JP5440431B2 - 塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献12、13には、切り欠き疲労強度に優れる鋼板が開示されている。これらの鋼板は、フェライトとベイナイトを主組織とするものであるが、打ち抜き端面の粗さを改善するには十分ではなく、また、塗装耐食性も不良となる場合があるという問題があった。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[2] 当該高強度熱延鋼板が打ち抜き加工された際の、打抜き破断面粗さの最大値Rzが30μm以下であることを特徴とする上記[1]に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
[3] 前記スケール層下の母材表層部において、Si、AlおよびMnのうちの1種又は2種以上を含有する網目状の酸化物を有し、これら酸化物を含有する領域の板厚方向の厚さが0.5μm以上かつ5μm以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
[4] 鋼組織が、残留オーステナイトを2〜8%含むことを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
[6] さらに、質量%で、Cr、Cu、Ni、Moの1種又は2種以上を合計で0.02〜2.0%含有することを特徴とする上記[1]〜[5]の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
[7] さらに、質量%で、Bを0.0003〜0.005%含有することを特徴とする上記[1]〜[6]の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
[8] さらに、質量%で、Ca、Mg、La、Ceの1種又は2種以上を合計で0.0003〜0.01%含有することを特徴とする上記[1]〜[7]の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
[10] 上記[1]〜[8]の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を製造する方法であって、上記[1]〜[8]の何れか1項に記載の成分組成からなる鋼片を加熱し、仕上げ圧延開始時の平均スケール厚が3〜50μmとなるようにデスケーリングを行った後、980〜830℃間の累積圧下率が70%以上となり、かつ、最終仕上げ圧延温度FTが830℃以上となる仕上げ圧延を行い、次いで、最終仕上げ圧延温度FT〜Ar3温度間の平均冷却速度が25℃/s以上であり、かつ、(Ar3−50)℃〜680℃間の平均冷却速度が12℃/s以下である冷却を行い、次いで、680〜550℃間を平均冷却速度:20℃/s以上の速度で冷却し、400℃以下で巻き取った後、鋼帯を300〜530℃で再加熱することを特徴とする塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
また、本発明の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法によれば、上記手順並びに条件を採用することにより、電着塗装後の耐食性と打抜き部の疲労耐久性に優れた高強度熱延鋼板を製造することが可能となる。
本実施形態の塗装耐食性と打抜き部の疲労特性に優れた高強度熱延鋼板は、質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:2.0%以下、Al:2.0%以下、Mn:1.2〜2.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、N:0.007%以下、Ti:0.02〜0.09%、Nb:0.01〜0.06%を含有し、かつ、Si+Alの合計量:0.8%以上、Ti+Nbの合計量:0.04〜0.12%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有し、TiおよびNbを含有する合金炭化物の平均粒子径が10nm以下であり、鋼組織が、マルテンサイトと残留オーステナイトを体積率の合計で3〜20%、フェライトを体積率で50〜90%含有し、残部がベイナイトからなり、さらに、スケール層内のマグネタイトの体積分率が70%以上、かつ、前記マグネタイトの平均結晶粒径が3μm以下であり、最大引張強度が720MPa以上とされ、概略構成されている。
本発明の高強度熱延鋼板においては、鋼成分を上記範囲に制御することがより好ましい。
以下、鋼成分を構成する各元素について詳述する。
本発明において、Cは、組織制御のために用いられる。しかしながら、C量が0.05%未満であると、マルテンサイトと残留オーステナイトを合計で3%以上確保することが難しく、また、0.12%を超えると、パーライト組織が出現して打抜き部の疲労特性が低下する。このため、本発明においては、Cの適正範囲を0.05〜0.12%の範囲に限定した。
本発明において、Siは、フェライト分率を増加させる元素であり、また、Siと後述のAlを合計量で0.8質量%以上含有させることで、50%以上のフェライト分率を確保することが可能になる。しかしながら、Si量が2.0%を超えると、塗装耐食性と疲労特性が劣化するため、その適正範囲を2.0%以下とした。また、Si量の下限は特に限定しないが、Siは地鉄表層近傍の網目状の酸化物形成を促進し、塗装耐食性を向上させる元素であるので、0.5%以上で含有させることが望ましい。
Alは、Siと同様にフェライト分率を増加させる元素であり、また、SiとAlを合計量で0.8質量%以上含有させることで、50%以上のフェライト分率を確保することが可能になる。しかしながら、Al量が2.0%を超えると疲労特性が劣化するので、その適正範囲を2.0%以下とした。また、Al量の下限は特に限定しないが、0.001%未満であると製造コストが増大するため、0.001%が実質的な下限である。
Mnは、組織制御と強度調整のために用いられる。しかしながら、Mn量が1.2%未満であると、マルテンサイトと残留オーステナイトを合計で3%以上確保することが困難になり、打抜き部疲労特性が低下する。一方、Mn量が2.5%を超えると、フェライトを50%以上確保することが困難になり、疲労特性が低下する。このため、その適正範囲を1.2〜2.5%に限定した。
Pは、鋼の強度確保のために用いられる。しかしながら、0.1%を超えて含有すると塗装耐食性が低下するので、その適正範囲を0.1%以下とする。また、P量の下限は特に限定しないが、0.001%未満であると製造コストが増大するため、0.001%が実質的な下限である。
Sは、母材の疲労特性に影響する元素である。しかしながら、0.01%を超えてSを含有すると、例え、スケール/地鉄界面粗さを平滑にしても、打抜き破断面の粗さが増大し、良好な打抜き部疲労特性が得られないため、その適正範囲を0.01%以下とする。また、S量の下限は特に限定しないが、0.0002%未満であると製造コストが増大するため、0.0002%が実質的な下限である。
Nの含有量が0.007%を超えると、粗大なTi−Nb系窒化物を形成し、TiおよびNbの合金炭化物形成を抑制するため、最大引張強度:720MPa以上を得ることができない。このため、その上限を0.007%に制限した。また、N量の下限は特に限定しないが、0.0003%未満であると製造コストが増大するため、0.0003%が実質的な下限である。
Tiは、鋼の析出強化のために用いる。しかしながら、Tiの含有量が0.02%未満であると、その効果がなく、また、0.09%を超えると効果が飽和するとともに打抜き部の粗さが増大し、打抜き部疲労特性が低下する。このため、その適正範囲を0.02〜0.09%に限定した。
Nbは、組織制御および鋼の析出強化のため用いられる。しかしながら、Nbの含有量が0.01%未満であるとその効果がなく、また、0.06%を超えると打抜き部の粗さが増大し、打抜き部疲労特性が低下する。このため、その適正範囲を0.01〜0.06%に限定した。
SiとAlは、ともにフェライト分率を増加させる元素であり、SiとAlを合計量で0.8質量%以上含有させることで、50%以上のフェライト分率を確保でき、良好な打抜き疲労特性を得ることができる。また、SiおよびAlは、地鉄表層直下に網目状の内部酸化層を形成させる効果により、塗装耐食性を向上させる効果もある。これらSi+Alの合計量の上限は特に限定しないが、SiとAlの合計量が1.8%を超えると、地鉄表面に形成される網目状の内部酸化層の厚みが大きくなり、疲労特性が低下するため、1.8%以下であることが望ましい。
TiとNbは、適正なサイズの合金炭化物を形成させることで、鋼を高強度化するために用いられる。しかしながら、TiとNbの合計量が0.04%未満であると、最大引張強度:720MPa以上を確保することが困難になり、一方、0.12%を超えると、打抜き部の粗さが増大して打抜き部の疲労特性が低下する。このため、これらTi+Nbの合計量の適正範囲を0.04〜0.12%に限定した。
Vは、鋼の強度調整のために用いてもよい。しかしながら、Vの含有量が0.01%未満であると、その効果がなく、また、0.12%を超えると打ち抜き端面粗さが増大し、疲労特性が低下する。このため、その適正範囲を0.01〜0.12%に限定した。
Cr、Cu、Ni、Moは、鋼の組織制御のために用いてもよい。しかしながら、これらの元素の1種又は2種以上の合計含有量が0.02%未満であると、添加に伴う上記効果が無く、また、2.0%を超えると塗装耐食性が低下する。このため、これら元素の合計量の適正範囲を0.02〜2.0%に限定した。
Bは鋼板の組織制御に用いてもよい。しかしながら、B量が0.0003未満であると、その効果は発現せず、また、0.005%を超えると、フェライトを50%以上確保することが困難になり、疲労特性が低下する。このため、その適正範囲を0.0003〜0.005%に制限した。
Ca、Mg、La、Ceは、鋼の脱酸のために用いてもよい。しかしながら、これらの元素の1種又は2種以上の合計量が0.0003%未満であると、その効果は無く、また、0.01%を超えると疲労特性が低下する。このため、その適正範囲を0.0003〜0.01%に制限した。
TiおよびNbを含む合金炭化物は、析出強化に寄与する析出物である。しかしながら、その平均粒子径が10nmを超えると、最大引張強度:720MPa以上を確保することが困難になるため、その適正範囲を10nm以下に制限した。なお、上記合金炭化物中には、Nを少量含んでいても析出強化への効果は何ら変わることは無いので、例えば、組成が(Ti,Nb)(C,N)の析出物であっても構わない。
マルテンサイトと残留オーステナイトは、打抜き部の局所変形領域において延性破壊を促進し、その結果として、析出強化鋼においても打ち抜き端面の粗さを平滑化させる効果があり、本発明において重要なパラメータである。しかしながら、その合計の体積率が3%未満であると、その効果が発現せず、また、20%を超えると、打ち抜き端面粗さが再増加する傾向がある。このため、マルテンサイトと残留オーステナイトの適正範囲を3〜20%に限定した。また、マルテンサイトと残留オーステナイトの合計の体積率は、5%以上であることがより好ましい。なお、マルテンサイトは、焼き戻しされたマルテンサイトであっても打ち抜き端面を平滑化する効果があるが、焼き戻しされたマルテンサイトのビッカース硬さHvが500以下であると、その効果は小さくなる。
フェライトは、母材疲労特性の向上に寄与するとともに、打抜き端面の粗さ改善に寄与するマルテンサイトあるいは残留オーステナイトの確保のために、適正分率で含まれる必要がある。フェライトの体積分率が50%未満であると、マルテンサイトあるいは残留オーステナイトを適正量にすることが困難になり、打抜き部疲労特性が低下する。一方、フェライト分率が90%を超えると、最大引張強度:720MPaを確保することが困難になる。このため、フェライトの体積分率の適正範囲を50〜90%に限定した。
マルテンサイトと残留オーステナイトを比較した場合、ボイド発生サイトとしての効果は残留オーステナイトの方が若干大きいことから、残留オーステナイトは一定量含有した方が好ましい。しかしながら、残留オーステナイトの体積分率が2%未満であると、その効果が明確ではなく、また、8%を超えると母材疲労特性の低下を引き起こすので、その適正範囲を2〜8%の範囲に限定した。
本発明の高強度熱延鋼板において、スケール層中のマグネタイトの体積分率は、塗装後耐食性を確保する上で極めて重要な因子である。スケール層中のマグネタイト分率が70%未満であると、良好な化成処理皮膜が形成されにくくなり、その結果、化成皮膜上に行う電着塗装との密着性が低下して耐食性が劣化する。このため、本発明においては、スケール層中のマグネタイトの体積分率を70%以上に規定した。また、本発明においては、耐食性をさらに向上させる観点から、スケール層中のマグネタイトの体積分率を85%以上とすることがより好適である。
本発明の高強度熱延鋼板において、マグネタイトの平均結晶粒径は、塗装後耐食性を確保する上で極めて重要な因子である。マグネタイトの結晶粒径が3μmを超えると、良好な下地化成皮膜が形成されにくくなり、電着塗装後の耐食性が劣化するので、その適正範囲を3μm以下とした。また、本発明におけるマグネタイトの平均結晶粒径は、2μm以下がより好適な範囲である。
本発明においては、鋼板の最大引張強度が720MPa未満であると、部材の軽量化効果が小さくなることから、その範囲を720MPa以上とした。
打抜き破断面粗さの最大値は、打抜き部疲労特性と相関する指標の一つである。打抜き破断面粗さの最大値Rzが30μmを超えると、打ち抜き端面からの疲労亀裂発生が促進されて疲労強度が低下するため、その適正範囲を30μm以下とした。また、本発明における打抜き破断面粗さの最大値Rzは、15μm以下がより好ましい範囲である。
本発明においては、スケール層下の母材表層部において、Si、AlおよびMnのうちの1種又は2種以上を含有する網目状の酸化物を有し、また、これら酸化物を含有する領域の板厚方向の厚さが0.5μm以上かつ5μm以下であることがより好ましい。
スケール層下の地鉄表層領域に網目状の酸化物を存在させることにより、スケール層と地鉄間の密着性を向上させることができ、これにより、仕上げ圧延直前のスケール厚が厚い状態で仕上げ圧延を行っても、スケールの剥離や破壊が起こりにくくなる。一般的に、仕上げ圧延開始時のスケール厚さは、鋼帯内の長手・幅の場所に応じてばらつきが生じるが、網目状の酸化物を存在させることにより、鋼帯内のスケール密着性ばらつき、即ち、塗装耐食性ばらつきを小さくすることができる。しかしながら、酸化物が存在する地鉄表面からの深さが0.5μm未満だと、その効果は小さく、5μmを超えると母材の疲労特性が低下することから、0.5〜5μmの範囲内であることが望ましい。
次に、上記構成を備えた本発明の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を製造する方法について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記成分組成からなる鋼片を加熱し、仕上げ圧延開始時の平均スケール厚が3〜50μmとなるようにデスケーリングを行った後、980〜830℃間の累積圧下率が70%以上となり、かつ、最終仕上げ圧延温度FTが830℃以上となる仕上げ圧延を行い、次いで、最終仕上げ圧延温度FT〜Ar3温度間の平均冷却速度が25℃/s以上であり、かつ、(Ar3−50)℃〜680℃間の平均冷却速度が12℃/s以下である冷却を行い、次いで、680〜550℃間を平均冷却速度:20℃/s以上の速度で冷却した後、400〜530℃の範囲内で巻き取る方法である。
また、本発明においては、上記構成を備えた高強度熱延鋼板を製造するにあたり、680〜550℃間を平均冷却速度:20℃/s以上の速度で冷却する工程までを上記同様の手順及び条件で行った後、400℃以下で巻き取り、その後、鋼帯を300〜530℃で再加熱する方法とすることができる。
以下、本発明の高強度熱延鋼板の製造方法で規定する各手順並びに条件について説明する。
なお、本発明で説明する累積圧下率とは、上記温度範囲内で行った圧延に関して、初期板厚をt0、圧延後の板厚をtfとした場合に、次式{(t0−tf)/t0×100}によって求められる量である。
Ar3(℃) = 910−310×C+33(Si+Al)−80×Mn−20×Cu−15×Cr−55×Ni−80×Mo ・・・・・(1)
但し、上記(1)式において、各元素記号は、各元素の添加量(質量%)を示す。
また、打抜き破断面の粗さは、クリアランス:10%にてシャーまたはパンチにて打ち抜き、その破断面内の最大粗さRzをJIS 0601Bの規定に従って評価するものとする。
また、本発明の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法によれば、上記手順並びに条件を採用することにより、電着塗装後の耐食性と打抜き部の疲労耐久性に優れた高強度熱延鋼板を製造することが可能となる。
次いで、デスケーリング装置を用いて、スケールの残存厚さを変化させた上で、下記表2に示す条件で仕上げ圧延を行なった。その後、所定の温度で巻き取り処理を行うか、あるいは、巻き取り処理の後、鋼帯に対して1Hrの再加熱を施した。
まず、スケール層中のマグネタイトの体積分率については、X線回折法により定量し、スケール層中に存在するマグネタイトの結晶粒径はEBSD法にてマグネタイト相の分離を行ったうえで、その粒径を測定した。
また、鋼板の引張特性は、各々の鋼板からJIS5号試験片を採取し、引張方向が圧延方向垂直方向(C方向)になるような条件で行った。
tscale :仕上げ圧延開始時のスケール厚さ(mm)
Red :830〜980℃間の累積圧下率(%)
FT :最終仕上げ圧延温度(℃)
CR1 :FT〜Ar3間の平均冷却速度(℃/分)
CR2 :(Ar3−50)〜680℃間の平均冷却速度(℃/分)
CR3 :680〜550℃間の平均冷却速度(℃/分)
CT :巻き取り温度(℃)
RT :コイル再加熱温度(℃)
dMC :Ti、Nb系合金炭化物の平均粒子径(nm)
fVF :フェライトの体積分率(%)
fVM :マルテンサイトの体積分率(%)
fVγ :残留オーステナイトの体積分率(%)
fvmag :スケール層中のマグネタイトの体積分率(%)
dmag :マグネタイトの平均粒径(μm)
Rz :打ち抜き破断面の最大粗さ(μm)
hox :地鉄表面直下の内部酸化層深さ (μm)
疲労限度比 :ピアス穴付き試験片での1000万回の疲労限/TS
また、試験番号A−3、C−2、M−1は、仕上げ圧延前のスケール厚が本発明の規定範囲に比べて過大であったため、マグネタイト分率が少なくなり塗装耐食性もNGの評価となった例である。
また、試験番号F−2、A−12は、巻き取り温度が適正範囲外であったことから、ウスタイトからマグネタイトへの変態が十分に起こらなかったため、耐食性がNGとなった例である。
また、試験番号A−5は、最終仕上げ圧延温度が低かったため、最大引張強度が720MPa未満となった例である。
また、試験番号A−6は、FT〜Ar3間の冷却速度が遅かったため、最大引張強度が720MPa未満となった例である。
このため、これら各比較例では、マルテンサイトと残留オーステナイトの体積分率が少なくなり、打抜き破断面の粗さが増大し、打抜き部の疲労特性が低下した例である。
また、試験番号A−11は、再加熱温度が高すぎたため、最大引張強度(TS)が適正範囲外となった例である。
また、試験番号J−1、R−1は、Ti量あるいはNb量が多かったために打抜き破断面の粗さが増加し、打抜き部の疲労特性が低下した例である。
また、試験番号K−1、U−1、V−1、W−1は、鋼成分において、何れかの元素の含有量が適正範囲外であったことから、最大引張強度(TS)が、本発明で規定する適正範囲未満となった例である。
また、試験番号P−1は、鋼成分においてP量が適正範囲を超えているため、マグネタイト結晶粒が大きく、塗装耐食性がNGの評価となった例である。
また、試験番号Q−1、T−1は、鋼成分において何れかの元素の含有量が適正範囲外であったことから、打抜き破断面の粗さが増加し、打抜き部の疲労特性が低下した例である。
Claims (10)
- 質量%で、
C :0.05〜0.12%、
Si:2.0%以下、
Al:2.0%以下、
Mn:1.2〜2.5%、
P :0.1%以下、
S :0.01%以下、
N :0.007%以下、
Ti:0.02〜0.09%、
Nb:0.01〜0.06%
を含有し、かつ、
Si+Alの合計量:0.8%以上、
Ti+Nbの合計量:0.04〜0.12%
であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有し、
TiおよびNbを含有する合金炭化物の平均粒子径が10nm以下であり、
鋼組織が、マルテンサイトと残留オーステナイトを体積率の合計で3〜20%、フェライトを体積率で50〜90%含有し、残部がベイナイトからなり、
さらに、スケール層内のマグネタイトの体積分率が70%以上、かつ、前記マグネタイトの平均結晶粒径が3μm以下であり、最大引張強度が720MPa以上であることを特徴とする塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。 - 当該高強度熱延鋼板が打ち抜き加工された際の、打抜き破断面粗さの最大値Rzが30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- 前記スケール層下の母材表層部において、Si、AlおよびMnのうちの1種又は2種以上を含有する網目状の酸化物を有し、これら酸化物を含有する領域の板厚方向の厚さが0.5μm以上かつ5μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- 鋼組織が、残留オーステナイトを2〜8%含むことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、V:0.01〜0.12%を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、Cr、Cu、Ni、Moの1種又は2種以上を合計で0.02〜2.0%含有することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、Bを0.0003〜0.005%含有することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、Ca、Mg、La、Ceの1種又は2種以上を合計で0.0003〜0.01%含有することを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
- 請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を製造する方法であって、
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の成分組成からなる鋼片を加熱し、
仕上げ圧延開始時の平均スケール厚が3〜50μmとなるようにデスケーリングを行った後、980〜830℃間の累積圧下率が70%以上となり、かつ、最終仕上げ圧延温度FTが830℃以上となる仕上げ圧延を行い、
次いで、最終仕上げ圧延温度FT〜Ar3温度間の平均冷却速度が25℃/s以上であり、かつ、(Ar3−50)℃〜680℃間の平均冷却速度が12℃/s以下である冷却を行い、
次いで、680〜550℃間を平均冷却速度:20℃/s以上の速度で冷却した後、400〜530℃の範囲内で巻き取ることを特徴とする塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。 - 請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を製造する方法であって、
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の成分組成からなる鋼片を加熱し、
仕上げ圧延開始時の平均スケール厚が3〜50μmとなるようにデスケーリングを行った後、980〜830℃間の累積圧下率が70%以上となり、かつ、最終仕上げ圧延温度FTが830℃以上となる仕上げ圧延を行い、
次いで、最終仕上げ圧延温度FT〜Ar3温度間の平均冷却速度が25℃/s以上であり、かつ、(Ar3−50)℃〜680℃間の平均冷却速度が12℃/s以下である冷却を行い、
次いで、680〜550℃間を平均冷却速度:20℃/s以上の速度で冷却し、400℃以下で巻き取った後、鋼帯を300〜530℃で再加熱することを特徴とする塗装耐食性と打抜き部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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