JP5447465B2 - 半導体レーザ素子の端面角度測定方法 - Google Patents

半導体レーザ素子の端面角度測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体レーザ素子の端面角度測定方法に関するものである。
特許文献1には、光コネクタの端面の角度を高精度に測定する方法が記載されている。この測定方法では、レーザ光を光コネクタ端面で反射させ、該反射光を光コネクタ端面より所定の距離離れた場所で位置に換算し、光コネクタを光コネクタ端面のレーザ光焦点中心で180°回転して同様に位置を測定し、上記2つの位置より角度に換算する。このとき、固定した2本のガイドピンに対して多心光コネクタを反転して装着することにより、多心光コネクタを光コネクタ端面のレーザ光焦点中心で180°回転し、かつ光コネクタ又はレーザ光の少くとも一方を走査することにより、光コネクタ端面の任意の場所の角度を測定する。
特許文献2には、光ファイバの端面の傾斜角を測定する方法が記載されている。この方法では、光ファイバの端面から出射したレーザ光の屈折角を測定し、所定の関係式を用いて光ファイバの端面傾斜角を決定する。
特開平6−281533号公報 特開2005−233875号公報
通常、端面発光型の半導体レーザ素子の共振端面は光導波路に対して垂直に形成される。例えば、窒化ガリウム系半導体を用いた半導体レーザ素子では、窒化ガリウム基板の{0001}面(すなわちc面)を成長面として活性層等を成長させ、{0001}面に垂直な{1−100}面(m面)や{11−20}面(a面)で基板や活性層等を劈開することによって、共振端面を形成する。この場合、光導波路の長手方向をこれらの劈開面に対して垂直に設定することにより、共振端面を光導波路に対して高い精度でもって垂直にすることができる。
しかしながら、諸々の理由により、光導波路に対する共振端面の角度を精度良く垂直にすることが難しい場合がある。例えば、緑色のレーザ光を生成する半導体レーザ素子では、活性層に生じるピエゾ電界を低減する為に、例えば{20−21}面といった半極性面を主面とする窒化ガリウム基板が用いられることがある。この場合、窒化ガリウム基板の主面に対して垂直な劈開面が存在しないため、共振端面の法線が、光導波路の長手方向に対して基板の厚さ方向へ傾き易くなってしまう。また、主面上における光導波路の長手方向も、レーザ発振効率を向上させる為に基板の結晶面とは無関係の任意の方向に設定されることがある。この場合、共振端面の法線が、光導波路の長手方向に対して基板主面に沿った方向へ傾き易くなってしまう。これらのように共振端面が傾斜すると、該端面における光反射率が低下し、光損失が増大してレーザ発振のための閾値電流が増加してしまうという問題が生じる。
なお、特許文献1に記載された方法のように、測定対象である端面にレーザ光を照射してその傾斜角を測定する場合には、半導体レーザ素子の共振端面のような極めて微小な領域にレーザ光を正確に照射することが要求されるため、共振端面の傾斜角を容易に測定することができないという問題がある。また、特許文献2に記載された方法では光ファイバの端面の傾斜角を測定している。一般的に光ファイバは或る程度(例えば数十センチメートル)の長さを有しているので、光ファイバを真っ直ぐに伸張させて固定することにより、角度測定の基準となる軸線に沿って光ファイバを精度良く固定することができる。しかし、光ファイバと比較して寸法が極めて小さい半導体レーザ素子を角度測定の基準となる軸線に沿って精度良く固定することは難しい。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、半導体レーザ素子の共振端面の角度を容易に且つ精度良く測定することができる方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明による半導体レーザ素子の端面角度測定方法は、基板の主面に沿った光導波路を有する端面発光型の半導体レーザ素子の共振端面の法線と、光導波路の光導波方向との成す角度を測定する方法であって、光導波路の光導波方向と交差する方向に並んだ複数の半導体レーザ素子を含む半導体レーザバーを、共振端面が所定の基準線に沿うように治具の基準面上に固定する固定ステップと、半導体レーザバーの複数の半導体レーザ素子の共振端面からレーザ光を出射させる出射ステップと、レーザ光の遠視野像を測定する測定ステップと、遠視野像のピーク位置により定まるレーザ光の出射方向と、所定の基準線及び基準面との相対角度から上記角度を算出する算出ステップとを備えることを特徴とする。
この方法では、固定ステップの際に、複数の半導体レーザ素子を含む半導体レーザバーを治具の基準面上に固定する。このように、半導体レーザ素子を製造する過程において作製される半導体レーザバーの段階で治具に固定することによって、共振端面が所定の基準線に精度良く沿うように半導体レーザ素子を固定することができる。更に、この方法では、測定ステップでレーザ光の遠視野像を測定したのち、算出ステップにおいて、遠視野像のピーク位置により定まるレーザ光の出射方向と、所定の基準線及び基準面との相対角度から傾斜角を算出する。光導波方向が共振端面の法線方向に対して傾斜している場合、光導波方向と共振端面の法線方向との成す角度θ1は、レーザ光の出射方向と共振端面の法線方向との成す角度θ2を用いて、例えば次の数式(1)のように表される。
Figure 0005447465

なお、n1は光導波路の実効屈折率であり、n2は空気の屈折率である。したがって、上記した方法によれば、例えば上記数式(1)やこれに相当する演算式を用いることにより、光導波方向と共振端面の法線方向との成す角度を容易に求めることができる。
以上に述べたように、本発明に係る半導体レーザ素子の端面角度測定方法によれば、半導体レーザ素子を精度良く固定することができ、且つ光導波方向と共振端面の法線方向との成す角度を容易に求めることができるので、共振端面の角度を容易に且つ精度良く測定することができる。
また、半導体レーザ素子の端面角度測定方法は、算出ステップにおいて、所定の基準線及び基準面に対するレーザ光の出射方向の相対角度θ2を遠視野像のピーク位置から決定し、上述した数式(1)に基づいて、上記角度θ1を算出することを特徴としてもよい。これにより、上記角度θ1を容易且つ正確に算出することができる。
また、半導体レーザ素子の端面角度測定方法は、固定ステップにおいて、基準面に対する基板の主面の角度、及び所定の基準線に対する半導体レーザバーの共振端面の角度をそれぞれ0.1°以下とすることを特徴としてもよい。このように、基準面及び所定の基準線に対して半導体レーザ素子を精度良く固定することによって、共振端面の角度を更に精度良く測定することができる。
また、半導体レーザ素子の端面角度測定方法は、基板、及び光導波路を構成する半導体層が窒化ガリウム系半導体から成ることを特徴としてもよい。この場合、基板の主面は、窒化ガリウム系半導体のc軸と直交する平面に対してm軸方向に傾斜していてもよい。上述したように、緑色のレーザ光を生成する半導体レーザ素子では、活性層に生じるピエゾ電界を低減する為に、例えば{20−21}面といった半極性面を主面とする窒化ガリウム基板が用いられることがある。この場合、光導波路に対して垂直な劈開面が存在しないため、光導波路に垂直な平面に対して共振端面が僅かに傾斜し易くなってしまう。このような問題に対し、本発明に係る端面角度測定方法によれば、半導体レーザ素子の共振端面の角度を容易に且つ精度良く測定することができるので、半導体レーザ素子の製造過程において、共振端面の傾斜が比較的小さい半導体レーザ素子を正確に選別することができる。なお、主面のm軸方向への傾斜角度は、63°以上80°未満であることが好ましい。
また、基板、及び光導波路を構成する半導体層が窒化ガリウム系半導体から成る場合、半導体レーザ素子の発振波長は480nm以上540nm以下であることが好ましく、510nm以上540nm以下であることが尚好ましい。
本発明による半導体レーザ素子の端面角度測定方法によれば、半導体レーザ素子の共振端面の角度を容易に且つ精度良く測定することができる。
図1は、端面角度測定方法の原理を説明するための図である。 図2は、一実施形態に係る半導体レーザ素子の端面角度測定方法を実施するための測定装置の構成を概略的に示す図である。 図3(a)は、半導体レーザバー、ステージ及び光検出器からなる測定系をY軸方向から見た側面図である。図3(b)は、この測定系をZ軸方向から見た平面図である。 図4は、一実施形態において測定対象となる半導体レーザバーの構成の一例を示す正面図である。 図5は、一実施形態に係る端面角度測定方法を示すフローチャートである。 図6は、共振端面の法線と光導波路との成す角度と、閾値電流の増加割合との関係を示すグラフである。 図7は、レーザ顕微鏡のプロファイルを示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明による半導体レーザ素子の端面角度測定方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、本実施形態による端面角度測定方法の原理について説明する。図1は、端面角度測定方法の原理を説明するための図であって、一つの半導体レーザ素子1Aが示されている。なお、この図1は、半導体レーザ素子1Aの平面断面図と見なされることができ、或いは半導体レーザ素子1Aの側面断面図と見なされることもできる。
この半導体レーザ素子1Aは、いわゆる端面発光型の半導体レーザ素子であって、基板の主面に沿った光導波路11と、光導波路11の一端に形成された共振端面12とを有している。一般に、半導体レーザ素子の共振端面の法線は光導波路の中心軸線と平行である。しかし、例えば窒化ガリウム系半導体の半極性面上に成長した活性層等を有する半導体レーザ素子1Aでは、図1に示されるように、共振端面12の法線が光導波路11の中心軸線L1に対して傾くことがある。
ここで、共振端面12の法線方向を表すベクトルをVN、光導波路11の中心軸線の方向(すなわち光導波方向)を表すベクトルをVC、光出射方向(厳密には、出射されたレーザ光の遠視野像(ファーフィールドパターン;FFP)において光強度がピークとなる方向)を表すベクトルをVoutとする。図1に示されるように、法線方向ベクトルVNが光導波方向ベクトルVCに対して或る有意の角度θ1を成している場合、この角度θ1と、法線方向ベクトルVNに対する光出射方向ベクトルVoutの角度θ3とは、次の関係を有する。
Figure 0005447465

なお、n1は光導波路の実効屈折率であり、例えば活性層31がGaNからなる場合、n1=2.4である。n2は空気の屈折率であり、標準的にはn2=1.0である。
また、図1を参照すると、光出射方向ベクトルVoutと光導波方向ベクトルVCとの成す角度(すなわち共振端面の傾斜角)θ2は、θ2=θ3−θ1として求められる。したがって、この関係式及び数式(2)より、角度θ1と角度θ2とは、以下の数式(3)の関係を有する。
Figure 0005447465
そこで、本実施形態では、まず光出射方向ベクトルVoutと法線方向ベクトルVNとの成す角度θ2を測定し、得られた角度θ2と上記数式(3)とに基づいて、法線方向ベクトルVNと光導波方向ベクトルVCとの成す角度θ1を算出する。また、角度θ2の測定方法として、或る基準に対して共振端面12の角度が正確に固定された半導体レーザ素子から出射されるレーザ光のFFPを測定し、このFFPにおいて光強度がピークとなる位置から光出射方向を求める方法を採用する。
図2は、本実施形態に係る半導体レーザ素子の端面角度測定方法を実施するための測定装置の構成を概略的に示す図である。なお、図2には、理解の容易のためにXYZ直交座標系が併せて示されている。
図2に示されるように、この測定装置20は、ステージ21と、光検出器22と、演算部23とを備えている。ステージ21は、測定対象である半導体レーザ素子を固定するための治具であり、半導体レーザ素子が載置される基準面21aと、基準面21a上に設定された所定の基準線21bとを有している。基準面21aは、XY平面に沿って延びている。基準線21bは、基準面21aの一つのエッジに沿って延びており、且つY軸方向に沿って延びている。なお、図2では基準線21bが基準面21aのエッジの内側に設定されているが、基準線21bは、基準面21aのエッジと一致するように設定されてもよく、基準面21aのエッジの外側に設定されてもよい。
ステージ21の基準面21a上には、半導体レーザバー2が載置される。半導体レーザバー2は、光導波路の光導波方向と交差する方向(すなわち半導体レーザバー2の長手方向。図2ではY軸方向に一致している)に並んだ複数の半導体レーザ素子を含んでいる。このような半導体レーザバー2は、半導体レーザ素子の製造過程において、レーザ発振のための半導体積層構造をウエハ上に形成したのち、このウエハを劈開(若しくは割断)して一対の共振端面を形成した際に、生成されるものである。図2に示されるように、半導体レーザバー2は、複数の半導体レーザ素子の共振端面を含む共振端面2aが基準線21bに沿うように、ステージ21の基準面21a上に固定される。
光検出器22は、半導体レーザバー2の前方に配置される。光検出器22は、一次元状や二次元状に配置された複数の光検出部を有し、半導体レーザバー2に含まれる各半導体レーザ素子から出射されたレーザ光LaのFFPを測定する。特に、一次元状に配置された複数の光検出部を光検出器22が有する場合には、レーザ光Laの光軸周りに光検出器22を回転させることによって、レーザ光LaのFFPを好適に測定することができる。そして、FFPに関するデータDaが、光検出器22から出力される。このデータDaは、演算部23に送られる。
演算部23は、光検出器22から提供されたデータDaに基づいて、FFPのピーク位置を求める。そして、このピーク位置から定まるレーザ光Laの出射方向と、ステージ21の基準面21a及び基準線21bとの相対角度(すなわち、図1に示された光出射方向ベクトルVoutと光導波方向ベクトルVCとの成す角度θ2)を求めたのち、上述した数式(2)を利用して、図1に示された法線方向ベクトルVNと光導波方向ベクトルVCとの成す角度θ1を算出する。
ここで、図3(a)は、半導体レーザバー2、ステージ21及び光検出器22からなる測定系をY軸方向から見た側面図である。また、図3(b)は、この測定系をZ軸方向から見た平面図である。光導波方向に対して共振端面2aの法線方向がZ軸方向に傾いている場合、図3(a)に示されるように、レーザ光Laの出射方向は基準面21aに対して或る角度θZ2でもってZ軸方向に傾斜する。なお、基準面21aは光導波方向と平行であり、図中の一点鎖線B1は基準面21aに対して平行な光導波路の中心軸線である。そして、光検出器22の光検出面上では、光導波路の中心軸線B1と光検出面との交点22aに対して、FFPがピークとなる点Pの位置がZ軸方向に距離DZを有する。この距離DZと、半導体レーザバー2及び光検出面の間隔に基づき、角度θZ2を求めることができる。
また、光導波方向に対して共振端面2aの法線方向がY軸方向に傾いている場合、図3(b)に示されるように、レーザ光Laの出射方向は基準線21bの法線(すなわち光導波路の中心軸線B1)に対して或る角度θY2でもってY軸方向に傾斜する。なお、基準線21bは、共振端面2aと平行である。そして、光検出器22の光検出面上では、光導波路の中心軸線B1と光検出面との交点22aに対して、FFPがピークとなる点Pの位置がY軸方向に距離DYを有する。この距離DYと、半導体レーザバー2及び光検出面の間隔に基づき、角度θY2を求めることができる。演算部23は、このような方法により角度θZ2及びθY2を求めたのち、上述した数式(3)を利用して、角度θ1を構成するXZ平面成分θZ1及びXY平面成分θY1を算出する。
図4は、本実施形態において測定対象となる半導体レーザバー2の構成の一例を示す正面図である。図4に示されるように、半導体レーザバー2は、半導体レーザ素子となる複数のレーザ構造部14を含んでいる。これらのレーザ構造部14は、光導波方向と交差する方向(Y軸方向)に並んで設けられている。また、半導体レーザバー2は、例えば窒化ガリウムからなる半導体基板10と、半導体基板10の主面10a上に設けられた活性層31を含む半導体積層32と、半導体積層32に形成され所定の光導波方向に延びる光導波路構造33と、光導波路構造33の両端に形成された一対の共振端面(一方の端面12のみ図示)と、光導波路構造33に電流を供給する為の電極34とを有している。なお、図3に例示される半導体レーザバー2は、光導波路構造としていわゆるリッジ構造を有しているが、光導波路構造はこれに限られるものではなく、埋込みメサ形状等の他の構造が採用されてもよい。
本実施形態では、半導体基板10、及び光導波路を構成する半導体積層32は、窒化ガリウム系半導体から成ることができる。この場合、半導体基板10の主面10aは、窒化ガリウム系半導体のc軸と直交する平面に対してm軸方向に傾斜していてもよい。なお、主面のm軸方向への傾斜角度は、63°以上80°未満であることが好ましい。また、半導体基板10及び半導体積層32が窒化ガリウム系半導体から成る場合、半導体レーザ素子の発振波長は480nm以上540nm以下であることが好ましく、510nm以上540nm以下であることが尚好ましい。
電極34は、光導波路構造33上に設けられており、例えばp型電極として光導波路構造33の半導体層とオーミック接触を成す。電極34は金属膜35によって覆われており、電極34は、この金属膜35を介してワイヤボンディングの為の電極パッド等に接続される。また、半導体基板10の裏面10b上には、別の電極36が設けられている。電極36は、例えばn型電極として半導体基板10とオーミック接触を成す。
なお、光導波路構造33の側面は、誘電体膜37によって覆われている。誘電体膜37は、例えばSiO、SiN、若しくはSiONといった絶縁性シリコン化合物から成る。誘電体膜37は、光導波路構造33上に開口を有しており、上述した電極34はこの開口を介して光導波路構造33の半導体層と接触している。
続いて、本実施形態に係る半導体レーザ素子の端面角度測定方法について説明する。なお、この端面角度測定方法は、半導体レーザ素子の製造過程において行われるものであることから、以下の説明では、当該方法を半導体レーザ素子の製造方法と共に説明している。
図5は、本実施形態に係る端面角度測定方法を示すフローチャートである。図5に示されるように、まず、ウエハ状の半導体基板10の主面10a上に、活性層31を含む半導体積層32を成長させる(成長工程S11)。次に、半導体積層32の一部に対してエッチングを行うことにより、光導波路構造33を形成する(導波路形成工程S12)。そして、ウエハ状の半導体基板10を、光導波路に対して直交する方向に沿って割断することにより、一対の共振端面2aを有する半導体レーザバー2を形成する(バー形成工程S13)。その後、一対の共振端面2aそれぞれの上に誘電体多層膜を形成する(誘電体膜形成工程S14)。これらの誘電体多層膜は、いわゆる反射防止膜(AR膜)や高反射膜(HR膜)と呼ばれるものである。
続いて、半導体レーザバー2を、一方の共振端面2aが基準線21bに沿うようにステージ21の基準面21a上に固定する(固定ステップS15)。なお、この固定ステップS15では、基準面21aに対する半導体基板10の主面10aの角度、及び基準線21bに対する半導体レーザバー2の共振端面2aの角度を実質的に0°に近づけることが望ましく、具体的にはそれぞれ0.1°以下とすることが好ましい。次に、半導体レーザバー2の電極34と電極36との間に電流を供給して、半導体レーザバー2の共振端面2aに含まれる各半導体レーザ素子の共振端面12から、レーザ光Laを出射させる(出射ステップS16)。
続いて、光検出器22によりレーザ光LaのFFPを測定して、データDaを生成する(測定ステップS17)。そして、先のステップにより得られたFFPのピーク位置Pにより定まるレーザ光Laの出射方向と、基準面21a及び基準線21bとの相対角度θ2(θY2,θZ2)から、角度θ1(θY1,θZ1)を算出する(算出ステップS18)。
こののち、半導体レーザバー2は、劈開やダイシング等によって個々の半導体レーザ素子1Aに分離される(分離工程S19)。なお、これらの半導体レーザ素子1Aに対し、上述したステップS15〜S18と同様にして角度θ1を再度測定してもよい。以上の工程を経て、角度θ1が所定の基準値内である半導体レーザ素子1Aが選別され、後の工程(パッケージへの実装工程等)へ送られる。
以上に説明した、本実施形態による半導体レーザ素子の端面角度測定方法によって得られる効果について説明する。前述したように、一般的に端面発光型の半導体レーザ素子の共振端面は、光導波路に対して垂直に形成される。しかし、諸々の理由により、光導波路に対する共振端面の角度を精度良く垂直にすることが難しい場合がある。共振端面の法線が光導波路に対して傾くと、該共振端面における光反射率が低下し、光損失が増大してレーザ発振のための閾値電流が増加してしまうという問題が生じる。
ここで、図6は、共振端面の法線と光導波路との成す角度と、閾値電流の増加割合との関係を示すグラフである。図6(a)は水平方向(すなわち半導体基板の主面に平行な方向)における関係を示しており、図6(b)は垂直方向(すなわち半導体基板の主面に垂直な方向)における関係を示している。図6を参照すると、水平方向及び垂直方向共に、共振端面の法線と光導波路との成す角度が大きくなる程、閾値電流の増加割合が増える(すなわち閾値電流が大きくなる)ことがわかる。
したがって、半導体レーザ素子を製造する際には、共振端面の法線と光導波路との成す角度を測定し、この角度が所定の基準値より小さいものを選別することが望まれる。しかし、半導体レーザ素子の端面は、例えば水平方向の幅2μm、垂直方向の幅1μmといった極めて小さな領域である。したがって、例えば特許文献1に記載された方法を用いて、外部より照射したレーザの反射角度からこの小さな領域の角度を算出することは困難である。
また、走査型透過電子顕微鏡を用いて分析すれば上記角度を正確に知ることができるが、破壊検査となってしまうので、半導体レーザ素子の製造時における選別にこの方法を用いることはできない。また、半導体レーザ素子をパッケージに実装した後にレーザ光の出射方向を測定することも考えられるが、半導体レーザ素子とサブマウントとの接合、或いはサブマウントとステムとの接合において、両者の平行度が低いことを考慮すると、角度測定の基準となる光導波方向を例えば0.5°程度の高い精度でもって正確に知ることは困難である。
なお、共振端面の法線と光導波路との成す角度のうち水平方向の角度成分については、例えば共振端面の上方から撮影した光学顕微鏡写真を用いて測定することが可能である。一方、垂直方向の角度成分は、例えばレーザ顕微鏡やFIB−SEMを使用して測定することが可能である。すなわち、図7に示されるようなレーザ顕微鏡のプロファイルから共振端面及び上面の傾きを読み取り、それらの交わる角度を求めることができる。しかしながら、レーザ顕微鏡では基板部分の共振端面の傾きしか得ることができないが、共振端面の角度は、基板部分と半導体積層とで異なる場合がある。また、FIB−SEMによる角度測定は多くの手間を必要とし、また破壊検査でもある。したがって、半導体レーザ素子の製造時における選別にこの方法は用い難い。
上述した問題に対し、本実施形態による方法では、固定ステップS15において、複数の半導体レーザ素子1Aを含む半導体レーザバー2をステージ21の基準面21a上に固定する。このように、半導体レーザ素子1Aを製造する過程において作製される半導体レーザバー2の段階でステージ21に固定することによって、共振端面12が基準線21bに精度良く沿うように半導体レーザ素子1Aを固定することができる。更に、本実施形態による方法では、測定ステップS17においてレーザ光LaのFFPを測定したのち、算出ステップS18において、FFPのピーク位置により定まるレーザ光Laの出射方向と、基準面21a及び基準線21bとの相対角度θ2から傾斜角θ1を算出する。なお、角度θ1は、角度θ2を用いて、例えば上述した数式(3)やこれに相当する演算式により容易に求めることができる。したがって、本実施形態に係る端面角度測定方法によれば、光導波方向と、共振端面12の法線方向との成す角度θ1を容易に求めることができる。このように、本実施形態に係る半導体レーザ素子の端面角度測定方法によれば、半導体レーザ素子1Aを精度良く固定することができ、且つ角度θ1を容易に求めることができるので、共振端面12の角度θ1を容易に且つ精度良く測定することができる。
なお、一般的に半導体レーザ素子では、光閉じ込めの強さが水平方向及び垂直方向で互いに異なる。光閉じ込めが強いほど共振端面の角度の影響が小さくなるので、共振端面の角度の基準値を設定する際には、図3に示された水平方向の角度θY2及び垂直方向の角度θZ2のそれぞれについて、個別に基準値を設定することが望ましい。例えば、図6に示されたグラフを参照すると、水平方向(図6(a))では、角度θY2が1°のときに閾値電流の増加割合が1となるのに対し、垂直方向(図6(b))では、角度θZ2が3.3°のときに閾値電流の増加割合が1となっている。共振端面の角度の基準値を設定する際には、このような相違を考慮することが望ましい。
また、本実施形態のように、算出ステップS18において、基準面21a及び基準線21bに対するレーザ光Laの出射方向の相対角度θ2を、FFPのピーク位置P(図3参照)から決定し、上述した数式(3)に基づいて角度θ1を算出することが好ましい。これにより、上記角度θ1を容易且つ正確に算出することができる。
また、本実施形態のように、固定ステップS15において、基準面21aに対する半導体基板10の主面10aの角度、及び基準線21bに対する半導体レーザ素子1Aの共振端面12(半導体レーザバー2の共振端面2a)の角度をそれぞれ0.1°以下とすることが好ましい。このように、基準面21a及び基準線21bに対して半導体レーザ素子1A(半導体レーザバー2)を精度良く固定することによって、角度θ1を更に精度良く測定することができる。
また、本実施形態のように、半導体基板10及び半導体積層32は窒化ガリウム系半導体から成ることができる。この場合、半導体基板10の主面10aは、窒化ガリウム系半導体のc軸と直交する平面に対してm軸方向に傾斜していてもよい。前述したように、緑色のレーザ光を生成する半導体レーザ素子では、活性層に生じるピエゾ電界を低減する為に、例えば{20−21}面といった半極性面を主面とする窒化ガリウム基板が用いられることがある。この場合、光導波路に対して垂直な劈開面が存在しないため、光導波路に垂直な平面に対して共振端面が僅かに傾斜し易くなってしまう。このような問題に対し、本実施形態に係る端面角度測定方法によれば、半導体レーザ素子1Aの共振端面12の角度θ1を容易に且つ精度良く測定することができるので、半導体レーザ素子1Aの製造過程において、共振端面12の傾斜が比較的小さい半導体レーザ素子1Aを正確に選別することができる。
なお、半導体レーザ素子1Aをパッケージに実装した後に端面角度を測定すると、一対の共振端面のうち一方(光出射端面)しか角度を測定することができないが、本実施形態では、半導体レーザバー2の状態で測定を行うので、一対の共振端面の双方の角度を測定することが可能になる。通常、一方の共振端面は反射率50%程度であり、光出射端面となる。また、他方の共振端面は反射率90%程度であり、光反射端面となる。
1A…半導体レーザ素子、2…半導体レーザバー、2a…共振端面、10…半導体基板、10a…主面、10b…裏面、11…光導波路、12…共振端面、14…レーザ構造部、20…測定装置、21…ステージ、21a…基準面、21b…基準線、22…光検出器、22a…交点、23…演算部、31…活性層、32…半導体積層、33…光導波路構造、34,36…電極、35…金属膜、37…誘電体膜、B1…中心軸線、Da…データ、DY…距離、DZ…距離、L1…中心軸線、La…レーザ光、P…ピーク位置、VC…光導波方向ベクトル、VN…法線方向ベクトル、Vout…光出射方向ベクトル。

Claims (8)

  1. 基板の主面に沿った光導波路を有する端面発光型の半導体レーザ素子の共振端面の法線と、前記光導波路の光導波方向との成す角度を測定する方法であって、
    前記光導波路の光導波方向と交差する方向に並んだ複数の前記半導体レーザ素子を含む半導体レーザバーを、前記共振端面が所定の基準線に沿うように治具の基準面上に固定する固定ステップと、
    前記半導体レーザバーの前記複数の半導体レーザ素子の前記共振端面からレーザ光を出射させる出射ステップと、
    前記レーザ光の遠視野像を測定する測定ステップと、
    前記遠視野像のピーク位置により定まる前記レーザ光の出射方向と、前記所定の基準線及び前記基準面との相対角度から前記角度を算出する算出ステップと
    を備えることを特徴とする、半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  2. 前記算出ステップにおいて、前記所定の基準線及び前記基準面に対する前記レーザ光の出射方向の相対角度θ2を前記遠視野像のピーク位置から決定し、次の関係式
    Figure 0005447465

    (但し、n1は前記光導波路の実効屈折率であり、n2は空気の屈折率である)に基づいて、前記角度θ1を算出することを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  3. 前記固定ステップにおいて、前記基準面に対する前記基板の前記主面の角度、及び前記所定の基準線に対する前記半導体レーザバーの前記共振端面の角度をそれぞれ0.1°以下とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  4. 前記基板、及び前記光導波路を構成する半導体層が窒化ガリウム系半導体から成ることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  5. 前記基板の前記主面が、前記窒化ガリウム系半導体のc軸と直交する平面に対してm軸方向に傾斜していることを特徴とする、請求項4に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  6. 前記主面の前記m軸方向への傾斜角度が63°以上80°未満であることを特徴とする、請求項5に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  7. 前記半導体レーザ素子の発振波長が480nm以上540nm以下であることを特徴とする、請求項4〜6の何れか一項に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
  8. 前記半導体レーザ素子の発振波長が510nm以上540nm以下であることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ素子の端面角度測定方法。
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