JP5451503B2 - 土壌中の油分の分析方法 - Google Patents
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このような土壌中に含有する油分を測定する手法として、炭素数5以下の脂肪族アルコールを土壌試料に加えて撹拌して土壌試料中の油分をアルコールに溶解させた後、水には溶解しないが油分は溶解する有機溶媒を加えて混合し、その後、水を加えて水−アルコールを主成分とする層と油分−有機溶媒とを主成分とする層とに分離させ、有機溶媒−油分とを主成分とする層に含まれる油分を定量的に分析するようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
さらに油分の分析には、赤外分光光度計、ガスクロマトグラフィーのような実験室レベルの分析装置を用いるか、有機溶剤を蒸発させ、残った油分の重量を測定するようにしているが、前者は分析装置を持ち出すのが難しい試料採集場所での分析が難しいという問題があり、また後者は有機溶剤の蒸発を伴うため、前述した厳重な換気施設と回収施設が必要になるうえ、有機溶剤の蒸発に時間がかかり、作業性に問題がある。
そこで本発明の発明者は、土壌中の油分を低級アルコールに溶解させた後、ここに水を添加することで水−アルコールの混和液としてこの混和液中に油分粒子を析出させ、該混和液の透光度を測定することで油分の分析をすることを提唱し(特願2010−27130号)、これによって屋外において簡便に土壌中の油分の分析ができることになった。ところがこれらのものは、水を添加した後の振蕩条件で油分の析出にバラツキがあるという問題に気がついた。そしてこの振蕩は、低級アルコールに水を添加した後の人為的あるいは機械的な振蕩であって必ずしも一定でないことが要因であり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
請求項2の発明は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩は水溶液として添加されることを特徴とする請求項1記載の土壌中の油分の分析方法である。
請求項3の発明は、酸性助材は水溶液として添加されることを特徴とする請求項1または2記載の土壌中の油分の分析方法である。
請求項4の発明は、アルカリ金属の炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムの何れか一つであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の土壌中の油分の分析方法である。
請求項5の発明は、アルカリ土類金属の炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の土壌中の油分の分析方法である。
請求項6の発明は、酸性助材は、水溶性がある有機カルボン酸であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1記載の土壌中の油分の分析方法である。
請求項2または3の発明とすることにより、炭酸水素塩あるいは酸性助材が水溶液として添加されることになって、アルコール、水混和液を作成する際の水添加が兼用され、作業性が向上する。
請求項4、5または6の発明とすることにより、入手しやすい化合物を用いて二酸化炭素を発生させ、化学的、物理的な撹拌ができることになって油分析出が迅速で確実になる。
本発明に用いられる水に対する混和度が高い低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコールを例示することができ、これらから選択される1種類の低級アルコール、またはこれらから選択された2種以上の低級アルコールの混合物を用いることができる。
また土壌試料と低級アルコールとは振蕩による混合だけでなく気体のバブリングによっても撹拌混合することができる。
またアルカリ土類金属の炭酸塩としては、入手しやすさコスト等の観点から炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)に代表されるが、炭酸水素マグネシウム(Mg(HCO3)2)、炭酸水素ストロンチウム(Sr(HCO3)2)を例示できる。
しかもアルカリ金属の炭酸水素塩である炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムは、結晶として単離されるため現場まで結晶を持ち運び、そして該現場にて直接添加したり、水に溶解させた水溶液を添加したりして用いることができて便利である。これに対し、他のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸水素塩は水溶液中でのみ存在するものであるため、該当炭酸金属塩を添加した水溶液に炭酸ガスを吹き込んで炭酸水素塩の水溶液を生成させることで確保できるが、この作業は現場で行っても良いが、予め生成した炭酸水素塩の水溶液を現場まで持参しても良い。勿論、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムについても、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを添加した水溶液に炭酸ガスを吹き込んで生成したものであっても良い。
酸性助材の添加量は、酸性助材と炭酸水素塩とが反応して炭酸ガス、水、そしてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を生成するものであるため、化学量論的には当量ずつの添加であるが、炭酸ガス発生反応を促進させるため、酸性助材を多く添加することがこのましい。
酸性助材はそのまま添加しても良いが、分散性を考慮すると水で希釈したものを添加することが好ましい。
そしてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩と酸性助材との添加は、何れが先であってもよい。この場合において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩と酸性助材とをそれぞれ水で希釈(溶解)した水溶液として添加する場合、これら水が、低級アルコールと混和するための水の一部または全部とすることができる。
集積土の一つである黒泥土1g(グラム)に、市販の軽油を0.01、0.05、0.1、0.15、0.2mL(ミリリットル)ずつ添加した軽油含有黒泥土をそれぞれ作成し、これらのものにエチルアルコールを10mLずつ添加しよく振蕩して混合させる。しかる後、これらの混合液をメッシュが0.45μmのろ紙(例えばテフロン(登録商標)製)でそれぞれろ過する。ろ液は透明であり、このろ液に、このろ液に、10mLの水に0.84gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させる。しかる後、濃度0.1N(規定)に調整した希塩酸水溶液を15mL添加し、良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記希塩酸を添加してから5分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果を図1のグラフ図に示す。尚、横軸は軽油の添加量、縦軸は測定された透光度である。透光度は添加量に反比例するが、直線的な変化をしており、このことから、本発明を実施した土壌含有油分の分析精度は高いことが確認される。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様、エチルアルコールを添加し、ろ過処理後、実験例1と同様、10mLの水に0.84gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させる。その後、30秒間、1分間、2分間、3分間、10分間それぞれ放置後、実験例1と同様、透光度を測定した。この結果、放置時間が30秒間のものは透光度の低下が観測されたが、放置時間が1分間のものは透光度が一旦増大した。その後、2分間放置したものは透光度が低下し、3分間、実験例1の5分間、10分間放置したものは透光度がさらに低下したものの、これらのものは殆ど同じ透光度を示した。このことは30秒間の放置のものでは発生した炭酸ガスの細かい気泡が溶液中に残存していることで乱反射しこれが透光度に影響を与えたものと考えられる。
これに対し、1分間放置したものは溶液中で油脂粒子が発生途中であり、また3分間以上放置したものは、油脂粒子の発生が殆ど完了したものであると考えられる。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様のエチルアルコール添加処理、ろ過処理したものに、水を添加した後、10mLの水に1.0gの炭酸水素カリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させる。しかる後、濃度0.1N(規定)に調整した希塩酸水溶液を15mL添加し、良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記希塩酸を添加してから2分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果、透光度の低下が確認され、油分である軽油の存在を分析することができた。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様のエチルアルコール添加処理、ろ過処理したものに、濃度0.1N(規定)に調整した希塩酸水溶液を15mL添加し、良く振蕩して混合させ後、10mLの水に0.84gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記炭酸水素ナトリウム水溶液を添加してから2分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果、透光度の低下が確認され、油分である軽油の存在を分析することができた。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様のエチルアルコール添加処理、ろ過処理したものに、濃度0.2N(規定)に調整した希塩酸水溶液を15mL添加し、良く振蕩して混合させる。一方、10mLの水に1.0gの炭酸カルシウムを添加させた水溶液に、該水溶液が透明になるまで炭酸ガスを吹き込んで炭酸水素カルシウム水溶液を作成する。この炭酸水素カルシウム水溶液の全量を前記希塩酸を添加した溶液に添加して良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記炭酸水素カルシウム水溶液を添加してから2分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果、透光度の低下が確認され、油分である軽油の存在を分析することができた。
機械油が含浸していると考えられる現場から採取した土壌試料の2gを、メチルアルコール:エチルアルコール:イソプロピルアルコールを1:2:3の容量割合で混合した混合アルコールの20mLに混合させよく振蕩する。このものを実験例1と同様のろ過処理、炭酸水素ナトリウム水溶液添加処理、希塩酸添加処理をした後、2分間放置したものについて、現場型の透光光度計で同じく透光度の測定をした。透光度に明らかな低下が確認され、採取した土壌試料には機械油が含浸しているものと推定された。
C−重油が含浸していると考えられる現場から採取した土壌試料の2gをエチルアルコール:イソプロピルアルコールを1:1の容量割合で混合した混合アルコールの20mLに混合させよく振蕩する。このものを実験例1と同様のろ過処理、炭酸水素ナトリウム水溶液添加処理、希塩酸添加処理をした後、2分間放置したものについて、現場型の透光度計で同じく透光度の測定をした。透光度に明らかな低下が確認され、採取した土壌試料にはC−重油が含浸しているものと推定された。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様のエチルアルコール添加処理、ろ過処理したものに、10mLの水に0.84gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させる。このものにクエン酸1.0gを10mLの水に溶解した水溶液の全量を添加し、良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記クエン酸水溶液を添加してから2分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果、透光度の低下が確認され、油分である軽油の存在を分析することができた。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様のエチルアルコール添加処理、ろ過処理したものに、10mLの水に0.84gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させる。このものにL−酒石酸0.8gを10mLの水に溶解した水溶液の全量を添加し、良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記L−酒石酸水溶液を添加してから2分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果、透光度の低下が確認され、油分である軽油の存在を分析することができた。
実験例1の黒泥土に軽油を0.05mL混合したものを実験例1と同様のエチルアルコール添加処理、ろ過処理したものに、10mLの水に0.84gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液を全量添加して良く振蕩して混合させる。このものに酢酸1.0gを10mLの水に溶解した水溶液の全量を添加し、良く振蕩して混合させると炭酸ガスが細かい気泡となって発生する。
前記クエン酸水溶液を添加してから2分間放置したものについて透光光度計を用いて波長700nmの可視光で透光度を測定した。その結果、透光度の低下が確認され、油分である軽油の存在を分析することができた。
Claims (6)
- 土壌に含有する油分の分析方法であって、水に溶解する低級アルコールと土壌試料とを混合した後、該混合液をろ過したろ液に、酸性助材と水とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩とを添加して混合することで二酸化炭素ガスが発生した後の混合溶液の濁度を測定することにより油分の分析をするようにしたことを特徴とする土壌中の油分の分析方法。
- アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩は水溶液として添加されることを特徴とする請求項1記載の土壌中の油分の分析方法。
- 酸性助材は水溶液として添加されることを特徴とする請求項1または2記載の土壌中の油分の分析方法。
- アルカリ金属の炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムの何れか一つであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の土壌中の油分の分析方法。
- アルカリ土類金属の炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の土壌中の油分の分析方法。
- 酸性助材は、水溶性がある有機カルボン酸であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1記載の土壌中の油分の分析方法。
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