JP5446478B2 - 磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末に関するものであり、詳しくは、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であり、白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)の各元素の合計量が10ppm以下である六方晶フェライト粒子粉末に関するものである。
磁気記録技術は、従来、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに替わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが必要となるが、磁性粒子粉末は微細化することによって粒子体積が小さくなるため、磁化の熱的安定性を表す磁気異方性エネルギーと熱エネルギーとの比(KuV/kT)(Ku:磁気異方性定数、V:粒子体積、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)が小さくなり、熱揺らぎの影響を受けやすくなる。
一般に、微粒子、且つ、高保磁力値を有する磁性粒子粉末としては、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及び六方晶フェライト粒子粉末等が知られており、六方晶フェライト粒子粉末は針状の金属磁性粒子粉末に比べ短波長領域で高い出力が得られるという特徴があり、再生にMRヘッドやGMRヘッドを用いた高密度記録の磁気記録媒体用磁性粉末として非常に有望である。
六方晶フェライト粒子粉末の製法としては、所望のフェライト組成になるように混合した原材料とガラス形成物質を溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得るガラス結晶化法(特許文献1)、所望のフェライト組成のアルカリ性懸濁液を100℃以上で液相加熱し、洗浄・乾燥した後900℃前後で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る水熱合成法(特許文献2)、所望のフェライト組成の金属塩溶液をアルカリで中和し、得られた鉄塩とバリウム塩の共沈物を水洗・乾燥した後800℃で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る共沈−焼成法(特許文献3)及び共沈物の形成を逆ミセル法により行った共沈−焼成法(特許文献4)等が知られている。
特開2006−5299号公報 特開平2−9723号公報 特開平7−172839号公報 特開2007−91517号公報
平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であり、白金族元素の各元素の合計量が10ppm以下である六方晶フェライト粒子粉末は未だ得られていない。
即ち、前出特許文献1には、ガラス結晶化法によって得られた六方晶フェライト粒子粉末が記載されているが、ガラス結晶化法はガラス溶融時に白金等のるつぼを用いるため、得られる六方晶フェライト粒子粉末中に白金等の触媒活性のある金属元素を含むという問題があった。また、白金等の貴金属からなるるつぼを必要とするために、製造コストがかかり工業的に不利である。
また、前出特許文献2には、水熱合成法によって得られた板状複合フェライト微粒子粉末が記載されているが、従来の水熱合成法では平均粒子径が30nm以下で保磁力(Hc)が95.5kA/m以上の磁気特性を有する六方晶フェライト粒子粉末を得ることは困難であった。
また、前出特許文献3には、共沈−焼成法によって得られた六方晶系バリウムフェライト粒子粉末が記載されているが、実施例で得られている六方晶系バリウムフェライト粒子粉末は平均粒子径が一番小さいもので53nmと高密度記録用磁気記録媒体に用いるには粒子サイズが大きすぎると共に、保磁力(Hc)が95.5kA/m以上のものは得られていない。
また、前出特許文献4には、共沈物の形成を逆ミセル法により行った共沈−焼成法によって得られた六方晶マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末が記載されているが、粒子サイズ及び保磁力は優れたものが得られているが、本発明が好ましいとする粒子サイズに対するBET比表面積値の関係を満たしていないと共に、逆ミセル法は製造するに当たり多量の有機溶剤を使用するため、COD排出の観点から工業的に好ましくない。
そこで、本発明は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であり、白金族元素の各元素の合計量が10ppm以下である六方晶フェライト粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径が20.5nmを超えて26.4nm以下であって、該六方晶フェライト粒子粉末に含有される白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)の各元素の合計量が10ppm以下であり、六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末である(本発明1)。
SSA(m/g) ≧ −1.0×L(nm)+90 ・・・ (1)
また、本発明は、保磁力(Hc)が95.5kA/m以上であることを特徴とする本発明1の磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末である(本発明2)。
また、本発明は、非磁性支持体上の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末として本発明1又は2に記載の磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末を用いることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明)。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であり、白金族元素の各元素の合計量が10ppm以下であることにより、磁性粒子粉末の微細化に伴う熱揺らぎの影響を小さくすると共に磁気記録媒体の劣化を抑制することができるため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
先ず、本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末について述べる。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であり、白金族元素の各元素の合計量が10ppm以下であることを特徴とする。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、Ba、Sr及びCaから選ばれる1種又は2種以上の元素を含有するマグネトプランバイト型(M型)フェライト微粒子粉末又はW型フェライト微粒子粉末、あるいはそれらの原子の一部が他の元素で置換された六方晶フェライト粒子粉末である。置換元素としては、具体的にはCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Cu、Mo、La、Ce、V、Si、S、Sc、Sb、Y、Rh、Pd、Nd、Nb、B、P、Ge、Al、Ag、Au、Ru、Pr、Bi、W、Re、Te等の元素を1種又は2種以上を用いることができる。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径は20.5nmを超えて30nm以下であり、好ましくは20.5nmを超えて28nm、より好ましくは20.5nmを超えて〜26nmである。六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径が30nmを超える場合には、粒子サイズが大きいため、粒子性ノイズを低減することが難しく、高いC/N比を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。また、平均板面径が20.5nm以下である場合には、磁性粒子粉末の微細化に伴う熱揺らぎの影響が大きくなるため好ましくない。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の板状比(平均板面径と平均厚みの比)(以下、「板状比」という。)は1.5〜10.0が好ましく、より好ましくは1.75〜8.0、更により好ましくは2.0〜6.0である。板状比が10を超える場合には、粒子間のスタッキングが多くなり、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下すると共に、粘度が増加する場合があるため好ましくない。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)との関係は下記式(1)で表される。
SSA(m/g) ≧ −1.0×L(nm)+90 ・・・ (1)
平均板面径とBET比表面積値との関係が上記式(1)の範囲にある場合、これを用いて磁気記録媒体を作製する際、磁性塗料中における分散性が向上するため、表面性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
本発明に係る磁気記録媒体用磁性微粒子粉末のBET比表面積値の下限値は、前述の式(1)で表される値である。また、その上限値は150m/gであることが好ましく、より好ましくは140m/g、更により好ましくは130m/gである。BET比表面積値が150m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末が含有する白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)の各元素の合計は10ppm以下であり、好ましくは8ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。白金族元素の含有量が10ppmを超える場合には、これを用いて作製した磁性塗料や磁気記録媒体中に含まれる有機溶剤や樹脂が、白金等の触媒活性のある金属により劣化しやすいため好ましくない。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の磁気特性は、保磁力(Hc)が95.5〜397.9kA/mが好ましく、より好ましくは119.4〜318.3kA/mであり、飽和磁化値が40〜70Am/kgが好ましく、より好ましくは45〜70Am/kgである。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、必要により、六方晶フェライト粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物(以下、「アルミニウムの水酸化物等」という。)で被覆しておいてもよい。アルミニウムの水酸化物等で被覆処理を行うことにより、磁性塗料中に分散させた場合に、結合剤樹脂とのなじみがよく、所望の分散度がより得られ易い。
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
本発明に係る磁気記録媒体は、本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層が非磁性支持体上に形成されてなる。また、必要に応じて、非磁性支持体と磁気記録層との間に非磁性下地層を形成してもよく、更に、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピューター記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、非磁性下地層やバックコート層を設けることが好ましい。
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体と磁気記録層との間に非磁性下地層を形成する場合、非磁性下地層中には非磁性粒子粉末と結合剤が含まれている。
非磁性下地層に用いられる非磁性粒子粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等を、単独又は組合せて用いることができる。好ましくはヘマタイト、ゲータイト、酸化チタンであり、より好ましくはヘマタイトである。
前記非磁性粒子粉末の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。粒子サイズは、好ましくは0.005〜0.30μmであり、より好ましくは0.010〜0.25μmである。また、必要により、粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物で被覆してもよく、化合物で被覆しない場合に比べ、非磁性塗料中での分散性を改善することができる。
結合剤樹脂としては、前記磁気記録層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成する場合、バックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。
無機粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。粒子サイズは、好ましくは0.005〜1.0μmであり、より好ましくは0.010〜0.5μmである。
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。帯電防止の他に、摩擦係数低減、磁気記録媒体の強度向上といった効果が期待できることから、帯電防止剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
結合剤樹脂としては、前記磁気記録層、及び非磁性下地層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
本発明における磁気記録層、非磁性下地層及びバックコート層中には、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力値が95.5〜358.1kA/m、好ましくは51.7〜318.3kA/m、保磁力分布SFD(Switching Field Distribution)が、0.70以下、好ましくは0.67以下、より好ましくは0.65以下である。
次に、本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の製造法について述べる。
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末を得るための製造法としては、前述の特性を満たすものであれば特に限定されないが、ガラス結晶化法は、焼成の際に通常白金からなるるつぼを用いるため、得られる六方晶フェライト粒子粉末の白金族元素の含有量が10ppmを超えるので好ましくない。好ましくは、水熱合成法、共沈−焼成法等の湿式法である。
共沈−焼成法としては、具体的には、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む金属塩と鉄塩、並びに、2価、4価及び5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に20分以上かけて徐添加した後、60〜100℃の温度範囲で反応し、得られた共沈物を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で650〜800℃の温度で焼成した後、融剤を除去することによって得られる。
水熱合成法としては、具体的には、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む金属塩と鉄塩、並びに、2価、4価及び5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に20分以上かけて徐添加した後、100〜300℃の温度範囲で反応し、得られた六方晶フェライトの種晶粒子粉末を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で650〜800℃の温度で焼成した後、融剤を除去することによって得られる。
次に、本発明における磁気記録媒体の製造法について述べる。
前記非磁性下地層、磁気記録層、及びバックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体用磁性微粒子粉末の平均板面径及び平均厚さは、透過型電子顕微鏡を用いて粒子の写真を撮影し、該写真を用いて粒子360個以上について板面径、厚さをそれぞれ測定し、その平均値で粒子の平均板面径及び平均厚さを示した。なお、粒子の選定基準としては、粒子同士が重なっており、境界がはっきりしていないものは測定を行わないものとした。
板状比は、平均板面径と平均厚さとの比で示した。
比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
六方晶フェライト粒子粉末に含有される各種元素の含有量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
六方晶フェライト粒子粉末に含有される白金族元素の含有量は、試料0.2gと王水10mlとを100mlのフッ素樹脂製ビーカーへ入れて攪拌し、240℃で20分保持して溶解させ、この溶液を「誘導結合プラズマ発光分光分析装置 SPS4000」(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定した。
六方晶フェライト粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場1193.7kA/mの条件で測定した。
磁気テープの磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて、印加磁場が0〜397.9kA/mの範囲ではスイープ速度を79.6kA/m/分とし、397.9〜1,193.7kA/mの範囲ではスイープ速度を397.9kA/m/分として測定した。
磁化の熱的安定性を表す磁気異方性エネルギーと熱エネルギーとの比(KuV/kT)は、「磁気トルクメーター TRT−2−15−AUT」(東英工業株式会社製)を使用し、39.9〜797.7kA/mの範囲を39.9kA/m刻みで測定して得られたHkから求めたKuと、TEM観察より測定して得られた粒子体積Vを用いて求めた。Kuの値は、各印加磁場における回転ヒステリシスロスWrの値を測定し、得られたWrを印加磁場の逆数1/Hに対してプロットし、Wrカーブの高磁界側データを2次曲線近似してWrが0になる磁界Hkと、飽和磁束密度Bs(G)(六方晶フェライト粒子の比重:5)を用いて求めた。
磁気テープの塗膜表面の光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
表面粗度Raは、「ZYGO NewView600S」(ZYGO株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体及び磁気記録層の各層の厚みは、デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて測定した。
磁気テープの劣化を示す評価方法として、下記に示す耐剥離性テストを行った。白金族等を含有することによって高い表面活性を有する六方晶フェライト粒子粉末は、これを用いて作製した磁性塗料や磁気記録媒体中に含まれる有機溶剤や樹脂が粒子粉末の表面活性により劣化しやすいため、塗膜がもろくなり、ベースフィルム(非磁性支持体)から剥離しやすくなる。
スリットする前の磁気テープの一部を温度60℃、相対湿度90%の環境下に7日間放置した後、磁気テープの片面にカッターナイフを用いて2mm間隔で縦横各6本の切れ目を入れて、25個の碁盤目を作った。次いで、磁気テープの両面に24mm幅の粘着テープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ(登録商標))を貼り付け、碁盤目のある側の粘着テープを180度の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、以下の基準で評価した。
○:剥離した面積がなく、層間の密着性が良好
△:剥離面積が50%未満で、層間の密着性が不良
×:剥離面積が50%以上で、層間の密着性が極めて不良
<実施例1−1:磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の製造>
BaCl・2HO 0.798mol、FeCl・6HO 6.00mol、NiCl 0.18mol、TiCl 0.18molに純水を加えて溶解し、7Lの混合溶液を調製した。次いで、18.55mol/LのNaOH水溶液5Lを攪拌させながら前記混合溶液を200mL/min.の流量でNaOH水溶液中に添加した後、80℃で4時間反応を行った。次に、純水を用いて十分に水洗し、共沈物を含む10Lのスラリーとした後、フラックスとしてBaCl・2HOを前記スラリー1Lに対して100g添加し、ろ過・乾燥して共沈物を得た。
次いで、得られた共沈物を空気雰囲気下、750℃の温度で2時間焼成し、得られた焼成物に純水1Lを加えて分散スラリーとした。得られたスラリーを、塩酸を用いてpH値を2に調製して60分保持して酸処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を5に調整した後、水洗・ろ過・乾燥・粉砕して、実施例1−1の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
得られた六方晶フェライト粒子粉末は板状であり、平均板面径は23.6nm、平均厚みは6.9nm、板状比は3.4、BET比表面積値(実測値)は72.3、白金族の含有量は1ppmであり、保磁力値(Hc)は202.6kA/m、飽和磁化(σs)は48.6Am/kgであった。
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
非磁性下地層形成用の非磁性塗料組成
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 11.8重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 11.8重量部、
シクロヘキサノン 78.3重量部、
メチルエチルケトン 195.8重量部、
トルエン 117.5重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分が72wt%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
次いで、上記非磁性塗料組成となるように、上記混練物と、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエン1.5mmφガラスビーズ95gと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って非磁性塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。
磁気記録層形成用の磁性塗料組成
六方晶フェライト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 12.5重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 7.5重量部、
研磨剤(AKP−50) 5.0重量部、
カーボンブラック 2.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 170.0重量部、
メチルエチルケトン 170.0重量部。
六方晶フェライト粒子粉末と研磨剤、カーボンブラック、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分が76wt%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて40分間混練して混練物を得た。
次いで、上記磁性塗料組成となるように、上記混練物と、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエン1.5mmφガラスビーズ95gと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って非磁性塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
上記磁気記録層用塗料を、乾燥後の厚さが1.5μmになるよう前記非磁性下地層の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体は、保磁力値Hcが212.9kA/m、Br/Bmが0.82、保磁力分布SFDが0.59、光沢度が174%、表面粗度Raが10.2nmであり、劣化の程度を示す耐剥離性が○(剥離した面積がなく、層間の密着性が良好)、KuV/kTが95であった。
前記実施例1−1及び実施例2−1に従って六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
実施例1−2:
BaCl ・2H O 0.08mol、FeCl/6HO 0.60mol、NiCl 0.024mol、TiCl 0.024molに純水を加えて溶解し、0.7Lの混合溶液を調製した。次いで、18.55mol/LのNaOH水溶液0.5Lを攪拌させながら、前記混合溶液を20mL/min.の流量でNaOH水溶液中に添加し、オートクレーブを用いて150℃で4時間反応を行った後、室温まで冷却した。反応溶液を「超音波ホモジナイザー SonifierII model 450D」(BRANSON株式会社製)を用いて10分間攪拌後、純水を用いて十分に水洗し、六方晶フェライト粒子の種晶を含む1Lのスラリーとした後、フラックスとしてBaCl・2HOを前記スラリー1Lに対して100g添加し、ろ過・乾燥して六方晶フェライト粒子の種晶を得た。
次いで、得られた六方晶フェライト粒子の種晶を空気雰囲気下、750℃の温度で2時間焼成し、得られた焼成物に純水1Lを加えて分散スラリーとした。得られたスラリーを、塩酸を用いてpH値を2に調製して60分保持して酸処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を5に調整した後、水洗・ろ過・乾燥・粉砕して、実施例1−2の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
実施例1−3:
実施例1−1の六方晶フェライト粒子粉末200gと水1500mlとを用いて分散スラリーを調整し、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH値を9とした後、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/lとした。このスラリー150lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのアルミン酸ナトリウム溶液54.44ml(六方晶フェライト粒子粉末に対してAl換算で1.2重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を9に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過・水洗・乾燥・粉砕し、粒子表面がアルミニウムの水酸化物等により被覆されている実施例1−3の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
得られた粒子表面がアルミニウムの水酸化物等により被覆されている六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
比較例1−1:
BaCl・2HO 0.798mol、FeCl・6HO 6.00mol、NiCl 0.18mol、TiCl 0.18molに純水を加えて溶解し、7Lの混合溶液を調製した。次いで、18.55mol/LのNaOH水溶液5Lと前述の混合溶液とを攪拌しながら混合し、80℃で4時間反応を行った。次に、純水を用いて十分に水洗し、共沈物を含む10Lのスラリーとした後、フラックスとしてBaCl・2HOを前記スラリー1Lに対して100g添加し、ろ過・乾燥して共沈物を得た。
次いで、得られた共沈物を空気雰囲気下、750℃の温度で2時間焼成し、得られた焼成物に純水1Lを加えて分散スラリーとした。得られたスラリーを、塩酸を用いてpH値を2に調製して60分保持して酸処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を5に調整した後、水洗・ろ過・乾燥・粉砕して、比較例1−1の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
比較例1−2:
BaCO 24.7mmol、HBO 34.1mmol、Fe 19.8mmol、Co 0.44mmol、ZnO 1.12mmol、Nb 0.28mmol、ZrO 0.42mmolを十分に混合し、白金ルツボに混合原料を入れて、1350℃で加熱溶融した後、(均質化した)溶融物を急冷(圧延)し、非晶質体を作製した。得られた非晶質体を610℃で5時間保持して六方晶フェライト結晶を析出させた。析出物を粉砕した後、10%の酢酸溶液中で、溶液温度を80℃以上に制御しながら、4時間攪拌し酸処理を行い、BaO及びBを溶解した。次いで、これらのBaO及びB成分並びに酸成分を除去するため水洗を繰り返した後、スラリーを乾燥させ、比較例1−2の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
比較例1−3(特開2007−91517号公報 実施例5に準じた追試実験):
NaOH 80mmolを純水160mlに溶解した水溶液に、エーロゾルOT 108gとデカン800mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
BaCl・2HO 2mmol、FeCl・6HO 22.7mmol、CoCl・6HO 0.56mmol、ZnCl 0.50mmol、Nb(NO 0.24mmolを純水140mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT 54gとデカン500mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
逆ミセル溶液(I)を22℃で「超音波ホモジナイザー SonifierII model 450D」(BRANSON株式会社製)で高速攪拌しながら、22℃にした逆ミセル溶液(II)を3分間かけて添加し、マグネチックスターラーで8分攪拌した後、50℃に昇温して30分間熟成し、室温まで冷却して大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水500mlとメタノール500mlとの混合溶液を添加して水相と油相とに分離し、共沈粒子が分散した油相側を水600mlとメタノール200mlとの混合溶液で2回洗浄した後、メタノールを2000ml添加して共沈粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させ、上澄み液を除去した後、ヘプタン100mlを添加して再分散させた。
更に、メタノール1000ml添加による沈降とヘプタン100ml分散との沈降分散を2回繰り返し、メタノールを添加して共沈粒子を沈降させた。上澄みを除去し、次に水1000mlを添加し分散、沈降、上澄み除去を2回繰り返した。得られた共沈物を純水1L中に再分散し、0.1モルのCaCl・6HOを純水に溶解したものを添加し、次いで、NHOHで中和し、六方晶フェライト組成物粒子表面にCa(OH)の被覆を形成した。沈殿物をろ過・水洗し、次いで120℃で乾燥した後、乾燥物を粉砕した。
粉砕した乾燥物を空気中で600℃にて加熱し表面被覆物を酸化物とした後、更に700℃で2時間熱処理し、六方晶フェライト粒子粉末とした。生成物を5%酢酸水溶液に入れ表面被覆物を除去し、比較例1−3の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
Figure 0005446478
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−2及び2−3、比較例2−1〜2−3:
六方晶フェライト粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1の磁気記録媒体の作製方法に従って磁気テープを製造した。
得られた磁気テープの諸特性を表2に示す。
Figure 0005446478
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下、白金族元素の各元素の合計量が10ppm以下であることにより、磁性粒子粉末の微細化に伴う熱揺らぎの影響を小さくすると共に磁気記録媒体の劣化を抑制することができるため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。

Claims (3)

  1. 六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径が20.5nmを超えて26.4nm以下であって、該六方晶フェライト粒子粉末に含有される白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)の各元素の合計量が10ppm以下であり、六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末。
    SSA(m/g) ≧ −1.0×L(nm)+90 ・・・ (1)
  2. 保磁力(Hc)が95.5kA/m以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末。
  3. 非磁性支持体上の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末として請求項1又は2に記載の磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末を用いることを特徴とする磁気記録媒体。
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