JP5448863B2 - 鍵生成装置、鍵生成方法、プログラム及び記録媒体 - Google Patents
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Description
Enc(M1・M2)=Enc(M1)・Enc(M2) …(2)
準同型暗号方式を用いれば、暗号文どうしの加算や乗算により、暗号文を復号することなく、加算や乗算を行った演算結果の暗号文を得ることができる。例えば、データを準同型暗号方式で暗号化しておけば、1以上の演算ゲート(以下「ゲート」)から構成される任意の演算回路(以下「回路」)にデータを入力して演算結果を得る計算を、暗号文のまま行うことができる。この性質はプログラム秘匿やデータ秘匿において非常に重要である。そのため、準同型暗号方式を構成する研究が長年行われてきた。しかしながら、加法及び乗法について準同型な準同型暗号方式の構成に成功したと認められる研究はいまだなく、近年はこのような準同型暗号方式が存在するかどうかの研究が主題であった。このような中、任意の深さの回路に適用可能で加法及び乗法について準同型な準同型暗号方式が存在することを主張する画期的な論文が発表された(非特許文献1)。なお、回路の深さとは、その回路の入力ゲートから出力ゲートまでのゲート数の最大値を意味する。
まず、本形態で用いる基本的な用語を定義する。
格子とは、Zn中の離散的な加法的部分群を意味する。格子は、Zn中の線形独立な基底b0,b2,...,bn-1∈Znの線形結合で表現される。なお、Znはn次元(nは整数)の整数からなる整数環である。また、基底を並べたn×nの行列B=(b0,b2,...,bn-1)を基底行列と呼ぶ。
格子がイデアル格子であるとは、その格子と加群として同型な剰余環R=Z[x]/f(x)のイデアルが存在することである。なお、Z[x]は整数係数多項式環であり、f(x)は最高次の係数が1である(monicな)次数nの整数係数一変数多項式である。また、剰余環Rのイデアルとは、剰余環Rの加法的部分群であり、その元に対して剰余環Rの元を左右どちらから掛けても、その演算結果が当該加法的部分群の元となるものを意味する(両側イデアルと呼ぶ場合もある)。また、剰余環Rのイデアルとして最も単純なものは剰余環Rの1つの元を用いて生成される単項イデアルである。
巡回行列(「循環行列」とも呼ばれる)とは、各行ベクトルが1つ前の行ベクトルの要素を1つ巡回させたように構成された行列である。
V=v0+v1・x+...+vn-1・xn-1 mod f(x)
で生成される単項イデアルの元は、V, V・x,..., V・xn-1の線形結合で書ける。ただし、ベクトルv=T(v0,v1,...,vn-1)∈Znとし、T(α)をαの転置とする。本形態では、この生成系のベクトルv=T(v0,v1,...,vn-1)∈Znを並べた巡回行列を巡回行列rot(v)と表現する。特に、f(x)=xn-1のとき、巡回行列rot(v)は以下のようになる。
基底行列Bに対して、
P(B)={B・T(x0,x1,...,xn-1)|-1/2≦xi≦1/2}2 …(4)
を半開基本並行体と呼ぶ。
基底行列Bに対応する基底で構成される格子をL(B)と表現する。ベクトルt∈Znについて、t-t'∈L(B)かつt'∈P(B)を満たすベクトルt'∈Znを
t mod B …(5)
と表現し、基底行列Bとベクトルtに対してベクトルt'を求める演算をtのBによる剰余と呼ぶ。
ベクトルαのユークリッドノルム(Euclid norm)を‖α‖と表現する。また、n次正方行列Αのスペクトルノルム(spectral norm)を‖Α‖を表現する。‖Α‖は、任意のn次元ベクトルXに対し、以下のように定義される。
次に、本形態の前提となる非特許文献1の準同型暗号方式(以下「Gentry方式」)の一例を示す。
Iと互いに素なベクトルv=T(v0,v1,...,vn-1)∈Znを選択し、その巡回行列rot(v)を秘密鍵Bskとする。さらに、秘密鍵Bskのエルミート標準形(Hermite Normal Form)である行列を公開鍵Bpkとする。なお、エルミート標準形とは、正則な正方整数行列に対して整数上の行基本変形を施して得られる上三角行列である。エルミート標準形が効率的に計算できることはよく知られている(例えば、「H. Cohen., "A course in computational algebraic number theory", GTM138, Springer, 1996」参照)。
平文π∈Pに対して以下の処理が行われる。
を計算する。ただし、r×sは、rを係数とする多項式とsを係数とする多項式との乗算を意味する。
を暗号文とする。
暗号文φ∈P(Bpk)∩Znに対し、以下の処理が行われる。
(2)π=φ mod BI …(13)
を平文とする。
平文π1,...,πq∈P(qは正の整数)に対応する暗号文の組(φ1,...,φq)と回路Copeに対し、以下の処理が行われる。
‖u×v‖≦γx・‖u‖・‖v‖ …(18)
となる最小の値を意味する。特に、f(x)=xn-1の場合には、
γx=√n …(19)
となる。なお、式(18)の演算子「×」の意味は式(10)と同様である。
(b0 *,...,bn-1 *)={(Bsk)-1}* …(20)
とおくと、
以上を前提とし、本形態の原理について説明する。
よって、f(x)=xn-1の場合には、
ρEnc≦n …(36)
とするのであれば、秘密鍵Bskの各固有値λ(Bsk)の絶対値|λ(Bsk)|が
W=(ωi・j)0≦i,j<n …(38)
とする。この行列Wは離散フーリエ変換行列(discrete Fourier transform matrix)である。このとき、n×nの任意の巡回行列Cは、離散フーリエ変換行列Wで対角化可能である。すなわち、n×nの任意の巡回行列Cの各固有値が対角成分に並ぶn×nの対角行列をΛとした場合、
C=W・Λ・W-1 …(39)
の関係が成り立つ。これは、絶対値が所定値以上となる(例えば、λ(Bsk)=λi(i=0,..,n-1)とした式(35)や(37)を満たす)n個の任意値λi(i=0,..,n-1)を選択し、それらを固有値λi(i=0,..,n-1)とし、各固有値λi(i=0,..,n-1)が対角成分に並ぶn×nの対角行列Λを生成し、式(39)によって巡回行列Cを生成することによって、深さdの回路に対して必ず準同型暗号方式の要件を満たすような暗号鍵を生成できることを示している。
m=ωn/2+1 …(40)
とおく。このとき、ωはmを法とする剰余環Z/mZにおいて1の原始n乗根となる。このような制約のもと式(39)で生成された巡回行列Cの要素は剰余環Z/mZの元となり、それらを整数に写像することで得られる(例えば、巡回行列Cの要素を整数とみなして得られる)n×nの巡回行列は、巡回行列rot(v)(式(3))となる。このような巡回行列rot(v)は、Gentry方式の秘密鍵Bskとして用いることができる。さらに、このように生成された秘密鍵Bskのエルミート標準形を公開鍵Bpkとすることができる。これにより、所望の深さdの回路に対して準同型暗号方式の要件を満たすGentry方式の秘密鍵Bskと公開鍵Bpkとの鍵ペアが生成できる。
W-1=(ω-i・j/n)0≦i,j<n …(41)
となる。また、各固有値λi(i=0,..,n-1)が対角成分に並ぶn×nの対角行列Λのi行j列の要素はλi・δi,jとなる。なお、δi,jはクロネッカーのデルタ(Kronecker delta)関数であり、i=jのときδi,j=1となり、i≠jのときδi,j=0となる関数である。よって、W・Λ・W-1のi行g行(0≦i,g<n)の要素(W・Λ・W-1)i,gは
次に、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、実施形態のセキュリティシステムの全体構成を説明するための図である。
図2は、実施形態の鍵生成装置の構成を説明するための図である。また、図3は、実施形態の鍵情報生成部の構成を説明するための図である。
次に、本形態の鍵生成処理を説明する。
本形態の設定部114は、例えば、
ω=2κ …(53)
m=ωn/2+1 …(54)
の演算によってmを設定し、記憶部112に格納する(ステップS13)。
図4(B)に例示するように、本形態のステップS15では、まず、暗号鍵生成部117(図3)の離散フーリエ変換部117aに、mとn個の任意値λi(i=0,..,n-1)とが入力される。離散フーリエ変換部117aは、以下のように、mを法とする剰余環Z/mZ上の離散フーリエ変換をn個の任意値λi(i=0,..,n-1)に対して施し、n個の要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)を生成する。なお、Wは離散フーリエ変換行列である。
さらに、離散フーリエ変換部117aは、n個の要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)を整数に写像したn個の要素vi∈Z (i=0,..,n-1)を生成する。なお、要素vi∈Z (i=0,..,n-1)の例は、要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)を整数とみなした値、要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)を整数とみなした値の定数倍値、その他、要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)から整数へ単写した値などである。また、n個の要素vi∈Z (i=0,..,n-1)は、「n個の任意値λi(i=0,..,n-1)の離散フーリエ変換結果に対応するn個の要素」に相当し、m=ωn/2+1を法とする剰余環Z/mZ上の離散フーリエ変換をn個の任意値λi(i=0,..,n-1)に対して施すことで得られる剰余環Z/mZの要素を整数に写像した値と等しい。生成されたn個の要素vi∈Z (i=0,..,n-1)は、記憶部112に格納される(ステップS151)。
次に、本発明の第2実施形態と説明する。本形態は第1実施形態の変形例であり、n個の任意値λi(i=0,..,n-1)を対角成分に持つn×nの対角行列Λと、離散フーリエ変換行列Wと、その逆行列W-1とを用い、式(55)の巡回行列rot(v)を生成する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図1を用いて第2実施形態のキュリティシステム2の全体構成を説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については、第1実施形態と同じ参照番号を利用し、説明を省略する。図1に例示するように、第2実施形態のセキュリティシステム2は、鍵生成装置21と、暗号化装置12−1〜Q(Qは正の整数)と、復号装置13とを有し、これらはネットワークを通じて通信可能に構成されている。
本形態の鍵生成装置21も、例えば、公知のコンピュータ又は専用のコンピュータに所定のプログラムが読み込まれて構成される特別な装置である。図2に例示するように、本形態の鍵生成装置21は、入力部111と、記憶部112と、制御部113と、設定部114,115と、任意値生成部116と、鍵情報生成部217とを有する。
次に、図4(A)を用い、本形態の鍵生成処理を説明する。
図6は、第2実施形態のステップS25の詳細を説明するための図である。
rot'(v)=W・Λ・W-1 …(57)
の演算を行い、剰余環Z/mZの元を要素に持つ、n×nの巡回行列rot'(v)を生成する。次に、巡回行列生成部117bは、巡回行列rot'(v)の各要素を整数に写像したn×nの巡回行列rot(v)を生成する。なお、この場合のn×nの巡回行列rot(v)の要素の例は、巡回行列rot'(v)の要素を整数とみなした値、巡回行列rot'(v)の要素を整数とみなした値の定数倍値、その他、巡回行列rot'(v)の要素から整数へ単写した値などである。また、巡回行列rot(v)の要素は、「n個の任意値λi(i=0,..,n-1)の離散フーリエ変換結果に対応するn個の要素」に相当し、m=ωn/2+1を法とする剰余環Z/mZ上の離散フーリエ変換をn個の任意値λi(i=0,..,n-1)に対して施すことで得られる剰余環Z/mZの要素を整数に写像した値と等しい。生成されたn×nの巡回行列rot(v)は、記憶部112に格納される(ステップS252)。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、ステップS151で、n個の要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)を整数に写像したn個の要素vi∈Z (i=0,..,n-1)を生成し、ステップS152で、n個の要素viを用いて式(55)の巡回行列rot(v)を生成することとした。しかし、ステップS151でn個の要素v'i∈Z/mZ (i=0,..,n-1)をそのまま出力し、ステップS152で、n個の要素v'i∈Z/mZを用いて巡回行列rot'(v)を生成し、巡回行列rot'(v)の要素を整数に写像することで式(55)の巡回行列rot(v)を生成してもよい。
11、21 鍵生成装置
Claims (14)
- 請求項1から3の何れかの鍵生成装置であって、
前記整数nは2のべき乗からなり、
前記要素v i(i=0,..,n-1)は、m=ωn/2+1(ωは2のべき乗からなる整数)を法とする剰余環Z/mZ上の離散フーリエ変換をn個の前記任意値λi(i=0,..,n-1)に対して施すことで得られる剰余環Z/mZの要素を整数に写像した値と等しい、
ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項1から5の何れかの鍵生成装置であって、
前記暗号鍵生成部は、
n個の前記任意値λi(i=0,..,n-1)に離散フーリエ変換を施し、前記要素v i(i=0,..,n-1)を生成する離散フーリエ変換部と、
前記要素v i(i=0,..,n-1)を用い、前記巡回行列rot(v)を生成する巡回行列生成部と、を含む、ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項1から6の何れかの鍵生成装置であって、
前記暗号鍵は、準同型暗号方式の秘密鍵を含み、
前記暗号鍵生成部は、前記巡回行列rot(v)、又は、前記巡回行列rot(v)の像であるn×nの整数要素行列を、前記秘密鍵として出力する秘密鍵生成部を含み、
前記整数要素行列の固有値の絶対値の最小値は、前記巡回行列rot(v)の固有値の絶対値の最小値以上である、
ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項1から7の何れかの鍵生成装置であって、
前記暗号鍵は、準同型暗号方式の公開鍵を含み、
前記暗号鍵生成部は、前記巡回行列rot(v)のエルミート標準形、又は、前記巡回行列rot(v)の像であるn×nの整数要素行列のエルミート標準形を、前記公開鍵として出力する公開鍵生成部を含み、
前記整数要素行列の固有値の絶対値の最小値は、前記巡回行列rot(v)の固有値の絶対値の最小値以上である、
ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項1から5の何れかの鍵生成装置であって、
前記暗号鍵生成部は、
n個の前記任意値λi(i=0,..,n-1)を対角成分とするn×nの対角行列をΛとし、n×nの離散フーリエ変換行列をWとし、当該離散フーリエ変換行列Wの逆行列をW-1とした場合における、n×nの巡回行列rot'(v)=W・Λ・W-1を用い、前記巡回行列rot(v)を生成する巡回行列生成部を含む、ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項9の鍵生成装置であって、
前記暗号鍵は、準同型暗号方式の秘密鍵を含み、
前記暗号鍵生成部は、前記巡回行列rot(v)、又は、前記巡回行列rot(v)の像であるn×nの整数要素行列を、前記秘密鍵として出力する秘密鍵生成部を含み、
前記整数要素行列の固有値の絶対値の最小値は、前記巡回行列rot(v)の固有値の絶対値の最小値以上である、
ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項9又は10の鍵生成装置であって、
前記暗号鍵は、準同型暗号方式の公開鍵を含み、
前記暗号鍵生成部は、前記巡回行列rot(v)のエルミート標準形、又は、前記巡回行列rot(v)の像であるn×nの整数要素行列のエルミート標準形を、前記公開鍵として出力する公開鍵生成部を含み、
前記整数要素行列の固有値の絶対値の最小値は、前記巡回行列rot(v)の固有値の絶対値の最小値以上である、
ことを特徴とする鍵生成装置。 - 請求項1から11の何れかの鍵生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
- 請求項13のプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体。
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