JP5411523B2 - リンゴ小球形潜在ウイルスベクターの効率的接種法とバラ科果樹内在性遺伝子の発現抑制方法 - Google Patents

リンゴ小球形潜在ウイルスベクターの効率的接種法とバラ科果樹内在性遺伝子の発現抑制方法 Download PDF

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本願発明は、リンゴ小球形潜在ウイルスベクターを効率的接種方法とバラ科果樹の内在性遺伝子発現を効率よく抑制する方法に関するものである。
RNAサイレンシングは真核生物に普遍的な配列特異的遺伝子制御システムであり、発生制御やウイルスに対する防御機構である。免疫機構をもたない植物では、RNAサイレンシングはウイルスに対する防御機構として重要な役割を持っている(非特許文献1)。ウイルスが植物に感染すると複製時に形成されるdouble-stranded RNA(dsRNA)が引き金となり、DICER(植物においてはDICER-LIKE:DCL)と呼ばれるRNase III-like nucleaseにより21nt〜22ntの短いsi(small interfering)RNAと23〜25ntの長いsiRNAに切断される。siRNAはRNA-induced silencing complex(RISC)に取り込まれ、ウイルスRNAを分解し、ウイルス感染を抑制する。またsiRNAは隣接する細胞へと移行し、RNA-dependent RNA polymerase(RdRp)の働きによりsiRNAと相補的なmRNAがdsRNAに変換され、さらにサイレンシングを拡大する(非特許文献2-4)。一方、RNAサイレンシングに対して多くの植物ウイルスはサイレンシングサプレッサータンパク質を発現し、ds siRNAと結合するなどしてサイレンシングを阻害する(非特許文献5、6)。1995年、植物の内在性遺伝子を組み込んだTMV感染によりその遺伝子のRNAサイレンシングが誘導されることが報告された(非特許文献7)。これはウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus-induced gene silencing:VIGS)と呼ばれ、優れた逆遺伝学的手法として現在幅広く利用されている。従来、植物遺伝子の機能解析は形質転換体や変異体の作出により行われてきたが、VIGSを利用することで多数の個体を短期間に解析することができる。VIGSの利用は、現在一般的に用いられているTabacco rattle virus(TRV)によりN.benthamiana(ベンサミアナ) 、シロイヌナズナ、トマト、ポピーなど(非特許文献8-11)やTomato yellow leaf curl china virus(TYLCCNV)によりベンサミアナ、トマト、(非特許文献13)、Pea early brownig virus(PEBV)によりエンドウ(非特許文献14)、Cucumber mosaic virusによりダイズ(特許文献1、非特許文献15)などで報告されてきた。VIGSによる遺伝子解析は、致死遺伝子を含む多数の遺伝子を対象にでき、また形質転換体の作出が困難な植物にも利用できるなどの利点がある。一方、ウイルス感染により病徴を示すこと、ウイルスを利用できる植物が限られていること、特に作物に利用できるウイルスが少数であることなど問題点がある。
リンゴ小球形潜在ウイルス(Apple latent spherical virus:ALSV)は2分節1本鎖RNAゲノム(RNA1とRNA2)と3種類の外被タンパク質(Vp25、Vp20およびVp24)からなる径25nmの小球形ウイルスである(非特許文献16)。リンゴに潜在感染し、Chenopodium quinoa(キノア)に退緑などの病徴を示すが、タバコ、ベンサミアナ、N.occidentalis(オキシデンタリス)、N.glutinosa(グルチノーサ)およびシロイヌナズナなどほとんどの宿主植物に無病徴感染する。さらにウリ科およびマメ科植物にもほとんど無病徴で感染することが明らかになっている。これまでにRNA2のMP(movement protein)とVp25の間に外来遺伝子導入部位を組み込んだウイルスベクタ−が構築され、キノアや草本植物、リンゴでの外来遺伝子の発現に成功している(特許文献2、非特許文献12、17、18、)。Green fluorescent protein (GFP)発現タバコにおいてGFPを組み込んだALSV(GFP-ALSV)を接種するとGFP遺伝子のサイレンシングが誘導され、接種葉においてはGFP蛍光が円状に消失し、やがて上位葉全体でGFP蛍光が消失することが明らかにされた(非特許文献19)。これらの結果は、ALSVが全身的なサイレンシングを誘導することを示している。
五十嵐(非特許文献20)は、4種のNicotiana属植物にタバコ内在性遺伝子であるphytoene desaturase(PDS)遺伝子、sulfer(SU)遺伝子およびproliferating cell nuclear antigen(PCNA)遺伝子を組み込んだALSV(tPDS-ALSV, SU-ALSVおよびPCNA-ALSV)を接種するとPDS、SUおよびPCNA遺伝子のサイレンシングがそれぞれ誘導されることを報告した。すなわち、tPDS-ALSV接種個体では上葉が白色化すると共に、PDS遺伝子mRNA量が減少し、同様にSU-ALSV接種個体では上葉が黄白色化すると共に、SU遺伝子mRNA量が減少した。PCNA-ALSV接種個体ではPCNA遺伝子のサイレンシングに起因する上葉の退緑や縮葉などの奇形が生じることが明らかにされた。さらに、シロイヌズナに内在性遺伝子であるPDS遺伝子およびprotoporphyrin-IX Mg-chelatase(CH42)遺伝子を組み込んだALSV(aPDS-ALSVおよびCH42-ALSV)を接種すると、PDSおよびCH42遺伝子のサイレンシングがそれぞれ誘導され、aPDS-ALSV接種個体では上葉が白色化すると共に、PDS遺伝子mRNA量が減少し、同様にCH42-ALSV接種個体では上葉が黄白色化すると共に、CH42遺伝子mRNA量が減少した(非特許文献20)。これらの結果は、ALSVベクターが4種のNicotiana属植物およびシロイヌナズナにおいて効率の良いVIGS用ベクターとなり得ることを示している。
特開2008-211993号公報 特開2004-65009号公報 Voinnet,O. (2001). RNA silencing as a plant immune system against viruses. Trends Genet 17:449-459. Baulcombe,DC.(2004). RNA silencing in plants. Nature 431:356-363. Qi,Y. and Hannon,GJ. (2005). Uncovering RNAi mechanisms in plant:biochemistry enters the fray. FEBS Lett. 579:5899-5903. Wang,MB. and Metzlaff,M. (2005). RNA silencing and antiviral defense in plant. Plant Biol. 8:216-222. Lakatos,L., Csorba,T., Pantaleo,V., Chapman,EJ., Carrington,JC., Liu,Y., Dolja,VV., Calvino,LF., Lopez-Moya,JJ. and Jozsef,B. (2006). Small RNA binding is a common strategy to suppress RNA silencing by several viral suppressors. EMBO J. 25:2768-2780. Merai,Z., Kerenyi,Z., Kertesz,S., Magna,M., Lakatos,L. and Silhavy,D. (2006). Double-Stranded RNA Binding May Be a General Plant RNA Viral Strategy To Suppress RNA Silencing. J.Virol. 5747-5756. Kumagai,MH., Donson,J., Della-Cioppa,G., Harvey,D., Hanley,K. and Grill,LK. (1995). Cytoplasmic inhibition of carotenoid biosynthesis with virus−derived RNA. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1679-1683. Brigneti,G., Martin-Hernandez,AM., Jin,H., Baulcombe,DC., Baker,B. and Jones,JDG. (2004). Virus-induced gene silencing in Solanum species.Plant J. 39:264-272. Burch-smith,T., Schiff,M., Liu,Y. and Dinesh-Kumar,SP. (2006). Efficient Virus-Induced Gene Silencing in Arabidopsis. Plant Physiol. 142:22-27. Liu,Y., Schiff,M., Marathe,R. and Dinesh-Kumar,SP. (2002). Virus -induced gene silencing in tomato. Plant J. 31:777-786. Hileman,LC., Drea,S., Martino,G., Litt,A. and Irush,VF. (2005). Virus- induced gene silencing is an effective tool for assaying gene function in the basal eudicot species Papaver somnifeum(opium poppy). Plant J. 44:334-341. 佐々木伸浩.GFPでタグしたリンゴ小球形潜在ウイルスの細胞間移行および長距離移行の解析.岩手大学大学院連合農学研究科修士論文. Xinzhong,Cai., Changchun,Wang., Youping,Xu., Qiufang Xu., Zhong,Zheng., Xueping,Zhou. (2007). Efficient gene silencing induction in tomato by a viral satellite DNA vector. Virus Res. 125:169-175. Constantin,GD., Krath,BN., MacFarlane,SA., Nicolaisen,M., Johansen, IE. and Lund,OS. (2004). Virus−induced gene silencing as a tool for functional genomics in a legume species. Plant J. 40:622-631. Nagamatsu,A., Masuta,C., Senda,M., Matsuura,H., Kasai,A., Hong,JS., Kitamura,K., Abe,J., Kanazawa,A. (2007). Functional analysis of soybean genes involved in flavonoid biosynthesis by virus-induced gene silencing. Plant Biotechnol J. 5:778-90. Li,C., Yoshikawa,N., Takahashi,T., Ito,T., Yoshida,K. and Koganezawa,H. Nucleotide sequence and genome organization of Apple latent spherical virus:a new virus classified into the family Comoviridae. (2000). J.Gen.Virol. 81:541-547. Li,C., Sasaki,N., Isogai,M. and Yoshikawa,N. (2004). Stable expression of foreign proteins in herbaceous and apple plants using Apple latent spherical virus RNA2 vectors. Arch. Virol. 149:1541-1558. 李春江(1999).リンゴ小球形潜在ウイルス構造のゲノムとウイルスベクタ−への改変に関する研究.岩手大学大学院連合農学研究科博士論文. Yaegashi H., Yamatsuta,T., Takahashi,T., Li,C., Isogai,M., Kobori,T., Ohki,S., Yoshikawa,N. (2007). Characterization of virus-induced gene silencing in tobacco plants infected with apple latent spherical virus. Arch. Virol. 152:1839-1849. 五十嵐亜紀(2007).リンゴ小球形潜在ウイルスベクタ−を利用した植物内在性遺伝子のRNAサイレンシングの誘導.岩手大学大学院農学研究科修士論文
前記のとおり、ALSVベクターは植物内在性遺伝子のジーンサイレンシング(VIGS)のための有効な材料である。VIGSは各種内在性遺伝子の機能を個体レベルで正確に理解するために有用であり、例えば特定の内在性遺伝子の発現抑制によって低下した機能を解析することは、当該機能を増強するための手段を探索するうえで重要な情報を提供する。
ALSVはもともとリンゴから分離された潜在性のウイルスであり、リンゴ、ナシ、モモなどの果樹類では病気を引き起こすことなく無病徴感染するというウイルスベクターとして非常に優れた特性を有しており、リンゴをはじめとするバラ科果樹におけるVIGSを利用したポストゲノム解析への利用が期待されている。また、このALSVベクターによるVIGSは、形質転換が困難なリンゴ、ナシ、モモ等のバラ科果樹において大いに期待される技術である。しかしながら、これまでに、ALSVベクターによるリンゴへの外来性遺伝子の導入が報告されているものの(特許文献2)、一般的に果樹類へのALSV接種の効率は非常に低く、また、再現性のある結果は得られていない。例えば、従来のカーボランダム法並びに切りつけ法による組換えALSVのリンゴへの接種では、感染率は最大でも約20%程度であり、実験区によっては全く感染が確認できない場合も多くあった。この接種効率の不安定さは、ALSVベクター技術のバラ科果樹への利用を阻んできた最も大きな要因であり、ALSVベクター技術をバラ科果樹に利用していくためには、ALSVベクターのバラ科果樹への安定した感染系の確立が不可欠である。
本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、特にバラ科果樹への組換えALSV(すなわち、VIGSのための内在性遺伝子を含むALSV)を効率よく接種するための方法を提供することを課題としている。
本願は、前記の課題を解決するものとして、以下の工程:
(1)リンゴ果樹の内在性遺伝子を含む組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)を増殖宿主に接種し、
(2)増殖宿主よりRNAを単離し、
(3)発根直後のバラ科果樹実生の子葉に前記RNAを接種する、
を含むことを特徴とするバラ科果樹内在性遺伝子の発現抑制方法を提供する。
またこの方法では、増殖宿主より単離したRNAを、パーティクルガン法を用いて子葉に接種すること、そしてこの場合のRNAが、増殖宿主より抽出・濃縮した組換えALSVから単離したRNA(濃縮ALSV RNA)、または増殖宿主の感染葉から抽出した全RNAであることを好ましい態様としている。
本願発明によれば、従来方法に比べて遙かに効率よく(80〜100%)、組換えALSVをリンゴ等のバラ科果樹に感染させることができ、内在性遺伝子のジーンサイレンシング(VIGS)を効率良く誘導することが可能となる。
Biolistic PDS-1000/He Particle Delively System(Bio-Rad)を用いて組換えALSVを接種するリンゴ実生苗の状態の写真像。上段は、接種時の状態であり、実生苗4〜6個体をシャーレに同心円状に並べる。根と胚軸は湿らせたキムワイプで覆われている。中段は、接種後5日後の状態であり、下段は、接種後15日後の状態である。 野生型ALSV感染個体(wtALSV:左)、MdrbcS-ALSV感染個体(中)、Mdactin-ALSV感染個体(右)のそれぞれの写真像である。
本願発明におけるバラ科果樹とは、特にバラ科ナシ亜科(Maloideae)に属するリンゴ、ナシ、モモ、ビワ等を言う。
バラ科果樹の内在性遺伝子は、当該植物のゲノムDNAに存在し、当該植物の発生、成長、個体形成、各種タンパク質等の産生や代謝などに機能する遺伝子全般を意味する。
この内在遺伝子は、バラ科果樹から定法によって単離したゲノムDNAや、ゲノムDNAから転写されたmRNAを鋳型とするcDNAとしてALSVベクターに組込むことができる。なお、ALSVベクターに組込む内在性遺伝子DNAは、対象とする植物と同種の植物遺伝子であることが好ましいが、相同性の高い遺伝子であれば、別種植物の対応する遺伝子DNAを用いることができる。例えば、リンゴ遺伝子を含む組換えALSVを用いて、ナシやモモ等の他のバラ科果樹の高い相同性を有する当該遺伝子を発現抑制することができる。
バラ科果樹に接種する組換えALSVベクターの作製は、基本的には特許文献2に開示された方法に従って行うことができる。すなわち、ALSV RNA2の感染性cDNAクローンであるpEALSR2L5R5のクローニングサイトに内在性遺伝子のcDNAを挿入して組換え感染性cDNAクローンを構築する。次いでこの組換え感染性cDNAクローンを、ALSV RNA1の感染性cDNAクローンであるpEALSR1とともに増殖宿主に接種しウイルス化を行うことで組換えALSVを得ることができる。
このようにして得た組換えALSVのバラ科果樹への接種は、以下の手順で行うことができる。
工程(1):リンゴ果樹の内在性遺伝子を含む組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)を増殖宿主(例えば、キノア)に接種する。
工程(2):増殖宿主よりRNAを単離する。
工程(3):発根直後のバラ科果樹実生の子葉に前記RNAを接種する。
増殖宿主より単離したRNAは、増殖宿主の感染葉より抽出・濃縮した組換えALSVから単離したRNA(濃縮ALSV RNA)、もしくは、増殖宿主の感染葉から抽出した全RNAである。
このRNAは、好ましくは、パーティクルガン法を用いて接種する。
また、工程(3)における「発根直後のバラ科果樹実生の子葉」は以下の様に調製する。休眠終了後の発根間もない実生苗の種子の種皮をメスで除去し、子葉を露出させる。そして、RNAを塗布したマイクロキャリアをパーティクルガンを用いて子葉に接種する。
これらの具体的操作は、後記実施例に詳細に記載されており、実施例の記載に従って実施することができる。
このようにして接種した組換えALSVは、約80〜100%もの高い割合で植物に感染し、効率よく内在性遺伝子の発現抑制を示す。
RNAを接種した種子は、遮光して湿度を保った状態で2〜3日静置したのち、徐々に外気に馴化させ、その後培養土に移植して、通常の生育温度(約25℃)で育成する。これによって、内在性遺伝子を発現抑制するバラ科果樹を効率良く作出することができる。
以下、実施例を示して本願発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本願発明は以下の例によって限定されるものではない。
本願発明方法により組換えALSVをリンゴに接種し、リンゴ内在性遺伝子(アクチン遺伝子、ルビスコ小サブユニット遺伝子)の発現を抑制した。
1.材料および方法
(1)供試植物
Chenopodium quinoa(以下キノア)をALSVの増殖宿主として供試した。また、組換えALSVを接種するバラ科果樹としてリンゴを用いた。
(2)リンゴ遺伝子のクローニング
リンゴ由来のアクチン(Mdactin)遺伝子mRNA(GenBank Accession No. DQ822466)およびリンゴのルビスコ小サブユニット(MdrbcS)遺伝子mRNA(GenBank Accession No. L24497)の配列をもとに設計したプライマーを用いて、以下のようにリンゴ葉から抽出したRNAから各遺伝子の一部をPCRにより増幅後クローニングした。
リンゴのRNAの抽出は以下のように行った。−80℃で凍結させたリンゴ葉(0.05g)と4.8mmサイズのステンレスビーズ(トミー精工)を2.0mlサンプルチューブ(アシスト)に入れ、Micro Smash MS-100R(トミー精工)を用いて破砕した。60℃に保温しておいた500μlのRNA抽出緩衝液[2% CTAB, 2% PVP K-30, 0.1M Tris-HCl(pH8.0),25mM EDTA(pH8.0),2M NaCl, 2% メルカプトエタノール]を加え、よく混和した後、60℃で15分間、ときどき混和しながら保温した。処理後、Micro Smash MS-100Rを用いて室温で2分間激しく混和し、さらに60℃で15分間ときどき混和しながら保温した。500μlのクロロホルムを加え、2分間攪拌したあと、14,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい1.5ml容チューブに移した。チューブに等量のクロロホルムを加えて激しく攪拌後、14,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。遠心分離後、315μlの水層を新しい1.5ml容チューブに移し、105μlの7.5M LiClを加えて完全に混和した。-20℃に1時間静置後、14,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、得られた沈殿に1mlの70%エタノールを加えて洗浄した。70%エタノールをほぼ完全に取り除いた後、44μlのRNase free H2Oに沈殿を溶解した。この溶液に5μlの10 X Dnase I Buffer(TaKaRa)、1μlのDNase I-RNase free(TaKaRa)を加え、37℃で30分間静置した。150μlの滅菌水を加え、続いて水飽和フェノールとクロロホルムを100μlずつ加え、5分間攪拌した。14,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清200μlを新しいマイクロチュ−ブに移し、等量のクロロホルムを加え、5分間攪拌した。14,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清150μlに15μlの3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)と450μlの99%エタノ−ルを加えて−80℃で30分間静置した。14,000rpm、4℃で15分間遠心分離し、得られた沈殿に1mlの70%エタノールを加え、再び14,000rpm、4℃で5分間遠心分離し、減圧乾燥して12μlの滅菌水に懸濁し、分光光度計(ND-1000 v3.1.2)で定量し、得られたRNAを1000ng/μlに調整したRNA溶液とした。
逆転写反応は以下のようにして行った。1μl のRNA溶液(1000ng/μl) 、1μl の10μM Oligo(dT)12プライマー、2μl の2.5mM dNTP mixture(TaKaRa)、4μl の5 X RT Buffer (TOYOBO)、0.5μl のRNase Inhibitor(TaKaRa)、1μl のReverTra Ace (TOYOBO)、10.5μlの滅菌水を混合して20μlとし、TaKaRa Thermal Cycler Dice(TaKaRa)を用いて42℃で5分間、42℃で45分間、99℃で5分間、最後に4℃で5分間反応させた。
PCRのプライマーには、リンゴのactin遺伝子cDNAを増幅する
Mdactin(+)[5’-tccttcgtcttgaccttgct-3’](配列番号1)と
Mdactin(−)[5’-acggaatctctcagctccaa-3’](配列番号2)、
MdrbcS遺伝子cDNAを増幅する
MdrbcS(+)[5’-gacgagaaagcagagagaga-3’](配列番号3)と
MdrbcS(−)[5’-cgatgatacggatgaaggat-3’](配列番号4)の組み合わせを用いた。
10μlのcDNA溶液、各2.5μlの合成プライマー(10μl)、5μl の10 X PCR buffer(TaKaRa)、4μl の2.5mM dNTP mixture(TaKaRa)、0.5μlのEx-Taq(2.5U/μl TaKaRa)、25.5μlの滅菌水を混合し、TaKaRa Thermal Cycler Dice(TaKaRa)にセットした。初め94℃で5分間熱変性し、続いて94℃で30秒、アニ−リングを55℃で30秒、DNA相補鎖の伸長を72℃で1分という過程を1サイクルとして、30サイクル行い、その後72℃で7分間処理した。PCR終了後、1μlの反応液と0.1μlの10Xloading Buffer(1%SDS,50%グリセロ−ル,0.05%ブロモフェノールブルー)を混合し、1%アガロ−スゲル(0.1 μg/mlの臭化エチジウムを含む)で電気泳動(100V)してPCR産物のサイズを確認した。泳動には1XTAE Buffer(40mM Tris-酢酸,1mM EDTA)を使用し、分子量マ−カ−にはλファージのHindIII断片を用いた。
PCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて次のようにゲルから回収した。上記のPCR反応液をマイクロチューブに移し、5μlの3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)と150μlの99%エタノ−ルを加えて−80℃で15分間静置した。14,000rpm、4℃で15分間遠心分離し、得られた沈殿に1mlの70%エタノ−ルを加え、再び14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。沈殿を減圧乾燥して20μlのTEに懸濁後、全量を1%アガロースゲルで電気泳動した。バンドをカッターで切り出し、マイクロチューブに入れた後、3倍容のBufferQGを加え、50℃で10分間インキュベ−トした。ときどき懸濁して完全にゲルが溶けたのち、ゲルと同容量のイソプロパノールを入れて撹拌した。QIA quick spin columnにcollection tubeを取り付け、これに溶液を移して14,000rpm、室温で1分間遠心した。その後collection tube内の液を捨て、再びQIA quick spin columnにcollection tubeを取り付けて0.75mlのBuffer PEを加え、14,000rpm、室温で1分間遠心した。同様にcollection tube内の液を捨て、再び13,000rpm、室温で1分間遠心した。QIA quick spin columnをマイクロチューブに移し、columnに30μlのTEを添加して1分間放置後、14,000rpm、室温で1分間遠心し、約28μlを溶出した。
精製したPCR産物をpGEMR-T Easy Vector Systemsを用いて以下のようにライゲーションした。マイクロチューブに3μlの精製PCR産物、1μlのpGEMR-T Easy Vector、5μlの2XRapid Ligation Buffer 、そして1μlのT4 DNA Ligaseを混合し、16℃で2時間インキュベートした。続いて10μlのライゲ−ション産物を以下のように大腸菌(DH5α)にヒートショック法で形質転換した。−80℃で凍結保存しておいたDH5α(100ml)を氷上でゆっくり溶解し、これに10μlのライゲーション産物を加え、軽く攪拌後、氷上に30分間静置した。続いて42℃で45秒間インキュベートし、ただちに氷上に2分間静置した。37℃に加温した900μlのSOC(1LのSOCあたりTrypton peptone 20g、Yeast Extract 5g、NaCl 0.58g、KCl 0.19g、1M MgCl・6H2O 10ml、1M MgSO4・7H2O 10ml、グルコ−ス 10ml)を加え、37℃で1時間振盪培養した。LMAプレートに培養液200μlを塗り広げて風乾後、37℃で16時間培養した。形成されたコロニ−を爪楊枝を用いて試験管(2mlのLB培地に4μlのアンピシリンを加えた培地)に移植し、37℃で14〜16時間振盪培養した。
プラスミドの抽出は煮沸法により以下のように行った。培養液をマイクロチューブに移し、14,000rpm、室温で1分間遠心後、上清を除去した。沈殿に350μlのSTET〔0.1M NaCl,10mM Tris-HCl(pH8.0),1mM EDTA(pH8.0),5%TritonX-100〕を加えて懸濁し、25μlのリゾチ−ム溶液〔10mg/mlのリゾチ−ム,10mM Tris-HCl(pH8.0)〕を加えて3秒間攪拌した後、40秒間沸騰水につけ、直ちに氷水に入れた。14,000rpm、室温で20分間遠心し、沈殿を爪楊枝で除去し、上清に420μlのイソプロパノールと3M酢酸ナトリウム40μlを加えて攪拌後、室温で5分間静置した。続いて14,000rpm、4℃で5分間遠心した。上清を除去した後、1mlの70%エタノ−ルを加え14,000rpm、4℃で2分間遠心し、沈殿を減圧乾燥した。30μlのTE Buffer〔10mM Tris-HCl(pH8.0),RNase A(20 μg/ml)〕を加えて懸濁し、37℃で30分間静置した。
得られたプラスミド2μlを1%アガロ−スゲルで電気泳動し、インサートが挿入されていると考えられるプラスミドを選抜した。選抜したプラスミドを制限酵素EcoRIで処理し、再び1%アガロ−スゲルで電気泳動し、インサートが挿入されているかを確認した。制限酵素処理は2μlのプラスミドに0.2μlの制限酵素、1μlの各制限酵素に至適なbuffer、6.6μlの滅菌水を加えて混合し、37℃で2時間静置して行った。
インサートが挿入されたプラスミドを次のように精製した。46μlのプラスミドDNAに150μlのTEを加え、TE飽和フェノールとクロロホルムを100μlずつ加えて3分間懸濁し、14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。水層を新しいマイクロチュ−ブに移し、上記と同様の方法でエタノール沈殿した。50μlのTEに懸濁後、50μlのPRG溶液(13%ポリエチレングリコール6000,1.6M NaCl)を加え、氷上で1時間静置した。14,000rpm、4℃で20分遠心分離し、沈殿に1mlの70%エタノールを加えて14,000rpm、4℃で5分遠心分離した。沈殿を減圧乾燥し、30μlの滅菌水で懸濁して吸光度を測定した。
精製したプラスミドは次のようにシークエンス分析した。シークエンス分析に供試する泳動試料の調製はBigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて次のように行った。PCRチューブに2μlのReady reaction Premix、1μlのBigDye Sequencing Buffer、1.6μlのプライマー[ACUNI6745(+)](1.6μM)、1μlの精製プラスミドDNA(300ng/μl)、4.4μlの滅菌水を加えて混合し、TaKaRa Thermal Cycler Diceにセットし、94℃で30秒間、50℃で15秒間、60℃で4分間を30サイクル反応させた。反応終了後、10μlの滅菌水、2μlの125 mM EDTA(pH8.0)、2μlの3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)、60μlの99%エタノールを加えて混合し、遮光下、室温で15分間静置した。14,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、得られた沈殿に500μlの70%エタノールを加えて再び14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。再び得られた沈殿に100μlの70%エタノールを加えて14,000rpm、4℃で5分間遠心分離し、沈殿を減圧乾燥して25μlのHi-Di Formamideに懸濁した。これを95℃で2分間熱変性し、氷上で5分間静置して泳動試料とした。
試料の泳動はABI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems)のマニュアルに従って行った。泳動試料をMicroAmp 96-well Reaction Plateに加え、プレートアセンブリーを組み立てオートサンプラーにセットした。キャピラリー長は80cm、ポリマーはPOP-4、泳動緩衝液には1×TBEを用いた。次にプレートレコードを作成し、サンプル名、泳動条件および解析条件などを設定した。Mobility FileはDT3100POP4{BDv3}v1.mob、Dye SetはZ、BioLIMS Projectは3100_Project1、Run ModouleはLongSeq80_POP4Defaulymodule、そしてAnalysis moduleはBC-3100APOP_80cm_SeqOffFtOff.sazに設定して泳動した。泳動終了後、BI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzerのマニュアルに従い、泳動データを塩基配列に変換し、得られた塩基配列データを遺伝子情報処理ソフトのDNASIS for windows ver.2.1を用いて解析した。配列を確認したプラスミドをそれぞれpGEM Mdactin、pGEM MdrbcSとした。
(3)ALSVベクターへの内在性遺伝子の導入とウイルス化
ALSV RNA2の感染性cDNAクローンであるpEALSR2L5R5に上記でクローニングした各遺伝子、すなわちMdactinおよびMdrbcS断片を以下の方法でそれぞれ組み込んだ。
pGEM Mdactinを鋳型に、MdactinXho(+)[5’-tacatctcgagcttgctggtcgtgacctc-3’](配列番号5)とMdactinBam(−)[5’-tacatggatccttggccatcgggaagctc-3’](配列番号6)、pGEM MdrbcSを鋳型にMdrbcSXho(+)[5’-tacatctcgagggtaccgtggctacagtt-3’](配列番号7)とMdrbcSBam(−)[5’-tacatggatccaggaaggtaagagagggt-3’](配列番号8)のプライマーの組み合わせでPCRを以下のように行った。
10 μlの鋳型cDNA溶液(20ng/μl)、各2.5μlの合成プライマー(10μM)、5μl の10xPCR buffer(TaKaRa)、4μl の2.5mM dNTP mixture(TaKaRa)、0.5μlのEx-Taq(2.5U/μl TaKaRa)、25.5μlの滅菌水を混合し、上記と同様の方法で行った。反応後、1μlを1%アガロースゲルで電気泳動しバンドのサイズを確認した。
続いてPCR産物全量をマイクロチューブに移し、上記と同様の方法でフェノール・クロロホルム抽出およびエタノ−ル沈殿を行った。これに10μlの各制限酵素に至適なbuffer、86μlの滅菌水を加え、沈殿(Mdactin、MdrbcS)をそれぞれ懸濁した。2μl のBamHIとXhoIで処理し、1%アガロース電気泳動後、上記と同様の方法でDNAを回収してインサートDNAとした。この操作と平行して2μlのpEALSR2L5R5GFP(1μg/μl)をBamHIとXhoIで処理後、ゲル回収したものをベクターDNAとした。
インサートDNAとベクターDNAをTaKaRa ligation Kit Ver 2.1(TaKaRa)を用いてライゲーション反応を行った。1μlのベクターDNA、4μlのインサートDNAおよび5μlのI液を加えて混合し、16℃で3時間インキュベートした。10μlのライゲーション産物を上記と同様の方法で大腸菌DH5αへ形質転換した。プラスミドを抽出後、DNAを1%アガロ−スで電気泳動し、pEALSR2L5R5よりも移動度の遅いプラスミドを選抜し、BamHIとXhoIで処理して目的のインサートの含まれているクローンを選抜した。
インサートが挿入されているプラスミドをQIAGEN Plasmid Midi(QIAGEN)を用いて精製した。500ml坂口フラスコに100mlのLB培地と200μlのアンピシリン(25mg/μl)を分注し、インサートの含まれていたクローンのコロニーを爪楊枝で移し、180rpm、37℃で14〜16時間振盪培養した。培養液をファルコンチューブに移して7,000rpm、4℃で15分間遠心し、上清を除去した。沈殿に4mlのbuffer P1を加えて懸濁し、さらに4mlのbuffer P2を加えて4〜6回全体が混ざるようにゆるやかに回した後、室温で5分間静置した。4mlのBuffer P3を加えて回した後、氷上で15分間静置し、13,000rpm、4℃で30分間遠心した。上清を他の遠心管に移し、13,000rpm、4℃で15分間遠心した。4mlのbuffer QBTで平衡化したQIAGEN-Tip100に上清を移し、プラスミドDNAを結合させた。QIAGEN-Tip100に10mlのbuffer QCを加えて洗浄し、さらにこの操作をもう一度繰り返した。QIAGEN-Tip100に5mlのBuffer QFを加え、溶出液を回収し、3.5mlのイソプロパノールを加え攪拌後、11,000rpm、4℃で30分間遠心した。沈殿に2mlの70%エタノールを加え11,000rpm、4℃で10分間遠心し、沈殿を減圧乾燥後、450μlのTEに懸濁した。260nm吸光度を計測して濃度を調べた後、1μg/μlになるように調製した。
構築したプラスミドをそれぞれpEALSR2L5R5Mdactin、pEALSR2L5R5MdrbcSとした。
構築した各クローン(pEALSR2L5R5Mdactin、pEALSR2L5R5MdrbcS)とALSV RNA1の感染性cDNAクローンであるpEALSR1(1μg/μl)をそれぞれ等量ずつ混合し、カーボランダム法によってキノア(8葉期)の第3葉から第6葉に8μlずつ接種した。またpEALSR2L5R5とpEALSR1も同様に混合してキノアに接種した。ウイルス化により病徴が現れた葉をサンプリングし、これらのウイルスをMdactin-ALSVおよびMdrbcS-ALSVとして以後の操作に用いた。
(4) ウイルスの濃縮
組換えALSV(Mdactin-ALSVおよびMdrbcS-ALSV)の濃縮は以下の手順で行った。まず、組換えALSVをChenopodium quinoa(以下キノア)に接種後、7〜10日の接種葉と病徴の現れた上葉をサンプリングした。この感染葉100gに対し、300mlの抽出緩衝液 [0.1M Tris-HCl(pH7.8),0.1M NaCl,5mM MgCl2]と3mlのメルカプトエタノールを加えてワーリングブレンダーで磨砕した。磨砕液を2重ガーゼでろ過し、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離(日立RPR12-2ローター)した。得られた溶液に、ベントナイト溶液(40mg/ml)を攪拌しながら静かに加え、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離した。上清が透明な黄色になるまでこの作業を繰り返し清澄化した。次に、上清にポリエチレングリコールを8%になるように加え、氷中で1時間攪拌した。9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離した後、沈殿を20mlの抽出緩衝液に溶解した。続いて10mlのクロロホルムを加えて15分間(4℃)攪拌した。9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離(日立RPR16ローター)後、上清を45,000rpmで1.5時間(4℃)遠心分離(日立RP65ローター)した。沈殿に1mlの抽出緩衝液を加えて十分に懸濁した後、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離しこの上清を濃縮Mdactin-ALSVおよび濃縮MdrbcS-ALSVとした。
(5) RNAの抽出
濃縮Mdactin-ALSVおよび濃縮MdrbcS-ALSVからRNAを抽出し、マイクロキャリアの調製に用いた。濃縮組換えALSVからのRNAの抽出は以下の手順で行った。濃縮組換えALSV 50μlに滅菌水150μlを加え撹拌した後、水飽和フェノールとクロロホルムを100μlずつ加えてボルテックスミキサーで十分に攪拌した。14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離後、上清200μlを新しい1.5ml容チューブに移し、20μlの3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)、500μlの99%エタノールを加え、十分に撹拌した後、-80℃で15分間静置した。14,000rpmで15分間(4℃)遠心分離して得られた沈殿に70%エタノール1mlを加えて14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、15μlの滅菌水に懸濁した。分光光度計(ND-1000 v3.1.2)で得られた溶液を1μg/μlに調整し、これを濃縮ALSV RNA溶液とした。また、MdrbcS-ALSV感染キノア葉から全RNAを抽出した。まず、MdrbcS-ALSV感染キノア葉0.5gを完全に凍結し、乳棒と乳鉢を用いてパウダー状になるまで完全に破砕した。破砕後、植物体がとけないうちに、速やかに5mlのTri Reagent (シグマ)を乳鉢に加え、よくすり混ぜて完全に混和・懸濁した。懸濁液をチューブに移し取り、5分間室温で放置した後、1mlのクロロホルムを加え、30秒間激しく振り混ぜて、完全に混和・懸濁した。懸濁液を10分間室温で静置した後、14,000rpm、4℃で15分間遠心分離を行い、懸濁液を水層と有機溶媒層に分画した。水層(約2.5ml)を新しいチューブに移し取り、等量の2-プロパノールを加えて完全に転倒混和し、10分間室温で静置した後14,000rpm、4℃で10分間遠心分離を行い、全RNAを沈殿させた。上清を捨て、75%エタノールを加えてボルテックスミキサーで激しく攪拌することにより、全RNA沈殿を洗浄した。攪拌後、14,000rpm、4℃で5分間遠心分離を行い、全RNAを再び沈殿させた。上清をピペットマンで取り除いた後全RNAの沈殿を150μlのRNase free H2Oに溶解した。分光光度計(ND-1000 v3.1.2)で得られた溶液を3μg/μlに調整し、これを感染葉全RNA溶液とした。
(6)パーティクルガン接種(Biolistic PDS-1000/He Particle Delively System(Bio-Rad))
マイクロキャリア(RNA;3μg/金粒子;0.4mg/shot)の調製は以下の手順で行った。まず、1.5ml容チューブに金粒子(0.6μm)を2.4mg量り取り、滅菌水100μlを加えボルテックスミキサーで十分に混和した。超音波洗浄機にチューブを入れ、5分間ソニケーションした。ボルテックスミキサーにチューブをセットし撹拌しながら18μlの濃縮ALSV RNA溶液(1μg/μl)を静かに加えた。同様に、5M 酢酸アンモニウムを11.8μl、続いてイソプロパノールを259.6μl静かに加えた。しばらく撹拌した後、−20℃で1時間以上静置した。上清を取り除き金粒子の沈殿をボルテックスミキサーで一瞬撹拌した。金粒子の沈殿に1mlの100%エタノールを加え、沈殿を崩さないように静かに振盪し、その後上清を取り除いた。この作業を4回繰り返した後に60μlの100%エタノールに金粒子を懸濁した。懸濁液10μlをマイクロキャリアの中心に約1cmに塗り広げ十分乾燥させた後に、パーティクルガンを用いて植物への導入を行った。パーティクルガンを用いた接種試験には発根して間もないリンゴの種子4〜6個体を1試験区として供試した。根と胚軸は湿らせたキムワイプで覆い、約4℃で保存した(図1、上段)。種皮をメスで取り除きシャーレに同心円状に並べ、その子葉にヘリウム圧1100psiでBiolistic PDS-1000/He Particle Delively System(Bio-Rad)を用いて1試験区あたり4shot行った。
(7) パーティクルガン接種(Helios Gene Gun System(Bio-Rad))
マイクロキャリア(RNA;5μg/金粒子;0.25mg/shot)の調製は以下の手順で行った。まず、1.5ml容チューブに金粒子(1.0μm)を7.5 mg量り取り、滅菌水100μlを加えボルテックスミキサーで十分に混和した。超音波洗浄機にチューブを入れ、5分間ソニケーションした。ボルテックスミキサーにチューブをセットし撹拌しながら50μlの感染葉全RNA溶液(3μg/μl)を静かに加えた。同様に、5M 酢酸アンモニウムを15μl、続いてイソプロパノールを330μl静かに加えた。しばらく撹拌した後、−20℃で1時間以上静置した。上清を取り除き金粒子の沈殿をボルテックスミキサーで一瞬撹拌した。金粒子の沈殿に1mlの100%エタノールを加え、沈殿を崩さないように静かに振盪し、その後上清を取り除いた。この作業を4回繰り返した後に5ml容チューブに100%エタノールを用いて金粒子を移し取り、最終的に1800μlの100%エタノールに金粒子を懸濁し、ゴールドコートチューブの調製に使用した。チュービングプレップステーション(BIO-RAD)にゴールドコートチューブ(BIO-RAD)をセットし、純窒素ガスを20分間通してゴールドコートチューブの内部を完全に乾燥させた。続いて金粒子の懸濁液を、均一になるようゴールドコートチューブ内に充填し、5分間放置して金粒子をゴールドコートチューブに沈着させた後、上清の99.5%エタノールをゴールドコートチューブ内から取り除いた。続いてチュービングプレップステーションを回転させ、金粒子をゴールドコートチューブ内部に均一に拡散させながらゴールドコートチューブ内に純チッソガスを通し、金粒子を完全に乾燥させた。続いてゴールドコートチューブを、チューブカッター(BIO-RAD)を用いて30個に裁断し、パーティクルガンを用いて植物への導入を行った。発根して間もないリンゴ種子の種皮をメスで取り除き、その子葉に接種した。接種はヘリウム圧220psiでHelios Gene Gun System(Bio-Rad)を用いて1個体あたり4shot行った。
(8) 接種個体の育成
接種個体は湿度を保ち、遮光条件下で2〜3日静置した後に、徐々に外気に馴化させ、その後培養土に移植し、培養室(25℃、明期16時間-暗期8時間)で育成した(図1、中段、下段)。
2.結果
MdrbcS-ALSV感染個体では、接種後3週間程度で第3、4本葉あたりから葉の退緑症状が観察でき、さらにそれ以降の上位葉では葉の全面が退緑した(図2、中)。また、MdrbcS-ALSV感染個体は矮化し、3ヶ月程度を経過すると枯死しまう場合が多かった。
Mdactin-ALSV感染個体では、葉のねじれや奇形症状が接種後約1ヶ月から確認でき、これらの症状は生育期間を通して観察された(図2、右)。このMdactin-ALSV感染個体も接種後数ヶ月を経過するとそのほとんどが枯死してしまった。
MdrbcS-ALSV感染葉からRNAを抽出し、rbcS遺伝子の発現解析を行った。rbcSのRNAプローブを用いたノーザンブロット解析により、rbcS mRNAが著しく減少していることが明らかになった。同様に低分子RNAを解析した結果、siRNAが検出された。さらに、半定量的RT-PCRによる解析でも、rbcS mRNAの著しい減少が見られた。
以上詳しく説明したように、本願発明によって、リンゴやナシ等のバラ科果樹の内在性遺伝子の発現を効率よく抑制することが可能となる。これは、リンゴやナシ等のバラ科果樹の品種改良に必要なゲノム解析の有力な手法となる。

Claims (2)

  1. 以下の工程:
    (1)リンゴ内在性遺伝子を含む組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)を増殖宿主に接種し、
    (2)増殖宿主よりRNAを単離し、
    (3)発根直後のリンゴ種子種皮を取り除いて露出させた子葉にパーティクルガン法を用いて前記RNAを接種する、
    を含むリンゴ内在性遺伝子の発現抑制方法。
  2. RNAが、増殖宿主より抽出・濃縮した組換えALSVから単離したRNA(濃縮ALSV RNA)、または増殖宿主の感染葉から抽出した全RNAである請求項1の方法。
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