JP5448544B2 - 宇宙機用複合材料及び燃料タンク - Google Patents
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Description
前記被覆層と母材であるチタン又はチタン合金との共晶融点が1500℃以下となる金属又は金属間化合物を使用して前記被覆層を形成するとともに、
前記被覆層の厚みを、宇宙空間から大気圏突入時の摩擦熱によって、前記共晶反応によって融点が低下した母材を融解せしめる厚みとしたことを特徴とする。
また、前記被覆層の厚みを、前記母材の厚みに対して5%以上としたことを特徴とする。
なお、前記融点の低下により宇宙機用複合材料を確実に燃え尽きさせることができる温度として、宇宙機構造用金属として使用されているステンレス鋼や合金鋼の融点を参照するとともに、宇宙機は前記大気圏への突入時に空気との摩擦で1500℃以上に加熱されることを考慮すると、前記被覆層と母材であるチタン又はチタン合金との共晶融点が1500℃以下となる金属又は金属間化合物を使用して前記被覆層を形成するのがよい。
さらに、前記融点の低下により宇宙機用複合材料を確実に燃え尽きさせるために、前記被覆層の厚みは、宇宙空間から大気圏突入時の摩擦熱によって前記共晶反応によって融点が低下した母材を融解せしめる厚みが必要であり、前記母材の厚みに対して5%以上の厚みとすることが望ましい。
前記共晶融点が1300℃以下である材料で宇宙機を形成した場合、該材料の溶解・燃焼の加速の効果は大きく、さらには共晶融点が1150℃以下であればその効果はさらに大きい。
チタン又はチタン合金との共晶融点が1300℃以下である金属又は金属間化合物として、Ni、Ti2Ni、Cu、TiCu2、TiCu3、Fe、TiFeを挙げることができる。また、前記金属又は金属間化合物として、Au、TiAu2、TiAu、Co、Ti2Co、Cr、Mn、TiMn2、Si、Ti5Si3などを使用しても前記共晶融点を1300℃以下とすることが可能である。
母材の全面に被覆層を形成する場合、宇宙機の重量増加の悪影響が懸念される。そこで、宇宙機の大気圏突入時に溶解・分断させたい任意の一部の位置のみに被覆層を形成することで、該任意の一部の位置で分断・細切れにすることが可能となる。これにより、大型部材のまま大気中に突入するケースに比べて空気との摩擦が大きくなり、また、局所的に温度が上がらない位置も減少することから、大幅な重量増加を伴うことなく、燃焼を加速させる効果が発生する。
予め準備した共晶反応を誘発する金属又は金属間化合物の粉末を溶射することで、チタン又はチタン合金からなる母材の表面にコーティングを行ない被覆層を形成するものである。母材全面にコーティングを施すことも可能であるし、マスキング等をもちいて、任意の位置のみにコーティングすることも可能である。
溶射法を用いることで、任意の成分比で金属又は金属間化合物を混合して被覆層を形成することが容易となる。
めっき法を用いて母材全面にコーティングを施すことも可能であるし、マスキング等をもちいて、任意の位置のみにコーティングすることも可能である。
めっき法を用いることで、純金属に近い被覆層を形成することができるとともに、より薄膜の被覆層を形成することができ、宇宙機用複合部材の軽量化が可能となる。
燃料タンクは大型の宇宙機部品であるため、小型の部品に比べて大気圏突入時に燃え尽きさせることが困難であるとともに必要不可欠である。そこで、本発明の宇宙機用複合部材を用いて燃料タンクを成形することで、大気圏突入時に確実に燃え尽きさせることが可能な燃料タンクを提供することができる。
試料番号1−1 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号1−2 母材:純チタン、コーティング材料:Ti2Ni
試料番号1−3 母材:純チタン、コーティング材料:Fe
試料番号1−4 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
試料番号1−5 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ti2Ni
試料番号1−6 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:TiFe
試料番号1−7 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cu
試料番号1−8 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:TiCu2/TiCu3
試料番号1−9 母材:純チタン、コーティング材料:Si
試料番号1−10 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cr
ここで、コーティング材料とは、溶射コーティングするために使用した前記微粉末材料をいう。
なお、試料番号1−8の試料については、母材であるTi−6Al−4V合金の上にまずTiCu2を溶射コーティングした後、引き続きTiCu3を溶射コーティングして用意した試料である。
試料番号1−11 母材:純チタン、コーティング材料:V
試料番号1−12 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cr
特に、Ni、Ti2Ni、Cu、TiCu2、TiCu3、Fe、TiFeをコーティング材料とした試料番号1−1から1−8の8試料では、何れも1150℃以下の融点が観測された。
特に、共晶融点が前記摩擦熱によって加熱される温度である1500℃よりも充分に低い温度である1300℃以下である複合材料で宇宙機を形成した場合、該材料の溶解・燃焼の加速の効果は大きく、確実に宇宙機を燃え尽きさせることが可能であるといえ、さらには共晶融点が1150℃以下であればその効果はさらに大きい。
試料番号2−1 母材:純チタン、コーティング材料:Cu
試料番号2−2 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号2−3 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cu
試料番号2−4 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
特に、融点が前記摩擦熱によって加熱される温度である1500℃よりも充分に低い温度である1300℃以下である材料で宇宙機を形成した場合、該材料の溶解・燃焼の加速の効果は大きく、確実に宇宙機を燃え尽きさせることが可能であるといえ、さらには共晶融点が1150℃以下であればその効果はさらに大きい。
まず図3を用いて試験片及び治具の概略について説明する。
2は母材であり、純チタン又は最も一般的なチタン合金であるTi−6Al−4V合金の板である。母材2はその板厚が1mmであり、120×15mmの大きさに切り出されている。さらに母材2は、支持間隔40mmで2つの治具4で支持されている。
母材2にチタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する材料であるNi、Ti2Niのコーティング材料6を溶射法により被覆して試験片1を用意し、さらに、母材2に、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する材料であるNi、Cuのコーティング材料6をめっき法により被覆して試験片1を用意した。
用意した試験片は以下の7種類である。
試料番号3−1 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号3−2 母材:純チタン、コーティング材料:Ti2Ni
試料番号3−3 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
試料番号3−4 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ti2Ni
試料番号3−5 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号3−6 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
試料番号3−7 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cu
なお、試料番号3−1から3−4の4つの試験片については母材2の上にコーティング材料6を溶射法によって被覆し、試料番号3−5から3−7の3つの試験片については母材2の上にコーティング材料6をめっき法によって被覆した。
また、試料番号3−5から3−7の3試料、即ちめっきによって母材2の上にコーティング材料6を被覆した試料については、被覆の厚みは80±30mmとした。前述したように、母材2の厚みを1mmとしているので、母材の厚みに対するコーティング材料6の厚みは8±3%である。
支持間隔40mmの治具4の上に母材2及びコーティング材料6からなる試験片1をセットし、電気炉(不図示)内に挿入した後、1000℃/hの昇温速度で炉を加熱した。NiまたはTi2Niをコーティング材料として用いた試験片は1050℃、Cuをコーティング材料として用いた試験片は1000℃まで加熱した後、0.5hの保持をおこなった。保持後、電気炉から取り出して、試験片が半分に分割されたか否かを目視で確認した。
表3の再右(評価)欄に結果を示すように、試験片3−1から3−7の何れも、1500℃よりも充分に低い1050℃又は1000℃で保持したが、コーティング材料を被覆した部分が解け落ちて半分に分割された。
以上のことより、チタンまたはチタン合金と共晶反応を誘発する金属または金属間化合物を任意の位置に表面コーティングすることにより、当該位置で分断・細切れにできることが明らかとなった。
これにより、大型部材のまま大気中に突入するケースに比べて空気との摩擦が大きくなり、また、局所的に温度が上がらない位置も減少することから、燃焼を加速させる効果が発生することが明らかとなった。
また、宇宙機の表面全面をコーティング材料(チタンまたはチタン合金と共晶反応を誘発する金属または金属間化合物)で被覆する必要がないため、コーティング材料の使用量を少なく抑えることができ、宇宙機の重量増加を抑えることができる。
2 母材
4 治具
6 コーティング部材
Claims (8)
- チタン又はチタン合金を母材とし、該母材の表面に金属又は金属間化合物による被覆層を形成してなり、
前記被覆層と母材であるチタン又はチタン合金との共晶融点が1500℃以下となる金属又は金属間化合物を使用して前記被覆層を形成するとともに、
前記被覆層の厚みを、宇宙空間から大気圏突入時の摩擦熱によって、前記共晶反応によって融点が低下した母材を融解せしめる厚みとしたことを特徴とする宇宙機用複合材料。 - 前記被覆層を形成する金属又は金属間化合物は、前記母材と被覆層との共晶融点が1300℃以下となる金属又は金属間化合物であるとともに、該金属又は金属間化合物が、Ni、Ti 2 Ni、Cu、TiCu 2 、TiCu 3 、Fe、TiFe、Au、TiAu 2 、TiAu、Co、Ti 2 Co、Cr、Mn、TiMn 2 、Si、Ti 5 Si 3 のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の宇宙機用複合材料。
- 前記被覆層の厚みを、前記母材の厚みに対して5%以上としたことを特徴とする請求項1記載の宇宙機用複合材料。
- 前記金属又は金属間化合物が、Ni、Ti2Ni、Cu、TiCu2、TiCu3、Fe、TiFe、Au、TiAu 2 、TiAu、Co、Ti 2 Co、Cr、Mn、TiMn 2 、Si、Ti 5 Si 3 のいずれかであることを特徴とする請求項3記載の宇宙機用複合材料。
- 前記被覆層を、前記母材の表面の一部に形成し、
該被覆層の形成部分で、大気圏突入時に分断可能としたことを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の宇宙機用複合材料。 - 前記金属又は金属間化合物を、溶射法によって前記母材の表面に皮膜して前記被覆層を形成することを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の宇宙機用複合材料。
- 前記金属又は金属間化合物を、めっき法によって前記母材の表面に皮膜して前記被覆層を形成することを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の宇宙機用複合材料。
- 請求項1〜7何れかに記載の宇宙機用複合材料を用いて成形されたことを特徴とする燃料タンク。
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