JP5424538B2 - 移植用成熟誘導化樹状細胞、製造方法及びその利用方法 - Google Patents

移植用成熟誘導化樹状細胞、製造方法及びその利用方法 Download PDF

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Description

本発明は、成熟させた樹状細胞、その製造方法及びそれを利用した治療法に関する。なお、本明細書において、樹状細胞(dendritic cell)を「DC」と略すことがある。
最近になって、これまで一般的な癌治療方法であった手術による外科療法、抗癌剤による化学療法、並びに放射線療法等の方法に加え、これらとは全く異なる免疫細胞を利用した免疫療法が注目され始めてきた。今ではその免疫療法を単独、もしくは前記の3方法と併用する形で臨床応用されていることは良く知られていることである。免疫療法とは、これまでの外科療法、化学療法、放射線療法等のような外的な力を利用して癌を治療するのではなく、あくまでも自分自身の免疫力を用いた治療法である。
その免疫療法としては、例えばT細胞を分離し培養して体内に戻す方法、樹状細胞を分離し培養して体内に戻す方法、ナチュラルキラー(Natural Killer)細胞を分離し培養して体内に戻す方法等が挙げられる。それらの免疫療法の中で、特に注目される方法が前二者のT細胞や樹状細胞を培養して体内に戻す方法である。T細胞を用いた免疫療法とは、抗原をもった癌細胞を攻撃するT細胞の抗原認識能を生体の外で強化して体内に戻す方法であり、LAK療法やCTL療法等として知られている。しかしながら、T細胞はその抗原認識能により効率的に癌細胞を攻撃できるものの、抗原の存在が不明瞭になった癌には攻撃できないという弱点を持っている。また、体内でのT細胞の寿命が短いために頻繁に新たなT細胞を導入する必要がある。一方、樹状細胞は抗原をT細胞に教え込む役割を持つ細胞だが、樹状細胞に癌細胞の抗原をしっかり覚えこませることで、次々にT細胞に癌細胞の抗原を覚えこませることができるようになる。最近、樹状細胞を用いた免疫療法が注目されているのはこの理由のためであり、実際に樹状細胞ワクチン療法やDCI療法などが臨床の現場で実施されている。
担癌患者は、一般に、癌進展に伴う消耗あるいは癌細胞から産生される免疫抑制物質の作用により、ホストの免疫応答が抑制されていることで知られている。これまでにさまざまな癌免疫治療が行われてきたがいずれも満足すべき臨床効果が得られなかったのは、免疫不全状態にある癌患者において強力な抗腫瘍免疫応答を誘導することが困難であることが考えられてきた。特に腫瘍特異的キラーTリンパ球(CTL)活性化に重要な樹状細胞の成熟過程が免疫抑制物質の作用により阻害されることが最もクリティカルな問題であった。したがって癌患者から十分成熟活性化した樹状細胞を得るための方法を確立することが、有効な癌免疫療法の実現のための早急な課題であった。
樹状細胞(DC)とは、上述したように抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種であり、生体内の免疫系で重要な役割を持ったものである。抗原提示細胞は自分が取り込んだ抗原を、他の免疫系の細胞に伝える役割を持つ。抗原を取り込むと樹状細胞は活性化され、脾臓などのリンパ器官に移動する。リンパ器官では取り込んだ抗原に特異的なT細胞やB細胞を活性化する。樹状細胞は発現しているマーカー分子によってさまざまなサブセットに分類されるが、その中でも成熟樹状細胞は極めて重要なものとしてよく知られている。例えば、炎症に焦点を合わせると、自然免疫に関係するエンドトキシンまたは炎症性サイトカインは、未成熟DCの成熟DCへの分化を誘導する。後者は、適応性免疫の主要なエフェクターであるヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞を効率的に刺激する(Banchereau,J.& Steinman,R.M.Nature 392,245−252(1998);Mellman,I.& Steinman,R.M.Cell 106,255−258(2001))。また、活性型T細胞上に存在するCD40リガンド(CD154)によるCD40を介する未成熟DCへの刺激は、DC成熟のためのシグナルを与える。しかしながら、DC成熟に関する様々な因子の相対的な重要性は、依然として不明瞭なままである。骨髄からの未成熟DC調製について記載されるオリジナルの誘発プロトコル通りに、単に細胞のピペッティングあるいは再プレーティングするだけでも成熟が引き起こされた(Inaba,K.et al J.Exp.Med.191,927−936(2000);Gallucci,S.,Lolkema,M.& Matzinger,P.Nat.Med.,5,1249−1255(1999))。しかしながら、これらの公知文献は、DCの成熟過程の全体像を明らかにするものではない。
かくして、より効率的な癌免疫療法を実現するためには、成熟した樹状細胞の製造が必須要件となる。その方法としては、従来から、未成熟樹状細胞に対しピシバニール、LSP等の菌体由来物質、或いはTNF−alpha等のサイトカイン等を用いて刺激することで成熟誘導化させることが行われてきた。その中で、特にピシバニールは、それを使って得られた成熟樹状細胞が免疫応答に極めて有用なインターロイキン−12(IL−12)を多量に産生することで知られており、より効率的な癌免疫療法を実現するために極めて有効な方法として注目されてきた。
しかしながら、生体外の細胞培養基材表面上でピシバニールを用いて樹状細胞を成熟させると、成熟した細胞は基材表面に強固に接着し、常法でよく用いられるような酵素処理程度では回収することが困難という大きな問題があった。また、得られた移植用成熟誘導化樹状細胞は酵素処理を行うことで損傷してしまい、移植用成熟誘導化樹状細胞表面の抗原は破壊され、またIL−12の産生能も低く、そのような移植用成熟誘導化樹状細胞は治療に必ずしも有効な状態のものではなかった。
一方、細胞の培養は、通常、ガラス表面上あるいは種々の処理を行ったプラスチックの表面上で行われる。この目的に、例えば、ポリスチレンを材料とする表面処理、例えばγ線照射、プラズマ処理等を行った種々の容器等が細胞培養用容器として普及している。このような細胞培養用容器を用いて培養・増殖した細胞は、トリプシンのような蛋白分解酵素や化学薬品により処理することで容器表面から剥離・回収される。しかし、上述のような化学薬品処理を施して増殖した細胞を回収する場合、処理工程が煩雑になり、不純物混入の可能性が多くなること、及び増殖した細胞が化学的処理により変成若しくは損傷し細胞本来の機能が損なわれる例があること等の欠点が指摘されていた。
かかる欠点を克服するために、これまでいくつかの技術が提案されている。その中で、特に特願2001−226141号では、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養基材上で前眼部関連細胞を培養し、必要に応じて常法により培養細胞層を重層化させ、培養基材の温度を変えるだけで培養した細胞シートを剥離させることで、十分な強度を持った細胞シートの作製が可能となった。また、この細胞シートには基底膜様蛋白質も保持しており、上述したディスパーゼ処理したものに比べ、組織への生着性も明らかに改善されている。また、特願2002−516068号、特願2003−197466号等には、この基材を用いることで、これまで基材に強固に付着し、酵素処理だけでは回収が困難であったケラチノサイト、マクロファージ、中皮細胞等の細胞を酵素処理なく効率良く剥離させることができるようになることが開示されており、しかも酵素処理を施されていないため低損傷な状態で回収できることを示している。
本発明の対象である樹状細胞においても、前述のように培養基材上で成熟誘導化させると、その成熟誘導化樹状細胞は基材表面に強固に付着する。そこで、この樹状細胞を上述のような温度応答性ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養基材上で成熟誘導化させ、酵素処理を必要とせずに回収できるかどうかを確認したところ、移植用成熟誘導化樹状細胞を回収できることを確認した。また、得られた移植用成熟誘導化樹状細胞は酵素処理を施されていないことから低損傷なものと予想された。しかしながら、移植用の成熟誘導化樹状細胞として細胞機能的に好適なものを検討することはこれまで全くなく、また本特許で示すような結果を予測することもできなかった。移植用成熟誘導化樹状細胞を実際に臨床の場で使用するには、1回の治療に必要な移植用成熟誘導化樹状細胞数をなるべく少量の末梢血、もしくは骨髄から回収し、患者の負担をなるべく軽減しなければならない。その実現のために、より細胞機能的に好適な移植用成熟誘導化樹状細胞の製造技術の開発が待ち望まれていた。
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決することを目的になされたものである。すなわち、本発明は、免疫療法に有用な移植用成熟誘導化樹状細胞を提供することを目的とする。また、本発明は、その細胞を高効率に製造する方法、さらに、それより得られた細胞の利用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行ってきた。その結果、温度応答性ポリマーが基材表面に被覆された細胞培養基材上で未成熟樹状細胞を少なくともピシバニールを用いて成熟させ、その後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とすることで、剥離困難であった培養した移植用成熟誘導化樹状細胞を効率良く回収できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、生体外で成熟誘導化させ、培地中に浮遊させた状態の細胞表面抗原の損傷が少ない、移植用成熟誘導化樹状細胞を提供する。また、本発明は、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養基材上で細胞を少なくともピシバニールを用いて成熟誘導化し、その後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とすることで移植用成熟誘導化樹状細胞を製造する方法を提供する。加えて、本発明ではその移植用成熟誘導化樹状細胞を用いた治療法を提供する。
本発明の技術であれば、従来技術に比べ高収率に成熟誘導化樹状細胞を回収できるため、1回の治療に必要な移植用成熟誘導化樹状細胞数をなるべく少量の末梢血、或いは骨髄から製造することができるようになり、患者の負担軽減も期待される。また、本発明で得られる移植用成熟誘導化樹状細胞は酵素処理を受けていないため低損傷なものであり、免疫反応に有用な細胞表面抗原を破壊されておらず、そのものを使うことで効果的な免疫療法の実施が期待できる。したがって、本発明は臨床、細胞工学、医用工学等の医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
本発明は、生体外で成熟誘導化させた細胞表面抗原の損傷が少ない移植用成熟誘導化樹状細胞を提供する。しかも、その移植用成熟誘導化樹状細胞とは、基材表面に付着した状態のものではなく、培地中に浮遊した状態のものである。すなわち、本発明でいう移植用成熟誘導化樹状細胞とは、それをそのまま患者本人に戻すことが可能な状態のものをいう。
本発明で示す移植用成熟誘導化樹状細胞の作製に使用される好適な細胞としては、単球が挙げられるが、その由来は、末梢血、骨髄の何れでも良く、それらの1種、もしくは2種以上を混合したものでも良い。
本発明における移植用成熟誘導化樹状細胞とは、上述のように培地中に浮遊した状態のものであり、細胞表面抗原の損傷が少ないことを特徴とするものである。従って、本発明の移植用成熟誘導化樹状細胞は、生体外に取り出したものの樹状細胞本来の特性を有してものである。ここで、細胞の損傷が少ないことを確認する方法としては、細胞表層の分析法であれば特に制約されるものではないが、例えば、個々の細胞表面抗原をウェスタンブロット法で分析すれば、それぞれの細胞表面抗原に相当するバンドが複数本となって現われたり、消失してしまうことはなく、単一のバンドとして得られることから確認することができる。もし移植用成熟誘導化樹状細胞が損傷を受ければ、もともとあった細胞表面抗原蛋白質がさまざまな分子量に分断され、それがウェスタンブロット法で分析したとき、抗原蛋白質のバンドは複数に分かれたり、消失してしまったりする訳である。本発明における移植用成熟誘導化樹状細胞とは、細胞表層の抗原を分析したとき、抗原蛋白質が分断されたような結果とならない、すなわち複数のバンドに分かれないことを特徴としている。
本発明における移植用成熟誘導化樹状細胞とは、細胞自らが培養時に産生した細胞表面抗原を破壊、損傷されることなく有している。その表面抗原は、特に限定されるわけではないが、例えば、CD83、CD80、CD86、CD58、CD54等が挙げられる。その中で、CD83は移植用成熟誘導化樹状細胞が免疫反応を示す上で特に重要な抗原であり、本発明の移植用成熟誘導化樹状細胞ではこのCD83を多く有している。ここで、CD83とは、43kDaの糖タンパクで、免疫グロブリン・スーパーファミリーのメンバーである。細胞外に1個のIg−V領域様ドメインと、膜貫通領域、40アミノ酸残基より成る細胞内ドメインで構成されている。CD83は、主として皮膚のランゲルハンス細胞や末梢血の樹状細胞、リンパ組織のT細胞領域中の指状突起細網細胞などの樹状細胞系統に発現し、胚中心リンパ球にも弱く発現するものである。また、CD83は休止期の末梢血白血球では検出できるほどには発現せず、in vitroでリンパ球を活性化した場合にのみ低レベルで発現することで知られている。
また、本発明での移植用成熟誘導化樹状細胞は低損傷のものとして回収されるため、例えば免疫反応に密接に係わる有用蛋白質も高濃度で産生できる。そのような蛋白質としては、免疫反応に有用な蛋白質であれば特に限定されるものではないが、例えばインターロイキン−12(IL−12)、インターフェロン−γ等が挙げられる。その中で、IL−12は移植用成熟誘導化樹状細胞が免疫反応を示す上で特に重要な蛋白質であり、本発明の移植用成熟誘導化樹状細胞ではこのIL−12を多く産生できる。ここで、IL−12とは、活性化B細胞やマクロファージなどから産生され、T細胞やNK細胞によるIFN−γの産生を誘導する。また、活性化T細胞や活性化NK細胞を増殖させ、細胞傷害活性を誘導するなど細胞性免疫も増強させることで知られている。
本発明は、免疫療法に有用な移植用成熟誘導化樹状細胞を効率良く製造できる方法を提供する。種々な角度からの検討を加えた結果、温度応答性ポリマーが基材表面に被覆された細胞培養基材上で未成熟樹状細胞を少なくともピシバニールを用いて成熟させ、その後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とすることで、剥離困難であった培養した移植用成熟誘導化樹状細胞を効率良く回収できることを見出した。細胞培養基材において基材の被覆に用いられる温度応答性ポリマーは、水溶液中で上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度0℃〜80℃、より好ましくは20℃〜50℃を有する。上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が80℃を越えると細胞が死滅する可能性があるので好ましくない。また、上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が0℃より低いと一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細胞が死滅してしまうため、やはり好ましくない。
本発明に用いる温度応答性ポリマーはホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このようなポリマーとしては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。
温度応答性ポリマーの被覆量は、1.3〜2.2μg/cmの範囲が良く、好ましくは1.4〜1.9μg/cmであり、さらに好ましくは1.5〜1.8μg/cmである。1.3μg/cmより少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該ポリマー上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に2.2μg/cm以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。本発明における培養基材の形態は特に制約されるものではないが、例えばディッシュ、マルチプレート、フラスコ、セルインサートなどが挙げられる。
本発明は、免疫療法に有用な移植用成熟誘導化樹状細胞を効率良く製造できる方法を提供する。一方で、本発明で利用される温度応答性ポリマーが被覆された培養基材上に付着する成熟誘導化樹状細胞の形態を観察すると特定量の温度応答性ポリマーが被覆されたものが良好であることも分かった。この成熟誘導化樹状細胞の付着時の形態は、温度応答性ポリマーの被覆量が、1.3〜1.8μg/cmの範囲が良く、好ましくは1.4〜1.7μg/cmであり、さらに好ましくは1.5〜1.6μg/cmである。細胞の基材表面付着時の形態が良好であると、細胞がより好ましい状態で付着しているものと考えられ、その結果、細胞活性も高くなるものと期待される。本発明では、成熟誘導化樹状細胞を効率良く製造するだけではなく、より高活性な成熟誘導化樹状細胞を製造する技術を提供するものである。
本発明において、未熟樹状細胞の成熟誘導化は上述の温度応答性ポリマーが被覆された細胞培養基材上で行われる。培地温度は、基材表面に被覆された前記ポリマーが上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記ポリマーが下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。
本発明の方法において、成熟誘導化した細胞を温度応答性基材から剥離回収するには、培養された細胞の付着した培養基材の温度を培養基材上の被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって剥離させることができる。その際、培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。細胞をより早く、より高効率に剥離、回収する目的で、基材を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。
被覆を施される基材としては、通常細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の化合物を初めとして、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外のポリマー化合物、セラミックス類など全て用いることができる。
温度応答性ポリマーの培養基材への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、特開平2−211865号公報に記載されている方法に従ってよい。すなわち、かかる被覆は、基材と上記モノマーまたはポリマーを、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。
本発明は、その温度応答性ポリマーが基材表面に被覆された細胞培養基材上で未成熟樹状細胞を少なくともピシバニールを用いて成熟させ、その後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とすることで、剥離困難であった培養した移植用成熟誘導化樹状細胞を効率良く回収する方法を提供するものである。
その未成熟樹状細胞とは外的刺激により成熟誘導化できれば特に限定されるものではないが、例えば以下の従って得ることができる。その方法とは、具体的には、(1)末梢血、骨髄のいずれか1種、もしくは2種以上より血球分離装置を用いて血球成分を回収し、(2)その回収した血球成分をプラチック製培養皿に付着させ、その付着した細胞を単球成分として回収し、(3)少なくともGM−CSFを用いてその単球を未熟樹状細胞へ誘導した後に、プラスチック製培養皿より回収すれば良い。
本発明において、温度応答性ポリマーが被覆された基材表面への未熟樹状細胞の播種数は通常の培養操作で行われる範囲で実施されれば良く特に限定されるわけではないが、1×10個細胞/cm以上が良く、好ましくは1×10個細胞/cm以上、さらに好ましくは2×10個細胞/cm以上が良い。播種数が多くなればそれだけ効率良く成熟誘導化樹状細胞が得られ好ましい。
本発明における上述した細胞を培養するための培地組成は特に限定されるものではなく、本発明で使用する細胞を培養する際に通常使われているもので良い。例えば、α−MEM培地、F−12培地、DMEM培地、或いはそれらの混合物に3%〜20%ウシ血清を混合したものでも良い。
未熟樹状細胞を成熟誘導化する方法は特に限定されるものではないが、例えば、TNF−α、PGE2、IL−6、IL−1βからなるカクテル培地、或いはピシバニール等が挙げられるが、最も効果的なものとして後者のピシバニールが良い。未熟樹状細胞に対しこれらの薬物で成熟誘導化する方法は特に限定されるものでなく、これらの薬物を用いて通常行われている方法に従えば良い。
かくして得られた移植用成熟誘導化樹状細胞は酵素処理を受けておらず損傷の少ないものとして回収される。
以下に、上記製造方法を具体的に示す。まず、本発明で示す製造方法としては生体内から血球を採り、その中から単球を集める必要がある。血球の回収する方法として、例えば血球分離装置を用いてアフェレーシスすることで回収する方法、バフィーコートを利用する方法等が良く利用される。その中で特に前者のアフェレーシスは操作が簡便なため有用な方法であり、本発明に示す技術であれば、効率良く移植用成熟誘導化樹状細胞を回収できるため、誘導化前の血球数も少量で済み、具体的には、通常6時間程度アフェレーシスを1〜3時間程度で済むこととなり、患者の負担を著しく軽減できる。
次に、採取した血球成分から単球を分離する。この分離方法は血球から単球を分離できればその方法は特に限定されないが、通常、単球が他の血球成分に比べ付着しやすい性質を利用して、血球成分をプラスチック製培養皿に付着させ、その付着した細胞を単球成分として回収する方法が用いられる。その際に使用する細胞培養器材も特に限定されるものではなく、例えば、血球成分を市販の細胞培養用器材上に付着させ、その付着した細胞を酵素処理することで回収しても良く、或いは前述した温度応答性ポリマーが被覆された温度応答性細胞培養基材上に付着させ、培地並びに基材表面の温度を変化させることで回収しても良い。また、血球成分を細胞培養用器材上に付着させた際、付着せずに浮遊しているリンパ球等の目的外細胞を培地交換及びリンス等により取り除く。
次に、付着した単球を未成熟な樹状細胞へ誘導化する。その際、通常、回収した単球を再びプラスチック製培養皿に付着させ、その後、未成熟な樹状細胞へ誘導化する操作が行われる。単球を未成熟な樹状細胞へ誘導化する方法は常法に従えば良く、例えば、培地中にGM−CSF、IL−4等の1種、または2種以上を混合したもので誘導化させられ、特に限定されるものではない。未熟樹状細胞へ誘導されると、細胞はプラスチック製培養基材表面より剥離し、浮遊してくるので、それを培地とともに回収すれば良い。
本特許では、移植用成熟誘導化樹状細胞を提供する。その際、上述した方法により未熟樹状細胞を得た後、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを特定量被覆した温度応答性細胞培養基材表面上に播種させる必要がある。上述したようにピシバニールを用いて成熟化させると、細胞は基材表面上に強固に付着し、たとえ酵素処理を施しても半数程度しか剥離、回収できないが、温度応答性細胞培養基材表面上で成熟誘導化させた移植用成熟誘導化樹状細胞は、温度処理を施すだけで容易に剥離できる。温度応答性細胞培養基材表面が、強固に付着した移植用成熟誘導化樹状細胞を回収できる好適なものと考えられる。
本発明に示す製造方法で得られる移植用成熟誘導化樹状細胞は、製造過程で酵素処理を受けておらず、成熟誘導化樹状細胞本来の機能を保持しているものであり、従って、それを体内に戻すだけで、免疫に係わる疾患の治療効果を期待できる。その疾患として、例えばウイルス持続感染症、悪性腫瘍、アレルギー、自己免疫疾患、移植後拒絶反応を治療することができるようになるが、これらに特に限定されるわけではない。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1、2、3
市販の3.5cmφ培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製ファルコン(FALCON)3001)上に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを45%(実施例1)、51%(実施例2)、57%(実施例3)になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.07ml塗布した。0.25MGyの強度の電子線を照射し、培養皿表面にN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(PIPAAm)を固定化した。照射後、イオン交換水により培養皿を洗浄し、残存モノマーおよび培養皿に結合していないPIPAAmを取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、エチレンオキサイドガスで滅菌することで温度応答性細胞培養基材を得た。基材表面における温度応答性ポリマー量を測定したところ、それぞれ1.5μg/cm(実施例1)、1.9μg/cm(実施例2)、2.2μg/cm(実施例3)被覆されていることが分かった。
一方で、健常人の末梢血より調製したバフィーコート30mL当りリン酸緩衝生理的食塩水90mL加え、リンホセパール1が15mL入った遠心管に30mLずつ重層した。室温、400gにて30分遠心分離し、3層に分かれたうちの中層(リンパ球、単球分画)部分を回収し、リン酸緩衝生理的食塩水をさらに加え遠心分離することにより洗浄した。得られたペレットに培養液を加え細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液を2×10個細胞/mlとなるように希釈し、市販の10cmφ細胞培養用ディッシュに10mlずつ播種し、37℃の炭酸ガス培養装置で2時間インキュベートした。細胞培養用ディッシュを振盪後、上清を取り除き、接着細胞にIL−4とGM−CSFを含む新しい培養液に変え、6日間培養した。6日後に浮遊細胞(未成熟樹状細胞)を回収し、遠心により細胞を回収、洗浄した後に、ピシバニールを含む培養液で1×10個細胞/mlの細胞懸濁液とし、上述した温度応答性細胞培養基材に播種した。そのまま48時間、37℃の炭酸ガス培養装置で培養し、未成熟樹状細胞を成熟誘導化させた。培養後、温度応答性細胞培養基材を20℃に30分間放置することにより、成熟誘導化樹状細胞を温度応答性細胞培養基材から剥離させたところ、図1に示すように、成熟誘導化樹状細胞の剥離率はそれぞれ100%(実施例1)、98%(実施例2)、82%(実施例3)であった。本発明の方法に従えば、これまで培養基材表面から剥離することが困難であった成熟誘導化樹状細胞を高効率に剥離させられることが分かった。
さらに、回収した細胞について、トリパンブルー染色による生存率測定、抗CD83及び抗CD86抗体による免疫染色後にフローサイトメトリーを用いることにより純度及び成熟樹状細胞マーカーの発現量を解析した。その結果、図2に示すように、トリパンブルー法による生存率の測定でも実施例1、2、3いずれの場合においても90%以上の生存率を示し、回収されたほぼすべての細胞が生存していることが確かめられた。また、フローサイトメトリーによるFSC/SSCの位置から求めた樹状細胞純度に関しても、70%以上と純度が高くなることが分かった。さらに分化・成熟した樹状細胞の表面マーカーであるCD83,CD86の発現量も、図4(CD83)、図5(CD86)に示すように、表面マーカーの平均発現量(MFI)は、ピシバニール処理し、成熟化させることにより増加していることが分かった。
比較例1、2
成熟誘導化樹状細胞を播種する基材として、市販の3.5cmφ培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製ファルコン(FALCON)3001)上に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを30%(比較例1)、35%(比較例2)になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.07ml塗布する以外は、全て実施例1と同様な手順で作業を行った。基材表面における温度応答性ポリマー量を測定したところ、それぞれ0.9μg/cm(比較例1)、1.1μg/cm(比較例2)被覆されていることが分かった。成熟誘導化培養後、0.1%トリプシンで15分間インキュベートすることにより、成熟誘導化樹状細胞を温度応答性細胞培養基材から剥離させたところ、成熟誘導化樹状細胞の剥離率は図1に示すように35%(比較例1)、57%(比較例2)であった。
回収した細胞について、トリパンブルー染色による生存率測定、抗CD83及び抗CD86抗体による免疫染色後にフローサイトメトリーを用いることにより純度及び成熟樹状細胞マーカーの発現量を解析した。その結果、図2に示すように、トリパンブルー法による生存率の測定でも実施例1、2、3よりも低い生存率であることが確かめられた。また、フローサイトメトリーによるFSC/SSCの位置から求めた樹状細胞純度に関しては、比較例1、2も実施例と同様、温度応答性ポリマーが被覆された基材表面から回収された細胞であるため、実施例の結果と同様に70%以上と純度が高くなることが分かった。さらに分化・成熟した樹状細胞の表面マーカーであるCD83,CD86の発現量についても、図4(CD83)、図5(CD86)に示すように、表面マーカーの平均発現量(MFI)は、ピシバニール処理し、成熟化させることにより増加していることが分かった。
比較例3
成熟誘導化樹状細胞を播種する基材を、市販の3.5cmφ培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製ファルコン(FALCON)3001)とする以外は、全て実施例1と同様な手順で作業を行った。成熟誘導化培養後、0.1%トリプシンで15分間インキュベートすることにより、成熟誘導化樹状細胞を温度応答性細胞培養基材から剥離させたところ、成熟誘導化樹状細胞の剥離率は図1に示すように35%であった。
回収した細胞について、トリパンブルー染色による生存率測定、抗CD83及び抗CD86抗体による免疫染色後にフローサイトメトリーを用いることにより純度及び成熟樹状細胞マーカーの発現量を解析した。その結果、図2に示すように、トリパンブルー法による生存率の測定でも実施例1、2、3よりも低い生存率であることが確かめられた。また、フローサイトメトリーによるFSC/SSCの位置から求めた樹状細胞純度に関しても、実施例に比べ低いことが分かった。さらに分化・成熟した樹状細胞の表面マーカーであるCD83,CD86の発現量についても、図4(CD83)、図5(CD86)に示すように、表面マーカーの平均発現量(MFI)は低く、ピシバニール処理し、成熟化させてもトリプシン処理によって減少してしまったことが分かる。
癌免疫療法に用いられる樹状細胞は、理論上高機能な抗原提示細胞として働くことが期待されている。抗原提示能は細胞表面に存在する。従って、その細胞の表面が無傷に保たれていることはこの細胞が期待される効果を発揮するための重要な要件である。従来、用いられているトリプシンを用いた剥離法では、その基本要件が満たされておらず機能の低下を招いていたことが予想される。温度応答性器材を用いることにより初めて、ピシバニールを用いて成熟した樹状細胞を本来の高機能抗原提示細胞として機能させることができることが示唆される。
実施例4、比較例4
実施例1で得られた成熟誘導化樹状細胞と、比較例3で得られた成熟誘導化樹状細胞について、両者の表面抗原分子の量的及び質的な相違をそれぞれの表面抗原に対する特異抗体を用いたウェスタンブロット法によって解析した(実施例1の成熟誘導化樹状細胞の検討を実施例4とする。比較例3の成熟誘導化樹状細胞の検討を比較例4とする。)。具体的には、回収した細胞をSDSサンプルバッファーに溶解し、タンパク定量を行い、1mgタンパク質/mlの濃度に細胞溶解液に調製した。これらを10%の濃度のポリアクリルアミドゲルに添加し、SDS電気泳動を行い、PVDF膜に転写し、抗ヒトCD80,抗ヒトCD83,及び抗ヒトCD86抗体を用いてウエスタンプロットを行った。その結果、実施例1の成熟誘導化樹状細胞から調製した細胞溶解液のウエスタンプロットでは、CD80,CD83,及びCD86に対して、それぞれ約60kDa、43kDa及び80kDaの幅広い一本のバンドを認めた。一方、比較例3から得られた成熟誘導化樹状細胞では、それぞれ淡い60kDa,43kDa,及び80kDaのバンドのほかに、より移動度の早い低分子側に、淡い幅広い数本のバンドが出現を認めた。これらの分子量の低いバンドは、トリプシンによるそれぞれの分子の部分分解物分子であると結論した。
本発明の技術であれば、従来技術に比べ高収率に成熟誘導化樹状細胞を回収できるため、従って1回の治療に必要な移植用成熟誘導化樹状細胞数をなるべく少量の末梢血、或いは骨髄から製造することができるようになり、患者の負担軽減も期待される。また、本発明で得られる移植用成熟誘導化樹状細胞は酵素処理を受けていないため低損傷なものであり、免疫反応に有用な細胞表面抗原を破壊されておらず、そのものを使うことで効果的な免疫療法の実施が期待できる。したがって、本発明は臨床、細胞工学、医用工学等の医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
実施例1、2、3、比較例1、2、3に示すそれぞれの基材からの成熟誘導化樹状細胞の回収率を示すものである。 実施例1、2、3、比較例1、2、3に示すそれぞれの基材から回収した成熟誘導化樹状細胞の生存率を示すものである。 実施例1、2、3、比較例1、2、3に示すそれぞれの基材から回収した成熟誘導化樹状細胞の純度を示すものである。 実施例1、2、3、比較例1、2、3に示すそれぞれの基材から回収した成熟誘導化樹状細胞のCD83の平均発現量を示すものである。 実施例1、2、3、比較例1、2、3に示すそれぞれの基材から回収した成熟誘導化樹状細胞のCD86の平均発現量を示すものである。 実施例4、比較例4に示す成熟誘導化樹状細胞の表面抗原(CD86)をウェスタンブロット法により解析した結果を示すものである。

Claims (12)

  1. 生体外で成熟誘導化させ、培地中に浮遊させた状態の移植用成熟誘導化樹状細胞であって、
    CD58、CD54、CD80、CD83、CD86のいずれか1つの細胞表面抗原をウェスタンブロット法で分析すると、当該細胞表面抗原分子に相当するものが単一バンドとして観察される、
    移植用成熟誘導化樹状細胞であって、
    以下の工程を含む方法により得られうる、移植用成熟誘導化樹状細胞
    (1)末梢血、骨髄のいずれか1種、もしくは2種以上より血球分離装置を用いて血球成分を回収し、
    (2)その回収した血球成分から、プラスチック製培養皿への付着性、もしくはCD14抗体を利用した分離法により単球成分を単離し、
    (3)それを再びプラスチック製培養表面に付着させた後、少なくともGM−CSFを用いてその単球を未熟樹状細胞へ誘導させ、浮遊してきた未熟樹状細胞を培地とともに回収し、
    (4)その未熟樹状細胞を水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを特定量被覆した温度応答性細胞培養基材表面上に播種し、成熟樹状細胞へ誘導化させた後、
    (5)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、酵素処理を施すことなく成熟樹状細胞を剥離する方法。
  2. 以下の工程を含む方法により得られうる、請求項1記載の移植用成熟誘導化樹状細胞
    (1)末梢血、骨髄のいずれか1種、もしくは2種以上より血球分離装置を用いて血球成分を回収し、
    (2)その回収した血球成分から、プラスチック製培養皿への付着性、もしくはCD14抗体を利用した分離法により単球成分を単離し、
    (3)それを再びプラスチック製培養表面に付着させた後、少なくともGM−CSFを用いてその単球を未熟樹状細胞へ誘導させ、浮遊してきた未熟樹状細胞を培地とともに回収し、
    (4)その未熟樹状細胞を水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを特定量被覆した温度応答性細胞培養基材表面上に播種し、少なくともピシバニールを用いて成熟樹状細胞へ誘導化させた後、
    (5)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、酵素処理を施すことなく成熟樹状細胞を剥離する方法。
  3. 細胞表面抗原の損傷が少ないことが、細胞のインターロイキン−12の産生能が高いことである、請求項1又は2記載の移植用成熟誘導化樹状細胞
  4. 樹状細胞が、末梢血、骨髄のいずれか1種、もしくは2種以上から得られたものを誘導化したものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の移植用成熟誘導化樹状細胞
  5. 蛋白質分解酵素による処理が施されていない、請求項1〜4のいずれか1項記載の移植用成熟誘導化樹状細胞
  6. ウイルス持続感染症、悪性腫瘍、アレルギー、自己免疫疾患、移植後拒絶反応を治療するための、請求項1〜5のいずれか1項記載の移植用成熟誘導化樹状細胞
  7. 移植用成熟誘導化樹状細胞の製造が、
    (1)末梢血、骨髄のいずれか1種、もしくは2種以上より血球分離装置を用いて血球成分を回収し、
    (2)その回収した血球成分から、プラスチック製培養皿への付着性、もしくはCD14抗体を利用した分離法により単球成分を単離し、
    (3)それを再びプラスチック製培養表面に付着させた後、少なくともGM−CSFを用いてその単球を未熟樹状細胞へ誘導させ、浮遊してきた未熟樹状細胞を培地とともに回収し、
    (4)その未熟樹状細胞を水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを特定量被覆した温度応答性細胞培養基材表面上に播種し、少なくともピシバニールを用いて成熟樹状細胞へ誘導化させた後、
    (5)培養液温度を上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とし、酵素処理を施すことなく成熟樹状細胞を剥離する方法
    である、移植用成熟誘導化樹状細胞の製造方法。
  8. 温度応答性ポリマーが、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、請求項7記載の移植用成熟誘導化樹状細胞の製造方法。
  9. 温度応答性ポリマーの被覆量が、1.3〜2.2μg/cmである、請求項7、8のいずれか1項記載の移植用成熟誘導化樹状細胞の製造方法。
  10. 1回の治療に必要な血球分離装置で処理される末梢血量が1.8〜2.5リットルである、請求項7記載の移植用成熟誘導化樹状細胞の製造方法。
  11. 治療が、ウイルス持続感染症、悪性腫瘍、アレルギー、自己免疫疾患、移植後拒絶反応である、請求項1〜5のいずれか1項記載の移植用成熟誘導化樹状細胞を移植することを特徴とする治療法(ただし、ヒトを対象とする方法を除く)。
  12. 移植方法が移植用成熟誘導化樹状細胞を末梢血に戻すことを特徴とする、請求項11記載の治療法。
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