JP5418285B2 - 円筒形スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

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本発明はマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置等に用いられる円筒形スパッタリングターゲットの製造に関するものである。
マグネトロン型回転カソードスパッタリング装置は、円筒形スパッタリングターゲットの内側に磁場発生装置を有し、ターゲットの内側から冷却しつつ、ターゲットを回転させながらスパッタを行うものである。この装置では、ターゲット材の全面がエロージョン面となって均一に削られていくため、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置におけるターゲットの使用効率(20〜30%)に比べて格段に高いターゲット使用効率(60%以上)が得られる。さらに、ターゲットを回転させることで、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置に比べて単位面積当り大きなパワーを投入できることから高い成膜速度が得られる。
このような円筒形スパタリングターゲットは通常、円筒形基材上に円筒形ターゲットが固定されてなるものであり、円筒形基材としては、一般に金属のシームレス管が使用される。このシームレス管は、素管のままでは真円ではなく、外周面にうねりやそり等が存在する。しかしながら、円筒形基材の外周面全体を研削加工することはコストがかかるため経済的ではなく、また加工精度にも問題がある。したがって、円筒形基材の両端部の外周面のみが真円状に研削加工され、スパッタ装置に装着される。しかしながら円筒形ターゲット材が固定される部分はシームレス管の素管のままであるため、真円ではなく、うねりやそりなどが存在したままである。そのため、円筒形ターゲット材の中心軸と円筒形基材の中心軸とを合わせる際に、基準面を円筒形基材の外周面とすると中心軸のズレが生じるため、中心軸合わせは容易でなかった。
円筒形ターゲット材と円筒形基材の中心軸を合わせる方法として、円筒形基材と円筒形ターゲット材との間隔よりも若干肉薄のスペーサーを用いて、円筒形基材の外周面とターゲット材の内周面で中心を合わせる方法(例えば特許文献1、2、3参照)が知られている。しかしながら、この方法では、長尺の円筒形基材を用いた場合、円筒形ターゲット材が円筒形基材に挿入できなくなったり、円筒形基材の形状により円筒形ターゲット材の位置が制約され、中心軸がズレてお互いに隣り合う円筒形ターゲット材の外周面に段差が生じる。その結果、パーティクルや異常放電が発生し易く、均一な薄膜を安定して形成することは容易でなかった。
特許第3618005号 特開2005―281862号公報 特開2008―184640号公報
本発明の課題は、複数の円筒形ターゲット材からなる円筒形スパッタリングターゲットにおいて、隣り合う円筒形ターゲット材の外周面のズレや折れ曲がりがない又は極めて小さい円筒形スパッタリングターゲットとすることにより、パーティクルの発生が少なく、異常放電を著しく低減できる円筒形スパッタリングターゲットの製造方法を提供することである。更には、中心軸合わせが簡便な円筒形スパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、円筒形基材と複数の円筒形ターゲット材とを接合材を用いて接合し、円筒形スパッタリングターゲットを製造する方法において、円筒形基材を基準として円筒形ターゲット材を配置する際に、隣り合う円筒形ターゲット材の間にスペーサーを挿入し、そのスペーサーによって、隣り合う円筒形ターゲット材の外周面が一致するように円筒形ターゲット材を固定することを特徴とする、円筒形スパッタリングターゲットの製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の円筒形スパッタリングターゲットの製造に用いられる円筒形ターゲット材はセラミックス焼結体からなるものであり、種々のセラミックス材料が使用可能であるが、例えば、In、Sn、Zn、Al、Ta、Nb、Tiの少なくとも1種を主成分とする酸化物等が挙げられる。より具体的には、例えば、インジウム、スズ及び酸素からなるITO焼結体(Indium Tin Oxide)、亜鉛、アルミニウム及び酸素からなるAZO焼結体(Aluminium Zinc Oxide)、インジウム、亜鉛及び酸素からなるIZO焼結体(Indium Zinc Oxide)、Ta、Nb、TiO等が挙げられ、これらの焼結体にはさらなる放電特性の向上や抵抗率の改善のために、構成元素以外の他の元素が添加されていてもよい。
本発明の円筒形スパタリングターゲットの製造に用いられる円筒形基材としては、種々の材質が使用可能であり、ターゲット使用時に、円筒形基材と円筒形ターゲット材とを接合する接合材が劣化、溶融しないよう十分な冷却効率を確保できる熱伝導性があり、スパッタ時に放電可能な電気伝導性、ターゲットを支えることが可能な強度を備えているものであれば良い。このような材質としては、例えば、Cu、Ti、Al、Mo、それらを含む金属、SUS等が挙げられる。
本発明の円筒形スパッタリングターゲットに用いられる接合材としては、ターゲット使用時に、接合材が劣化、溶融しないよう十分な冷却効率を確保できる熱伝導性があり、スパッタ時に放電可能な電気伝導性、ターゲットを支えることができる強度等を備えている材質であればよく、例えば、半田や導電性樹脂が挙げられる。
半田材としては、一般に半田材として使用されるものであれば使用可能である。好ましくは、低融点半田であり、例えば、In、In合金、Sn、Sn合金等が挙げられる。より好ましくはIn又はIn合金半田である。In又はIn合金半田は平板型のターゲットでの実績も豊富であり、また、展延性に富むため、スパッタ中に加熱されるターゲット材と冷却されている基材との熱膨張等のひずみを緩和する効果がある。
導電性樹脂としては、例えば、エポキシ、アクリル、ポリエステル、ウレタン、フェノール等の熱硬化樹脂に、フィラーとしてAg,C,Cu等の導電性物質を混合したものが挙げられる。
本発明で製造される円筒形スパッタリングターゲットは、円筒形基材に複数の円筒形ターゲットを接合してなり、隣り合う円筒形ターゲット材が間隔を有して配置されている分割部を有する。この分割部において、隣り合う円筒形ターゲット材間にズレや折れ曲がりが存在すると、円筒形スパタリングターゲットとして用いてスパッタを行った場合、突き出た側の円筒形ターゲット材のエッジに電界が集中するため、異常放電が発生しターゲット材のエッジが砕けパーティクルが生じる恐れがある。
したがって、隣り合う円筒形ターゲット材は、分割部の外周面にズレや折れ曲がりがないまたはできるだけ小さくなるように配置する必要がある。また、スパッタ中の熱膨張により互いのターゲットが接触しないように間隔を設けることが必要である。
そこで、複数の円筒形ターゲット材を接合する際に、隣り合う円筒形ターゲット材間にスペーサーを挿入する。このスペーサーは分割部の間隔を一定に保つだけでなく、隣り合う円筒形ターゲット材の外周面にズレや折れ曲がりが発生するのを防ぐために、分割部周辺で隣り合う円筒形ターゲット材の外周面を押さえてそろえることができる構造を有するものである。
さらに円筒形ターゲット材の最端部と固定架台との間にスペーサーを挿入し、そのスペーサーを利用して円筒形基材と円筒形ターゲット材との中心軸を合わせることができる。製造に用いられる円筒形基材は、前述のように両端部の外周面は真円状に研削加工されているため、円筒形基材の最端部の外周面を基準として、そこから一定距離に円筒形ターゲット材の外周面が来るように円筒形ターゲット材を固定すればよい。そのため、円筒形ターゲット材最端部の外周面を押さえることができる構造を有するスペーサーを用い、それを円筒形ターゲット材の最端部と固定架台との間に挿入して利用すればよい。
接合材が低融点半田や熱硬化性樹脂などの場合、加熱処理が行われるため、いずれのスペーサーも耐熱性のテフロンやシリコンなどの材料が好ましい。
一例として、本発明の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法を示す。スペーサーの形状の一例を図1〜3に示す。図1および図2は、隣り合う円筒形ターゲット材の間に挿入する本発明のスペーサーの断面図と上面図である。図3は、円筒形ターゲット材の最端部と固定架台との間に挿入するスペーサーの断面図である。図4は円筒形スパッタリングターゲット材の組み立て図である。円筒形基材10は固定架台30に配置される。最下段の円筒形ターゲット材20と固定架台30の間は、図3のような断面構造を有するスペーサー40をシール材として挿入する。また隣り合う円筒形ターゲット材の間には図1および図2のような構造を有するスペーサー50をシール材として挿入する。このようにして接合材が充填される空隙が形成される。
下端部に用いるスペーサー40の内径は、図3に示すような断面を有する場合、図5に示すように、第1の内径は円筒形基材の外径にほぼ等しく、第2の内径は円筒形ターゲット材の外径にほぼ等しいことが必要であるが、操作上の観点から、いずれも若干(0.5mm以下程度)大きくてもよい。第1の内径が円筒形基材の外径より大きすぎると、円筒形基材と円筒形ターゲットの中心軸のズレが生じる恐れがあり、円筒形基材より小さすぎると、スペーサーが挿入できない恐れがある。
隣り合う円筒形ターゲット材の間に挿入するスペーサーが図1に示すような断面を有する場合、図5に示すように、第1の内径は円筒形ターゲット材の内径にほぼ等しく、第2の内径は円筒形ターゲット材の外径にほぼ等しいことが必要であるが、第1の内径に関しては、スペーサーが円筒形基材と円筒形ターゲット材の間の空隙にまで若干せり出す大きさ(空隙の幅の1/2以下程度)であってもよく、逆に円筒形ターゲット材の内径より若干(2mm以下程度、好ましくは1mm以下)大きくてもよい。第1の内径が円筒形ターゲット材の内径より小さすぎると円筒形基材と円筒形ターゲット材との間の空隙にまでスペーサーがせり出すため、接合材の注入に支障が生じる恐れがあり、また円筒形ターゲット材の内径より大きすぎると、接合材が分割部に多量に入り込むので好ましくない。
また、何れのスペーサーも第2の内径が円筒形ターゲット材の外径より小さいと円筒形ターゲット材の外周面が収まらなくなり、円筒形ターゲット材の外径より大きすぎると円筒形基材との中心軸とのズレを生じることになる。
また、スペーサーの外側部分、即ち円筒形ターゲット材の外周面を押さえる部分の厚さは薄すぎると変形を生じ、厚すぎると、使用後のスペーサーを切断・除去するのが難しくなるので適切な厚さに設定することが必要である。
また、スペーサーの外側部分の高さに制限はないが、あまり低いと円筒形ターゲット材の外周面を十分に押さえることができず、また余り高いとスペーサーの内側と円筒形ターゲット材の外側との間の密着性が悪くなり、中心軸ズレが生じるので、適切な高さ、好ましくは5〜50mm、更に好ましくは10〜30mmに設定することが必要である。
また、スペーサーを配置した組立てにおいて、各々のスペーサーの外表面をバンド等で締めて固定してもよいが、強く締めすぎると円筒形ターゲット材の中心軸がずれることがあるので、適切な力で締めることが望ましい。
本発明では、円筒形ターゲット材の合計の長さとしては特に制限はなく、本発明によれば合計で1000mm以上の長さを有する円筒形ターゲット材を用いて構成した円筒形スパッタリングターゲットであっても均一な成膜を行うことができる。
本発明によれば、複数の円筒形ターゲット材からなる長尺の円筒形スパッタリングターゲットを用いてスパッタ成膜した場合においても、異常放電やパーティクルの発生を抑制することができ、均一な薄膜を形成することが可能となる。
本発明のスペーサーの一例を示す断面図である。 本発明のスペーサーの一例を示す上面図である。 本発明のスペーサーの一例を示す断面図である。 スパッタリングターゲットの組立てを示す図である。 実施例1の円筒形基材とスペーサーとの関係を示す模式図である。 比較例1の円筒形基材とスペーサーとの関係を示す模式図である。
以下、本発明の実施例をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
外径88mmφ、内径68mmφ、長さ180mmの円筒形ITOターゲット材を6個用意し、外径65mmφ、内径61mmφ、長さ1300mmのSUS304製円筒形基材の下部より20mmの位置に円筒形ITOターゲット材の下端がくるように治具で保持した。
厚み2.0mm、第1の内径が65.2mmφ、第2の内径が88.2mmφ、外側の厚み2.0mm、高さ15.0mmの図3のような断面を有するスペーサー40(テフロン製)を、図4に示すように架台30に配置し、第1の円筒形ターゲット材を円筒形基材の外側に挿入した。次いで、厚み2.0mm、第1の内径が68.2mmφ、第2の内径が88.2mmφ、外側の厚み2.0mm、高さ30.0mmの図1のような断面を有するスペーサー50(テフロン製)を第1の円筒形ターゲット材20の上に配置した。このときのスペーサー40、50と円筒形基材との関係を図5に示す。順次、同様な操作を行い、6個の円筒形ターゲット材を組立てた。その後、各スペーサーの外周部をズレない程度の力でバンドで固定した。
次に組み立てた円筒形基材と円筒形ターゲット材との空隙に溶融したIn半田(融点156℃)を上部から注入した。In半田の注入後120℃まで冷却し、In半田が固化したことを確認後、スペーサーを切断して取り除いた。さらに、架台からはずし、ITO円筒形スパッタリングターゲットを得た。6個の円筒形ターゲット材の隣り合う外周面の位置ずれは、最大でも0.14mmであった。
比較例1
外径88mmφ、内径68mmφ、長さ180mmの円筒形ITOターゲット材を2個用意し、外径65mmφ、内径61mmφ、長さ490mmのSUS304製円筒形基材の下部より20mmの位置に円筒形ITOターゲット材の下端がくるように治具で保持した。
第1のスペーサーとして1枚円盤状の厚さ2.0mm、内径65.2mmφ、外径90mm(テフロン製)を、第2のスペーサーとして1枚円盤状の厚さ2.0mm、内径68.2mmφ、外径90mm(テフロン製)を用いた以外は実施例1と同様の方法で円筒形スパッタリングターゲットを製造した。このときのスペーサーと円筒形基材との関係を図6に示す。
2個の円筒形ターゲット材の隣り合う外周面には、最大で0.84mmの位置ズレが認められた。
10:円筒形基材
20:円筒形ターゲット材
30:固定架台
40:下端のスペーサー
50:分割部のスペーサー
60:上端のスペーサー

Claims (2)

  1. 円筒形基材と複数の円筒形ターゲット材とを接合材を用いて接合し、円筒形スパッタリングターゲットを製造する方法において、円筒形基材を基準として円筒形ターゲット材を配置する際に、隣り合う円筒形ターゲット材の間にスペーサーを挿入し、そのスペーサーによって、隣り合う円筒形ターゲット材の外周面が一致するように円筒形ターゲット材を固定することを特徴とする、円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. さらに円筒形ターゲット材の最端部と固定架台との間にスペーサーを挿入し、そのスペーサーを利用して円筒形基材と円筒形ターゲット材との中心軸を合わせることを特徴とする、請求項1に記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
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