JP5459317B2 - 騒音低減装置 - Google Patents
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Description
本願は、2009年10月28日に、日本に出願された特願2009−247779号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
圧縮機、燃焼器、およびタービンは、筒状隔壁である主ノズル内に設置され、ファンは、主ノズルの上流側に設置されている。ファンが取り入れた空気の大部分は、主ノズルの外周を覆うケーシングとの間に設けられたバイパス流路を通る。このバイパス流路を通った空気(バイパス流)は、タービンのコア流(ジェット流)の外周を囲むように排出されて、ジェット流と合流する。
例えば、ケーシング(エンジンナセル)のバイパス流路出口周縁部、および主ノズルのジェット流路出口周縁部の形状を鋸状に形成した所謂シェブロンノズルとし、主ノズルの内周面側、および外周面側を流れる流体を効率よく混合させて騒音を低減する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、配管の周囲にキャビティ流れが生じ流体騒音が発生、もしくは配管の振動に伴う付加騒音が発生する。
そして、マイクロジェット噴射推力によりノズルの噴射角度が変化し、所定の騒音低減効果が得られない可能性がある。このため、ノズルの噴射角度を所望の角度に維持すべく、ノズルを固定するステーなどが必要となり、この分、主ノズルが大型化すると共に、大型化に伴うナセル損失の増加、付加騒音の発生という問題が生じる。
また、各ノズルを所望の噴射角度に固定するための組み立て作業には高い精度が必要で、所望の騒音低減効果を得ることが難しい。
また、組み立て作業性を向上でき、騒音低減効果を確実に得ることが可能な騒音低減装置を提供するものである。
また、剛性を高めることができる分、噴射管の直径を大きく設定することができ、圧力損失を低減できる。このため、より効率よくマイクロジェット噴射を行うことができ、効果的に騒音を低減できる。
さらに、マイクロジェット噴射部分に配管を設けない分、外部流のキャビティを防止でき、付加騒音の発生を抑制できる。
そして、マイクロジェットリングを主ノズルの噴出側周縁に取り付けるだけでマイクロジェット噴射を実現することができる。このため、組み立て作業性を向上させることが可能になる。
ここで、スロート通過前にマイクロジェット噴射を行おうとすると、主ノズル内の圧力が高すぎるので、マイクロジェット噴射の流量を確保するのが困難になる。更に、マイクロジェットによる流量をスロート通過前に与えると、スロート部で計算されるエンジンの設定流量を変えてしまう。このため、本発明によれば、効率のよい位置にマイクロジェット噴射を行うことが可能になり、さらに効率よく騒音を低減することができる。
このように構成することで、少なくともマイクロジェットリングの噴出口側近傍の肉厚を、先端に向かうに従って薄肉形状にすることが可能になる。このため、ジェットエンジンのナセル抵抗が低減でき、ジェットエンジンの空力性能を高めることが可能になる。
このように構成することで、流路からマイクロジェットリングに至る間を通る圧縮空気の流路スペースを大きく確保することができる。このため、圧力損失を低減することができ、より効率よく各噴射管からマイクロジェットを噴射させることが可能になる。
さらに、チャンバを設けることによって、このチャンバに対応する部分の主ノズルの外表面を滑らかに形成することができる。このため、キャビティ流れをより確実に防止し、かつジェットエンジンのナセル抵抗を低減することができる。
また、剛性を高めることができる分、噴射管の直径を大きく設定することができ、圧力損失を低減できる。このため、より効率よくマイクロジェット噴射を行うことができ、効果的に騒音を低減できる。
さらに、マイクロジェット噴射部分に配管を設けない分、この部分のキャビティ流れを防止でき、付加騒音の発生を抑制できる。
そして、マイクロジェットリングを主ノズルの噴出側周縁に取り付けるだけでマイクロジェット噴射を実現することができる。このため、各ノズルを所望の噴射角度に固定するための組み立て作業が不要となり、組み立て作業性を向上させることができる。
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る騒音低減装置1が適用されたジェットエンジン100の概略構成を示す、模式断面図である。
図1に示すように、ジェットエンジン100は、筒状のケーシング2と、ケーシング2の噴出側周縁(後縁)2aから一部が突出して内挿される筒状隔壁3と、ケーシング2内に上流側から下流側へ中心軸線C1に沿って順次配列された、ファン部11、圧縮機4、燃焼器12、およびタービン13とを備える。また、ジェットエンジン100の、筒状隔壁3の噴出側(図1における右側)には、騒音低減装置1が設けられている。
筒状隔壁3内は、高速のジェット流Xが流れる流路5とされる。筒状隔壁3とケーシング2との間は、低速のバイパス流Yが流れる流路6とされる。
ケーシング2の上流側の開口は、空気Aを取り入れる空気取入口2Aとして機能する一方、ケーシング2の下流側の開口は、バイパス流Yを排出するバイパス流排出口2Bとして機能している。
ケーシング2内の上流側端部近傍であって筒状隔壁3の上流には、ファン11aが設置されている。ファン11aは、外部から空気Aを取り入れる。
ファン11aよりも下流側であって筒状隔壁3内には、圧縮機4が設置されている。圧縮機4は、ファン11aが取り入れた空気Aの一部を取り込んで圧縮する。
燃焼器12よりも下流側であって筒状隔壁3内には、タービン13が配置されている。タービン13は、燃焼器12が排出する燃焼ガスによって、ファン11a、および圧縮機4を駆動する。
パイロン8は、ケーシング2、および筒状隔壁の中心軸線C1と直交する方向に延在する部材であって、ケーシング2よりも下流側に延びる突出部8Aを有している。
図2は、騒音低減装置1の斜視図、図3は、図2のA−A線に沿う断面図、図4は、図3のB部拡大図である。
図1〜図4に示すように、騒音低減装置1は、筒状隔壁3の噴出側周縁3Aに設けられたマイクロジェットリング16と、マイクロジェットリング16の上流側(図1、図2における左側)であって筒状隔壁3の外周部に設けられたチャンバ17とを有している。
すなわち、内周壁部18は、噴出側(下流側)に向かうにしたがって縮径された側面視略円錐台状に形成されており、筒状隔壁3の内周面と面一になっている。
内周壁部18の上流側周縁には、外フランジ部18aが一体成形されている。この外フランジ部18aは、内周壁部18を筒状隔壁3に固定するための部材で、複数のボルト孔(不図示)が周方向に等間隔に形成されている。一方、筒状側壁3のボルト孔に対応する位置には、雌ネジ部が刻設されており、ここに内周壁部18側から不図示のボルトを螺入することによって、内周壁部18を筒状隔壁3に締結固定できる。
この空気取入口19は、筒状隔壁3に設けられている供給路20を介して燃焼器12よりも上流側の流路5に接続されている。供給路20は、この一端が不図示の継手を介して外フランジ部18aの空気取入口19に接続されている。これにより、ファン11a又は圧縮機4が圧縮した空気Aの一部がチャンバ17に取り込まれる。また、供給路20の途中には、バルブ21が設けられている。
なお、供給路20としては、例えば、テフロン(登録商標)チューブ等が用いられる。
テフロン(登録商標)チューブを用いることにより、組み付け作業性を向上できると共に、配管損失を低減することが可能になる。
外周壁部22の上流側周縁部は、内周壁部18の外フランジ部18aに機械加工、又は溶接により固定されている。このように固定された外周壁部22と内周壁部18とで取り囲まれる空間Kに、ファン11a又は圧縮機4が圧縮した空気Aの一部が取り込まれる。
マイクロジェットリング16は、チャンバ17と同様にステンレス(例えば、SUS321)やインコネル等で略円環状に形成される。マイクロジェットリング16は、下流側に向かうに従って先細りとなるように形成されている。
Oリング25としては、ゴム、フッ素系、およびテフロン(登録商標)系等、耐熱温度が約400℃程度あるものを用いることが望ましい。
マイクロジェットリング16に複数の噴射管26が周方向に等間隔で形成されていることから、各噴射管26から噴射された空気Aはマイクロジェットとなってジェット流Xに向かって噴射される。
すなわち、マイクロジェットリング16の内周面16aが噴出側に向かうに従って縮径されている。このため、弧状面部27の開始点Pが最も縮径されたスロートSPに設定される。
次に、ジェットエンジン100、および騒音低減装置1の作用について説明する。
図1に示すように、航空機の離陸時には、まず、ファン11aを回転させて空気取入口2Aから空気Aを取り入れる。この空気Aの一部は、圧縮機4により圧縮され、燃焼器12にて燃料と混合されて燃焼される。
タービン13では、燃焼器12から排出された燃焼ガスによってファン11a、および圧縮機4の駆動力が発生する。以降は、タービン13によって発生した駆動力によって、ファン11aが回転して空気Aが取り込まれていく。
このとき、バルブ21を開いてファン11a又は圧縮機4で圧縮された空気Aの一部をチャンバ17内に取り込む。そして、チャンバ17内の空気Aが所定の圧力まで高まると、この空気Aがマイクロジェットリング16の噴射管26を介してジェット流Xに向かってマイクロジェット噴射される。
図5において、ジェット流XはスロートSPよりも上流側が圧力の高い領域となる。一方、スロートSPよりも下流側が上流側と比較して圧力の低い領域となる。したがって、マイクロジェット噴射は、圧力の低い領域に向けて噴射される事になるので、チャンバ17内の圧力を必要以上に高めることなく、十分な流量を確保できる。そして、スロートSPの直後、つまり、スロートSPから軸方向に対して鋭角をなすように、下流方向に向けてスムーズにマイクロジェット噴射が行われる。
また、ジェットエンジン100を駆動させると各部品の温度が上昇するが、従来の配管を用いたノズルと比較してマイクロジェットリング16の熱膨張量を小さく抑えることができる。このため、マイクロジェットリング16に形成された噴射管26の直径の変化量も従来と比較して小さく、噴射管26を介して噴射される空気Aの流量が低減しにくい。
ここで、マイクロジェットリング16に形成されている噴射管26の個数を、以下の式に基づいて設定することにより、より効率よく騒音を低減することができる。
噴射管26の個数nは、
σ=d/(πD/n) ・・・(1)
0.11≦σ≦0.16・・・(2)
を満たすように設定される。
なお、設計指数σは、マイクロジェットリング16のジェット流排出口16Aの円周において、噴射管26の占める割合である。設計指数σを式(2)を満たすように設定することにより、騒音を効率よく低減することが可能になる知見が得られている。
上述の実施形態によれば、従来のように配管のノズルを用いることなく、マイクロジェットリング16に形成された複数の噴射管26を利用してジェット流とバイパス流との合流部に向けてマイクロジェットを噴射させることができる。このため、配管のノズルを用いる場合と比較して、マイクロジェット噴射部分の剛性を高めることができる。剛性を高めることができる分、噴射管26の直径を大きく設定することができ、圧力損失を低減できる。よって、マイクロジェットリング16の損傷を防止し、かつ効率よくマイクロジェット噴射させることにより効率よく騒音を低減できる。
さらに、従来の配管に代わってマイクロジェットリング16を用いているので、配管によるキャビティ流れを防止でき、付加騒音の発生を抑制できる。
しかも、マイクロジェットリング16に差込部23を一体成形し、この差込部23をチャンバ17の開口部17Aに印籠嵌合させるだけでマイクロジェットリング16の組み付けを完了させることができる。このため、ジェットエンジン100の組み立て作業性を向上させることが可能になる。
図6に示す検証は、以下の条件を用い、各々の軸方向位置における全圧損失係数を数値解析することで行なった。
流路5の内径:Φ5mm、32本
マイクロジェット出口面積:噴射管内径Φ3.15(mm)×sqrt(32本/20本)=Φ3.52mm
ここで、図6に破線で示すようにチャンバ17が設けられていない場合、図6に示す軸方向位置0.1(m)の位置における全圧損失の増加と同様に、流路5とチャンバ17の接続位置である軸方向位置―0.18(m)の位置から全圧損失が急激に増加する。軸方向位置―0.18(m)の位置から、軸方向位置0.1(m)の位置と同様に全圧損失が増加すると、噴射管26の出口における全圧損失は50(%)を超えることが明らかである。
このように、本実施の形態に係る騒音低減装置においては、チャンバ17が備えられているため、マイクロジェットを噴射するためのエンジンからの抽気圧力の損失を大きく低減させ、コンプレッサからの多大な抽気を必要としないという効果が得られる。
例えば、上述の実施形態では、マイクロジェットリング16の基端に差込部23を一体成形し、この差込部23の内周面と外周面とにそれぞれOリング25を装着してチャンバ17の開口部17Aに印籠嵌合する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、以下の図7に示す構成により、マイクロジェットリング16とチャンバ17とを接続してもよい。
図7に示すように、チャンバ17の内周壁部18、および外周壁部22には、開口部17A側にそれぞれ段差により薄肉形成された段差面28,29が形成されている。一方、マイクロジェットリング16に一体成形されている差込部23は、段差面28,29に対応するように形成され、この段差面28,29に嵌合可能になっている。
なお、シール部材31を耐熱合金を用いたメタルシールとすることにより、シール部材31の耐熱温度を約800℃程度に設定することが可能になる。シール部材31としては、Cリング、Eリング、およびUリング等を用いることが可能である。
図8に示すように、チャンバ17の内周壁部18の下流側端(図8における右側端)には、マイクロジェットリング16の内周面16a側が一体成形されている。これにより、マイクロジェットリング16と、チャンバ17の内周壁部18、および外フランジ部18aとによって凹部35が全周に亘って形成される。この凹部35をチャンバ17の外周壁部22によって閉塞する。
これにより、マイクロジェットリング16とチャンバ17との接合部のシール性を確保することができる。
この場合、マイクロジェットリング16を分割することにより形成される各リング片(不図示)の合わせ面に、シール部材等を用いて気密性を確保する。また、各リング片に、それぞれ噴射管26を形成してもよいし、各リング片の合わせ面に溝を形成し、この溝を重ね合わせることで噴射管26を構成するようにしてもよい。
また、本発明に係る騒音低減装置によれば、組み立て作業性を向上でき、騒音低減効果を確実に得ることが可能である。
2 ケーシング
3 筒状隔壁(主ノズル)
3A 噴出側周縁
4 圧縮機
5 流路
12 燃焼器
16 マイクロジェットリング
16A ジェット流排出口
17 チャンバ
20 供給路
26 噴射管
26a 第一管
26b 第二管
27 弧状面部
100 ジェットエンジン
A 空気
X ジェット流
Claims (3)
- ジェットエンジンの主ノズルの噴出側周縁に、周方向に等間隔に形成された複数の噴射管を有するマイクロジェットリングを設け、
前記ジェットエンジン内の燃焼器より上流側の流路から圧縮空気の一部を取り入れて前記複数の噴射管まで導く供給路を設け、
前記複数の噴射管は、前記圧縮空気の一部を、前記主ノズルから噴出されるジェット流に向けて噴射させる騒音低減装置において、
前記マイクロジェットリングを前記ジェット流の上流側から下流側に向かうに従って縮径するように形成すると共に、
前記マイクロジェットリングの吐出側周縁に、このマイクロジェットリングの内周面が先端に向かうに従って拡径するように弧状面部を全周に亘って形成した騒音低減装置。 - 前記複数の噴射管の少なくとも噴出口側近傍が前記主ノズルの軸方向に対して鋭角をなすように、下流方向に向けて形成されている請求項1に記載の騒音低減装置。
- 前記マイクロジェットリングと前記流路との間に、これらマイクロジェットリングと流路とを連通するチャンバを設けた請求項1又は請求項2に記載の騒音低減装置。
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