図1と図3の均一充電器において、蓄電セルB1〜B3の最終的な充電電圧は交流電源Vacの電圧振幅と等しくなるため、充電電圧を任意に制御するためには交流電源Vacの振幅制御を行う必要がある。これに関して、電源回路において現在最も一般的に用いられている制御方法はパルス幅制御(PWM制御)であることを考えれば、これらの均一充電器においてもPWM制御を適用可能であることが望ましい。
しかしながら、これら充電器を用いて、パルス幅制御により得られる矩形波パルス状の交流電圧で充電動作を行う場合、キャパシタC1〜C3の充放電に伴い各キャパシタに突入電流が流れて損失が発生する。以下、図3の充電器を例とし、図5〜図7を用いて突入電流の発生を説明する。
図5と図6は、矩形波パルス状の交流電圧を出力する交流電源Vacを用いた図3の充電器による充電過程での、電源電流における各極性に対応して、回路内を流れる電流の経路及び方向を描いた図である。また図7は、図3の充電器による充電動作のシミュレーションから得られた、キャパシタC1〜C3を流れる電流の時間変化を表すグラフである。なお、シミュレーションに用いた各パラメータは、図4の動作波形を得る際に行ったシミュレーションにおける各パラメータと同一である。
図7中、Aで表される時間区間はキャパシタC1〜C3の充電期間(図5の電流経路が実現される期間)に対応し、Bで表される時間区間は放電期間(図6の電流経路が実現される期間)に対応する。図7が示すとおり、充放電の両期間において突入電流が生じている。
本発明はこのような背景の下でなされたものである。本発明は、パルス電源を用いた上記充電器においてキャパシタの充放電に伴って生じる突入電流を少なくとも軽減して、蓄電セル充電時の損失を抑えることにより、複雑な回路構成を必要とせず、且つ一般的なパルス電源を用いて動作可能な高効率充電器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本件第1発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、第1から第nの蓄電セルを充電するパルス電源と、ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第1のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、パルス電源と、の間に接続された、第1のキャパシタと、第k−1(kは2以上n以下の整数)のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、第kのダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、の間に接続された第kのキャパシタとして2以上n以下のそれぞれのkに対して与えられる、第2から第nのキャパシタとを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
上記充電器の充電動作においては、パルス電源と蓄電セルから各キャパシタへ流れ込む電流がインダクタにより平滑化されるため、キャパシタへの突入電流を防止することができる。また、最終的な各蓄電セルの充電電圧は均一になるため、特に完全に充電をした上で負荷に接続し放電を行うという使用態様において、エネルギーの有効利用が達成される。
また、本件第2発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、第1から第nの蓄電セルを充電するパルス電源と、ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点とパルス電源との間に接続された、第1から第nのキャパシタとを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
本件第2発明は、本件第1発明の充電器において各キャパシタの接続構成を変更した実施形態に対応する。上記のとおり各キャパシタを接続すれば、充電過程においても各蓄電セル電圧のばらつきを防ぐことが可能であり、したがって不完全な充電状態からの放電においても、各蓄電セルに蓄えられたエネルギーを有効利用することができる。また、本件第1発明と同様にキャパシタへの突入電流の流入が防止されるため、突入電流に起因する損失も低減される。
また、本件第3発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、第1から第nの蓄電セルを充電するパルス電源と、ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第1のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、パルス電源と、の間に接続された、第1のキャパシタと、第k−1(kは2以上n以下の整数)のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、第kのダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、の間に接続された第kのキャパシタとして2以上n以下のそれぞれのkに対して与えられる、第2から第nのキャパシタとを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
本件第3発明は、本件第1発明の充電器においてダイオードとインダクタの接続態様を変更した実施形態に対応する。上記の構成を採用すれば、各キャパシタから各蓄電セルへと流れ出す電流がインダクタにより平滑化されるため、キャパシタからの突入電流の流出を防止することができる。これにより損失が抑えられ、エネルギーの有効活用が達成される。
また、本件第4発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、第1から第nの蓄電セルを充電するパルス電源と、ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点とパルス電源との間に接続された、第1から第nのキャパシタとを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
本件第4発明は、本件第2発明の充電器においてダイオードとインダクタの接続態様を変更した実施形態に対応する。上記の構成を採用すれば、各キャパシタから各蓄電セルへと流れ出す電流がインダクタにより平滑化されるため、キャパシタからの突入電流の流出を防止することができる。これにより損失が抑えられ、エネルギーの有効活用が達成される。また本件第2発明の充電器と同様に、本件第4発明の充電器によれば充電過程においても各蓄電セル電圧のばらつきを防ぐことが可能であり、したがって不完全な充電状態からの放電においても各蓄電セルのエネルギーを有効利用することができる。
本件第1〜第4発明においては、第1のキャパシタとパルス電源とを結ぶ経路上の任意の1点と、第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と、のうち、任意の2点間に接続されたキャパシタを1以上備えることにより、充電時における各蓄電セルの電圧のばらつきを抑えることが可能である。
キャパシタを追加することで電荷移動の経路を増やした実施形態に対応する。電荷移動経路を増やすことにより、更に高い充電速度が得られる。また、充電開始時点で各蓄電セルの電圧にばらつきがあった場合も、上記のとおりキャパシタを追加した構成の充電器を用いることにより、各蓄電セル電圧をより速く均等化することができる。この点については、パルス電源を任意の位置に設けた後述の各実施形態においても同様である。
本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第k(kは1以上n−1以下の整数)のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、第k+1のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、の間に接続された第kのキャパシタとして1以上n−1以下のそれぞれのkに対して与えられるキャパシタよりなる、第1から第n−1のキャパシタであって、第1から第n−1のキャパシタのうち、少なくとも第m(mは1以上n−1以下の整数)のキャパシタは直列接続された2以上の蓄電素子を含む、キャパシタと、第mのキャパシタに含まれる蓄電素子間のいずれかの直列接続点と、第mのダイオード−インダクタ回路と第m+1のダイオード−インダクタ回路との接続点と、の間に接続されたパルス電源とを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第m(mは1以上n−1以下の整数)のダイオード−インダクタ回路と第m+1のダイオード−インダクタ回路との接続点に対して接続されたパルス電源と、第k(kは1以上n以下の整数)のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点とパルス電源との間に接続された第kのキャパシタとして、1以上n以下のそれぞれのkに対して与えられる、第1から第nのキャパシタとを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第k(kは1以上n−1以下の整数)のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、第k+1のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、の間に接続された第kのキャパシタとして1以上n−1以下のそれぞれのkに対して与えられるキャパシタよりなる、第1から第n−1のキャパシタであって、第1から第n−1のキャパシタのうち、少なくとも第m(mは1以上n−1以下の整数)のキャパシタは直列接続された2以上の蓄電素子を含む、キャパシタと、第mのキャパシタに含まれる蓄電素子間のいずれかの直列接続点と、第mのダイオード−インダクタ回路と第m+1のダイオード−インダクタ回路との接続点と、の間に接続されたパルス電源とを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電セルと、ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの蓄電セルのそれぞれに対して並列に接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第m(mは1以上n−1以下の整数)のダイオード−インダクタ回路と第m+1のダイオード−インダクタ回路との接続点に対して接続されたパルス電源と、第k(kは1以上n以下の整数)のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点とパルス電源との間に接続された第kのキャパシタとして、1以上n以下のそれぞれのkに対して与えられる、第1から第nのキャパシタとを備え、パルス電源から出力される電圧パルスの大きさ及びパルス幅に応じた電圧へと、蓄電セルを充電することを特徴とする、充電器を提供する。
上記充電器は、本件第1〜4発明の充電器において回路構成を一部変更した実施形態に対応する。mの任意性が示すとおり、パルス電源を設ける位置は適宜変更可能であって、このような充電器においてもキャパシタへ流れ込む、あるいはキャパシタから流れ出す突入電流が軽減される。
本発明の充電器においては、ダイオード−インダクタ回路、キャパシタ、及びパルス電源の組を、上記第1から第nの蓄電セルに対し2以上接続することにより、充電速度を上昇させることが可能である。
本発明の充電器においては、ダイオードのうち少なくとも一つをスイッチに置き換えることが可能である。パルス電源から出力される電圧パルスが一周期内で取りうる各モードに対応して上記スイッチのオン・オフを切り替えることにより、ダイオードを用いた構成と同様の性能を得ることができる。
本発明の充電器に用いられる第1から第nの蓄電セルのうち、少なくとも1つは、コンデンサ、二次電池、又は電気二重層キャパシタを含んでよい。ただし、本発明の充電回路に用いることのできる蓄電セルがこれらに限られるわけではない。また、本発明における蓄電セル、及びキャパシタは単一の蓄電素子に限られるわけでもなく、2以上の素子からなるモジュール、あるいはそれらモジュールを用いて構成される任意の装置であってもよい。
また、本件第5発明は、上記いずれかの充電器と、蓄電セルのうち少なくとも1つの電圧を検出する蓄電セル電圧検出回路と、蓄電セル電圧検出回路が検出した電圧を基準電圧と比較する比較演算回路と、比較演算回路による比較の結果に基づいてパルス電源の出力パルス幅を制御するパルス幅制御回路とを備え、パルス電源の出力パルス幅を制御することにより、蓄電セルの充電電圧を所望の電圧へと調整することを特徴とする、充電システムを提供する。
上記充電システムを用いれば、パルス電源の振幅に変動があった場合、あるいは動作環境や機器の問題により出力パルス波形が乱れた場合にも、蓄電セルの電圧を直接監視しつつ高精度で充電電圧を調整することができる。
あるいは、本件第5発明の充電システムを、上記いずれかの充電器と、蓄電セルのうち少なくとも1つを流れる電流を検出する蓄電セル電流検出回路と、蓄電セル電流検出回路が検出した電流を基準電流と比較する比較演算回路と、比較演算回路による比較の結果に基づいてパルス電源の出力パルス幅を制御するパルス幅制御回路とを備え、パルス電源の出力パルス幅を制御することにより、蓄電セルを流れる電流を所望の電流へと調整することを特徴とする、充電システムとすることができる。
上記の構成を用いれば、蓄電セルや他の回路素子の耐久性の問題等から蓄電セルへの充電電流を制御する必要がある場合において、蓄電セルの電流を直接監視しつつパルス幅を制御することで、充電電流を所望の電流へと調整することができる。過度に大きい充電電流は損失増大の原因ともなるため、本構成はエネルギー有効利用の観点からも優れている。
あるいは、本件第5発明の充電システムを、上記いずれかの充電器と、キャパシタのうち少なくとも1つの電圧を検出するキャパシタ電圧検出回路と、キャパシタ電圧検出回路が検出した電圧を基準電圧と比較する比較演算回路と、比較演算回路による比較の結果に基づいてパルス電源の出力パルス幅を制御するパルス幅制御回路とを備え、パルス電源の出力パルス幅を制御することにより、キャパシタの電圧を所望の電圧へと調整することを特徴とする、充電システムとすることができる。
あるいは、本件第5発明の充電システムを、上記いずれかの充電器と、キャパシタのうち少なくとも1つを流れる電流を検出するキャパシタ電流検出回路と、キャパシタ電流検出回路が検出した電流を基準電流と比較する比較演算回路と、比較演算回路による比較の結果に基づいてパルス電源の出力パルス幅を制御するパルス幅制御回路とを備え、パルス電源の出力パルス幅を制御することにより、キャパシタを流れる電流を所望の電流へと調整することを特徴とする、充電システムとすることができる。
あるいは、本件第5発明の充電システムを、上記いずれかの充電器と、インダクタのうち少なくとも1つを流れる電流を検出するインダクタ電流検出回路と、インダクタ電流検出回路が検出した電流を基準電流と比較する比較演算回路と、比較演算回路による比較の結果に基づいてパルス電源の出力パルス幅を制御するパルス幅制御回路とを備え、パルス電源の出力パルス幅を制御することにより、インダクタを流れる電流を所望の電流へと調整することを特徴とする、充電システムとすることができる。
キャパシタの電圧、キャパシタを流れる電流、あるいはインダクタを流れる電流を検出し、検出結果に応じてパルス電源の出力パルス幅を制御することにより、それら検出対象を適宜調整するための構成である。特にインダクタに流れる電流は、条件によってはほぼ定電流と見なすことが可能なため、蓄電セルに流れる電流よりも検出が容易である。
あるいは、上記本件第5発明の充電システムを、蓄電セル電圧検出回路と、蓄電セル電流検出回路と、キャパシタ電圧検出回路と、キャパシタ電流検出回路と、インダクタ電流検出回路とから選択された2以上の検出回路と、2以上の検出回路のそれぞれが検出した電圧又は電流を、電圧又は電流に対応する基準電圧又は基準電流とを比較する、2以上の比較演算回路とを備え、2以上の比較演算回路による比較の結果に基づいて、パルス幅制御回路がパルス電源の出力パルス幅を制御することにより、電圧又は電流を所望の電圧又は電流へと調整することを特徴とする、充電システムとすることができる。
各検出回路を複数組み合わせて用いることで、さまざまな素子の電圧又は電流を監視しつつパルス電源を制御するための構成である。
本発明の充電器が備える充電回路においては、キャパシタの充電又は放電に伴う電流がインダクタの存在により定電流状となるため、突入電流の発生を抑制して充放電時の損失を低減することが可能である。このような構成を備えた本発明の充電回路は、パルス電源で動作させるために特に適している。本発明により、直列接続された蓄電セルの充電電圧をパルス電源の出力パルス幅の制御によって調整することが可能となるため、均一充電器における制御性が従来と比較して飛躍的に向上する。
これより図面を用いて、本発明に係る充電器、及び充電システムを説明する。但し、本発明に係る充電器、充電システムの構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下において各キャパシタは主に単独の蓄電素子としてのキャパシタ(コンデンサ)であるとして、また蓄電セルは、コンデンサ、二次電池、電気二重層キャパシタ等であるとして説明するが、これらは充放電可能な任意の素子、又は複数の素子からなるモジュールであってよい。各蓄電素子の容量も、それぞれ異なっていてよい。各スイッチについても、以下においてはMOSFETなどの半導体スイッチであるとして説明するが、任意の電子スイッチ、あるいは機械式スイッチを用いることも可能である。
充電器1の構成
図8は、本発明の第1実施例としての充電器1を示した回路図である。B1〜B3は、コンデンサ、二次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電セル、C1〜C3は均等化用のキャパシタ、D1〜D3はダイオード、L1〜L3はインダクタであり、Vacは矩形波状の電圧を出力するパルス電源である。Vacからの出力電圧におけるパルス幅は、任意に制御可能である。蓄電セルB1〜B3は直列接続されており、その各々に対し、D1とL1、D2とL2、D3とL3からなる第1〜第3のダイオード−インダクタ回路がそれぞれ並列に接続されている。各ダイオード−インダクタ回路においてはインダクタがダイオードのアノード側と接続されており、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう、各ダイオード−インダクタ回路は直列接続されている。キャパシタC1は、第1のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、パルス電源Vacと、の間に接続されている。キャパシタC2は、第1及び第2のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタのそれぞれの中間点の間に接続されており、同様にキャパシタC3は、第2及び第3のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタのそれぞれの中間点の間に接続されている。ここで、キャパシタC1〜C3は直列に接続されている。また、蓄電セルB1は接地されている。
なお、蓄電セル、ダイオード−インダクタ回路、及び均等化用キャパシタの数は、3に限らず2以上の任意の数であってよい。この点については、後続の全ての実施形態においても同様である。
充電器1の動作
次に、パルス電源Vacから出力される交流電圧によって蓄電セルB1〜B3を充電するときの、充電器1の動作を説明する。
パルス電源Vacからの出力電圧は、典型的には振幅が一定で所定のパルス幅を有する矩形状の波形を有する。充電器1の回路内を流れる電流の極性は、所定の時間間隔ごとに切り替えられる。図9と図10は、そのように切り替えられる各々の極性に対応して、回路内の電流の向きを表したものである。ただし、蓄電セルB1〜B3及びキャパシタC1〜C3の各初期電圧は、パルス電源Vacの出力電圧の振幅よりも小さいものとする。
図9は、Vacが紙面の下方向から上方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、キャパシタC1〜C3はインダクタL1〜L3を経由して流れ込む電流により充電される。具体的には、図9中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacからインダクタL1を経由して流れ込む電流によってC1が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1からインダクタL2を経由して流れ込む電流によってC1とC2が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1,B2からインダクタL3を経由して流れ込む電流によって、C1,C2,C3が充電される。
上記のとおり、キャパシタC1〜C3へ流れ込む充電電流はいずれもインダクタを経由する。充電電流はインダクタの存在により平滑化されて定電流状となるため、突入電流の発生が防止され、キャパシタの充電に伴う損失が抑えられる。なお、この期間中、インダクタL1〜L3は、各々を流れる電流値に応じたエネルギーを蓄える。
図10は、Vacが紙面の上方向から下方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、蓄電セルB1〜B3は、ダイオードD1〜D3を経由して流れ込む電流により充電される。すなわち、ダイオードD1〜D3が導通することで、C1〜C3からB1〜B3に対して充電が行われる。具体的には、図10中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacとキャパシタC1からダイオードD1を経由して流れ込む電流によってB1が充電され、パルス電源VacとキャパシタC1,C2からダイオードD2を経由して流れ込む電流によって、B1,B2が充電され、パルス電源VacとキャパシタC1,C2,C3からダイオードD3を経由して流れ込む電流によって、B1,B2,B3が充電される。これらのキャパシタから蓄電セルへと流れ出す放電電流はインダクタを経由しておらず、突入電流状となるため、キャパシタの放電に伴い損失が発生する。
なお、インダクタL1〜L3は、図9に対応する期間中に蓄えたエネルギーを、図10に対応する期間中に放出する。図10の矢印が示すとおり、L1はB1に、L2はB2に、L3はB3に、それぞれ電流を出力する。これらインダクタから蓄電セルへの放電電流は定電流状であるため、損失は発生しない。
以上のとおり、図8の充電器による充電動作において、キャパシタC1〜C3の放電期間中は突入電流による損失が発生するが、一方でC1〜C3の充電電流はインダクタを介することで定電流状となるため、充電期間中は突入電流が防止される。すなわち、図8の充電器を用いることにより、従来の均一充電器と比較してキャパシタにおける損失を低減することが可能である。
次に、パルス電源Vacから出力されるパルス電圧の振幅とパルス幅に応じて決定される、各蓄電セルB1〜B3の最終的な充電電圧を算出する。
蓄電セルB1〜B3の各電圧をVB1〜VB3、キャパシタC1〜C3の各電圧をVC1〜VC3、ダイオードの降下電圧をVDとし、図9及び図10の矢印で示される極性の電流が流れる期間中での、パルス電源の出力電圧をそれぞれ+Va、−Vbとする。また、出力パルスの一周期に占めるパルス幅+Vaの割合、すなわち、パルス電源の動作の一周期中で、図9に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が非導通となる期間の割合をdとし(ただしd≦1)、図10に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が導通される期間の割合を1−dとする。
このとき、各インダクタL1〜L3において印加される電圧と時間の積の一周期に亘る合計は、定常状態においてゼロとなる。したがって、以下の(1)〜(3)式が成立する。
d(Va―VC1)=(1−d)(VB1+VD)
=(1−d)(Vb+VC1) …(1)
d(Va+VB1−VC1−VC2)
=(1−d)(VB2+VD)
=(1−d)(VC2+VD) …(2)
d(Va+VB1+VB2−VC1−VC2−VC3)
=(1−d)(VB3+VD)
=(1−d)(VC3+VD) …(3)
これらを解けば、以下のとおり各蓄電セルの電圧が決定される。
VB1=VB2=VB3=d(Va+Vb)−VD …(4)
(4)式が示すとおり、B1〜B3の各蓄電セルは最終的に同じ電圧へと充電され、且つ、その充電電圧はパルス幅におけるVaとVbとの比率を示す値dに依存する。すなわち、各蓄電セルの充電電圧はパルス幅制御により調整可能である。
図8の回路において、B1〜B3は等価直列抵抗が0.01Ωで容量が0.2Fのキャパシタであるとし、C1〜C3は等価直列抵抗が0.1Ωで容量が47μFのキャパシタであるとし、D1〜D3は順方向電圧降下VD=0.7Vのダイオードであるとし、L1〜L3はインダクタンスが100μHのインダクタであるとして、またパルス電源Vacの動作周波数を20kHzとし、d=0.8とし、振幅(Va+Vb)を5Vであるとして、B1〜B3の初期電圧をそれぞれ2V,1.5V,1Vとばらつかせた状態から充電動作のシミュレーションを行った。これにより得られた各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形を図11に示す。時間の経過と共に各蓄電セルの電圧は上昇し、最終的に3.3Vの均一な電圧へと充電されている。なお、シミュレーションにより得られた最終的な充電電圧値である3.3Vは、上記(4)式においてシミュレーションに用いた各パラメータを代入することで得られる電圧と等しい。
図12は、B1〜B3の初期電圧が1Vの等しい状態であるとして充電動作のシミュレーションを行うことにより得られた、各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形である。初期電圧以外のパラメータは、図11に結果を示したシミュレーションにおけるパラメータと全て同一である。図11の動作波形と同様に、最終的な充電電圧は均一となる。また、初期電圧が均一であったにも関わらず、充電の過程において蓄電セル電圧にばらつきが発生している。このように、図8の構成では充電の過程において必然的に電圧ばらつきが発生する。
なお、初期電圧がばらついた状態での上記シミュレーションで得られた、キャパシタC1〜C3に流れる電流の動作波形は図13に示すとおりである。図13のグラフ中、記号Aが付された矢印は図9に示す極性の電流が流れる期間に対応し、また記号Bが付された矢印は、図10に示す極性の電流が流れる期間に対応する。図13からわかるとおり、図8の充電器を用いた充電動作においては、各キャパシタC1〜C3に流れ込む電流が平滑化されて直流電流状となっている。
充電器1の構成
図14は、本発明の第2実施例としての充電器1を示した回路図である。図14の充電器と図8の充電器とでは、均等化用キャパシタの接続態様が異なる。具体的に、図14の充電器において、キャパシタC1は図8と同様に第1のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点とパルス電源Vacとの間に接続されているが、一方でキャパシタC2とC3とは、図8の構成とは異なり、それぞれ第2、第3のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点とパルス電源Vacとの間に接続されている。すなわち全てのキャパシタが他のキャパシタを介することなくパルス電源Vacに接続されており、このような構成によって、充電途中でも蓄電セル電圧のばらつきを防ぐことが可能となる。
充電器1の動作
次に、パルス電源Vacから出力される交流電圧によって蓄電セルB1〜B3を充電するときの、充電器1の動作を説明する。
パルス電源Vacからの出力電圧は、典型的には振幅が一定で所定のパルス幅を有する矩形状の波形を有する。充電器1の回路内を流れる電流の極性は、所定の時間間隔ごとに切り替えられる。図15と図16は、そのように切り替えられる各々の極性に対応して、回路内の電流の向きを表したものである。ただし、蓄電セルB1〜B3及びキャパシタC1〜C3の各初期電圧は、パルス電源Vacの出力電圧の振幅よりも小さいものとする。
図15は、Vacが紙面の下方向から上方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、キャパシタC1〜C3はインダクタL1〜L3を経由して流れ込む電流により充電される。具体的には、図15中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacからインダクタL1を経由して流れ込む電流によってC1が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1からインダクタL2を経由して流れ込む電流によってC2が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1,B2からインダクタL3を経由して流れ込む電流によって、C3が充電される。
上記のとおり、キャパシタC1〜C3へ流れ込む充電電流はいずれもインダクタを経由する。充電電流はインダクタの存在により平滑化されて定電流状となるため、突入電流の発生が防止され、キャパシタの充電に伴う損失が抑えられる。なお、この期間中、インダクタL1〜L3は、各々を流れる電流値に応じたエネルギーを蓄える。
図16は、Vacが紙面の上方向から下方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、蓄電セルB1〜B3は、ダイオードD1〜D3を経由して流れ込む電流により充電される。すなわち、ダイオードD1〜D3が導通することで、C1〜C3からB1〜B3に対して充電が行われる。具体的には、図16中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacとキャパシタC1からダイオードD1を経由して流れ込む電流によってB1が充電され、パルス電源VacとキャパシタC2からダイオードD2を経由して流れ込む電流によって、B1,B2が充電され、パルス電源VacとキャパシタC3からダイオードD3を経由して流れ込む電流によって、B1,B2,B3が充電される。これらのキャパシタから蓄電セルへと流れ出す放電電流はインダクタを経由しておらず、突入電流状となるため、キャパシタの放電に伴い損失が発生する。
なお、インダクタL1〜L3は、図15に対応する期間中に蓄えたエネルギーを、図16に対応する期間中に放出する。図16の矢印が示すとおり、L1はB1に、L2はB2に、L3はB3に、それぞれ電流を出力する。これらインダクタから蓄電セルへの放電電流は定電流状であるため、損失は発生しない。
以上のとおり、図14の充電器による充電動作において、キャパシタC1〜C3の放電期間中は突入電流による損失が発生するが、一方でC1〜C3の充電電流はインダクタを介することで定電流状となるため、充電期間中は突入電流が防止される。すなわち、図14の充電器を用いることにより、従来の均一充電器と比較してキャパシタにおける損失を低減することが可能である。
次に、パルス電源Vacから出力されるパルス電圧の振幅とパルス幅に応じて決定される、各蓄電セルB1〜B3の最終的な充電電圧を算出する。
実施例1と同様に、蓄電セルB1〜B3の各電圧をVB1〜VB3、キャパシタC1〜C3の各電圧をVC1〜VC3、ダイオードの降下電圧をVDとし、図15及び図16の矢印で示される極性の電流が流れる期間中での、パルス電源の出力電圧をそれぞれ+Va、−Vbとする。また、出力パルスの一周期に占めるパルス幅+Vaの割合、すなわち、パルス電源の動作の一周期中で、図15に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が非導通となる期間の割合をdとし(ただしd≦1)、図16に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が導通される期間の割合を1−dとする。
このとき、各インダクタL1〜L3において印加される電圧と時間の積の一周期に亘る合計は、パルス電源の定常状態においてゼロとなる。したがって、以下の(5)〜(7)式が成立する。
d(Va―VC1)=(1−d)(VB1+VD)
=(1−d)(Vb+VC1) …(5)
d(Va+VB1−VC2)
=(1−d)(VB2+VD)
=(1−d)(VC2−VC1+VD) …(6)
d(Va+VB1+VB2−VC3)
=(1−d)(VB3+VD)
=(1−d)(VC3−VC2+VD) …(7)
これらを解けば、実施例1と同様に(4)式が得られる。
(4)式が示すとおり、B1〜B3の各蓄電セルは最終的に同じ電圧へと充電され、且つ、その充電電圧はパルス幅におけるVaとVbとの比率を示す値dに依存する。すなわち、各蓄電セルの充電電圧はパルス幅制御により調整可能である。
図14の回路において、B1〜B3は等価直列抵抗が0.01Ωで容量が0.2Fのキャパシタであるとし、C1〜C3は等価直列抵抗が0.1Ωで容量が47μFのキャパシタであるとし、D1〜D3は順方向電圧降下VD=0.7Vのダイオードであるとし、L1〜L3はインダクタンスが100μHのインダクタであるとして、またパルス電源Vacの動作周波数を20kHzとし、d=0.8とし、振幅(Va+Vb)を5Vであるとして、B1〜B3の初期電圧をそれぞれ2V,1.5V,1Vとばらつかせた状態から充電動作のシミュレーションを行った。これにより得られた各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形を図17に示す。時間の経過と共に各蓄電セルの電圧は上昇し、最終的に3.3Vの均一な電圧へと充電されている。なお、シミュレーションにより得られた最終的な充電電圧値である3.3Vは、上記(4)式においてシミュレーションに用いた各パラメータを代入することで得られる電圧と等しい。
図18は、B1〜B3の初期電圧が1Vの等しい状態であるとして充電動作のシミュレーションを行うことにより得られた、各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形である。初期電圧以外のパラメータは、図17に結果を示したシミュレーションにおけるパラメータと全て同一である。図17の動作波形と同様に、最終的な充電電圧は均一となる。また、実施例1とは異なり、初期電圧が等しい場合には充電途中であっても蓄電セル電圧にばらつきが発生していないことがわかる。このように、図14の構成を用いれば、充電途中であっても電圧ばらつきを発生させることなく、各セルを均一に充電することが可能である。
なお、初期電圧がばらついた状態での上記シミュレーションで得られた、キャパシタC1〜C3に流れる電流の動作波形は図19に示すとおりである。図19のグラフ中、記号Aが付された矢印は図15に示す極性の電流が流れる期間に対応し、また記号Bが付された矢印は、図16に示す極性の電流が流れる期間に対応する。図19からわかるとおり、図14の充電器を用いた充電動作においては、各キャパシタC1〜C3に流れ込む電流が平滑化されて直流電流状となっている。
充電器1の構成
図20は、本発明の第3実施例としての充電器1を示した回路図である。図20の充電器は、図8に示す充電器において、各ダイオード−インダクタ回路内のダイオードとインダクタとの位置を交換したものである。
充電器1の動作
次に、パルス電源Vacから出力される交流電圧によって蓄電セルB1〜B3を充電するときの、充電器1の動作を説明する。
パルス電源Vacからの出力電圧は、典型的には振幅が一定で所定のパルス幅を有する矩形状の波形を有する。充電器1の回路内を流れる電流の極性は、所定の時間間隔ごとに切り替えられる。図21と図22は、そのように切り替えられる各々の極性に対応して、回路内の電流の向きを表したものである。ただし、蓄電セルB1〜B3及びキャパシタC1〜C3の各初期電圧は、パルス電源Vacの出力電圧の振幅よりも小さいものとする。
図21は、Vacが紙面の上方向から下方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、蓄電セルB1〜B3は、インダクタL1〜L3を経由して流れ込む電流により充電される。具体的には、図21中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacとキャパシタC1からインダクタL1を経由して流れ込む電流によってB1が充電され、パルス電源VacとキャパシタC1,C2からインダクタL2を経由して流れ込む電流によってB1とB2が充電され、パルス電源VacとキャパシタC1,C2,C3からインダクタL3を経由して流れ込む電流によって、B1,B2,B3が充電される。インダクタL1〜L3によりキャパシタC1〜C3から流れ出す電流は平滑化されて定電流状となるため、突入電流の発生が防止され、キャパシタの放電に伴う損失が抑えられる。なお、この期間中、インダクタL1〜L3は、各々を流れる電流値に応じたエネルギーを蓄える。
図22は、Vacが紙面の下方向から上方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、キャパシタC1〜C3はダイオードD1〜D3を経由して流れ込む電流により充電される。すなわち、ダイオードD1〜D3が導通することで、B1〜B2からC1〜C3に対して充電が行われる。具体的には、図22中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacからダイオードD1を経由して流れ込む電流によってC1が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1からダイオードD2を経由して流れ込む電流によって、C1,C2が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1,B2からダイオードD3を経由して流れ込む電流によって、C1,C2,C3が充電される。これらのパルス電源及び蓄電セルからキャパシタへと流れ込む充電電流はインダクタを経由しておらず、突入電流状となるため、キャパシタの充電に伴い損失が発生する。
なお、インダクタL1〜L3は、図21に対応する期間中に蓄えたエネルギーを、図22に対応する期間中に放出する。図22の矢印が示すとおり、L1はB1に、L2はB2に、L3はB3に、それぞれ電流を出力する。これらインダクタから蓄電セルへの放電電流は定電流状であるため、損失は発生しない。
以上のとおり、図20の充電器による充電動作において、キャパシタC1〜C3の充電期間中は突入電流による損失が発生するが、一方でC1〜C3の放電電流はインダクタを介することで定電流状となるため、放電期間中は突入電流が防止される。すなわち、図20の充電器を用いることにより、従来の均一充電器と比較してキャパシタにおける損失を低減することが可能である。
次に、パルス電源Vacから出力されるパルス電圧の振幅とパルス幅に応じて決定される、各蓄電セルB1〜B3の最終的な充電電圧を算出する。
実施例1,2と同様に、蓄電セルB1〜B3の各電圧をVB1〜VB3、キャパシタC1〜C3の各電圧をVC1〜VC3、ダイオードの降下電圧をVDとし、図21及び図22の矢印で示される極性の電流が流れる期間中での、パルス電源の出力電圧をそれぞれ−Vb、+Vaとする。また、出力パルスの一周期に占めるパルス幅−Vbの割合、すなわち、パルス電源の動作の一周期中で、図21に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が非導通となる期間の割合をdとし(ただしd≦1)、図22に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が導通される期間の割合を1−dとする。
このとき、各インダクタL1〜L3において印加される電圧と時間の積の一周期に亘る合計は、パルス電源の定常状態においてゼロとなる。したがって、以下の(8)〜(10)式が成立する。
(1−d)(VB1+VD)=(1−d)(VC2+VD)
=d(Vb+VC1−VB1) …(8)
(1−d)(VB2+VD)=(1−d)(VC3+VD)
=d(Vb+VC1+VC2−VB1−VB2) …(9)
(1−d)(VB3+VD)
=d(Vb+VC1+VC2+VC3−VB1−VB2−VB3) …(10)
これらを解けば、実施例1,2と同様に(4)式が得られる。
(4)式が示すとおり、B1〜B3の各蓄電セルは最終的に同じ電圧へと充電され、且つ、その充電電圧はパルス幅におけるVaとVbとの比率を示す値dに依存する。すなわち、各蓄電セルの充電電圧はパルス幅制御により調整可能である。
図20の回路において、B1〜B3は等価直列抵抗が0.01Ωで容量が0.2Fのキャパシタであるとし、C1〜C3は等価直列抵抗が0.1Ωで容量が47μFのキャパシタであるとし、D1〜D3は順方向電圧降下VD=0.7Vのダイオードであるとし、L1〜L3はインダクタンスが100μHのインダクタであるとして、またパルス電源Vacの動作周波数を20kHzとし、d=0.8とし、振幅(Va+Vb)を5Vであるとして、B1〜B3の初期電圧をそれぞれ2V,1.5V,1Vとばらつかせた状態から充電動作のシミュレーションを行った。これにより得られた各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形を図23に示す。時間の経過と共に各蓄電セルの電圧は上昇し、最終的に3.3Vの均一な電圧へと充電されている。なお、シミュレーションにより得られた最終的な充電電圧値である3.3Vは、上記(4)式においてシミュレーションに用いた各パラメータを代入することで得られる電圧と等しい。
図24は、B1〜B3の初期電圧が1Vの等しい状態であるとして充電動作のシミュレーションを行うことにより得られた、各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形である。初期電圧以外のパラメータは、図23に結果を示したシミュレーションにおけるパラメータと全て同一である。図23の動作波形と同様に、最終的な充電電圧は均一となる。また、初期電圧が均一であったにも関わらず、充電の過程において蓄電セル電圧にばらつきが発生している。このように、図20の構成では充電の過程において必然的に電圧ばらつきが発生する。
なお、初期電圧がばらついた状態での上記シミュレーションで得られた、キャパシタC1〜C3に流れる電流の動作波形は図25に示すとおりである。図25のグラフ中、記号Aが付された矢印は図21に示す極性の電流が流れる期間に対応し、また記号Bが付された矢印は、図22に示す極性の電流が流れる期間に対応する。図25からわかるとおり、図20の充電器を用いた充電動作においては、各キャパシタC1〜C3から流れ出す電流が平滑化されて直流電流状となっている。
充電器1の構成
図26は、本発明の第4実施例としての充電器1を示した回路図である。図26の充電器は、図14に示す充電器において、各ダイオード−インダクタ回路内のダイオードとインダクタとの位置を交換したものである。
充電器1の動作
次に、パルス電源Vacから出力される交流電圧によって蓄電セルB1〜B3を充電するときの、充電器1の動作を説明する。
パルス電源Vacからの出力電圧は、典型的には振幅が一定で所定のパルス幅を有する矩形状の波形を有する。充電器1の回路内を流れる電流の極性は、所定の時間間隔ごとに切り替えられる。図27と図28は、そのように切り替えられる各々の極性に対応して、回路内の電流の向きを表したものである。ただし、蓄電セルB1〜B3及びキャパシタC1〜C3の各初期電圧は、パルス電源Vacの出力電圧の振幅よりも小さいものとする。
図27は、Vacが紙面の上方向から下方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、蓄電セルB1〜B3は、インダクタL1〜L3を経由して流れ込む電流により充電される。具体的には、図27中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacとキャパシタC1からインダクタL1を経由して流れ込む電流によってB1が充電され、パルス電源VacとキャパシタC2からインダクタL2を経由して流れ込む電流によってB1とB2が充電され、パルス電源VacとキャパシタC3からインダクタL3を経由して流れ込む電流によって、B1,B2,B3が充電される。インダクタL1〜L3によりキャパシタC1〜C3から流れ出す電流は平滑化されて定電流状となるため、突入電流の発生が防止され、キャパシタの放電に伴う損失が抑えられる。なお、この期間中、インダクタL1〜L3は、各々を流れる電流値に応じたエネルギーを蓄える。
図28は、Vacが紙面の下方向から上方向へと電力を供給する期間における電流の流れを表している。この期間において、キャパシタC1〜C3はダイオードD1〜D3を経由して流れ込む電流により充電される。すなわち、ダイオードD1〜D3が導通することで、B1〜B3からC1〜C3に対して充電が行われる。具体的には、図28中の各矢印によって示されるとおり、パルス電源VacからダイオードD1を経由して流れ込む電流によってC1が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1からダイオードD2を経由して流れ込む電流によって、C2が充電され、パルス電源Vacと蓄電セルB1,B2からダイオードD3を経由して流れ込む電流によって、C3が充電される。これらのパルス電源及び蓄電セルからキャパシタへと流れ込む充電電流はインダクタを経由しておらず、突入電流状となるため、キャパシタの充電に伴い損失が発生する。
なお、インダクタL1〜L3は、図27に対応する期間中に蓄えたエネルギーを、図28に対応する期間中に放出する。図28の矢印が示すとおり、L1はB1に、L2はB2に、L3はB3に、それぞれ電流を出力する。これらインダクタから蓄電セルへの放電電流は定電流状であるため、損失は発生しない。
以上のとおり、図26の充電器による充電動作において、キャパシタC1〜C3の充電期間中は突入電流による損失が発生するが、一方でC1〜C3の放電電流はインダクタを介することで定電流状となるため、放電期間中は突入電流が防止される。すなわち、図26の充電器を用いることにより、従来の均一充電器と比較してキャパシタにおける損失を低減することが可能である。
次に、パルス電源Vacから出力されるパルス電圧の振幅とパルス幅に応じて決定される、各蓄電セルB1〜B3の最終的な充電電圧を算出する。
実施例1〜3と同様に、蓄電セルB1〜B3の各電圧をVB1〜VB3、キャパシタC1〜C3の各電圧をVC1〜VC3、ダイオードの降下電圧をVDとし、図27及び図28の矢印で示される極性の電流が流れる期間中での、パルス電源の出力電圧をそれぞれ−Vb、+Vaとする。また、出力パルスの一周期に占めるパルス幅−Vbの割合、すなわち、パルス電源の動作の一周期中で、図27に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が非導通となる期間の割合をdとし(ただしd≦1)、図28に示す極性の電流が流れてダイオードD1〜D3が導通される期間の割合を1−dとする。
このとき、各インダクタL1〜L3において印加される電圧と時間の積の一周期に亘る合計は、パルス電源の定常状態においてゼロとなる。したがって、以下の(11)〜(13)式が成立する。
(1−d)(VB1+VD)=(1−d)(VC2+VD−VC1)
=d(Vb+VC1−VB1) …(11)
(1−d)(VB2+VD)=(1−d)(VC3+VD−VC2)
=d(Vb+VC2−VB1−VB2) …(12)
(1−d)(VB3+VD)=d(Vb+VC3−VB1−VB2−VB3) …(13)
これらを解けば、実施例1〜3と同様に(4)式が得られる。
(4)式が示すとおり、B1〜B3の各蓄電セルは最終的に同じ電圧へと充電され、且つ、その充電電圧はパルス幅におけるVaとVbとの比率を示す値dに依存する。すなわち、各蓄電セルの充電電圧はパルス幅制御により調整可能である。
図26の回路において、B1〜B3は等価直列抵抗が0.01Ωで容量が0.2Fのキャパシタであるとし、C1〜C3は等価直列抵抗が0.1Ωで容量が47μFのキャパシタであるとし、D1〜D3は順方向電圧降下VD=0.7Vのダイオードであるとし、L1〜L3はインダクタンスが100μHのインダクタであるとして、またパルス電源Vacの動作周波数を20kHzとし、d=0.8とし、振幅(Va+Vb)を5Vであるとして、B1〜B3の初期電圧をそれぞれ2V,1.5V,1Vとばらつかせた状態から充電動作のシミュレーションを行った。これにより得られた各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形を図29に示す。時間の経過と共に各蓄電セルの電圧は上昇し、最終的に3.3Vの均一な電圧へと充電されている。なお、シミュレーションにより得られた最終的な充電電圧値である3.3Vは、上記(4)式においてシミュレーションに用いた各パラメータを代入することで得られる電圧と等しい。
図30は、B1〜B3の初期電圧が1Vの等しい状態であるとして充電動作のシミュレーションを行うことにより得られた、各蓄電セルB1〜B3の電圧の動作波形である。初期電圧以外のパラメータは、図29に結果を示したシミュレーションにおけるパラメータと全て同一である。図29の動作波形と同様に、最終的な充電電圧は均一となる。また、初期電圧が等しい場合には充電途中であっても蓄電セル電圧にばらつきが発生していないことがわかる。このように、図26の構成を用いれば、充電途中であっても電圧ばらつきを発生させることなく、各セルを均一に充電することが可能である。
なお、初期電圧がばらついた状態での上記シミュレーションで得られた、キャパシタC1〜C3に流れる電流の動作波形は図31に示すとおりである。図31のグラフ中、記号Aが付された矢印は図27に示す極性の電流が流れる期間に対応し、また記号Bが付された矢印は、図28に示す極性の電流が流れる期間に対応する。図31からわかるとおり、図26の充電器を用いた充電動作においては、各キャパシタC1〜C3から流れ出す電流が平滑化されて直流電流状となっている。
上記実施例1〜4の充電器においては、均等化用キャパシタを更に追加することで、充電時における各蓄電セルの電圧のばらつきを抑え、動作時の充電速度を上昇させることが可能である。図32にその一例を示す。
図32の充電器は、図8の充電器に対して更にキャパシタC4とC5を接続した接続構成を有している。具体的に、C4は第1及び第3のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの両中間点の間に接続されており、またC5は、キャパシタC1とパルス電源Vacとを結ぶ経路上の1点と、第2のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの中間点と、の間に接続されている。すなわち図32の充電器は、蓄電セルの直列数を任意の整数nであるとした本発明の充電器において、第1のキャパシタとパルス電源とを結ぶ経路上の任意の1点と、第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と、のうち、任意の2点間に接続されたキャパシタを1以上備えることにより、充電時における各蓄電セルの電圧のばらつきを抑えるための構成としての一例である。
図32の充電器において、蓄電セルB1〜B3の初期電圧がそれぞれ2V、1.5V、1Vとばらついた状態であるとした場合の充電動作のシミュレーションを行った。シミュレーションに用いたその他のパラメータは、実施例1のシミュレーションで用いたものと同一である。得られた動作波形を図33に示す。C4とC5の存在により、図8の充電器に比べて電荷移動の経路が増えたため、実施例1において図11に示された結果と比べて充電過程における電圧のばらつきが抑えられていることが分かる。また各蓄電セルが最終的な充電電圧である3.3Vに達するまでの時間も、図32の充電器を用いたシミュレーションにおいては短縮されている。
図34は、本発明の充電器に対して均等化用キャパシタを更に追加した構成の、別の一例を示している。具体的に、C6は第1及び第2のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの両中間点の間に接続されており、またC7は、第2及び第3のダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの両中間点の間に接続されている。あるいは、図34の充電器は、図8の充電器と図14の充電器においてそれぞれ用いられていた均等化用キャパシタを全て接続してなる構成を有した充電器であるということもできる。
図34の充電器において、蓄電セルB1〜B3の初期電圧がそれぞれ2V、1.5V、1Vとばらついた状態であるとした場合の充電動作のシミュレーションを行った。シミュレーションに用いたその他のパラメータは、実施例2のシミュレーションで用いたものと同一である。得られた動作波形を図35に示す。C6とC7の存在により、図14の充電器に比べて電荷移動の経路が増えたため、実施例2において図17に示された結果と比べて充電過程における電圧のばらつきが抑えられていることが分かる。また各蓄電セルが最終的な充電電圧である3.3Vに達するまでの時間も、図34の充電器を用いたシミュレーションにおいては短縮されている。
以上のとおり、特に図8と図14の充電器に対してキャパシタを追加した構成について説明をしたのであるが、図20と図26の充電器等、その他の全ての実施形態に対しても、同様にキャパシタを追加して電圧のばらつきを小さく抑えることが可能である。
図36は、本発明の第5実施例としての充電器1を示した回路図である。実施例1〜4とは異なり、パルス電源Vacは、第2のダイオード−インダクタ回路と第3のダイオード−インダクタ回路の接続点に対して接続されている。このような構成の充電器によっても、インダクタによる充放電電流の平滑化により、キャパシタC1〜C4の充電時又は放電時における突入電流を防止して損失を低減させることが可能である。なお、パルス電源Vacは、他のダイオード−インダクタ回路同士の接続点に対して接続されていてもよい。その場合は、C1又はC4に替えて、Vacと接続するための接続点を有した複数のキャパシタの組(C2とC3の組に対応)を用いることができる。
図37は、本発明の第5実施例としての充電器1の、別の例を示した回路図である。実施例1〜4とは異なり、パルス電源Vacは第2のダイオード−インダクタ回路と第3のダイオード−インダクタ回路の接続点に対して接続されている。各キャパシタC1〜C4は、第1〜第4のダイオード−インダクタ回路の中間点と、上記パルス電源との間に接続されている。このような構成の充電器によっても、インダクタによる充放電電流の平滑化により、キャパシタC1〜C4の充電時又は放電時における突入電流を防止して損失を低減させることが可能である。なお、パルス電源Vacは、他のダイオード−インダクタ回路同士の接続点に対して接続されていてもよい。その場合も、パルス電源Vacに対してキャパシタC1〜C4を接続し、且つC1〜C4を第1〜第4のダイオード−インダクタ回路の中間点と接続することにより、本発明の充電器を構成することができる。
その他、実施例5の充電器としては、図38及び図39に示される構成の充電器を用いることも可能である。図38及び図39の構成は、それぞれ図36及び図37に示される充電器において、各ダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタとの位置を交換した構成に相当する。蓄電セルの直列接続数、及びパルス電源Vacの接続位置の任意性は、これらの構成においても同様に成立する。
なお、直列接続された蓄電セル列に対しては、実施例1〜5で説明した、ダイオード−インダクタ回路、キャパシタ、及びパルス電源からなる回路を2組以上接続することも可能である。図40は、そのような構成の一例を示している。ダイオードD1〜D3及びインダクタL1〜L3よりなる、直列接続された第1〜第3のダイオード−インダクタ回路と、均等化用キャパシタC1〜C3と、パルス電源Vac1とが蓄電セルB1〜B3に対して接続されている点は図8の構成と同様であるが、これらに加えて、蓄電セルB1〜B3に対しては、ダイオードD4〜D6及びインダクタL4〜L6よりなる、直列接続された第4〜第6のダイオード−インダクタ回路と、均等化用キャパシタC4〜C6と、パルス電源Vac2とが更に接続されている。
図40の充電器を用いれば、蓄電セルB1〜B3は、C1〜C3を通る各経路とC4〜C6を通る各経路の2通りの経路を経由して充電されるので、図8の充電器を用いるよりも速い充電速度を得ることが可能である。この場合、B1〜B3に流れるリップル電流の観点から、Vac1とVac2は逆位相で動作させることが望ましい。上述した全ての実施例1〜5に対して、同様に複数の組の回路を用いることが可能である。また、例えば図8において各蓄電セルに接続されていた回路と図14において各蓄電セルに接続されていた回路を用いるなど、異種の回路を併用することも可能であるし、3以上の組の回路を各蓄電セルに対して接続してもよい。
なお、これまで説明した本発明の充電器は、全てダイオードを含む回路構成を有していたが、一部、あるいは全てのダイオードをスイッチで置き換えてもよい。
図8の充電器において全てのダイオードをスイッチで置き換えた構成を、図41に示す。各スイッチとしては、MOSFET等、任意の半導体スイッチを用いることが好ましいが、要求される応答速度等によっては、他の電子式スイッチや機械式スイッチを用いることも可能である。スイッチとしてMOSFET等の半導体スイッチを用いる場合、任意のスイッチドライバによって当該スイッチのオン・オフを制御することが可能である。
図9、図10を用いて示したとおり、パルス電源Vacが供給する出力電圧の時間変化する極性に応じて、図8に示した充電器におけるダイオードは導通/非導通の状態間で交互に切り替えられる。これを鑑みれば、図40の充電器を用いた充電動作においては、Vacの出力電圧の時間変化する極性に応じて上記スイッチドライバによりスイッチ切り替えを行うことで、図9、図10で示される各充放電状態と同様の状態を実現することができる。なお、図41はスイッチを用いる構成の単なる一例である。上述の実施例として説明された全ての充電器において、同様にダイオードの一部あるいは全てをスイッチで置き換えることが可能である。
上記実施例1〜6の充電器において、蓄電セルへの充電電流を制御する必要がなく、パルス電源の振幅(Va+Vb)を固定した上で所定の電圧値まで蓄電セルを充電する場合、当該充電器の使用者は、ある固定されたdの値にてパルス電源Vacを動作させればよい。しかしながら、充電電流を制御する必要がある場合やパルス電源の振幅に変動がある場合、あるいは、蓄電セルの充電電圧を高精度で調整する必要がある場合には、充電の進行に応じてdの値を随時制御する必要がある。
図42〜図47に、そのようなdの値の制御を行うための、充電システム2の一例を示す。これら充電システム2は、本発明の充電器と、充電器を構成するいずれかの素子の電流又は電圧を検出するための検出回路と、検出結果を基準値と比較するための比較演算回路と、比較の結果に基づいてパルス電源の出力パルス幅を制御するためのパルス幅制御回路から構成される。
なお、図42〜図47の充電システム2で用いられている充電器は図8に示した充電器1と同一の回路構成を有しているが、本充電システムに用いるべき充電器がこのような構成に限られるわけではない。すなわち、本発明の充電器のうち任意のものを用いて、充電システム2を構成することができる。
また、検出回路を接続する素子は、充電器を構成するいずれの素子であってもよく、任意の素子の電流・電圧を検出しつつパルス幅の制御を行うことが可能である。
充電システム2の構成
次に、図42を用いて充電システム2の構成及び動作を説明する。図42は、図8で示された実施例1の充電器に対して、B1〜B3の蓄電セルの電圧を検出する電圧検出回路と、検出結果と基準電圧を比較して差分に応じた信号を出力する比較演算回路と、比較結果に基づいてパルス電源Vacの出力パルス幅を制御するためのパルス幅制御回路と、を接続してなる充電システム2を示している。
電圧検出回路は、電圧を検出して検出結果に応じた信号を発することのできる任意の電圧計であってよい。また比較演算回路は、電圧検出回路からアナログ信号が発せられる場合には、A/Dコンバータを介して検出回路に接続されたデジタル・シグナル・プロセッサ等であってよい。比較演算回路には、電圧の基準値を記録するためのメモリ等が必要に応じて備えられている。なお、検出回路からの信号がデジタル信号であるならば、A/Dコンバータは不要である。パルス幅制御回路は、比較演算回路から受信した信号に応じて一定の時間間隔ごとにパルス電源Vacに対して出力レベルを切り替えるための信号を発するよう構成された、スイッチングドライバ回路等であってよい。一般的なパルス電源は、電源回路内のスイッチを切り替えることで一定振幅のパルス電圧の出力レベルを切り替えるよう構成されているため、パルス幅制御回路からパルス電源に対して送信される、スイッチを切り替える信号の送信間隔を制御することにより、出力パルス幅を調整することができる。
ただし、本発明の充電システムに用いられる検出回路、比較演算回路、及びパルス幅制御回路が上記の具体的な構成に限られるわけではない。当業者であれば、本発明の教示に従い、同様の機能を備えた別の回路を適宜構成することが可能である。本発明は、そのようなバリエーションの全てをその範囲に含む。
充電システム2の動作
次に、図42を用いて充電システム2の動作を説明する。
充電器の動作中、電圧検出回路は随時蓄電セルB1〜B3の電圧を検出し、検出結果を表わす信号を比較演算回路へと発している。ただし、電圧検出回路に対してクロック発振器を接続し、クロック信号に応じて所定のタイミングで検出結果の信号を発するよう構成してもよい。
次に、比較演算回路は、必要に応じてA/Dコンバータを介して、上記検出結果を表わす信号を受信し、この検出結果を、蓄電セルの目標充電電圧である基準電圧と比較する。蓄電セルの電圧が目標充電電圧よりも低い場合、比較演算回路は、パルス幅制御回路に対し、パルス電源の出力パルス幅を大きくすることを指示する信号を発する。ここにおける「大きくする」とは、あらかじめ定められた特定の時間間隔だけパルス幅を広くすることを指示する信号であってもよいし、あるいは、蓄電セルの電圧と目標充電電圧との間の差分に応じて算出された時間間隔だけ、パルス幅を広くすることを指示する信号であってもよい。なお、この場合の具体的なパルス幅の算出は、個々の回路構成に応じて成立する電流・電圧間の数学的関係式を理論的に解くことにより行ってもよいし、あるいはパルス幅と蓄電セル電圧との関係をあらかじめサンプリングし、比較演算回路内のメモリに記録した上で、当該記録されたデータと検出された蓄電セル電圧を照合することにより行ってもよい。
同様に、蓄電セルの電圧が目標充電電圧よりも高い場合、比較演算回路は、パルス幅制御回路に対し、パルス電源の出力パルス幅を小さくする方向へと指示する信号を発する。
次に、パルス幅制御回路は、比較演算回路から受信した信号に応じて、パルス電源の出力パルス幅を制御する。典型的には、パルス電源内のスイッチに対して、比較演算回路により指示されたパルス幅に対応する時間間隔ごとに、スイッチ切り替え信号を発する。
この構成においては、蓄電セルの電圧が目標充電電圧よりも低い場合にはパルス幅制御回路がパルス電源に対して出力パルス幅を大きくするよう信号を出力し、蓄電セルの電圧が目標充電電圧よりも高い場合はパルス幅制御回路がパルス電源に対して出力パルス幅を小さくする方向へと信号を出力することにより、蓄電セルの電圧を所望の値へと制御することができる。すなわち、蓄電セルの電圧が目標充電電圧と等しくなるようパルス電源の出力パルス幅dが制御されるため、パルス電源の振幅が変動した場合等においても高精度で蓄電セルの充電電圧を調整することが可能である。
なお、電圧検出回路から比較演算回路へと通知される蓄電セル電圧とは、充電器を構成する蓄電セルの全て、又は一部の電圧に基づいて決定される任意の電圧であってよい。すなわち、全ての蓄電セルの電圧を検出してその平均値を目標充電電圧と比較することが可能であるし、その他にも、例えば最も電圧の高いセルの電圧値を用いる、最も電圧の低いセルの電圧値を用いる、あるいは一部のセルの電圧のみ検出しその電圧値を用いる等、任意の方法によって蓄電セルの検出電圧を決定することができる。
図43は、図8で示した実施例1の充電器に対して、B1〜B3の蓄電セルに流れる電流を検出する電流検出回路と、検出結果と基準電流値を比較して差分に応じた信号を出力する比較演算回路、比較結果に基づいてパルス電源Vacの出力パルス幅を制御するためのパルス幅制御回路を加えたものである。図42の充電システムにおける電圧検出回路に代わって、電流検出回路を用いた充電システムである。このような構成の充電システムを図42のシステムと同様に動作させれば、蓄電セルの電流を所望の値へと調整することが可能となる。なお、電流検出回路とは、電流を検出して検出結果に応じた信号を発することのできる任意の電流計であってよい。
図43の充電システムの動作においては、電流検出回路の電流検出値と基準電流値とが、比較演算回路によって比較される。この場合の基準電流値は蓄電セルの目標充電電流値である。図9、図10を用いて説明したように、本発明の充電器の動作においては、パルス電源Vacからの出力方向に応じて各蓄電セルに異なる極性の電流が流れる。よって、蓄電セルに流れる電流を検出する図43の構成を用いる場合、電流検出値としては、蓄電セルに流れる電流の平均値を用いることが好ましい。この場合、具体的には、各蓄電セルを流れる電流が電流検出回路により検出され、それぞれの検出値を表わす信号が、A/Dコンバータを介して比較演算回路へと入力され、比較演算回路はそれら電流検出値の平均値を算出し、当該平均値とメモリに記録された目標充電電流値とを比較する。
蓄電セルを流れる電流が目標充電電流値よりも低い場合は、パルス幅制御回路がパルス電源に対して出力パルス幅を大きくするよう信号を出力し、蓄電セルに流れる電流が目標充電電流値よりも高い場合は、パルス幅制御回路がパルス電源に対して出力パルス幅を小さくする方向へと信号を出力する。このようにして、蓄電セルに流れる充電電流を所望の値に制御することができる。蓄電セルに流れる電流が目標充電電流値と等しくなるようパルス電源の出力パルス幅dが制御されるため、蓄電セルの電圧が変動する場合等においても高精度で蓄電セルに流れる充電電流値を調整することが可能である。この構成においては、全てのセルの電流を検出しそれら平均値を用いる、最も大きな電流の流れるセルの電流値を用いる、最も小さな電流の流れるセルの電流値を用いる、あるいは一部のセルの電流のみ検出しその電流値を用いる等、任意の方法により電流検出値を決定することができる。
以上、蓄電セルの電圧ならびに電流を検出しパルス幅を制御する構成について述べた。しかしながら、蓄電セルの電圧ならびに電流を検出する代わりに、図44及び図45に示す構成用いてキャパシタC1〜C3の電流・電圧を検出し、検出結果に応じてパルス幅の制御を行うことが可能であるし、あるいは図46に示す構成を用いてインダクタL1〜L3に流れる電流を検出し、検出結果に応じてパルス幅の制御を行うことも可能である。特にインダクタに流れる電流は条件によってはほぼ定電流と見なすことが可能なため、上記図43で蓄電セルに流れる電流を検出するよりも容易である。
また、実施例7の充電システムとしては、特に電圧あるいは電流の一方のみを検出して制御を行う態様について説明したが、電圧と電流を共に検出し制御を行うことも可能である。例として、図47に蓄電セルの電圧及び電流を検出し、パルス電源Vacの出力パルス幅の制御を行う構成を示す。蓄電セルの電圧が基準電圧値よりも低い場合、電圧比較演算回路はパルス幅制御回路に対してパルス幅を大きくするよう信号を出力するが、一方で電流比較演算回路はパルス幅制御回路に対して蓄電セルに流れる電流がある任意の値となるよう信号を出力する。その結果、蓄電セルの電圧が任意の充電電圧よりも低い場合、蓄電セルはある任意の定電流にて充電されることになる。蓄電セルの電圧が基準電圧値と等しいか、あるいは高い場合においても電流比較演算回路はパルス幅制御回路に対して蓄電セルに流れる電流がある任意の値となるよう信号を出力するが、一方で電圧比較演算回路はパルス幅制御回路に対して蓄電セルの電圧がある任意の値に保たれるよう信号を出力する。その結果、蓄電セルの充電電流は抑えられ、当該蓄電セルはある任意の定電圧にて充電されることになる。このように、電圧検出と電流検出を併用することにより、定電流/定電圧にて充電を行うことが可能である。
その他、任意の素子における電流・電圧等の検出可能な任意の量を2以上同時に検出し、それら検出結果に応じてパルス電源の出力パルス幅を制御するよう、本充電システムを構成することが可能である。