以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施態様によるMOS型電界効果トランジスタ100の構造を、図1に示す。
半導体基板10上に、該基板10と同種の元素を含む合金半導体からなる下地層20、チャネル半導体層(チャネル領域)30が格子整合して順次積層されている。チャネル半導体層30上に、ゲート絶縁膜40を介してゲート電極50が形成されている。ゲート電極50を挟んで、基板10と同種の元素を含み、基板10及び下地層20の何れとも組成比が異なり、且つ格子定数の異なる半導体からなるソース領域60及びドレイン領域70が下地層20上に格子整合して形成されている。これらのソース・ドレイン領域60,70によってチャネル半導体層30に応力が印加されている。また、ゲート電極50の側面には側壁絶縁膜81が形成されている。
ここで、下地層20は、一般には格子定数が基板10とは異なるために、歪みを有している。従って、転位の発生を防止するため、下地層20の膜厚は、熱平衡状態で結晶にミスフィット転位が導入される熱平衡臨界膜厚未満である(非特許文献2)。また、下地層20の厚さは、ソース領域60の下部の空乏層61及びドレイン領域70の下部の空乏層71の幅よりも厚く設定されている。即ち、下地層20は、ソース・ドレイン領域60,70の下部に形成される空乏層61,71が下地層20内に収まる厚さよりも厚く形成されている。また、ソース・ドレイン領域60,70の表面に、5〜20nm程度の厚さの金属化合物層(NiGeSiなど)が形成されていても良い。
本実施形態においては、下地層20が合金半導体となっているため、SiやGeなど、単元素の基板に対して歪みを印加するためのソース・ドレイン構造を用いる従来構造に比べて、ソース・ドレイン下部領域に転位が発生しにくいという特徴を有する。この特徴は、SiGeのバルク結晶において観測されているような、合金化によるハードニング現象に起因するものである(非特許文献3)。
また、ソース・ドレイン下部領域の空乏層61,71が全て下地合金層に含まれているため、リーク電流の起因となる空乏層中の転位が発生しないという特徴を有する。さらに、下地層20の厚さが熱平衡臨界膜厚未満であるため、基板10と下地層20との格子不整合による転位の発生もないという特徴を有する。これらの効果により、転位に起因するリーク電流の増大、或いはそれによる不良の発生を抑制することができる。
(具体例1−1)
第1の実施形態の第1の具体例として、電界効果トランジスタ100は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みGe−nMOSFETである。なお、“MOS”とは、ゲート絶縁膜にシリコン酸化膜以外の絶縁膜を用いた、いわゆる“MIS”も含むものとする。
ここで、基板10がp型Ge、下地層20が膜厚70nmのp型Si0.05Ge0.95、チャネル半導体層30が膜厚8nmのp型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度n型不純物としてP(燐)がドープされた膜厚30nmのSi0.3Ge0.7 である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。さらに、下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成95%の場合、80nm)であり、Ge組成が高いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は50%から85%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、基板の面指数、チャネル長方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(111)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上ではチャネル方位に対する駆動電流の依存性は小さいので、他の方向でも良い。さらに、(110)面上の[−110]方向でも(111)面上に匹敵する駆動電流が得られる。
なお、本具体例においては、基板10として、バルクGe基板のみならず、Si基板上にGe単結晶層が形成された基板や、SOI(Si-on-insulator)基板上にGe単結晶層が形成された基板、或いはSGOI(SiGe-on-insulator)基板上にGe単結晶層が形成された基板を用いても良い。
また、下地層20として、炭素を添加したSiGe:C,Ge:C、或いはSnを添加したSiGeSnを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%、Snの原子組成は0.1%から3%が好ましい範囲である。さらに、ソース・ドレイン領域60,70に、炭素を添加したSiGe:C,Ge:Cを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から5%が好ましい範囲である。また、チャネル半導体層30は、下地層20よりもGe組成の高いSiGeでも良い。
第1の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は、図2(a)に示すように、チャネル長方向に伸張している。これは、Geチャネルよりも格子定数の小さいSiGeソース・ドレイン領域60,70からの引っ張り応力による。一方、チャネル長方向に直交するチャネル幅方向には圧縮されている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に引っ張り応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が縮小する効果と、下地層20の格子定数がチャネル半導体層30より小さいことによる相乗効果である。このような歪み構成は、Ge−nMOSFETの電流増大に最適な構成である。
次に、図3を参照して、第1の具体例の製造方法を説明する。
まず、図3(a)に示すように、Ge基板10にSiGeからなる下地層20、Geからなるチャネル半導体層30を、低圧化学気相堆積法(LP−CVD法)などにより順にエピタキシャル成長する。続いて、STI等の方法により素子分離を行い、p型のチャネル不純物としてBを下地層20よりも深くイオン注入する(図示せず)。
次いで、図3(b)に示すように、チャネル半導体層30上に、ゲート絶縁膜40及びゲート電極50をそれぞれCVD法などにより順次堆積する。続いて、フォトリソグラフィーによりゲートパターン(図示せず)を形成した後、図3(c)に示すように、反応性イオンエッチング法(RIE法)によりゲート電極50及びゲート絶縁膜40をパターニングする。
次いで、図3(d)に示すように、側壁となるSi窒化膜(Si3N4 )80をCVD法などにより全面に堆積する。続いて、図3(e)に示すように、RIE法によりSi窒化膜80をエッチングすることにより側壁絶縁膜81を形成し、さらにチャネル半導体層30をエッチングして下地層20に達する深さ約20nmのリセス82を形成する。
次いで、図3(f)に示すように、n型ドーパントとしてPが高濃度に取り込まれたSiGeからなるソース・ドレイン領域60,70をLP−CVD法などによりエピタキシャル成長する。
これ以降は、活性化アニールを行い、通常の配線形成プロセスを経ることにより、歪みGe−nMOSFET100が完成することになる。
(具体例1−2)
第1の実施形態の第2の具体例として、電界効果トランジスタ100は、正孔の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みSi−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Si、下地層20が膜厚70nmのn型Si0.95Ge0.05、チャネル半導体層30が膜厚8nmのn型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース領域60及びドレイン領域70が何れもBが高濃度にドープされた膜厚30nmのSi0.7Ge0.3 である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGe組成の範囲は、1%以上15%以下である。さらに、下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は15%から50%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、基板の面指数、チャネル長方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(110)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上及び(100)面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
なお、本具体例においては、基板10として、バルクSi基板のみならず、SOI基板を用いても良い。また、下地層20として、炭素を添加したSiGe:C或いはSnを添加したSiGeSn,SiSnを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%、Snの原子組成は0.1%から3%が好ましい範囲である。さらに、ソース・ドレイン領域60,70に、炭素を添加したSiGe:C,Ge:Cを用いても良い。
第2の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(b)に示すように、チャネル長方向に圧縮されている。これは、Siチャネルよりも格子定数の大きいSiGeソース・ドレイン領域60,70からの圧縮応力による。一方、チャネル幅方向には引っ張られている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に圧縮応力が印加されているためにチャネル幅方向に格子が拡張する効果と、下地層20の格子定数がチャネル半導体層30より大きいことによる相乗効果である。このような歪み構成は、Si−pMOSFETの電流増大に最適な構成である。
第2の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物としてPを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例1−3)
第1の実施形態の第3の具体例として、電界効果トランジスタ100は、正孔の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みGe−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Ge、下地層20が膜厚70nmのn型Si0.04Ge0.95Sn0.01、チャネル半導体層30が膜厚8nmのn型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度p型不純物としてBがドープされた膜厚30nmのSn0.05Ge0.95である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[Sn組成×5−Si組成]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が高く、Sn組成が低いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Sn組成の範囲は1%から10%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、基板の面指数、チャネル長方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(110)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上及び(100)面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
第3の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(b)に示すように、チャネル長方向に圧縮されている。これは、Geチャネルよりも格子定数の大きいSnGeソース・ドレイン領域60,70からの圧縮応力による。一方、チャネル幅方向には引っ張られている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に圧縮応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が拡大する効果である。このような歪み構成は、Ge−pMOSFETの電流増大に最適な構成である。
なお、本具体例においては、基板10として、バルクGe基板のみならず、Si基板上にGe単結晶層が形成された基板や、SOI基板上にGe単結晶層が形成された基板、或いはSGOI基板上にGe単結晶層が形成された基板を用いても良い。また、下地層20として、炭素を添加したSiGeSn:Cを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%、Snの原子組成は0.1%から3%が好ましい範囲である。さらに、ソース・ドレイン領域60,70に、炭素を添加したSiGe:C,Ge:Cを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から5%が好ましい範囲である。また、下地層20として、SiGeを用いても良いが、この場合、下地層とソース・ドレイン領域60,70のGe原子組成をそれぞれx,yとしたとき、y>2xとする。この組成条件は、上記の歪み構成とするためである。また、チャネル半導体層30は、下地層20よりもGe組成の高いSiGeでも良い。
第3の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物としてPを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例1−4)
第1の実施形態の第4の具体例として、電界効果トランジスタ100は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みSi−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Si、下地層20が膜厚70nmのp型Si0.95Ge0.045C0.005、チャネル半導体層30が膜厚8nmのp型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース領域60及びドレイン領域70が何れもPが高濃度にドープされた膜厚30nmのSi0.97C0.03である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGeの組成の範囲は、1%以上15%以下、Cの原子組成は0.1%から2%である。さらに、下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[C組成×10−Ge組成]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。更に好ましくは、上記のSi0.95Ge0.045C0.005のように、Ge組成とC組成×10の値がほぼ等しくなる条件であり、この条件において下地層20と基板10との格子不整合は実質的に無視できる。さらに、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は15%から50%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、基板の面指数、チャネル長方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(110)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上及び(100)面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
第4の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(a)に示すように、チャネル長方向には伸張している。これは、Siチャネルよりも格子定数の小さいSi:Cソース・ドレイン領域60,70からの引っ張り応力による。一方、チャネル幅方向には圧縮されている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に引っ張り応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が縮小する効果である。
なお、本具体例においては、基板10として、バルクSi基板のみならず、SOI基板を用いても良い。また、下地層20又はソース・ドレイン領域60,70に、炭素を添加したSiGe:Cを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%が好ましい範囲である。また、下地層20として、SiGeを用いても良いが、この場合、下地層のGe原子組成とソース・ドレイン領域60,70のC原子組成をそれぞれx,yとしたとき、10y>2xとする。この組成条件は、上記の歪み構成とするためである。
第4の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。
以上の第1乃至第4の具体例においては、Si,Ge,C及びSn等のIV族原素を用いた例を示したが、他の材料系の組み合わせも可能である。例えば、基板10として、III-V族化合物半導体基板(GaAs,InP,InAsなど)、又はSi基板上に直接若しくはGe層を介して化合物半導体単結晶層を形成した基板を用いても良い。また、下地層20及びソース・ドレイン領域60,70として、それらの合金(GaAlAs,InGaAs,InGaAlAs,InAsPなど)を用いても良い。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施態様によるMOS型電界効果トランジスタ200の構造を、図4に示す。
半導体基板10上に、該基板10と同じ元素を含む合金半導体からなる下地層20、チャネル半導体層(チャネル領域)30が格子整合して順次積層されている。チャネル半導体層30上に、ゲート絶縁膜40を介してゲート電極50が形成されている。ゲート電極50を挟んで、チャネル層元素を含む金属化合物層からなるソース電極65及びドレイン電極75が下地層20上に形成されている。ここで、ソース・ドレイン電極65,75は下地合金層20に食い込んでいても良い。ソース・ドレイン電極65,75の下部には高濃度の不純物がドーピングされた領域62,72が形成されていても良い。また、ゲート電極50の側面には側壁絶縁膜81が形成されている。
ゲート電極50、ソース・ドレイン電極65,75、及び側壁絶縁膜81を覆うようにして、歪みを内包した応力印加膜90が形成されており、この応力印加膜90によりチャネル半導体層30に応力が印加されている。ここで、下地層20は、一般には格子定数が基板10と異なるため、歪みを有している。従って、転位の発生を防止するため、その膜厚は熱平衡臨界膜厚未満とするのが望ましい。また、下地層20の厚さは、ソース・ドレイン領域下部の空乏層61,71の幅よりも厚く設定されている。
本実施形態においては、下地層20が合金半導体となっているため、SiやGeなど、単元素の基板に対して歪みを印加するための応力印加膜を用いる従来構造に比べて、ソース・ドレイン下部領域に転位が発生しにくいという特徴を有する。また、ソース・ドレイン下部領域の空乏層61,71が全て下地合金層に含まれているため、リーク電流の起因となる空乏層中の転位が発生しないという特徴を有する。さらに、下地層20の厚さが熱平衡臨界膜厚未満であるため、基板10と下地層20との格子不整合による転位の発生もないという特徴を有する。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(具体例2−1)
第2の実施形態の第1の具体例として、電界効果トランジスタ200は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みGe−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Ge、下地層20が膜厚70nmのp型Si0.05Ge0.95、チャネル半導体層30が膜厚8nmのp型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース電極65及びドレイン電極75が何れも膜厚12nmのNiGeである。ソース・ドレイン電極65,75の下部には高濃度のPがドーピングされた領域62,72が形成されている。応力印加膜90は、シリコン窒化膜或いはDLC(Diamond-Like Carbon)膜である。
また、ソース・ドレイン電極65,75の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。さらに、下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成95%の場合、80nm)であり、Ge組成が高いほど上限値は大きくなる。また、応力印加膜90は、圧縮性応力を内包し、チャネルに電流方向に平行な引っ張り応力を印加する。
他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層、チャネル層材料など)については、先に説明した(具体例1−1)と同様の変形が可能である。
第1の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(a)に示すように、チャネル長方向に伸張している。これは、圧縮性応力を有する応力印加膜90からの引っ張り応力による。一方、チャネル幅方向には圧縮されている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に引っ張り応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が縮小する効果と、下地層20の格子定数がチャネル半導体層30より小さいことによる相乗効果である。このような歪み構成は、Ge−nMOSFETの電流増大に最適な構成である。
次に、図5を参照して、第1の具体例の製造方法を説明する。
まず、前記図3(a)と同様に、Ge基板10にSiGeからなる下地層20、Geからなるチャネル半導体層30を、LP−CVD法などにより順にエピタキシャル成長した後、STI等の方法により素子分離を行い、p型のチャネル不純物としてBを下地層20よりも深くイオン注入する。
次いで、図5(a)に示すように、ゲート絶縁膜40,ゲート電極50,及びキャップ層83をそれぞれCVD法などにより順次堆積する。続いて、フォトリソグラフィーによりゲートパターン(図示せず)を形成した後、図5(b)に示すように、RIE法によりゲート電極40,ゲート絶縁膜50,及びキャップ層83をパターニングする。
次いで、図5(c)に示すように、側壁となるSi窒化膜80をCVD法などにより全面に堆積する。続いて、図5(d)に示すように、RIE法によりSi窒化膜80をエッチングすることにより側壁絶縁膜81を形成し、さらに厚さ約7nmのNi膜84をスパッタ法、或いはCVD法により堆積する。
次いで、図5(e)に示すように、熱処理によってNiとGeを反応させてNiGeジャーマナイドからなるソース・ドレイン電極65,75を形成した後、酸処理によって未反応のNi膜84を除去する。
次いで、図5(f)に示すように、n型ドーパントとしてPをNiGe中にイオン注入して活性化アニールを行うと、PがNiGeのソース・ドレイン電極65,75の下部に偏析してPの高濃度層62,72が形成される。続いて、全体を覆うように、応力印加膜90をCVD法などにより堆積する。これ以降は、通常の配線形成プロセスを経ることにより、歪みGe−nMOSFET200が完成することになる。
(具体例2−2)
第2の実施形態の第2の具体例として、電界効果トランジスタ200は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みSi−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Si、下地層20が膜厚70nmのn型Si0.95Ge0.05、チャネル半導体層30が膜厚8nmのSi、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース電極65及びドレイン電極75が何れも膜厚12nmのNiSiである。ソース・ドレイン電極65,75の下部には高濃度のBがドーピングされた領域62,72が形成されている。応力印加膜90は、シリコン窒化膜或いはDLC(Diamond-Like Carbon)膜である。
また、ソース・ドレイン電極65,75の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGe組成の範囲は、1%以上15%以下である。さらに、下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。
応力印加膜90は、伸張性応力を内包し、チャネルに電流方向に平行な圧縮応力を印加する。他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層材料など)については、先に説明した(具体例1−2)と同様の変形が可能である。
第2の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(b)に示すように、チャネル長方向に圧縮されている。これは、伸縮性応力を有する応力印加膜90からの圧縮応力による。一方、チャネル幅方向には引っ張られている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に圧縮応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が拡大する効果である。このような歪み構成は、Ge−pMOSFETの電流増大に最適な構成である。
第2の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物としてBを、ソース・ドレイン不純物としてPをそれぞれ用いる。
(具体例2−3)
第2の実施形態の第3の具体例として、電界効果トランジスタ200は、正孔の伝導方向に圧縮歪みを有する歪みGe−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Ge、下地層20が膜厚70nmのn型Si0.04Ge0.95Sn0.01、チャネル半導体層30が膜厚8nmのn型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース電極65及びドレイン電極75が何れも膜厚12nmのNiGeである。ソース・ドレイン電極65,75の下部には高濃度のPがドーピングされた領域62,72が形成されている。応力印加膜90は、シリコン窒化膜或いはDLC(Diamond-Like Carbon)膜である。
また、ソース・ドレイン電極65,75の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下、Snの原子組成は3%以下である。下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[Sn組成×5−Si組成]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が高く、Sn組成が低いほど上限値は大きくなる。
応力印加膜90は、伸張性応力を内包し、チャネルに電流方向に平行な圧縮応力を印加する。他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層、チャネル層材料など)については、先に説明した(具体例1−3)と同様の変形が可能である。
第3の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(b)に示すように、チャネル長方向に圧縮されている。これは、伸縮性応力を有する応力印加膜90からの圧縮応力による。一方、チャネル幅方向には引っ張られている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に圧縮応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が拡大する効果である。このような歪み構成は、Ge−pMOSFETの電流増大に最適な構成である。特に、Sn組成×5>Si組成の場合は、下地層20の格子定数がチャネル層30の格子定数よりも大きいため、チャネル幅方向の引張り歪みがより大きくなり、移動度向上の観点でより好ましい。
第3の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物として、Pを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例2−4)
第2の実施形態の第4の具体例として、電界効果トランジスタ200は、電子の伝導方向に引っ張り歪みを有する歪みSi−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Si、下地層20が膜厚70nmのp型Si0.95Ge0.045C0.005、チャネル半導体層30が膜厚8nmのp型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース電極65及びドレイン電極75が何れも膜厚12nmのNiSiである。ソース・ドレイン電極65,75の下部には高濃度のPがドーピングされた領域62,72が形成されている。応力印加膜90は、シリコン窒化膜或いはDLC(Diamond-Like Carbon)膜である。
また、ソース・ドレイン電極65,75の下部領域の空乏層61,71が全て下地層20に含まれ、且つ下地層20と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層20の好ましいGeの組成の範囲は、1%以上15%以下、Cの原子組成は0.1%から2%である。さらに、下地層20の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[Ge組成−C組成×10]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。更に好ましくは、上記のSi0.95Ge0.045C0.005のように、Ge組成とC組成×10の値がほぼ等しくなる条件であり、この条件において下地層20基板10との格子不整合は実質的に無視できる。
応力印加膜90は、圧縮性応力を内包し、チャネルに電流方向に平行な引っ張り応力を印加する。他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層材料など)については、先に説明した(具体例1−4)と同様の変形が可能である。
第4の具体例において、チャネルを上面から見たときの格子定数は図2(a)に示すように、チャネル長方向には伸張している。これは、圧縮性応力を内包する応力印加膜90からの引っ張り応力による。一方、チャネル幅方向には圧縮されている。これは、ゲート幅方向の素子分離により、当該方向に弾性変形が可能な状態で、チャネル長方向に引っ張り応力が印加されたためにチャネル幅方向に格子が縮小する効果である。
第4の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。
以上の第1乃至第4の具体例においても、第1の実施形態で説明した変形が可能であるのは勿論のことである。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施態様によるMOS型電界効果トランジスタ300の構造を、図6に示す。
半導体基板10上に、ゲート絶縁膜40を介してゲート電極50が形成されている。ゲート電極50を挟んで基板10には溝が形成され、この溝内に、基板と同種の元素を含む合金半導体からなるソース・ドレイン下地層63,73と、基板と同種の元素を含み、基板10及び下地層63,73の何れとも組成比が異なり、且つ格子定数の異なる合金半導体からなるソース・ドレイン領域60,70が該下地層20上に格子整合して形成されている。そして、これらのソース・ドレイン領域60,70によってゲート電極下のチャネル領域35に応力が印加されている。
ここで、下地層63,73は、一般には格子定数が基板10と異なるため、歪みを有している。従って、転位の発生を防止するため、その膜厚は、熱平衡臨界膜厚未満である。また、下地層63,73の厚さは、ソース領域60の下部の空乏層61及びドレイン領域70の下部の空乏層71の幅よりも厚く設定されている。また、ソース・ドレイン領域60,70の表面に、5〜20nm程度の厚さの金属化合物層(NiGeSiなど)が形成されていても良い。
本実施形態においては、下地層63,73が合金半導体となっているため、SiやGeなど、単元素の基板に対して歪みを印加するためのソース・ドレイン構造を用いる従来構造に比べて、ソース・ドレイン下部領域に転位が発生しにくいという特徴を有する。また、ソース・ドレイン下部領域の空乏層61,71が全て下地層63,73に含まれているため、リーク電流の起因となる空乏層中の転位が発生しないという特徴を有する。さらに、下地層63,73の厚さが熱平衡臨界膜厚未満であるため、基板10と下地層63,73との格子不整合による転位の発生もないという特徴を有する。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(具体例3−1)
第3の実施形態の第1の具体例として、電界効果トランジスタ300は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みGe−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Ge、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚70nmのp型Si0.05Ge0.95、チャネル領域35はp型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、キャップ層83が膜厚10nmのSi窒化膜、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度n型不純物としてPがドープされた膜厚30nmのSi0.3Ge0.7 である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全てソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成95%の場合、80nm)であり、Ge組成が高いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は50%から85%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層材料など)については、先に説明した(具体例1−1)と同様の変形が可能である。
次に、図7を参照して、第3の実施形態の第1の具体例の製造方法を説明する。
まず、図7(a)に示すように、Ge基板10にSTI等の方法により素子分離(図示せず)を行った後、Ge基板10上にゲート絶縁膜40,ゲート電極50,及びキャップ層83をそれぞれCVD法などにより順次堆積する。
次いで、図7(b)に示すように、フォトリソグラフィーによりゲートパターン(図示せず)を形成した後、RIE法によりキャップ層83,ゲート電極50,及びゲート絶縁膜40をパターニングする。
次いで、図7(c)に示すように、側壁となるSi窒化膜(Si3N4 )80をCVD法などにより全面に堆積する。続いて、図7(d)に示すように、RIE法によりSi窒化膜80をエッチングすることにより側壁絶縁膜81を形成し、さらに基板10をエッチングして深さ80nmのリセス82を形成する。
次いで、図7(e)に示すように、リセス82の途中まで、LP−CVD法などにより、p型SiGe下地層63,73を形成する。続いて、図7(f)に示すように、n型ドーパントとしてPが高濃度に取り込まれたSiGeソース・ドレイン領域60、70をLP−CVD法などによりエピタキシャル成長する。
これ以降は、活性化アニールを行い、通常の配線形成プロセスを経ることにより、歪みGe−nMOSFET300が完成することになる。
(具体例3−2)
第3の実施形態の第2の具体例として、電界効果トランジスタ300は、正孔の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みSi−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Si、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚70nmのn型Si0.95Ge0.05、チャネル領域35はn型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、キャップ層83が膜厚10nmのSi窒化膜、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度p型不純物としてBがドープされた膜厚30nmのSi0.3Ge0.7 である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全てソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、1%以上15%以下である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成95%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は15%から50%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層材料など)については、先に説明した(具体例1−2)と同様の変形が可能である。
第2の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物としてPを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例3−3)
第3の実施形態の第3の具体例として、電界効果トランジスタ300は、正孔の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みGe−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Ge、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚70nmのn型Si0.04Ge0.95Sn0.01、チャネル領域35はn型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度p型不純物としてBがドープされた膜厚30nmのSn0.05Ge0.95である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全てソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[Sn組成×5−Si組成]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が高く、Sn組成が低いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Sn組成の範囲は1%から10%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層材料など)については、先に説明した(具体例1−3)と同様の変形が可能である。
第3の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物としてPを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例3−4)
第3の実施形態の第4の具体例として、電界効果トランジスタ300は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みSi−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Si、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚70nmのp型Si0.95Ge0.045C0.005、チャネル領域35がp型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚20nmのTiN、ソース領域60及びドレイン領域70が何れもPが高濃度にドープされた膜厚30nmのSi0.97C0.03である。
また、ソース・ドレイン領域60,70下部領域の空乏層61,71が全てソース・ドレイン下地合金層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGeの組成の範囲は、1%以上15%以下、Cの原子組成は0.1%から2%である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[Ge組成−C組成×10]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。更に好ましくは、上記のSi0.95Ge0.045C0.005のように、Ge組成とC組成×10の値がほぼ等しくなる条件であり、この条件において下地層63,73と基板10との格子不整合は実質的に無視できる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Cの原子組成の範囲は0.1%から5%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素(基板の面指数、チャネル長方向、基板材料、下地層材料など)については、先に説明した(具体例1−4)と同様の変形が可能である。
第4の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。
以上の第1乃至第4の具体例においても、第1の実施形態で説明した変形が可能であるのは勿論のことである。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態によるMOS型電界効果トランジスタ400の構造を、図8に示す。図8において、(a)は上面図であり、(b)は(a)中のA−A’断面、(c)はB−B’断面、(d)はC−C’断面をそれぞれ表している。
半導体基板10上に、板状の半導体領域(半導体フィン)31が基板主面に対してほぼ垂直に形成され、該フィン31の下部周囲は埋め込み絶縁膜95で埋め込まれ、該フィン31の埋め込み絶縁膜95よりも上部にチャネル領域が形成される。フィン31の上面にはキャップ層83が形成されているが、必ずしもこのキャップ層83は必要ない。フィン31の上部の両側面には、ゲート絶縁膜40を介してゲート電極50が形成されている。
ゲート電極50を挟んで、フィン31には凹部が形成され、この凹部内に、基板10と同種の元素を含む合金半導体からなるソース下地層63及びドレイン下地層73が格子整合して形成されている。さらに、下地層63,73上には、基板10と同種の元素を含み、基板10及び下地層63,73の何れとも組成比が異なり、且つ格子定数の異なる合金半導体からなるソース領域60及びドレイン領域70が格子整合して形成されている。そして、ソース・ドレイン領域60,70によってフィン31のチャネル領域に応力が印加されている。
ここで、下地層63,73は、一般には格子定数が基板10と異なるため、歪みを有している。従って、転位の発生を防止するため、その膜厚は、熱平衡臨界膜厚未満である。また、下地層63,73の厚さは、ソース領域60の下部の空乏層61及びドレイン領域70の下部の空乏層71の幅よりも厚く設定されている。また、ソース・ドレイン領域60,70の表面に、5〜20nm程度の厚さの金属化合物層(NiGeSiなど)が形成されていても良い。
本実施形態においては、下地層63,73が合金半導体となっているため、SiやGeなど、単元素の基板に対して歪みを印加するためのソース・ドレイン構造を用いる従来構造に比べて、ソース・ドレイン下部領域に転位が発生しにくいという特徴を有する。また、ソース・ドレイン下部領域の空乏層61,71が全て下地層63,73に含まれているため、リーク電流の起因となる空乏層中の転位が発生しないという特徴を有する。さらに、下地層63,73の厚さが熱平衡臨界膜厚未満であるため、基板10と下地層63,73との格子不整合による転位の発生もないという特徴を有する。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(具体例4−1)
第4の実施形態の第1の具体例として、フィン型の電界効果トランジスタ400は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みGe−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Ge、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚50nmのp型Si0.05Ge0.95、フィン31及びチャネル領域はp型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚10nmのTiN膜51とn型ポリSiGe膜52の積層構造であり、キャップ層83が膜厚30nmのSi窒化膜、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度n型不純物としてPがドープされた膜厚30nmのSi0.3Ge0.7 である。ポリSiGe膜52の替わりに、ポリSi,ポリGe、或いはそれらの金属化合物(NiSiGeなど)、TaN等の金属でも良い。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71は全てソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成95%の場合、80nm)であり、Ge組成が高いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は50%から90%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、フィン31の側面(チャネルとなる面)の面指数、チャネル方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(111)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上ではチャネル方位に対する駆動電流の依存性は小さいので、他の方向でも良い。さらに、(110)面上の[−110]方向でも(111)面上に匹敵する駆動電流が得られる。(100)面など、他の面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
なお、本具体例においては、基板10として、バルクGe基板のみならず、Si基板上にGe単結晶層が形成された基板や、SOI基板上にGe単結晶層が形成された基板、或いはSGOI基板上にGe単結晶層が形成された基板を用いても良い。また、下地層63,73として、炭素を添加したSiGe:C,Ge:C、或いはSnを添加したSiGeSnを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%、Snの原子組成は0.1%から3%が好ましい範囲である。
また、ソース・ドレイン領域60,70に、炭素を添加したSiGe:C,Ge:Cを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から5%が好ましい範囲である。さらに、フィン31の上部のキャップ層83の代わりに、ゲート絶縁膜40、ゲート電極50がフィン31の上面にも形成され、両側面と上面の3面がチャネルとなる構造(トライゲート構造)も可能である。
第4の実施形態の第1の具体例の製造方法を、図9乃至図17を用いて説明する。ここで、図9〜図17において(a)は上面図、(b)は、図9(a)のA−A’に沿った断面図である。
まず、図9(a)(b)に示すように、Ge基板10上にキャップ層83を形成し、このキャップ層83をフォトリソグラフィーによりパターニングした後、RIE法により基板10をエッチングすることにより、上部にキャップ層83の載った板状の半導体領域(半導体フィン)31を形成する。
次いで、図10(a)(b)に示すように、フィン31の下部周辺に絶縁膜95を埋め込み形成する。具体的には、絶縁膜95でフィン31とキャップ層83を埋め込んだ後、CMPで平坦化し、更にRIE法で絶縁膜95を所定量だけエッチングし、更に希弗酸にてフィン31の側壁に残留した絶縁膜を除去することにより、フィン31の上部を絶縁膜95上に露出させる。
次いで、図11(a)(b)に示すように、ゲート絶縁膜40及びTiN膜51を、フィン31の埋め込み絶縁膜95上に突出した領域上にCVD法などにより形成し、更にその上にポリSiGe膜52を堆積する。
次いで、図12(a)(b)に示すように、CMPによりポリSiGe膜52とTiN膜51、ゲート絶縁膜40をキャップ層83の表面まで研磨して平坦化した後、ポリSiGe膜52上に再度ポリSiGe膜52を堆積し、その上に第2のキャップ層53を堆積する。
次いで、図13(a)(b)に示すように、フォトリソグラフィーとRIE法により、キャップ層83、ポリSiGe層52、第2のキャップ層53からなるゲートパターンを形成する。
次いで、図14(a)(b)に示すように、ゲート側壁用のSi窒化膜80を全面に堆積した後、図15(a)(b)に示すように、RIE法によりゲート側壁絶縁膜81を形成する。
次いで、図16(a)(b)に示すように、RIE法により、ソース・ドレイン形成領域にリセス82を形成する。これにより、フィン31のチャネルを形成すべき第1の領域よりも、該領域の両側のソース・ドレインを形成すべき第2の領域の方が低くなる。
次いで、図17(a)(b)に示すように、リセス82内にp型Si0.05Ge0.95からなる下地層63,73をエピタキシャル成長し、その上に、n型Si0.3Ge0.7 からなるソース・ドレイン領域60,70を上にエピタキシャル成長する。
これ以降は、活性化アニールを行い、通常の配線形成プロセスを経ることにより、フィン型歪みGe−nMOSFET400が完成することになる。
(具体例4−2)
第4の実施形態の第2の具体例として、フィン型の電界効果トランジスタ400は、正孔の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みSi−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Si、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚50nmのn型Si0.95Ge0.05、フィン31及びチャネル領域はn型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚10nmのTiN膜51とp型ポリSi膜52の積層構造であり、キャップ層83が膜厚30nmのSi窒化膜、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度p型不純物としてBがドープされた膜厚30nmのSi0.7Ge0.3 である。ポリSi膜52の替わりに、ポリSiGe,ポリGe、或いはそれらの金属化合物(NiSiGeなど)、TaN等の金属でも良い。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71はソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、1%以上15%以下である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、Ge組成5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Ge組成の範囲は50%から90%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、フィン31の側面(チャネルとなる面)の面指数、チャネル方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(110)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上及び(100)面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
なお、本具体例においては、基板10として、バルクSi基板のみならず、SOI基板を用いても良い。また、下地層63,73として、炭素を添加したSiGe:Cを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%が好ましい範囲である。また、ソース・ドレイン領域60,70に、炭素を添加したSiGe:C,Ge:C、或いはSnを添加したSiGeSn,SiSnを用いても良い。この場合のCの原子組成は0.1%から2%が、Snの原子組成は0.1%から10%が好ましい範囲である。さらに、フィン上部のキャップ層の代わりに、ゲート絶縁膜、ゲート電極がフィンの上面にも形成され、両側面と上面の3面がチャネルとなる構造(トライゲート構造)も可能である。
第2の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物として、Pを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例4−3)
第4の実施形態の第3の具体例として、フィン型の電界効果トランジスタ400は、正孔の伝導方向(チャネル長方向)に圧縮歪みを有する歪みGe−pMOSFETである。
ここで、基板10がn型Ge、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚50nmのn型Si0.05Ge0.94Sn0.01、フィン31及びチャネル領域はn型Ge、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のGeO2 界面層、ゲート電極50が膜厚10nmのTiN膜51とポリSiGe膜52の積層構造であり、キャップ層83が膜厚30nmのSi窒化膜、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度p型不純物としてBがドープされた膜厚30nmのSn0.05Ge0.95である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全てソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、85%以上99%以下である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[Sn組成×5−Si組成]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が高いほど上限値は大きくなる。更に好ましくは、上記のSi0.05Ge0.94Sn0.01のように、Si組成とSn組成×5の値がほぼ等しくなる条件であり、この条件において下地層63,73と基板10との格子不整合は実質的に無視できる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Sn組成の範囲は1%から10%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、フィン側壁の面指数、チャネル方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(110)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上及び(100)面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
第3の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。但し、電気的極性が逆であるため、チャネル不純物として、Pを、ソース・ドレイン不純物としてBをそれぞれ用いる。
(具体例4−4)
第4の実施形態の第4の具体例として、フィン型の電界効果トランジスタ400は、電子の伝導方向(チャネル長方向)に引っ張り歪みを有する歪みSi−nMOSFETである。
ここで、基板10がp型Si、ソース下地層63及びドレイン下地層73が膜厚50nmのp型Si0.945Ge0.05C0.005、フィン31及びチャネル領域はp型Si、ゲート絶縁膜40が膜厚5nmのLaAlO及び膜厚1nm未満のSiO2 界面層、ゲート電極50が膜厚10nmのTiN膜51とポリSiGe膜52の積層構造であり、キャップ層83が膜厚30nmのSi窒化膜、ソース領域60及びドレイン領域70が何れも高濃度n型不純物としてPがドープされた膜厚30nmのSi0.97C0.03である。
また、ソース・ドレイン領域60,70の下部領域の空乏層61,71が全てソース・ドレイン下地層63,73に含まれ、且つ下地層63,73と基板10との間に転位が発生しないという観点から、下地層63,73の好ましいGe組成の範囲は、1%以上15%以下、Cの原子組成は0.1%から2%である。さらに、下地層63,73の膜厚の下限は30nm、膜厚の上限は、組成に応じた熱平衡臨界膜厚(例えば、[C組成×10−Ge組成]=5%の場合、80nm)であり、Ge組成が低いほど上限値は大きくなる。更に好ましくは、上記のSi0.945Ge0.05C0.005のように、Ge組成とC組成×10の値がほぼ等しくなる条件であり、この条件において下地層20と基板10との格子不整合は実質的に無視できる。また、ソース・ドレイン領域60,70については、塑性変形による応力低減を避けつつ、なるべく大きな応力を発生させるという観点から、Cの原子組成の範囲は0.1%から5%、膜厚は5nmから50nmが好ましい範囲となる。
他の構成要素については、当業者が容易に考え得る範囲での変更が可能である。また、フィン側壁の面指数、チャネル方向は、駆動電流を最大化する観点においては、それぞれ(100)面、[110]方向が最適であるが、(111)面上及び(110)面上でも、歪みによる駆動電流の増大効果が得られる。
第4の具体例の製造方法は、第1の具体例に準ずる。
以上の第1乃至第4の具体例においても、第1の実施形態で説明した変形が可能であるのは勿論のことである。
(変形例)
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。