JP5397613B2 - 電極の性能評価方法および電極の性能評価装置 - Google Patents

電極の性能評価方法および電極の性能評価装置 Download PDF

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Description

本発明は、電気化学測定により電池のアノード反応またはカソード反応を評価する電極の性能評価方法および電極の性能評価装置に関する。
溶存化学種の電極反応は一般的に、(1)反応物質の電極表面への物質輸送、(2)電極表面上での電荷移動反応、(3)生成物の電極表面からの逸脱、の3つの過程を経て進行する。電極反応はいずれかの過程により支配(律速)される。
上記(2)の電極活性を解析できる方法として、回転リングディスク電極(PRDE)を用いる方法がある(特開2009−98087号公報)。この方法では、ディスク電極を回転させることにより上記(1)(3)の物質移動速度を制御し、上記(2)の電極活性を再現性よく定量的に解析できる。電極を電極液に浸して回転させると、電極近傍の溶液は渦を描きながら電極平板に沿って動き、その分の電解液が電極面に垂直方向から供給される。溶液内に生ずる対流は回転数が大きいほど早く、その影響が電極近くまで及ぶ結果、拡散層が薄くなって拡散速度が速くなり、限界拡散電流が大きくなる。さらに、回転軸のやや外側に設置されているリング電極に反応中間体が輸送され反応が起きると、リング電極の電流として検出される。ディスク電極の拡散限界電流値(iL -1)と回転速度(ω)は式(1a)で示す関係を有する。
L=0.62nFD2/3ω1/2ν-1/6c ・・・式(1a)
ただし、nは反応電子数、Fはファラデー定数、Dは拡散係数、ωは電極の回転角速度、νは溶液の動粘度、cは反応物質のバルク濃度である。
すなわち、完全な拡散律速状態(拡散限界電流が観測される状態)のとき、測定電流はω1/2に対して原点を通る直線となる。しかし、拡散律速から活性化電流律速へ移行していくと、測定電流は式(1b)で表現されるようになる。
-1=ik -1+iL -1
=ik -1+(0.62nFD2/3ω1/2ν-1/6c)-1 ・・・式(1b)
式(1b)の右辺第1項(ik -1)は活性化電流の逆数であり、回転数に依存せず、過電圧に依存する。第2項(iL -1)は拡散限界電流の逆数であり、回転数に依存した物質移動抵抗を意味する。各回転数に応じた測定電流値をプロットし、ω-0.5とi-1の関係を描くことで、その切片から活性化電流を推測でき、傾きから未知パラメータが求まる。
また、特開2009−98087号公報には、チャンネルフロー二重電極(CFDE)を用いた測定法が記載されている。この方法では、ポンプでチャンネル内に層流の溶液を流すことで反応物の拡散を制御でき、安定な拡散層が形成され短時間で定常状態が得られる。また、作用極の下流に検出電極を設けることで、反応中間体の検出が可能である。この測定法では、拡散律速では式(2a)が、活性化電流律速へ移行してくると式(2b)が、それぞれ成立する。
L=1.165nFcw(Um22/h)1/3 ・・・式(2a)
-1=ik -1+iL -1
=ik -1+{1.165nFcw(Um22/h)1/3-1 ・・・式(2b)
ただし、Umは平均流速、hはチャネル高さの半分、xは電極長さ、wは電極幅である。
特開2009−98087号公報
上記の方法は、電極を開発する手法として用いられる。例えば、燃料電池に用いられる触媒単体の評価にも用いることができる。しかし、これらの方法では、イオン輸送媒体として電解質媒体を使用しており、ガスをイオン輸送媒体として導入し測定することはできない。燃料電池アセンブリ状態(燃料電池として組まれた状態)では、固体高分子電解質膜が存在し、燃料電池にガスを導入するため、電極の動力学特性は溶液系とは異なる。また、実際の燃料電池では複数の要素が相互に影響しあって電極性能を発揮する。このため、要素単位(触媒・拡散層など)で高性能なものを開発し組み合わせても、相互の相性などの影響で必ずしも良好な性能を得ることはできない。そこで、燃料電池の実質的な電極特性を把握するには、アセンブリ状態での総合的な評価が必要となる。しかし、従来の方法ではアセンブリ状態での評価を行うことができない。
本発明の目的は、電池アセンブリ状態における電極の評価が可能な電極の性能評価方法および電極の性能評価装置を提供することにある。
本発明の電極の性能評価方法は、電気化学測定により電池のアノード反応またはカソード反応を評価する電極の性能評価方法において、アセンブリ状態での電池に与える供給ガスのガス流速を変化させながら電気化学測定により電流特性を取得するステップと、アセンブリ状態での前記電池に与える供給ガスのガス圧のみを変化させながら電気化学測定を行うことで、前記ガス圧に基づく前記電流特性の変化量を取得するステップと、前記電流特性を取得するステップで得られた前記電流特性から、前記変化量を取得するステップで取得された前記変化量を差し引くことで、前記供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求めるステップと、を備えることを特徴とする。
この電極の性能評価方法によれば、供給ガスのガス流速を変化させながら取得された電流特性からガス圧に基づく電流特性の変化量を差し引くことで、供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求めるので、電池アセンブリ状態における電極の性能を高い精度で把握できる。
前記成分を求めるステップで求められた前記成分に基づいて、前記アノード反応または前記カソード反応に関するパラメータを算出するステップを備えてもよい。
前記パラメータを算出するステップでは、前記成分を求めるステップで求められた前記成分から、過電圧を固定した条件下における前記供給ガスのガス流速と電流との関係を求めてもよい。
前記アセンブリ状態での電池に設けられ、前記電池のカソード側であって前記カソードよりも前記供給ガスの下流側に配置される検出極を用いて、過酸化水素水の発生状況を検出するステップを備えてもよい。
本発明の電極の性能評価装置は、電気化学測定により電池のアノード反応またはカソード反応を評価する電極の性能評価装置において、アセンブリ状態での電池に与える供給ガスのガス流速を変化させながら電気化学測定により電流特性を取得する手段と、アセンブリ状態での前記電池に与える供給ガスのガス圧を変化させながら電気化学測定を行うことで、前記ガス圧に基づく前記電流特性の変化量を取得する手段と、前記電流特性を取得する手段で得られた前記電流特性から、前記変化量を取得する手段で取得された前記変化量を差し引くことで、前記供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求める手段と、を備えることを特徴とする。
この電極の性能評価装置によれば、供給ガスのガス流速を変化させながら取得された電流特性からガス圧に基づく電流特性の変化量を差し引くことで、供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求めるので、電池アセンブリ状態における電極の性能を高い精度で把握できる。
前記成分を求める手段で求められた前記成分に基づいて、前記アノード反応または前記カソード反応に関するパラメータを算出する手段を備えてもよい。
本発明の電極の性能評価方法によれば、供給ガスのガス流速を変化させながら取得された電流特性からガス圧に基づく電流特性の変化量を差し引くことで、供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求めるので、電池アセンブリ状態における電極の性能を高い精度で把握できる。
本発明の電極の性能評価装置によれば、供給ガスのガス流速を変化させながら取得された電流特性からガス圧に基づく電流特性の変化量を差し引くことで、供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求めるので、電池アセンブリ状態における電極の性能を高い精度で把握できる。
燃料電池セルの電気化学測定方法を示すブロック図。 燃料電池セルへ供給するガスの流量を変化させながら取得した測定値に基づいて得られるボルタモグラム。 パラメータの算出方法を示す図であり、(a)は燃料電池セルへ供給するガスの圧力を変化させながら取得した測定値に基づいて得られるボルタモグラム、(b)はiD0〜iD3をプロットし、U-aとi-1の関係を描いた図。 固定電位でガス流速を変化させた場合の電流測定結果を示す図。 -aとi-1の関係(図3(b))を利用した劣化診断手法を示す図。 燃料電池セルに過酸化水素を検出するための電極を設けた例を示す図。 過酸化水素の発生状態を例示する図。
以下、本発明による電極の性能評価方法の一実施形態について説明する。
図1は、アセンブリ状態における燃料電池セルの電気化学測定方法を示すブロック図である。
図1に示す燃料電池セル1は単セルであり、Pt/C触媒が表面に修飾された電解質膜1を、それぞれガス拡散層(GDL)を有するアノード極12およびカソード極13により挟み込んで構成される。また、アノード側にはアノード極12から分割、絶縁された参照極12aが形成され、参照極12aはポテンショスタット2に接続される。
電気化学測定はアノード極12に水素、カソード極13に空気もしくは酸素を供給した発電状態において、3電極系で行われる。アノード特性を評価する際には、作用極をアノード極12、対極をカソード極13として、それぞれポテンショスタット2に接続する。また、カソード特性を評価する際には、作用極をカソード極13、対極をアノード極12として、それぞれポテンショスタット2に接続する。
図1に示すように、ポテンショスタット2には測定結果を記録するレコーダ3が接続されるとともに、レコーダ3を介して指令・演算装置4が接続される。指令・演算装置4は、ポテンショスタット2による電位規制の制御およびレコーダ3に記録された測定結果に基づく後述の演算処理(図2〜図5)を実行する。また、図1に示すように、指令・演算装置4には流量・圧力制御装置5が接続され、指令・演算装置4は流量・圧力制御装置5を介して、燃料電池セル1へ供給されるガスの流量・圧力を制御する。流量・圧力制御装置5には、燃料電池セル1に供給されるガスの流量を計測するガス流量計、および燃料電池セル1に供給されるガスの圧力を計測するガス圧力計が接続され、これらの計測値の記録やこれらの計測値に基づくフィードバック制御が指令・演算装置4により実行される。
次に、電気化学測定方法の手順について説明する。
ポテンショスタット2による電位規制は、指令・演算装置4に入力された測定条件に従って実行される。測定値(電流値)はレコーダ3に記録される。アノード特性を評価する際には、アノード極12を作用極とし、参照極12aの電位を基準として作用極の電位を高電位に制御して酸化反応を生じさせ、それぞれの規制電位で充分時間が経過した後の定常状態における電流値を上記測定値としてレコーダ3に記録する。同様にカソード特性を評価する際には、カソード極13を作用極とし、参照極12aの電位を基準として作用極の電位を低電位に制御して還元反応を生じさせ、それぞれの規制電位で充分時間が経過した後の定常状態における電流値を上記測定値としてレコーダ3に記録する。
測定中に燃料電池セル1へ供給するガスの流量および圧力は、指令・演算装置4に入力された測定条件に従って流量・圧力制御装置5により制御される。
図2は、燃料電池セル1へ供給するガスの流量を変化させながら取得した測定値(電流値)に基づいて得られるボルタモグラムを示している。この例では、燃料電池セル1へ供給するガスの流量をU0からU3まで4段階で変化させつつ(U0<U1<U2<U3)電流特性を測定し、ボルタモグラムを取得している。
ここで、アノード極12およびカソード極13におけるガス利用率が80〜90%程度のガス流量(U0)で、大気圧と等しいガス圧(P0)となる通常の運転状態での過電圧ηにおける電流をiD0 UOとする。
このとき、反応に必要なガスは充分に存在し、過電圧が大きいときの電流値は拡散性能によって支配されている。そのため、拡散層の厚さが変化しない程度にガス流量を多少変化させても電流は変化せず一意に求まる(電流iD0 UOが維持される)。しかし、通常の使用範囲を超える極端に大きなガス流量(U1,U2,U3)にした場合には、ガス流速の上昇に伴って拡散層が薄くなり拡散速度が増加する。このため、図2に示すように、それぞれのガス流量(U1,U2,U3)での電流(iD1 U1,iD2 U2,iD3 U3)は、ガス流量の増加に伴って大きくなる。ここでの「拡散層」とは、アノード極12およびカソード極13のガス拡散層(GDL)そのものでなく、Pt/C触媒粒子表面に形成される電気二重層の拡散層を指す。
しかし、上記のように極端にガス流量を大きくした場合、圧力制御弁を全開にした状態でもガス圧が初期値である大気圧(P0)よりも高くなってしまう。そのため、図2に示すように拡散電流が大きくなる因子としてはガス流量(流速)によるものだけでなく、圧力によるものも含むことになる。
図3(a)は、燃料電池セル1へ供給するガスの圧力を変化させながら取得した測定値(電流値)に基づいて得られるボルタモグラムを示している。この例では、燃料電池セル1へ供給するガス流量をU0に固定したまま、圧力制御弁の調整によりガス圧力をP0からP3まで4段階で変化させつつ(P0<P1<P2<P3)電流特性を測定し、ボルタモグラムを取得している。図3(a)に示すように、各ガス圧(P0,P1,P2,P3)における電流(iD0 P0,iD1 P1,iD2 P2,iD3 P3)は、ガス圧の上昇に伴って増加する。ここで、ガス流量(U0)およびガス圧(P0)が同一条件での測定値(電流)は同一であるから、iD0 U0=iD0 P0(=iD0)である。また、各ガス圧(P1,P2,P3)は、各ガス流量(U1,U2,U3)での測定時に圧力計が示した実際のガス圧とする。このため、図3(a)に示す測定値は、ガス流量(U0)およびガス圧(P0)を基準とし、そこからガス圧のみを変化させた場合の電流特性の変化を示すことになる。
ここで、図2に示すiD1 U1は、上記のようにガス流速に起因する要素とガス圧に起因する要素とを併せ持つ。これに対し、図3に示すiD1 P1からiD0 P0を差し引いたものは、流量をU0→U1にした際のガス圧起因の電流特性の変化とみなすことができる。そこで、
D1 U1−(iD1 P1−iD0 P0)=iD1
を求めることで、流速起因のみの成分を抽出することができる。同様に、図3に示すiD2 P2からiD0 P0を差し引いたものは、流量をU0→U2にした際のガス圧起因の電流特性の変化とみなすことができ、
D2 U2−(iD2 P2−iD0 P0)=iD2
を求めることで、流速起因のみの成分を抽出することができる。また、同様に、流量をU0→U3にした際の流速起因のみの成分は、
D3 U3−(iD3 P3−iD0 P0)=iD3
として抽出される。
図3(b)は、上記の手法により得られたiD0〜iD3をプロットし、U-aとi-1の関係を描いたものである。ここで、aは、U-aとi-1が直線関係を示すように選択された定数である。このグラフの切片ik -1の値から、過電圧ηにおける活性化電流(ik)を推測することができる。また直線の傾きから未知パラメータを求めることができる。ただし、このプロットは、拡散限界電流(iL)が原点を通りU-aに比例することを利用したものであるから(式(2a))、拡散限界電流(iL)が観測される過電圧ではik -1→0となる。すなわち、ik→∞(無限大)となるため、拡散限界電流に到達する前の活性化電流の影響を含んでいる過電圧範囲を選択して測定を行うことで、ikを求めることが可能となる。
図4は固定電位でガス流速を変化させた場合の電流測定結果を示している。ここで、ηAは拡散限界電流に達する前の過電圧領域で選択される。また、ηBは拡散電流にすでに達している(拡散律速)過電圧領域で選択される。それぞれの過電圧においてガス流速を大きく変化させたときの電流値が測定される。
図5はU-aとi-1の関係(図3(b))を利用した劣化診断手法を示す図である。
図5(a)および図5(b)に示すように、燃料電池の初期段階と長期使用後において得られた電流値をU-aとi-1の座標上にプロットする。この場合、図5(a)に示すように、ηAにおいて長期使用後のプロットの切片が初期段階と変わらず、直線の傾きが急になるときには、活性化電流は変化せずに拡散層の劣化が起きたと診断できる。また、図5(b)に示すように、ηAにおいて長期使用後のプロットの切片が大きくなり、直線の傾きが変わらないときには、拡散性能は変化せず触媒劣化が起きたと診断できる。傾きも切片も変化した場合には、両者の劣化が起きていると診断できる。
また、ηBにおけるプロットは拡散性能のみを反映するので、ηAにおける電流値と同時に測定しておくことで、劣化診断の精度を高めることができる。
以上のように、本実施形態の電極の性能評価方法では、燃料電池のガス拡散電極について、ガス流速を大きく変化させることにより、アセンブリ状態でのアノード反応、カソード反応の実質的な各種パラメータを求めることができる。これにより総合的な燃料電池電極の評価を行うことができ、燃料電池セルの的確な設計に寄与することができる。
また、ガス流量を一定とした条件でガス圧を変化させた条件下での電流特性を用いて、ガス流速を変化させて測定した電流特性を補正することにより、後者の測定時におけるガス圧上昇の影響を排除することができる。このため、ガス流速起因の成分のみを抽出することができ、パラメータ算出の精度を向上させることができる(図3)。
また、2つの固定電位を選択し、その電位においてガス流速を変化させた際の電流をプロットする手法を用い、燃料電池の使用前後でのこのプロットの傾きと切片の変化から触媒劣化および拡散層劣化を精度良く区別して診断することができる。この方法により、劣化の要因をアノード側、カソード側、さらに活性化要因、拡散要因にまで分類した診断が可能となる。
さらに、本発明による手法で算出されたパラメータを、一般的に溶液系などで求められたパラメータと比較することで、アセンブリ状態と溶液系での電極性能の違いを把握することができる。
なお、本発明による電極の性能評価方法において、カソード極に空気を導入した場合と酸素を導入した場合とを比較することで、ガス成分による性能の相違を把握することもできる。
図6は燃料電池セルに過酸化水素を検出するための電極を設けた例を示す図である。
図6に示すように、燃料電池セル1Aのアノード側にはアノード極12から分離、絶縁された対極12bが、カソード側にはカソード極13から分離、絶縁された検出極13aが、それぞれ設けられる。これらの電極は、いずれもアノード極12およびカソード極13に対して供給ガスの下流側に配置される。また、対極12bおよび検出極13aは極力接近して配置されるように、互いに電解質膜11を挟んで互いに対向した位置に配置される。これにより、電解質膜11の膜抵抗の影響を最小限に抑制している。
図6に示すように、対極12bおよび検出極13aには、ポテンショスタット2Aが接続されている。ポテンショスタット2Aは、ポテンショスタット2と同様にレコーダ3および指令・演算装置4が接続される。
図6の構成では、ポテンショスタット2により、参照極12aの電位を基準としてカソード極13の電位を元の電位より低電位側に制御し、還元反応を生じさせる。同時に、ポテンショスタット2Aにより、参照極12aの電位を基準として検出極13aの電位を過酸化水素水の酸化電位である1.2Vに固定する。このときの検出極13aに流れる電流を観測することで、カソード極13の過電圧を任意の電圧とした場合、あるいは任意の発電状態における過酸化水素の発生状態を把握することができる。図7はこの場合の測定結果を例示する図であり、カソード極13の過電圧の上昇に伴い過酸化水素が発生する様子が確認できる。
なお、ポテンショスタット2における電位規制に参照極12aを使用せず、2電極系でアノード極12およびカソード極13間に任意の電流負荷をかけた状態で、過酸化水素水の発生状況をポテンショスタット2Aにより観測してもよい。観測条件は観測目的に応じて適宜選択可能である。
一般に、過酸化水素は強い酸化力を持ち電解質膜11の劣化を引き起こすため、その発生の有無を確認することは重要である。過酸化水素の発生状態を把握することで燃料電池の運転条件の適正化等を図ることができる。
以上のように、図6に示す方法によれば、カソード極13に任意の過電圧をかけた状態、あるいはアノード極12およびカソード極13間に任意の電流負荷をかけた状態で、実質的にカソード極13で発生する過酸化水素水を確認できる。このため、実際の使用状況下での燃料電池セル1における過酸化水素水の発生状況を把握できる。また、このように、電池の内部に検出極を配置することにより、通常であれば必要となる、排気ガスを分析するためのガス分析計等の機器を設ける必要がなくなる。
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、電気化学測定により電池のアノード反応またはカソード反応を評価する電極の性能評価方法および電極の性能評価装置に対し、広く適用することができる。
1 燃料電池セル
2 ポテンショスタット
2A ポテンショスタット
4 指令・演算装置
5 流量・圧力制御装置
12 アノード
13 カソード
13a 検出極

Claims (6)

  1. 電気化学測定により電池のアノード反応またはカソード反応を評価する電極の性能評価方法において、
    アセンブリ状態での電池に与える供給ガスのガス流速を変化させながら電気化学測定により電流特性を取得するステップと、
    アセンブリ状態での前記電池に与える供給ガスのガス圧を変化させながら電気化学測定を行うことで、前記ガス圧に基づく前記電流特性の変化量を取得するステップと、
    前記電流特性を取得するステップで得られた前記電流特性から、前記変化量を取得するステップで取得された前記変化量を差し引くことで、前記供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求めるステップと、
    を備えることを特徴とする電極の性能評価方法。
  2. 前記成分を求めるステップで求められた前記成分に基づいて、前記アノード反応または前記カソード反応に関するパラメータを算出するステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の電極の性能評価方法。
  3. 前記パラメータを算出するステップでは、前記成分を求めるステップで求められた前記成分から、過電圧を固定した条件下における前記供給ガスのガス流速と電流との関係を求めることを特徴とする請求項2に記載の電極の性能評価方法。
  4. 前記アセンブリ状態での電池に設けられ、前記電池のカソード側であって前記カソードよりも前記供給ガスの下流側に配置される検出極を用いて、過酸化水素水の発生状況を検出するステップを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池の性能評価方法。
  5. 電気化学測定により電池のアノード反応またはカソード反応を評価する電極の性能評価装置において、
    アセンブリ状態での電池に与える供給ガスのガス流速を変化させながら電気化学測定により電流特性を取得する手段と、
    アセンブリ状態での前記電池に与える供給ガスのガス圧を変化させながら電気化学測定を行うことで、前記ガス圧に基づく前記電流特性の変化量を取得する手段と、
    前記電流特性を取得する手段で得られた前記電流特性から、前記変化量を取得する手段で取得された前記変化量を差し引くことで、前記供給ガスのガス流速のみ起因する成分を求める手段と、
    を備えることを特徴とする電極の性能評価装置。
  6. 前記成分を求める手段で求められた前記成分に基づいて、前記アノード反応または前記カソード反応に関するパラメータを算出する手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の電極の性能評価装置。
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