JP5445887B2 - 磁気軸受装置 - Google Patents

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    • F16C2361/55Flywheel systems

Description

この発明は、フライホイール式電力貯蔵装置などに使用され、回転体を磁気軸受で非接触支持して電動モータにより回転させる磁気軸受装置に関する。
この種の磁気軸受装置として、機械本体とコントローラがケーブルで接続されており、機械本体に、回転体と、電磁石の磁気吸引力により回転体をアキシアル方向およびラジアル方向に非接触支持する制御型アキシアル磁気軸受およびラジアル磁気軸受と、回転体のアキシアル方向およびラジアル方向の変位を検出するための変位センサと、回転体を回転させる電動モータと、回転体の回転数を検出するための回転センサと、タッチダウン用の保護軸受とが設けられ、コントローラが、変位センサの出力に基づいて磁気軸受の電磁石を制御するとともに、回転センサの出力に基づいて電動モータを制御するものが知られている。
磁気軸受は強い非線形性を有しているため、線形理論を適用して制御を行うためには、平衡点近傍においてテイラー展開による一次近似を行うという線形化の手法がとられてきた。しかし、この線形化法は、回転体(ロータ)を常時浮上させるためには常にバイアス電流を供給しなければならない。さらに、バイアス電流を供給する手法では、回転時に回転体が磁束を常に横切ることとなり、相対的な回転体の磁束変動を発生させる。このため、磁性材料内部でのヒステリシス損失、渦電流損失が大きくなる。
また、フライホイール式電力貯蔵装置の場合など、回転体にフライホイールが取り付けられている磁気軸受装置は、回転周波数の変化とともに、ジャイロ効果による前向き振れ回り運動や後向き振れ回り運動が発生し、回転体の軌跡に花びらのような振れ回りが発生し、安定性を損なう。
ゼロバイアス制御磁気軸受の従来技術は、制御器の次数を低次元化するため、ジャイロ効果を考慮していないモデリングであった。そのため、実際に回転させると、速度上昇に伴ってジャイロ効果が大きくなり、システムの安定性が悪くなる。
この発明の目的は、上記の問題を解決し、消費電力削減を目的としたバイアス電流を用いない線形化を行い、ジャイロ効果の影響による安定性の劣化を抑制できる磁気軸受装置を提供することにある。
この発明の目的は、上記の問題を解決し、モデルベースからジャイロ効果を考慮し、回転速度によりコントローラのジャイロ補償のゲインをスケジューリングして、回転体の安定性を向上させた磁気軸受装置を提供することにある。
この発明による磁気軸受装置は、消費電力削減を目的としたゼロバイアス線形制御を行う磁気軸受装置において、ジャイロ効果の影響による不安定を抑制するために、運動方程式に回転周波数に依存する項を付加した線形パラメータ変動システムを含んでおり、凸補間した制御器を予め複数用意しておき、回転周波数によって前記制御器を切り替えるゲインスケジュール制御を行うことを特徴とするものである。
磁気軸受が非線形性を有するのは、吸引力と電磁石への供給電流との間の関係式であり、吸引力を制御入力と考えることで、磁気軸受は線形な制御対象とみなすことができる。つまり、回転体が1つの電磁石に接近するとき、接近した電磁石の制御電流を零にして、反対側の電磁石にのみ制御電流を供給し、回転体が完全に平衡点になれば、一切の電流を流さないということである。
さらに、モデルを回転周波数によりシステムが変動する線形パラメータ依存モデルであると考え、ゲインスケジュール制御器を設計する。実験システムへゲインスケジュール制御器の実装を考えたとき、サンプリングごとの離散化は計算処理が遅れるという問題に対しては、凸補間された制御器に対して、予め回転数ごとに制御器を用意しておき、スケジューリングパラメータによって制御器を切り替えるという方法を提案する。
吸引力を制御入力と考えることで磁気軸受は線形な制御対象とする線形化方法を用いて対向配置する電磁石には一方しか電流を流さない。
運動方程式に回転周波数に依存する項を付加し、線形パラメータ変動システムを構築することで、ジャイロ効果による影響をモデルに加える。
実験にゲインスケジュール制御を適用する際は、予め凸補間した制御器をいくつか用意しておき、回転周波数によって制御器を切り替える方法を適用する。
電流切換により、ゼロバイアス制御を実現した。さらに、フライホイール・磁気軸受系に対してテーブルを用いたゲインスケジュール制御を提案したことで、浮上時だけではなく、回転実験においても、ロータは剛性モードおよび弾性モードの後向き振れ回り運動による花びらのような軌跡を十分に制御によって抑えることができる。
この発明による磁気軸受装置は、消費電力削減を目的としたゼロバイアス線形制御を行う磁気軸受装置において、ジャイロ効果の影響による不安定を抑制するために、運動方程式にジャイロ効果の項を付加した線形パラメータ変動システムを含んでおり、変動パラメータによって常に変動する超平面に状態量を追従させるジャイロ補償のためのゲインスケジュール制御を行うことを特徴とするものである。
運動方程式にジャイロ効果の項を付加し、線形パラメータ変動システムを構築した。制御するため、状態量を変動パラメータによって常に変動する超平面に追従させるジャイロ補償のゲインスケジュール型スライディングモード制御則を考案した。
電流切換により、ゼロバイアス制御を実現した。さらに、根軌跡から見ると、回転速度に係わらずほとんど動かない状態で安定性を保持できた。
この発明の磁気軸受装置によれば、ジャイロ効果の影響による安定性の劣化を防止することができる。
この発明の磁気軸受装置によれば、回転体の安定性を向上させることができる。
以下、図面を参照して、この発明をフライホイール式電力貯蔵装置に使用される5軸制御型磁気軸受装置に適用した実施形態について説明する。
図1は磁気軸受装置の全体構成を概略的に示すブロック図、図2は磁気軸受装置の機械的部分の主要部を示す縦断面図、図3はさらに図2の主要部を示す斜視図である。
磁気軸受装置は、ケーブルにより接続された機械本体(1)およびコントローラ(制御手段)(2)を備えている。
磁気軸受装置は、鉛直円筒状のケーシング(3)の内側で鉛直軸状の回転体(ロータ)(4)が回転する縦型のものであり、ケーシング(3)より突出した回転体(4)の上端部にフライホイール(4a)が固定されている。以下の説明において、回転体(4)の鉛直な軸方向(アキシアル方向)の制御軸(アキシアル制御軸)をZ軸、Z軸と直交するとともに互いに直交する2つの水平な径方向(ラジアル方向)の制御軸(ラジアル制御軸)をX軸およびY軸とする。
機械本体(1)には、回転体(4)を軸方向に非接触支持する1組の制御型アキシアル磁気軸受(5)、回転体(4)を径方向に非接触支持する上下2組の制御型ラジアル磁気軸受(6)(7)、回転体(4)の軸方向および径方向の変位を検出するための変位検出部(8)、回転体(4)を高速回転させるためのビルトイン型電動モータ(9)、回転体(4)の回転数を検出するための回転センサ(10)、ならびに回転体(4)の軸方向および径方向の可動範囲を規制して回転体(4)を磁気軸受(5)(6)(7)で支持していないときに回転体(4)を機械的に支持する上下2組のタッチダウン用の保護軸受(11)(12)が設けられている。
コントローラ(2)には、センサ回路(13)(14)、電磁石駆動回路(15)、インバータ(16)およびDSPボード(17)が設けられ、DSPボード(17)には、ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段としてのDSP(18)、ROM(19)、不揮発性記憶装置としてのRAM(20)、AD変換器(21)(22)およびDA変換器(23)(24)が設けられている。
変位検出部(8)は、回転体(4)の軸方向の変位を検出するための1個のアキシアル変位センサ(25)、および回転体(4)の径方向の変位を検出するための上下2組のラジアル変位センサユニット(26)(27)を備えている。
アキシアル磁気軸受(5)は、回転体(4)の下部に一体に形成されたフランジ部(4b)をZ軸方向の両側から挟むように配置された1対のアキシアル電磁石(28a)(28b)を備えている。アキシアル電磁石は、符号(28)で総称する。
アキシアル変位センサ(25)は、回転体(4)の下端面にZ軸方向の下側から対向するように配置され、回転体(4)の下端面との距離(空隙)に比例する距離信号を出力する。
2組のラジアル磁気軸受(6)(7)は、アキシアル磁気軸受(5)の上側において上下方向に所定の距離をおいて配置されており、これらの間にモータ(9)が配置されている。上側のラジアル磁気軸受(6)は、回転体(4)をX軸方向の両側から挟むように配置された1対のラジアル電磁石(29a)(29b)、および回転体(4)をY軸方向の両側から挟むように配置された1対のラジアル電磁石(29c)(29d)を備えている。これらのラジアル電磁石は、符号(29)で総称する。同様に、下側のラジアル磁気軸受(7)も、2対のラジアル電磁石(30a)(30b)(30c)(30d)を備えている。これらの電磁石も、符号(30)で総称する。
上側のラジアル変位センサユニット(26)は、上側のラジアル磁気軸受(6)の近傍に配置されており、X軸方向の電磁石(29a)(29b)の近傍においてX軸方向の両側から回転体(4)を挟むように配置された1対のラジアル変位センサ(31a)(31b)、およびY軸方向の電磁石(29c)(29d)の近傍においてY軸方向の両側から回転体(4)を挟むように配置された1対のラジアル変位センサ(31c)(31d)を備えている。これらのラジアル変位センサは、符号(31)で総称する。同様に、下側のラジアル変位センサユニット(27)は、下側のラジアル磁気軸受(7)の近傍に配置されており、2対のラジアル変位センサ(32a)(32b)(32c)(32d)を備えている。これらのラジアル変位センサも、符号(32)で総称する。各ラジアル変位センサ(31)(32)は、回転体(4)の外周面との距離に比例する距離信号を出力する。
電磁石(28)(29)(30)、変位センサ(25)(31)(32)は、ケーシング(3)に固定されている。
保護軸受(11)(12)はアンギュラ玉軸受などの転がり軸受よりなり、各保護軸受(11)(12)の外輪がケーシング(3)に固定され、内輪が回転体(4)の周囲に所定の隙間をあけて配置されている。2組の保護軸受(11)(12)はいずれも径方向の支持が可能なものであり、少なくとも1組は軸方向の支持も可能なものである。この例では、上側の保護軸受(11)は径方向の支持のみを行い、下側の保護軸受(12)は径方向の支持と軸方向の支持を行うようになっている。
コントローラ(2)のROM(19)には、DSP(18)における処理プログラムなどが格納されている。RAM(20)には、磁気軸受の制御パラメータなどが記憶されている。
センサ回路(13)は、変位検出部(8)の各変位センサ(25)(31)(32)を駆動し、各変位センサ(25)(31)(32)の出力に基づいて、回転体(4)の軸方向の変位、ならびに上下のラジアル変位センサユニット(26)(27)の部分におけるX軸方向およびY軸方向の変位を演算し、その演算結果である変位信号をAD変換器(21)を介してDSP(18)に出力する。変位検出部(8)およびセンサ回路(13)により変位検出装置が構成され、変位検出部(8)のラジアル変位センサユニット(26)(27)およびセンサ回路(13)のラジアル変位センサ(31)(32)に関する部分によりラジアル変位検出装置が構成されている。
センサ回路(14)は、回転センサ(10)を駆動し、回転センサ(10)の出力を回転体(4)の回転数に対応する回転数信号に変換し、これをAD変換器(22)を介してDSP(18)に出力する。
DSP(18)は、AD変換器(21)から入力する変位信号に基づいて、各磁気軸受(5)(6)(7)の各電磁石(28)(29)(30)に対する制御電流値を求め、制御電流値に対応する励磁電流信号をDA変換器(21)を介して磁気軸受駆動回路(15)に出力する。そして、駆動回路(15)は、DSP(18)からの励磁電流信号に基づく励磁電流を対応する磁気軸受(5)(6)(7)の電磁石(28)(29)(30)に供給し、これにより、回転体(4)が所定の目標位置に非接触される。DSP(18)は、また、AD変換器(22)から入力する回転センサ(10)からの回転数信号に基づいて、モータ(9)に対する電流制御信号をDA変換器(24)を介してインバータ(16)に出力し、インバータ(16)は、この信号に基づいて、モータ(9)の電流を制御することにより、回転数を制御する。そして、その結果、回転体(4)が、磁気軸受(5)(6)(7)により目標位置に非接触支持された状態で、モータ(9)により高速回転させられる。
次に、DSP(18)による上下のラジアル電磁石(29)(30)の制御について説明する。
フライホイール・磁気軸受系のゲインスケジュールH∞制御
磁気軸受は不安定な系であることから、フィードバック制御による安定化が課題である。さらに、磁気軸受は、強い非線形性を有しているため、線形理論を適用して制御を行うためには、平衡点近傍においてテイラー展開による一次近似を行うという線形化の手法がとられてきた。しかし、この線形化法は、ロータを常時浮上させるためには常にバイアス電流を供給しなければならない。さらに、バイアス電流を供給する手法では、回転時にロータが磁束を常に横切ることとなり、相対的なロータの磁束変動を発生させる。このため、磁性材料内部でのヒステリシス損失、渦電流損失が大きくなる。このため、エネルギ貯蔵用フライホイールなどにおけるエネルギ収支の観点から消費電力、回転損失が大きいという欠点を持つ。
そこで、近年、磁気軸受において消費電力の最小化を目指し、バイアス電流を用いない制御方式が盛んに研究されている。ある研究では、従来の電流を制御入力と考え、ゼロパワー制御を行っているが、制御電流に定常偏差が残る結果となった。従来、磁気軸受において、制御入力は電流として考えてきた。しかし、磁気軸受が非線形性を有するのは、吸引力と電磁石への供給電流との間の関係式であり、吸引力を制御入力と考えることで、磁気軸受は線形な制御対象とみなすことができる。
先行研究では、ロバスト制御理論の適用が行われ、その有効性が確認されている。また、非線形な制御型磁気軸受の特性に対して、吸引力を制御入力と考えるゼロバイアス手法を提案し、消費電力の低減化に成功した。
しかし、実験において、ロータの軌跡に乱れが発生し、100Hz付近にてタッチダウンに至る。これは、慣性力を増加させることを目的にフライホイールがロータに取り付けられているために、ジャイロ効果による前向き触れ回り運動や後向き触れ回り運動の発生、およびそれらの固有振動数の変化が高速回転を妨げていることが原因であると考えられる。
そこで、本論文では、まず、ジャイロ効果の特性を考慮したモデリングを行った。プラントのA行列に回転周波数ωを定数として考慮し、H∞固定制御器の性能をシミュレーションおよび実験にて検証する。
次に、回転周波数によりシステムが変動する線形パラメータ依存モデル(LPV)であると考え、ゲインスケジュール(GS)制御器を設計し、H∞固定制御器との比較をシミュレーションおよび固有値解析にて行う。実験システムへGS制御器の実装を考えたとき、サンプリングごとの離散化は計算処理が遅れるという問題に対しては、凸補間された制御器に対して、予め回転数ごとに制御器を用意しておき、GSパラメータによって制御器を切り替えるという方法を提案する。また、テーブルを用いることでGS制御器の閉ループ安定性が損なわれないかを、初期応答により検証する。
最後に、実験において制御性能を劣化させていると考えられる曲げ一次弾性バックモードを含む低次元化モデルを用いて検証する。シミュレーションを実験の不一致問題に対して、原因がアクチュエータの諸元によるものと考え、GS制御器にαという未知パラメータ係数を加えたときの、閉ループの固有値解析を行う。
本論文は、0.5KWh級磁気軸受フライホイールシステムに対して、LMIに基づくGS制御の有効性について論じたものである。
制御対象は、図1〜図3に示す磁気軸受装置である。
3.制御理論
3.1 概念
H∞制御では、種々の制御問題を統一的な枠組みで扱えるよう、図4に示すフィードバック系が用いられる。図4において、Gはプラントと呼ばれ、次式で示す入出力信号を持つ伝達関数として定義される。
また、Gの状態空間実現は、次のように定義される。
ここで、w∈Rm1は外部入力と呼ばれ、参照信号や外乱、センサノイズなど、制御系に外部から加わる入力を表し、z∈Rp1は制御量と呼ばれ、制御偏差や制御入力など、制御によって小さくしたい量を表す。また、u∈Rm2およびy∈Rp2は、制御入力と観測出力で、それぞれ、補償器からの出力および入力となる量である。今、一般化プラントGに対して補償器
u=Ky (3.3)
を用いてフィードバック制御を行うと、wからzまでの伝達関数は次式となる。
z=Gzw
ただし、
zw:=G11+G12K(A−G22K)−121 (3.4)
である。制御目的は外部入力wに対して、制御量zをなるべく小さく抑えることである。したがって、伝達関数Gzwの大きさを何らかの意味で小さくする補償器Kを設計すればよい。H∞制御においては、このGzwの大きさの尺度としてH∞ノルムというものを用いる。Gzwが安定であるとき、そのH∞ノルムを‖Gzw‖∞と書き、次のように定義する。
ここで、σは行列の最大特異値を表し、次式で定義される。
ここで、λmaxは行列の最大固有値、
は行列Gzw(jw)の複素共役転置である。このとき、H∞ノルムは入出力のエネルギ比の最大値を意味する。
以上のことを踏まえて、H∞制御問題は、図4の一般化プラントGに対してu=Kyなるフィードバック制御を行うことにより、閉ループを安定化し、かつ、ある与えられた整数γに対して
‖Gzw(s)‖∞<γ (3.7)
を満たす補償器Kを求めることである。このようにH∞制御問題は非常にシンプルなものとして定式化されており、Gの構成を変えることで、つまり外部入力w、制御量zを制御目的に合わせて選ぶことにより、ロバスト制御、外乱抑圧制御、感度最適化、目標値追従、そして閉ループ整形問題など様々な問題に適用することができる。また、式(3.2)の定義、さらに以下の仮定の下ではH∞制御問題は、標準H∞制御問題と呼ばれる。
仮定1 (A,B)は可安定、かつ(C,A)は可検出
仮定2 D12は縦長列フルランク、かつD21は横長行フルランク
仮定3 G12は虚軸上に不変零点を持たない、すなわち、すべてのwに対して、
はフルランク
仮定4 G21は虚軸上に不変零点を持たない、すなわち、すべてのwに対して、
はフルランク
3.2 外乱抑圧制御とH∞制御
フィードバック制御は制御対象を安定化させることだけが目的ではなく、抑制問題、たとえば外乱抑制特性、目標値追従特性を達成することも目的である。前節のH∞制御問題においてwを実外乱、zを外乱の影響を抑えたい物理量にとれば外乱抑制制御そのものになる。今、図5(a)のように、制御対象の入力端に加わる外乱wを出力端zで抑圧する問題を考える。z、uはそれぞれ
z=y=P(u+w) , u=Ky (3.8)
と表せる。これより、wからzまでの伝達関数は
z=(A−PK)−1Pw (3.9)
と求まる。つまり、図5(a)における外乱抑圧問題は、なるべく小さな正数γに対して、
‖(A−PK)−1P‖∞<γ (3.10)
を満たす補償器Kを求める問題となる。ただし、式(3.10)の評価では、H∞ノルムの定義よりwからzまでの伝達関数のゲイン(多入出力系ならば最大特異値)をすべての周波数帯域にわたってγ以下に押さえることを意味し、一般には厳しい要求となる。しかし、実際には、すべての周波数帯域で周波数スペクトルが大きいという外乱は見られない。そこで、外乱wの周波数スペクトルが大きな周波数帯域でのみ(A−PK)−1Pを小さくできれば十分となる。そこで、小さくしたい周波数帯域でのみ十分大きなゲインを持つ伝達関数Wを導入し、式(3.10)の代わりに、
‖W(A−PK)−1P‖∞<γ (3.11)
とする。今、
:=(A−PK)−1P (3.12)
と定義し、Mが1入出力の場合を考えると、H∞ノルムの定義より、式(3.11)は
|W(jw)||M(jw)|<γ,∀w (3.13)
に等価であるので、|W(jw)|が大きな周波数帯域では、|M(jw)|をとくに小さくすることができることがわかる。
3.3 目標値追従制御とH∞制御
次に、wを目標値、zを出力信号ととれば、目標値追従制御そのものになる。今、図6において、wからzまでの伝達関数は
z=(A−PK)−1w (3.14)
と求まる。つまり、図6(a)における目標値追従問題は、なるべく小さな正数γに対して、
‖(A−PK)−1‖∞<γ (3.15)
を満たす補償器Kを求める問題となる。ただし、前節同様、式(3.15)の評価では、wからzまでの伝達関数のゲイン(多入出力系ならば最大特異値)をすべての周波数帯域にわたってγ以下に押さえるは、一般には厳しい要求となる。そこで、小さくしたい周波数帯域でのみ十分大きなゲインを持つ伝達関数Wを導入し、式(3.15)の代わりに、
‖W(A−PK)−1‖∞<γ (3.16)
とする。今、
:=(A−PK)−1 (3.17)
と定義し、Mが1入出力の場合を考えると、式(3.16)は
|W(jw)||M(jw)|<γ,∀w (3.18)
に等価であるので、|W(jw)|が大きな周波数帯域では、|M(jw)|をとくに小さくすることができることがわかる。また、一般に式(3.17)は感度関数と呼ばれる。
3.4 ロバスト安定化問題
H∞制御ではロバスト安定化問題を陽に取り扱うことができるが、これはロバスト安定性を保証する際に用いるスモールゲイン定理がH∞ノルム条件で記述されているからである。
定理3.1(スモールゲイン定理)
図7において、A(s)およびB(s)は安定でプロパな伝達関数とする。このとき、
‖A(s)B(s)‖∞<1 (3.19)
を満たすと、図7の閉ループは安定となる。
3.5 乗法的誤差に対するロバスト安定化
図8(a)において、フィードバック系のロバスト安定化問題を考える。実制御対象Pは公称モデルPとそれに対する乗法的誤差Δを用いて
P=(I+Δ)P (3.20)
と表される。ここで、Δは簡単のため安定と仮定する。また、図8(a)において、点aから点bまでの伝達関数を求めると
:=(I−PK)−1PK (3.21)
となる。ここで、式(3.21)を相補感度関数と呼ぶ。このとき、図8(a)と図8(b)は等価であるので、スモールゲイン定理を適用すると、安定となるための条件
‖ΔT‖∞<1 (3.22)
を得る。しかし、モデル化誤差を正確に見積もることは不可能である。したがって、
σ{Δ(jw)}<|w(jw)| , ∀w (3.23)
を満たす既知のスカラ伝達関数wを用いることで
‖w‖∞<1 (3.24)
が成り立つことが、ロバスト安定のための条件となる。したがって、図8(c)の一般化プラントを構成し、wからzまでのH∞ノルムを1未満とする補償器Kを求めればよい。
3.6 混合感度問題
本来、フィードバック制御を行う目的は、ある種の制御性能を達成しながらも、ロバスト安定化を図ることである。つまり、制御性能のみを考慮しても、必ず存在するモデル化誤差を保証しない。また、ロバスト安定化のみを図っても、それは十分条件でしかない。やはり、制御性能、ロバスト安定化の両方を考慮した設計をしなければならない。今、図9のブロック線図を考える。ここで、w、wは外部入力、z、zは制御量である。wからzまでの伝達関数Gz1w2
z1w2=W(s)M(s) (3.25)
ここで、
(s)=(I+PK)−1 (3.26)
と表され、目標値追従性を達成するものであり、式(3.26)は重み付き感度関数でもある。これを小さくすることが感度低減問題となる。一般に、低周波域に重みを付けて感度を下げることが多い。したがって、感度低減問題は次式の評価関数となり、できるだけ小さいγを探索する問題となる。
‖Gz1w2‖∞<γ (3.27)
また、外乱抑圧特性を達成するためには、wからzまでの伝達関数Gz1w1
z1w1=W(s)M(s) (3.28)
ここで、
(s)=(I+PK)−1P (3.29)
においても、できるだけ小さいγを探索する問題となる。
‖Gz1w1‖∞<γ (3.30)
一方、ロバスト安定性を確保するためには、wからzまでの伝達関数Gz2w1
z2w1=W(s)T(s) (3.31)
ここで、
(s)=(I+PK)−1K (3.32)
であるので、
‖Gz2w1‖∞<1 (3.33)
を満たすように設計しなければならない。さらに、wからzまでの伝達関数Gz2w2
z2w2=W(s)T(s) (3.34)
ここで、
(s)=(I+PK)−1K (3.35)
においても
‖Gz2w2‖∞<1 (3.36)
を満たすように設計しなければならない。なお、式(3.35)を一般的に準相補感度関数と呼ぶ。式(3.27)、式(3.30)、式(3.33)、式(3.36)を同時に満たすのは相反する要求であり、トレードオフを考えなければならない。現実には、Sの重みW(jw)は低周波域で大きくとればよく、制御対象の不確定性を反映するW(jw)は高周波域で大きくとればよい。よって、低周波域でM(s)、M(s)を、高周波域でT(s)、T(s)を小さくするという設計指針が導かれる。このような問題を混合感度問題という。式(3.27)、式(3.30)、式(3.33)、式(3.36)の組み合わせでは
となり、式(3.37)を同時に満たす補償器K(s)を設計する問題となる。今、w=[w]、[z]なる変数を定義すると、wからzまでの伝達関数は
となり、式(3.37)の代わりに
を満たす補償器K(s)を求める問題となる。
3.7 LMIに基づくゲインスケジュールH∞制御
LMIベースのGSH∞制御の定式化は文献に詳しく述べられている。本研究ではこの定式化に基づき制御系を設計することである。制御対象プラントと制御器の状態空間表現を次式で表す。
ここで、xおよびxはそれぞれプラントと制御器の状態ベクトル、zとyは制御量と測定された出力ベクトルを表す。uは制御入力、wは外乱入力ベクトルである。2つの式を組み合わせると、次式の閉ループ系の式が得られる。
閉ループ行列Acl、Bcl、Ccl、Dcl
ここで
制御器行列は単位行列Ωにまとめられることに注目しよう。リアプノフ関数V(x)=xPx、P>0が式(3.42)の閉ループ系に対して定義されれば、大域的漸近安定性を保証できる。今、LTIシステムのwからzまでのL誘導ノルムは
‖z‖<γ‖w‖ (3.45)
と与えられる。これから最終的に、次式を満たす正定なリアプノフ関数V(x)=xPxが存在する。
H∞準最適制御問題は、Xcl>0に対して次の不等式の解が存在することと等価である。
さらに、LMI式(3.47)の解は次の不等式を満足する2つの対称行列RおよびSが存在することと等価である。
ここで、NおよびNはそれぞれ
および(C,D12)の零空間を表す。
上記のH∞制御問題はLTIシステムにのみ有効であるが、LPVシステムにまで拡張することも可能である。LPVプラントを状態空間モデルで表すと
ここで、x、y、uはそれぞれ状態ベクトル、観測出力ベクトル、制御入力ベクトルを表す。pは時変プラントのパラメータベクトルであり、この結果、制御対象のプラントはpの関数となる。実際にpは速度や減衰、剛性といった時間依存の物理パラメータとなっており、次のように変動幅の最小値と最大値で与えられる。
min≦p(t)≦pmax (3.52)
p(t)が制御中に大きな変動を受けるとき、固定されたロバストLTI制御器で高性能な制御性能を得ることはできない。
もし、p(t)の実測値が制御中に実時間で得られるならば、制御器の動特性を実測値p(t)に依存して実時間で変化させることができる。このとき、制御器は次式で示される。
ここで、yは観測ベクトル、uは制御入力である。時変パラメータを正確に実測できれば、制御器をプラントダイナミクスの変動に追従させて連続的に調整することにより大域的安定性と良好な制御性能を実現できる。
現在のパラメータ値p(t)の凸分解
を与えると、A(p)、B(p)、C(p)、D(p)の値は、
によって、パラメータボックスの端点での、
の値から導出される。言い換えれば、動作点p(t)でのコントローラの状態空間行列は、LTI端点コントローラ
の凸補間で得られる。これにより、時変パラメータの実測値p(t)によるコントローラ行列のスムーズなスケジューリングが行える。
今、LPVプラントの状態空間表現を一般的な表現で考える。
行列A(・)、B(・)、C(・)、D(・)は変動パラメータpの関数である。また、B、C、D12、D21行列はpの影響を受けない。
コントローラに対して、図10の相互接続に関するシンセシス問題を考える。LPVプラントに対するH∞制御問題の解は、次式のようにLTIプラントと同じ形をしている。
ここで、A、B1i、C1i、D11iはポリトープ形パラメータp=PでのA(p)、B(p)、C(p)、D11(p)のパラメータ値である。不等式(3.57)〜(3.59)は凸最適化アルゴリズムを使ったツールボックスで解くことができる。行列RとSから得られた制御器行列Ωの構造も同じ凸プログラムで得られる。
4.モデリング
4.1 ジャイロモーメント
ジャイロモーメントとは、高速回転円板が傾き運動するときに発生する作用であり、円板の傾きと直角方向に発生するモーメントのことである。ジャイロモーメントは以下の式により求められる。
この効果により、静止時には1つである固有振動数が前向き振れ回りモードと後向き振れ回りモードに分かれ、ジャイロ効果の大小によって変化幅が決まるという性質がある。
ジャイロ効果により、ロータは磁気軸受にとって回転数に伴って振動特性が変化するとともにX−Y方向が連成する制御対象になるので、磁気軸受の制御特性を決める上で大きな障害となる。したがって、回転周波数に対してロータの振動特性がどのように変化するかを、予め精度良く求めておくことが必要である。
極軌跡の虚部、すなわち固有振動数の変化を縦軸に、回転周波数を横軸にとった固有振動数線図を図11に示す。式(4.1)から回転数と傾き角速度が増加するほどジャイロモーメントは増加することより、2次モードの方がジャイロモーメントが大きく、前章での実験におけるタッチダウンの原因であると考えられる。したがって、剛性2次モードと運搬線の交点での危険速度を越えるためには、ジャイロ効果を考慮した設計が必要である。
4.2 ジャイロ効果を考慮したモデリング
本研究が対象とする磁気軸受は、図12のような5軸制御型フライホイールであり、そのパラメータを表4.1に示す。アキシアル方向はPID制御がなされているので、ラジアル方向についてのみモデル化を考える。
図12、図13の図中の記号は、
G:ロータの重心位置
θ:各軸周りの回転角度
,L:上部、下部の電磁石までの距離
,L:上部、下部のセンサまでの距離
〜i:各電磁石における制御電流
,x,x:X−Z平面におけるロータ重心、上部電磁石、下部電磁石位置での変位
を示す。ジャイロ効果
を考慮したロータの重心に対する並進方向、回転方向の運動方程式は式(4.2)となる。
出力yは
であるので、状態変数、入力、出力を
とすると、その状態空間実現は
である。
5.制御系設計と性能検証1
5.1 H∞制御器設計
設計において、一般化プラントは図14の修正混合感度問題を使用した。外乱抑圧特性を得るために仮想外乱をPの直前に導入し、目標値追従特性を得るために仮想外乱をPの直後に導入している。なお、εは仮想外乱を観測ノイズとみなすためのものでもあり、標準H∞制御問題の可解条件を満たすためのものである。重み関数は上側、下側の質量の割合が異なるため、別々に設計した。設計に用いた重み関数の周波数応答を図14(a)に示す。また、ランク条件を満たすために導入したε値を0.04とした。γ値は0.89である。
はロバスト性に対する周波数重み関数であり、高周波数領域での制御入力の影響を低減する。また、Wsは制御性能に対する周波数重み関数であり、ロータを原点に固定することを制御指針として低周波領域でサーボ系の形になるように設計した。Y軸の上部、下部それぞれに対する周波数重み関数はX軸と等しいものを使用している。
前節で求めた補償器は、制御入力が吸引力であるため、そのまま実験機に適用することはできない。つまり、切換条件を基に力制御入力から制御電流への変換が必要である。本研究では、この切換を力制御入力の正負のみにより行う。つまり、力制御入力の正負により2対の電磁石の切換を行い、制御器が求めた吸引力fを再現する電流を逆算する。上側、下側はそれぞれ独立に切換を考えるので、上部側について詳細に述べる。
1)Fxu>0のとき
図15(c)において、電磁石1が吸引すればよい。そのときの力と電流iの関係式をi=0として
から逆算すると、次式となる。
2)Fxu<0のとき
図15(d)において、電磁石3が吸引すればよい。そのときの力を電流iの関係式をi=0として
から逆算すると、次式となる。
下側についても同様に
1)Fxl>0のとき
2)Fxl<0のとき
この切換条件を用いて力制御入力を各電磁石の制御電流に変換することで制御を行う。Y−Z平面は、X−Z平面と同様であり、以下のとおりである。
上側
1)Fyu>0のとき
2)Fyu<0のとき
下側
1)Fyl>0のとき
2)Fyl<0のとき
5.2 制御電流の切換法
ゼロパワー切換制御の基本的な方法は、フライホイールシステムのロータ部を剛体とみなし、ロータが1つの電磁石に接近するとき、接近した電磁石の制御電流を零にして、反対側にのみ制御電流を供給して、ロータが完全に平衡点になれば、一切の電流(パワー)を流さないということである。さらに、制御器を設計するとき、制御入力は対向した電磁石間の吸引力として仮定する。求めた吸引力から切換法によって、実際の制御電流を求める。
上側磁気軸受、下側磁気軸受の2対の電磁石が発生する磁気吸引力の合力をそれぞれFxu、Fxlとする。電磁石の磁気吸引力の合力は非線形性を有しているため、次式のように吸引力を制御入力と考えることで線形な制御対象として扱う。
ここで
k:吸引力定数
i:入力電流
:ノミナルエアギャップ
x:ロータ変位
である。式(5.2)をみると、磁気吸引力は入力電流の二乗に比例し、電磁石とロータの距離の二乗に反比例するという形になっており、非常に強い非線形性を有している。従来の方法は、対向している両方の電磁石にバイアス電流を流すことによって、吸引力と電流の関係は小さな変位の領域で線形化できる。まず、入力電流と吸引力の関係は図16(a)(b)の点線のようになっている。ただ、F、Fは対向している電磁石の吸引力特性である。両方の電磁石にバイアス電流を流しておくと、図16(c)の実線のように電磁石の吸引力の差が線形な形になる。
この線形化による線形制御方法を適用し、コントローラを設計することが容易となる。しかし、ロータが安定に浮上しても、常時バイアス電流を流し続けなければならない。バイアス電流による渦電流損失は無視できず、回転抵抗や発熱などの問題を引き起こし、消費電力が多くなるという短所がある。また、この線形化法はモデリングにおいては、一般的な平衡点近傍でテイラー展開の一次近似を行うため、平衡点近傍では所望の制御性能が得られるが、大変位のときに制御性能が劣化するという問題もある。
5.3 シミュレーション
実験の前段階として、制御器の閉ループ安定性を検証するため、MATLAB Simulinkによるシミュレーションを行った。シミュレーションは図17のようにSimulinkにより構成した。より実験機システムに近づけるために、一度切換条件を基に力制御入力から制御電流への変換を行い、力制御入力に変換しなおしている。物理パラメータにより求めたモデルは制御入力を吸引力とみなしているため、制御電流から力制御入力に再度変換しなおす形となる。なお、制御電流は実際の実験と同様、1.5Aのリミッタを設けている。また、サンプリング周期は実際の実験と同様10kHzとし、補償器は双一次変換により離散化したものを用いた。X軸の上側に10μmのステップ目標値を0.01sから加えている。このときの初期値応答を図18に、各電磁石の制御電流を図19に示す。
図18(a)において、オーバーシュートは少なく、整定時間も早く、良好な結果が得られていることがわかる。また、図19から、制御入力が正負に変動する際に、電磁石の電流もしっかり切り換わっている。さらに、整定後は電流は流れておらず、ゼロパワー制御が行われていることがわかり、良好な結果となっている。
5.4 実験
シミュレーションで用いた制御器を実際の磁気軸受フライホイールに適用し、93Hz(5580rpm)までの回転実験を行った。実験システムは図20のように構成し、位置情報をセンサで取得し、A/Dボードを通してDSPに取り込み、力制御入力を計算した後、切換条件を基に各電磁石の制御電流に変換し、D/Aボードを通して電磁石に出力される仕組みとなっている。サンプリング時間は0.1msとする。また、MATLABからDSPへはリアルタイムで情報を取得できるようになっており、図21のようにfigureにて各センサ情報を画面に表示することが可能である。インバータにはMyWay技研製のスピードコントローラを用いており、512rpm/sの一定加速度を加えている。
回転周波数0〜90Hzでの上側、下側におけるロータの軌跡および各電磁石の制御電流を図23〜図42に示す。また、上側の1対の電磁石の制御電流を拡大したものを図22に示す。
図22より、制御電流においては、制御電流は切換が行われていることが確認できる。また、回転周波数に同期した半波波が制御電流に見られることがわかった。これは回転することで一種の調和外乱が印加されたような状態となり、補償器がそれを安定化しようと回転周波数に同期した制御電流を供給するためと考えられる。
下側のロータの軌道は上側より大きい。これは、重心から下側磁気軸受までの距離が上側に比べ約1.8倍長いため、そしてアキシアル方向のPID補償器との干渉のためと考えられる。
浮上時には安定していたシステムが回転周波数93Hzで下側の振れ回りを大きくし、タッチダウンする結果となった。また、このモデルにおいては、回転周波数60Hz、80Hz付近で花びらのようなロータの軌跡が確認できる。モデルの剛性モード2次の前向き、後向き振れ回りが存在する。この結果から、モデルに連成を考慮しても固定制御器のロバスト性だけでは、ジャイロ効果による影響を低減する効果は少ないと考えられる。
6.制御系設計と性能検証2
6.1 線形パラメータ依存モデル
実験では回転周波数80Hz近傍でジャイロ効果が著しく発生することから、回転周波数によりシステムが変動する線形パラメータ依存モデル(LPV)であると考えられる。MATLAB LMI control toolboxを用いてGS制御器を設計するにあたり、線形パラメータによって変動するシステム行列Aを以下のように時変システムと線形時不変システム(LTI)に分解して考える。
ここで、A22は、ジャイロモーメントの項を含むパラメータ変動行列である。回転周波数をスケジューリングパラメータとし、次の範囲で変化するものとする。
p=f p∈[0.1,100] (6.4)
6.2 ゲインスケジュール設計器設計
求めたLPVモデルに対してLMI制御理論により制御系設計を行う。スケジューリングパラメータに対応する最適な制御器は、回転周波数0Hzと100Hzに対応するLTI端点制御器(Kmax,Kmin)を式(6.5)により凸補間することで求められる。
GS制御器の周波数応答を図44に示す。モデルは4入力4出力で、さらに連成を考慮したことにより16個の周波数応答が存在するが、ここでは例として、X軸上側からの入力に対する周波数応答が示されている。また、設計の際に用いた重み関数を図43に示す。ロータの重心が磁気軸受の上側に存在し、バランスをとるために式(6.6)、式(6.7)のように、上側、下側で別の重みを用いている。
図44(a)、図44(b)より、Y軸の出力に対するコントローラのゲインが大きくなっていることが確認できる。これは、回転周波数が増加するとともに、連成方向へ影響に対する制御入力が大きくなることを意味する。
6.3 シミュレーション
6.3.1 H∞制御器との比較
GS制御器の閉ループ安定性を検証するため、ジャイロ効果を考慮したモデルでシミュレーションを行った。初期値応答にてH∞制御器とGS制御器の性能比較を行った。より実験機システムに近づけるために、一度切換条件を基に力制御入力から制御電流へと変換し、再び力制御入力に変換しなおしている。
なお、制御電流は実験と同様に1.5Aのリミッタを設けており、サンプリング周波数は実際の実験と同じ10kHzで行い、補償器は双一次変換により離散化したものを用いた。回転周波数はパラメータの変動に対する応答をとるため、浮上時の0Hzおよびジャイロ効果が著しく発生する80Hz(4800rpm)とした。浮上時0Hzでの初期値応答による出力変位の比較を図45に、そのときの制御入力を図46に示す。また、ジャイロ効果が著しく発生する80Hz(4800rpm)での初期値応答による出力変位を図47に、そのときの制御入力を図48に示す。シミュレーション条件として、X軸の上側に10μmのステップ目標値を0.01sから加えている。
図45、図47より、H∞制御器、GS制御器ともに安定化しているが、収束の速さが異なる結果となった。とくにGS制御器では、ジャイロ効果を考慮した影響により、Y軸方向の下側の応答では振動が少なく良好な結果を得ることができた。また、図45においても、H∞制御器に比べ素早く目標値に追従する良好な結果が得られた。ロバスト性を必要とするH∞制御器に比べ、GS制御器の端点コントローラ(Kmin)は0Hzで最適な設計がなされているためだと考えられる。
6.3.2 テーブルを用いたGS制御
実験システムへの実装を考えたとき、高周波領域を制御するために非常に短いサンプリング時間としていることと、4入力4出力システムであることに加え、剛性2次モードを制御する必要があるためモデルの低次元化を行うことができず、次数の大きい制御器を用いている関係から、サンプリングごとの離散化は計算処理が遅れるという問題がある。そこで、0Hzから100Hzまで10Hz間隔で11個の制御器を予め凸補間により求めておき、オフラインでそれぞれを離散化した制御器をテーブルとして用いて、スケジューリングパラメータによって切り換えるという方法を提案する(図139参照)。実装する制御器の数はDSPメモリ容量の関係より選択した。
テーブルを用いることで、GS制御器の閉ループ安定性が損なわれないかを、初期応答により検証した。シミュレーション条件は前節と同じである。浮上時0Hzの入出力を図49、図50に示す。また、制御器の切換時の応答を比較するため、70Hz(4200rpm)と80Hz(4800rpm)でそれぞれ凸補間して求めた制御器を用意しておき、0.1s地点で制御器の切換を行ったときの入出力を図51、図52に示す。ジャイロの影響が強く出る80Hz付近では若干の違いがあったが、安定性に問題がなく、良好な結果を得ることができた。
6.4 実験
テーブルを用いたGS制御器を用いて回転実験を行った。サンプリング周波数などの条件は、H∞制御器と同様とする。回転周波数0〜90Hz(5400rpm)での上側、下側におけるロータの軌跡および制御入力を図54〜図71に示す。
制御入力は、調和外乱に同期した半波が崩れたような波形となった。これは、回転周波数に依存する同期信号だけでなく、連成方向に対する入力が含まれるためであると考えられる。
浮上時だけではなく、回転実験においてもロータは原点付近に固定されており、ジャイロモーメントによる影響を十分に制御できていることを実験にて確認できた。また、剛性モードおよび弾性モードの後向き振れ回り運動による花びらのような軌跡が発生していない。以上のことから、ジャイロ効果による影響に対してGS制御器の有効性が示された。
しかし、回転周波数95Hz(5700rpm)でH∞制御器と同様にタッチダウンする結果となったことから、ジャイロ効果以外にも制御性能を劣化させる原因があると考えられる。
6.5 固有値解析
実験結果を考察するため、実験に用いたGS制御器について、パラメータ変動に対する閉ループ系固有値解析を行った。回転周波数を0Hzから100Hzまで5Hzずつ増加させたときのH∞制御器に対する複素平面を図53(a)に、ジャイロ効果を考慮したGS制御器に対する複素平面を図53(b)に示す。
GS制御器、H∞制御器はともに複素平面の左半面に位置しており、システムは安定である。しかし、プラントのパラメータ変動により、GS制御器の極がほぼ固定されているのに対して、いくつかの固有値が右平面に移動していることが確認される。図53(a)と図53(b)を比較すると、GS制御器がパラメータ変動に対しての安定性を補償していることを確認できる。しかし、回転周波数を200Hzにまで増加しても相変わらずシステムは安定しているため、実験において制御性能を劣化させている原因をモデル化する必要がある。
7.弾性モデルによる検証
7.1 閉ループ系安定性の考察
剛性モデルでは、ジャイロ効果を無視した制御器を用いても、考慮した制御器を用いても、閉ループはともに安定であった。しかし、回転実験では、100Hz付近で不安定化している。この不一致の問題に対して、弾性曲げモードも考慮して考察する。弾性モデルの導出は有限要素法によって行う。フライホイールを集中質量として、ロータを図72のように8要素に分割する。要素2と3、要素7と8の間に電磁石が配置されている。ここで、減衰と不釣合い振動は考慮しないものとする。図72のモデリングについて、ジャイロ効果を考慮したロータの運動方程式は次式となる。
Mは質量行列、Gはジャイロ反対称行列、Kは剛性行列、Uは制御入力ベクトル、Tは電磁石の設置場所を表す行列(M,G,K∈R36×36,TinR36×4)、qは状態ベクトルである(qinR36×1)。まず、フリーフリーロータに対して、固有振動数と軸回転数の関係を図73で示す。曲げ一次モードの前向き振れ回りモードと後向き振れ回りモードは回転後大きな分岐をすることがわかった。このことから、曲げ一次弾性モードの後向き振れ回りモードは、ジャイロ効果の影響を強く受けて100Hz付近まで下がってきている。この結果、運搬線と後向き振れ回りモードの交差周波数は110Hz付近で、ロータが100Hzを越えて回転すると、後向き曲げ共振点に接近していることがわかった。
7.2 モード分離と低次元化
100Hzを越えた高速回転の実現には、FEMモデルの剛性モードと曲げ一次モードのジャイロ効果による影響が重要となる。ここで、式(7.1)には反対称のジャイロ行列Gが存在するので、標準形のモード解析法を簡単に使うことができない。モード分離を行うため、新しいベクトル
を導入すると次式となる。
式(7.2)の固有値問題を次式により考察する。
式(7.4)は標準形式に似ているが、KとGの特性からGは相変わらず反対称行列になっている。しかし、このような固有値問題の解はn組の共役純虚数
とそれに対応しているn組の共役複素数の固有ベクトル
を持っていることがわかっている。そして、s=iwとz=u+iuを式(7.4)に代入し、実部と虚部を分けることにする。最後に、uとvに関連する式は次のような2つの固有値問題形式が得られる。
ここで、Kは正定対称行列である。式(7.5)はn組の重要なλを持ち、uとvは同じλに対応していることがわかる。次に、Mに対してコレスキー分解を行うと(M=RR−T)、次の標準固有値問題になる。
ここで、Φは対称正定行列である。λに対応している固有ベクトルはP=[u]となる。座標変換式z=R−TPξを設定し、式(7.2)に代入すると、モード分離した方程式(7.7)が得られる。ξ=|η ζ|はモード座標である。Θは式(7.7)で表すように、ブロック対角行列となる。
式(7.8)に基づいて、剛性モードと曲げ一次弾性バックモードを含むモデルの低次元化は次式となる。
ただし、A∈R10×10,B∈R10×4,C∈R4×10,D∈R4×4,Uは制御入力ベクトル(U∈R4×1)である。低次元化した前後のモードのボード線図を図74で示す。
7.3 シミュレーション
前節で作成した剛性モードと曲げ一次弾性バックモードを含む低次元化モデルが、実験と一致するモデルであるかを検証する。制御器は剛性モードのみを考慮して設計したGS制御器を用いた。サンプリング周波数は10kHzとし、X軸上側に10μmのステップ目標値を与えたときの初期値応答シミュレーションと実験の比較を図75に示す。
弾性モデルを用いることで、実験結果と同じ高周波がシミュレーションで励起されるようになった。浮上時における弾性モードの固有振動数と一致することから、低次元化モデルに曲げ一次弾性バックモードが含まれていることが初期値応答からも確認できる。しかし、低周波成分や収束時間が大幅に異なり、実験システムよりも安定化しやすいモデルであるといえる。この原因がインダクタンスや渦電流損失などアクチュエータの諸元によるものと考え、図76に示すようにGS制御器によって求められた制御電流にαという係数を掛ける。αを加えた閉ループでのシミュレーションを図77に示す。低周波成分は完全に一致はしていないが、オーバーシュートの振幅や立ち上がり時の振幅が実験結果に近づく有効な結果となった。なお、αの値は試行錯誤的に0.22とした。
7.4 固有値解析
係数αを加えたときと、加えないときの安定性の比較を、図78に示す閉ループの固有値解析にて行った。図78によりαを加えないときは固有値が実軸からかなり離れた地点に存在するため、安定であった。しかし、実験システムは安定ではあるものの、極は実軸付近に存在する。この現象は、シミュレーションと実験の不一致の原因の1つであったと考えられる。αを加えることで、極は右側に移動し、実験システムに近い極配置となった。また、前節のシミュレーション結果では、剛性2次モードは制御されていて、時系列応答には励起されていなかった。これについても、係数αをっ加えたときの極解析では剛性2次モードの極が安定化され、実験結果と一致する。周波数を実験でタッチダウンする100Hzとし、X軸上側に10μmのステップ目標値を与えたときの初期値応答を図79に示す。これまでのシミュレーションで100Hzにおいても安定していたGS制御器を用いたにもかかわらず、発散する結果となった。以上のことから、係数αを加えることで、低次元化弾性モデルは、実システムに近い応答を示すことが確認できる。
8.結論
本論文では、磁気軸受系型電力貯蔵フライホイールの制御に関する研究を行った。慣性力を増加させることを目的にフライホイールがロータに取り付けられているために、ジャイロ効果による前向き振れ回り運動や後向き振れ回り運動の発生、およびそれらの固有振動の変化が高速回転を妨げている。
そこで、本研究では、まず、ジャイロ効果の特性を考慮したモデリングを行った。プラントのA行列に回転周波数ωを定数として考慮し、H∞制御器を設計した。浮上時には安定していたシステムが回転周波数93Hzで下側の振れ回りを大きくし、タッチダウンする結果となった。下側が先にタッチダウンした原因は、重心から下側磁気軸受までの距離が上側に比べ約1.8倍長いため、下側のロータの軌道は上側より大きくなるためである。また、回転周波数60Hz、80Hz付近で、ロータは花びらのような軌跡を描いた。モデルの剛性モード2次の前向き、後向き振れ回りが存在することが確認された。この結果から、モデルに連成を考慮した固定制御器のロバスト性だけでは、ジャイロ効果による影響を低減する効果は少ないと考えられる。
次に、回転周波数によりシステムが変動する線形パラメータ依存モデル(LPV)であると考え、GS制御器を設計し、シミュレーションを行った。浮上時では、H∞制御器、GS制御器ともに安定化しているが、収束の速さが異なる結果となった。とくに、GS制御器では、ジャイロ効果を考慮した影響により、Y軸方向の下側の応答においても振動が少なく、素早く目標値に追従する良好な結果が得られた。ロバスト性を必要とするH∞制御器に比べ、GS制御器の端点コントローラ(Kmin)は0Hzで最適な設計がなされているためだと考えられる。
実験システムへの実装を考えたとき、高周波領域を制御するために非常に短いサンプリング時間としていることと、4入力4出力システムであることに加え、剛性2次モードを制御する必要があるため、モデルの低次元化を行うことができず、次数の大きい制御器を用いている関係から、サンプリングごとの離散化は計算処理が遅れるという問題が発生した。そこで、0Hzから100Hzまで10Hz間隔で制御器を予め凸補間により求めておき、オフラインでそれぞれを離散化した制御器をテーブルとして用いて、スケジューリングパラメータによって切り換えるという方法を提案した。実装する制御器の数はDSPのメモリ容量の制約より選択した。テーブルを用いることで、GS制御器の閉ループ安定性が損なわれないかを、初期応答により検証した。ジャイロの影響が強く出る80Hz付近での切換では、収束速度に若干の違いがあったが、安定性に問題がなく、良好な結果を得ることができた。
浮上時だけではなく、回転実験においても、ロータは原点付近に固定されており、ジャイロモーメントによる影響を十分に制御できていることを実験にて確認できた。また、剛性モードおよび弾性モードの後向き振れ回り運動による花びらのような軌跡が発生していない。以上のことから、ジャイロ効果による影響に対して、GS制御器の有効性が示された。しかし、回転周波数95Hz(5700rpm)で、H∞制御器と同様にタッチダウンする結果となった。
実験結果を考察するため、実験に用いたGS制御器について、パラメータ変動に対する閉ループ系固有値解析を行った。GS制御器、H∞制御器の極はともに複素平面の左半面に位置しており、システムは安定である。しかし、プラントのパラメータ変動した際、GS制御器の極は固定されているのに対して、H∞制御器ではいくつかの極が右平面に移動していることが確認された。しかし、ジャイロ効果を考慮した剛性モデルの回転周波数を200Hzにまで増加しても、閉ループの安定性は保証される。そこで、実験において制御性能を劣化させていると考えられる曲げ一次弾性バックモードを含む低次元化モデルを用いて検証を行った。弾性モデルを用いることで、実験結果と同じ高周波がシミュレーションで励起されるようになった。また、浮上時における弾性モードの固有振動数と一致することから、低次元モデルに曲げ一次弾性バックモードが含まれていることが初期値応答からも確認できる。しかし、低周波成分や収束時間が大幅に異なり、実験システムよりも安定化しやすいモデルであるといえる。この原因がアクチュエータの諸元によるものと考え、GS制御器によって求められた制御電流にαという係数を掛け、再びシミュレーションを行った。低周波成分は完全に一致はしていないが、オーバーシュートの振幅や立ち上がり時の振幅が実験結果に近づく有効な結果となった。
係数αを加えたときと、加えないときの安定性の比較を、閉ループの固有値解析にて行った。αを加えないときは、固有値が実軸からかなり離れた地点に存在するため、安定であった。しかし、実験システムは安定であるものの、極は実軸付近に存在する。この現象は、シミュレーションと実験の不一致の原因の1つであると考えられる。αを加えることで、極は右側に移動し、実験システムに近い極配置となった。また、前節のシミュレーション結果では、剛性2次モードは制御されていて、時系列応答には励起されていなかった。これについても、係数αを加えたときの極解析では、剛性2次モードの極が安定化され、実験結果と一致する。また、初期値応答を行ったところ、これまでのシミュレーションで100Hzにおいても安定していたGS制御器を用いたにもかかわらず、発散する結果となった。以上のことから、係数αを加えた低次元化弾性モデルは、実システムに近いモデルであるといえる。
今後の課題をしては、弾性モデルに係数αを加えたモデルを用いて、より良い性能を有する制御器の設計が必要と思われる。
ジャイロ効果を考慮した磁気軸受系のゼロパワー制御
1.3 本研究の目的
本研究の目的は、バイアス電流を流さないで、非線形を有したまま、非線形制御理論に基づいて、ゼロパワー切換制御法によって安定化を図り、かつ、消費電力を低減して、ロータが高速回転できる制御器を設計し、有効性を検証する。
1.3.1 モデリング簡単化
磁気軸受系では、運動方程式を求めるとき、ロータ系を考慮して、重心に関する状態方程式を得ることが一般である。しかし、実験装置においては、センサの観測点は重心の位置と異なっており、ロータの上、下部電磁石に近いところにおかれている。それで、制御器を設計するとき、センサからのフィードバック状態量は重心に関するものに変換しなければならないので、演算時間もかかり、精度も下がる。このような欠点に対して、重心位置でのロータ変位と電磁石に対応する点でのロータ変位、回転角と変位間の関係により、すべての電磁石に対してロータ重心に加えている電磁力と回転モーメントをロータ上、下部の電磁石により分離して考えると、最後に求めた状態方程式が簡単化される。すべての状態量はセンサからの変位信号のみに関連するものである。
1.3.2 ゼロパワー切換制御法
ゼロパワー切換制御の基本的な方法はフライホイールシステムのロータ部を剛体とみなし、ロータが1つの電磁石に接近するとき、接近した電磁石の制御電流を零にして、反対側にのみ制御電流を供給して、ロータが完全に平衡点になれば、一切の電流(パワー)を流さないといういうことである。さらに、制御器を設計するとき、制御入力は対向した電磁石間の吸引力として仮定する。求めた吸引力から切換法によって、実際の制御電流を求める。
1.3.3 非線形制御器の設計と性能検証
本論文は0.5KWh級磁気軸受フライホイールシステムに対して、評価関数の最適化を目指した制御理論に基づいて、LQR法により制御器を設計して、実験で検証する。LQR法のレギュレータ制御器を設計した上で、定常偏差をなくすため、サーボ系を付加したLQI制御器を設計する。実験の結果から、サーボ系を付加した場合は、回転速度は100Hz付近に達した。しかし、ジャイロ効果を考慮すると、システムが回転速度という変動パラメータに依存するLPVシステムになったため、普通のLTIコントローラでは厳密には補償できない。したがって、ゲインスケジュール型スライディング制御を提案する。実験の結果、ジャイロ効果の影響を補償したが、LQIコントローラと同じ所でタッチダウンしてしまった。つまり、ある周波数に到達すれば、弾性モードを考慮しないと、システムが不安定になることがわかった。そのため、浮上状態の加振実験により、回転周波数と固有振動数の関係を求める。この結果より、回転周波数が100Hz付近から、大きなピークが発生している。すなわち、100Hzは弾性モードのバックワード共振点と認められる。本論文では、弾性モデルの次数が高いため、非モデルベースのPID制御で130Hzまで増速できた。しかし、PID制御の弾性モデルのシミュレーションと実験結果が一致しない問題が発生しており、これについては今後考察する。
制御対象は、図1〜図3に示す磁気軸受装置である。
3.制御理論
本磁気軸受系では、バイアス電流を完全に回避できるため、電磁力と変位間の非線形関係を有したまま、非線形理論に基づいて、制御器を設計する。
3.1 線形2次形式評価模範による制御系設計
3.1.1 最適レギュレータ
評価関数を設け、それを最小とするように状態フィードバックによる最適制御入力を決定する設計法について述べる。可制御で線形な時不変システム
のもとで、ある評価関数を最小にする制御則が線形な状態フィードバック制御則となるためには、評価関数を以下のように2次形式とする必要がある。
ここで、制御目的の重み行列Qは非負定な対称行列、制御入力の重み行列Rは正定対称行列とする。2次形式評価関数式(3.2)で終端時間t→∞とした式(3.3)の評価関数
を最小にする最適制御入力は
で与えられる。ここで、Pは式(3.5)のリカッチ型代数方程式の正定対称行列であり、一意に決定される。
式(3.3)からわかるように、重み行列の定性的な設計指針としては、Qを大きくとれば制御性能が増し、Rを大きくとれば制御入力を小さくできることになる。目的関数と制御入力の間には、トレードオフの関係がある。
制御の目的関数として何を採用するかは、制御仕様によるが、振動系の制御問題では、位置エネルギ:(1/2)kx、運動エネルギ:(1/2)mxを採用する場合がある。また、たとえば加速度を抑制することを目的とする場合には、加速度は一般に
y=Cx+Du (3.6)
と、制御入力の直達項を含めて表されるから、
を評価関数に取り入れる必要がある。この場合には、クロスターム項を加えた次に2次形式評価関数を採用する。
この場合の最適制御入力は以下のように与えられる。
Pは以下のリカッチ方程式の一意正定対称行列である。
評価関数に2次形式を用いて線形な状態フィードバック制御則を導き、状態を原点に戻す閉ループ系を構成する制御系を線形2次形式レギュレータという。
3.2 リアプノフの安定性理論
3.2.1 内部安定性の定義
非線形時変システムのふるまいは、線形時不変システムのように指数関数で表されるわけではなく、一般に複雑である。したがって、安定性の精密な定義を行えば、多様な概念を考えることができる。連続系の場合と同様、離散値系にもリアプノフの安定の概念が適用される。今、次のようなシステムを考える。ここでは、そのうちのいくつかを説明する。
x=f(x,t) (3.11)
ここで、xはn次元状態ベクトル、fは時間tとxに関して連続な関数である。式(3.11)は任意の初期時刻tと初期状態xに対して、すべての時刻にわたって一意解を有する。また、t≧0における値をx(t,x,t)と表す。ただし、x(t,x,t)=xである。このシステムにおいて
x(t,x,t)≡x (3.12)
が成り立つ状態xを平衡状態と呼ぶ。平衡状態とは、式(3.11)の定数解であるから、すべてのtで
f(t,x)=0 (3.13)
を満たすものである。この式は非線形時変方程式であるから、定数解をいつも持つとは限らない。また、持つとしても唯一とは限らない。システムの平衡状態xの周りの振る舞いを考えるとき、xが状態空間の原点x=0であるとしても一般性は失われない。もしx≠0ならば、状態空間の座標系を移動して、新たなf関数に対する微分方程式は原点x=0を平衡状態として持ち、その解の振る舞いは式(3.11)と同じである。
安定性
安定性とは初期状態xを平衡状態x=0に近く取ることによって、解x(t,t,x)をx=0の近くに止めることができるという概念である。
定義1:任意の正数εと初期時刻tに対して、ある正数δ(t,ε)が存在し、‖x‖≦δなる初期状態xについて、すべての時刻t≧tで、‖x(t,t,x)‖≦εが成立するとき、平衡状態x=0は安定である。図80(a)を参照する。
一様安定性
安定性の定義では、解x(t)が平衡状態の近傍に止まるためには、どれくらい初期状態が平衡状態に近くなければならないかの距離が初期状態に依存して、初期時刻にかかわらず、だいたい同じであることを一様と定義する。
定義2:定義1において、正数δとして、初期時刻に独立なものδ(ε)が存在するとき、平衡状態x=0は一様安定であるという。微分方程式(3.11)が時不変、つまりその右辺の関数fが時間に独立で、非線形関数f(x)ならば、その解は初期時刻に存在しない。ゆえに、このときの安定性と一様安定性は等価である。
一様漸近安定性
一様安定性に加えて、解が平衡状態に時間とともに収束するとき、一様漸近安定性という。
定義3:一様安定したうえで、ある正数rと任意的な小さい正数μに対して時間T(μ,r)が存在し、‖x‖≦rなるすべての初期状態xと任意の初期時刻tについて、すべての時刻t≧t+Tで
‖x(t,t,x)‖≦μ (3.14)
が成立するとき、一様漸近安定であるという。図80(c)を参照する。
大域的一様安定性
解が平衡状態に収束するとき、その収束解の出発する初期状態の集合を吸収領域と呼ぶ。この吸収領域が状態空間の全体であることを大域的という語で表す。図80(b)を参照する。
定義4:平衡状態x=0は、任意の大きな正数rに対する初期状態xの集合‖x‖≦rを考えても、一様漸近安定である。
任意の正数ηに対してある正数ξ(η)が存在し、‖x‖≦ηなる任意の初期状態xとすべての初期時刻tについて、すべての時刻t≧tで、
‖x(t,t,x)‖≦ξ (3.15)
が成立するとき、大域的一様漸近安定であるという。
大域的一様漸近安定の定義は、単に一様漸近安定性の吸収領域を大域的にしただけでなく、条件が追加されている。この条件は一様有界性と呼ばれている。一様有界性は一様安定性に似ているが、一様安定性では、解の存在範囲に対する初期状態の範囲を考えて、一様有界性では、初期状態の範囲に対する解の存在範囲を見ている点である。したがって、一様有界であって一様安定でない平衡状態や、その逆のものも存在する。
3.2.2 リアプノフの安定判別法
微分方程式の平衡状態が、前項で述べた安定性のどの性質を持つかを調べる方法としてリアプノフの安定判別法と呼ばれる方法がある。解の平衡状態からの距離を時間的変化が状態のスカラ関数を用いて評価されるもので、解を求めることなく、解析的に安定性を調べることができる。このスカラ関数は、平衡状態からの距離の概念を拡張したもの、または、状態が物理的変数ならば、その変数に対応する要素が持つポテンシャルエネルギの概念を拡張したものと見なすことができる。
今、時間tと状態xを変数とするスカラ関数(t,x)を考える。tとxに関して連続微分可能で、すべてのtでV(t,0)=0とする。そして、この関数に対して、以下の性質を定義する。
α(σ)は連続かつσに関して非減少の1変数スカラ関数で、α(0)=0かつσ>0に対してα(σ)>0である。すべてのt,xについて
α(‖x‖)≦V(t,x) (3.16)
が成立するようなα(σ)が存在するとき、V(t,x)は正定であるという。
式(3.16)を満たすα(σ)で
となるものが存在するとき、V(t,x)は半径方向に非有界であるという。
α(σ)と同様の性質を持つ関数β(σ)が存在し、すべてのt,xについて
V(t,x)≦β(‖x‖) (3.18)
が成立するとき、V(t,x)はデレクセントであるという。これは、‖x‖が減少することについて、V(t,x)も一様に減少するという意味である。
次に、時刻tで状態がxであるとして、その点に式(3.11)の解に沿ったV(t,x)の時間微分V(t,x)を考える。V(t,x)は
と表され、次の性質を定義する。
すべてのt,xについて
V(t,x)≦0 (3.20)
であるとき、V(t,x)は準負定であるという。
α(σ)と同様の性質を持つ関数γ(σ)が存在し、すべてのt,xについて
V(t,x)≦−γ(‖x‖) (3.21)
が成立するとき、V(t,x)は負定であるという。
以上の準備のもとに、リアプノフの考えに基づく安定定理を述べる。
以下の性質を持つ関数V(t,x)が存在すれば、式(3.11)の平衡状態x=0について、次のことが言える。
V(t,x)が正定で、V(t,x)が準負定ならば、安定である。
V(t,x)が正定かつデレクセントで、V(t,x)が準負定ならば、一様安定である。
V(t,x)が正定かつデレクセントで、V(t,x)が負定ならば、一様漸近安定である。
V(t,x)正定かつデレクセント、かつ半径方向に非有界で、V(t,x)が負定ならば、大域的一様漸近安定である。
定義から明らかなように、安定性、一様安定性、一様漸近安定性は平衡状態近傍の解の性質である。したがって、この定理の条件は、平衡状態の近傍で成立すれば十分である。この定理が重要なのは、非線形微分方程式を解くことなく、平衡状態を知ることができる点である。これらの定理の条件を満たす関数をリアプノフ関数という。
3.2.3 コントロールリアプノフ関数(CLF)
次に、前項のリアプノフ関数をより拡張した、コントロールリアプノフ関数について述べる。
次のような時不変システムを考える。
x=f(x,u),x∈R,u∈R,f(0,0)=0 (3.22)
ここで、制御入力uにフィードバック制御則αを代入して得られる閉ループ系
x=f(x,α(x)) (3.23)
が平衡点x=0において大域的漸近安定となるようなα(x)を設計することを考える。V(x)をリアプノフ関数の候補とすると、式(3.23)が安定であるためには、V(x)≦−W(x)を満たす必要がある。ここで、W(x)は正定関数である。すべてのx∈Rに対して
を満たすようなαを見つけるという問題に帰着する。しかし、この問題は難しい問題である。なぜなら、式(3.22)を安定化する制御則は存在するかもしれないが、V(x)やW(x)の選び方によっては式(3.24)を満たさない可能性があるからである。そこで、望ましいV(x)やW(x)を選択することができるシステムは「コントロールリアプノフ関数を所有する」と言われる。以下のその概念を明確にする。
定義2.4 連続正定関数で半径方向に非有界な関数V:R→Rが次式を満たすとき、V(x)をコントロールリアプノフ関数と呼ぶ。
また、次式で表されるようなシステム
x=f(x)+g(x)u,f(0)=0 (3.26)
の場合、コントロールリアプノフ関数の不等式は以下のようになる。
もしV(x)を式(3.26)のコントロールリアプノフ関数とすると、ソンタックの公式(Sontag's formula)により、すべてのx≠0に対して連続な安定化制御則α(x)は以下のように一意に与えられる。
ここで、式(3.27)は
のときのみ条件を満たすことに注意しなければならない。この場合、式(3.28)は
となる。
さらに、式(3.26)に対する安定化制御則の特徴として、α(x)はコントロールリアプノフ関数V(x)が次のような条件を満たすときのみ、x=0で連続となる。どのε>0に対してもx≠0のとき、|x|<δを満たすδ(ε)>0が存在し、|u|<εなるuが次式を満たすとき
制御系設計を用いる際のコントロールリアプノフ関数の主な欠点は、ほとんどの非線形システムはコントロールリアプノフ関数が未知であるということである。また、それと同じくらい安定化制御則を設計するのは困難である。しかし、バックステッピング法を用いれば、コントロールリアプノフ関数を見つけることと、安定化制御則を設計するという2つの課題を同時に解決することができる。この手法を始めるにあたって、少なくともまず、スカラシステムに対してコントロールリアプノフ関数V(x)と安定化制御則α(x)を見つけられるようにならなければならない。幸運なことに、スカラシステムに対してはV(x)=x/2がいつも妥当なコントロールリアプノフ関数であり、不等式(3.27)を容易に満たす。
3.3 スライディングモード法
制御系の構造を変える理論は可変構造制御理論と呼ばれ、その中で最も理論的に体系化されているのがスライディングモード制御理論である。その特徴として優れたロバスト制御系が構築できるといったことが挙げられ、今日システムの安定化やサーボ系をはじめとして、様々な制御目的に適応できるまでに理論が進んでいる。
3.3.1 スライディングモードの存在条件
スライディングモード制御では、システムの位相空間上での挙動は到達モードとスライディングモード2つに分けられ、状態が超平面の方向に向かい、そして超平面に辿り着く条件到達条件と呼ばれる。この到達条件を満足していれば、到達モードは有限時間の間に超平面に到達し、マッチング条件を満たす外乱に対しロバストになる。これらのことから、スライディングモード制御を実現するためには以下の手順が必要となる。
(1) 与えられたプラントより低次数で、一般には(システム次元:n)(入力次元は:m)の望ましいシステムダイナミクスを表すための切換面を設計すること。
(2) 切換面の外にあるどのような状態量も、有限時間に切換面に到達するような可変構造制御入力u(t)を設計すること。
これらは、「スライディングモードコントローラを設計する」ことに他ならない。スライディングモード到達条件を満足するために、様々なアプローチが提案されているが、本研究ではリアプノフ関数法を適用する。今、リアプノフ関数の候補を次のように選ぶ。
V=σ・σ/2 (3.32)
このとき、包括的なスライディングモード到達条件は次式で与えられる。
V=σ・σ≦0 (3.33)
この到達則を満足させるように可変構造制御入力を決定することが重要である。
3.3.2 等価制御法による解析
スライディングモードが存在しているとき、システムは非線形性の最も強いスイッチング入力のため、解析などが著しく困難となる。このスイッチング入力を連続入力で置き換えることにより、解析および設計の見通しがよくなる。システムは
x=Ax+Bu
σ=Sx (3.34)
と定義し、A∈Rで、B∈RとS∈Rをプルランクとする。式(3.35)において、スライディングモードが存在すると
σ=0 (3.35)
式(3.36)の関係を得られる。
σ=Sx=S(Ax+Bu)=0 (3.36)
よりdet(SB)≠0ならば等価制御入力が以下のように求まる。
eq=−(SB)−1SAx (3.37)
この等価制御入力ueqはシステムの理想的な連続制御入力であり、ueqを元のシステムの式(3.34)に代入することによって、入力の数だけ低次元化された以下のようなシステムが得られる。このシステムを等価制御系という。
x={I−B(SB)−1S}Ax (3.38)
この閉ループの固有値は伝達関数S(sI−A)−1Bの(n−m)個の零点とm個の原点極からなっている。スライディングモード制御の考え方法を示すために、次式のように表すことができる線形時不変系の制御対象を考える。簡単のため、制御対象は1入力(m=1)、システムの次数はn次とし、正準形に変換されているものとする。
スライディングモード制御系の構造は、次式のような切換関数σによって支配される。
ここで、正則行列sは任意であるので、s=Imとする。切換関数は、位相平面をσの符号が異なるように分割する。この切換関数の符号によって制御入力を切り換えることにより、システムの状態を切換超平面上に拘束し、入力の数だけ低次元化された望ましいシステムを構成する。切換超平面上に状態を拘束されたシステムを等価制御系といい、この系について考えることにより、スライディングモードにあるシステムの動特性を解析できる。
超平面上においては式(3.40)に示す切換関数σは0であるため、
(t)=−s(t) (3.41)
となり、xがxのサブシステムへの入力となる。すなわち、式(3.39)は
(t)=(A11−A12)x(t)σ
=s(t)+s(t)=0 (3.42)
となり、低次元化された遅いxのシステムと早いシステムであるσ=0とに分離された、マッチング条件を満たすパラメータ変動や外乱の影響を受けないシステムとなる。上式に示されたように、スライディングモードの動特性は行列Sにより決められる。
3.3.3 スライディングモード到達条件とチャタリング低減
ここでは、超平面上にシステムの状態を到達させ、拘束するための条件、すなわちスライディングモード到達条件を満たす制御入力を求める。先にも示したようにリアプノフ関数を次式のように置く。
V=σ/2 (3.43)
このとき、スライディングモード到達条件は、次式を満足すればよい。
v=σσ<0 (3.44)
切換関数は次式で表すことができる。
ただし、z(t)は目標値をrとして出力との誤差積分値を算出したものとする。このとき式(3.44)のスライディングモード到達条件を満足するためには、制御入力u(t)が以下の条件を満たさなければならない。
制御入力を次式のような形とする。
ここでsqn(σ)に関する符号関数である。このとき、超平面上でのシステムの状態、すなわち等価制御系の応答と外乱が既知であれば、式(3.40)を常に満足させることが可能となる。しかし、実際に外乱などの観測が不可能な場合が多く、そのため、切換ゲインkを適当な定数とするがいっぱいである。切換幅をあまり大きく取りすぎると、制御入力にチャタリングを引き起こす原因となる。また、実際の連続系のプラントに使用するとき、アナログ切換装置には何らかのおそれが存在する。また、ディジタルで使用する場合には、サンプリング周期を無限小にすることができず、一種の遅れが存在する。このような理想的でない装置を使うと、切換周波数を無限に大きくすることは不可能であり、現実のスライディングモードは切換面をすべることにはならず、その近傍でチャタリングすることになる。その制御入力のチャタリングにより制御対象をモデル化する際に無視した高周波領域を励振し、スピルオーバを引き起こす原因となる可能性がある。このようなチャタリングを低減させるため、本研究では次のような平滑化定数を制御入力に導入する。
切換制御入力を平滑化することによりチャタリングの低減が可能となるが、超平面近傍でスライディングモード到達条件を満たすことができず、切換超平面からの偏差が発生する。このとき、式(3.50)は
となる。上式において定常的な外乱などが存在するとき、切換関数σの値がσ→∞となるとき、式(3.50)の右辺→0となり、切換幅kを定数とする場合には左辺=右辺となるσで釣り合ってしまう。これにより、マッチング条件を満たすシステムパラメータ変動および外乱に対し不感であると言うスライディングモード制御の特徴が失われることになるため、平滑化定数δは必要最小限の大きさにするべきである。また、このときのはサンプリングタイムと密接な関係をとっており、離散時間系の設計をする必要があるものと思われる。
4.モデリング
4.1 ジャイロ効果を考慮しない場合のモデリング
使用する実験装置は図81の左図で説明したような5軸制御型であるが、z方向の浮上はPID制御によって制御されており、残ったラジアル方向の4自由度だけを本研究の制御対象と考えている。右図はロータのX、Y軸方向の運動形式が全く同じ対称なので、X−Z平面だけを示す。式(4.1)はロータの重心に対する運動方程式である。
ここで、Fxu、Fxl、Fyu、FylはロータのX、Y軸方向の上下部に対向した電磁石間の吸引力差である。それぞれは式(4.2)のようになる。
重心に対する運動方程式から、状態空間モデルを得られるが、状態量は重心位置でのロータ変位と回転角であり、しかし、実験において、センサの観測点は重心の位置と異なって、ロータの上下部の電磁石に近いところに置かれている。その問題を解消するため、モデルの簡単化を行う。まず、図81の右側の図を見ると、重心位置でのロータ変位と電磁石に対応する点でのロータ変位、さらにそれぞれの回転角と変位間の関係は式(4.3)のようになる。
さらに、すべての電磁石に対してロータ重心に加えている電磁石と回転モーメントをロータ上下部の電磁石により分離して考えると、式(4.3)を式(4.1)に代入して、最後に運動方程式は式(4.4)のように簡単となる。
係数a、aは式(4.5)となる。
式(4.4)によって状態方程式は以下のように表される。
ここで、x、xは変位と速度の状態量、制御入力Uは対向した電磁石間の吸引力差である。
それぞれのパラメータを表4.1に示す。
5.非線形制御器設計と性能検証1
5.1 LQI制御器設計
5.1.1 レギュレータ制御器設計
まず、第3章に述べたバックステッピング制御理論により、状態変位はx、速度はxとおき、システムは式(5.1)のような2次系となる。
=x
=BU (5.1)
ここで、x=(x)、x=(x)
U=(Fxuxlyuyl)
評価関数は式(5.2)となる。
ここで、
ように設定する。さらに、目標値入力に定常偏差なく追従するサーボ系の設計を行う。ここで、rを一定目標値とするとき、制御問題は閉ループ系を安定し、かつ、出力yを目標値に一致させることである。この場合、目標値と出力の誤差e=r−yの積分xを含めた式(5.3)のような拡大状態方程式を得る。
ここで、x=[x ]とすると、評価関数は式(5.4)となる。
評価関数を最小にする状態フィードバック制御を考える。状態フィードバック制御入力は式(5.5)となる。
ブロック線図を図82に示す。
5.1.2 制御電流の切換法
実験するとき、制御入力は対向した両電磁石間の吸引力ではなくて、端的な電磁石に流している電流であり、それで、求められた吸引力の正負により2対の電磁石の切換方法に基づいて電流を逆算する。ここで、ロータのX軸方向の電磁石の切換法を詳細に述べる。
1) Fxu≧0のとき
xu≧0のときは、図81において、電磁石1が吸引すればよい。そのときの力と電流iの関係式(i=0として)
から、iを以下のように示す。
2) Fxu<0のとき
xu<0のときは、図81において、電磁石3が吸引すればよい。そのときの力と電流iの関係式(i=0として)
から、iを以下のように示す。
下部についても同様に考えることができる。
1) Fxl≧0のとき
xl≧0のときは、図81において、電磁石5が吸引すればよい。そのときの力と電流iの関係式(i=0として)
から、iを以下のように示す。
2) Fxl<0のとき
xl<0のときは、図81において、電磁石7が吸引すればよい。そのときの力と電流iの関係式(i=0として)
から、iを以下のように示す。
この切換条件によって吸引力を各電磁石の電流に変換し、電磁石の出力とすることで制御を行う。
5.1.3 シミュレーション
図83(a)はタッチダウンから平衡点までの初期値と0.05秒時に、50Nの外乱を印加したインパルス応答。この結果より、システムが整定時間が早い、ロータが中心に行って、良い安定性がわかった。図83(b)は制御器設計するとき、仮想的な力制御入力を示す。この図より、ロータが平衡点のとき、対向した電磁石間の電磁石は零になり、その後、一瞬にインパルス外乱を入れると、外乱と等値な電磁力を同時に発生して、影響を打ち消した、良いロバスト性を有することがわかった。図84は、切換条件に基づいて、力制御入力から実際の制御電流に引き換えることを示す。ここで、iとi、iとiはロータの上部に対向している電磁石中の電流。iとi、iとiは下部の電磁石電流。0.05秒にインパルス外乱の影響で電流が急に発生した、再び零になることから、最終にシステムの消費電力が零になることを示す。図85〜図88は、回転速度を50Hz、100Hzに設定したときに対応しているそれぞれの制御器のシミュレーション結果。
5.1.4 実験結果
実験では、用いた制御器はシミュレーションと完全に同じものである。制御器をコンパイルして、サンプリング時間は0.125msとする。DSPを用いて、4つの変位センサから、磁気軸受の位置情報をAD変換器を通して入手し、切換条件によって8つの制御電流に変換して、アンプに入り増幅された後アクチュエータを駆動して、実験を行う。実験での各装置の関係と行う方法を図89で説明している。
実験では、Z軸方向がもうPID制御されたと前提して、ロータはタッチダウン状態からの浮上と回転実験を行う。図90はロータが浮上する状況を示す。上はリサージュ波形であり、真ん中は位相のパワースペクトルである。そして、下はX軸方向の制御電流である。この図からみると、上側と下側両方とも中心の一点に収束し、定常偏差がなく、安定に浮上することがわかる。図91〜図97は、ロータが回転しているとき、各回転段階での軌跡、変位のパワースペクトルと制御電流である。結果より、上下部のロータ軌跡が中心に行ったり、戻ったり繰り返しているが、85Hzの回転周波数を超えて、5700rpmの回転速度に達した。さらに、図94と図95の制御電流から見ると、電流iの谷はちょうど対向するiの波の頂上である。すなわち、電流がきちんと切り換えしていることがわかる。しかし、ステップ応答が遅く、下部ロータの軌跡が大きくなることについて、ゲインのパラメータを調節し、下部制御入力を増大させるが、50Hz付近でジャイロ効果が出始め、安定性が悪くなった。
5.2 実験結果の分析
図90〜図97の結果から、ロータを定常偏差なく、中心の平衡点に収束させることができ、電流もきちんと切り換えしていることがわかる。しかし、回転時には、上下部のロータ軌跡は中心に行ったり戻ったりして、97Hzでタッチダウンした。図97の軌跡から見ると、花びらのような軌跡が発生しており、それはジャイロ効果により後向き歳差運動が発生していると考えられる。つまり、回転速度が上がることによってジャイロ効果が強くなって安定性が崩れてしまったことがタッチダウンする原因と思われる。その問題を解決するため、ジャイロ効果を考慮したモデルを作った。
5.3 ジャイロ効果
磁気軸受を用いるロータは、比較的高速回転のものが多いので、ジャイロ効果が問題となる。ジャイロ効果というのは、高速フライホイールが傾き運動をするときに発生する作用である。この効果により、次の特徴的な性質が発生する。
・停止時には1つである固有振動数が前回り振れ回りモード(フォワードモード)と後回り振れ回りモード(バックワードモード)に2つに分かれ、ジャイロ効果の大小によって変化幅が決まる。
・ロータのX、Y軸の振動が連成し、振れ回り軌跡が円に近くなる。このジャイロ効果より、ロータ系は磁気軸受にとって回転数に伴って振動特性が変化するとともに、X、Y方向が連成する制御対象となるので、磁気軸受の制御特性を決める上で大きな障害となる。
ここで、ジャイロモーメントを詳しく解析する。まず、図98に示すように、フライホイールがX軸(Y軸)に向け撓んで、そして傾いたとき、自らのZ軸に沿って回っているので、Y軸(X軸)に関する回転モーメントを生じることである。この効果は、回転速度の増大に従って強くなっていく。結局は、フライホイールは前向き固有振動と後向き固有振動を有することになる。
新しい座標系によると、角運動量の成分は次式で表される。
ここに、θ、θ、θはフライホイールの角変位、IはX軸、Y軸に関する慣性モーメント、IはZ軸に関する極慣性モーメントである。空間に固定された座標系(x,y,z)に関して運動方程式を立てるので、角運動量の成分を固定座標系へ投影すると、その成分は図98より
となる。ただし、角度はすべて微小とした。角運動量の法則による式(5.7)を時間で微分して、さらにθ=−ωを代入すると、X軸、Y軸に関する回転モーメントは以下のように得られる。
ここで、−ωIθ、ωIθの項はいわゆるジャイロ効果の影響を示すものである。
5.4 ジャイロ効果を考慮した場合のモデリング
ジャイロモーメントを考慮したロータの重心に対する運動方程式は式(5.9)である。
前節にも述べたようにモデルを簡単化して、最終のモデルは式(5.10)で示す。
式(5.10)によって状態方程式は以下のように表される。
ここで、x、xは変位と速度の状態量、制御入力Uは対向した電磁石間の吸引力差である。
そして、ジャイロ効果を考慮したモデリングに今のLQI制御器を適用して、根軌跡は図99に示す。
この図から、回転速度が増加することにより閉ループの極はますます虚軸に近づくことがわかる。つまり、閉ループのA行列の固有値は回転速度により変わっていくLPVシステム(Linear Parameter Varying system)である。
6.非線形制御器設計と性能検証2
6.1 ゲインスケジュール型スライディングモード制御系の設計
前章で求めたモデリングはLPVシステムである。このLPVシステムに対してゲインスケジュール型スライディングモード制御を提案する。
6.1.1 ゲインスケジュール型H∞制御超平面の設計
次の正準系システムのプラントモデルを考える。
とくに、制御システムをサーボ系と見なすとすれば、誤差信号は次のように表現できる。
e=r−Cx (6.2)
この制御系において、超平面を次式のように定義する。
φ=S(x)+x (6.3)
ここで、S(x)はxの線形オペレータである。定義された切換関数は従来の切換関数と比べると新しい状態変数zによるダイナミクスを有する。
z=F(w)z+G(w)e (6.4)
S(x,z)=−H(w)−L(w)e (6.5)
そして、式(6.1)と式(6.5)を組み合わせると、拡大システムは次のように得られる。
また、式(6.3)から
=Hz−LCx+Lr (6.8)
を得られる。よって、超平面上ではシステムの状態方程式は次式のように低次元化される。
時変パラメータを用いた制御系は図100のとおりである。
しかし、実システムではジャイロ項はA22に入っているから、そのままでは適用できない。そこで、下のようなフィルタを使うことにする。
1/(0.001s+1) (6.10)
プラントの状態空間モデルとフィルタを組み合わせると、次の拡大系を得る。
そして、図100は図101のようになる。
式(6.7)の超平面に対して、リアプノフ関数Vを次式のように定義する。
V=φφ/2 (6.12)
閉ループ系を安定するために次式を満足しなければならない。
V=φφ<0 (6.13)
超平面上に状態が拘束されているとすると
φ=φ=0 (6.14)
上の式より、制御入力ueqは次のように与えられる。
本研究では、L(ω)は0にする。さらに、式(6.3)により
式(6.16)で与えられる安定条件を満足する制御入力を次のように選ぶ。
ここで、非線形入力は次のように選ぶ。
6.1.2 コントローラの計算
式(6.15)の中のH(ω)、F(ω)、G(ω)、L(ω)つまり制御器をMATLABのLMIコントロールツールボックスを使用して設計した。LPVシステムのボード線図を図102に示す。ここで、一番目の入力対4つの出力のボード線図しか載せていないが、その他はほぼ同じため、省略する。破線は変動パラメータが最小値のプラントのボード線図、実線は変動パラメータが最大値のボード線図。
変動パラメータが最大値のプラントのボード線図から200Hz付近にピークがあるので、それに応じる重み関数とコントローラのボード線図を図103と図104に表す。
6.2 シミュレーション結果
6.2.1 台形近似法によるリアルタイム離散系
制御器の離散化を行うため、連続時間での制御器のダイナミクスを離散時間でのダイナミクスで近似する必要がある。前節に設計した制御器について、サンプリング時間をTとし、時刻kTにおける状態をx(kT)=xと表すことにする。また、時刻[kT,(k+1)T]において、スケジューリングパラメータα(t)および観測量y(t)は、時刻kTでの値で近似できると仮定する。すなわち、kT≦t<(k+1)Tにおいて
とできると仮定する。このときに、次の台形近似の定理が成り立つ。
この定理を証明すると、仮定より、時刻(k+1)Tにおける状態xk+1について
が成り立つ。この式を台形近似すると、
となる。さらに、時刻kTの項と(k+1)Tの項に分けると、
となる。ここで、
とおくと、式(6.24)は
と変形される。さて、今
が成立する。したがって、
が存在すれば、式(6.26)は
ここで、式(6.25)を適用すると、
となる。これより、
が導かれる。
また、式(6.21)も
が存在すれば、式(6.25)の関係を用いて、同様に導くことができる。図105は、タッチダウンから平衡点までの初期値応答と0.05秒に50N外乱を印加したときのインパルス応答を示す。さらに、0.1秒にバックステッピング制御器と同じようにロータ上部のX軸方向に0.02mm、Y軸方向に0.01mmの目標値を入れたステップ応答を示す。結果より、LQI制御器とほぼ同じ性能を有し、さらに、ステップ応答は速い。図106は、4個の切換関数は零になり、状態量が超平面に拘束されて、平衡点に拘束されたことを示す。外乱があるとき、切換関数が上がることが明らかにした。図107は仮想的な力制御入力であり、図108および図109はその力制御入力から切換法によって逆算した制御電流を示す。0.05秒と0.1秒の電流ピークはそれぞれのインパルス外乱とステップ信号で引き起こされている。
6.3 実験結果
さらに計算を簡単にするため、式(6.30)は
に変化する。しかし、次数が高いとサンプリング時間が短いため、DSPの演算が間に合わなくなって実験できなくなった。その問題に対して、MATLABで離散化してから凸補間するという方法を提案する。
前のシミュレーションと同じように図110はタッチダウンから平衡点までの初期値応答と0.05秒に50N外乱を印加したときのインパルス応答を示す。さらに0.1秒にバックステッピング制御器と同じようにロータ上部のX軸方向に0.02mm、Y軸方向に0.01mmの目標値を入れたステップ応答を示す。それと図105を比べて見たら、やはり離散化してから凸補間する方法の方に性能が若干悪くなってとくにステップ応答が遅れた。しかし、まだ許容範囲であると思われる。実験においては、制御器はシミュレーションの場合と完全に同じものを用いている。実験では、Z軸方向がもうPID制御されたと前提して、ロータはタッチダウン状態からの浮上と回転実験を行う。図111はロータが浮上する状況を示す。上はリサージュ波形であり、真ん中は位相のパワースペクトルである。そして、下はX軸方向の制御電流である。この図からみると、上側と下側両方とも中心の一点に収束し、定常偏差がなく、安定に浮上することがわかる。図112〜図120は、ロータが回転しているとき、各回転段階での軌跡、変位のパワースペクトルと制御電流である。
6.4 実験結果の分析
確かに三角波のような形で、正負にスイッチングをしている。右側図は力制御入力から逆算した制御電流結果より、どんな回転周波数にしても、LQI制御器に比べると、電流もはっきりオン・オフしているし、円軌跡もきれいになっていることがわかる。さらに、図121に示す今回の根軌跡と図99と比べてみると、固定コントローラよりゲインスケジュール制御の方が根の動きが小さいことが見える。
以上の結果より、ゲインスケジュール型スライディングモード制御の安定性はLQI制御器より良くなっていることがわかった。けれども、LQI制御と同じように90Hzから安定性が悪くなって、100Hz付近ではタッチダウンした。前に残していた100Hzを超えない問題を解決していなかった。
7.弾性モデルとPID制御
7.1 弾性モデリングの導入
剛性モデルでは、ジャイロ効果を無視した補償器を用いても、考慮した補償器を用いても、閉ループ系はともに安定であった。しかし、回転実験では、100Hz付近で不安定化している。この不一致の問題に対して、弾性曲げモードも考慮して考察する。弾性モデルの導出は有限要素法によって行う。フライホイールを集中質量として、ロータを図122のように8要素に分割する。要素2と3、要素7と8の間に電磁石が配置されている。ここで、減衰と不釣合い振動は考慮しないものとする。
図122のモデリングについて、ジャイロ効果を考慮したロータの運動方程式は次式となる。
Mは質量行列、Gはジャイロ反対称行列、Kは剛性行列、Uは制御入力ベクトル、Tは電磁石の設置場所を表す行列(M,G,K∈R36×36,T∈R36×4)、qは状態ベクトルである(q∈R36×1)。
まず、フリーフリーロータに対して、固有振動数と軸回転数の関係を図123で示す。曲げ一次モードの前向きと後向きは回転後大きな分岐をすることがわかった。このことから、曲げ一次弾性モードの後向き固有値は、ジャイロ効果の影響を強く受けて100Hz付近まで下がってきている。この結果、運搬線と後向きモードの交差周波数は100Hz付近で、ロータが100Hzを越えて回転すると、後向き曲げ一次共振点に接近していることがわかった。
7.2 PID制御
求めた弾性モデリングは72次であり、モデルベースの制御を実現できない。そのため、非モデルベースのPID制御を提案する。ブロック線図は図124に示す。
PID1はシステムを安定することを図るコントローラである。すなわち、PID1の制御でタッチダウン状態から浮上する状態になる。ジャイロ効果を考慮すれば、X、Y方向がお互いに干渉する。PID2はX、Y方向の信号を交差してフィードバックするというクロスフィードバックコントローラである。つまり、システムが安定する上ジャイロ効果を補償するためにお互いに干渉する信号をクロスフィードバックさせている。用いたPID制御器のボード線図を図125に示す。
7.2.1 PID制御の実験結果
図126はロータが90Hzで回転している状況を示す。上はリサージュ波形であり、真ん中は位相のパワースペクトルである。そして、下はX軸方向の制御電流である。この図から見ると、上側と下側両方とも中心の一点に収束し、定常偏差がなく、安定に浮上することがわかる。図127〜図133は、ロータが回転しているとき、各回転段階での軌跡、変位のパワースペクトルと制御電流である。
7.2.2 実験結果の分析
PID制御の結果を見ると、固定コントローラであるため円軌跡と電流の形がどっちでもきれいではないけれども、回転速度が前より30Hzくらい上がった。クロスフィードバックコントローラがある程度に弾性後向き一次モードの影響を補償していることがわかった。130Hzまで増速できるPIDコントローラにより、低次元化した弾性モデルのシミュレーションと実験の比較を図134に示す。実線が回転数が0Hzに設定した弾性モデルのシミュレーションであり、破線がPID制御器で浮上時実験データである。両方とも、0.037秒に0.1*10−4mのステップ信号を入れてその応答を見る。
さらに、右下の図を拡大して図135に示す。
図135が示した高周波数の振動が弾性モードと思われ、数えてみると170Hzくらいになっており、図123の一番上の弾性曲げ一次モードの0Hzのときの初期値とほぼ一致しているが、ステップ応答の結果からシミュレーションと実験結果に一致しないことが発生しており、これについても考察を行う。図136は今の入力を0.2倍にしたシミュレーション結果である。
この図から見ると、制御入力を0.2倍にすると実験結果がほぼ一致することがわかる。さらに、全入力と制御入力0.2倍にする閉ループの0Hzから150Hzまでの根軌跡を図137と図138に示す。
2つの図を比較して見ると、全入力の方に剛性一次モードは65Hzであり、剛性二次モードは80Hzである。弾性一次曲げ一次モードに対応する根は虚軸に近づくが、全然安定の領域である。それは実験結果と一致しない所である。逆に0.2倍入力の場合は、剛性一次モードが25Hzくらいであり、剛性二次モードが見えない。それと図135の実験データを一致する。さらに、140Hzになると、弾性一次曲げモードに対応根が虚軸に近すぎで、安定性が悪くなる。それも実験の方に一致する。しかし、なぜ働いている入力が実際の0.2倍しかないのかがまだ考察中である。おそらく、ハードウェアとか電気系とかの問題と思われる。
8.まとめ
本論文では、磁気軸受支持型電力貯蔵フライホイールの制御に関する研究を行った。大きなフライホイールが付けられているので、きわめて不安定なシステムである。従来の方法では、ロータが平衡点に達しても、バイアス電流を流さなければならないので、消費電流が大きくなる。大変位のとき、制御性能が悪くなるという欠点がある。この問題に対して、本研究はバイアス電流を使わないで、非線形を有したまま、現代制御の非線形理論に基づいて、制御器を設計、有効性を検証した。
本研究においては、まず、線形2次形式評価規範によるサーボ付き最適レギュレータ制御器を設計して、シミュレーションから、良い結果が得られたが、実験の結果からロータを定常偏差なく、中心の平衡点に収束させることができ、電流もきちんと切り換えしていることがわかる。しかし、回転時には、上下部のロータ軌跡は中心に行ったり戻ったりして、93Hzでタッチダウンした。図97の軌跡から見ると、花びらのような軌跡が出てきた。それはジャイロ効果による後向き歳差運動軌跡と考えられる。つまり、回転速度が上がることによってジャイロ効果が強くなって安定性が崩れてしまったことがタッチダウンする原因と思われる。その問題を解決するため、ジャイロ効果を考慮したモデルを作った。そして、ジャイロ効果を考慮したモデリングに今のLQI制御器を適用して、図99に示した根軌跡から回転速度が増加することにより閉ル−プの極はますます虚軸に近づくことがわかる。つまり、閉ループのA行列の固有値は回転速度により変わっていくLPVシステム(Linear Parameter Varying system)であり、固定コントローラも補償できないことがわかる。このLPVシステムに対してゲインスケジュール型スライディングモード制御を提案する。スライディングモードの超平面がスケジューリングして状態量を常に変動している超平面に収束させて安定性を図る方法である。その実験結果とLQI制御を比べてみると、きれいな軌跡となっており、非同期成分が消えている。電流信号も規則的な信号となっている。ジャイロ効果を補償すると安定性がアップしたことがわかる。しかし、LQIと同じように100Hz付近では安定性が悪くなって、タッチダウンしてしまった。本システムは100Hzのところに弾性モードの共振点が出てきた。弾性モードを考慮していないLQIコントローラおよびゲインスケジュール型スライディングモードコントローラがその共振点にぶつかって安定性が崩れて、タッチダウンしてしまう。弾性モデリングを実行したが、次数が高いため、モデルベースの制御を実現できない。そこで、非モデルベースのPID制御で130Hzまで増速できたが、PIDコントローラの閉ループ系と、低次元化した弾性モデルのシミュレーションと実験の結果が一致しないという問題がある。制御入力を元の0.2倍にすると実験とよく一致したが、なぜこのようにすると合致するのか検討中である。ハードウェアおよび電気系の問題と思われる。今後の課題としては以下のようになる。
1.PIDコントローラをもっとチューニングする。上下のバランスを良くして、さらに周波数によって切り換えして200Hzまで増速する。
2.実験結果とシミュレーションの一致しない原因を調べる。低次化した弾性モデルを修正して、ゲインスケジュール型スライディングモード制御系を設計する。
磁気軸受装置の全体構成あるいは各部の構成、制御の方法などは、上記実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
図1は、この発明の実施形態における磁気軸受装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。 図2は、図1の磁気軸受装置の機械的部分の主要部を示す縦断面図である。 図3は、図2の主要部の斜視図である。 図4は、一般化プラントを示すブロック図である。 図5は、H∞制御のブロック図である。 図6は、H∞制御のブロック図である。 図7は、閉ループ系のブロック図である。 図8は、ロバスト安定化問題を表すフィードバック系のブロック図である。 図9は、混合感度問題を表すフィードバック系のブロック図である。 図10は、クローズドループのブロック図である。 図11は、固有振動線図である。 図12は、フライホイール磁気軸受のモデルを示す斜視図である。 図13は、図12のX−Z平面における図である。 図14は、一般化プラントを示すブロック図である。 図15は、上部磁気軸受を示す説明図である。 図16は電磁石の吸引力を示すグラフである。 図17は、閉ループシステムのブロック図である。 図18は、初期応答を示す図である。 図19は、制御電流を示す図である。 図20は、実験装置を示すブロック図である。 図21は、実験装置のモニタを示す図である。 図22は、電磁石の制御電流を示す図である。 図23は、実験結果を示す図である。 図24は、入力電流を示す図である。 図23は、実験結果を示す図である。 図26は、入力電流を示す図である。 図27は、実験結果を示す図である。 図28は、入力電流を示す図である。 図29は、実験結果を示す図である。 図30は、入力電流を示す図である。 図31は、実験結果を示す図である。 図32は、入力電流を示す図である。 図33は、実験結果を示す図である。 図34は、入力電流を示す図である。 図35は、実験結果を示す図である。 図36は、入力電流を示す図である。 図37は、実験結果を示す図である。 図38は、入力電流を示す図である。 図39は、実験結果を示す図である。 図40は、入力電流を示す図である。 図41は、実験結果を示す図である。 図42は、入力電流を示す図である。 図43は、重み関数を示す図である。 図44は、LTI制御器の周波数応答を示す図である。 図45は、初期値応答を示す図である。 図46は、入力電流を示す図である。 図47は、初期値応答を示す図である。 図48は、入力電流を示す図である。 図49は、初期値応答を示す図である。 図50は、入力電流を示す図である。 図51は、初期値応答を示す図である。 図52は、入力電流を示す図である。 図53は、閉ループの根軌跡の図である。 図54は、実験結果を示す図である。 図55は、入力電流を示す図である。 図56は、実験結果を示す図である。 図57は、入力電流を示す図である。 図58は、実験結果を示す図である。 図59は、入力電流を示す図である。 図60は、実験結果を示す図である。 図61は、入力電流を示す図である。 図62は、実験結果を示す図である。 図63は、入力電流を示す図である。 図64は、実験結果を示す図である。 図65は、入力電流を示す図である。 図66は、実験結果を示す図である。 図67は、入力電流を示す図である。 図68は、実験結果を示す図である。 図69は、入力電流を示す図である。 図70は、実験結果を示す図である。 図71は、入力電流を示す図である。 図72は、磁気軸受装置のロータを8要素に分割した図である。 図73は、固有振動数と軸回転数の関係を示す図である。 図74は、ボード線図である。 図75は、低次元化モデルの初期値応答を示す図である。 図76は、閉ループシステムのブロック図である。 図77は、低次元化モデルの初期値応答を示す図である。 図78は、閉ループの固有値解析を示す図である。 図79は、低次元化モデルの初期値応答を示す図である。 図80は、安定性の概念を示す図である。 図81は、5軸制御型磁気軸受装置のモデルを示す図である。 図82は、LQI制御系のブロック図である。 図83は、初期応答を示す図である。 図84は、電磁石の制御電流を示す図である。 図85は、初期応答を示す図である。 図86は、電磁石の制御電流を示す図である。 図88は、初期応答を示す図である。 図88は、電磁石の制御電流を示す図である。 図89は、実験装置のブロック図である。 図90は、実験結果を示す図である。 図91は、実験結果を示す図である。 図92は、実験結果を示す図である。 図93は、実験結果を示す図である。 図94は、実験結果を示す図である。 図95は、実験結果を示す図である。 図96は、実験結果を示す図である。 図97は、実験結果を示す図である。 図98は、ジャイロモーメントの説明図である。 図99は、閉ループの根軌跡を示す図である。 図100は、LPV低次元化システムのブロック図である。 図101は、フィルタ付きLPV低次元化システムのブロック図である。 図102は、LPVシステムのボード線図である。 図103は、重み関数の図である。 図104は、コントローラのボード線図を示す図である。 図105は、初期値応答、インパルス応答、ステップ応答を示す図である。 図106は、スイッチング関数の図である。 図107は、力制御入力の図である。 図108は、X軸の制御電流を示す図である。 図109は、Y軸の制御電流を示す図である。 図110は、初期値応答、インパルス応答、ステップ応答を示す図である。 図111は、実験結果を示す図である。 図112は、実験結果を示す図である。 図113は、実験結果を示す図である。 図114は、実験結果を示す図である。 図115は、実験結果を示す図である。 図116は、実験結果を示す図である。 図117は、実験結果を示す図である。 図118は、実験結果を示す図である。 図119は、実験結果を示す図である。 図120は、実験結果を示す図である。 図121は、閉ループの根軌跡を示す図である。 図122は、磁気軸受装置のロータを8要素に分割した図である。 図123は、固有振動数と軸回転数の関係を示す図である。 図124は、PIDコントローラの閉ループのブロック図である。 図125は、PIDコントローラのボード線図である。 図126は、実験結果を示す図である。 図127は、実験結果を示す図である。 図128は、実験結果を示す図である。 図129は、実験結果を示す図である。 図130は、実験結果を示す図である。 図131は、実験結果を示す図である。 図132は、実験結果を示す図である。 図133は、実験結果を示す図である。 図134は、シミュレーションと実験の比較結果を示す図である。 図135は、図134の右下の図の拡大図である。 図136は、シミュレーションと実験の比較結果を示す図である。 図137は、閉ループの根軌跡を示す図である。 図138は、閉ループの根軌跡を示す図である。 図139は、テーブルを用いたGS制御を説明する図である。
符号の説明
(1) 機械本体
(2) コントローラ
(4) 回転体
(4a) フライホイール
(5) アキシアル磁気軸受
(6)(7) ラジアル磁気軸受
(8) 変位検出部
(9) 電動モータ
(10) 回転センサ
(11)(12) 保護軸受
(25) アキシアル変位センサ
(26)(27) ラジアル変位センサユニット
(28a)(28b) アキシアル電磁石
(29a)(29b)(29c)(29d)(30a)(30b)(30c)(30d) ラジアル電磁石
(31a)(31b)(31c)(31d)(32a)(32b)(32c)(32d) ラジアル変位センサ

Claims (2)

  1. 一対の電磁石と、前記一対の電磁石の間に配置され回転する回転体とを有し、消費電力削減を目的としたゼロバイアス線形制御を行う磁気軸受装置であって、
    前記ゼロバイアス線形制御は、一方の電磁石に流す電流をi 、他方の電磁石に流す電流をi 、ノーマルエアギャップをx 、電磁石の変位をx 、電磁石が発生する磁気吸引力の合力をFx 、定数をK とする下記式に従い前記一対の電磁石のうち一方に電流を流し、他方の電磁石への電流をゼロにして前記回転体の回転制御を行うものであり、
    ジャイロ効果の影響による不安定を抑制するために、運動方程式に回転周波数に依存する項を付加した線形パラメータ変動システムを含んでおり、凸補間した制御器を予め複数用意しておき、回転周波数によって前記制御器を切り替えるゲインスケジュール制御を行うことを特徴とする磁気軸受装置。
  2. 一対の電磁石と、前記一対の電磁石の間に配置され回転する回転体とを有し、消費電力削減を目的としたゼロバイアス線形制御を行う磁気軸受装置であって、
    前記ゼロバイアス線形制御は、一方の電磁石に流す電流をi 、他方の電磁石に流す電流をi 、ノーマルエアギャップをx 、電磁石の変位をx 、電磁石が発生する磁気吸引力の合力をFx 、定数をK とする下記式に従い前記一対の電磁石のうち一方に電流を流し、他方の電磁石への電流をゼロにして前記回転体の回転制御を行うものであり、
    ジャイロ効果の影響による不安定を抑制するために、運動方程式に回転周波数に依存する項を付加した線形パラメータ変動システムを含んでおり、変動パラメータによって常に変動する超平面に状態量を追従させるジャイロ保障のためのゲインスケジュール制御を行うことを特徴とする磁気軸受装置。
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