JP5431185B2 - 制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム - Google Patents

制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム Download PDF

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Description

本発明は、地震時に、可変減衰ダンパが介装された制振構造物の柱に作用する軸力を制御可能とするための可変減衰ダンパの制御システムに関するものである。
一般に、既存の高層や超高層ビル等の建物を耐震改修する場合には、地震発生時に上記建物の層間変位を抑制するため、柱梁架構内に制振ダンパを介装したブレース等の耐震補強部材を設置する工法が多く採用されている。
ところが、上記柱梁架構内に制振ダンパを増設して、地震時における層間変位を抑制すると、上記柱梁架構に制振ダンパの減衰力が加わるために、その復元力が増大し、当該復元力が柱の軸力として下層部に伝わることになる。
一方、既存の建物における上記柱は、このような軸力の増加を見込んだ強度には設計されていない。このため、別途上記柱の補強が必要になるという問題点が生じる。
そこで、本出願人は、先に下記特許文献1において、超高層ビル等の建物を耐震改修するに際して、上記制震ダンパとして、層間変位に依存して減衰力が減少するオイルダンパを用いた建物の耐震補強方法を提案した。
図9および図10は、上記耐震補強方法によって耐震改修された建物の構造を示すもので、建物1における既存骨組構造体の相対向する既存柱2とこれらの既存柱2間に横架される上下の既存梁3とによって囲まれた架構内に、オイルダンパ4を備えた補強骨組部5によって構成された制震構造部を配設したものである。そして、オイルダンパ4は、所定の減衰力・減少開始変形点とストロ−クエンドとの間の変形領域において、変形が増加するにつれて減衰力が所定の減衰力・減少勾配で漸減するダンパ復元力を有する構造を有している。
このような建物の耐震補強方法によれば、地震時に、制震構造部5が連結している既存柱2に作用する柱付加軸力を軽減することによって、耐震補強後においても、既存柱2の下部2aに生じる柱付加軸力が、補強前の柱付加軸力を超えないようすることができ、よって当該柱2を無・柱耐力補強構造とすることができるという利点がある。
特開2006−183250号公報
しかしながら、上記耐震補強方法にあっては、地震時に上記層間変位が最大になった時点における柱梁架構の復元力を低減することは可能であるものの、どの程度オイルダンパ4の減衰力を低減すれば、柱付加軸力が補強前の柱付加軸力を超えないようすることができるかについては、想定される地震動に対して多くのシミュレーションを行い、オイルダンパ4の性能を試行錯誤的に設定する必要があるという問題点がある。
また、オイルダンパ4は、その変形領域において、変形が増加するにつれて減衰力が所定の減少勾配で漸減するものであるために、通常の減衰係数が一定のオイルダンパを用いた場合と比較して、減衰性能が低下する傾向にある。例えば、中小地震時のように、上記変形量が比較的小さく、よって柱付加軸力が問題にならない場合にも、層間変形が一定以上になって減衰力の減少開始変形点に至った場合には、減衰性能の低下を招くという問題点がある。
さらに、地震動は、建物1に対して水平面内のX−Y方向に2次元的に作用するために、上記柱付加軸力も、建物1の短辺方向と長辺方向の複合効果として表れる。このため、上記柱付加軸力を高い精度で制御するためには、X−Yの各々の方向について振動の影響を考慮する必要があるものの、変形量に依存する上記オイルダンパ4によっては、このような効果を考慮することができないという問題点もある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、地震の規模に応じて、適宜可変減衰ダンパの減衰力を制御することにより、制振構造物の柱に作用する軸力の増加を抑えることが可能となる可変減衰ダンパの制御システムを提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システムは、地震時に、可変減衰ダンパが介装された制振構造物における柱または柱梁架構の応答量を検出する応答検出手段と、この応答検出手段からの検出値に基づいて、上記可変減衰ダンパの減衰係数を切り換える制御手段とを備えてなり、上記制御手段は、上記検出値から上記柱に作用する軸力を評価し、当該軸力と予め設定された当該柱に作用する軸力の設定値とを比較して、上記軸力が上記設定値よりも大きい場合に、上記可変減衰ダンパの減衰係数をより低い値に切り換えることを特徴とするものである。
ここで、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記応答検出手段が、上記柱梁架構の層間変位または上記可変減衰ダンパの移動量を検出するためのセンサであり、かつ上記制御手段が、上記層間変位または移動量から上記柱に作用する軸力を評価することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、上記制御手段が、予め設定した地震時における上記制震構造物の卓越振動モードに基づいて、上記センサによって検出された1以上の階層の層間変位から当該制振構造物の全階層における層間変位を推定して上記軸力を評価することを特徴とするものである。
これに対して、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、上記制御手段が、上記センサからの検出信号に基づいて、リアルタイムに上記制震構造物の応答変位を推定し、上記制振構造物の全階層における層間変位を求めて上記軸力を評価することを特徴とするものである。
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明において、上記センサが、上記柱梁架構の上下に隣接した梁に設けられていることを特徴とするものであり、他方、請求項6に記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明において、上記センサが、上記柱梁架構の上下に離散した梁および地上に設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記応答検出手段が、1本または複数本の上記柱の下部に設置されて当該柱の軸方向の変形を検出する歪みゲージまたは変位計であり、かつ上記制御手段は、上記変位計が検出した変位量から上記柱に作用する軸力を算出することを特徴とするものである。
請求項1〜7のいずれかに記載の発明においては、地震時に、応答検出手段が柱または柱梁架構の応答量を検出すると、制御手段において、上記検出値から柱に作用する軸力を算出する。そして、算出された軸力と、予め設定された当該柱に作用する軸力の設定値とを比較して、上記軸力が上記設定値よりも大きい場合に、可変減衰ダンパの減衰係数をより低い値に切り換える。
これにより、可変減衰ダンパにおける振動の減衰力が減少して、当該可変減衰ダンパが組み込まれた柱梁架構の復元力が低下することにより、上記復元力に起因して柱に作用する付加軸力が小さくなる。この結果、地震の規模に応じて、適宜可変減衰ダンパの減衰力を制御することにより、制振構造物の柱に作用する軸力の増加を抑えることができる。このため、新築の建物に適用した場合には、柱の設計を最適化することができ、また既存建物の耐震補強に適用した場合には、既存の柱に対する補強を不要にすることが可能となる。
ここで、上記応答検出手段としては、例えば請求項2〜6のいずれかに記載の発明のように、上記柱梁架構の層間変位を検出するためのセンサを用いることができる。この場合には、制御手段において、上記層間変位から当該層における柱梁架構の復元力を算出し、得られた復元力から柱に作用する軸力を算出して、当該軸力が設定値を超える場合に、可変減衰ダンパの減衰係数をより低い値に切り換える。
この際に、上記層間変位を検出するセンサに変えて、上記可変減衰ダンパの移動量を検出する変位センサを用いて当該層間変位を近似化することにより、一層の簡便化を図ることができる。
また、制振構造物の柱の下部に作用する軸力を算出するに際しては、全ての階層における層間変位量を得る必要がある。したがって、当該制振構造物の全階層に上記センサを配置すれば、高い精度で全層間変位量を得て軸力を推定することができるものの、超高層の制振構造物においては、設置すべきセンサの量が多くなって経済性に劣るとともに、地震時に処理すべきデータ量も多くなるという欠点がある。
この点、請求項3〜6に記載の発明により、少なくとも2または3のセンサを設置するのみで、上記制御を行うことが可能になる。
すなわち、請求項3に記載の発明においては、上記センサによって1以上の特定の階層の層間変位量が得られた場合に、上記制御手段が、予め設定されている上記制震構造物の卓越振動モードに基づいて当該制振構造物の全階層における層間変位量を算出することができる。
これに対して、請求項4に記載の発明においては、特定の階層に設置した上記センサからの揺れの検出信号に基づいて、上記制御手段がリアルタイムに建物応答変位を推定して、当該建物応答変位に基づいて、上記制振構造物の全階層の層間変位を求めて上記軸力を算出することができる。
したがって、請求項3または4に記載の発明においては、請求項5に記載の発明のように、特定の階層の柱梁架構の上下に隣接した梁または床にセンサを設け、当該階層の層間変位から、制振構造物の全階層における層間変位を推定することができる。
また、請求項6に記載の発明のように、上記センサを柱梁架構の上下に離散した梁または床に設けた場合には、さらに地上にも上記センサを設置して、地上との相対変位を検出することにより、同様にして全階層における層間変位を推定することができる。
また、他の上記応答検出手段としては、請求項7に記載の発明のように、1本または複数本の上記柱の下部に設置された歪みゲージまたは当該柱の軸方向の変形を検出する変位計を用いることもできる。この場合には、地震時に、上記歪みゲージによって検出された柱の変形歪みから、そのまま当該柱に作用する軸力を評価することができる。そして、制御手段において、上記軸力を、予め設定した柱の補強が必要な軸力と対比して、評価された軸力が設定値を超える場合に、可変減衰ダンパの減衰係数をより低い値に切り換える。
なお、請求項7に記載の発明においては、上記観点から、歪みゲージまたは変位計を設置する柱として、建物の構造上、最も大きい軸力が作用する可能性の高い1本または複数本の柱を選択することが好ましい。
本発明の第1の実施形態を示す概略構成図である。 図1の制御システムにおけるフロー図である。 本発明の第2の実施形態を示す概略構成図である。 図3のセンサを離散した階層に設置した例を示す模式図である。 図3の制御装置における復元力の設定例を示すグラフである。 図3の制御装置におけるフロー図である。 架構が変形した際における柱の下部に作用する軸力の変化を示す概略図である。 本発明の第3の実施形態を示す概略構成図である。 従来の耐震補強構造を示す正面図である。 図9の要部の拡大図である。
(第1の実施形態)
図1および図2は、本発明に係る制振構造物における可変減衰ダンパの制御システムの基本的な構成を、第1の実施形態として示すものである。
図1に模式的に示すように、この既存の建物(制振構造物)1における耐震補強構造は、柱2と梁3からなる架構内に、図10に示したオイルダンパ4に換えて、減衰係数が複数段階に切換可能なオイルダンパ(可変減衰ダンパ)10が介装された補強骨組部を増設したものである。ここで、上記補強骨組部は、建物1の短辺X方向と長辺Y方向とのそれぞれに設置されている。
そして、上記可変減衰ダンパの制御システムは、複数階を間に挟んで上下に離散した階および地盤上における短辺X方向(図1)および長辺Y方向のそれぞれの上下の梁3に設けられて、当該方向への変位を計測することにより、建物1の応答を検出するためのセンサ11a、11b、11gと、これらのセンサ11a、11b、11gの検出値に基づいて、オイルダンパ10の減衰係数を切り換える制御手段とから概略構成されている。ここで、センサ11a、11b、11gとしては、加速度計、速度計あるいは変位計を用いることができる。
次に、図2に基づいて、上記構成からなる可変減衰ダンパの制御システムにおける解析手法について概説する。
先ず、ステップ1において、地震発生時に、センサ11a、11b、11gによって、建物1および地盤の応答(変位)を計測する。ちなみに、センサ11a、11b、11gとして加速度センサや速度センサを用いた場合には、これらのセンサ11a、11b、11gを設置した位置の絶対加速度や絶対速度が計測でき、複数階の絶対加速度や絶対速度がわかれば、それらを積分することで絶対変位が求められる。
そして、複数階の絶対変位の相互の差を取ることにより、上記階間における相対変形を得ることができる。
そこで次に、ステップ2において、建物1の水平方向の変形を推定する。この際に、建物1の変形として1次モードを卓越振動モードと仮定すれば、上記ステップ1において得られた相対変形から、簡便に建物1の全体変形を推定することができる。また、上記卓越振動モードは、建物1の弾性応答を前提として設定すればよいが、振幅レベルが大きく非線形化が予想される場合は、振幅レベルに応じて予め計算しておいた等価線形による振動モードを用いてもよい。
これに対して、地震時における建物1の変形として、複数モードの影響も考慮する場合は、例えばカルマンフィルターの利用が考えられる。複数モードを考慮する場合も、建物1の弾性応答を前提として設定すればよいが、振幅レベルが大きく非線形化が予想される場合は、振幅レベルに応じて予め計算しておいた等価線形による複数モードを用いてもよい。
図1に示すように、建物1をせん断型多質点系振動モデルで表した場合、運動方程式は下式で表される。
Figure 0005431185
上記(1)式は、次のように状態方程式で表す事が出来る。
Figure 0005431185
なお、上記センサ11a、11b、11gとして加速度計を用い、計測した加速度応答を2回積分して、センサ11a、11bの設置位置の地面に対する相対変位を評価する場合は、出力方程式は下記の通り表すことが出来る。
Figure 0005431185
また、上記センサ11a、11b、11gによって計測した加速度応答を観測状態量として用いる場合は、出力方程式は下記の通り表すことができる。
Figure 0005431185
ちなみに、上記(3b)式の場合は、
Figure 0005431185
を新たに出力方程式とすると、下式に示すように、(3a)式と同じ形式で表すことができる。
Figure 0005431185
そして、上記(2)式と(3a)式あるいは(3b)式の組合せに対して、カルマンフィルターは以下の通り設定出来る。
Figure 0005431185
これらの式を用いて、上記センサ11a、11b、11gによって計測した応答値から、時々刻々(4a)式あるいは(4b)式を解くことにより、建物1の変形の状態を推定する事ができる。なお、本実施形態においては、状態方程式を建物1の全自由度(全振動モード)に対して作成しているので、全層の状態量を推定する事が可能であるが、必要に応じて建物応答に寄与する低次複数モードのみを抽出して状態方程式を作成しても良い。
その場合は、(2)式をモード分解し、低次複数モードを抽出して作成した下式を用いれば良い。
Figure 0005431185
以上のように、ステップ2において建物1の全体変形が推定できれば、層間変形もわかるので、ステップ3において各層の復元力によって発生する軸力を推定する。また、同様に、ステップ2において建物1の全体変形が推定できれば、層間速度もわかるので、ステップ4においてオイルダンパ10を設置した階の層間速度を推定し、ステップ5においてオイルダンパ10の移動量(変形)を評価して、ステップ6において当該オイルダンパ10の減衰力による付加軸力を評価する。
この際に、上記柱軸力や付加軸力は、各層の復元力やオイルダンパ10の減衰力から、建物1の層間に作用する水平力が求まり、これらの水平力による転倒モーメントとの釣合いにより求めることができる。
そして、ステップ7において、これら架構の復元力による柱軸力およびオイルダンパ10による付加軸力を得て、これらを足し合わせた軸力を算出し、次いでステップ8において、算出された軸力と柱2に補強が必要な大きさの軸力の設定値Acとを対比する。なお、オイルダンパ10の減衰係数は、通常時においては最大値に設定しておく。そして、算出された軸力Aが、上記設定値Acよりも小さい場合には、オイルダンパ10の減衰係数CLを切り換えることなく、そのままの状態とする。
これに対して、算出された軸力Aが上記設定値の軸力Acよりも大きい場合に、ステップ9において、例えばオイルダンパ10の減衰係数を、現状よりも低い値であって、かつ設定値Acを超えない最大の減衰係数CLに切り換える。
(第2の実施形態)
図3〜図7は、第1の実施形態に示した可変減衰ダンパの制御システムを、図9および図10に示した既存の建物の耐震補強構造に応用した具体的な第2の実施形態およびその変形例を示すものであり、図1に示したものと同一構成部分については同一符号を付してある。
図3に示すように、この既存の建物1における耐震補強構造は、柱2と梁3からなる架構内に、同様に減衰係数が複数段階に切換可能なオイルダンパ(可変減衰ダンパ)10が介装された補強骨組部5を増設したものである。ここで、上記補強骨組部5は、建物1の短辺X方向と長辺Y方向とのそれぞれに設置されている。
そして、上記可変減衰ダンパの制御システムにおいては、特定の1つの階層における短辺X方向(図3)および長辺Y方向のそれぞれの上下の梁3または床に設けられて、当該方向への変位を計測することにより、当該階層のX方向およびY方向における層間変位xδ、yδを検出するためのセンサ11と、これらのセンサ11の検出値に基づいて、オイルダンパ10の減衰係数を切り換える制御装置(制御手段)12とから概略構成されている。
また、制御装置12は、全体を統括制御するCPU(主制御部)に、メモリおよび入出力制御部となるインターフェース回路が接続され、このインターフェース回路に、プログラムやデータベースを格納したハードディスク等の外部記憶装置が接続された周知のパーソナルコンピュータである。
そして、上記インターフェース回路に、センサ11からのデータが入力されるようになっている。また、外部記憶装置には、予め建物1が地震時に1次モードで振動すると仮定した場合の解析モデルと、柱2の補強が必要な軸力の設定値Acが格納されている。さらに、この外部記憶装置には、インターフェース回路に入力されたセンサ11からのデータによって層間変位量xδ、yδを算出し、得られた層間変位量xδ、yδと上記振動の解析モデルに基づいて、建物剛性から決定される建物1の全ての階層における上記架構の復元力および軸力を算出するとともに、オイルダンパ10の減衰力によって付加される復元力および軸力を算出して、上記軸力および付加軸力を足し合わせた軸力Aと上記設定値Acとの大小を比較して、A>Acである場合に、インターフェース回路からオイルダンパ10に、減衰係数を小さくする方向に切り換える信号を出力するプログラムが格納されている。
次に、図6に基づいて、上記構成からなる可変減衰ダンパの制御システムの作用について説明する。
先ず、平常時においては、オイルダンパ10の減衰係数を、最大値に設定しておく。そして、地震時に、建物1に揺れが生じて柱梁架構が水平方向に変形すると、当該変形を補強骨組部5のオイルダンパ10が吸収して、当該揺れを減衰させるとともに、これに対応して柱2、梁3の架構には、上記オイルダンパ10からの反力として復元力が作用することになる。この結果、図7に示すように、柱の軸力として、柱梁架構の復元力に起因する軸力にオイルダンパ10の復元力に起因する軸力A1が加わった軸力Aが下層部に伝わることになる。
そこで、これと併行して、上記制御システムにおいては、柱梁架構が水平方向に変形した際に、X方向の梁3に設けたセンサ11およびY方向に設けたセンサが、各方向における加速度、速度または変位を検出し、当該検出信号を制御手段12に発信する。
すると、上記検出信号を受信した制御装置12のCPUが上記プログラムを実行させることにより、ステップAにおいて層間変位量xδ、yδを算出する。なお、センサ11が加速度計あるいは速度計である場合には、上記プログラムにおいて、先ず入力されたデータを積分して上下階の各設置位置における変位を算出し、これら上下階の変位の差を求めることにより層間変位xδ、yδを得る。
次いで、ステップBにおいて、得られた上記層間変位xδ、yδのデータと、建物1が1次モードで振動すると仮定した解析モデルとから、建物1の全階層における層間変位を算出する。そして、ステップCにおいて、得られた層間変位から、建物剛性から決定される建物1の全ての階層における上記架構の復元力と、オイルダンパ10の減衰力によって付加される復元力を算出する。
このための演算式としては、様々な公知の式を用いることができるが、例えば、上記層間変位xδ、yδのデータから、下記式9および式10に示す演算式よって上記架構の復元力F=Fx+Fyを算出する。
Figure 0005431185
Figure 0005431185
また、近似的には、オイルダンパ10に内蔵されているシリンダに対するピストンロッドの相対変位を検出する変位センサを用いて、この変位センサからの検出信号xあるいはyを制御装置12に入力することにより、簡便に下記式11に示す演算式(Y方向についても同様。)によって、上記架構の復元力F=Fx+Fyを算出することもできる。
Figure 0005431185
上記式9〜式11において、cxi、cyi、ciは、各々オイルダンパ10の減衰係数、u(xδ)、u(yδ)は、層間の柱剛性等により決定される復元力であって、図5に示すように、構造設計時の荷重増分解析に基づく非線形の復元力特性を用いても良く、あるいは簡便に等価線形による復元力k・xδおよびk・yδを用いても良い。
そして次に、ステップDにおいて、これらの復元力の値から架構の復元力による軸力およびオイルダンパ10による付加軸力A1を得て、これらを足し合わせた軸力Aを算出する。次いで、ステップEにおいて、上記制御装置12のCPUが、外部記憶装置に格納されている柱2に補強が必要な大きさの軸力の設定値Acのデータを参照し、算出された軸力Aと設定値Acとを対比する。そして、算出された軸力Aが、上記設定値Acよりも小さい場合には、オイルダンパ10の減衰係数CLを切り換えることなく、そのままの状態とする。
これに対して、算出された軸力Aが上記設定値Acよりも大きい場合に、ステップFにおいて、例えばオイルダンパ10の減衰係数が3段階以上または連続的に切換可能である場合には、オイルダンパ10の減衰係数を、現状よりも低い値であって、かつ設定値Acを超えない最大の減衰係数CLに切り換える。
これをより具体的に説明すると、算出された軸力Aが設定値Acよりも大きい場合には、先ずオイルダンパ10の減衰係数を最小値に切り換えたうえで、徐々に上記減衰係数を増加させつつ、時々刻々上記ステップを繰り返してモニタリングすることにより、適切な上記減衰係数CLに設定する方法を採ることができる。
また、オイルダンパ10が、単純な2段階の減衰係数の切換式の場合には、最大減衰係数と最小減衰係数の2値の切換を行う。
このように、上記構成からなる可変減衰ダンパの制御システムによれば、地震発生時に、その規模に応じて、建物1に作用するX−Yの各々の方向について振動の影響を考慮して、適宜オイルダンパ10の減衰係数を制御することにより、耐震補強された建物1の柱2に作用する軸力を、補強が必要となる軸力以下に高い精度で抑えることができる。この結果、既存の柱2に対する補強を不要にすることが可能となる。しかも、上記制御を特定の1つの階層の上下の梁3に設けたセンサ11のみによって、予め設定した建物1の卓越振動モードに基づいて全体の変形を推定することにより行うことができる。
なお、上記実施形態においては、上下に隣接する階に、地震時における各々の階の加速度、速度または変位を検出するセンサ11を設けた場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、図4に示すように、図1に示した第1の実施形態と同様に、複数階を間に挟んで上下に離散した階に上記センサ11a、11bを設けることもできる。すなわち、建物1が1次モードで振動すると仮定している場合に、上記センサ11a、11bによって離散した階の相対変位を計算したり、或いは地上にも同様のセンサ11gを設けて、地面に対するセンサ11の設置階の相対変位(Xa−Xg、Xb−Xg)を計算して、建物全体の変形を推定することができる。
また、建物1が複数モードで振動することを考慮する場合には、カルマンフィルター等を用いて、離散した階で検出した加速度、速度あるいは変位から、建物全体の変形を推定し、上記層間変位xδ、yδを算出することも可能である。
さらに、上記実施形態においては、予め制御装置12に建物1の振動の卓越振動モードのモード形状を格納しておいて、センサ11が検出した層間変位xδ、yδのデータと、上記モード形状とから、建物1の全階層における層間変位を算出する場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、連続的に送られてくるセンサ11からの変位量の検出信号に基づいて、制御装置12においてリアルタイムにカルマンフィルターにより建物1の変形状態を推定し、当該変形状態における建物1の全階層における層間変位を求めて軸力Aを評価するようにしてもよい。
(第3の実施形態)
図8は、本発明に係る制振構造物における可変減衰ダンパの制御システムの第3の実施形態を示すもので、図3に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
図8に示すように、この制御システムにおいては、建物1の構造上、最も大きい軸力が作用する可能性の高い1本または複数本(図では、その内の1本を示す。)の柱2の下端部2aに、歪みゲージまたは柱2の軸方向の変形を検出する変位計(応答検出手段)15が設けられている。
そして、上記制御装置12においては、上記外部記憶装置に、柱2の補強が必要な軸力に安全率を考慮した値FACが設定されている。
さらに、上記プログラムは、柱2に設けた歪みゲージ(あるいは変位計)15からの検出信号に基づいて、公知の演算式によって当該柱2に作用する軸力Fを直接算出し、得られた軸力Fと上記設定値FACとを対比して、算出された軸力Fが上記設定値の軸力FACよりも大きい場合に、オイルダンパ10の減衰係数が3段階以上または連続的に切換可能である場合には、オイルダンパ10の減衰係数を、現状よりも低い値であって、かつ上記軸力FACを超えない最大の減衰係数CLに切り換える。
この場合にも、第2の実施形態と同様に、先ずオイルダンパ10の減衰係数を最小値に切り換えたうえで、徐々に上記減衰係数を増加させつつ、時々刻々上記ステップ(A)〜(C)を繰り返して軸力Fをモニタリングすることにより、上記軸力FACを超えない最適な上記減衰係数CLに設定する方法を採ることができる。
また、同様にオイルダンパ10が、単純な2段階の減衰係数の切換式の場合には、最大減衰係数と最小減衰係数の2値の切換を行う。
したがって、上記第3の実施形態にあっても、第1および第2の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
なお、上記第2および第3の実施形態においては、いずれも本発明に係る可変減衰ダンパの制御システムを、耐震補強された既存の建物1に適用した場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限るものではなく、新築の建物にも同様に適用することができる。ちなみに、新築の建物に適用した場合には、柱の設計を地震時における付加軸力を考慮したオーバースペックにすることなく、最適化することができる。
地震時に、可変減衰ダンパが介装された制振構造物の柱に作用する軸力を制御可能とする際に利用可能である。
1 建物(制振構造物)
2 柱
3 梁
10 オイルダンパ(可変減衰ダンパ)
11、11a、11b、11g センサ(応答検出手段)
12 制御装置(制御手段)
15 歪みゲージまたは変位計(応答検出手段)

Claims (7)

  1. 地震時に、可変減衰ダンパが介装された制振構造物における柱または柱梁架構の応答量を検出する応答検出手段と、この応答検出手段からの検出値に基づいて、上記可変減衰ダンパの減衰係数を切り換える制御手段とを備えてなり、
    上記制御手段は、上記検出値から上記柱に作用する軸力を評価し、当該軸力と予め設定された当該柱に作用する軸力の設定値とを比較して、上記軸力が上記設定値よりも大きい場合に、上記可変減衰ダンパの減衰係数をより低い値に切り換えることを特徴とする制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
  2. 上記応答検出手段は、上記柱梁架構の層間変位または上記可変減衰ダンパの移動量を検出するためのセンサであり、かつ上記制御手段は、上記層間変位または移動量から上記柱に作用する軸力を評価することを特徴とする請求項1に記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
  3. 上記制御手段は、予め設定した地震時における上記制震構造物の卓越振動モードに基づいて、上記センサによって検出された1以上の階層の層間変位から当該制振構造物の全階層における層間変位を推定して上記軸力を評価することを特徴とする請求項2に記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
  4. 上記制御手段は、上記センサからの検出信号に基づいて、リアルタイムに上記制震構造物の変形状態を推定し、当該変形状態における上記制振構造物の全階層における層間変位を求めて上記軸力を評価することを特徴とする請求項2に記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
  5. 上記センサは、上記柱梁架構の上下に隣接した梁または床に設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
  6. 上記センサは、上記柱梁架構の上下に離散した梁または床および地上に設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
  7. 上記応答検出手段は、1本または複数本の上記柱の下部に設置されて当該柱の軸方向の変形を検出する歪みゲージまたは変位計であり、かつ上記制御手段は、上記変位計が検出した変位量から上記柱に作用する軸力を算出することを特徴とする請求項1に記載の制振構造物における可変減衰ダンパの制御システム。
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