JP5442311B2 - 農業用ハウス - Google Patents

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Description

本発明は、植物体の育成に好適な環境を作るための農業用ハウスに関する。
施設栽培に用いられ、被覆材によって覆われるビニールハウス又はガラスハウス等の農業用ハウス(以下、ハウスという)の内部は、高温、多湿となるので、栽培されている植物体が灰色カビ病などになりやすい。そこで、紫外線を遮蔽する被覆材を用いて、紫外線がハウス内に入らないようにすることで、灰色カビ等の菌糸伸長を抑制して植物体の病害を防除する。
ところで、果実が実る植物体の授粉は、ハウス内で栽培される場合、一般的にミツバチをハウス内で飛翔させることによって行う。しかし、ミツバチは、紫外線の偏光を検知して飛翔するので、紫外線を遮蔽する被覆材によって覆われたハウス内では、紫外線の偏光を検知できないためにうまく飛翔できない。ハウス内の植物体は、紫外線の遮蔽によってミツバチの飛翔が妨げられると、授粉が不十分となってしまい、それが原因で変形果が発生しやすくなる。変形果は、種子がまばらであって果実の肥大が不揃いであり、さらに果面に凹凸ができて不整形である果実をいう。
このような変形果の発生を抑えるために、紫外線を遮蔽する被覆材と、紫外線領域の光を照射する発光体と、を備えたハウスが知られている(例えば、引用文献1参照)。このハウスは、太陽から放出される紫外線、特に、370nm以下の波長の光であるUV−Aを被覆材によって大幅に遮蔽することで病害を防除すると共に、発光体によって330〜390nmの波長の紫外線領域の光をハウス内に照射することで、ミツバチがうまく飛翔できるようになり植物体の授粉が行われる。しかし、発光体から照射される人口光による補光のみでは、ミツバチの飛翔が十分に行われないので、植物体の授粉が不十分となって変形果が発生する。
特開2005−124534号公報
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、植物体の病害を防除できると共に、昆虫の飛翔が十分に行われて植物体の授粉が十分となり、変形果の発生を抑えることができる農業用ハウスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、圃場を光透過性部材で覆って成る農業用ハウスであって、前記光透過性部材は、少なくとも340〜380nmの波長の高波長紫外線領域の光を透過する透過部と、400nm以下の波長の紫外線領域の光を遮蔽する遮蔽部と、を有するものである。前記遮蔽部は、その遮蔽面積を増減できるように繰り出し引き入れ自在に設置され、太陽高度が高くなるほど遮蔽面積を大きくする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の農業用ハウスにおいて、前記遮蔽部に対する透過部の面積比を15%以下とし、ハウス内における340〜380nmの波長の光の照射量を200kJ/m以下とするものである。
請求項1の発明によれば、遮蔽部が紫外線領域の光を遮蔽することで植物体の病害を防除できると共に、透過部が高波長紫外線領域の光を透過することで自然光による補光が可能となり、昆虫の飛翔が十分に行われて植物体の授粉が十分となるので、変形果の発生を抑えることができる。また、太陽高度に合わせて遮蔽部の面積を増減させることで、太陽から放射される紫外線が植物体に直射することを防ぐので、昆虫の飛翔を妨害することなく、植物体の病害をより確実に防除できる。
請求項2の発明によれば、340〜380nmの波長の光の照射量を所定量以下とすることで、昆虫の飛翔を妨害することなく、植物体の病害をより確実に防除できる。
本発明の第1の実施形態に係る農業用ハウスの外観図。 同農業用ハウスの光透過性部材の透過率、従来の光透過性部材の透過率、及び太陽のスペクトルを示すグラフ。 同農業用ハウスの変形例の外観図。 本発明の第2の実施形態に係る農業用ハウスの外観図。 (a)(b)(c)は図4のH−H線断面図であり、それぞれ夏に使用した場合、春、秋に使用した場合、冬に使用した場合の図。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る農業用ハウス1(以下、ハウスという)を示す。半円筒形であるハウス1は、圃場2を覆う光透過性部材3と、光透過性部材3を保持するパイプ(図示せず)と、を備える。光透過性部材3は、光の透過部4、及びそれ以外の領域で成る光の遮蔽部5を有する。圃場2は、例えば、イチゴ、スイカ、メロンといった果実が実る植物体P1、P2、P3がハウス1の長手方向に沿って順に配置され、栽培されている。ハウス1内で植物体P1〜P3に授粉活動をする昆虫は、例えば、ミツバチ、マルハナミツバチ等が挙げられる。
透過部4は、少なくとも略340〜380nmの波長の高波長紫外線領域の光を透過する。透過部4の材料は、紫外線吸収剤を含有しない農業用樹脂又はガラス等が用いられる。農業用樹脂とは、塩化ビニール系樹脂やオレフィン系樹脂のことをいう。なお、透過部4は、340nm未満の紫外線領域の光を透過しても構わない。
遮蔽部5は、略400nm以下の波長の紫外線領域の光を遮蔽する。遮蔽部5は、ベンゾトリアゾール系及びヒドラジン系紫外線吸収剤などが添加された農業用樹脂、又は表面にベンゾトリアゾール系及びヒドラジン系紫外線吸収剤などが添加された塗料を塗布、蒸着、スパッタリング等することによって膜処理が施されたガラス若しくは農業用樹脂が用いられる。
ハウス1は、遮蔽部5に対する透過部4の面積比を略15%以下とすることで、ハウス1内における略340〜380nmの波長の光の照射量を略200kJ/m以下とする。具体的には、図1に示されるように、遮蔽部5と水玉状に形成された複数の透過部4とが重ならないようにして並べて配置され、光透過性部材3が水玉模様となるように構成されることで、面積比の調整がなされる。
このように面積比が調整されたハウス1は、略340〜380nmの波長の光の照射量を所定量以下とすることで、昆虫の飛翔を妨害することなく、植物体P1〜P3の病害をより確実に防除できる。また、真夏の太陽から放射される略340〜380nmの波長の光の照射量は、年間で最も多い略1410kJ/mとなるが、面積比が調整されたハウス1において、その内部に照射される照射量を略200kJ/m以下にまで減らすことができる。
図2は、光透過性部材3の透過率と、従来の光透過性部材の透過率と、太陽のスペクトルとを比較して示す。光透過性部材3の透過部4は、太陽光に含まれる略340〜380nmの波長の光を略60〜90%の割合で透過する。光透過性部材3の遮蔽部5は、略400nm以下の波長の光の透過率が0%であり、太陽光に含まれる略400nm以下の波長の光を遮蔽する。従来の光透過性部材は、略370nm以下の波長の光の透過率が0%であり、太陽光に含まれる略370nm以下の波長の光を遮蔽する。
そのため、光透過性部材3を備えるハウス1は、従来の光透過性部材を備えるハウスでは大半が遮蔽されていた昆虫の飛翔に必要な光、すなわち、太陽光に含まれる略340〜380nmの波長の光を透過部4によって透過する。したがって、ハウス1は、遮蔽部5が紫外線領域の光を遮蔽することで植物体の病害を防除できると共に、透過部4から高波長紫外線領域の光がハウス1内に透過されて、自然光による補光が可能となるので、昆虫の飛翔が十分に行われて植物体の授粉が十分となり、変形果の発生を抑えることができる。
次に、日出から日入までの透過部4を透過してハウス1内に照射される光について、透過部4の内の1つである透過部4aを例にして、図1を参照して説明する。日出時の太陽光Aは、透過部4aを透過することで、略340〜380nmの波長の光a(以下、透過光という)となり、植物体P1に照射される。昼時の太陽光Bは、透過部4aを透過することで透過光aと異なる照射方向で照射される透過光bとなり、植物体P1の隣に配置された植物体P2に照射される。日入時の太陽光Cは、透過部4aを透過することで透過光a、bと異なる照射方向で照射される透過光cとなり、植物体P2の隣に配置された植物体P3に照射される。ハウス1は、地球の自転による太陽の移動に従って、透過光a〜cを植物体P1から植物体P3まで順に照射し、透過光a〜cを植物体P1〜P3のいずれか1つに連続的に照射しないので、より確実に病害を防除することができる。なお、他の透過部4も、透過部4aと同じようにして透過光を植物体P1〜P3に照射する。
図3は、上記ハウス1の変形例に係るハウス11を示す。ハウス11は、線状に形成された複数の透過部4(黒ドット表示部)が、ハウス11の側面の円周方向に沿って、遮蔽部5と重ならないようにして並べて配置されることで、光透過性部材3がストライプ模様となるように構成される。これにより、ハウス11は、遮蔽部5に対する透過部4の面積比が略15%以下となっている。
次に、日出から日入までの透過部4を透過してハウス11内に照射される光について、透過部4の内の1つである透過部4aを例にして、図3を参照して説明する。日出時の太陽光Aは、透過部4aを透過することで、透過光aとなり、植物体P1に照射される。昼時の太陽光Bは、透過部4aを透過することで透過光aと異なる照射方向で照射される透過光bとなり、植物体P1の隣に配置された植物体P2に照射される。日入時の太陽光Cは、透過部4aを透過することで透過光a、bと異なる照射方向で照射される透過光cとなり、植物体P2の隣に配置された植物体P3に照射される。これにより、ハウス11は、地球の自転による太陽の移動に従って、透過光a〜cを植物体P1から植物体P3まで順に照射し、透過光a〜cを植物体P1〜P3のいずれか1つに連続的に照射しないので、より確実に病害を防除することができる。なお、他の透過部4も、透過部4aと同じようにして透過光を植物体P1〜P3に照射する。この変形例であるハウス11においても、上述のハウス1と同等の作用効果が得られる。
(第2の実施形態)
図4及び図5(a)(b)(c)は、本実施形態のハウス21を示す。ハウス21は、第1の実施形態と比べ、遮蔽面積が増減できるように遮蔽部5が可動する構成であることが異なり、その他の同等の構成については説明を省略する。半円筒形のハウス21は、その長手方向に対して太陽光が略直角となるように配置され、圃場2を覆う透過部4と、太陽と対向する側の透過部4の側面上に設置される遮蔽部5(黒ドット表示部)と、遮蔽部5を繰り出し引き入れする巻き取り部材と、巻き取り部材を制御するマイクロコントローラ(図示せず)と、を備える。
遮蔽部5は、その遮蔽面積を増減できるように、巻き取り部材とマイクロコントローラによって、D方向、すなわちハウス21の側面の円周方向に、繰り出し引き入れ自在に設置される。巻き取り部材は、市販のモータを利用することで、ハウス21の製造コストを低減することができる。マイクロコントローラは、例えば、予め入力された太陽の高度や方位などのデータに基いて、遮蔽部5の繰り出し引き入れを行う。
次に、太陽光とハウス21内に照射される光について、ハウス21の側面の同じ円周に同時に照射され、ハウス21への照射位置が高い位置から低い位置の順に並んでいる太陽光E、F、Gを例にして、図4を参照して説明する。遮蔽部5の遮蔽面積を調整することによって、太陽光Eは、遮蔽部5によって遮蔽されず、透過部4を透過することで透過光eとなり、植物体P1〜P3に直射することなく、ハウス21内に照射される。また、太陽光F、Gは、遮蔽部5によって、略400nm以下の波長の紫外線領域の光が遮蔽される。
次に、季節毎の太陽光と、ハウス21内に照射される光について説明する。図5(a)に示されるように、夏の太陽光I、J、Kは、ハウス21の側面の同じ円周に同時に照射され、ハウス21への照射位置が高い位置から低い位置の順に並んでいる。四季の中で夏の太陽高度が最も高いので、ハウス21は、遮蔽部5の遮蔽面積を最も増やした状態にすることで、太陽光Iのみを透過部4で透過させ、太陽光J、Kを遮蔽部5で遮蔽させる。太陽光Iは、透過部4を透過することで透過光iとなり、植物体P2に直射することなく、ハウス21内に照射される。
また、図5(b)に示されるように、春、秋の太陽光M、N、Oは、ハウス21の側面の同じ円周に同時に照射され、ハウス21への照射位置が高い位置から低い位置の順に並んでいる。春、秋の太陽高度が夏の太陽高度に比べて低く、冬の太陽高度に比べて高いので、ハウス21は、遮蔽部5の遮蔽面積を夏のときよりも減らし、冬のときよりも増やした状態にすることで、太陽光M、N、Oのうち、太陽光Mのみを透過部4で透過させ、太陽光N、Oを遮蔽部5で遮蔽する。太陽光Mは、透過部4を透過することで透過光mとなり、植物体P2に直射することなく、ハウス21内に照射される。
また、図5(c)に示されるように、冬の太陽光R、S、Tは、ハウス21の側面の同じ円周に同時に照射され、ハウス21に照射する位置が高い位置から低い位置の順に並んでいる。四季の中で冬の太陽高度が最も低いので、ハウス21は、遮蔽部5の遮蔽面積を最も減らした状態にすることで、太陽光Rのみを透過部4で透過させ、太陽光S、Tを遮蔽部5で遮蔽させる。太陽光Rは、透過部4を透過することで透過光rとなり、植物体P2に直射することなく、ハウス21内に照射される。したがって、ハウス21は、季節毎の太陽高度に合わせて遮蔽部5の面積を増減させることで、太陽から放射される紫外線が植物体P2に直射することを防ぐので、昆虫の飛翔を妨害することなく、植物体P2の病害をより確実に防除できる。
下記表1は、従来のハウスと、第1の実施形態のハウス1とで、それぞれ300果ずつ育てた果実の被害果率と非変形果率を示す。被害果率の値が大きくなると、病害防除の効果が弱くなり、非変形果率の値が大きくなると、変形果が減ったことになる。従来のハウスは、略370nm以下の波長の光を遮蔽する光透過性部材を備える。第1の実施形態のハウス1は、略400nm以下の波長の遮蔽する遮蔽部5と、略340〜380nmの波長の光を透過する透過部4と、を備える。この実験において、植物体はイチゴを用い、授粉活動をする昆虫はミツバチを用いた。
Figure 0005442311
上記実験の結果、ハウス1は、従来のハウスに比べて、被害果率がほんのわずか増加し、非変形果率が大幅に増加した。そのため、ハウス1は、遮蔽部5が紫外線領域の光を遮蔽することでイチゴの病害を防除すると共に、透過部4からハウス1内に透過された高波長紫外線領域の光によって、ミツバチの飛翔が十分に行われてイチゴの授粉が十分となり変形果の発生を抑える。
下記表2は、従来のハウスと、第2の実施形態に係る遮蔽部5が可動するように構成されたハウス21で、それぞれ300果ずつ育てた果実の被害果率と非変形果率を示す。実験の条件は、太陽高度に合わせてハウス21の遮蔽部5の面積を調整した以外、上記の表1に係る実験と同様の条件で行った。
Figure 0005442311
上記実験の結果、第2の実施形態のハウス21は、従来のハウスに比べて、被害果率がほとんど増加することなく、非変形果率が大幅に増加した。そのため、ハウス21は、太陽高度に合わせて遮蔽部5の面積を増減させることで、太陽から放射される紫外線がイチゴに直射することを防ぐので、より確実にイチゴの病害を防除する。また、透過部4からハウス1内に透過された高波長紫外線領域の光によって、ミツバチの飛翔が十分に行われてイチゴの授粉が十分となり変形果の発生を抑える。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、光透過性部材は、遮蔽部と水玉状に形成された複数の透過部とが重ならないようにして並べて配置されたものを示したが、水玉状に複数の穴あけがされた遮蔽部に透過部を重ね合わせたものであっても構わない。
1、11、21 ハウス(農業用ハウス)
2 圃場
3 光透過性部材
4、4a 透過部
5 遮蔽部
a、b、c、e、i、m、r 透過光(略340〜380nmの波長の高波長紫外線領域の光)

Claims (2)

  1. 圃場を光透過性部材で覆って成る農業用ハウスであって、
    前記光透過性部材は、少なくとも340〜380nmの波長の高波長紫外線領域の光を透過する透過部と、400nm以下の波長の紫外線領域の光を遮蔽する遮蔽部と、を有し、
    前記遮蔽部は、その遮蔽面積を増減できるように繰り出し引き入れ自在に設置され、太陽高度が高くなるほど遮蔽面積を大きくすることを特徴とする農業用ハウス。
  2. 前記遮蔽部に対する透過部の面積比を15%以下とし、ハウス内における340〜380nmの波長の光の照射量を200kJ/m以下とすることを特徴とする請求項1記載の農業用ハウス。
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