以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、実施の形態を説明する全図において、従来例と同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本発明の実施の形態1になるプラズマ処理装置を、図1〜図16で説明する。まず、図1に、本発明の実施の形態1になるプラズマ処理装置300の縦断面を示す。放電形成用電磁波302が円形導波管304により供給される。円形導波管304と処理室201との間には透過型電極体(または透過型電極層)310が設けられている。透過型電極体310と処理室201内の試料台206の試料載置面とは対向して配置されている。これにより、透過型電極体310と試料207とが対向配置される対向電極配置の構造となっている。また、処理室201の周囲には磁場形成手段である円筒コイル(ソレノイドコイル)305が配置されている。放電形成用電磁波302は0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持っている。エッチングガス(処理ガス)は処理ガス供給口218を介して処理室201の内部に導入され、処理室201内のエッチングガスの一部およびエッチング反応で生成される生成ガスが排気口219を介して外部に排気される。
図2Aに、透過型電極体310の構成の一例を示す。透過型電極体310は、電極体基板311の表面に透過型電極層312と電極保護層313を積層した平板状の構造になっている。透過型電極層312は電気的伝導性を有する材料である電気的半導体あるいは電気的導体で構成されている。この例では、透過型電極体310の透過型電極層312が接地電位に電気回路的に接続されている。また、試料台206は、コンデンサー209を介して高周波電源208に接続されており、試料台206に高周波電圧(RF電圧)が印加されている。
本実施形態によれば、放電形成用電磁波302(あるいは放電形成用電磁波302の一部)が透過型電極体310を通って処理室201の放電領域320に導入される。また、透過型電極層312が接地電位に電気回路的に接続されているので、RF電流を接地電位に流すことが可能となる。
なお、図1には示していないが、本実施形態と同等の形態において、透過型電極層312をフローティング電位(浮遊電位)にすることも可能である。また、後で述べるように、透過型電極層312が高周波電源208に電気回路的に接続されていても良い。
本実施形態の装置における放電形成用電磁波302の周波数fpfおよびRFバイアス用電磁波の周波数frbは、図24および図25の従来例装置において述べたものと同等である。その他、図24および図25の装置に関して述べた処理室201内の試料台等の構成、エッチングガス、及びエッチングのための物理的、化学的表面反応、放電磁場等、本発明のプラズマ処理装置に適用可能なものについては、詳細な説明を割愛する。
本実施形態における透過型電極体310は、放電形成用電磁波(周波数fpfは通常0.01 GHz 〜 10 GHz)にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波(周波数frbは通常0.01 MHz 〜 100 MHzでfrb<fpf)あるいはイオンプラズマ振動の電磁波(周波数fpiは概略fpi=2MHz〜20MHz)にとっては電気的伝導性を有する材料および構造で形成されている。特に、本実施例において高密度(高電子密度)の放電(プラズマ)を形成することが望ましい場合は、放電形成用電磁波302の周波数fpfを0.1 GHz 〜 10 GHzに設定することが望ましい。本実施形態の装置では、透過型電極体310は真空壁の働きもしており、大気圧と処理室内圧力との差圧に耐えられる構造になっている。しかし、透過型電極体310が常に真空壁の働きも兼ねる必要はなく、処理室内に透過型電極体310を設置する構成も可能である。
図1に示したように、透過型電極体310と試料207とが対向配置される対向電極配置となっている本実施形態では、RF電流は、図24の従来装置と異なり、試料207の被処理面の全領域にわたり該被処理面にほぼ垂直に、かつその電流経路長が試料表面の場所に依存せず概略一定の長さで、試料と透過型電極体310との間に流れている。換言すると、試料表面に入射するイオン加速(イオンの運動エネルギー)の分布が、試料207の被処理面の面内で一様である。また、本実施形態では、RF電流接地電位電極の必要面積の多くが透過型電極体310により確保されている。このため、図24の従来装置と異なり、処理室201の側壁で確保すべきRF電流接地電位電極の面積を小さく出来、処理室の体積(処理室の直径や高さ)を小さく出来る。そのため、プラズマ処理装置全体の形状を大きくすること無く、また磁場形成手段のコストを増大することなく、処理室201の周囲に磁場形成手段である円筒コイル(ソレノイドコイル)305を配置することができる。これにより、試料近傍での磁場分布の均一性を高めることが出来る。
さらに、放電形成用電磁波が同軸導波管により試料の被処理面の中央付近に供給される図25の従来装置と異なり、電極間空間内に複雑な定在波が発生することも抑制される。そのため、電磁波強度の分布が、試料207の被処理面の面内で一様である。
そのため、本実施形態のプラズマ処理装置では、試料207の被処理面の面内の全領域にわたり均一なプラズマが生成され、大口径な試料を高一様に処理するプラズマ処理装置を提供することができる。
ここで、本実施形態の透過型電極体310の構造について簡単に述べる。透過型電極体310は、一例として、電極体基板311の表面に透過型電極層312と電極保護層313を敷設した構成になっている。敷設の仕方としては、積層あるいは物理的または化学的貼り合わせ等々が可能である。電極体基板311は誘電体例えば石英で形成されており、その厚みは10 mmである。電極体基板311の厚みは、大気圧と処理室内圧力との差圧に耐えられるように設計されている。透過型電極層312はAlで形成されており、その厚みは50 nmである。電極保護層313は誘電体例えば石英で形成されており、その厚みは1 mmである。なお、透過型電極体310の具体的構造および具体的構成材料に関しては、後で詳細に述べる。
本実施形態の装置(図1の装置)において、従来例装置の課題(A)(あるいは、(A1)(A2))(B)(C)(D)が解決されることは、後に[透過型電極体の基本構成]において詳しく述べる。
対向電極配置のプラズマ処理装置において、また処理室内あるいは放電領域に磁場を形成する手段を有するプラズマ処理装置において、本発明はさらに特別な効果を発現する。以下、この特別な効果を図1の本実施形態の装置および図24の従来例装置を用いて説明する。
本実施形態の装置および従来例装置では、処理室201の内部に円筒コイル205、305(ソレノイドコイルとも称す)により磁場が形成されている。円筒コイル(ソレノイドコイルとも称す)は、一般的に表現すれば「磁場形成手段205、305」であり、必ずしも円筒、あるいはコイルの形状である必要はない。たとえば、永久磁石により処理室201の内部に磁場を形成することも可能である。
このようにして処理室内、特に放電領域に磁場が形成されている状況を考える。一般的に、プラズマ(放電)は磁場の方向(磁場ベクトルの方向)に移動あるいは拡散することが容易である。逆に、プラズマ(放電)は磁場の方向(磁場ベクトルの方向)と交差する方向(特に、直角の方向)に移動あるいは拡散することが困難である。このことを考慮して、図24の従来例装置および図1の本実施形態の装置において、試料207の表面が磁場ベクトルの方向と概略垂直になるように配置されてある。すなわち、試料207の表面の法線ベクトルと磁場ベクトルとが概略平行になるように配置されてある。具体的には、円筒コイル、305の中心軸の方向(形成される磁場ベクトルの方向と概略一致する方向、図24および図1における紙面内上下の方向、図中に表示)と試料207の表面の法線ベクトルの方向が平行になるように、配置されてある。こうすることにより、形成されたプラズマが効率的に試料表面に入射できるからである。
さて、このような配置を理解した上で図24の従来例装置を考える。RFバイアス印加により、RF電流が試料207と処理室201の側壁(接地電位電極になっている)の間に流れている。この時、図24の従来例装置の配置では、必然的に、RF電流経路の一部が磁場(磁場ベクトル)を概略直角に横切ることになる。試料表面の少なくとも一部の領域と処理室201の側壁とを結ぶ線分が、磁場ベクトルの方向(概略、円筒コイル205の中心軸の方向)と必然的に交差するからである。一般的に、磁場が印加されたプラズマにおいて、磁場(磁場ベクトル)を概略直角に横切る方向(一般的には、交差する方向)のインピーダンス(クロスインピーダンス)は、磁場(磁場ベクトル)と概略平行な方向のインピーダンスに比べて大きくなる。すなわち、RF電流が磁場(磁場ベクトル)と概略直角方向に流れると、大きな電圧降下(電位変化)が発生する。この現象を、クロスインピーダンス、およびクロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)と称する。したがって、図24の従来例装置の配置では、クロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)のため、試料表面に入射するイオンの加速エネルギー(運動エネルギー)に場所により大きな変動(表面内の場所依存性)が生じる。試料の中心領域と処理室側壁を結ぶ電流経路の抵抗値(インピーダンス)と、試料の端縁領域(外周領域)と処理室側壁を結ぶ電流経路の抵抗値(インピーダンス)とが、大きく異なるからである。この結果、エッチング特性あるいは表面処理特性に表面内変動が生じる。特に、試料の中心領域においてはクロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)が大きく、したがって入射するイオンの加速エネルギーの減少が大きい。すなわち、試料の中心領域においては、RFバイアス印加の効果が減ぜられることになる。さらに、クロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)のため、試料表面と接するプラズマの電位が試料表面の場所により変動する。この結果、試料内に(例えば、試料の中心領域と端縁領域の間に)電位差が発生し、試料表面に形成されている電子デバイスの破損に繋がる。エッチング装置あるいは表面処理装置においてこのような表面内変動および特性変化が生じることは、装置のプロセス性能、信頼性を減ずることになる。以上の課題は、試料口径の増大に伴い顕著化する。
次に、本発明の実施形態1の装置を考える。図24の従来例の装置と異なることは、透過型電極体310が試料207換言すると試料台206の試料載置面に対して対向配置されることである。このような電極の配置を、対向電極配置と称する。さらに、前述したごとく、透過型電極体310の透過型電極層312が接地電位に電気回路的に接続されており、透過型電極体310はRF電流に関する接地電位電極として機能している。このような配置および機能が可能になったのは、透過型電極体が本発明で開示する特性を有しているからである。このような配置および機能を有した装置において、RF電流は、図1に示す如く、試料207と透過型電極体310の間に流れる。電流は、その経路抵抗値(経路インピーダンス)が小さくなるように、すなわち概略その経路長が短くなるように流れるからである。したがって、RF電流は磁場ベクトルの方向(概略、円筒コイル305の中心軸の方向)と平行に、かつ試料表面の場所に依らず概略一定の経路長で流れる。この結果、図1から明らかなように、試料表面の場所に依らず、RF電流の経路抵抗値(経路インピーダンス)は概略一定になる。かつ、クロスインピーダンスは発生せず、RF電流の経路抵抗値(経路インピーダンス)は小さくなる。これにより、試料表面に入射するイオンの加速エネルギー(運動エネルギー)が場所により変動せず概略一定になる。かつ、RF電流経路における電圧降下も小さく、したがって入射するイオンの加速エネルギーの減少も小さく、RFバイアス印加がより有効に作用する。さらに、クロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)に起因する試料表面内電子デバイスの破損も発生しない。以上の結果、図1に示す本発明の装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する。本発明の装置で示された対向電極配置のRFバイアス印加法を、対向電極型RFバイアス印加法(あるいは、対向電極型RFバイアス法)と称する。
上記の説明で用いた「対向電極配置」を、「試料207と透過型電極体310(または透過型電極層312)が通常の意味で対向した配置になっていること」と定義することができる。さらに、定量的に定義するとしたら、例えば、以下の式(3)〜(6)のように定義することが可能である。
試料の等価直径とは、試料が必ずしも円形状でない場合に、試料と同じ面積の円を想定しその直径のことである。(3)式と(4)式の条件は、RF電流の大部分が試料207と透過型電極体310の間に流れ、試料207と処理室201の側壁の間に流れないための条件である。通常はa=1であるが、処理室201の側壁へのRF電流をより厳しく制限したい場合はa=0.5、さらにはa=0.1である必要がある。(5)式と(6)式の条件は、RF電流が試料表面の場所に依らず概略一定の経路長で流れる、すなわち試料表面の場所に依らずRF電流の経路抵抗値(経路インピーダンス)が概略一定になるための条件である。通常はb=1/2であるが、RF電流の経路抵抗値をより厳しく一定にしたい場合はb=0.1、さらにはb=0.05である必要がある。
以上説明した如く、本発明は「磁場形成手段を有したプラズマ処理装置において、本発明の技術によりクロスインピーダンスあるいはクロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)の課題が解決され、装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果、および「試料と透過型電極体(または透過型電極層)を対向電極配置することにより、試料表面の場所に依らずRF電流の経路抵抗値が概略一定になり、プラズマ処理装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果を有している。
以上説明した「磁場形成手段を有したプラズマ処理装置において、本発明の技術によりクロスインピーダンスあるいはクロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)の課題が解決され、装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果は、図1に示した実施形態の装置に必ずしも限定されず、磁場形成手段を有したプラズマ処理装置において一般に発現することは明らかである。また、「試料と透過型電極体(または透過型電極層)を対向電極配置することにより、試料表面の場所に依らずRF電流の経路抵抗値が概略一定になり、プラズマ処理装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果も、図1に示した実施形態1の装置に必ずしも限定されず、試料と透過型電極体(または透過型電極層)を対向電極配置したプラズマ処理装置において一般に発現することは明らかである。
本発明の実施の形態1においては、放電形成用電磁波の放電領域への導入手段として「高周波アンテナ(アンテナ)」を用いていない。また、放電形成用電磁波の周波数fpfは、比較的大きな値の0.1 GHz 〜 10 GHzとなっている。図1の装置では、高周波アンテナを用いる代わりに放電領域に磁場を形成することにより放電形成用電磁波の放電領域への効率的な導入を可能にしている。
また、本発明の実施形態1の装置では、比較的大きな値である0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持った放電形成用電磁波を用いる。これにより、従来の技術でも述べた如く、高密度(電子密度neの大きな)なプラズマを容易に形成することができる。このことは、放電形成用電磁波の放電領域への導入手段として高周波アンテナを必須手段として用いている、また放電形成用電磁波の周波数fpfとして13.56MHz近傍を想定している特許文献1に記載の発明と、本質的に異なる。特許文献1に記載の発明のように高周波アンテナを用いると、アンテナ電極の近傍に電場が集中し、その領域の透過型電極層あるいは電極保護層が破壊されやすくなる。電場集中による局所的な発熱や異常放電あるいは局所強放電が発生するからである。高周波アンテナを用いない本発明の実施の形態1では、このような問題は本質的に発生しない。
また、放電形成用電磁波の周波数fpfを大きくすることにより、かつ本発明の透過型電極体を用いることにより、高密度なプラズマを容易かつ高安定、高信頼で高機能に形成することができる。すなわち、本発明は、「高周波アンテナの変わりに磁場を用いて放電形成用電磁波を高効率に放電領域に導入することにより、本発明の透過型電極体の安定性、信頼性を大きく増大する」効果、および「比較的大きな値である0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持った放電形成用電磁波と本発明の透過型電極体を用いることにより、高密度なプラズマを容易かつ高安定、高信頼で高機能に形成することができる」効果を有している。これらの効果を認識することにより、本発明の実施の形態1が発明された。
以上説明した「高周波アンテナの変わりに磁場を用いて放電形成用電磁波を高効率に放電領域に導入することにより、本発明の透過型電極体の安定性、信頼性を大きく増大する」効果は、実施形態1の装置に必ずしも限定されず、高周波アンテナの変わりに磁場形成手段を有したプラズマ処理装置において一般に発現することは明らかである。また、「比較的大きな値である0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持った放電形成用電磁波と本発明の透過型電極体を用いることにより、高密度なプラズマを容易かつ高安定、高信頼で高機能に形成することができる」効果は、実施形態1の装置に必ずしも限定されず、比較的大きな値である0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持った放電形成用電磁波を用いたプラズマ処理装置において一般に発現することは明らかである。
以上説明した本実施形態1の特性および本願発明の効果は、試料口径(試料の直径)が増大し、概略250 mm以上さらには400 mm以上になると、より明らかになる。
次に、試料と透過型電極体とが対向電極配置されるプラズマ処理装置において、試料口径が大口径、例えば概略250 mm以上さらには400 mm以上になっても高一様に処理するための透過型電極体の望ましい構成に関し、本発明者が、種々考察した結果を以下に記述する。
[透過型電極体の基本構成]
まず、本発明の透過型電極体の基本構成について、図2A〜図3で説明する。
本発明が解決しようとする課題(A)〜(D)を、[発明が解決しようとする課題]で述べた。これらの課題は、(1)放電形成用電磁波導入窓203が誘電体(電気的絶縁体)材料で構成されていること(図24の構成の従来例装置)、あるいは(2)放電形成用電磁波202が電極間空間を外側から内側に向かって伝播すること(図25の構成の従来例装置)が原因となって発生する。
これらの課題を解決する最も根源的な方法は、透過型電極体を介して放電形成用電磁波の少なくとも一部を放電領域に導入することである。この透過型電極体は、放電形成用電磁波(周波数fpfは通常0.01 GHz 〜 10 GHz)にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波(周波数frbは通常0.01 MHz 〜 100 MHzでfrb<fpf)あるいはイオンプラズマ振動の電磁波(周波数fpiは概略fpi=2MHz〜20MHz)にとっては電気的伝導性(電導性)を有する材料(すなわち電気的半導体あるいは電気的導体)のように振る舞う特性を有している。ここで、「透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体のように振る舞う」とは、「透過型電極体に入射する放電形成用電磁波の大部分が透過型電極体を透過する」ことである。また、「透過型電極体がRFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する」とは、「透過型電極体がRFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波の電流を電圧降下を殆ど起こすことなく(電圧降下の電圧が電磁波の振幅電圧あるいはpeak-to-peak電圧に比べ十分小さい条件で)流す」ことである。透過型電極体がこのような特性を有することが可能なことは、後に述べる。透過型電極体がこのような特性を有すれば、上記した課題の原因(1)、(2)が解決され、したがって課題(A)〜(D)が解決されることは明らかである。透過型電極体により課題(A)〜(D)が解決される状況を、以下に図2A,図2Bを用いて補足的に説明する。
図2Aおよび図2Bに透過型電極体の基本構成と使用状況を示してある。透過型電極体310は、電極体基板311の表面に透過型電極層312と電極保護層313を敷設した構成になっている。敷設の仕方としては、積層あるいは物理的または化学的貼り合わせ等々が可能である。電極保護層313は必ず必要であるというわけではないが、透過型電極層312が放電によりスパッタされることを防止するために電極保護層313を敷設することが望ましい。電極体基板311は誘電体(電気的絶縁体)で、電極保護層313は誘電体(電気的絶縁体)あるいは半導体あるいはこれらの組み合わせで形成されている。透過型電極層312は、電気的伝導性を有する材料すなわち電気的半導体あるいは電気的導体で構成されている。透過型電極層312は電気的にフローティング電位(浮遊電位)であっても良いし、図2Aのように接地電位に電気回路的に接続されていても良い。あるいは、図2Bのように、透過型電極層312は高周波電源208に電気回路的に接続されていても良い。図2Bで透過型電極層が電気回路的に接続されている高周波電源は、試料台206が電気回路的に接続されている高周波電源と異なっていても良いし、同一であっても良い。試料台206の少なくとも一部が図2Aおよび図2Bで示されているように高周波電源に電気回路的に接続されていても良いし、図2Aおよび図2Bで示されていないが試料台206の少なくとも一部が接地電位(アース電位)に電気回路的に接続されていても良い。更には、試料台206の少なくとも一部が電気的にフローティング電位(浮遊電位)であっても良い。
上述したように、透過型電極体310は放電形成用電磁波(周波数fpfは通常0.01 GHz 〜 10 GHz)にとって誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞う特性を有する。この結果、放電形成用電磁波202が電極間空間を外側から内側に向かって伝播すること(図25の従来例装置の状況、課題の原因(2))がなくなり、放電形成用電磁波202が透過型電極体310を透過して放電領域に直接導入される。これにより、課題(B)が解決される。また、透過型電極体310はイオンプラズマ振動の電磁波(周波数fpiは概略fpi=2MHz〜20MHz)にとっては電気的伝導性を有する材料(すなわち電気的半導体あるいは電気的導体)のように振る舞う特性を有している。これにより、課題(A1)が解決される。
また、透過型電極体310はRFバイアス用電磁波(周波数frbは通常0.01 MHz 〜 100 MHzでfrb<fpf)にとっては電気的伝導性を有する材料(すなわち電気的半導体あるいは電気的導体)のように振る舞う特性を有している。これにより、課題(A2)、(C)および(D)が解決される。
さらに、本発明は、「磁場形成手段を有したプラズマ処理装置において、本発明の技術によりクロスインピーダンスあるいはクロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)の課題が解決され、装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果、および「試料と透過型電極体(または透過型電極層)を対向電極配置することにより、試料表面の場所に依らずRF電流の経路抵抗値が概略一定になり、プラズマ処理装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果を有している。
さらに、本発明は、「高周波アンテナの変わりに磁場を用いて放電形成用電磁波を高効率に放電領域に導入することにより、本発明の透過型電極体の安定性、信頼性を大きく増大する」効果を有している。
さらに、また、本発明は、「比較的大きな値である0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持った放電形成用電磁波と本発明の透過型電極体を用いることにより、高密度なプラズマを容易かつ高安定、高信頼で高機能に形成することができる」効果を有している。
以下、透過型電極体が「放電形成用電磁波(周波数fpfは通常0.01 GHz 〜 10 GHz)にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波(周波数frbは通常0.01 MHz 〜 100 MHzでfrb<fpf)あるいはイオンプラズマ振動の電磁波(周波数fpiは概略fpi=2MHz〜20MHz)にとっては電気的伝導性を有する材料(すなわち電気的半導体あるいは電気的導体)のように振る舞う特性」を有することが可能なことを説明する。イオンプラズマ振動の電磁波の周波数fpi=2MHz〜20MHzはRFバイアス用電磁波の周波数frb=0.01MHz〜100MHzに包含されるため、イオンプラズマ振動の電磁波に関する議論はRFバイアス用電磁波に関する議論で代替する。
放電形成用電磁波を透過させ、かつRFバイアス電流に関して電気的導体特性を有する電極を構成する方法として、スリット構造を形成する方法が考えられる。すなわち、電極に形成されるスリット(隙間)を介して放電形成用電磁波を透過させ、電極の連続体部を通してRF電流を流す方法である。しかし、この方法では、スリット構造に対応してプラズマ状態および表面処理特性の分布が生じ、試料表面内における表面処理特性の一様性が阻害される。本発明では、このようなスリット構造を基本とするのではなく、一様な膜構造でも所望の特性を実現できる材料特性および膜構造について議論する。
本発明で開示する技術は、透過型電極体が満たすべき条件を上記特許文献1記載の発明に比してより詳細に検討した結果生まれたものである。特に、本発明の技術がより有効に適用されるための放電形成用電磁波302の周波数fpf、および透過型電極層312の材料特性を、発熱課題も含めて定量的に明確にすることにより本発明が生まれた。さらに、本発明が「磁場形成手段を有したプラズマ処理装置において、本発明の技術によりクロスインピーダンスあるいはクロスインピーダンスによる電圧降下(電位変化)の課題が解決され、装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果、「試料と透過型電極体(または透過型電極層)を対向電極配置することにより、試料表面の場所に依らずRF電流の経路抵抗値が概略一定になり、プラズマ処理装置のプロセス性能、信頼性が大きく増大する」効果、「高周波アンテナの変わりに磁場を用いて放電形成用電磁波を高効率に放電領域に導入することにより、本発明の透過型電極体の安定性、信頼性を大きく増大する」効果および「比較的大きな値である0.1 GHz 〜 10 GHzの周波数fpfを持った放電形成用電磁波と本発明の透過型電極体を用いることにより、高密度なプラズマを容易かつ高安定、高信頼で高機能に形成することができる」効果を有していることを、上記特許文献1記載の発明に比して新たに明確にすることにより本発明が生まれた。
ここでは、電極体基板311および電極保護層313は誘電体(電気的絶縁体)で構成されている、すなわち放電形成用電磁波は電極体基板311および電極保護層313を透過すると仮定する。したがって、放電形成用電磁波の透過型電極層透過現象、および透過型電極層でのRF電流(RFバイアス用電磁波により誘起される電流)による電圧降下現象に関連して議論する。図3に、図2A)の状況における、透過型電極層でのRF電流による電圧降下現象を模式的に示してある。電圧降下現象により発生する電圧を降下電圧と称する。図3には、誘電体保護層での誘起電圧も模式的に示してあるが、これに関しては後に議論する。
放電形成用電磁波の透過型電極層透過現象、および透過型電極層でのRF電流による電圧降下現象に関連して、次の(7)〜(12)式が成立する。
ここで、exp(a)はeaを表す。eは自然対数の底(ネイピア数)である。(7)、(8)、(9)式に関しては、「久保亮五 他 編集、岩波 理化学辞典 第4版、(株)岩波書店、東京 1987年、p. 1060の「表皮効果」の項」を参照願いたい。(7)式は、透過型電極層に入射した放電形成用電磁波の電場強度がその伝播距離(すなわち透過型電極層の厚さdte)に関して表皮厚さδteで指数関数的に減衰することを意味している。すなわち、透過型電極層の厚さdteが表皮厚さδteより十分小さければ、放電形成用電磁波は殆ど減衰することなく透過型電極層を透過しうることを意味している。また、(10)式は、透過型電極層が半径rteの円形状をしており、その表面(放電領域側表面)に一様な電流密度iisでイオンが入射している(RF電流)と仮定して、透過型電極層の中心部と外周部(端縁部)間の降下電圧を求めたものである。透過型電極層が必ずしも円形状でない場合は、透過型電極層と同じ面積の円を想定しその半径を「透過型電極層の等価半径」と称し、rteをこの「透過型電極層の等価半径」に等しいとすれば上記(10)式が概略成立する。通常、RFバイアス用電磁波の周波数frbやイオンプラズマ振動の周波数(振動数)fpiは放電形成用電磁波の周波数fpfより小さく、RFバイアス用電磁波やイオンプラズマ振動の電磁波の表皮厚さは放電形成用電磁波の表皮厚さ((9)式のδte)より厚くなる。したがって、RFバイアス用電磁波やイオンプラズマ振動の電磁波にとって透過型電極層全体を電気的導体として扱うことが可能となり、上記(10)式が概略成立する。
(7)〜(12)式の6個の関係式において、変数は上記用語説明を行ったRE_te〜rteの12個である(πは円周率)。この内μte, fpf, iis, rteの4個は、装置、放電パラメータとして既知と考える。したがって、12(変数の数)−4(既知変数の数)−6(関係式の数)=2であり、上記既知変数以外の適切な2個の変数の値を定めることにより、系全体を決定することができる。以下では、特に断らない限り、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の条件で計算および議論を進める。以降、これらの条件を標準条件と呼ぶ。これら標準条件は、通常のエッチング装置および表面処理装置において代表的かつ標準的な値である。この値(rte以外の値)は、例えば、試料台口径が概略250 mm以上さらには400 mm以上の大口径のエッチング装置や表面処理装置においても適用し得る値である。
上記の議論より、透過型電極層の厚さdteを横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系を考えると、この座標系上の任意の点(適切な2個の変数の値dteおよびρteを定める点)により系全体が決定される。この座標系上にRW_te; 一定、あるいはΔVrb_te; 一定の等高線を描く方法を以下に述べる。まず、RW_te; 一定の等高線を描く方法を述べる。
次の(13)〜(16)式として、横軸にdteを縦軸にρte =ρte_RWを取ることによりRW_te; 一定の等高線を描くことができる。
次に、ΔVrb_te; 一定の等高線を描く方法を述べる。(10)式より、(17) 式が得られる。したがって、(18)式
として、横軸にdteを縦軸にρte =ρte_Vrbを取ることによりΔVrb_te; 一定の等高線を描くことができる。
[透過型電極層の厚さと比抵抗の最適な関係]
次に、透過型電極層の厚さと比抵抗の最適な関係(透過型電極層の厚さと比抵抗の最適領域)について、図4〜図7で説明する。
図4に、透過型電極層の厚さdteを横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te>0.80かつΔVrb_te<50 Vの領域を示してある。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図4において、aEbはa×10bを表す。以降も、同様である。図4において、ΔVrb_te=50 Vと示した直線はΔVrb_te=50 Vの等高線を表し、この直線より下がΔVrb_te<50 Vの領域を表す。ΔVrb_te=50 Vの等高線は、(B3)式により描いた。(B4)式は、(18)式でΔVrb_te=50 Vとした時のρte_Vrbの値である。
同様に、RW_te=0.80と示した直線はRW_te=0.80の等高線を表し、この直線より上がRW_te>0.80の領域を表す。RW_te=0.80の等高線は、(B5)式により描いた。(B6)式は、(16)式でRW_te=0.80とした時のρte_RWの値である。従って、ΔVrb_te=50 Vの等高線より下でかつRW_te=0.80の等高線より上の領域(図4において網掛けをした領域)が、RW_te>0.80かつΔVrb_te<50 Vの領域を表す。この「RW_te>0.80かつΔVrb_te<50 Vの領域」では、放電形成用電磁波の大部分が透過型電極層を透過しており、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波で誘起されるRF電流は透過型電極層を電気的に伝導している。すなわち、「RW_te>0.80かつΔVrb_te<50 Vの領域」では、透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する材料のように振る舞う特性を有している。
放電形成用電磁波の透過型電極層での電力透過率RW_teが80%以上というのは、放電形成用電磁波を放電領域に供給するために実用上妥当な条件である。また、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであり、RF降下電圧ΔVrb_teが50 V以下というのは、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な条件である。
図4より、「RW_te>0.80かつΔVrb_te<50 V」の実用条件を満足するには、透過型電極層の厚さdte が1×105 nm=0.1 mm以下である必要があることがわかる。また同時に、透過型電極層の比抵抗ρteが3×10-3 Ωm=0.3 Ωcm以下である必要があることもわかる。透過型電極層を構成する材料として電気的半導体あるいは電気的導体を用いることにより、透過型電極層の比抵抗ρte<3×10-3 Ωm(=0.3 Ωcm)を実現することは容易である。電気的半導体としては、例えばSi, SiC, Cや化合物半導体、あるいはこれらに不純物をドープ(添加)した材料がある。電気的導体としては、例えば、Ti(チタン), Cr (クロム), Ni (ニッケル), Fe (鉄), Al (アルミニウム), Cu (銅), Ag (銀), Au (金)のいずれか、あるいはこれらの少なくとも一部を含む合金、あるいはこれらの少なくとも一部を含む材料がある。例えば、電気的半導体を用いることにより比抵抗ρte=1×10-5 Ωm〜 10 Ωm(=1×10-3 Ωcm〜1×103 Ωcm)を実現できる。また、電気的導体を用いることにより比抵抗ρte=1×10-8 Ωm〜1×10-5 Ωm(=1×10-6 Ωcm〜1×10-3 Ωcm)を実現できる。例えば、Ti, Cr, Ni, Fe, Al, Cu, Ag , Auの室温(約20 ℃=293 K)での比抵抗ρteは、夫々順に概略4.8×10-7 Ωm(=4.8×10-5 Ωcm)、1.9×10-7 Ωm(=1.9×10-5 Ωcm)、8×10-8 Ωm(=8×10-6 Ωcm)、1×10-7 Ωm(=1×10-5 Ωcm)、2.7×10-8 Ωm(=2.7×10-6 Ωcm)、1.7×10-8 Ωm(=1.7×10-6 Ωcm)、1.6×10-8 Ωm(=1.6×10-6 Ωcm)、2.3×10-8 Ωm(=2.3×10-6 Ωcm)である。したがって、実用上、透過型電極層の厚さdte <1×105 nm(=0.1 mm)が装置制御条件として重要となる。一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、通常その厚さが10 nm以上必要である。また、注意深く膜形成すれば、透過型電極層の厚さが1 nm以上必要である。すなわち、(19)式の条件を満たすことが通常の装置条件として必要となる。
この時、図4からわかるように、透過型電極層の比抵抗が3×10-13 Ωm(=3×10-11 Ωcm)以上(ρte>3×10-13 Ωm(=3×10-11 Ωcm))であることが通常の装置条件として必要となる。
図4には、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。これらはエッチング装置および表面処理装置における代表的かつ標準的な条件であり、図4を用いて得られた上記結論は代表的、標準的かつ一般的価値を持つものである。しかし、さらに一般的結論を得るために、図4と同様で「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件に捕らわれない議論を以下に行う。すなわち、(20)式である。
(20)式の中の(B4)式は、(18)式でΔVrb_te=50 Vとした時のρte_Vrbの値であり、(B6)式は、(16)式でRW_te=0.80とした時のρte_RWの値である。μte, fpf, iis, rteの値は任意の装置条件値である。透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系で(20)式で定義される領域が、「RW_te>0.80かつΔVrb_te<50 Vの領域」である。この領域の意義および実現方法に関しては、図4で述べた内容と同じである。また、図4で述べた如く、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するための条件(19)式を条件(20)式に追加するのが実用的である。
図5に、透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te>0.50かつΔVrb_te<5 Vの領域を示してある。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図5において、ΔVrb_te=5 Vと示した直線はΔVrb_te=5 Vの等高線を表し、この直線より下がΔVrb_te<5 Vの領域を表す。ΔVrb_te=5 Vの等高線は、(B7)式により描いた。(B8)式は、(18)式でΔVrb_te=5 Vとした時のρte_Vrbの値である。
同様に、RW_te=0.50と示した直線はRW_te=0.50の等高線を表し、この直線より上がRW_te>0.50の領域を表す。RW_te=0.50の等高線は、(B9)式により描いた。(B10)式は、(16)式でRW_te=0.50とした時のρte_RWの値である。従って、ΔVrb_te=5 Vの等高線より下でかつRW_te=0.50の等高線より上の領域(図5において網掛けをした領域)が、RW_te>0.50かつΔVrb_te<5 Vの領域を表す。この「RW_te>0.50かつΔVrb_te<5 Vの領域」では、放電形成用電磁波の大部分が透過型電極層を透過しており、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波で誘起されるRF電流は透過型電極層を電気的に伝導している。すなわち、「RW_te>0.50かつΔVrb_te<5 Vの領域」では、透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する材料のように振る舞う特性を有している。
放電形成用電磁波の透過型電極層での電力透過率RW_teが50%以上というのは、図4の条件より若干緩いが、放電形成用電磁波を放電領域に供給するために実用上妥当な別の条件である。また、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであり、RF降下電圧ΔVrb_teが5 V以下というのは、図4の条件より厳しくなっているが、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な別の条件である。
図5より、「RW_te>0.50かつΔVrb_te<5 V」の実用条件を満足するには、透過型電極層の厚さdte が1×105 nm=0.1 mm以下である必要があることがわかる。また同時に、透過型電極層の比抵抗ρteが3×10-4 Ωm=0.03 Ωcm以下である必要があることもわかる。透過型電極層を構成する材料として電気的半導体あるいは電気的導体を用いることにより、透過型電極層の比抵抗ρte<3×10-4 Ωm(=0.03 Ωcm)を実現することは容易である。電気的半導体および電気的導体の例は、図4での記述と同様である。したがって、実用上、透過型電極層の厚さdte <1×105 nm(=0.1 mm)が装置条件として重要となる。一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上(dte >1 nm)であることが通常の装置条件として必要となる。この時、図5からわかるように、透過型電極層の比抵抗が3×10-14 Ωm(=3×10-12 Ωcm)以上(ρte>3×10-14 Ωm(=3×10-12 Ωcm))であることが通常の装置条件として必要となる。
図5には、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。これらはエッチング装置および表面処理装置における代表的かつ標準的な条件であり、図5を用いて得られた上記結論は代表的、標準的かつ一般的価値を持つものである。しかし、さらに一般的結論を得るために、図5と同様で「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件に捕らわれない議論を以下に行う。すなわち、(21)式である。
(21)式の中の(B8)式は、(18)式でΔVrb_te=5 Vとした時のρte_Vrbの値であり、(B10)式は、(16)式でRW_te=0.50とした時のρte_RWの値である。μte, fpf, iis, rteの値は任意の装置条件値である。透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系で(21)式で定義される領域が、「RW_te>0.50かつΔVrb_te<5 Vの領域」である。この領域の意義および実現方法に関しては、図5で述べた内容と同じである。また、図5で述べた如く、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するための条件(19)式を条件(21)式に追加するのが実用的である。
図6に、透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te>0.90かつΔVrb_te<25 Vの領域を示してある。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図6において、ΔVrb_te=25 Vと示した直線はΔVrb_te=25 Vの等高線を表し、この直線より下がΔVrb_te<25 Vの領域を表す。ΔVrb_te=25 Vの等高線は、(B11)式により描いた。(B12)式は、(18)式でΔVrb_te=25 Vとした時のρte_Vrbの値である。
同様に、RW_te=0.90と示した直線はRW_te=0.90の等高線を表し、この直線より上がRW_te>0.90の領域を表す。RW_te=0.90の等高線は、(B13)式により描いた。(B14)式は、(16)式でRW_te=0.90とした時のρte_RWの値である。従って、ΔVrb_te=25 Vの等高線より下でかつRW_te=0.90の等高線より上の領域(図6において網掛けをした領域)が、RW_te>0.90かつΔVrb_te<25 Vの領域を表す。この「RW_te>0.90かつΔVrb_te<25 Vの領域」では、放電形成用電磁波の大部分が透過型電極層を透過しており、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波で誘起されるRF電流は透過型電極層を電気的に伝導している。すなわち、「RW_te>0.90かつΔVrb_te<25 Vの領域」では、透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する材料のように振る舞う特性を有している。
放電形成用電磁波の透過型電極層での電力透過率RW_teが90%以上というのは、図4の条件より厳しいが、放電形成用電磁波を放電領域に供給するために実用上妥当な別の条件である。また、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであり、RF降下電圧ΔVrb_teが25 V以下というのは、図4の条件より厳しくなっているが、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な別の条件である。
図6より、「RW_te>0.90かつΔVrb_te<25 V」の実用条件を満足するには、透過型電極層の厚さdte が1×104 nm=0.01 mm以下である必要があることがわかる。また同時に、透過型電極層の比抵抗ρteが2×10-4 Ωm=0.02 Ωcm以下である必要があることもわかる。透過型電極層を構成する材料として電気的半導体あるいは電気的導体を用いることにより、透過型電極層の比抵抗ρte<2×10-4 Ωm(=0.02 Ωcm)を実現することは容易である。電気的半導体および電気的導体の例は、図4での記述と同様である。したがって、実用上、透過型電極層の厚さdte <1×104 nm(=0.01 mm)が装置条件として重要となる。一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上(dte >1 nm)であることが通常の装置条件として必要となる。この時、図6からわかるように、透過型電極層の比抵抗が2×10-12 Ωm(=2×10-10 Ωcm)以上(ρte>2×10-12 Ωm(=2×10-10 Ωcm))であることが通常の装置条件として必要となる。
図6には、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。これらはエッチング装置および表面処理装置における代表的かつ標準的な条件であり、図6を用いて得られた上記結論は代表的、標準的かつ一般的価値を持つものである。しかし、さらに一般的結論を得るために、図6と同様で「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件に捕らわれない議論を以下に行う。すなわち、(22)式である。
(22)式中の(B12)式は、(18)式でΔVrb_te=25 Vとした時のρte_Vrbの値であり、(B14)式は、(16)式でRW_te=0.90とした時のρte_RWの値である。μte, fpf, iis, rteの値は任意の装置条件値である。透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系で(22)式で定義される領域が、「RW_te>0.90かつΔVrb_te<25 Vの領域」である。この領域の意義および実現方法に関しては、図6で述べた内容と同じである。また、図6で述べた如く、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するための条件(19)式を条件(22)式に追加するのが実用的である。
図7に、透過型電極層の厚さdteを横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te>0.95かつΔVrb_te<10 Vの領域を示してある。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図7において、ΔVrb_te=10 Vと示した直線はΔVrb_te=10 Vの等高線を表し、この直線より下がΔVrb_te<10 Vの領域を表す。ΔVrb_te=10 Vの等高線は、(B15)式により描いた。(B16)式は、(18)式でΔVrb_te=10 Vとした時のρte_Vrbの値である。
同様に、RW_te=0.95と示した直線はRW_te=0.95の等高線を表し、この直線より上がRW_te>0.95の領域を表す。RW_te=0.95の等高線は、(B17)式により描いた。(B18)式は、(16)式でRW_te=0.95とした時のρte_RWの値である。従って、ΔVrb_te=10 Vの等高線より下でかつRW_te=0.95の等高線より上の領域(図7において網掛けをした領域)が、RW_te>0.95かつΔVrb_te<10 Vの領域を表す。この「RW_te>0.95かつΔVrb_te<10 Vの領域」では、放電形成用電磁波の大部分が透過型電極層を透過しており、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波で誘起されるRF電流は透過型電極層を電気的に伝導している。すなわち、「RW_te>0.95かつΔVrb_te<10 Vの領域」では、透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する材料のように振る舞う特性を有している。
放電形成用電磁波の透過型電極層での電力透過率RW_teが95%以上というのは、図4の条件より厳しいが、放電形成用電磁波を放電領域に供給するために実用上妥当な別の条件である。また、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであり、RF降下電圧ΔVrb_teが10 V以下というのは、図4の条件より厳しくなっているが、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な別の条件である。
図7より、「RW_te>0.95かつΔVrb_te<10 V」の実用条件を満足するには、透過型電極層の厚さdte が1×103 nm=0.001 mm以下である必要があることがわかる。また同時に、透過型電極層の比抵抗ρteが7×10-6 Ωm=7×10-4 Ωcm以下である必要があることもわかる。透過型電極層を構成する材料として電気的導体を用いることにより、透過型電極層の比抵抗ρte<7×10-6 Ωm(=7×10-4 Ωcm)を実現することは容易である。電気的導体の例は、図4での記述と同様である。したがって、実用上、透過型電極層の厚さdte <1×103 nm=0.001 mmが装置条件として重要となる。一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上(dte >1 nm)であることが通常の装置条件として必要となる。この時、図7からわかるように、透過型電極層の比抵抗が7×10-12 Ωm(=7×10-10 Ωcm)以上(ρte>7×10-12 Ωm(=7×10-10 Ωcm))であることが通常の装置条件として必要となる。
図7には、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。これらはエッチング装置および表面処理装置における代表的かつ標準的な条件であり、図7を用いて得られた上記結論は代表的、標準的かつ一般的価値を持つものである。しかし、さらに一般的結論を得るために、図7と同様で「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件に捕らわれない議論を以下に行う。すなわち、(23)式である。
(23)式中の(B16)式は、(18)式でΔVrb_te=10 Vとした時のρte_Vrbの値であり、(B18)式は、(16)式でRW_te=0.95とした時のρte_RWの値である。μte, fpf, iis, rteの値は任意の装置条件値である。透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系で(23)式で定義される領域が、「RW_te>0.95かつΔVrb_te<10 Vの領域」である。この領域の意義および実現方法に関しては、図7で述べた内容と同じである。また、図7で述べた如く、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するための条件(19)式を条件(23)式に追加するのが実用的である。
[発熱量を考慮した透過型電極層の厚さと比抵抗の最適な関係]
本発明の技術をより安定かつ高信頼に実現するためには、透過型電極層312での発熱量を実用的な範囲に抑制することが重要となる。透過型電極層での発熱は、放電形成用電磁波の一部が透過型電極層で吸収されることによって生じる発熱と、透過型電極層でのRF電流によるジュール発熱で発生する。前者を電磁波吸収発熱、後者をジュール発熱と呼ぶことにする。電磁波吸収発熱に関しては、(24)式が成立する。
また、ジュール発熱に関しては、(25)式が成立する。
(25)式において、透過型電極層が半径rteの円形状をしており、その表面(放電領域側表面)に一様なRF電流(電流密度iisのイオン電流)が入射していると仮定した。透過型電極層が必ずしも円形状でない場合は、rteは透過型電極層の等価半径を表す。したがって、透過型電極層での発熱の総和は、(26)式のようになる。
通常、放電形成用電磁波の電力は、概略Wpf =1000 Wである。また、標準条件のiis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)では、概略Irb_te=18 A≒20 Aである。透過型電極層312での発熱量を実用的な範囲に抑制するためにWh_te<60 Wにすることを考える。これをバランス良く、すなわち(B19)式の条件を満たして行うには、RW_te >0.97かつΔVrb_te<3 Vであることが望ましい。
この時、Wh_te<(1000×(1-0.97)+(1/2)×20×3) W=(30+30) W=60 Wとなる。また、透過型電極層312での発熱量を実用的な範囲に抑制するためにWh_te <40 Wにすることを考える。これをバランス良く((B19)式の条件)行うには、RW_te >0.98かつΔVrb_te<2 Vであることが望ましい。この時、Wh_te <(1000×(1-0.98)+(1/2)×20×2) W=(20+20) W=40 Wとなる。以下、図8と図9を用いて、これらの性能を満足するための透過型電極層の厚さdte および透過型電極層の比抵抗ρteに関する条件を検討する。
図8に、透過型電極層の厚さdteを横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te>0.97かつΔVrb_te<3 Vの領域を示してある。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図8において、ΔVrb_te=3 Vと示した直線はΔVrb_te=3 Vの等高線を表し、この直線より下がΔVrb_te<3 Vの領域を表す。ΔVrb_te=3 Vの等高線は、(B20)式により描いた。(B21)式は、(18)式でΔVrb_te=3 Vとした時のρte_Vrbの値である。
同様に、RW_te=0.97と示した直線はRW_te=0.97の等高線を表し、この直線より上がRW_te>0.97の領域を表す。RW_te=0.97の等高線は、(B22)式により描いた。(B23)式は、(16)式でRW_te=0.97とした時のρte_RWの値である。
従って、ΔVrb_te=3 Vの等高線より下でかつRW_te=0.97の等高線より上の領域(図8において網掛けをした領域)が、RW_te>0.97かつΔVrb_te<3 Vの領域を表す。この「RW_te>0.97かつΔVrb_te<3 Vの領域」では、放電形成用電磁波の大部分が透過型電極層を透過しており、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波で誘起されるRF電流は透過型電極層を電気的に伝導している。すなわち、「RW_te>0.97かつΔVrb_te<3 Vの領域」では、透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する材料のように振る舞う特性を有している。
放電形成用電磁波の透過型電極層での電力透過率RW_teが97%以上というのは、図4〜図7の条件より厳しいが、上述した如く、放電形成用電磁波を放電領域に供給するために実用上妥当な別の条件である。また、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであり、RF降下電圧ΔVrb_teが3 V以下というのは、図4〜図7の条件より厳しくなっているが、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な別の条件である。これらの条件には、上述した如く、透過型電極層での発熱も考慮してある。
図8より、「RW_te>0.97かつΔVrb_te<3 V」の実用条件を満足するには、透過型電極層の厚さdte が2×102 nm=2000 Å以下である必要があることがわかる。また同時に、透過型電極層の比抵抗ρteが3×10-7 Ωm=3×10-5 Ωcm以下である必要があることもわかる。透過型電極層を構成する材料として電気的伝導性を有する材料すなわち電気的半導体あるいは電気的導体を用いることにより、透過型電極層の比抵抗ρte<3×10-7 Ωm(=3×10-5 Ωcm)を実現することは容易である。特に、電気的導体を用いることが有効である。電気的導体としては、例えば、Cr (クロム), Ni (ニッケル), Fe (鉄), Al (アルミニウム), Cu (銅), Ag (銀), Au (金)のいずれか、あるいはこれらの少なくとも一部を含む合金、あるいはこれらの少なくとも一部を含む材料がある。したがって、実用上、透過型電極層の厚さdte <2×102 nm=2000 Åが装置条件として重要となる。一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上(dte >1 nm)であることが通常の装置条件として必要となる。この時、図8からわかるように、透過型電極層の比抵抗が2×10-11 Ωm(=2×10-9 Ωcm)以上(ρte>2×10-11 Ωm(=2×10-9 Ωcm))であることが通常の装置条件として必要となる。
図8には、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。これらはエッチング装置および表面処理装置における代表的かつ標準的な条件であり、図8を用いて得られた上記結論は代表的、標準的かつ一般的価値を持つものである。しかし、さらに一般的結論を得るために、図8と同様で「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件に捕らわれない議論を以下に行う。すなわち、(27)式である。
(27)式中の(B21)式は、(18)式でΔVrb_te=3 Vとした時のρte_Vrbの値であり、(B23)式は、(16)式でRW_te=0.97とした時のρte_RWの値である。μte, fpf, iis, rteの値は任意の装置条件値である。透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系で(27)式で定義される領域が、「RW_te>0.97かつΔVrb_te<3 Vの領域」である。この領域の意義および実現方法に関しては、図8で述べた内容と同じである。また、図8で述べた如く、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するための条件(19)式を条件(27)式に追加するのが実用的である。
図9に、透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te>0.98かつΔVrb_te<2 Vの領域を示してある。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図9において、ΔVrb_te=2 Vと示した直線はΔVrb_te=2 Vの等高線を表し、この直線より下がΔVrb_te<2 Vの領域を表す。ΔVrb_te=2 Vの等高線は、(B24)式により描いた。(B25)式は、(18)式でΔVrb_te=2 Vとした時のρte_Vrbの値である。
同様に、RW_te=0.98と示した直線はRW_te=0.98の等高線を表し、この直線より上がRW_te>0.98の領域を表す。RW_te=0.98の等高線は、(B26)式により描いた。(B27)式は、(16)式でRW_te=0.98とした時のρte_RWの値である。
従って、ΔVrb_te=2 Vの等高線より下でかつRW_te=0.98の等高線より上の領域(図9において網掛けをした領域)が、RW_te>0.98かつΔVrb_te<2 Vの領域を表す。この「RW_te>0.98かつΔVrb_te<2 Vの領域」では、放電形成用電磁波の大部分が透過型電極層を透過しており、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波で誘起されるRF電流は透過型電極層を電気的に伝導している。すなわち、「RW_te>0.98かつΔVrb_te<2 Vの領域」では、透過型電極体が放電形成用電磁波にとっては誘電体(電気的絶縁体)のように振る舞い、RFバイアス用電磁波あるいはイオンプラズマ振動の電磁波にとっては電気的伝導性を有する材料のように振る舞う特性を有している。
放電形成用電磁波の透過型電極層での電力透過率RW_teが98%以上というのは、図4〜図7の条件より厳しいが、上述した如く、放電形成用電磁波を放電領域に供給するために実用上妥当な別の条件である。また、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであり、RF降下電圧ΔVrb_teが2 V以下というのは、図4〜図7の条件より厳しくなっているが、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な別の条件である。これらの条件には、上述した如く、透過型電極層での発熱も考慮してある。
図9より、「RW_te>0.98かつΔVrb_te<2 V」の実用条件を満足するには、透過型電極層の厚さdte が30 nm=300 Å以下である必要があることがわかる。また同時に、透過型電極層の比抵抗ρteが3×10-8 Ωm=3×10-6 Ωcm以下である必要があることもわかる。透過型電極層を構成する材料として電気的伝導性を有する材料すなわち電気的半導体あるいは電気的導体を用いることにより、透過型電極層の比抵抗ρte<3×10-8 Ωm(=3×10-6 Ωcm)を実現することは容易である。特に、電気的導体を用いることが有効である。電気的導体としては、例えば、Al (アルミニウム), Cu (銅), Ag (銀), Au (金)のいずれか、あるいはこれらの少なくとも一部を含む合金、あるいはこれらの少なくとも一部を含む材料がある。したがって、実用上、透過型電極層の厚さdte <30 nm=300 Åが装置条件として重要となる。一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上(dte >1 nm)であることが通常の装置条件として必要となる。この時、図9からわかるように、透過型電極層の比抵抗が5×10-11 Ωm(=5×10-9 Ωcm)以上(ρte>5×10-11 Ωm(=5×10-9 Ωcm))であることが通常の装置条件として必要となる。
図9には、「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。これらはエッチング装置および表面処理装置における代表的かつ標準的な条件であり、図9を用いて得られた上記結論は代表的、標準的かつ一般的価値を持つものである。しかし、さらに一般的結論を得るために、図9と同様で「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件に捕らわれない議論を以下に行う。すなわち、(28)式である。
(28)式中の(B25)式は、(18)式でΔVrb_te=2 Vとした時のρte_Vrbの値であり、(B27)式は、(16)式でRW_te=0.98とした時のρte_RWの値である。μte, fpf, iis, rteの値は任意の装置条件値である。透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系で(28)式で定義される領域が、「RW_te>0.98かつΔVrb_te<2 Vの領域」である。この領域の意義および実現方法に関しては、図9で述べた内容と同じである。また、図9で述べた如く、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するための条件(19)式を条件(28)式に追加するのが実用的である。
[透過型電極層の厚さと比抵抗の座標系における、RW_te; 一定の等高線]
次に、透過型電極層の厚さdteを横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te; 一定、およびΔVrb_te; 一定の等高線について、図10〜図11で説明する。
図10に、透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、RW_te; 一定の等高線を示してある。等高線は、(16)式の方法を用いて描いた。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図中の各線は、上から順にRW_te = 0.98, 0.95, 0.90, 0.80, 0.70, 0.60, 0.40, 0.10に対応している。
図11に、透過型電極層の厚さdte を横軸に透過型電極層の比抵抗ρteを縦軸にした座標系における、ΔVrb_te; 一定の等高線を示してある。等高線は、(18)式の方法を用いて描いた。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図中の各線は、上から順にΔVrb_te= 1000 V, 500 V, 100 V, 50 V, 10 V, 5 V, 1 Vに対応している。
[電力透過率RW_teとRF降下電圧ΔVrb_teの透過型電極層厚さdte依存性]
電力透過率RW_teとRF降下電圧ΔVrb_teの透過型電極層厚さdte依存性について、図12〜13で説明する。
図12A、図12Bに、電力透過率RW_teとRF降下電圧ΔVrb_teの透過型電極層厚さdte依存性を示してある。透過型電極層の材料としてAl(比抵抗ρte = 2.7×10-8 Ωm)を想定した結果である。電力透過率RW_teの計算には(7)、(8)、(9)式を、ΔVrb_teの計算には(10)式を用いた。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図12Bは、図12Aの一部の領域を拡大して示した内容になっている。図12A、図12Bより、電力透過率RW_teが50%以上(RW_te>0.50)、80%以上(RW_te>0.80)、90%以上(RW_te>0.90)、95%以上(RW_te>0.95)、98%以上(RW_te>0.98)であるためには、透過型電極層の厚さdteが夫々1000 nm以下(dte <1000 nm)、300 nm以下(dte <300 nm)、150 nm以下(dte <150 nm)、70 nm以下(dte <70 nm)、25 nm以下(dte <25 nm)である必要があることがわかる。特に、dte <150 nm でRW_te>0.90の性能は実用上妥当な性能である。さらに、dte <70 nmでRW_te>0.95、あるいはdte <25 nmでRW_te>0.98の性能は電力透過率を向上させる実用上妥当な別の性能である。また一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上すなわち(15)式が通常の装置条件として必要となる。この時、RF降下電圧ΔVrb_teは38 V以下(ΔVrb_te<38 V)である。RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであることを考慮すると、上記のRF降下電圧ΔVrb_teの性能(ΔVrb_te<38 V)は、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な性能である。図12では透過型電極層の材料としてAl(比抵抗ρte = 2.7×10-8 Ωm)を想定しているが、透過型電極層材料の比抵抗ρteが概略3×10-8 Ωm(例えば、1×10-8 Ωm<ρte<1×10-7 Ωm)であれば図12に関連して述べた性能と概略同等な性能を実現できる。
図13A,図13Bに、電力透過率RW_teとRF降下電圧ΔVrb_teの透過型電極層厚さdte依存性を示してある。透過型電極層の材料としてCr(比抵抗ρte = 1.9×10-7 Ωm)を想定した結果である。電力透過率RW_teの計算には(7)、(8)、(9)式を、ΔVrb_teの計算には(10)式を用いた。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。図13Bは、図13Aの一部の領域を拡大して示した内容になっている。図13A,図13Bより、電力透過率RW_teが50%以上(RW_te>0.50)、80%以上(RW_te>0.80)、90%以上(RW_te>0.90)、95%以上(RW_te>0.95)、98%以上(RW_te>0.98)であるためには、透過型電極層の厚さdteが夫々2500 nm以下(dte <2500 nm)、1000 nm以下(dte <1000 nm)、400 nm以下(dte <400 nm)、200 nm以下(dte <200 nm)、70 nm以下(dte <70 nm)である必要があることがわかる。特に、dte <400 nm でRW_te>0.90の性能は実用上妥当な性能である。さらに、dte <200 nmでRW_te>0.95、あるいはdte <70 nmでRW_te>0.98の性能は電力透過率を向上させる実用上妥当な別の性能である。また一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、特に膜形成に注意を払わないとすれば、その厚さが10 nm以上が装置条件として必要となる。この時、RF降下電圧ΔVrb_teは27 V以下(ΔVrb_te<27 V)である。RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであることを考慮すると、上記のRF降下電圧ΔVrb_teの性能(ΔVrb_te<27 V)は、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な性能である。図13A,図13Bでは透過型電極層の材料としてCr(比抵抗ρte = 1.9×10-7 Ωm)を想定しているが、透過型電極層材料の比抵抗ρteが概略2×10-7 Ωm(例えば、1×10-7 Ωm<ρte<1×10-8 Ωm)であれば図13A,図13Bに関連して述べた性能と概略同等な性能を実現できる。
[電力透過率RW_teと比抵抗ρteの透過型電極層厚さdte依存性]
次に、ΔVrb_teとdteを与えて系を決定し、RW_teとρteを求めることを考える。(10)式より(29)式の関係がある。また、(11)式と(9)式より、(30)〜(31)式の関係がある。
よって、(7)、(8)式を用いて、(32)式が得られる。
(31)式より、δte_fnは装置、放電、自然パラメータとΔVrb_teにより決定される。したがって、(29), (32)式は、ΔVrb_teとdteを与えてρteとRW_teを求める式である。
上記(29), (32)式から求められる、電力透過率RW_teと比抵抗ρteの透過型電極層厚さdte依存性について、図14A〜図15Bで説明する。
図14A,図14Bに、RF降下電圧ΔVrb_te=10 Vにおける電力透過率RW_teと比抵抗ρteの透過型電極層厚さdte依存性を示してある。電力透過率RW_teと比抵抗ρteは、(32)式と(29)式を用い、RF降下電圧ΔVrb_te=10 Vとして求めた。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。RF降下電圧ΔVrb_te=10 Vの条件は、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであることを考慮すると、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な条件である。図14Bは、図14Aの一部の領域を拡大して示した内容になっている。図14A,図14Bより、電力透過率RW_teが50%以上(RW_te>0.50)、80%以上(RW_te>0.80)、90%以上(RW_te>0.90)、95%以上(RW_te>0.95)、98%以上(RW_te>0.98)であるためには、透過型電極層の厚さdteおよび比抵抗ρteが夫々dte <0.2 mmかつρte <1×10-3 Ωm、 dte <0.02 mmかつρte <1×10-4 Ωm、dte <5000 nmかつρte <3×10-5 Ωm、dte <1200 nmかつρte <1×10-5 Ωm、dte <200 nmかつρte <1.5×10-6 Ωmである必要があることがわかる。特に、dte <5000 nmかつρte <3×10-5 ΩmでRW_te>0.90の性能は実用上妥当な性能である。さらに、dte <1200 nmかつρte <1×10-5 ΩmでRW_te>0.95、あるいはdte <200 nmかつρte <1.5×10-6 ΩmでRW_te>0.98の性能は電力透過率を向上させる実用上妥当な別の性能である。また一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上すなわち(19)式が通常の装置条件として必要となる。この時、透過型電極層の比抵抗ρteは7×10-9 Ωm以上(ρte >7×10-9 Ωm)が必要である。
図15A,図15Bに、RF降下電圧ΔVrb_te=100 Vにおける電力透過率RW_teと比抵抗ρteの透過型電極層厚さdte依存性を示してある。電力透過率RW_teと比抵抗ρteは、(32)式と(29)式を用い、RF降下電圧ΔVrb_te=100 Vとして求めた。「μte=1.26×10−6 H/m(真空の透磁率)、fpf=1 GHz、iis =100 A/m2(=10 mA/cm2)、rte =0.24 m(=240 mm)」の標準条件での結果を示してある。RF降下電圧ΔVrb_te=100 Vの条件は、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであることを考慮すると、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な別の条件である。図15Bは、図15Aの一部の領域を拡大して示した内容になっている。図15A,図15Bより、電力透過率RW_teが80%以上(RW_te>0.80)、90%以上(RW_te>0.90)、95%以上(RW_te>0.95)、98%以上(RW_te>0.98)であるためには、透過型電極層の厚さdteおよび比抵抗ρteが夫々dte <0.2 mmかつρte <1×10-2 Ωm、dte <0.05 mmかつρte <3×10-3 Ωm、dte <0.01 mmかつρte <3×10-4 Ωm、dte <2000 nmかつρte <1×10-4 Ωmである必要があることがわかる。特に、dte <0.05 mmかつρte <3×10-3 ΩmでRW_te>0.90の性能は実用上妥当な性能である。さらに、dte <0.01 mmかつρte <3×10-4 ΩmでRW_te>0.95、あるいはdte <2000 nmかつρte <1×10-4 ΩmでRW_te>0.98の性能は電力透過率を向上させる実用上妥当な別の性能である。また一方で、透過型電極層が膜構造(連続体構造)を有するためには、その厚さが1 nm以上すなわち(19)式が通常の装置条件として必要となる。この時、透過型電極層の比抵抗ρteは7×10-8 Ωm以上(ρte >7×10-8 Ωm)が必要である。
[電極保護層の厚み]
次に、電極保護層の厚みに関して議論する。図2で述べた如く、透過型電極層312の表面(放電領域側表面)が電極保護層313で被覆されていることが望ましい。この電極保護層は、誘電体(電気的絶縁体)あるいは半導体あるいはこれらの組み合わせで形成されている。電極保護層が誘電体(電気的絶縁体)で形成されていると、放電から電極保護層表面へのRF電流(イオンや電子等の荷電粒子入射)により電極保護層が帯電する。この帯電により透過型電極層に印加されたRFバイアス用電磁波電位(RF電圧)が変調される。透過型電極層に印加されたRF電圧が透過型電極体の表面(放電領域側表面)すなわち電極保護層の表面(放電領域側表面)に効率的に印加されるためには、この変調が少ないことが望ましい。電極保護層が半導体あるいは半導体と誘電体の組み合わせで形成されていると、このような帯電の影響は軽減されるがなくなることはない。
上記した帯電に伴う変調による電圧を電極保護層のRF誘起電圧ΔVrb_ipとする。以下、電極保護層が誘電体で形成されている場合に関してこのRF誘起電圧ΔVrb_ipを議論する。この場合に、RF誘起電圧ΔVrb_ipの値が最も大きくなるからである。RF誘起電圧ΔVrb_ipに関して、(33)〜(36)式の関係が成立する。
(34)式では、RFバイアス用電磁波周期(1/frb)の90%=0.9の期間でイオンが電極保護層表面に入射すると仮定している。この90%の値は、通常のRFバイアス印加条件において妥当な値である。
代表的な条件frb =13.56 MHz, iis =100 A/m2 (=10 mA/cm2), kip =4.5(電極保護層材料として石英(SiO2)を想定), dip =1×10-3 m (=1 mm)を仮定すると、ΔVrb_ip =167 Vとなる。また、別の代表的条件frb=13.56 MHz, iis =10 A/m2 (=1 mA/cm2), kip =4.5(電極保護層材料として石英(SiO2)を想定), dip =1×10-2 m (=10 mm)を仮定すると、ΔVrb_ip =167 Vとなる。また、別の代表的条件frb=13.56 MHz, iis =10 A/m2 (=1 mA/cm2), kip =4.5(電極保護層材料として石英(SiO2)を想定), dip =1×10-3 m (=1 mm)を仮定すると、ΔVrb_ip=17 Vとなる。これらのΔVrb_ipの値は、RFバイアス用電磁波のpeak-to-peak電圧(上ピーク電圧と下ピーク電圧の差)は通常500 V〜2000 Vであることを考慮すると、RF電圧を試料台206および試料207に印加するために実用上妥当な値である。以上のことを考慮すると、電極保護層の厚さdipの値としては、10 mm以下(dip <10 mm)が妥当な装置条件である。さらには、ΔVrb_ipをより低く抑えるには、電極保護層の厚さdipが1 mm以下(dip <1 mm)であることが別の妥当な装置条件である。
一方、電極保護層313の表面(放電領域側表面)は放電に暴露されており、放電との反応あるいは放電によるスパッタで電極保護層の厚さdipは装置使用と共に徐々に減少する。電極保護層の実用的寿命を確保するためには、電極保護層の厚さdipが0.001 mm以上(dip >0.001 mm)、あるいは電極保護層の厚さdipが0.01 mm以上(dip >0.01 mm)、さらには電極保護層の厚さdipが0.1 mm以上(dip >0.1 mm)であることが実用的装置条件である。電極保護層の厚さdipが大きいほど、電極保護層の実用的寿命が長くなる。
[電極体基板の厚さ]
次に、電極体基板311の厚さについて述べる。透過型電極体310によって大気圧と処理室内圧力との差圧に耐えられるように設計する場合(透過型電極体310が圧力壁になる場合)、この差圧を電極体基板311で耐える必要がある。この場合、電極体基板311の厚さは大きくなり、通常(通常サイズの処理室)条件で、5 mm〜20 mm程度が必要である、一方、透過型電極体310によって上記差圧を耐える必要がない場合は、電極体基板311の厚さは1 mm〜10 mm程度が妥当である。