体としてのジベンジルトルエンが流される。
そして、50℃に冷却された媒体としてのジベンジルトルエンによって、成形キャビティ5内に充填された溶融樹脂MRが固化して、所定の下限温度である100℃を下回った時点で、ステップS3からステップS4へ進み、制御手段12から冷却・循環手段9のうちの循環機構を停止させるとともに加熱・循環手段8のうちの循環機構を稼働させる信号が出力され、50℃に冷却されたジベンジルトルエンの流れが停止するとともに、加熱・循環手段8から加熱媒体配管8aを介して媒体通路6A,6Bに、280℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンが流される。
なお、成形キャビティ5内に充填された溶融樹脂MRが固化した樹脂成形体は、冷却過程の途中または冷却過程の終了の時点で、上型2Aと下型2Bとが開かれて成形キャビティ5から取り出される。樹脂成形体が100℃以下に冷却される冷却過程の途中の段階で樹脂成形体が取り出された場合には、その時点で成形キャビティ5内は空になって急速に冷却されて100℃以下になるため、ステップS3からステップS4へ進むことから、樹脂成形体を早く取り出すほど成形サイクルが短縮される。
更に、本実施例1に係る樹脂成形用金型2A,2Bにはガスベント11が設けられているため、溶融樹脂MRを高速で充填する高速成形を行うことができ、これによって一層成形サイクルは短縮される。
これらの一連の工程は、射出成形が終了して加熱・循環手段8の加熱機構及び冷却・循環手段9の冷却機構が稼働を停止して、ステップS2からステップS7へ進んで加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9を完全に停止させて、ステップS8で制御を終了するまで繰り返される。
このように、図3に示されるフローチャートにしたがってこれらの工程が繰り返されることによって、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1及び樹脂成形用金型2A,2Bの温度制御方法においては、このように、入子3A,3Bのみの加熱・冷却が繰り返されて所謂ヒートサイクル成形が実施され、これによって合成樹脂としてスーパーエンプラであるPEEKを用いても、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品を得ることができる。
また、入子3A,3Bのみを加熱・冷却しているため省エネルギ化を図ることができ、更に、加熱と冷却を切り替えるタイミングを決定する手段として、安価である熱電対を使用しているため、設備費用を低減することができる。
次に、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1の樹脂成形用金型2A,2Bによって成形される樹脂成形品について、図4を参照して説明する。図4(a)に示されるように、本実施例1に係る樹脂成形用金型2A,2Bによって成形される樹脂成形品W1は、自動車用ドアの開閉時に人が手で持つための樹脂製のハンドルである。
図4(c)に示される樹脂成形品W1の最も薄い部分W1cの厚さは2mmであり、厚さの薄い樹脂成形品といえる。また、上述の如く、本実施例1においてはこの樹脂成形品W1を融点の高い合成樹脂であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で射出成形しており、成形欠陥を生じさせないためには上述の如くヒートサイクル成形を実施する必要がある。
本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1の樹脂成形用金型2A,2Bにおいては、このような樹脂成形品としてのハンドルW1を多数個取りで一度に成形するものであり、また、図4(b),(c)に示されるように、ゲートをハンドルW1の取付け側W1aに設けて成形するものである。したがって、ゲートW1aから最も離れた位置にあるハンドルW1の他端部W1bに、ガスベントが設けられる。
次に、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1における樹脂成形用金型2A,2Bの全体構成について、図5の縦断面図を参照して説明する。なお、図5においては、図を見やすくするために、媒体通路は図示省略している。
図5に示されるように、本実施例1に係る樹脂成形用金型2A,2Bは、1対の金型としての上型2A及び下型2Bによって構成されており、上型2Aは射出成形機の固定部分に固定される固定側金型であり、下型2Bは射出成形機の昇降部分に固定される可動側金型である。上型2Aと下型2Bを閉じることによって、その間に樹脂成形品W1の形状に対応した1対の成形キャビティ5A,5Bが、図面の垂直方向に並んで複数個形成される。
すなわち、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1の樹脂成形用金型2A,2Bは、1回の射出成形によって樹脂成形品W1を同時に偶数個製造する(多数個取りの)樹脂成形用金型である。上型2Aと下型2Bを閉じることによって、同時に、射出成形機の下端(樹脂射出ノズルの先端)がスプルーブッシュ19の上端18に密着した状態において、樹脂射出ノズルから射出される溶融樹脂を2つの成形キャビティ5A,5Bに導くためのゲートキャビティ4も形成される。
上型2Aには、これらのゲートキャビティ4の一部と成形キャビティ5A,5Bの上面側の壁面が設けられた入子3AA,3ABが固定されており、下型2Bには、これらのゲートキャビティ4の一部と成形キャビティ5A,5Bの下面側の壁面が設けられた入子3BA,3BBが固定されている。更に、下型2Bには底部プレート2Baが設けられており、底部プレート2Baには、合計7本のエジェクタピン20が底部プレート2Baと一体に昇降可能に固定されている。
そして、入子3BA,3BBには、成形キャビティ5A,5Bの下面側の壁面に接して、ガスベント11A,11Bが設けられており、これらのガスベント11A,11Bは、排気孔13A,13Bを介して、下型2Bの外部に連通している。これらのガスベント11A,11Bによって、射出成形時に、成形キャビティ5A,5B内の空気及び溶融樹脂から発生するガスが、確実にガス抜きされて、ショートショットやウエルドライン等の成形欠陥が発生する事態が、確実に防止される。
次に、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1の樹脂成形用金型2A,2Bにおける図5で右側に位置している入子3AB,3BB及び媒体通路の構成について、図6を参照して説明する。図6は、入子3AB,3BBを取り出して、入子3AB,3BBの外形を二点鎖線で示し、媒体通路を実線で示した斜視透視図である。なお、図5で左側に位置している入子3AA,3BA及び媒体通路の構成も同様である。
図6に示されるように、上側の入子3ABは一体である(但し、4枚の鋼板を重ねて構成されている)が、下側の入子3BBは、更に入子3BBa,入子3BBb及び入子台3BBcの3個に分割される。
そして、図6に示されるように、これらの入子3AB,3BBa,3BBbには、図1に模式的に示される媒体通路6A,6Bよりも遥かに複雑な媒体通路6AB,6BBa,6BBbが形成されている。これらの媒体通路6AB,6BBa,6BBbは細かく蛇行するとともに、媒体通路6ABは二段構造に、媒体通路6BBa,6BBbは三段構造になっている。
即ち、媒体通路6ABは、片面または両面に媒体通路6ABの上半分または下半分を彫り込んだ鋼板4枚を重ね合わせて形成されており、媒体通路6BBa,6BBbは片面または両面に媒体通路6BBa,6BBbの上半分または下半分を彫り込んだ鋼板6枚を重ね合わせて形成されている。
なお、入子台3BBcに設けられた太い直線状の通路6BBcには、冷却水が常時流される。
そして、図7に示されるように、入子台3BBcに、左右対称の入子3BBa,入子3BBbを嵌め込むことによって、下側の入子3BBが形成され、下側の入子3BBに上側の入子3ABを重ねることによって、成形キャビティ5Bが形成される。図5の左側に図示される成形キャビティ5Aも、全く同様にして形成される。
更に、図7に示されるように、これらの上側の入子3AB及び下側の入子3BBの外周面には、断熱手段としての断熱空間を形成するための溝7が複数本設けられている。
かかる構成を有する本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1においては、図示しない樹脂射出ノズルの先端が図5に示されるスプルーブッシュ19の上端18に密着した状態で、樹脂射出ノズルから溶融樹脂が射出されると、図9に示されるように、スプルーブッシュ19の内部に樹脂が充填された樹脂スプルーP1、ゲートキャビティ4に樹脂が充填された樹脂ランナーP2、成形キャビティ5Aに樹脂が充填された樹脂成形品W1が、合成樹脂によって一体に成形される。
そして、図8,図9に示されるように、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1の下型2Bには、樹脂成形品W1の樹脂ランナーP2と反対側の端に接して、ガスベント11Aが設けられている。なお、上述したように、樹脂成形用金型ユニット1は、1回の射出成形によって樹脂成形品W1を同時に偶数個製造する(多数個取りの)樹脂成形用金型ユニットであり、下型2Bには1対の成形キャビティ5A,5Bが更に複数個ずつ(5C,5D,……)設けられている。
次に、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1のより詳細な構造と、射出成形時における各部の動作について、図8乃至図10を参照して説明する。本実施例1に係る樹脂成形用金型2A,2Bにおいて、合成樹脂としてのPEEKが射出成形された直後の状態を示す部分縦断面図である図8に示されるように、溶融樹脂の先端部分P3が、樹脂スプルーP1及び樹脂ランナーP2を形成しながら流入して、閉鎖部材14Aの前面に到達するまでは、ガスベント11Aが開いているため、成形キャビティ5A内の空気及び溶融樹脂から発生したガスは、ガスベント11Aから排気孔13Aを通って樹脂成形用金型2Bの外部に押し出される。
その後、図9に示されるように、溶融樹脂の先端部分P3によって閉鎖部材14Aの前面が押圧されると、閉鎖部材14Aがスライドしてシリンダ部15Aに密着する。このように閉鎖部材14Aがばね部材16Aの付勢力に抗してスライドすることによって、図9に示されるように、溶融した樹脂材料の先端部分P3が到達する前に、ガスベント11Aが確実に閉じられて、樹脂成形品W1が製造される。
続いて、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1におけるガスベント11Aを構成する各部の寸法について、図10を参照して説明する。
図8及び図9においては、説明の便宜のため、射出成形時におけるガスベント11Aの閉鎖部材14Aとシリンダ部15Aとの間隔を大きく誇張して図示しているが、実際は図10(a)に示されるように、閉鎖部材14Aの先端部分14Abとシリンダ部15Aとの間隔は僅か0.15mmしかなく、溶融樹脂の先端部分P3が到達する前に、この0.15mmの隙間から、成形キャビティ5A内の空気及び溶融樹脂から発生したガスが、矢印に示されるように排出されてガス抜きが行われる。
そして、溶融樹脂の先端部分P3によって閉鎖部材14Aの先端部分14Abの前面が押圧されると、閉鎖部材14Aがばね部材16Aの付勢力に抗して0.3mmスライドして、図10(b)に示されるように、先端部分14Abがシリンダ部15Aに密着する。これによって、溶融した樹脂材料の先端部分P3が到達する前に、ガスベント11Aが確実に閉じられて、樹脂成形品W1が射出成形される。
ここで、図10(b)に示されるように、閉鎖部材14Aの先端部分14Abは30度の角度で下方に突出しており、図10(a)に示されるように、溶融樹脂の先端部分P3は上方から流入するため、0.15mmの間隔の隙間は溶融樹脂の先端部分P3の裏側に形成される。したがって、溶融樹脂の先端部分P3が回り込んで0.15mmの隙間に入り込む前に、確実にガスベント11Aを閉じることができる。
このように、本実施例1に固有の効果として、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1においては、ガスベント11Aのガス抜き用の隙間を、溶融樹脂の先端部分P3が流入してくる側の裏側に設けているため、溶融樹脂の先端部分P3が回り込んでガスベント11Aの隙間に入り込む前に、確実に、ガスベント11Aを閉じることができるという作用効果が得られる。
以上説明したように、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1及び樹脂成形用金型の温度制御方法においては、成形キャビティ5(5A,5B,……)を形成する入子としての入子上型3A(3AA,3AB,……)及び入子下型3B(3BA,3BB,……)に媒体通路6A,6Bを設けて、入子上型3A及び入子下型3Bを断熱空間7で周囲から断熱することで必要な成形キャビティ5周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、ランニングコストも低減することができる。
また、キャビティ温度測定手段10として、赤外線温度センサ(例えば、双葉電子工業(株)樹脂温度センサEPSSZLシリーズ:134,400円〜165,900円)に比べて安価で、かつ、応答速度の速い熱電対(Kタイプ)として(株)アンベエスエムティ製の極細熱電対KFGシリーズ(3000円〜13,600円)を使用しているため、設備費用も低減することができる。
そして、熱電対で測定される成形キャビティ5内の温度が所定の下限温度である100℃を下回ったときには、媒体通路6A,6Bに280℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンを流し、測定される成形キャビティ5内の温度が所定の上限温度である300℃を上回ったときには、280℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンを流すのを中断して、50℃に冷却された媒体としてのジベンジルトルエンを流し、所謂ヒートサイクル成形を実施する。
これによって、合成樹脂としてスーパーエンプラであるPEEKを用いても、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品を得ることができる。
なお、本実施例1においては、所定の下限温度を100℃とし、所定の上限温度を300℃としているが、通常PEEK(融点334℃)は射出成形機の射出ノズルの温度を400℃程度まで上げて射出成形されるため、成形キャビティ5内の加熱・冷却に時間が掛かって成形サイクルが長くなる場合には、所定の下限温度を100℃〜150℃程度として、所定の上限温度を310℃〜350℃程度としても良い。
PEEKは、200℃程度まで樹脂温度が下がれば充分取り出せる程度に固化するので、所定の下限温度を100℃〜150℃程度、更に150℃〜200℃程度としても問題はない。
このようにして、本実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1及び樹脂成形用金型の温度制御方法においては、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる。
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る樹脂成形用金型ユニットの全体構造及び樹脂成形用金型の温度制御方法について、図11の模式図及び図12のフローチャートを参照して説明する。
図11に示されるように、本実施例2に係る樹脂成形用金型ユニット21においては、上記実施例1と同様に、機械構造用炭素鋼(S45C)からなる上下1対の樹脂成形用金型としての射出成形金型2A(上型),2B(下型)の内部に、ダイス鋼(SKD1)からなる上下1対の入子3A,3Bが設けられ、上下1対の入子3A,3Bが閉じられることによって成形キャビティ5が形成される。
入子3Aには媒体通路6Aが設けられており、入子3Bには媒体通路6Bが設けられ、これらの媒体通路6A,6Bは、加熱媒体配管28a及び冷却媒体配管29aを介して、加熱・循環手段28及び冷却・循環手段29に接続されている。
ここで、入子3Aと入子3Bには媒体通路6A,6Bがそれぞれ一本ずつしかなく、また加熱媒体配管28aと冷却媒体配管29aも合流しており、加熱された媒体と冷却された媒体が共通の通路を流れるように構成されている。
本実施例2においても、温度制御用の媒体として、ジベンジルトルエンを用いた。
また、本実施例2においても、下型2B及び入子3Bには、ガスベント11及びガスベント11から下型2Bの外部につながる排気孔13が設けられている。
更に、本実施例2においても、入子3A,3Bと、入子3A,3Bを除く樹脂成形用金型2A,2Bとの間を断熱する断熱手段として、複数個の空間7を設けている。具体的には、樹脂成形用金型2A,2Bの内面と接する入子3A,3Bの外面には複数本の溝7が設けられている。
また、成形キャビティ5の近傍には、キャビティ温度測定手段10が設けられている。本実施例2においても、キャビティ温度測定手段10として、応答速度の速い熱電対(Kタイプ)((株)アンベエスエムティ製の極細熱電対KFGシリーズ)を、図11に示されるように、入子3Bの成形キャビティ5の近傍に設置した。
更に、本実施例2に係る樹脂成形用金型ユニット21においても、キャビティ温度測定手段10によって測定された成形キャビティ5内の温度に応じて、加熱・循環手段28及び冷却・循環手段29を制御する制御手段12が設けられている。
加熱・循環手段28は、加熱機構としてのヒーター及び加熱された媒体を蓄えるタンク、加熱された媒体の温度を測定してヒーターをオンオフさせる温度制御装置と、循環機構としてのタンクに蓄えられた加熱された媒体を加熱媒体配管28aに圧送するダイヤフラムポンプから構成されている。
冷却・循環手段29は、冷却機構としてのチラー、冷却された媒体を蓄えるタンク、冷却された媒体の温度を測定してチラーをオンオフさせる温度制御装置と、循環機構としてのタンクに蓄えられた冷却された媒体を冷却媒体配管29aに圧送するダイヤフラムポンプから構成されている。
なお、図11は模式図であり、図11においては射出成形金型2A,2Bの右側面から、ゲートキャビティ4を介して溶融樹脂MRが流入するように描かれているが、実際は射出成形金型2A,2Bは成形キャビティ5を複数個有する多数個取りの金型であり、射出成形機の射出ノズルは上型2Aの上面に接して、上型2Aの上面から溶融樹脂MRが流入する。
本実施例2に係る樹脂成形用金型ユニット21が、上記実施例1に係る樹脂成形用金型ユニット1と異なるのは、媒体通路6A及び媒体通路6Bを流れて戻ってくる媒体が、切替手段としての三方電磁弁23によって、加熱・循環手段28または冷却・循環手段29のいずれかに流される点と、媒体通路6A及び媒体通路6Bを流れて戻ってくる媒体が合流する位置よりも三方電磁弁23側の媒体配管に、媒体温度測定手段22が設けられている点である。
媒体温度測定手段22としては、本実施例2においては、(株)ツールハウス製のシース熱電対TCSシリーズを用いて、媒体配管に差し込んで直接媒体の温度を測定した。
更に、媒体温度測定手段22による測定信号を受信して、切替手段としての三方電磁弁23を制御する切替制御手段24が設けられている。
切替制御手段24も、制御手段12と同様に、媒体温度測定手段22から出力される電気信号が入力する入力ポートと、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、中央処理装置(CPU)とメモリ装置を有する演算部と、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器と、アナログ信号を出力する出力ポートとを備えたコンピュータシステムである。
なお、加熱・循環手段28及び冷却・循環手段29からは、それぞれの加熱機構及び冷却機構が稼働している場合には、稼働信号が制御手段12及び切替制御手段24の入力ポートに入力される。
かかる構成を有する本実施例2に係る樹脂成形用金型ユニット21における温度制御方法について、図11及び図12のフローチャートを参照して説明する。
金型温度の制御方法については、上記実施例1で説明した図3のフローチャートと同様であるから、説明を省略する。但し、合成樹脂としては、実施例1と異なり、ポリカーボネート(融点220℃〜230℃)を用いて、図示しない射出成形機から300℃に加熱溶融された溶融樹脂MRとしてのポリカーボネートを流入させ、加熱・循環手段28からは加熱媒体配管28aを介して媒体通路6A,6Bに、200℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンが流される。そして、所定の下限温度は100℃に、所定の上限温度は210℃に設定される。
更に実施例1と異なるのは、媒体としてのジベンジルトルエンによって入子3A,3Bの加熱・冷却が繰り返されるのと並行して、媒体温度測定手段22としてのシース熱電対によって測定された媒体温度の電気信号が、切替制御手段24に入力されて、所定温度としてのポリカーボネートのガラス転移温度である150℃以上か否かによって、切替手段としての三方電磁弁23が制御される点である。
なお、ポリカーボネートの軟化温度は明確に定義されていないため、所定温度としてガラス転移温度を用いている。
即ち、図12のフローチャートに示されるように、樹脂成形用金型ユニット21が稼働開始するとともに、ステップS11で切替制御手段24による切替制御も開始され、まずステップS12で射出成形中か否か、即ち加熱・循環手段28の加熱機構及び冷却・循環手段29の冷却機構が稼働しているか否かが判断される。射出成形が行われていない場合には、ステップS16へ進んで切替制御は終了する。
射出成形中である場合には、ステップS13へ進んで、シース熱電対22によって測定された媒体温度が所定温度の150℃以上か否かが判断される。シース熱電対22によって測定された媒体温度が150℃以上である場合には、ステップS14へ進んで、三方電磁弁23は媒体を加熱・循環手段28に流すように切り替えられ、媒体温度が所定温度の150℃未満である場合には、ステップS15へ進んで、三方電磁弁23は媒体を冷却・循環手段29に流すように切り替えられる。
これによって、媒体としてのジベンジルトルエンが熱い場合には加熱・循環手段28に戻され、冷たい場合には冷却・循環手段29に戻されるため、加熱・循環手段28及び冷却・循環手段29において加熱・冷却のために消費される熱エネルギが節約され、一層の省エネルギ化を図ることができる。
かかる切替制御は、ステップS12で射出成形中ではないと判断されて、ステップS16へ進んで切替制御が終了するまで繰り返される。
このようにして、本実施例2に係る樹脂成形用金型ユニット21及び樹脂成形用金型の温度制御方法においては、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる。
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係る樹脂成形用金型ユニットの全体構造及び樹脂成形用金型の温度制御方法について、図13の模式図及び図14のフローチャートを参照して説明する。
図13に示されるように、本実施例3に係る樹脂成形用金型ユニット31においては、機械構造用炭素鋼(S45C)からなる上下1対の樹脂成形用金型としての射出成形金型32A(上型),32B(下型)の内部に、ダイス鋼(SKD1)からなる上下1対の入子33A,33Bが設けられ、上下1対の入子33A,33Bが閉じられることによって成形キャビティ35が形成される。
加熱・循環手段38は、加熱機構としてのヒーター及び加熱された媒体を蓄えるタンク、加熱された媒体の温度を測定してヒーターをオンオフさせる温度制御装置と、循環機構としてのタンクに蓄えられた加熱された媒体を加熱媒体配管38aに圧送するダイヤフラムポンプから構成されている。
冷却・循環手段39は、冷却機構としてのチラー及び冷却された媒体を蓄えるタンク、冷却された媒体の温度を測定してチラーをオンオフさせる温度制御装置と、循環機構としてのタンクに蓄えられた冷却された媒体を冷却媒体配管39aに圧送するダイヤフラムポンプから構成されている。
ここで、上記実施例1,2に係る樹脂成形用金型ユニット1,21と異なるのは、媒体通路が、加熱された媒体が流れる通路と冷却された媒体が流れる通路とが完全に分離独立して設けられている点である。
即ち、入子33Aには2本の媒体通路36Aa,36Abが設けられており、入子33Bには2本の媒体通路36Ba,36Bbが設けられ、これらの媒体通路36Aa,36Ab,36Ba,36Bbは、それぞれ独立した加熱媒体配管38a及び冷却媒体配管39aを介して、加熱・循環手段38及び冷却・循環手段39に接続されている。
したがって、加熱用の媒体と冷却用の媒体として、異なる物質からなる媒体を選択することができる。本実施例3においては、加熱用の媒体としてジベンジルトルエンを、冷却用の媒体として水を、それぞれ用いた。
更に、上記実施例1,2と異なる点として、上型32Aと下型32Bの境界面(パーティション面)に当たる部分には、型開検出手段40としての1対の接触センサが、上型32Aの下面と下型32Bの上面にそれぞれ設けられており、金型が閉じられて上型32Aの下面と下型32Bの上面とが接触すると接触信号が出力され、金型が開かれて上型32Aの下面と下型32Bの上面とが離れると、型開信号が出力される。
また、成形キャビティ35の近傍には、キャビティ充填検出手段41が設けられている。本実施例3においては、キャビティ充填検出手段41として、上記実施例1,2においてキャビティ温度測定手段として用いられた応答速度の速い熱電対(Kタイプ)を、入子33Bの成形キャビティ35の近傍に設置した。
なお、本実施例3においても、下型32B及び入子33Bには、ガスベント43及びガスベント43から下型32Bの外部につながる排気孔44が設けられている。
また、本実施例3においては、入子33A,33Bと、入子33A,33Bを除く樹脂成形用金型32A,32Bとの間を断熱する断熱手段として、断熱材としてのロックウール37を設けている。
更に、型開検出手段40及びキャビティ充填検出手段41からの出力信号を受けて加熱・循環手段38及び冷却・循環手段39を制御する制御手段42が設けられている。制御手段42も、制御手段12と同様に、型開検出手段40及びキャビティ充填検出手段41から出力される電気信号が入力する入力ポートと、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、中央処理装置(CPU)とメモリ装置を有する演算部と、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器と、アナログ信号を出力する出力ポートとを備えたコンピュータシステムである。
なお、加熱・循環手段38及び冷却・循環手段39からは、それぞれの加熱機構及び冷却機構が稼働している場合には、稼働信号が制御手段42の入力ポートに入力される。
また、図13は模式図であり、図13においては射出成形金型32A,32Bの右側面から、ゲートキャビティ34を介して溶融樹脂MRが流入するように描かれているが、実際は射出成形金型32A,32Bは成形キャビティ35を複数個有する多数個取りの金型であり、射出成形機の射出ノズルは上型32Aの上面に接して、上型32Aの上面から溶融樹脂MRが流入する。
かかる構成を有する本実施例3に係る樹脂成形用金型ユニット31における温度制御方法について、図13及び図14のフローチャートを参照して説明する。
まず、射出成形が開始されるに当たって、射出成形機の電源が入れられるとともに、加熱・循環手段8及び冷却・循環手段9の加熱機構及び冷却機構の稼働スイッチが入れられる。これによって、樹脂成形用金型ユニット31が稼働して、ステップS21で制御が開始され、ステップS22で射出成形中か否かが、加熱・循環手段38及び冷却・循環手段39から稼働信号が制御手段42の入力ポートに入力されているか否かで判断される。そして、射出成形中でない場合には、ステップS28で加熱・循環手段38及び冷却・循環手段39が完全に停止され、ステップS29で制御を終了する。
一方、射出成形中である場合には、ステップS23で型開信号が入力されたか否かが判断され、上型32Aと下型32Bとが開かれた時点で、型開検出手段40としての1対の接触センサから型開信号が出力され、制御手段42に入力されるため、ステップS24へ進んで、制御手段42から加熱・循環手段38のうちの循環手段を稼働させる信号が出力され、加熱・循環手段38から加熱媒体配管38aを介して媒体通路36Aa,36Baに、250℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンが流される。そして、ステップS22へ戻る。
型開信号が入力されていない場合には、ステップS25へ進んで、キャビティ充填信号が入力されたか否かが判断される。
ステップS24が実施されている間に、上型32Aと下型32Bとが閉じられて成形キャビティ35内が形成され、図示しない射出成形機から300℃に加熱溶融された溶融樹脂MRとしてのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう。)(軟化点約260℃)が、ゲートキャビティ34を介して成形キャビティ35内に流入し、充填される。これによって、キャビティ充填検出手段41としての熱電対からは成形キャビティ35内の温度が所定温度を上回っていることによって、間接的に成形キャビティ35が充填されたことが検出され、キャビティ充填信号が制御手段42に入力される。
これを受けて、ステップS25からステップS26へ進んで、制御手段42から加熱・循環手段38のうちの循環機構を停止させるとともに冷却・循環手段39のうちの循環機構を稼働させる信号が出力され、250℃に加熱されたジベンジルトルエンの流れが停止するとともに、冷却・循環手段39から冷却媒体配管39aを介して、媒体通路36Ab,36Bbに20℃に冷却された媒体としての水が流される。そして、ステップS22へ戻る。
所定時間が経過して、再び上型32Aと下型32Bとが開かれると、型開検出手段40としての1対の接触センサから型開信号が出力され、これを受けてステップS23からステップS24へ進んで、制御手段42から冷却・循環手段39の循環機構を停止させるとともに加熱・循環手段38の循環機構を稼働させる信号が出力され、20℃に冷却された水の流れが停止するとともに、加熱・循環手段38から加熱媒体配管38aを介して媒体通路36Aa,36Baに、250℃に加熱された媒体としてのジベンジルトルエンが流される。
かかる制御が、ステップS22で射出成形中でないと判断されて、ステップS27で加熱・循環手段38及び冷却・循環手段39が完全に停止され、ステップS28で制御を終了するまで繰り返される。
このように、入子33A,33Bのみの加熱・冷却を繰り返すことによって、所謂ヒートサイクル成形が実施され、これによって合成樹脂としてエンプラであるPETを用いても、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品を得ることができる。
また、入子33A,33Bのみを加熱・冷却しているため省エネルギ化を図ることができ、加熱と冷却を切り替えるタイミングを決定する手段として、安価である接触センサ及び熱電対を使用しているため、設備費用を低減できる。
このようにして、本実施例3に係る樹脂成形用金型ユニット31及び樹脂成形用金型の温度制御方法においては、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる。
上記各実施例においては、樹脂成形用金型ユニットを構成する樹脂成形用金型として、上型2A,32A及び下型2B,32Bからなる1対の樹脂成形用金型の場合について説明したが、1対の樹脂成形用金型としてはこのような縦型形式に限られるものではなく、横型形式であっても良い。また、必ずしも1対の樹脂成形用金型に限られるものではなく、三個以上の金型を組み合わせてなる樹脂成形用金型にも応用することができる。
また、上記各実施例においては、樹脂成形用金型ユニットによって成形される樹脂成形品として、自動車用ドアの樹脂製のハンドルを成形する場合について説明したが、樹脂成形品としてはこれに限られるものではなく、本発明に係る樹脂成形用金型ユニットは、どのような形状の樹脂成形品を成形する場合にも適用することができる。
更に、上記各実施例においては、ガスベント11,43のガス抜き用の隙間を、溶融樹脂MRの先端部分P3が流入してくる側の裏側に設けた場合についてのみ説明したが、ガスベントのガス抜き用の隙間はどの部分に設けられていても構わない。
また、上記各実施例においては、樹脂成形品を成形するための合成樹脂として、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)を用いた場合について説明したが、これらに限られるものではなく、他にも汎用プラスチックとしてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、PFA,FEPを始めとするフッ素樹脂等、エンプラとしてポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、FRPの一種であるガラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン等、スーパーエンプラとしてポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等を用いることができる。
前記樹脂成形用金型は、前記溶融樹脂を前記成形キャビティに導くゲートキャビティと、前記成形キャビティの前記ゲートキャビティから離れた部分に設けられたガスベントとを具備し、前記ガスベントは、前記樹脂成形用金型の外部に連通しており、前記ガスベントは、前記溶融樹脂の先端が前記ゲートキャビティを通過する時点においては開放され、前記溶融樹脂の圧力で閉じられるものである。
上記実施例の樹脂成形用金型ユニットにおいては、樹脂成形用金型は、溶融樹脂を成形キャビティに導くゲートキャビティを有し、成形キャビティのゲートキャビティから離れた部分に設けられ、樹脂成形用金型に設けられたシリンダ部と、シリンダ部にスライド可能に嵌合するピストン部分及びピストン部分と一体に形成され成形キャビティの一部を構成する先端部分とを有する閉鎖部材とからなるガスベントを具備し、シリンダ部は、樹脂成形用金型の外部に連通しており、ガスベントは、溶融樹脂の先端がゲートキャビティを通過する時点においては開放されており、溶融樹脂の圧力で閉鎖部材の先端部分が押圧されて閉鎖部材がスライドすることによって閉じられる。
これによって、このガスベントは、溶融樹脂の圧力で閉鎖部材の先端部分が押圧されて閉鎖部材がスライドすることによって閉じられることから、ガスベントを閉じるために制御装置や駆動機構等を全く必要とせず、簡単で低コストに構成することができる。また、溶融樹脂の先端部分の圧力によって、閉鎖部材の先端部分が押圧されて閉じられるものであるため、閉鎖部材とシリンダ部との間に溶融樹脂が入り込むこともなく、かつ、成形キャビティ内の空気と溶融樹脂から発生するガスとのガス抜きが十分に行われた後に、ガスベントが閉じられる。
したがって、より高速で溶融樹脂を成形キャビティ内に送り込む所謂高速成形が可能となり、ウエルドライン等の成形欠陥が発生するのをより確実に防止することができるとともに、成形サイクルをより短縮することができて、より一層ランニングコストを低減することができる。
上記実施例の樹脂成形用金型の温度制御方法は、樹脂成形用金型には成形キャビティを形成する入子を設け、入子のみに温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路を設けて、入子と入子を除く樹脂成形用金型との間を断熱し、成形キャビティ内の温度を間接的に測定して成形キャビティ内の温度が所定の下限温度を下回ったら媒体通路に低温の冷却媒体を流すのを中断して媒体通路に高温の加熱媒体を流し、成形キャビティ内の温度が所定の上限温度を上回ったら媒体通路に高温の加熱媒体を流すのを中断して媒体通路に低温の冷却媒体を流して、高温の加熱媒体と低温の加熱媒体を媒体通路に交互に流すものである。
このように、周囲と断熱された入子のみに温度制御用の媒体を通す媒体通路を設けて、この媒体通路に高温の加熱媒体が流されて入子のみが加熱され、この媒体通路に低温の冷却媒体が流されて入子のみが冷却されるため、熱エネルギが極めて効率良く用いられて、成形キャビティ内を迅速に加熱・冷却することができる。
したがって、省エネルギに貢献するとともに、成形サイクルを短縮化してランニングコストを低減することができる。
また、間接的に成形キャビティ内の温度及び成形キャビティ内に充填された溶融樹脂の温度を測定しているため、高価な赤外線センサを使用する必要がなく、比較的安価な熱電対や測温抵抗体等を用いることができ、イニシャルコストを低減することができる。
そして、成形キャビティ内の温度が所定の下限温度を下回ったときには入子が加熱され、成形キャビティ内の温度が所定の上限温度を上回ったときには入子が冷却されるため、最も適切なタイミングで加熱と冷却を切り替えることができる。
このようにして、設備費用を抑えるとともに必要であるキャビティ周辺のみの金型温度を制御することによって、ウエルドラインや転写不良等の発生を確実に防止して精密な樹脂成形品が得られるとともに、イニシャルコストもランニングコストも低減することができる樹脂成形用金型の温度制御方法となる。
本発明を実施するに際しては、樹脂成形用金型ユニットのその他の部分の構成、構造、形状、材質、数量、大きさ、接続関係等についても、また樹脂成形用金型の温度制御方法のその他の工程についても、上記各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
1,21,31 樹脂成形用金型ユニット
2A,2B,32A,32B 樹脂成形用金型
3A,3B,3AA,3AB,3BA,3BB,33A,33B 入子
5,5A,5B,35 成形キャビティ
6A,6B,36Aa,36Ab,36Ba,36Bb 媒体通路
7,37 断熱手段
8,28,38 加熱・循環手段
8a,28a,38a 加熱媒体配管
9,29,39 冷却・循環手段
9a,29a,39a 冷却媒体配管
10 キャビティ温度測定手段
11,11A,11B,43 ガスベント
12,42 制御手段
14A 閉鎖部材
14Aa ピストン部分
14Ab 先端部分
15A シリンダ部
16A ばね部材
20 エジェクタピン
22 媒体温度測定手段
23 切替手段
24 切替制御手段
40 型開検出手段
41 キャビティ充填検出手段
MR 溶融樹脂
W1 樹脂成形品


Claims (6)

  1. 溶融した合成樹脂(以下、「溶融樹脂」ともいう。)で該合成樹脂からなる樹脂成形品を成形するための成形キャビティを形成する樹脂成形用金型を有する樹脂成形用金型ユニットであって、
    前記樹脂成形用金型に設けられた前記成形キャビティを形成する入子と、
    前記入子のみに設けられた温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路と、
    前記入子と前記入子を除く前記樹脂成形用金型との間を断熱する断熱手段と、
    前記温度制御用の媒体を加熱して循環させる加熱・循環手段と、
    前記温度制御用の媒体を冷却して循環させる冷却・循環手段と、
    前記媒体通路と前記加熱・循環手段とを接続する加熱媒体配管と、
    前記媒体通路と前記冷却・循環手段とを接続する冷却媒体配管と、
    前記樹脂成形用金型が開いたことを検出して型開信号を出力する型開検出手段と、
    前記溶融樹脂によって前記成形キャビティが充填されたことを検出してキャビティ充填信号を出力するキャビティ充填検出手段と、
    前記型開検出手段から型開信号が出力されたときに前記冷却・循環手段から前記冷却された媒体を流すのを中断して前記媒体通路に前記加熱・循環手段から加熱された媒体を流し、前記キャビティ充填検出手段からキャビティ充填信号が出力されたときに前記加熱・循環手段から加熱された媒体を流すのを中断して前記媒体通路に前記冷却・循環手段から冷却された媒体を流すように前記加熱・循環手段及び前記冷却・循環手段を制御する制御手段と
    を具備することを特徴とする樹脂成形用金型ユニット。
  2. 前記加熱・循環手段によって加熱される媒体と前記冷却・循環手段によって冷却される媒体とは同じ物質からなる媒体であり、前記媒体通路を通過して前記入子の外に出てくる媒体を前記加熱・循環手段または前記冷却・循環手段のいずれかに流す切替手段と、
    前記媒体通路を通過して前記入子の外に出てくる媒体の温度を測定する媒体温度測定手段と、
    前記媒体温度測定手段によって測定される媒体の温度が所定温度以上であれば前記媒体を前記加熱・循環手段に流し、前記温度測定手段によって測定される媒体の温度が所定温度未満であれば前記媒体を前記冷却・循環手段に流すように、前記切替手段を制御する切替制御手段と
    を具備することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形用金型ユニット。
  3. 前記所定の温度は、前記合成樹脂の軟化温度またはガラス転移温度であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形用金型ユニット。
  4. 溶融した合成樹脂(以下、「溶融樹脂」ともいう。)で該合成樹脂からなる樹脂成形品を成形するための成形キャビティを形成する樹脂成形用金型の温度制御方法であって、
    前記樹脂成形用金型には前記成形キャビティを形成する入子を設け、
    前記入子のみに温度制御用の媒体を通す1または2以上の媒体通路を設けて、
    前記入子と前記入子を除く前記樹脂成形用金型との間を断熱し、
    前記樹脂成形用金型が開いたら前記媒体通路に低温の冷却媒体を流すのを中断して前記媒体通路に高温の加熱媒体を流して、
    前記成形キャビティに前記溶融樹脂が充填されたら前記媒体通路に高温の加熱媒体を流すのを中断して前記媒体通路に低温の冷却媒体を流して、
    前記高温の加熱媒体と前記低温の加熱媒体を前記媒体通路に交互に流すことを特徴とする樹脂成形用金型の温度制御方法。
  5. 前記加熱媒体と前記冷却媒体とは同じ材料からなる媒体であり、
    前記樹脂成形用金型の外部に前記媒体通路に接続された前記媒体を加熱する加熱手段と前記媒体を冷却する冷却手段とを配置し、
    前記媒体通路を通過して前記入子の外に出てくる前記媒体の温度を測定して、所定の温度以上であれば前記媒体を前記加熱手段に流し、所定の温度未満であれば前記媒体を前記冷却手段に流すことを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形用金型の温度制御方法。
  6. 前記所定の温度は、前記合成樹脂の軟化温度またはガラス転移温度であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形用金型の温度制御方法。
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