JP5446990B2 - NaS電池の処理方法 - Google Patents
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Description
このNaS電池は、例えばアルミニウム等からなる正極容器の内部に、β―アルミナ固体電解質管が装入されており、正極容器とβ―アルミナ固体電解質管との間の空間に硫黄が充填され、β―アルミナ固体電解質管内にナトリウムが充填された構造とされている。そして、固体電解質を介してナトリウムと硫黄とが可逆反応することにより、充電と放電とが繰り返し行われる構成とされている。なお、正極容器及びβ―アルミナ固体電解質管は、取扱いを簡便にするために、通常、ステンレス等からなる外装容器内に収容されている。
そこで、例えば特許文献1−3には、使用済みのNaS電池を処理するための各種技術が開示されている。
特許文献2には、使用済みのNaS電池を解体して、溶融ナトリウムをパラフィン槽内に取り出す方法及び解体が容易な構造のNaS電池が提案されている。
特許文献3には、使用済みNaS電池の電極キャップを切断した上で正極容器や固体電解質管を破壊し、これを過剰空気下で焼却する方法が提案されている。
また、金属ナトリウムが酸素に触れると酸化反応によって発熱することから、溶融ナトリウムの取り出しを、溶融パラフィン等に浸漬した状態で行う必要があった。さらに、ナトリウムを取り出した後に硫黄を回収することになるが、硫黄は酸化によってSOXガスとなるため、取扱いが困難となる。このように、取扱いが困難なナトリウムや硫黄を個別に取り出すことから、これらに対応する設備や工程を設ける必要があり、NaS電池の処理を効率良く行うことができなかった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、廃棄されたNaS電池を、大量に効率良く処理することができるNaS電池の処理方法を提供することを目的とする。
さらに、単にナトリウムと硫黄とを反応させるのではなく、金属製錬炉内の反応を利用していることから、ナトリウムと硫黄との存在比率が安定していなくても、ナトリウム及び硫黄を確実に処理することができる。
また、外装容器、正極容器及び固体電解質管といった部材についても、前述のように、金属製錬炉で溶融されるため、金属製錬炉内で生成するスラグなどに回収されることになり、焼却灰等の廃棄物が発生しない。
銅製錬工程では、銅製錬炉で発生したスラグを回収する手段、及び、硫黄成分を回収する手段(硫酸工場)を備えていることから、これら既存を設備を利用することでNaS電池の処理を効率的に行うことが可能となる。
この場合、ランス列によって前記銅製錬炉内の熔体に空気が吹き込まれるため、熔体の流動によって炉内に投入されたNaS電池が熔体排出口から離間する方向に向けて移動することになり、炉内の滞留時間が確保される。よって、銅製錬炉内においてNaS電池を確実に溶融することができる。
この場合、前記銅製錬炉が連続製銅設備の溶錬炉であることから、NaS電池を連続的に投入して処理しても、ナトリウム等をスラグの中に吸収することができ、このスラグが連続的に処理されることから、NaS電池の処理効率を大幅に向上することができる。また、既存の連続製銅設備の溶錬炉にNaS電池を投入することで、この連続製銅設備に附属するスラグ処理機構や硫酸回収機構を利用してナトリウムや硫黄を回収することができる。
NaS電池の正極容器や電極キャップに予め穴明け加工を行うことで、高温の金属製錬炉内にNaS電池を投入した際に、正極容器や固体電解質管の内部圧力が異常に上昇することを防止することができる。また、予め穴明け加工を行うことで、β―アルミナ固体電解質管内のナトリウムに熔体が速やかに接触し、ナトリウムの酸化吸収を促進することができる。
例えば、NaS電池の外装容器や正極容器の肉厚が厚い場合や溶融し難い材料で構成されていた場合等には、外装容器や正極容器に予め切断加工をしておくことで、正極容器の内容物の溶融を促進することができる。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態において処理されるNaS電池50の一般的な構造について説明する。
正極容器53の上部には、径方向内方に向けて突出した支持部54が形成されており、この支持部54の上に、環状絶縁部材57が配置されており、この環状絶縁部材57は、正極容器53の内周面と固体電解質管55の外周面との間に嵌着された構成とされている。この環状絶縁部材57の上には、電極キャップ59が配設されている。
また、正極容器53の上端には、正極端子61が接続されており、固体電解質管55には、負極端子62が挿入されている。
すなわち、2Na+XS→Na2SX(放電)、Na2SX→2Na+XS(充電)の可逆反応によって、充電及び放電が繰り返し行われるのである。ここで、反応によって生成する多硫化ナトリウム(Na2SX)は、前述の硫黄電極67内に存在することになる。
この銅製錬炉は、図2に示す連続製銅設備1において上流側(図2において左側)に設けられた溶錬炉10である。
分離炉3は、溶錬炉10から送り込まれた熔体中のマットMとスラグSgとを比重差を利用して分離するものであって、比重の大きいマットMの層の上に比重の小さいスラグSgの層が形成されるようになっている。この分離炉3には、複数の電極9が下端をスラグ中に浸漬させた状態にして挿通されている。分離炉3では、これら電極9にトランスから三相交流を入力してジュール熱を発生させることで熔体の保温を行っている。
分離炉2において分離されたスラグSgは、別途回収されることになる。また、溶錬炉10等で生成したSO2ガス等の含硫ガスは、図示しない硫酸工場へと移送され、硫酸又は石膏(CaS04)として回収される。
この加工室内23は、除湿した窒素ガス等の不活性ガスが導入されて非酸化性雰囲気とされており、切断加工及び穴明け加工を非酸化性雰囲気で実施可能な構成とされている。
また、この加工室23内にNaS電池50が連続して装入され、加工後のNaS電池50が投入シュート29へと連続的に排出されるように構成されている。
使用済みのNaS電池50は、搬送部21によって前処理装置22へと搬送され、この前処理装置22において、切断機25及び穴明け機26を用いて外装容器51及び正極容器53に切断加工、電極キャップ59に穴明け加工が施される(前処理工程S1)。なお、切断機25によって、外装容器51及び正極容器53の外周部分に切れ込みを複数形成してもよい。
溶錬炉10内に投入されたNaS電池50は、例えば1220〜1240℃とされた高温の熔体中に浸漬されて溶融する(溶融工程S3)。これにより、NaS電池50の外装容器51、正極容器53、固体電解質管55が溶融し、内部に充填されていたナトリウム(Na)や硫黄(S)も溶錬炉10内に流出することになる。
また、溶錬炉10内に流出した硫黄(S)は、溶錬炉10内の酸素によって酸化されてSO2ガス等になり、硫化銅や硫化鉄等から発生した含硫ガスとともに、アップテーク17及びボイラー18を介して回収され、図示しない硫酸工場へと移送される。
さらに、硫黄電極67に存在する多硫化ナトリウム(Na2SX)は、ナトリウム分と硫黄分とに分解して、ナトリウム分がスラグSg中に吸収され、硫黄分がSO2ガス等になって回収される。
アルミニウムからなる正極容器53、電極キャップ59、正極端子61及び負極端子62についても、酸化してスラグSgに吸収されることになる。
アルミナからなる固体電解質管55及び環状絶縁部材57は、そのままスラグSgに吸収される。
さらに、硫黄電極67を構成するグラファイトフェルトは、溶錬炉10内で燃焼し、排ガスとしてアップテーク17及びボイラー18を介して排出される。
また、SO2ガスとして硫酸工場に移送された硫黄成分は、硫酸及び石膏として回収される。
こうして、NaS電池を構成するすべての部材が処理されることになる。
また、硫黄が酸化することによってSO2ガスが発生するが、連続製銅設備1においては恒常的にSO2ガスが発生するので、連続製銅設備1に設けられた既存の硫酸工場を利用することで、硫黄分を硫酸や石膏として回収することが可能となる。
また、外装容器51、正極容器53、固体電解質管55、環状絶縁部材57、電極キャップ59、正極端子61及び負極端子62といった部材についても、溶錬炉10内で溶融されるため、スラグSgに回収されることになる。さらに、硫黄電極67を構成するグラファイトフェルトは、溶錬炉10内で燃焼されて、通常の排ガスとして排出されることになる。よって、NaS電池50をそのまま溶錬炉10に投入しても、焼却灰等の廃棄物が発生せず、通常の連続製銅工程によってすべて処理されることになる。
さらに、連続製銅設備1の溶錬炉10にNaS電池50を投入しているので、ナトリウム等が吸収されたスラグSgが連続的に処理されることになり、NaS電池50を連続的に投入することが可能となり、NaS電池50の処理効率を飛躍的に向上することができる。
しかも、本実施形態では、非酸化性雰囲気とされた加工室23内で、外装容器51、正極容器53及び電極キャップ59に対して切断加工や穴明け加工を行うことが可能な構成とされていることから、万が一、切断加工や穴明け加工によってナトリウムが漏洩したとしても、ナトリウムの酸化反応が抑制されることになる。
例えば、NaS電池を投入する銅製錬炉として連続製銅設備の溶錬炉を使用したものとして説明したが、これに限定されることはなく、自溶炉、反射炉といった他の銅製錬炉にNaS電池を投入してもよい。
また、銅製錬炉を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、Ni製錬炉等の他の金属の製錬設備を利用してNaS電池を処理してもよい。
さらに、投入前のNaS電池への切断加工や穴明け加工は、必須のものではなく、必要に応じて実施すればよい。
また、外装容器毎、銅製錬炉に投入する構成としたが、外装容器から正極容器を取り出して、銅製錬炉に投入してもよい。
10 溶錬炉(金属製錬炉)
13 熔体排出口
16 ランス列
50 NaS電池
Sg スラグ
Claims (6)
- ナトリウムと硫黄とを含有するNaS電池を処分するNaS電池の処理方法であって、
前記NaS電池を金属製錬炉に投入し、
ナトリウム成分を、金属製錬工程で生成するスラグの中に吸収して無害化するとともに、硫黄成分を、金属製錬工程で生成する硫酸又は石膏の中に回収することを特徴とするNaS電池の処理方法。 - 前記金属製錬炉が銅製錬炉であり、前記金属製錬工程が銅製錬工程であることを特徴とする請求項1に記載のNaS電池の処理方法。
- 前記銅製錬炉は、内部の熔体を外部へと排出する熔体排出口と、上方から垂下されたランス列と、を備えており、
前記NaS電池は、前記ランス列よりも前記熔体排出口から離間した位置に投入されることを特徴とする請求項2に記載のNaS電池の処理方法。 - 前記銅製錬炉は、連続製銅設備の溶錬炉であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のNaS電池の処理方法。
- 前記金属製錬炉に投入する前に、前記NaS電池に対して穴明け加工を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のNaS電池の処理方法。
- 前記金属製錬炉に投入する前に、前記NaS電池に対して切断加工を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のNaS電池の処理方法。
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