最良の態様を含む当業者に向けた本発明の十分且つ実施可能な開示を、添付図面を参照して以下に説明する。
本明細書及び添付図面を通して、本発明の同一又は類似の特徴又は要素を表示するために参照符号を繰り返して使用する。
「発明の開示」の項で説明したように、本発明は、タイヤに付属するセンサからデータを導き出すための方法に特に係るものである。詳述するならば、本発明は、タイヤが取付けられている車両の走行中に、走行中又は動作中にタイヤに加わる圧力でタイヤが撓むときに様々なタイヤセンサが発生する波形を解析することにより、有意なタイヤ関連データを導き出すことができることを発見したものである。
詳細に後述するように、動作中のタイヤの撓みにより、付属するセンサが「特徴的な」波形を発生し、その波形を解析することにより、現在のタイヤの状態に係る有意なデータを取り出すことができる。類似したこととして、医者が患者の心電図を解析して、鼓動に現れている患者の心臓の多くの異なる状態を識別することができることはよく知られている。同様に、タイヤの内部のひずみの特徴は、タイヤの状態についての豊富な情報源として使用することができる。
ここに開示する本発明の特徴の選択的な組合せが、本発明の複数の異なる実施例に相当する。本明細書に示し説明する典型的な実施例の各々は、本発明を限定するものではないことは理解されたい。又、1つの実施例の一部として図解し又は説明した特徴又は工程は、別の実施例の特徴と組み合わせて使用して、更に別の実施例を構成することもできる。更に、或る特徴は、同一又は類似の機能を達成する明示的に説明していない同様な装置又は特徴と置換可能である。
本発明の撓み特徴解析の現在の好ましい実施例を以下詳細に説明する。添付図面を参照するならば、図1は、軸20を中心にして回転するように取付けられているタイヤ10が表面30に接触していることを概略的に図解しており、タイヤと表面との接触により、ブラケット40で範囲を示している接触領域を発生している。
図1の表示からわかるように、本発明の撓み特徴解析は、空気で膨張させられ且つ荷重が加えられているタイヤ内に、4つの曲率が異なる領域が基本的にあるという事実を利用するものである。タイヤの大部分は、領域2で表示されており、当該領域は、表面30に接触してもおらず、領域6に非常に近いために相当に撓んでいるということもないタイヤ10の部分に対応する。その領域6は、表面30に完全に接触しているタイヤ部分に対応する。タイヤ部分4及び8は、静的状態で、すなわち、車両が止まっているとき又は等速走行をしているときは、実質的に同一である遷移領域であり、当該遷移領域は、詳細に後述するように、加速状態又は制動状態では、互いに形状が異なってくる。本明細書において、タイヤの回転方向が矢印26で示す方向であると仮定すると、遷移領域8は、「入」領域と考えることができ、遷移領域4は「出」領域と考えることができ、領域6は「接触」領域と考えることができる。
図2を参照するならば、本発明に従ってタイヤ付属センサが発生する波形すなわち撓み特徴を概略的に図解している。非制限的な例として、タイヤ付属センサは圧電センサとすることができ、その圧電センサは、自己給電式でも、外部給電式でもよく、更に又は、センサを動作させるために両方の給電方式の素子を組み合わせることもできる。更に、波形発生センサは、現在入手可能な他のセンサでも、新たに開発されているセンサでもよい。本発明の技術思想は、特定の形式のセンサを使用することに基づくものではなく、任意の適切なセンサが発生した波形に対して、タイヤ撓み特徴波形解析を行い、特定のセンサ形式に限定されることなく、タイヤに関連した有意なデータを得ることができるというものであることは明らかであろう。
本発明の主な特徴は、特にタイヤ内面上の、排他的ではないが、クラウンのトレッドの反対側のライナ上の、縦方向(車両長手方向)及び/又は横方向の歪みを表している波形を調べることである。時間経過に基づいて上述した4つの領域の各々の曲率並びにそれら領域の大きさ又は範囲を実際に求めることによって、タイヤの状態及び使用状態についての多くの事実を得ることが可能である。上述したように、圧電式タイヤセンサは極めて感度の高いデバイスであって、センサを取りけることができるタイヤのどこにでも加えられるいかなる力にも実質的に応答することが証明されている。従って、かかる圧電センサの使用は、本発明にとって効果的である。しかし、圧電センサの使用は、本発明を限定するものではない。
このようなセンサから得られる信号の適切な解析により、(時間の関数としてだけでなく遠心力による波形の関数としての)速度、荷重、タイヤ圧、空気圧不足又は過荷重の状態(これらは、剛性の変化が撓みの変化と同一ではないので、恐らく互いに独立している)、トレッド摩耗(ビームの厚さが摩耗で変化して、中立面の位置及びビームの剛性を変化させる)、加速/制動トルク(「入」領域及び「出」領域の曲率の変化の履歴)、ベルト分離(センサが感度が高いので、センサ直下でなくとも、タイヤのどの場所での不均等にも応答する)、スキッド(高周波成分が現れる)、縦方向の力、横方向の力(特に第2のセンサが横方向に設置されている場合)、ハイドロプレーニング、自己心出しトルク、キャンバーのような実際的な関心対象の多くのパラメータを得ることができる。
図2を更に参照すれば、典型的な波形は、等速走行状態下でタイヤ付属センサが発生する信号を図解している。図示するように、タイヤ10が軸20を中心にして矢印26の方向に回転している場合、タイヤは上述した4つの領域の各々に入って出るときに、波形に揺れが生じる。例えば、波形部分22とその繰返し部分24は、表面30に接触していないタイヤ部分で発生する信号に対応する。正方向パルス84は、「入」領域8の開始、即ち非接触領域2と完全接触領域6の開始との間の遷移部分の開始を表している。負方向パルス82は、「入」領域8の終了と完全接触領域6の開始を表している。波形部分62は、完全接触領域6に対応している。正方向パルス44は、完全接触領域6の終了と「出」領域4の開始に対応している。負方向パルス42は、「出」領域4の終了と非接触領域2の開始に対応する。
図2の波形から明らかなように、安定状態下において、「入」領域8及び「出」領域4のそれぞれの開始と終了を表すパルスは、同一である。更に、「入」領域8及び「出」領域4のそれぞれの開始パルスと終了パルスとの間隔も同一である。様々なパルスの振幅及び様々なパルスの間の時間差を解析することにより、上述したようにタイヤ回転速度、タイヤ荷重、タイヤ圧力、圧力不足状態又は過圧力状態、及びその他のパラメータのような情報を得ることができる。
図3を参照するならば、車両加速時に見ることができる典型的なタイヤ輪郭が図解されている。図1に図解したタイヤ輪郭と同様に、4つのはっきりと区別できるタイヤ領域を識別することができる。これらの領域は、非接触領域200、「入」領域800、「接触」領域600及び「出」領域400として識別することができる。図1及び図3に図示されているタイヤ輪郭の主な違いは、「入」領域800に見ることができる。特に、車両が加速しているとき、タイヤは、図3に参照番号810で図示するように「盛り上がり」又は「膨れ」るようになる。この現象は、1つには、タイヤに加わるトルクの増大により、「接触」領域600のタイヤと地表面30との間のトラクションによりタイヤ回転方向26においてタイヤ材料が圧縮されるためである。「接触」領域600及び「出」領域400の範囲の変動は、車両加速の結果として見ることができる。
ここで図4を参照するならば、加速状態においてタイヤ10に付属するセンサが発生する典型的な波形を見ることができる。パルス284及び282の形状及びパルス284と282との間の間隔が、パルス84及び82の形状及びパルス84と82との間の間隔と主に異なる点で、図4に図示される波形は、図2の波形とは異なることが明らかである。これらのパルスに関連する波形パラメータを、図2の対応するものと対比して解析することにより、加速、加速度、加えられているトルク及び上述したような他のパラメータを表すデータを発生することができる。例えば、図2の対応するパルス84と比較してパルス284が幅広く且つ振幅が大きいということがわかる。更に、図4のパルス282と284とは、図2のそれぞれに対応するパルス82と84と比較して大きく離されている。これらの違いを解析して、図1において図示される静的な「入」領域8と比較して「入」領域800の曲率の変化の指標を与えることができる。
同様な態様で、多様なパルスを解析することによって他のデータを得ることもできる。例えば、任意の単一パルス42、44、82、84、242、244、282又は284の連続発生の時間間隔は、瞬間速度の指標として使用することができる。パルス44と82との間又はパルス244と282との間の時間差は、タイヤ圧力又は荷重の指標として使用することができる。これらパルスの組合せの間の時間差の急速な変化が、急激に空気が抜けているような圧力の急激な低下の指標として使用することができる。
図示してはいないが、図3及び図4に図解したものと同様なタイヤ輪郭及びパルス波形が制動状態でもそれぞれ発生し、「盛り上がり」又は「膨れ」が、「入」領域800と反対側の「出」領域400で発生することは明らかである筈である。その場合、図4の波形は、図2に図解したパルス44及び42に比較して、パルス244及び242に有意な違いを示す。制動状態でのそのようなパルスの解析により、減速情報、トラクション情報、スキッド及びハイドロプレーニングに係る情報、更には上述した他のデータを含む有意なタイヤ及び車両に係る情報を得ることができる。接地領域サイズ間の違いの解析により、例えば、図1に参照番号6で図示し図2の波形図において参照番号62で示す接地領域サイズと、図3に参照番号600で図示し図4の波形図において参照番号262で示す接地領域サイズとの間の違いの解析により、タイヤ圧力及びタイヤに加わる下向きの力に係る情報を含むタイヤ関連情報を得ることができる。これら後者の特徴は、詳細に後述するように、圧力又は下向きの力のタイヤ対間の違いを検討するとき、大きな有意性をもつ。
図5を参照するならば、本発明に従ってタイヤ内に又はタイヤ上に又はタイヤ内部にセンサを取付けることができる様々な取付け場所が図解されている。図5に示すように、1つ以上のセンサを、参照番号90で示すようにサイドウオールの外側に、参照番号92で示すようにタイヤのクラウンに、又は参照番号94で示すようにサイドウオールの内側に取付けることによって、又は、参照番号96で示す点線矩形で図解するようにタイヤ構造体内に物理的に埋め込んで、タイヤ10に設けることができる。上述した位置のどの1つの位置でも又はそのうちのいくつかの位置でも又は上述した全ての位置を、任意の1つのタイヤのセンサ配置位置として使用することができる。縦方向及び横方向の力を簡単に検出して、可能な限り最大限の範囲の識別可能なデータを得ることができるように複数のセンサを配置することもできる。更に、本発明を限定するものではないが、複数のセンサは全て同一形式とすることもできる。反対に、特定の形式の状態に多少とも応答することができる別々の撓み特徴を得るために望ましい又は必要な複数の異なる形式のセンサを使用することもできる。
ここで図6を参照して、上述したタイヤとセンサとの組合せの変更例を説明する。上述したように、本発明では、1つのタイヤに複数のセンサを組み合わせる。そのような実施例の1つを図6に概略的に図解しており、一対のセンサ310及び320がタイヤ10の互いに向かい合うサイドウオール内面に取り付けられている。図6に図示したように、タイヤは、直線に沿って前進している車両に設けられていると考える。この場合、タイヤ10のサイドウオールが両方とも、同じ力ra及びrbを実質的に受けており、サイドウオール自体が、曲線「a」及び「b」で図解するように実質的に同じ形の輪郭を描いていることに特に気付かれたい。かかる状態は、一つには、タイヤに加えられている横方向の力がないためである。図6(a)及び図6(b)からわかるように、上述した条件下でセンサ310及び320によって発せられる波形312及び322は実質的に同一である。
次いで図7を参照するならば、図6に示したタイヤと実質的に同一なタイヤが、矢印FLで表示されるような横方向の力を受けた場合の影響が図解されている。タイヤ10に加えられる横方向の力は、タイヤが装着されている車両が旋廻運動をしている場合を含む沢山の原因により生じる。一般的に、かかる旋廻運動は、センサ310が設けられているサイドウオールに関しては実質的に直線の輪郭「a」を描き、センサ320が設けられているサイドウオールに関しては実質的に更に湾曲した輪郭「b」を描くように、タイヤ10のサイドウオールを不均一に変形させる。かかる条件下では、センサ310及び320は、それぞれ図7(a)及び図7(b)に図示したような波形312及び322を発生する。図示した波形からわかるように、センサ310に係る信号312の振幅はセンサ320に係る信号322の振幅より小さい。更に、図7(a)に図示したように、信号312の振幅が、図6(a)に図示した信号の振幅に比較して同じ比率で小さくなっており、他方、図7(b)及び図6(b)に図示されている信号322に関しては逆になっている。
図6に図示した上述した動作条件下での、すなわち、等速前進運動において横方向の力が全くタイヤに加えられていない条件下での例示的に図解したベースライン信号と考えることができるものを越える信号312及び322の振幅変化は、一つには、横方向の力のために不均一な力がタイヤに加えられるためである。センサ312及び322によって生成される信号の間の違いを解析して、タイヤに加えられている横方向の力の大きさをもちろん含む関心対象のタイヤ関連情報を得ることができる。加えられた横方向の力の上流側のセンサが生成する信号(本例の場合、センサ310及び信号312)がゼロ又は少なくとも非常に低い値に低下し、下流側のセンサが大きな値信号を生成している場合、それを、そのタイヤが装着されている車両が転覆する危険にあることの指標としてとることもできる。
残りの図面を見るならば、タイヤ対に複数のセンサを組み合わせた例を図示する本発明の実施例が示されている。図8を参照するならば、車両(不図示)の共通の軸12に装着された一対のタイヤ10及び10’が例示的に図示されている。図8に図示されているように、タイヤ10及び10’は、タイヤ10及び10’が横方向の力を全く受けないように直線路上を走行している車両に装備されていると考えることができる。更に、各タイヤの空気圧が実質的に等しいと仮定するならば、各タイヤ10及び10’の接地領域がほぼ等しい。図8及び図9に図示していないセンサを、図5に図示して上述した方法のでタイヤ10及び10’に設けることができる。本発明の他の実施例と同様に、本実施例は、タイヤ10及び10’の各々に複数のセンサを設けることもできる。しかし、センサの形式は本発明にとって限定要因ではないので、センサの形式に関係なく、別々のタイヤ10及び10’に付属するセンサから生成される信号を比較する。
図9に図示される構成に関しては、一対のタイヤ10及び10’が、図示される共通の車軸12に設けられている。なお、本実施例は、例示のためのみのものであり、タイヤ対が、同じ車軸に設けられている必要ななく、車両の両側に取り付けられているば、本発明の利点を享受することができることは理解されたい。図9に図示するタイヤ対10及び10’は、矢印14で示す道路に沿ったカーブに車両が入っていくときにようにみえるよう概略的に図解している。当然、そのような運転の間に沢山の力が車両及びそのタイヤに加わっているけれども、ここでは3つの力について主に検討する。それら力は、下向きの矢印Fa及びFbで表されている。それら下向きの矢印Fa及びFbは、カーブ14に沿って曲がる過程においてタイヤ10及び10’にそれぞれ加わる下向きの力を表している。図9からわかるように、タイヤ10’に作用する力Fbが、タイヤ10に作用する力Faより大きい。力Fbの矢印の長さの力Faの矢印の長さより長い部分が、力の差を表している。
3つの力の内の第3の力は、矢印Fcによって概略的に図示される横方向の力である。この横方向の力が、下向きのFbと合成されて、タイヤ10’の一部の変形16を引き起こし、同時に、タイヤ10’の接触領域を増大させる。図1を参照することで思い出されるように、接触領域6は、タイヤが通過する地表面と接触しているタイヤの面積である。図9に図示される本発明の実施例において、この接触領域が、図9(a)及び図9(b)に図示されるように、タイヤ10及び10’に付属するセンサから生成されるデータによって正確に決定することができる。
図9(a)は、タイヤ10に付属するセンサが発生する信号を表しており、図9(b)は、タイヤ10’に付属するセンサが発生する信号を表している。図9(a)と図9(b)との比較からわかるように、図9(a)に図示される信号の振幅は、図9(b)に図示される信号の振幅より相当小さい。更に、それぞれタイヤ10及び10’の接触領域の大きさを表している図9(a)の信号部分Laと図9(b)の信号部分Lbとの間の時間長差は、横方向の力Fcと下向きの力Fbとの合成効果の指標として使用することができる。下向きの力Fb及び横方向の力Fcが大きくなればなるほど、図9(b)の信号部分Lbで表されるタイヤ10’の接触領域の大きさが大きくなり、他方、図9(a)の信号部分Laで表されるタイヤ10の接触領域の大きさが小さくなる。同時に、タイヤ10’に付属するセンサが発生する信号の振幅が大きくなり、他方、タイヤ10に付属するセンサが発生する信号の振幅が小さくなる。タイヤ10に付属するセンサからの信号の振幅が、絶対値としてより小さくなり、又は、タイヤ10’ に付属するセンサからの信号の振幅と比較してより小さくなった場合、タイヤが道路面と接触していない、すなわち車両が転覆する危険にあるかもしれないと判定することができる。
本発明を、本発明の特定の実施例に関して詳細に説明したが、上述した説明を理解した当業者には、上述した実施例に対して変更や修正又は均等物へに置換は容易にできるであろう。本発明の開示は、限定のためではなく、例示のためであり、当業者に明らかな本発明に対する上述した変更、修正及び/又は追加を含むことを除外するものではない。