JP5436650B1 - スーパーアパタイト超微細ナノ粒子 - Google Patents

スーパーアパタイト超微細ナノ粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の炭酸アパタイトに関する問題を解消した炭酸アパタイト粒子の提供を目的とする。
【解決手段】平均粒径が50nm以下である炭酸アパタイト粒子が分散した水溶液。
【選択図】なし

Description

本発明は、平均粒子径が50nm以下の炭酸アパタイト粒子(本書では、これを「スーパーアパタイト超微細ナノ粒子」と呼ぶ場合もある)が分散した水溶液及びその利用、並びに、これらに関連する技術に関する。
炭酸アパタイトは、水酸アパタイト(Ca10(PO(OH))の水酸基(OH- ) の一部を炭酸基(CO 2- ) にて置換した化学構造を有する。特許文献1には、物質を細胞内に導入するための担体として炭酸アパタイトを用いることが提案されている。具体的に特許文献1には、目的の物質及びリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子をpH8.0からpH6.0に変化させた場合において、pH6.0に変化させてから所定時間内に、pH8.0において存在していた前記複合体粒子の少なくとも50%が溶解する細胞導入剤が開示されている。
また、特許文献2には、炭酸アパタイトは、一次粒子径は小さいが、凝集性が強く、二次的粒子径が大きいという問題があり、それを解消するための手段として、リン酸とカルシウムを含む水溶液の炭酸量や反応雰囲気を制御する方法を開示している。しかしながら、これらの従来技術を踏まえても、炭酸アパタイトを物質の細胞内や生体内へと運ぶ担体として実用化するには、更なる改善が必要であった。
WO2004/043495 特開2005−75717
即ち、従来の炭酸アパタイトを用いた物質の細胞内への取り込み効率は、必ずしも満足できるものではなく、更なる改善の余地があった。また、炭酸アパタイトを動物に動静脈注射等によって投与するには、投与に適した生理食塩水等の溶液に溶解する必要があるところ、炭酸アパタイトの作製に用いた溶媒から、生理食塩水等の溶媒に置換する際に遠沈を行うと、炭酸アパタイトが凝集し、巨大な塊を形成し投与(特に、血中への投与)に用いることができないという事情がある。そこで、本発明は、このような従来の炭酸アパタイトに関する問題を解消することを代表的な目的とする。
上記のような問題を解決すべく、本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。(1)従来の炭酸アパタイトに対して、超音波振動処理を行うことで、平均粒径を50nm以下に制御することができ、従来の炭酸アパタイト粒子を用いた場合よりも格段に細胞への物質の取り込み効率が向上し、より短時間で、大量の物質の導入が可能である。(2)当該スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いて物質を生体へ動静脈内投与することにより物質の肝臓及び腎臓への蓄積を大幅に低減することが可能になり、一方で腫瘍組織においては、血管から遠く離れた領域にまで物質を効率よく浸出させることが可能である。(3)スーパーアパタイト超微細ナノ粒子で抗腫瘍活性を有する物質を腫瘍モデルマウスに静脈内投与することにより、従来技術と比較して、より少量の抗腫瘍活性を有する物質で飛躍的に向上した抗腫瘍活性が奏される。(4)炭酸アパタイト粒子にアルブミンを添加して超音波振動処理にかけることにより、粒径をより小さくすることが可能であり、粒子の凝集を効果的に抑制できることが可能である。(5)平均粒径が50nm以下である炭酸アパタイト粒子は、ポリトロンホモジナイザー(POLYTRON PT3000)、ボルテックスミキサー、超音波破砕装置(ULTRASONIC DISRUPTOR TOMYUD−201)等の一般的な微細化手段を用いても得ることはできないが、炭酸アパタイト粒子を適当な容器に収容して試験管等の洗浄に通常用いられる超音波洗浄器の水浴に浮かべながら、超音波をかけることによって簡便且つ確実に得られる。本発明者等は、斯かる知見に基づき、更なる検討と改良を加えた末、本発明を完成するに至った。
代表的な本発明を以下に示す。
項1.
平均粒径が50nm以下である炭酸アパタイト粒子が分散した水溶液。
項2.
水溶液が生理食塩水等の生体投与可能な水溶液である、項1に記載の水溶液。
項3.
物質を細胞内に導入させるための運搬体である、項1又は2に記載の水溶液。
項4.
物質が薬剤である、項3に記載の水溶液。
項5.
薬剤が炭酸アパタイト粒子に内包されている、項1又は2に記載の水溶液。
項6.
更に、アルブミンを含む、項1〜5のいずれかに記載の水溶液。
項7.
従来の炭酸アパタイト粒子を含む水溶液を超音波振動処理することを含む、項1に記載の水溶液を製造する方法。
項8.アルブミンを含む、炭酸アパタイト粒子の凝集阻害剤。
項9.アルブミンを含む、炭酸アパタイト粒子の微細化促進剤。
本発明の代表的な効果としては、次が挙げられる:(1)従来の炭酸アパタイト粒子を利用した場合と比較して、遥かに効率的に物質を細胞内に導入することが可能である。(2)炭酸アパタイトを用いた生体への物質の導入を血管内投与を介して行うことが可能である。(3)スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いたドラッグデリバリーシステムの実用化を可能にする。(4)薬物の投与による肝臓及び腎臓の毒性を格段に低減することが可能であるため、より安全性に優れた各種疾患の治療を提供することが可能である。(5)スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、血管内投与した場合に効率的に腫瘍組織に浸出する。(6)スーパーアパタイト超微細ナノ粒子をアルブミンと組み合わせることによって粒子の粒径をより小さくすること、及び再凝集を抑制することが可能である。(7)非常に簡便且つ効率的に炭酸アパタイト粒子を平均粒径数十ナノメールの大きさに微細化することができる。
実施例1のスーパーアパタイト超微細ナノ粒子(1)の粒径及び形態を走査型プローブ顕微鏡で測定した結果である。 実施例1のスーパーアパタイト超微細ナノ粒子(2)の粒径及び形態を走査型プローブ顕微鏡で測定した結果である。 実施例1のスーパーアパタイト超微細ナノ粒子(3)の粒径及び形態を走査型プローブ顕微鏡で測定した結果である。 従来型の炭酸アパタイト粒子の粒径及び形態を測定した結果である。 KM12sm細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを測定した写真を示す。 KM12sm細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを蛍光度で測定した結果を示す。 22RV1細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを測定した写真を示す。 22RV1細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを蛍光度で測定した結果を示す。 FaDu細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを測定した写真を示す。 FaDu細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを蛍光度で測定した結果を示す。 HCT116細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを解析した結果を示す。 HCT116細胞に対するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の取り込みを高解像度で解析した写真を示す。 HCT116細胞に対するリポフェクタミンの取り込みを高解像度で解析した写真を示す。 腫瘍形成モデルマウスにスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を静注した際の肝臓、腎臓及び脾臓における蓄積を解析した結果を示す。 肝臓におけるスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の蓄積の有無を示す。 腎臓におけるスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の蓄積の有無を示す。 腫瘍組織(HCT116)血管及びその周辺組織におけるスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の分布を示す。 腫瘍組織(HT29)におけるスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の分布を示す。 腫瘍組織(HCT116)におけるスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の分布を蛍光強度に基づいて解析した結果を示す。 抗サバイビンsiRNAを包含するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子のHCT116細胞中での標的遺伝子タンパクの発現抑制を機能解析した結果を示す。 抗サバイビンsiRNAを包含するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子をHCT116細胞へ導入した場合の細胞生存率に対する影響を調べた結果を示す。 抗サバイビンsiRNA内包スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の腫瘍形成モデルマウスにおける腫瘍増殖に対する影響を示す。 ドキソルビシン包含スーパーアパタイト粒子による腫瘍形成モデルマウスにおける腫瘍増殖に対する影響を示す。 アルブミンの添加によってスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の凝集が抑制されることを示す。(−)は、アルブミンの添加及び超音波処理が施されていない場合の結果ことを示す。(+)は、アルブミンを添加せずに超音波振動処理が施した場合の結果を示す。(Alb)は、アルブミンを添加し、且つ、超音波振動処理を施した結果を示す。 従来型のアパタイト粒子と比較したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子のpH感受性を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用できる炭酸アパタイト及び炭酸アパタイト粒子は公知である。炭酸アパタイトは、水酸アパタイト(Ca10(PO(OH))の水酸基(OH- ) の一部を炭酸基(CO 2- ) にて置換した化学構造を有し、一般式Ca10−m(PO(CO1−nで表すことができる。ここで、Xは、炭酸アパタイトにおけるCaを部分的に置換しうる元素であればよく、例えば、Sr、Mn、希土類元素等を挙げることができる。mは、通常0以上1以下の正数であり、好ましくは0以上0.1以下であり、より好ましくは0以上0.01以下であり、更に好ましくは0以上0.001以下である。Yは、炭酸アパタイトにおけるCOを部分的に置換しうる単位であり、OH、F、Cl等を例示することができる。nは、通常0以上0.1以下の正数であり、好ましくは0以上0.01以下であり、より好ましくは0以上0.001以下であり、更に好ましくは0以上0.0001以下である。
炭酸アパタイト粒子は、公知の手法に従って得ることが出来る。例えば、カルシウムイオン、リン酸イオン及び炭酸水素イオンを含有する水溶液を調製することにより得ることが出来る。水溶液中の各イオン濃度は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り特に制限されず、下記を参考に適宜設定することができる。
水溶液中のカルシウムイオン濃度は、通常0.1mM以上であり、好ましくは0.5mM以上であり、より好ましくは1mM以上である。カルシウムイオン濃度の上限は、通常1M以下であり、好ましくは100mM以下であり、より好ましくは10mM以下である。
水溶液中のリン酸イオン濃度は、通常0.1mM以上であり、好ましくは0.5mM以上であり、より好ましくは1mM以上である。リン酸イオン濃度の上限は、通常1M以下であり、好ましくは100mM以下であり、より好ましくは10mM以下である。
水溶液中の炭酸水素イオン濃度は、通常1.0mM以上であり、好ましくは5mM以上であり、より好ましくは10mM以上である。炭酸水素イオン濃度の上限は通常10M以下であり、好ましくは1M以下であり、より好ましくは100mM以下である。
カルシウムイオン、リン酸イオン及び炭酸水素イオンの供給源は、水溶液中にこれらのイオンを供給可能である限り特に制限されないが、例えば、これらのイオンの塩を水溶液に添加することができる。具体的には、カルシウムイオン源としてCaClを用いることができ、リン酸イオン源としてNaHPO・2HOを用いることができ、炭酸イオン源としてNaHCOを用いることができる。
炭酸アパタイト粒子に他の物質を包含させる場合は、炭酸アパタイト粒子を形成する際に、他の物質を水溶液に添加することができる。他の物質の種類は特に制限されないが、炭酸アパタイト粒子を細胞又は生体への物質の運搬体として用いる場合は、種々の薬剤(生理活性物質)を用いることができる。本書において、「内包」とは、他の物質を運搬可能な状態で炭酸アパタイト粒子と他の物質とが任意の態様で接着している状態を含む。例えば、炭酸アパタイト粒子の内側又は外側に他の物質が接着した状態が含まれる。
上記薬剤としては、例えば、DNA、RNA、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA等の核酸、酵素、ペプチド又はタンパク質、各種ペプチド性ホルモン等のポリペプチド、各種抗がん剤、中枢神経系疾患治療薬、各種抗生物質、末梢神経疾患治療薬、感覚器官疾患治療薬、循環器官疾患治療薬、呼吸器官系疾患治療薬、消化器官系疾患治療薬、ホルモン剤、泌尿生殖器官疾患治療薬、外皮疾患治療薬、歯科口腔疾患治療薬、ビタミン剤、滋養強壮薬、細胞賦活用剤、抗アレルギー剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではあに。これらの薬物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、血管内投与した際に腫瘍組織に効率的に浸出し、集積する性質を有する。よって、スーパーアパタイト粒子に包含させる好ましい物質は抗癌剤である。使用可能な抗癌剤は特に制限されないが、例えば、次の化合物を挙げることができる:シクロホスファミド水和物、イホスファミド、チオテパ、ブスルファラン、メルファラン、ニムスチン塩酸塩、ラニムスチン、ダカルパジン、テモゾロミド等のアルキル化剤;メトトレキサート、ペメトレキセドナトリウム水和物、フルオロウラシル、ドキシフルリジン、カペシタビン、タガフール、シタラビン、ゲムシタビン塩酸塩、フルダラビン燐酸エステル、ネララビン、クラドリビン、レボホリナートカルシウム等の代謝拮抗剤;ドキソルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩、プラルビシン、エピルビシン塩酸塩、イダルビシン塩酸塩、アクラルビシン塩酸塩、アムルビシン塩酸塩、ミトキサントロン塩酸塩、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ブレオマシイン塩酸塩、プペロマシン塩酸塩、ジノスタチンスチマラマー、カリケアマイシン等の抗生物質、ビンクリスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、ビンデシン硫酸塩、パクリタキセル等の微小管阻害剤;アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール塩酸塩水和物等のアロマターゼ阻害剤;シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン等の白金製剤;イリノテカン塩酸塩水和物、ノギテカン塩酸塩、エトポシド、ソブゾキサン等のトポイソメラーゼ阻害剤、プレドニゾロン、デキサメサゾンなどの副腎皮質ステロイド、サリドマイドおよびその誘導体であるレナリドマイド、プロテアーゼ阻害剤であるボルテゾミブ等。これらの抗癌剤は、いずれも商業的に入手可能であり、1種又は2種以上の物質を選択して使用することができる。
炭酸アパタイト作製に用いる水溶液中の他の物質の濃度は、その使用目的に応じて適宜設定することができる。抗がん剤を用いる場合は、例えば、10〜1000μM、20〜500μM、又は40〜200μMの濃度で用いることができる。siRNA等の核酸を用いる場合は、例えば、0.1〜1000nM、0.5〜500nM、又は1〜200nMで用いることができる。
各イオン供給源及び他の物質の混合順序は特に限定されず、目的とする炭酸アパタイト粒子が得られる限り、いかなる混合順序で水溶液を調製してもよい。例えば、カルシウムイオン及び他の物質を含有する第1の溶液を調製するとともに、別途、リン酸イオン及び炭酸水素イオンを含有する第2の溶液を調製し、第1の溶液と第2の溶液とを混合して水溶液を調製することができる。
炭酸アパタイト粒子を作製するための水溶液は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り、上述する各イオン供給源及び他の物質以外の成分を含んでも良い。例えば、水溶液中に上記組成物中に、フッ素イオン、塩素イオン、Sr、Mn等を添加することにより、炭酸アパタイトにおけるCaまたはCOを部分的に置換してもよい。但し、フッ素イオン、塩素イオン、Sr、Mnの添加量は、形成される複合体粒子のpH溶解性、粒径範囲に著しい影響を与えない範囲内とすることが好ましい。また、炭酸アパタイト粒子を作製するための水溶液は、細胞培養用の各種培地やバッファーを利用して調製することもできる。
炭酸アパタイト粒子は、上記の各イオンを含有する水溶液のpHを6.0〜9.0の範囲に調整し、一定時間放置(インキュベート)することによって得ることができる。炭酸アパタイト粒子を形成する際の当該水溶液のpHは、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは7.1以上、更に好ましくは7.2以上あり、より更に好ましくは7.3以上、特に好ましくは7.4以上、最も好ましくは7.5以上である。一方、炭酸アパタイト粒子を形成する際の当該水溶液のpHは、好ましくは8.5以下であり、より好ましくは8.0以下である。
炭酸アパタイト粒子を形成する際の当該水溶液の温度条件は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り特に制限されないが、通常10℃以上であり、好ましくは25℃以上、より好ましくは37℃以上である。一方、温度条件の上限は通常80℃以下であり、好ましくは70℃以下である。
炭酸アパタイト粒子を形成するための当該水溶液の放置時間は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り特に制限されないが通常1分〜24時間であり、好ましくは10分〜1時間である。粒子形成の有無は、例えば、顕微鏡下で観察することによって確認することができる。
炭酸アパタイト粒子の平均粒径は、50nm以下であることが好ましい。平均粒径を50nm以下にすることに制御することにより、上述する所望の効果が奏される。炭酸アパタイト粒子の平均粒径の下限値は、上述する所期の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば、1nm以上、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上である。一方、炭酸アパタイト粒子の平均粒径の上限は、より好ましくは40nm以下であり、更に好ましくは30nm以下、より更に好ましくは20nm以下、一層好ましくは10nm以下である。
炭酸アパタイト粒子の平均粒径を50nm以下に制御する手段は、特に制限されないが、好ましくは超音波振動処理である。ここで、超音波振動処理とは、いわゆる菌体破砕等に用いられる超音波破砕機やホモジナイザー等の超音波振動子を直接試料に接触させて超音波をかける処理ではなく、一般に精密機器や試験管等の洗浄に用いられる超音波振動子と洗浄槽とが一体となった超音波洗浄器を用いた処理である。超音波洗浄器の洗浄槽(水槽)に液体(例えば、水)を入れ、そこに炭酸アパタイト粒子を収容した容器(例えば、プラスチック製のチューブ)を浮かべ、精密機器を洗浄する要領で液体を介して炭酸アパタイト粒子を含む水溶液に超音波をかける処理を意味する。これによって、簡便且つ効率的に炭酸アパタイト粒子の粒径を50nm以下に微細化することができる。
超音波振動処理に使用可能な装置は、上記超音波洗浄器のように、水などの溶媒を介して間接的に炭酸アパタイト粒子を収容した容器に超音波振動を与えることが可能であるものであれば特に制限されない。汎用性及び取り扱い性の良さという観点から、超音波振動子及び恒温槽を備えた超音波洗浄器を用いることが好ましい。
上記の超音波振動処理の条件は、粒径を50nm以下に制御可能である限り特に制限されない。例えば、水槽の温度は、5〜45℃の温度から適宜選択することができ、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは20〜30℃である。超音波振動処理の高周波出力は、例えば、10〜500Wの範囲で適宜設定することができ、好ましくは20〜400W、より好ましくは30〜300Wであり、更に好ましくは40〜100Wである。発振周波数は、通常10〜60Hzであり、好ましくは20〜50Hzであり、より好ましくは30〜40Hzである。超音波振動処理期間は、例えば、30秒〜30分であり、好ましくは1〜20分、より好ましくは3〜10分の範囲で適宜設定することが出来る。
超音波振動処理を行う際に用いる、炭酸アパタイト粒子を包含する容器の種類は、粒子の粒径を50nm以下に微細化することが可能である限り制限されず、水溶液の容量や使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、1〜1000ml容量のプラスチック製チューブを用いることができる。
超音波振動処理によって得られるスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の粒径は、上述する実施例に示すように、走査型プローブ顕微鏡を用いて観察することにより測定することが可能である。尚、粒径を測定するに際して、測定部位をCCDカメラで確認し、明らかに走査型プローブ顕微鏡を用いた測定に適さない巨大な粒子(例えば、粒径5μm以上)が存在する場合は、それらは測定対象範囲から除去される。本書において、粒径とは、走査型プローブ顕微鏡で測定した際に、別個の粒子として認識可能な独立した粒子の粒径を意味する。よって、複数の粒子が凝集している場合は、それらの集合体を一つの粒子と判断する。
超音波振動処理は、アルブミンの存在下(即ち、アルブミンを炭酸アパタイト粒子を含む水溶液に添加した状態)で行うことが好ましい。これは、アルブミンと炭酸アパタイト粒子とが共存する環境で超音波振動処理を行うことにより、より微細な粒径を有するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子が得られ、粒子の再凝集を抑制することも可能となるためである。
炭酸アパタイト粒子を含む水溶液中に添加するアルブミンの量は、微細化及び/又は再凝集抑制の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば、0.1〜500mg/ml、好ましくは1〜100mg/ml、より好ましくは1〜10mg/ml程度添加することができる。
超音波振動処理による炭酸アパタイト粒子の微細化は、生体への投与に適した溶媒中に分散した炭酸アパタイト粒子を得ることを可能にする。上述の通り、炭酸アパタイト粒子は、各種のイオン供給源となる物質を水、培地、又はバッファー等の溶媒に溶解させることによって得られるが、そのようにして得られる炭酸アパタイト粒子分散溶液は、浸透圧、緩衝能、無菌性等の観点から必ずしも生体への投与(血管内投与)に適していない。よって、炭酸アパタイト粒子が分散した溶媒を生体への投与に適した溶媒(例えば、生理食塩水)に置換するためには、通常、遠沈によって炭酸アパタイト粒子を溶媒から分離し、回収して溶媒を置き換える操作が必要である。しかしながら、このような操作を行うと炭酸アパタイト粒子同士が凝集し、粒子が巨大化するため、却って生体への投与には適さない状態へと変化してしまう。そこで、凝集した炭酸アパタイト粒子を生体への投与に適した溶媒に添加した上で、上述する超音波振動処理を行うことにより、生体への投与に適した溶媒中に分散した平均粒径が50nm以下の炭酸アパタイト粒子を得ることができる。
水溶液中の平均粒径50nm以下の炭酸アパタイト粒子の量は、使用目的に応じて適宜設定することが出来る。In vivo投与用途目的である場合は、例えば、1×10〜1×1012個/ml、好ましくは1×10〜1×1011個/ml、より1×1010〜5×1010個/ml、更に好ましくは3×109 〜3×1010個/ml、より更に好ましくは6×10〜1.5×1010 個/mlとすることができる。In vitroで使用する場合は、例えば、1×10〜1×1012個/ml、好ましくは1×10〜1×1011個/ml、より好ましくは1×10〜5×10個/ml、更に好ましくは3×107〜3×109個/ml、一層好ましくは6×107〜3×10個/mlとすることができる。
スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、上述する薬物等の物質を包含(又は接着)させることにより、その物質を細胞又は生体内に導入するための運搬体として利用することが可能である。in vitroで物質を細胞内に導入する場合は、スーパーアパタイト粒子の存在下で細胞を培養することにより、物質を細胞内に導入することが出来る。スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いて物質を導入することが可能な細胞は特に制限されず、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等の任意を細胞を適宜選択して使用することができる。
スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いて物質を生体内に導入する手法は、その目的に応じて適宜選択することができる。例えば、血管内(動脈内又は静脈内)注射、持続点滴、皮下投与、局所投与、筋肉内投与などによって投与することができる。好ましくは動静脈内投与である。
スーパーアパタイト超微細ナノ粒子に包含させる物質(例えば、薬物)の量は担持させる物質の種類や使用目的により異なるため、一概に定義することは困難である。炭酸アパタイト粒子作製の段階では、抗がん剤の炭酸アパタイトへの結合率は0.02〜1%で、siRNAなどの核酸の結合率は、30〜50%であるが、遠沈などにより炭酸アパタイト粒子を多く集めることで、抗がん剤や核酸などの薬剤、物質の全体量を増やすことが可能である。
薬剤を包含したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の投与量は、担持される薬物の量や、患者の性別、年齢、症状などに応じて適宜決定されるため、一概に決定することはできないが、例えば、1日あたり10〜30mg/m(体表面積)程度を投与することができる。
スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を投与するタイミングは、特に制限されないが、投与前に粒子が凝集することを回避するという観点から、超音波振動処理後速やかに投与することが好まし。例えば、超音波振動処理後1分以内、好ましくは30秒以内の投与が好ましい。但し、上述するように、アルブミンを添加することによってスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の凝集を抑制する場合は、超音波振動処理後、数分〜数十分経過後に投与することも可能である。
実施例1 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の製造
(1)DMEM溶液を用いたスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の製造
100mlの蒸留水に、1.35gのDMEM粉末及び0.37gのNaHCOを順に添加して完全に溶解させ、1NのHClを用いてpHを7.5に調整した。このDMEM溶液(100ml)を直径0.2μmのフィルターでろ過し、1mlDMEM溶液当たり、4μlのCaCl(1M)を混合し、37℃の水浴中で30分間インキュベートした。その後、15000rpm×5分で遠沈し、得られたペレットを蒸留水、細胞培養液又は生理食塩水等の細胞や生体に投与可能な水溶液に溶解し、10分間超音波振動処理をかけることにより、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子(以下、「粒子(1)」とする)を得た。超音波振動処理は、超音波振動機能を有するウォーターバスを用いて、20℃に設定した水に、プラスチック容器に収容したアパタイト粒子水溶液を浮かべ、高周波出力55W、発振周波数38kHzの条件で10分間行った。尚、スーパーアパタイト粒子をin vitro試験に用いる場合は、上記の遠沈を行う必要はない。顕微鏡を用いた粒径の測定を行う場合には、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を蒸留水に溶解した。動物実験に用いる場合は、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を生理食塩水に溶解調製した。細胞実験に用いる場合は、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子をDMEM溶液に溶解調製した。
(2)バッファーを用いたスーパーアパタイト粒子の製造
100mlの蒸留水に、0.37gのNaHCO、90μlのNaHPO・2HO(1M)、及び180μlのCaCl(1M)をこの順で添加して溶解させ、1NのHClでpHを7.5に調整した。これを直径0.2μmのフィルターでろ過した。得られたバッファー1ml当たりに4μlのCaCl(1M)を混合し、37℃の水浴中で30分間インキュベートした後、15000rpm×5分で遠沈し、得られたペレットを、蒸留水、細胞培養液又は生理食塩水等の細胞や生体に投与可能な水溶液に溶解し、10分間超音波振動処理をかけることにより、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子(以下、「粒子(2)」とする)を得た。超音波振動処理は、超音波振動機能を有するウォーターバスを用いて、20℃に設定した水に、プラスチック容器に収容したアパタイト粒子水溶液を浮かべ、高周波出力55W、発振周波数38kHzの条件で10分間行った。尚、スーパーアパタイト粒子をin vitro試験に用いる場合は、上記の遠沈を行う必要はない。顕微鏡を用いた粒径の測定を行う場合には、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を蒸留水に溶解した。動物実験に用いる場合は、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を生理食塩水に溶解調製した。細胞実験に用いる場合は、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子をDMEM溶液に溶解調製した。
(3)siRNAを包含したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の製造
上記(1)と同様に、100mlの蒸留水に、1.35gのDMEM粉末及び0.37gのNaHCOを順に添加して完全に溶解させ、1NのHClを用いてpHを7.5に調整した。このDMEM溶液(100ml)を直径0.2μmのフィルターでろ過し、1mlのDMEM溶液あたり、2μgのsiRNA、4μlのCaCl(1M)を混合し、37℃の水浴中で30分間インキュベートした。バッファーを用いて作製する場合は、上記(2)と同様に、100mlの蒸留水に、0.37gのNaHCO、90μlのNaHPO・2HO(1M)、及び180μlのCaCl(1M)をこの順に添加して溶解させ、1NのHClでpHを7.5に調整した。これを直径0.2μmのフィルターでろ過した。得られたバッファー1ml当たりに2μgのsiRNA、4μlのCaCl(1M)を混合し、37℃の水浴中で30分間インキュベートした。その後、15000rpm×5分で遠沈し、得られたペレットを蒸留水、細胞培養液又は生理食塩水等の細胞や生体に投与可能な水溶液に溶解し、10分間超音波振動処理をかけることにより、siRNAを包含したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子(以下、「粒子(3)」とする)を得た。ここでは、Alexa Fluor448で蛍光標識したsiRNA(AllStars Neg.siRNA AF488(QIAGEN社製))を用いた。超音波振動処理は、超音波振動機能を有するウォーターバスを用いて、20℃に設定した水に、プラスチック容器に収容したアパタイト粒子水溶液を浮かべ、高周波出力55W、発振周波数38kHzの条件で10分間行った。尚、スーパーアパタイト粒子をin vitro試験に用いる場合は、上記の遠沈を行う必要はない。顕微鏡を用いた粒径の測定を行う場合には、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を蒸留水に溶解した。動物実験に用いる場合は、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を生理食塩水に溶解調製した。細胞実験に用いる場合は、遠沈後にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子をDMEM溶液に溶解調製した。
実施例2 粒径及び形態の測定
実施例1で作製したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子(1)〜(3)の粒径及び形態等をマイクロカンチレバー(OMCL−AC240TS−RS,オリンパス社製)を備えた走査型プローブ顕微鏡(SPM−9500,島津製作所製)をダイナミックモードで使用して測定した。測定は、超音波振動処理後30秒以内に2回ずつ実施した。カバーガラスの表面に約10μlのサンプル水溶液を滴下し、5分の真空乾燥後、CCDカメラにて、平滑面を選択し、1〜5平方μmの範囲について測定した。その結果を以下の表1に示す。また、測定範囲について得られた2次元解析画像及び粒子の大きさのその数の分布を示すグラフを図1に示す。図1−1は粒子(1)であり、図1−2は粒子(2)であり、図1−3は粒子(3)である。これらの結果から、超音波振動処理によって、アパタイト粒子の粒径が10nm以下にすることが可能であることが確認された。また、siRNAを包含している場合にも同様であることも確認された。
比較例1 従来型の炭酸アパタイト粒子の粒径及び形態の測定
上記実施例1の(1)と超音波処理を行わない以外は同様にして炭酸アパタイト粒子を作製し、粒径及び形態の測定を実施例2と同様に実施した。その2次元解析画像を図2に示す。図2から、超音波振動処理をせずに作製した従来型の炭酸アパタイト粒子は、互いに凝集し、大部分がもはやミクロレベルでも粒径を保持していないことが確認された。このように従来型の炭酸アパタイト粒子は凝集しているため、個々の粒子の粒径を測定することはできないが、図2に示す解析画像から、個々の粒子が横方向に凝集し、幅が数μmオーダーであることは明らかである。
実施例3 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の細胞への取り込み
3種類のヒト癌細胞株(KM12sm、22Rv1、及びFaDu)を24ウェルプレートに均等に播種し(約3×10細胞/ディッシュ)、一晩培養した。KM12smは、ヒト大腸癌細胞株、22Rv1株はヒト前立腺癌細胞株であり、FaDu株はヒト頭頚部癌細胞株である。KM12sm株及びFaDu株の培養には、10%のウシ胎仔血清を添加したDMEM培地を用いた。22Rv1株の培養には、10%のウシ胎仔血清を添加したRPMI培地を用いた。培養は、5%CO2、37℃の条件で行った。
培養した各細胞株に、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子、従来型の炭酸アパタイト粒子、又はリポフェクタミン2000(Invitorogen社製)を用いて、Alexa Fluor 488で蛍光標識したコントロールsiRNA(QIAGEN社製)を細胞に導入した。このsiRNAを包含したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、実施例1の(3)の手順で作製した。従来型のアパタイト粒子は、超音波振動処理を行わない以外は実施例1の(3)の手順で作製した。リポフェクタミン2000は、製品のプロトコールに従って作製した。これらを癌細胞株を培養したウェルに添加し、その後4時間、12時間、及び24時間の時点で培地を除去し、PBSで洗浄した後、細胞内へのsiRNAの取り込みを各ウェルを蛍光顕微鏡(BZ−9000,KEYENCE社製)で観察することにより評価した。結果を図3(KM12sm株)、図4(22Rv1株)及び図5(FaDu株)に示す。
図3〜5に示される結果から、いずれの細胞株に対してもスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた場合にのみ、トランスフェクション後4時間の時点で明確なsiRNAの取り込みが確認された。時間の経過に伴って、取り込み量が増加する傾向が見られたが、KM12sm株に対しては、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた場合にのみ実質的にsiRNAの取り込みの増加が確認された。FaDu細胞株に対しては、培養開始後12時間の時点で従来型のアパタイト粒子及びリポフェクタミンを用いたトランスフェクションによってもsiRNAの取り込みが見られ始めたが、その量はスーパーアパタイト粒子を用いた場合と比較すると圧倒的に低い。これらの結果から、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、従来型のアパタイト粒子やリポフェクタミン等の手法と比較して格段に効率的(短時間で)且つ効果的に細胞内に物質を導入することが可能であることが実証された。また、全ての癌細胞株に対して同様の効果が確認されたことから、癌細胞の種類による影響を受け難いことが示された。
実施例4 共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞への取り込みの解析
ヒト大腸癌細胞であるHCT116株をμ−ディッシュ(35mm,high:ibidi社製)に均等に播種し(1×10細胞/ディッシュ)、10%のFBSを含有するDMEM培地で24時間培養した。その後、実施例3で用いたAlexa Fluor 488で蛍光標識したコントロールsiRNAを包含するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子又はリポフェクタミン2000を含有する新たなDMEM培地(2ml)に培地を交換して培養を継続した。尚、ネガティブコントロールとして、siRNAの包含しないスーパーアパタイト超微細ナノ粒子及びリポフェクタミン2000を用いた。培地交換後、0時間、4時間、及び12時間の時点で培地を取り除き、PBSで2回洗浄して、4%のPFAを用いて30分間固定化した。そして、DAPIが添加されたプロロングゴールド褐色防止剤(Invitorogen社製)を培養ディッシュに一滴添加し、4℃で24時間インキュベートした。その後、共焦点レーザー走査型顕微鏡(FV1000−D,オリンパス社製)を用いて解析した。
4時間後及び12時間後に測定した蛍光強度を図6に示す。図6から、スーパーアパタイト粒子の使用によって、リポフェクタミン2000を使用する場合と比較して約2倍以上の蛍光強度(即ち、siRNAの取り込み)が確認された。また、リポフェクタミン2000を用いた場合は、4時間後よりも12時間後で蛍光強度が低下し、持続的なsiRNAの取り込みは見られなかったが、スーパーアパタイト粒子を用いた場合は、12時間後の蛍光強度は4時間後よりも有意に上昇しており、持続的な取り込みが確認された。
高解像度で解析した写真を図7に示す。図7−1はスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた結果であり、図7−2はリポフェクタミン2000を用いた結果である。これらの図において、左側はDAPIによって染色された細胞の核の位置を示し、中央はsiRNAを包含するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子又はリポフェクタミン2000の位置を示し、右側はこれらを融合させた写真である。0時間の画像を比較すると、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた場合は、この時点で既に細胞表面にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子が結合しているが、リポフェクタミン2000についてはその存在は確認できない。これは、リポフェクタミンよりもスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の方が、細胞への親和性が高く、急速に細胞表面に接着することを示し、結果としてより短時間での物質の細胞内への導入を可能にすると考えられる。次に、4時間後及び12時間後の結果を比較すると、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の場合は、4時間後に細胞質中に、Alexa Fluor 488蛍光が観察され、12時間後には蛍光が細胞質全体に広がり、核にまで到達している。一方、リポフェクタミン2000の場合は、12時間後においても蛍光シグナルは細胞質の一部に凝集した状態であった。これら違いは、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子が、ナノスケールの粒子であること及びpHに依存して内容物質を放出する性質を有することに起因していると考えられる。即ち、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は電荷的に細胞表面に接着する。そして、細胞表面に接着したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、そのナノスケールのサイズによって、加速的にエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。その後、エンドソーム内でのpH低下によってスーパーアパタイト超微細ナノ粒子内の物質が迅速に放出され、エンドソームからも抜け出すことが可能となる。一方、リポフェクタミンには、これらの機構は存在しない。エンドソームからの遊離は、リソソームによるsiRNAの分解を回避するという意味で有益である。
実施例5 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の生体内分布
7週齢のBALB/cAヌードマウス(日本クレア社製)の背部左右に、ヒト大腸癌細胞であるHCT116株又はHT29株を皮下注射し、固形腫瘍を有するモデルマウスを作製した。腫瘍が10mmの大きさに達した時点でマウスをランダムに3グループに分けた:コントロール群、naked‐siRNA投与群、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子投与群。naked‐siRNA投与群には、6−FAMで蛍光標識したコントロールsiRNA(KOKEN社製)を40μg含有する生理食塩水を尾静脈注射によって投与した。実施例1の(3)と同様の手順で6−FAMで標識したコントロールsiRNAを包含するスーパーアパタイト粒子を作製し、naked‐siRNA投与群への投与量と同量を、スーパーアパタイト粒子投与群に尾静脈投与した。投与量の調整は、J.Control Release,147,101−108(2010)に記載される手法に従って行った。尚、従来型のアパタイト粒子は、比較例1に示す通り凝集して非常に大きな塊を形成しているため、静脈内へ投与すれば血管内で詰まるため、そのような投与はできない。
血管を染色するために開腹30分前にTexas redで標識したデキストランを静脈内投与した。siRNAの投与後、4時間又は12時間が経過した時点で、麻酔下で肝臓、腎臓、脾臓及び腫瘍を摘出し、O.C.T.コンパウンドに包埋して−80℃で保存した。凍結したサンプルから厚み20μmの切片を作製し、4%のPFAを用いて30分間固定し、PBS−Tを用いた5分間の洗浄を3回繰り返した。その後、DAPIを含有するプロロングゴールド褐色防止剤をマウントし、4℃で24時間インキュベートした。そして、サンプル中の蛍光標識されたsiRNAを蛍光顕微鏡(BX−9000、KEYENCE社製)を用いて評価した。血管からのスーパーアパタイト粒子又はnaked‐siRNAの浸出を可視化するために、二光子イメージングを実施した。このイメージングには、900nmに調整されたレーザー(Mai−Tai HP Ti:Sapphire;スペクトラ・フィジックス社製)で駆動される多光子顕微鏡(SP5,Leica社製)と20倍水浸対物レンズを備えた直立型顕微鏡(DM6000B;Leica社製)とからなるシステムを利用した。解析した結果を図8〜10に示す。図9−1は4時間後の肝臓の画像であり、図9−2は4時間後の腎臓の画像である。図10−1は、HCT116株由来の腫瘍組織の画像であり、図10−2はHT29株由来の腫瘍組織の画像であり、図10−3はHCT116株由来の腫瘍組織において検出された6−FAMに由来する蛍光強度を示す。
図8及び9に示される結果から、投与後4時間及び12時間の両方において、naked‐siRNAは肝臓及び腎臓に蓄積するが、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は肝臓及び腎臓のいずれに実質的に蓄積しないことが確認された。スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を利用した場合の4時間後及び12時間後のsiRNAの肝臓での蓄積量は、naked‐siRNAの場合の10分の1及び26分の1である。また、スーパーアパタイト粒子利用した場合の4時間後及び12時間後のsiRNAの腎臓での蓄積量は、naked‐siRNAの場合の4分の1及び5分の1である。更に、図8に示される蛍光強度はコントロールとの比であり、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を利用した場合の正常臓器における蛍光比が約1である。これは、何もしていないコントロールとほぼ同じ蛍光を示すことを意味し、正常組織にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子がほとんど蓄積されないことを示唆した。これらの結果は、スーパーアパタイト粒子が肝臓や脾臓における細胞内皮系に捕らえられ難く、肝毒性が低く、腎臓によっても除去され難いことを示す。
図10−1は、naked‐siRNAを投与した場合に、血管中にsiRNAの存在を示すシグナル(緑)が幾分検出されたことを示すが、腫瘍細胞のエリアにはそのようなシグナルは明確には検出されなかったことを示す。これは、naked‐siRNAを静脈投与した場合は、腫瘍組織において、血管から腫瘍細胞への十分なsiRNAの浸出が得られないことを示唆する。一方、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を投与した場合は、血管組織だけでなく、腫瘍組織でも広範囲に亘ってsiRNAの存在を示す明確なシグナルが検出された。同様の結果が、HT29株由来の腫瘍組織においてもより明確に示された(図10−2)。これらは、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子に包含されたsiRNAがnaked‐siRNAよりも生体内の環境においてより安定であり、血管壁からの浸出及び血管から遠く離れた腫瘍組織にまで到達可能であることを示す。これは、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた場合に腫瘍組織において検出された蛍光強度が、naked‐siRNAを用いた場合と比較して格段に高いことからも支持される(図10−3)。尚、図10−3において、スーパーアパタイト粒子を用いた場合に12時間後に検出された蛍光強度が4時間後に検出された蛍光強度よりも低いのは、アパタイト粒子が腫瘍組織等の低pHの環境において内容物を速やかに放出する性質を有していることを反映していると考えられる。
実施例6 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子によって導入された物質の機能評価1
上記の実施例からスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を利用することによって、より効率的に物質を細胞に導入することが可能であることが示された。そこで、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を利用して導入されたsiRNAが実際に細胞中で機能しているのか否かを抗サバイビンsiRNA(KOKEN社製)を用いて検証した。実施例1の(3)の手順に従い、抗サバイビンsiRNAを包含するスーパーアパタイト粒子を作製した。また、製品のプロトコールに従って、抗サバイビンsiRNAを含むリポフェクタミン2000を作製した。これらを実施例4と同様にして、HCT116株に導入した。導入後24時間及び48時間の時点でウェスタンブロットによってサバイビンタンパク質の存在を確認した。その結果を図11に示す。図11の左は、リポフェクタミン2000の結果であり、右はスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた結果である。図11から、リポフェクタミン2000を用いた場合は、48時間後にサバイビンタンパク質が完全に消失しているのが確認されたのに対し、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を使用した場合は、24時間の時点でサバイビンタンパク質の完全な消失が確認された。これより、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子で導入されたsiRNAが細胞中で機能することが確認されただけでなく、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の利用によってリポフェクタミンよりも迅速にsiRNAを細胞内に導入し、機能させることが可能であることが確認された。
実施例7 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子によって導入された物質の機能評価2
上記実施例6に引き続き、HCT116株の細胞増殖に対する影響をWST−8アッセイ(同仁化学研究所製)で評価した。HCT116株を96ウェルプレートに均等に播種し(1×10細胞/ウェル)、24時間培養後に培地を抗サバイビンsiRNAを包含するスーパーアパタイト粒子又はリポフェクタミン2000を含む新たな培地(100μl)と交換した。その後48時間及び72時間の時点で細胞の生存率をマイクロプレートリーダー(680XR,Bio−Rad社製)を用いた分光光度分析によって評価した。その結果を図12に示す。図12から、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子で抗サバイビンsiRNAを導入した場合にのみ顕著な細胞生存率の低下が確認された。
実施例8 腫瘍モデルマウスを用いた抗腫瘍活性の評価
実施例5と同様にしてHCT116株由来の腫瘍を形成したマウスを作成し、腫瘍の大きさが5〜6mmになった時点で抗サバイビンsiRNA又はコントロールsiRNAを包含するスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の尾静脈投与を開始した。0日、2日、4日、7日、9日、11日、14日、16日及び18日に各15μgの抗サバイビンsiRNA内包スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を投与した。抗腫瘍活性を腫瘍のサイズに基づいて測定した。腫瘍の大きさは次の式に基づいて算出した:V=a×b/2(ここで、Vは大きさ、aは長径、bは短径を意味する)。尚、n数は10である。結果を図13に示す。図13に示される結果から、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いて抗サバイビンsiRNAを投与することによって、初期の段階から継続して腫瘍の増大を抑制する効果が得られることが確認された。本試験においてマウスに投与されたsiRNAの全量は135μgであり、この値は既に報告されている他の手段を用いた投与に必要な量の約6分の1〜11分の1である。よって、この結果は、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子が従来の手法よりも効果的であることを示す。
実施例9 抗癌剤包含スーパーナノアパタイト粒子の抗腫瘍効果
100mlの蒸留水に0.37gのNaHCO、90μlのNaHPO・2HO(1M)、及び180μlのCaCl(1M)をこの順に添加して溶解させ1NのHClでpHを7.5に調整した。これを直径0.2μmのフィルターでろ過した。20gのマウス一匹に一回静脈投与に必要な抗癌剤包含スーパーナノアパタイト粒子は、以下のように作製した。即ち、上記のように得られたバッファー40ml当たりに、1.28mlのドキソルビシン(5mM)及び200μlのCaCl(1M)を混合し、37℃の水浴中で30分間インキュベートした後、15000rpm×5分で遠沈し、得られたペレットを250μlの生理食塩水に溶解し、10分間超音波振動処理をかけることにより、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を得た。
7週齢のBALB/cAヌードマウス(日本クレア社製)の背部左右側に、ヒト大腸癌細胞であるHCT116株(5.0×10cell)を皮下注射し、固形腫瘍を有するモデルマウスを作製した。腫瘍が5〜6mmの大きさに達した時点でマウスをランダムに3グループに分けた:コントロール群、ドキソルビシン単独投与群、ドキソルビシン包含スーパーアパタイト超微細ナノ粒子投与群。0日、1日、2日、7日、8日、9日、14日、15日及び16日に、ドキソルビシン単独群は 0.33mg/kg/day の投与量を、ドキソルビシン包含スーパーアパタイト超微細ナノ粒子投与群では、同量のDXRをスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いて、マウス尾静脈よりi.v.投与した。スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いた投与は、超音波振動処理後、迅速に(30秒以内に)行った。抗腫瘍活性を腫瘍のサイズに基づいて測定した。腫瘍の大きさは次の式に基づいて算出した:V=a×b/2(ここで、Vは大きさ、aは長径、bは短径を意味する)。尚、n数は6である。結果を図14に示す。図14に示される結果から、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いたドキソルビシンを投与することによって、12日目および19日目においてコントロール群、free-DXR投与群よりスーパーアパタイト超微細ナノ粒子投与群では、有意に腫瘍の大きさが小さかった。
実施例10 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子の凝集抑制
実施例1の(2)と同様にしてスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を作製した。但し、ここでは、水溶液にスーパーアパタイト超微細ナノ粒子ペレットを溶解した後、5mg/mlのアルブミンを添加して、10分間超音波振動処理を行った。超音波振動処理は、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を含む蒸留水又は生理食塩水を50ml容量のチューブ(BD Falcon社製)に入れ、洗浄槽を30℃以下の水で満たした超音波洗浄器にそれを浮かべて、55Wの高周波出力、38kHzの発振周波数10分間の条件で超音波振動処理を行った。コントロールとして、アルブミンを添加せずに同様の処理を行って作製したスーパーアパタイト超微細ナノ粒子、並びにアルブミンの添加及び超音波振動処理を行わずに作製した炭酸アパタイト粒子を使用した。このようにして調製したスーパーアパタイト粒子の粒径を実施例2と同様にして測定した。その結果を下記の表2及び図15に示す。
表2及び図15に示されるように、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子水溶液にアルブミンを添加することによって、超音波処理後に粒子が再凝集することを抑制可能であることが判明した。アルブミンの添加によってスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の再凝集が抑制される機構は未だ十分には解明されていないが、10nmオーダーの個々の粒子表面にアルブミンがコーティングし、再凝集を防ぐと考えられる。これは、アルブミンは陰性に荷電しており、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子のカルシウム陽性荷電部位に対して、電荷的に付着するため、結果としてスーパーアパタイト超微細ナノ粒子の陽性荷電部位であるカルシウムイオンが、別の粒子の陰性荷電部位である炭酸イオンやリン酸イオンと電荷的に結合することが妨げられるためと考えられる。
実施例11 スーパーアパタイト超微細ナノ粒子のpH感受性
実施例1及び比較例1に従って、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子(2)及び(3)並びに従来型の炭酸アパタイト粒子を作製した。遠沈後、各粒子のペレットを1mlの生理食塩水で溶解した。各サンプルに対して1NのHClを滴下して、低下する各pHに対する各サンプルの混濁度をマイクロプレートリーダー(680XR,Bio−Rad社製)を用いた分光光度分析によってOptical Densityとして評価した。なお、pH測定は、微小pH電極(Microelectrodes, Inc.)を備えたDocu pH meter(sartorius社製)を用いた。
結果を図16に示す。この結果から、スーパーアパタイト超微細ナノ粒子は、従来型の炭酸アパタイト粒子よりも高いpH感受性を有する(即ち、pHの低下に伴って粒子が崩壊し易い)ことが示された。スーパーアパタイト超微細ナノ粒子を用いるにとによって、従来型の炭酸アパタイト粒子と比較して、物質の細胞内への取り込み効率が向上することは、このより高いpH感受性にも起因していると考えられる。

Claims (5)

  1. 平均粒径が50nm以下である炭酸アパタイト粒子が分散した血管内投与に適した水溶液であり、
    前記炭酸アパタイト粒子に、抗腫瘍活性を有する薬剤が内包されてなり、且つ
    血管内投与される腫瘍治療剤として使用される、水溶液。
  2. 抗腫瘍活性を有する薬剤が内包されている前記炭酸アパタイト粒子が超音波振動処理によって得られたものである、請求項1に記載の水溶液。
  3. 水溶液が生理食塩水である、請求項1又は2に記載の水溶液。
  4. 更に、アルブミンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の水溶液。
  5. 抗腫瘍活性を有する薬剤を内包した炭酸アパタイト粒子を含む水溶液を収容した容器に対して、溶媒を介して超音波振動与える超音波振動処理を行う工程を含む、請求項1に記載の水溶液を製造する方法。
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