JP5445887B2 - 磁気軸受装置 - Google Patents
磁気軸受装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5445887B2 JP5445887B2 JP2006222950A JP2006222950A JP5445887B2 JP 5445887 B2 JP5445887 B2 JP 5445887B2 JP 2006222950 A JP2006222950 A JP 2006222950A JP 2006222950 A JP2006222950 A JP 2006222950A JP 5445887 B2 JP5445887 B2 JP 5445887B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- control
- controller
- equation
- current
- electromagnet
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Classifications
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16C—SHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
- F16C32/00—Bearings not otherwise provided for
- F16C32/04—Bearings not otherwise provided for using magnetic or electric supporting means
- F16C32/0406—Magnetic bearings
- F16C32/044—Active magnetic bearings
- F16C32/0444—Details of devices to control the actuation of the electromagnets
- F16C32/0451—Details of controllers, i.e. the units determining the power to be supplied, e.g. comparing elements, feedback arrangements with P.I.D. control
- F16C32/0455—Details of controllers, i.e. the units determining the power to be supplied, e.g. comparing elements, feedback arrangements with P.I.D. control including digital signal processing [DSP] and analog/digital conversion [A/D, D/A]
-
- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16C—SHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
- F16C2361/00—Apparatus or articles in engineering in general
- F16C2361/55—Flywheel systems
Description
磁気軸受は不安定な系であることから、フィードバック制御による安定化が課題である。さらに、磁気軸受は、強い非線形性を有しているため、線形理論を適用して制御を行うためには、平衡点近傍においてテイラー展開による一次近似を行うという線形化の手法がとられてきた。しかし、この線形化法は、ロータを常時浮上させるためには常にバイアス電流を供給しなければならない。さらに、バイアス電流を供給する手法では、回転時にロータが磁束を常に横切ることとなり、相対的なロータの磁束変動を発生させる。このため、磁性材料内部でのヒステリシス損失、渦電流損失が大きくなる。このため、エネルギ貯蔵用フライホイールなどにおけるエネルギ収支の観点から消費電力、回転損失が大きいという欠点を持つ。
3.1 概念
H∞制御では、種々の制御問題を統一的な枠組みで扱えるよう、図4に示すフィードバック系が用いられる。図4において、Gはプラントと呼ばれ、次式で示す入出力信号を持つ伝達関数として定義される。
u=Ky (3.3)
を用いてフィードバック制御を行うと、wからzまでの伝達関数は次式となる。
ただし、
Gzw:=G11+G12K(A−G22K)−1G21 (3.4)
である。制御目的は外部入力wに対して、制御量zをなるべく小さく抑えることである。したがって、伝達関数Gzwの大きさを何らかの意味で小さくする補償器Kを設計すればよい。H∞制御においては、このGzwの大きさの尺度としてH∞ノルムというものを用いる。Gzwが安定であるとき、そのH∞ノルムを‖Gzw‖∞と書き、次のように定義する。
‖Gzw(s)‖∞<γ (3.7)
を満たす補償器Kを求めることである。このようにH∞制御問題は非常にシンプルなものとして定式化されており、Gの構成を変えることで、つまり外部入力w、制御量zを制御目的に合わせて選ぶことにより、ロバスト制御、外乱抑圧制御、感度最適化、目標値追従、そして閉ループ整形問題など様々な問題に適用することができる。また、式(3.2)の定義、さらに以下の仮定の下ではH∞制御問題は、標準H∞制御問題と呼ばれる。
仮定2 D12は縦長列フルランク、かつD21は横長行フルランク
仮定3 G12は虚軸上に不変零点を持たない、すなわち、すべてのwに対して、
仮定4 G21は虚軸上に不変零点を持たない、すなわち、すべてのwに対して、
3.2 外乱抑圧制御とH∞制御
フィードバック制御は制御対象を安定化させることだけが目的ではなく、抑制問題、たとえば外乱抑制特性、目標値追従特性を達成することも目的である。前節のH∞制御問題においてwを実外乱、zを外乱の影響を抑えたい物理量にとれば外乱抑制制御そのものになる。今、図5(a)のように、制御対象の入力端に加わる外乱wを出力端zで抑圧する問題を考える。z、uはそれぞれ
z=y=P(u+w) , u=Ky (3.8)
と表せる。これより、wからzまでの伝達関数は
z=(A−PK)−1Pw (3.9)
と求まる。つまり、図5(a)における外乱抑圧問題は、なるべく小さな正数γに対して、
‖(A−PK)−1P‖∞<γ (3.10)
を満たす補償器Kを求める問題となる。ただし、式(3.10)の評価では、H∞ノルムの定義よりwからzまでの伝達関数のゲイン(多入出力系ならば最大特異値)をすべての周波数帯域にわたってγ以下に押さえることを意味し、一般には厳しい要求となる。しかし、実際には、すべての周波数帯域で周波数スペクトルが大きいという外乱は見られない。そこで、外乱wの周波数スペクトルが大きな周波数帯域でのみ(A−PK)−1Pを小さくできれば十分となる。そこで、小さくしたい周波数帯域でのみ十分大きなゲインを持つ伝達関数WMを導入し、式(3.10)の代わりに、
‖WM(A−PK)−1P‖∞<γ (3.11)
とする。今、
Mr:=(A−PK)−1P (3.12)
と定義し、Mrが1入出力の場合を考えると、H∞ノルムの定義より、式(3.11)は
|WM(jw)||Mr(jw)|<γ,∀w (3.13)
に等価であるので、|WM(jw)|が大きな周波数帯域では、|Mr(jw)|をとくに小さくすることができることがわかる。
次に、wを目標値、zを出力信号ととれば、目標値追従制御そのものになる。今、図6において、wからzまでの伝達関数は
z=(A−PK)−1w (3.14)
と求まる。つまり、図6(a)における目標値追従問題は、なるべく小さな正数γに対して、
‖(A−PK)−1‖∞<γ (3.15)
を満たす補償器Kを求める問題となる。ただし、前節同様、式(3.15)の評価では、wからzまでの伝達関数のゲイン(多入出力系ならば最大特異値)をすべての周波数帯域にわたってγ以下に押さえるは、一般には厳しい要求となる。そこで、小さくしたい周波数帯域でのみ十分大きなゲインを持つ伝達関数WMを導入し、式(3.15)の代わりに、
‖WM(A−PK)−1‖∞<γ (3.16)
とする。今、
Mt:=(A−PK)−1 (3.17)
と定義し、Mtが1入出力の場合を考えると、式(3.16)は
|WM(jw)||Mt(jw)|<γ,∀w (3.18)
に等価であるので、|WM(jw)|が大きな周波数帯域では、|Mt(jw)|をとくに小さくすることができることがわかる。また、一般に式(3.17)は感度関数と呼ばれる。
H∞制御ではロバスト安定化問題を陽に取り扱うことができるが、これはロバスト安定性を保証する際に用いるスモールゲイン定理がH∞ノルム条件で記述されているからである。
図7において、A(s)およびB(s)は安定でプロパな伝達関数とする。このとき、
‖A(s)B(s)‖∞<1 (3.19)
を満たすと、図7の閉ループは安定となる。
図8(a)において、フィードバック系のロバスト安定化問題を考える。実制御対象Pは公称モデルPとそれに対する乗法的誤差Δを用いて
P=(I+Δ)P (3.20)
と表される。ここで、Δは簡単のため安定と仮定する。また、図8(a)において、点aから点bまでの伝達関数を求めると
Tm:=(I−PK)−1PK (3.21)
となる。ここで、式(3.21)を相補感度関数と呼ぶ。このとき、図8(a)と図8(b)は等価であるので、スモールゲイン定理を適用すると、安定となるための条件
‖ΔTm‖∞<1 (3.22)
を得る。しかし、モデル化誤差を正確に見積もることは不可能である。したがって、
σ{Δ(jw)}<|wm(jw)| , ∀w (3.23)
を満たす既知のスカラ伝達関数wmを用いることで
‖wmTm‖∞<1 (3.24)
が成り立つことが、ロバスト安定のための条件となる。したがって、図8(c)の一般化プラントを構成し、wからzまでのH∞ノルムを1未満とする補償器Kを求めればよい。
本来、フィードバック制御を行う目的は、ある種の制御性能を達成しながらも、ロバスト安定化を図ることである。つまり、制御性能のみを考慮しても、必ず存在するモデル化誤差を保証しない。また、ロバスト安定化のみを図っても、それは十分条件でしかない。やはり、制御性能、ロバスト安定化の両方を考慮した設計をしなければならない。今、図9のブロック線図を考える。ここで、w1、w2は外部入力、z1、z2は制御量である。w2からz1までの伝達関数Gz1w2は
Gz1w2=Ws(s)Mt(s) (3.25)
ここで、
Mt(s)=(I+PK)−1 (3.26)
と表され、目標値追従性を達成するものであり、式(3.26)は重み付き感度関数でもある。これを小さくすることが感度低減問題となる。一般に、低周波域に重みを付けて感度を下げることが多い。したがって、感度低減問題は次式の評価関数となり、できるだけ小さいγを探索する問題となる。
また、外乱抑圧特性を達成するためには、w1からz1までの伝達関数Gz1w1
Gz1w1=Ws(s)Mr(s) (3.28)
ここで、
Mr(s)=(I+PK)−1P (3.29)
においても、できるだけ小さいγを探索する問題となる。
一方、ロバスト安定性を確保するためには、w1からz2までの伝達関数Gz2w1は
Gz2w1=Wt(s)Tm(s) (3.31)
ここで、
Tm(s)=(I+PK)−1K (3.32)
であるので、
‖Gz2w1‖∞<1 (3.33)
を満たすように設計しなければならない。さらに、w2からz2までの伝達関数Gz2w2
Gz2w2=Wt(s)Ta(s) (3.34)
ここで、
Ta(s)=(I+PK)−1K (3.35)
においても
‖Gz2w2‖∞<1 (3.36)
を満たすように設計しなければならない。なお、式(3.35)を一般的に準相補感度関数と呼ぶ。式(3.27)、式(3.30)、式(3.33)、式(3.36)を同時に満たすのは相反する要求であり、トレードオフを考えなければならない。現実には、Sの重みWs(jw)は低周波域で大きくとればよく、制御対象の不確定性を反映するWt(jw)は高周波域で大きくとればよい。よって、低周波域でMt(s)、Mr(s)を、高周波域でTm(s)、Ta(s)を小さくするという設計指針が導かれる。このような問題を混合感度問題という。式(3.27)、式(3.30)、式(3.33)、式(3.36)の組み合わせでは
LMIベースのGSH∞制御の定式化は文献に詳しく述べられている。本研究ではこの定式化に基づき制御系を設計することである。制御対象プラントと制御器の状態空間表現を次式で表す。
‖z‖2<γ‖w‖2 (3.45)
と与えられる。これから最終的に、次式を満たす正定なリアプノフ関数V(x)=xTPxが存在する。
p(t)が制御中に大きな変動を受けるとき、固定されたロバストLTI制御器で高性能な制御性能を得ることはできない。
4.1 ジャイロモーメント
ジャイロモーメントとは、高速回転円板が傾き運動するときに発生する作用であり、円板の傾きと直角方向に発生するモーメントのことである。ジャイロモーメントは以下の式により求められる。
本研究が対象とする磁気軸受は、図12のような5軸制御型フライホイールであり、そのパラメータを表4.1に示す。アキシアル方向はPID制御がなされているので、ラジアル方向についてのみモデル化を考える。
G:ロータの重心位置
θx,θy:各軸周りの回転角度
Lu,Ll:上部、下部の電磁石までの距離
L1,L2:上部、下部のセンサまでの距離
i1〜i8:各電磁石における制御電流
xg,xu,xl:X−Z平面におけるロータ重心、上部電磁石、下部電磁石位置での変位
を示す。ジャイロ効果
5.1 H∞制御器設計
設計において、一般化プラントは図14の修正混合感度問題を使用した。外乱抑圧特性を得るために仮想外乱をPの直前に導入し、目標値追従特性を得るために仮想外乱をPの直後に導入している。なお、εは仮想外乱を観測ノイズとみなすためのものでもあり、標準H∞制御問題の可解条件を満たすためのものである。重み関数は上側、下側の質量の割合が異なるため、別々に設計した。設計に用いた重み関数の周波数応答を図14(a)に示す。また、ランク条件を満たすために導入したε値を0.04とした。γ値は0.89である。
図15(c)において、電磁石1が吸引すればよい。そのときの力と電流i1の関係式をi3=0として
図15(d)において、電磁石3が吸引すればよい。そのときの力を電流i3の関係式をi1=0として
1)Fxl>0のとき
1)Fyu>0のとき
1)Fyl>0のとき
ゼロパワー切換制御の基本的な方法は、フライホイールシステムのロータ部を剛体とみなし、ロータが1つの電磁石に接近するとき、接近した電磁石の制御電流を零にして、反対側にのみ制御電流を供給して、ロータが完全に平衡点になれば、一切の電流(パワー)を流さないということである。さらに、制御器を設計するとき、制御入力は対向した電磁石間の吸引力として仮定する。求めた吸引力から切換法によって、実際の制御電流を求める。
k:吸引力定数
i:入力電流
xg:ノミナルエアギャップ
x:ロータ変位
である。式(5.2)をみると、磁気吸引力は入力電流の二乗に比例し、電磁石とロータの距離の二乗に反比例するという形になっており、非常に強い非線形性を有している。従来の方法は、対向している両方の電磁石にバイアス電流を流すことによって、吸引力と電流の関係は小さな変位の領域で線形化できる。まず、入力電流と吸引力の関係は図16(a)(b)の点線のようになっている。ただ、F1、F2は対向している電磁石の吸引力特性である。両方の電磁石にバイアス電流を流しておくと、図16(c)の実線のように電磁石の吸引力の差が線形な形になる。
実験の前段階として、制御器の閉ループ安定性を検証するため、MATLAB Simulinkによるシミュレーションを行った。シミュレーションは図17のようにSimulinkにより構成した。より実験機システムに近づけるために、一度切換条件を基に力制御入力から制御電流への変換を行い、力制御入力に変換しなおしている。物理パラメータにより求めたモデルは制御入力を吸引力とみなしているため、制御電流から力制御入力に再度変換しなおす形となる。なお、制御電流は実際の実験と同様、1.5Aのリミッタを設けている。また、サンプリング周期は実際の実験と同様10kHzとし、補償器は双一次変換により離散化したものを用いた。X軸の上側に10μmのステップ目標値を0.01sから加えている。このときの初期値応答を図18に、各電磁石の制御電流を図19に示す。
シミュレーションで用いた制御器を実際の磁気軸受フライホイールに適用し、93Hz(5580rpm)までの回転実験を行った。実験システムは図20のように構成し、位置情報をセンサで取得し、A/Dボードを通してDSPに取り込み、力制御入力を計算した後、切換条件を基に各電磁石の制御電流に変換し、D/Aボードを通して電磁石に出力される仕組みとなっている。サンプリング時間は0.1msとする。また、MATLABからDSPへはリアルタイムで情報を取得できるようになっており、図21のようにfigureにて各センサ情報を画面に表示することが可能である。インバータにはMyWay技研製のスピードコントローラを用いており、512rpm/sの一定加速度を加えている。
6.1 線形パラメータ依存モデル
実験では回転周波数80Hz近傍でジャイロ効果が著しく発生することから、回転周波数によりシステムが変動する線形パラメータ依存モデル(LPV)であると考えられる。MATLAB LMI control toolboxを用いてGS制御器を設計するにあたり、線形パラメータによって変動するシステム行列Aを以下のように時変システムと線形時不変システム(LTI)に分解して考える。
6.2 ゲインスケジュール設計器設計
求めたLPVモデルに対してLMI制御理論により制御系設計を行う。スケジューリングパラメータに対応する最適な制御器は、回転周波数0Hzと100Hzに対応するLTI端点制御器(Kmax,Kmin)を式(6.5)により凸補間することで求められる。
6.3.1 H∞制御器との比較
GS制御器の閉ループ安定性を検証するため、ジャイロ効果を考慮したモデルでシミュレーションを行った。初期値応答にてH∞制御器とGS制御器の性能比較を行った。より実験機システムに近づけるために、一度切換条件を基に力制御入力から制御電流へと変換し、再び力制御入力に変換しなおしている。
実験システムへの実装を考えたとき、高周波領域を制御するために非常に短いサンプリング時間としていることと、4入力4出力システムであることに加え、剛性2次モードを制御する必要があるためモデルの低次元化を行うことができず、次数の大きい制御器を用いている関係から、サンプリングごとの離散化は計算処理が遅れるという問題がある。そこで、0Hzから100Hzまで10Hz間隔で11個の制御器を予め凸補間により求めておき、オフラインでそれぞれを離散化した制御器をテーブルとして用いて、スケジューリングパラメータによって切り換えるという方法を提案する(図139参照)。実装する制御器の数はDSPメモリ容量の関係より選択した。
テーブルを用いたGS制御器を用いて回転実験を行った。サンプリング周波数などの条件は、H∞制御器と同様とする。回転周波数0〜90Hz(5400rpm)での上側、下側におけるロータの軌跡および制御入力を図54〜図71に示す。
実験結果を考察するため、実験に用いたGS制御器について、パラメータ変動に対する閉ループ系固有値解析を行った。回転周波数を0Hzから100Hzまで5Hzずつ増加させたときのH∞制御器に対する複素平面を図53(a)に、ジャイロ効果を考慮したGS制御器に対する複素平面を図53(b)に示す。
7.1 閉ループ系安定性の考察
剛性モデルでは、ジャイロ効果を無視した制御器を用いても、考慮した制御器を用いても、閉ループはともに安定であった。しかし、回転実験では、100Hz付近で不安定化している。この不一致の問題に対して、弾性曲げモードも考慮して考察する。弾性モデルの導出は有限要素法によって行う。フライホイールを集中質量として、ロータを図72のように8要素に分割する。要素2と3、要素7と8の間に電磁石が配置されている。ここで、減衰と不釣合い振動は考慮しないものとする。図72のモデリングについて、ジャイロ効果を考慮したロータの運動方程式は次式となる。
100Hzを越えた高速回転の実現には、FEMモデルの剛性モードと曲げ一次モードのジャイロ効果による影響が重要となる。ここで、式(7.1)には反対称のジャイロ行列Gが存在するので、標準形のモード解析法を簡単に使うことができない。モード分離を行うため、新しいベクトル
前節で作成した剛性モードと曲げ一次弾性バックモードを含む低次元化モデルが、実験と一致するモデルであるかを検証する。制御器は剛性モードのみを考慮して設計したGS制御器を用いた。サンプリング周波数は10kHzとし、X軸上側に10μmのステップ目標値を与えたときの初期値応答シミュレーションと実験の比較を図75に示す。
係数αを加えたときと、加えないときの安定性の比較を、図78に示す閉ループの固有値解析にて行った。図78によりαを加えないときは固有値が実軸からかなり離れた地点に存在するため、安定であった。しかし、実験システムは安定ではあるものの、極は実軸付近に存在する。この現象は、シミュレーションと実験の不一致の原因の1つであったと考えられる。αを加えることで、極は右側に移動し、実験システムに近い極配置となった。また、前節のシミュレーション結果では、剛性2次モードは制御されていて、時系列応答には励起されていなかった。これについても、係数αをっ加えたときの極解析では剛性2次モードの極が安定化され、実験結果と一致する。周波数を実験でタッチダウンする100Hzとし、X軸上側に10μmのステップ目標値を与えたときの初期値応答を図79に示す。これまでのシミュレーションで100Hzにおいても安定していたGS制御器を用いたにもかかわらず、発散する結果となった。以上のことから、係数αを加えることで、低次元化弾性モデルは、実システムに近い応答を示すことが確認できる。
本論文では、磁気軸受系型電力貯蔵フライホイールの制御に関する研究を行った。慣性力を増加させることを目的にフライホイールがロータに取り付けられているために、ジャイロ効果による前向き振れ回り運動や後向き振れ回り運動の発生、およびそれらの固有振動の変化が高速回転を妨げている。
1.3 本研究の目的
本研究の目的は、バイアス電流を流さないで、非線形を有したまま、非線形制御理論に基づいて、ゼロパワー切換制御法によって安定化を図り、かつ、消費電力を低減して、ロータが高速回転できる制御器を設計し、有効性を検証する。
磁気軸受系では、運動方程式を求めるとき、ロータ系を考慮して、重心に関する状態方程式を得ることが一般である。しかし、実験装置においては、センサの観測点は重心の位置と異なっており、ロータの上、下部電磁石に近いところにおかれている。それで、制御器を設計するとき、センサからのフィードバック状態量は重心に関するものに変換しなければならないので、演算時間もかかり、精度も下がる。このような欠点に対して、重心位置でのロータ変位と電磁石に対応する点でのロータ変位、回転角と変位間の関係により、すべての電磁石に対してロータ重心に加えている電磁力と回転モーメントをロータ上、下部の電磁石により分離して考えると、最後に求めた状態方程式が簡単化される。すべての状態量はセンサからの変位信号のみに関連するものである。
ゼロパワー切換制御の基本的な方法はフライホイールシステムのロータ部を剛体とみなし、ロータが1つの電磁石に接近するとき、接近した電磁石の制御電流を零にして、反対側にのみ制御電流を供給して、ロータが完全に平衡点になれば、一切の電流(パワー)を流さないといういうことである。さらに、制御器を設計するとき、制御入力は対向した電磁石間の吸引力として仮定する。求めた吸引力から切換法によって、実際の制御電流を求める。
本論文は0.5KWh級磁気軸受フライホイールシステムに対して、評価関数の最適化を目指した制御理論に基づいて、LQR法により制御器を設計して、実験で検証する。LQR法のレギュレータ制御器を設計した上で、定常偏差をなくすため、サーボ系を付加したLQI制御器を設計する。実験の結果から、サーボ系を付加した場合は、回転速度は100Hz付近に達した。しかし、ジャイロ効果を考慮すると、システムが回転速度という変動パラメータに依存するLPVシステムになったため、普通のLTIコントローラでは厳密には補償できない。したがって、ゲインスケジュール型スライディング制御を提案する。実験の結果、ジャイロ効果の影響を補償したが、LQIコントローラと同じ所でタッチダウンしてしまった。つまり、ある周波数に到達すれば、弾性モードを考慮しないと、システムが不安定になることがわかった。そのため、浮上状態の加振実験により、回転周波数と固有振動数の関係を求める。この結果より、回転周波数が100Hz付近から、大きなピークが発生している。すなわち、100Hzは弾性モードのバックワード共振点と認められる。本論文では、弾性モデルの次数が高いため、非モデルベースのPID制御で130Hzまで増速できた。しかし、PID制御の弾性モデルのシミュレーションと実験結果が一致しない問題が発生しており、これについては今後考察する。
本磁気軸受系では、バイアス電流を完全に回避できるため、電磁力と変位間の非線形関係を有したまま、非線形理論に基づいて、制御器を設計する。
3.1.1 最適レギュレータ
評価関数を設け、それを最小とするように状態フィードバックによる最適制御入力を決定する設計法について述べる。可制御で線形な時不変システム
y=Cx+Du (3.6)
と、制御入力の直達項を含めて表されるから、
3.2.1 内部安定性の定義
非線形時変システムのふるまいは、線形時不変システムのように指数関数で表されるわけではなく、一般に複雑である。したがって、安定性の精密な定義を行えば、多様な概念を考えることができる。連続系の場合と同様、離散値系にもリアプノフの安定の概念が適用される。今、次のようなシステムを考える。ここでは、そのうちのいくつかを説明する。
ここで、xはn次元状態ベクトル、fは時間tとxに関して連続な関数である。式(3.11)は任意の初期時刻t0と初期状態x0に対して、すべての時刻にわたって一意解を有する。また、t≧0における値をx(t,x0,t0)と表す。ただし、x(t0,x0,t0)=x0である。このシステムにおいて
x(t,x0,te)≡xe (3.12)
が成り立つ状態xeを平衡状態と呼ぶ。平衡状態とは、式(3.11)の定数解であるから、すべてのtで
f(t,xe)=0 (3.13)
を満たすものである。この式は非線形時変方程式であるから、定数解をいつも持つとは限らない。また、持つとしても唯一とは限らない。システムの平衡状態xeの周りの振る舞いを考えるとき、xeが状態空間の原点x=0であるとしても一般性は失われない。もしxe≠0ならば、状態空間の座標系を移動して、新たなf関数に対する微分方程式は原点x=0を平衡状態として持ち、その解の振る舞いは式(3.11)と同じである。
安定性とは初期状態x0を平衡状態x=0に近く取ることによって、解x(t,t0,x0)をx=0の近くに止めることができるという概念である。
安定性の定義では、解x(t)が平衡状態の近傍に止まるためには、どれくらい初期状態が平衡状態に近くなければならないかの距離が初期状態に依存して、初期時刻にかかわらず、だいたい同じであることを一様と定義する。
一様安定性に加えて、解が平衡状態に時間とともに収束するとき、一様漸近安定性という。
‖x(t,t0,x0)‖≦μ (3.14)
が成立するとき、一様漸近安定であるという。図80(c)を参照する。
解が平衡状態に収束するとき、その収束解の出発する初期状態の集合を吸収領域と呼ぶ。この吸収領域が状態空間の全体であることを大域的という語で表す。図80(b)を参照する。
‖x(t,t0,x0)‖≦ξ (3.15)
が成立するとき、大域的一様漸近安定であるという。
微分方程式の平衡状態が、前項で述べた安定性のどの性質を持つかを調べる方法としてリアプノフの安定判別法と呼ばれる方法がある。解の平衡状態からの距離を時間的変化が状態のスカラ関数を用いて評価されるもので、解を求めることなく、解析的に安定性を調べることができる。このスカラ関数は、平衡状態からの距離の概念を拡張したもの、または、状態が物理的変数ならば、その変数に対応する要素が持つポテンシャルエネルギの概念を拡張したものと見なすことができる。
α(‖x‖)≦V(t,x) (3.16)
が成立するようなα(σ)が存在するとき、V(t,x)は正定であるという。
V(t,x)≦β(‖x‖) (3.18)
が成立するとき、V(t,x)はデレクセントであるという。これは、‖x‖が減少することについて、V(t,x)も一様に減少するという意味である。
V(t,x)≦0 (3.20)
であるとき、V(t,x)は準負定であるという。
V(t,x)≦−γ(‖x‖) (3.21)
が成立するとき、V(t,x)は負定であるという。
次に、前項のリアプノフ関数をより拡張した、コントロールリアプノフ関数について述べる。
ここで、制御入力uにフィードバック制御則αを代入して得られる閉ループ系
x=f(x,α(x)) (3.23)
が平衡点x=0において大域的漸近安定となるようなα(x)を設計することを考える。V(x)をリアプノフ関数の候補とすると、式(3.23)が安定であるためには、V(x)≦−W(x)を満たす必要がある。ここで、W(x)は正定関数である。すべてのx∈Rnに対して
x=f(x)+g(x)u,f(0)=0 (3.26)
の場合、コントロールリアプノフ関数の不等式は以下のようになる。
制御系の構造を変える理論は可変構造制御理論と呼ばれ、その中で最も理論的に体系化されているのがスライディングモード制御理論である。その特徴として優れたロバスト制御系が構築できるといったことが挙げられ、今日システムの安定化やサーボ系をはじめとして、様々な制御目的に適応できるまでに理論が進んでいる。
スライディングモード制御では、システムの位相空間上での挙動は到達モードとスライディングモード2つに分けられ、状態が超平面の方向に向かい、そして超平面に辿り着く条件到達条件と呼ばれる。この到達条件を満足していれば、到達モードは有限時間の間に超平面に到達し、マッチング条件を満たす外乱に対しロバストになる。これらのことから、スライディングモード制御を実現するためには以下の手順が必要となる。
このとき、包括的なスライディングモード到達条件は次式で与えられる。
この到達則を満足させるように可変構造制御入力を決定することが重要である。
スライディングモードが存在しているとき、システムは非線形性の最も強いスイッチング入力のため、解析などが著しく困難となる。このスイッチング入力を連続入力で置き換えることにより、解析および設計の見通しがよくなる。システムは
x=Ax+Bu
σ=Sx (3.34)
と定義し、A∈Rnで、B∈RmとS∈Rmをプルランクとする。式(3.35)において、スライディングモードが存在すると
σ=0 (3.35)
式(3.36)の関係を得られる。
よりdet(SB)≠0ならば等価制御入力が以下のように求まる。
この等価制御入力ueqはシステムの理想的な連続制御入力であり、ueqを元のシステムの式(3.34)に代入することによって、入力の数だけ低次元化された以下のようなシステムが得られる。このシステムを等価制御系という。
この閉ループの固有値は伝達関数S(sI−A)−1Bの(n−m)個の零点とm個の原点極からなっている。スライディングモード制御の考え方法を示すために、次式のように表すことができる線形時不変系の制御対象を考える。簡単のため、制御対象は1入力(m=1)、システムの次数はn次とし、正準形に変換されているものとする。
x2(t)=−s1x1(t) (3.41)
となり、x2がx1のサブシステムへの入力となる。すなわち、式(3.39)は
x1(t)=(A11−A12s1)x1(t)σ
=s1x1(t)+s2x2(t)=0 (3.42)
となり、低次元化された遅いx1のシステムと早いシステムであるσ=0とに分離された、マッチング条件を満たすパラメータ変動や外乱の影響を受けないシステムとなる。上式に示されたように、スライディングモードの動特性は行列Sにより決められる。
ここでは、超平面上にシステムの状態を到達させ、拘束するための条件、すなわちスライディングモード到達条件を満たす制御入力を求める。先にも示したようにリアプノフ関数を次式のように置く。
このとき、スライディングモード到達条件は、次式を満足すればよい。
切換関数は次式で表すことができる。
4.1 ジャイロ効果を考慮しない場合のモデリング
使用する実験装置は図81の左図で説明したような5軸制御型であるが、z方向の浮上はPID制御によって制御されており、残ったラジアル方向の4自由度だけを本研究の制御対象と考えている。右図はロータのX、Y軸方向の運動形式が全く同じ対称なので、X−Z平面だけを示す。式(4.1)はロータの重心に対する運動方程式である。
5.1 LQI制御器設計
5.1.1 レギュレータ制御器設計
まず、第3章に述べたバックステッピング制御理論により、状態変位はx1、速度はx2とおき、システムは式(5.1)のような2次系となる。
x2=B2U (5.1)
ここで、x1=(xu xl yu yl)T、x2=(xu xl yu yl)T
U=(Fxu Fxl Fyu Fyl)T
評価関数は式(5.2)となる。
実験するとき、制御入力は対向した両電磁石間の吸引力ではなくて、端的な電磁石に流している電流であり、それで、求められた吸引力の正負により2対の電磁石の切換方法に基づいて電流を逆算する。ここで、ロータのX軸方向の電磁石の切換法を詳細に述べる。
Fxu≧0のときは、図81において、電磁石1が吸引すればよい。そのときの力と電流i1の関係式(i3=0として)
Fxu<0のときは、図81において、電磁石3が吸引すればよい。そのときの力と電流i3の関係式(i1=0として)
Fxl≧0のときは、図81において、電磁石5が吸引すればよい。そのときの力と電流i5の関係式(i7=0として)
Fxl<0のときは、図81において、電磁石7が吸引すればよい。そのときの力と電流i7の関係式(i5=0として)
図83(a)はタッチダウンから平衡点までの初期値と0.05秒時に、50Nの外乱を印加したインパルス応答。この結果より、システムが整定時間が早い、ロータが中心に行って、良い安定性がわかった。図83(b)は制御器設計するとき、仮想的な力制御入力を示す。この図より、ロータが平衡点のとき、対向した電磁石間の電磁石は零になり、その後、一瞬にインパルス外乱を入れると、外乱と等値な電磁力を同時に発生して、影響を打ち消した、良いロバスト性を有することがわかった。図84は、切換条件に基づいて、力制御入力から実際の制御電流に引き換えることを示す。ここで、i1とi3、i5とi7はロータの上部に対向している電磁石中の電流。i2とi4、i6とi8は下部の電磁石電流。0.05秒にインパルス外乱の影響で電流が急に発生した、再び零になることから、最終にシステムの消費電力が零になることを示す。図85〜図88は、回転速度を50Hz、100Hzに設定したときに対応しているそれぞれの制御器のシミュレーション結果。
実験では、用いた制御器はシミュレーションと完全に同じものである。制御器をコンパイルして、サンプリング時間は0.125msとする。DSPを用いて、4つの変位センサから、磁気軸受の位置情報をAD変換器を通して入手し、切換条件によって8つの制御電流に変換して、アンプに入り増幅された後アクチュエータを駆動して、実験を行う。実験での各装置の関係と行う方法を図89で説明している。
図90〜図97の結果から、ロータを定常偏差なく、中心の平衡点に収束させることができ、電流もきちんと切り換えしていることがわかる。しかし、回転時には、上下部のロータ軌跡は中心に行ったり戻ったりして、97Hzでタッチダウンした。図97の軌跡から見ると、花びらのような軌跡が発生しており、それはジャイロ効果により後向き歳差運動が発生していると考えられる。つまり、回転速度が上がることによってジャイロ効果が強くなって安定性が崩れてしまったことがタッチダウンする原因と思われる。その問題を解決するため、ジャイロ効果を考慮したモデルを作った。
磁気軸受を用いるロータは、比較的高速回転のものが多いので、ジャイロ効果が問題となる。ジャイロ効果というのは、高速フライホイールが傾き運動をするときに発生する作用である。この効果により、次の特徴的な性質が発生する。
ジャイロモーメントを考慮したロータの重心に対する運動方程式は式(5.9)である。
6.1 ゲインスケジュール型スライディングモード制御系の設計
前章で求めたモデリングはLPVシステムである。このLPVシステムに対してゲインスケジュール型スライディングモード制御を提案する。
次の正準系システムのプラントモデルを考える。
この制御系において、超平面を次式のように定義する。
ここで、S(x1)はx1の線形オペレータである。定義された切換関数は従来の切換関数と比べると新しい状態変数zによるダイナミクスを有する。
S(x1,z)=−H(w)−L(w)e (6.5)
そして、式(6.1)と式(6.5)を組み合わせると、拡大システムは次のように得られる。
x2=Hz−LCx1+Lr (6.8)
を得られる。よって、超平面上ではシステムの状態方程式は次式のように低次元化される。
プラントの状態空間モデルとフィルタを組み合わせると、次の拡大系を得る。
閉ループ系を安定するために次式を満足しなければならない。
超平面上に状態が拘束されているとすると
φ=φ=0 (6.14)
上の式より、制御入力ueqは次のように与えられる。
式(6.15)の中のH(ω)、F(ω)、G(ω)、L(ω)つまり制御器をMATLABのLMIコントロールツールボックスを使用して設計した。LPVシステムのボード線図を図102に示す。ここで、一番目の入力対4つの出力のボード線図しか載せていないが、その他はほぼ同じため、省略する。破線は変動パラメータが最小値のプラントのボード線図、実線は変動パラメータが最大値のボード線図。
6.2.1 台形近似法によるリアルタイム離散系
制御器の離散化を行うため、連続時間での制御器のダイナミクスを離散時間でのダイナミクスで近似する必要がある。前節に設計した制御器について、サンプリング時間をTとし、時刻kTにおける状態をx(kT)=xkと表すことにする。また、時刻[kT,(k+1)T]において、スケジューリングパラメータα(t)および観測量y(t)は、時刻kTでの値で近似できると仮定する。すなわち、kT≦t<(k+1)Tにおいて
さらに計算を簡単にするため、式(6.30)は
確かに三角波のような形で、正負にスイッチングをしている。右側図は力制御入力から逆算した制御電流結果より、どんな回転周波数にしても、LQI制御器に比べると、電流もはっきりオン・オフしているし、円軌跡もきれいになっていることがわかる。さらに、図121に示す今回の根軌跡と図99と比べてみると、固定コントローラよりゲインスケジュール制御の方が根の動きが小さいことが見える。
7.1 弾性モデリングの導入
剛性モデルでは、ジャイロ効果を無視した補償器を用いても、考慮した補償器を用いても、閉ループ系はともに安定であった。しかし、回転実験では、100Hz付近で不安定化している。この不一致の問題に対して、弾性曲げモードも考慮して考察する。弾性モデルの導出は有限要素法によって行う。フライホイールを集中質量として、ロータを図122のように8要素に分割する。要素2と3、要素7と8の間に電磁石が配置されている。ここで、減衰と不釣合い振動は考慮しないものとする。
求めた弾性モデリングは72次であり、モデルベースの制御を実現できない。そのため、非モデルベースのPID制御を提案する。ブロック線図は図124に示す。
図126はロータが90Hzで回転している状況を示す。上はリサージュ波形であり、真ん中は位相のパワースペクトルである。そして、下はX軸方向の制御電流である。この図から見ると、上側と下側両方とも中心の一点に収束し、定常偏差がなく、安定に浮上することがわかる。図127〜図133は、ロータが回転しているとき、各回転段階での軌跡、変位のパワースペクトルと制御電流である。
PID制御の結果を見ると、固定コントローラであるため円軌跡と電流の形がどっちでもきれいではないけれども、回転速度が前より30Hzくらい上がった。クロスフィードバックコントローラがある程度に弾性後向き一次モードの影響を補償していることがわかった。130Hzまで増速できるPIDコントローラにより、低次元化した弾性モデルのシミュレーションと実験の比較を図134に示す。実線が回転数が0Hzに設定した弾性モデルのシミュレーションであり、破線がPID制御器で浮上時実験データである。両方とも、0.037秒に0.1*10−4mのステップ信号を入れてその応答を見る。
本論文では、磁気軸受支持型電力貯蔵フライホイールの制御に関する研究を行った。大きなフライホイールが付けられているので、きわめて不安定なシステムである。従来の方法では、ロータが平衡点に達しても、バイアス電流を流さなければならないので、消費電流が大きくなる。大変位のとき、制御性能が悪くなるという欠点がある。この問題に対して、本研究はバイアス電流を使わないで、非線形を有したまま、現代制御の非線形理論に基づいて、制御器を設計、有効性を検証した。
(2) コントローラ
(4) 回転体
(4a) フライホイール
(5) アキシアル磁気軸受
(6)(7) ラジアル磁気軸受
(8) 変位検出部
(9) 電動モータ
(10) 回転センサ
(11)(12) 保護軸受
(25) アキシアル変位センサ
(26)(27) ラジアル変位センサユニット
(28a)(28b) アキシアル電磁石
(29a)(29b)(29c)(29d)(30a)(30b)(30c)(30d) ラジアル電磁石
(31a)(31b)(31c)(31d)(32a)(32b)(32c)(32d) ラジアル変位センサ
Claims (2)
- 一対の電磁石と、前記一対の電磁石の間に配置され回転する回転体とを有し、消費電力削減を目的としたゼロバイアス線形制御を行う磁気軸受装置であって、
前記ゼロバイアス線形制御は、一方の電磁石に流す電流をi 1 、他方の電磁石に流す電流をi 3 、ノーマルエアギャップをx 0 、電磁石の変位をx u 、電磁石が発生する磁気吸引力の合力をFx u 、定数をK u とする下記式に従い前記一対の電磁石のうち一方に電流を流し、他方の電磁石への電流をゼロにして前記回転体の回転制御を行うものであり、
ジャイロ効果の影響による不安定を抑制するために、運動方程式に回転周波数に依存する項を付加した線形パラメータ変動システムを含んでおり、凸補間した制御器を予め複数用意しておき、回転周波数によって前記制御器を切り替えるゲインスケジュール制御を行うことを特徴とする磁気軸受装置。
- 一対の電磁石と、前記一対の電磁石の間に配置され回転する回転体とを有し、消費電力削減を目的としたゼロバイアス線形制御を行う磁気軸受装置であって、
前記ゼロバイアス線形制御は、一方の電磁石に流す電流をi 1 、他方の電磁石に流す電流をi 3 、ノーマルエアギャップをx 0 、電磁石の変位をx u 、電磁石が発生する磁気吸引力の合力をFx u 、定数をK u とする下記式に従い前記一対の電磁石のうち一方に電流を流し、他方の電磁石への電流をゼロにして前記回転体の回転制御を行うものであり、
ジャイロ効果の影響による不安定を抑制するために、運動方程式に回転周波数に依存する項を付加した線形パラメータ変動システムを含んでおり、変動パラメータによって常に変動する超平面に状態量を追従させるジャイロ保障のためのゲインスケジュール制御を行うことを特徴とする磁気軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006222950A JP5445887B2 (ja) | 2006-08-18 | 2006-08-18 | 磁気軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006222950A JP5445887B2 (ja) | 2006-08-18 | 2006-08-18 | 磁気軸受装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008045687A JP2008045687A (ja) | 2008-02-28 |
JP5445887B2 true JP5445887B2 (ja) | 2014-03-19 |
Family
ID=39179616
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006222950A Expired - Fee Related JP5445887B2 (ja) | 2006-08-18 | 2006-08-18 | 磁気軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5445887B2 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5713338B2 (ja) * | 2010-11-29 | 2015-05-07 | インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションInternational Business Machines Corporation | 制御器の構成方法、システム及びプログラム |
CN102011799B (zh) * | 2010-12-01 | 2012-08-22 | 北京奇峰聚能科技有限公司 | 一种高可靠储能飞轮磁轴承数字控制系统 |
JP5240336B2 (ja) * | 2011-09-26 | 2013-07-17 | ダイキン工業株式会社 | 磁気軸受及びそれを用いた圧縮機 |
US9329584B2 (en) | 2011-12-15 | 2016-05-03 | International Business Machines Corporation | Method, system and program for constructing a controller |
CN103883621A (zh) * | 2012-12-21 | 2014-06-25 | 北京奇峰聚能科技有限公司 | 磁悬浮储能飞轮的磁轴承控制电路及其控制方法 |
CN113761660A (zh) | 2021-09-10 | 2021-12-07 | 南京工程学院 | 基于数据驱动和机理模型融合的车载飞轮动态建模方法 |
CN114696527B (zh) * | 2022-04-08 | 2023-06-23 | 安徽微特电机科技有限公司 | 一种带有轴向力平衡结构的高速电机 |
Family Cites Families (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6235114A (ja) * | 1985-08-08 | 1987-02-16 | Koyo Seiko Co Ltd | 5自由度型磁気軸受の制御方法 |
JP2835943B2 (ja) * | 1995-10-27 | 1998-12-14 | セイコー精機株式会社 | 磁気軸受の制御装置 |
JP2835942B2 (ja) * | 1995-10-27 | 1998-12-14 | セイコー精機株式会社 | 磁気軸受の制御装置 |
JPH10220475A (ja) * | 1997-02-06 | 1998-08-21 | Seiko Seiki Co Ltd | Lmiベースゲインスケジュール制御を用いた磁気軸受装置 |
JPH1122730A (ja) * | 1997-07-04 | 1999-01-26 | Koyo Seiko Co Ltd | 磁気軸受および磁気軸受ユニット |
JPH11110003A (ja) * | 1997-10-02 | 1999-04-23 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | ビークル制御系の設計方法 |
JP3484344B2 (ja) * | 1998-05-13 | 2004-01-06 | 富士通株式会社 | 制御系解析・設計装置および制御系解析・設計処理方法 |
JP2003345403A (ja) * | 2002-05-28 | 2003-12-05 | Osaka Industrial Promotion Organization | 設計方法、設計装置、制御方法、制御装置、制御システム、コンピュータプログラム、及び記録媒体 |
JP4513458B2 (ja) * | 2004-08-06 | 2010-07-28 | 株式会社ジェイテクト | 磁気軸受装置及びそれを備えるフライホイールエネルギ貯蔵装置 |
-
2006
- 2006-08-18 JP JP2006222950A patent/JP5445887B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2008045687A (ja) | 2008-02-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Sun et al. | Practical tracking control of linear motor with adaptive fractional order terminal sliding mode control | |
JP5445887B2 (ja) | 磁気軸受装置 | |
Chen et al. | Integrated coordinated/synchronized contouring control of a dual-linear-motor-driven gantry | |
Dumanli et al. | Optimal high-bandwidth control of ball-screw drives with acceleration and jerk feedback | |
Fang et al. | Decoupling control of magnetically suspended rotor system in control moment gyros based on an inverse system method | |
Kim et al. | Advanced disturbance observer design for mechanical positioning systems | |
Ren et al. | High-precision and strong-robustness control for an MSCMG based on modal separation and rotation motion decoupling strategy | |
Li et al. | Damping control of piezo-actuated nanopositioning stages with recursive delayed position feedback | |
Wang et al. | Disturbance estimation-based robust model predictive position tracking control for magnetic levitation system | |
Kuo et al. | Modeling and control of a six-axis precision motion control stage | |
Zhou et al. | Development of a high-performance force sensing fast tool servo | |
Witte et al. | Robust and LPV control of an AMB system | |
Dumanli et al. | Data-driven iterative trajectory shaping for precision control of flexible feed drives | |
Bearee et al. | Influence of high-speed machine tool control parameters on the contouring accuracy. Application to linear and circular interpolation | |
Duong et al. | Contour error pre-compensation for five-axis high speed machining: offline gain adjustment approach | |
Cui et al. | Composite velocity-tracking control for flexible gimbal system with multi-frequency-band disturbances | |
Dumetz et al. | Control of an industrial robot using acceleration feedback | |
Zhou et al. | Robust proportional-differential control via eigenstructure assignment for active magnetic bearings-rigid rotor systems | |
Hu et al. | Adaptive variable structure controller for spacecraft vibration reduction | |
Bazzi et al. | Fuzzy sliding mode controller for a flexible single-link robotic manipulator | |
Ren et al. | A General Double-Input Synchronous Signal Processor for Imbalanced Vibration Mitigation in AMB-Rotor Systems | |
Sun et al. | Trajectory tracking and vibration control of flexible beams in multi-axis system | |
Schneiders et al. | Modal framework for closed-loop analysis of over-actuated motion systems | |
Ghaffari et al. | Newton-based contour error estimation and robust cross-coupling control for high-precision fast contouring | |
Flores et al. | Frequency Response Based Extremum Seeking Control of a Single-link Flexible Robot |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090729 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20101111 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20110601 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120110 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20120312 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20120404 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20120405 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20120406 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120410 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20121127 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20130423 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130723 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130906 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20130911 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20131129 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20131212 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |