本発明の実施の形態である粒子線照射システムについて、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の粒子線照射システムである陽子線照射システムの概略図であり、図2は、本実施の形態の粒子線照射システムを構成するスキャニング照射装置の概略図である。
図1において、粒子線治療システムは、治療室内の治療ベッドに固定された患者の患部に荷電粒子ビーム(例えば陽子線)を照射して治療を施すものであり、荷電粒子ビーム発生装置1と、荷電粒子ビーム発生装置1の下流側に接続されたビーム輸送系4と、この輸送系4に接続され、荷電粒子を患者の患部に照射するスキャニング照射装置15と、これら荷電粒子ビーム発生装置、ビーム輸送系、およびスキャニング照射装置15を治療計画に基づいて制御する制御システム90を備えている。
荷電粒子ビーム発生装置1は、イオン源(図示せず)、前段荷電粒子ビーム発生装置(ライナック)11およびシンクロトロン(加速器)12を有する。シンクロトロン12は、高周波印加装置9および加速装置10を有する。高周波印加装置9は、シンクロトロン12の周回軌道に配置された高周波印加電極93と高周波電源91とを開閉スイッチ92にて接続して構成される。
加速装置(荷電粒子ビームエネルギー変更装置)10は、その周回軌道に配置された高周波加速空胴(図示せず)、および高周波加速空胴に高周波電力を印加する高周波電源(図示せず)を備える。
イオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオン(または炭素イオン))は前段荷電粒子ビーム発生装置11(例えば直線荷電粒子ビーム発生装置)で加速される。
前段荷電粒子ビーム発生装置11から出射されたイオンビーム(陽子ビーム)はシンクロトロン12に入射される。
荷電粒子ビーム(粒子線)であるそのイオンビームは、シンクロトロン12で、高周波電源から高周波加速空胴を経てイオンビームに印加される高周波電力によってエネルギーを与えられて加速される。
シンクロトロン12内を周回するイオンビームのエネルギーが設定されたエネルギー(例えば100〜200MeV)までに高められた後、高周波電源91からの出射用の高周波が、閉じられた開閉スイッチ92を経て高周波印加電極93に達し、高周波印加電極93よりイオンビームに印加される。
安定限界内で周回しているイオンビームは、この高周波の印加によって安定限界外に移行し、出射用デフレクタ8を通ってシンクロトロン12から出射される。イオンビームの出射の際には、シンクロトロン12に設けられた四極電磁石13および偏向電磁石14に導かれる電流が電流設定値に保持され、安定限界もほぼ一定に保持されている。
開閉スイッチ92を開いて高周波印加電極93への高周波電力の印加を停止することによって、シンクロトロン12からのイオンビームの出射が停止される。
シンクロトロン12から出射されたイオンビームは、ビーム輸送系4より下流側へ輸送される。ビーム輸送系4は、四極電磁石18および偏向電磁石17と、治療室内に配置されたスキャニング照射装置15に連絡されるビーム経路62にビーム進行方向上流側より配置された四極電磁石21、四極電磁石22、偏向電磁石23、偏向電磁石24とを備える。ビーム輸送系4へ導入されたイオンビームは、ビーム経路62を通ってスキャニング照射装置15へと輸送される。
治療室の内部には回転ガントリー(図示せず)が設置され、スキャニング照射装置15は、ビーム輸送系の一部とともに、この回転ガントリー(図示せず)の略筒状の回転胴(図示せず)に設置されている。回転胴はモータ(図示せず)により回転可能であり、回転胴内には治療ゲージ(図示せず)が形成される。
スキャニング照射装置15のケーシング(図示せず)内には、ビーム進行方向(図1および図2中下方向、図2中Z方向)上流側から、ビームの入射位置を検出する入射位置モニタ(図示せず)、ビームを走査するための走査電磁石5A,5B、およびビーム走査位置を検出するビーム位置モニタ6A、ビーム走査位置での照射線量を検出する線量モニタ6B等が設置される。
走査電磁石5A,5Bは、例えばビーム軸と垂直な平面上において互いに直交する方向(X方向,Y方向)にビームを偏向し照射位置をX方向およびY方向に動かすためのものである。
図2に示すように、これらの走査電磁石5A,5Bは、走査電磁石電源7A,7Bに接続されており、この走査電磁石電源7A,7Bから走査電磁石5A,5Bへの供給電流を制御する電源制御装置42が設けられている。電源制御装置42は、スキャニング照射制御装置41からの制御信号に応じて走査電磁石5A,5Bへの供給電流を制御し、走査電磁石5A,5Bの励磁磁場をそれぞれ制御する。このように制御された走査電磁石5A,5Bの励磁磁場により、それぞれ荷電粒子ビームを偏向するようになっている。
ビーム位置モニタ6Aは、走査電磁石5A,5Bによるビーム走査位置が制御位置(設定値)にあるかどうかを検出するものであり、その検出信号が走査位置計測装置11Aに出力されてビーム走査位置が演算され、その演算データがスキャニング照射制御装置41に出力されるようになっている。
線量モニタ6Bは、ビーム位置モニタ6Aにより検出されたビーム走査位置における照射線量を検出するものであり、その検出信号が線量計測装置11Bに出力されて線量値が演算され、その演算データがスキャニング照射制御装置41に出力されるようになっている。
ビーム位置モニタ6Aおよび線量モニタ6Bはそのときの照射位置への荷電粒子ビームの照射量を計測し、照射線量分布を測定する照射量検出装置を構成する。
図1に戻り、治療用ベッド29は、スキャニング照射装置15からイオンビームを照射する前に、ベッド駆動装置(図示せず)によって移動され上記治療ゲージ内に挿入されるとともに、スキャニング照射装置15に対する照射にあたっての位置決めが行われる。回転胴はガントリーコントローラ(図示せず)によってモータの回転を制御することによって回転され、スキャニング照射装置15のビーム軸が患者30の患部を向くようになる。
ビーム経路62を経て逆U字状のビーム輸送装置からスキャニング照射装置15内へ導入されたイオンビームは、走査電磁石(荷電粒子ビーム走査装置)5A,5Bによって順次照射位置を走査され、患者30の患部(例えば癌や腫瘍の発生部位)に照射される。照射されたイオンビームは、患部においてそのエネルギーを放出し、高線量領域を形成する。
次に、本実施の形態の粒子線照射システムが備えている制御システム90を、図1および図2を用いて説明する。
制御システム90は、治療計画装置140で作成した治療計画データを格納するデータベース110と、荷電子粒子ビーム発生装置1およびビーム輸送系4を制御する加速器・輸送系コントローラ40(以下、加速器コントローラ40という)、スキャニング照射装置15を制御するスキャニング照射制御装置41(以下、スキャニングコントローラ41という)と、データベース110から読み込んだ治療計画データに基づき、加速器コントローラ40およびスキャニングコントローラ41をそれぞれ制御する中央制御装置100とを有する。
データベースに記憶されている患者毎の上記治療計画情報(患者情報)は、特に図示を行わないが、患者IDナンバー、照射量(一回当たり)、照射エネルギー、照射方向、照射位置等のデータを含んでいる。
中央制御装置100は、例えばキーボードやマウス等の入力装置から入力された患者識別情報に応じて、データベース110から、これから治療を行う患者30に関する上記の治療計画情報を読み込む。この患者別治療計画情報内の照射エネルギー値によって、既に述べた各電磁石への励磁電力供給の制御パターンが決定する。
中央制御装置100内のメモリには、予め電力供給制御テーブルが記憶されており、照射エネルギーの各種の値(70,80,90,…[Mev]等)に応じて、シンクロトロン12を含む荷電粒子ビーム発生装置1における四極電磁石13および偏向電磁石14、ビーム輸送系4の四極電磁石18、偏向電磁石17、四極電磁石21,22、偏向電磁石23,24に対する供給励磁電力値またはそのパターンが予め設定されている。
また、中央制御装置100内のCPUでは、上記治療計画情報と上記電力供給制御テーブルとを用いて、これから治療を受けようとする患者に関する荷電粒子ビーム発生装置1や各ビーム経路に配置された電磁石を制御するための制御指令データ(制御指令情報)が作成される。このようにして作成された制御指令データは、スキャニングコントローラ41および加速器コントローラ40へ出力される。
本実施の形態の陽子線照射システムでは、治療計画装置140により作成した治療計画情報に基づき、中央制御装置100、スキャニングコントローラ41、加速器コントローラ40が互いに連携して制御を行う。これらの制御について説明する。
まず、標的の深さとイオンビーム(荷電粒子ビーム)のエネルギーとの関係を説明する。標的は、患部を含むイオンビームの照射対象領域であり、患部よりもいくらか大きくなる。図3に体内の深さとイオンビームによる線量の関係の例を示す。荷電粒子ビームは、エネルギーを失って止まる際に周囲に極めて大きなエネルギーを付与するため、その到達深度で線量ピークを有する。この線量のピークをブラッグピークと呼ぶ。
標的へのイオンビームの照射はブラッグピークの位置で行われる。ブラッグピークの位置は、イオンビームのエネルギーにより変化する。従って、標的を深さ方向(体内でのイオンビームの進行方向)において複数の層(スライス)に分割し、イオンビームのエネルギーを深さ(各層)に応じて変えることによって、深さ方向に厚みを持つ標的(標的領域)の全域に一様にイオンビームを照射することができる。治療計画装置140は、このような観点に基づき、標的領域を深さ方向に分割する層の数を決定する。
図4は、上記のようにして決定した層の一例を表す図である。この例では、患部が最下層より患者30の体表面に向かって層1,2,3,4の4つの層に分割されている。各層はX方向に20cmY方向に10cmの広がりをもっている例である。図3の線量分布は、図4のA−A′断面での深さ方向の線量分布である。
以上のようにして、層数が決定した後、治療計画装置140は、各層(標的断面)内で深さ方向と直角方向に分割するスポット(照射位置)数を決定する。
なお、全てのスポットにおいて、1つのスポットを複数回分割照射する場合もあり、各スポットに対する照射線量のばらつきをある範囲内におさえ、標的全域で線量分布がほぼ一様となるよう、各スポットでの照射回数と1回当たりの照射量(目標照射量)が決定する。分割照射の概念は特許文献1(特許3681744号公報)に詳しい。
上記のようにして計画され、データベース110に格納された治療計画情報を、中央制御装置100が読み出しメモリに格納する。中央制御装置100のCPUは、メモリに格納した治療計画情報に基づき、イオンビームの照射に関する情報(層数、照射位置の数(スポットの数)、各層内での照射位置、各照射位置での目標照射量(設定照射量)、および各層の全スポットに関する走査電磁石5A,5Bの電流値等の情報)を生成し、スキャニングコントローラ41(第1制御装置)へ送信する。
送信される治療計画情報の一部を図5に示す。層内の各照射位置に対する、照射位置(スポット)のX方向位置(X位置)およびY方向位置(Y位置)の情報、および各照射位置での目標照射量(設定線量)、更に層変更フラグ情報が含まれ、照射する順番にスポット番号が割り付けられる。さらに、各スポットには照射中断可能フラグが記載されている(0:照射中断不可、1:照射中断可能)。本実施の形態では、体表面から一番深い層から順に照射が行なわれる。なお、各照射位置での目標照射量(設定線量)は、患部への最初の照射開始を起点とする積算照射量(積算線量)としており、中央制御装置100は、各照射位置に対して設定された個々の照射量を順次積算することによって、スキャニングコントローラ41へ送信する目標照射量の情報を生成している。スキャニングコントローラ41は、これらの治療計画情報をメモリに記憶する。
なお、図5は分割照射をしない場合の例であり、分割照射をする場合は、更に、分割照射の回数だけ、照射位置(スポット)のX方向位置(X位置)およびY方向位置(Y位置)および各照射位置での目標照射量(設定線量)の情報が必要であり、図5の治療計画情報にはそれらの情報も含まれる。
更に、中央制御装置100のCPUは、治療計画情報の内、全ての層に関するシンクロトロン12の加速パラメータの全てを、加速器コントローラ40に送信する。ここで送信されるこれらの加速パラメータのデータは、予め複数の加速パターンに分類されている。
次に、本実施の形態においてスポットスキャニング照射を行う際の中央制御装置100、スキャニングコントローラ41および加速器コントローラ40の通常時(中断要因のない時)の各制御を、図6を用いて説明する。図6は、それらの各制御を実行する制御フローの一例を示したものである。
まず、治療室内にある照射開始指示装置(図示なし)が操作されると、それに応じ、中央制御装置100は、ステップ201にて、層番号を表す演算iおよびスポット番号を表す演算子jを1に初期設定し、それらを加速器コントローラ40に出力する。
加速器コントローラ40は、それに応じて初期設定を行い、初期設定完了後に、ステップ202にて、メモリに格納した複数パターンの加速パラメータの中から、i番目の層(この時点では、i=1)に対する加速器パラメータを読み出し設定する。
ステップ203にて、これら設定パラメータをシンクロトロン12およびビーム輸送系4に出力し、各電磁石電源が設定された所定の電流で励磁されるよう電源を制御し、また、高周波加速空胴に高周波電力を印加する高周波電源を制御して、その高周波電力と周波数を所定の値まで増加させる。
以上により、シンクロトロン12内を周回するイオンビームのエネルギーが治療計画で定められた値まで増大された時点で、加速器コントローラ40は、ステップ204に移行し、中央制御装置100を経由して、スキャニングコントローラに対し、出射準備指令を出力する。
この出射準備指令を受けて、スキャニングコントローラ41(第1制御装置)は、ステップ205にて、メモリに格納した電流値データ(図5の「X位置」、「Y位置」の欄に示されたデータ)および目標照射量データ(図5の「目標照射量」の欄に示されたデータ)から、j番目のスポット(この時点ではj=1)の電流値データおよび目標照射量データを読み出して設定する。ここで、スキャニングコントローラ41は、走査電磁石5A,5Bがj番目スポットの電流値で励磁されるように該当する電源を制御する。
以上により、当該スポットへの照射準備が完了した後、スキャニングコントローラ41は、ステップ206にて、中央制御装置100を経由し、加速器コントローラ40(第3制御装置)に対してビーム出射開始信号を出力する。
これにより、加速器コントローラ40は、ステップ207にて、高周波印加装置9を制御してシンクロトロン12からイオンビームを出射させる。すなわち、加速器コントローラ40からのビーム出射開始信号によって、開閉スイッチ92が閉じられ、高周波が高周波印加電極93よりイオンビームに印加されるため、イオンビームがシンクロトロン12から出射される。
走査電磁石5A,5Bはj番目のスポットの位置にイオンビームが達するように励磁されているため、そのイオンビームは、ステップ208にて、スキャニング照射装置15より該当する層のj番目のスポットに照射される。
j番目のスポット(照射位置)はビーム位置モニタ6Aにより検出され、走査位置計測装置11Aにてビーム走査位置が演算され、j番目のスポットへの照射線量は、線量モニタ6Bにより検出され、線量計測装置11Bにて線量値が演算され、それらの演算結果がスキャニングコントローラ41に入力される。
スキャニングコントローラ41は、ステップ209にて、設定された目標照射量と入力された演算結果を比較し、j番目のスポットへの照射線量が目標照射量に達した時点で、ステップ210に移行し、中央制御装置100を経由し、加速器コントローラ40に対して、ビーム出射停止指令を出力する。
これにより、ステップ211にて、加速器コントローラ40を経由して開閉スイッチ92が開き、イオンビームの出射が停止される。
以上により、最初のスポットに対する照射が終了すると、ステップ212にて層内最終スポットかどうかの判定が行われ、判定が「No」であるため、ステップ213に移り、スポット番号に1が加えられる(すなわち、照射位置が次のスポットに移動される)。
そして、ステップ205〜213の処理が繰り返し行われる。すなわち、1番目の層の全スポットへの照射が終了するまで、走査電磁石5A,5Bにより、イオンビームを隣接するスポットへと次々に移動させながら(移動中はイオンビームの照射を停止させつつ)、イオンビームの照射が行われる(スポットスキャニング照射)。
1番目の層の全スポットに対する照射が終了すると、ステップ212にて、判定が「Yes」となり、スキャニングコントローラ41は、中央制御装置100を経由し、加速器コントローラ40に対し、層変更指令を出力する。
なお、分割照射を行う場合は、ステップ212にて層変更指令を出力する前に、次の処理が行われる。すなわち、スポット番号を表す演算子jを1に初期設定し、分割照射の照射回数を表す演算子nが予め設定された分割数に達したかどうかを判定し、判定が「No」である場合は、照射回数番号nに1が加えられ(すなわち、分割照射が次の照射回数に変更され)、ステップ205〜213の処理が繰り返し行われ、分割照射の照射回数番号nが予め設定された分割数に達した時点で、ステップ212にて、加速器コントローラ40に対し層変更指令を出力する。
スキャニングコントローラ41から層変更指令が出力されると、それを受け、加速器コントローラ40は、ステップ214にて、層番号iに1を加え(すなわち、照射位置が2番目の層に変更される。)、ステップ215にて、シンクロトロン12へビーム減速指令を出力する。
加速器コントローラ40は、ビーム減速指令の出力により、シンクロトロン12の各電磁石の電源を制御して各電磁石の励磁電流を徐々に低減させ、最後には予め決められた値、例えば、次のイオンビーム入射に適した励磁電流にする。これにより、シンクロトロン12内を周回するイオンビームが減速される。
この時点では、1番目の層に対する照射が終了しただけであり、ステップ216の判定が「No」であるため、ステップ202に戻り、2番目の層に対して、ステップ203〜215の処理が繰り返し行われる。
同様に、全ての層に対して、ステップ202〜215の処理が実行された後、ステップ216の判定が「Yes」となり、患者30の患部における全層内の全スポットへの所定の照射が完了する。これにより、加速器コントローラ40は、ステップ217にて、中央制御装置100にCPUに対し照射終了信号を出力する。
以上により、患者30の患部に対する一連の照射処理が終了となる。
次に、本実施の形態において特徴をなす制御処理(スポット集合単位の打ち切り処理)について説明する。
本実施の形態における制御システム90は、設備および構成機器の異常や加速器内のビーム状態等を監視し、発生した要因の種類やそのレベルにより、照射を中止または中断するためのインターロックを設けている。
また、治療室内に設けられた照射中止指示装置(図示なし)、または照射中断指示装置(図示なし)により操作者の判断により手動で照射中止または、照射中断が可能な構成となっている。
この中でも、本実施の形態は、あるスポットへの照射途中、ないし、次のスポット照射までの合間であっても、照射中断要因が発生した場合のイオンビームの出射停止方法に着目したものである。図7は比較の為に説明する従来システムの制御フローであり、図8は本実施の形態のシステムの制御フローである。両システムとも、通常時は図6で説明した制御フローに基づく処理を実行する。
なお、設備および構成機器の異常や加速器内のビーム状態等による照射中止・中断要因の内、本発明の制御処理が扱う要因は照射中断要因であって、照射継続可能な比較的軽度な要因に限られる。
図7は、従来システムにおいて、あるスポットに対する照射中に照射中断要因が発生した場合の、制御フローを示したものである。
従来システムでは、照射中に照射中断要因が発生した場合、中央処理装置100は照射中断指令を受け取ると、ステップ401にて、はじめに、いずれかのスポットに対する照射中であるかを判定する。この判定は、スキャニングコントローラ41のステップ210におけるビーム出射停止指令の出力有無を確認することで容易に判定すること可能である。
判定の結果が「Yes」の場合(つまり、あるスポットへの照射中に照射中断要因が発生した場合)、中央制御装置100は、判定が「No」となるまで、以降の照射中断処理を停止する。判定結果が「No」の場合(つまり、あるスポットへの照射中以外に照射中断要因が発生した場合、もしくは、あるスポットへの照射中に照射中断要因発生し、その後、そのスポットに対する照射が終了した場合)、中央制御装置100は、ステップ402に移行し、加速器コントローラ40およびスキャニングコントローラ41に対し、それぞれ、ビーム出射停止指令およびビーム照射停止指令を出力する。
これを受けたスキャニングコントローラ41は、ステップ403にて、以降のj番目のスポットに対する照射処理を中断する(具体的には、ステップ210の処理を実施後、処理を中断する)。
また、加速器コントローラ40は、ステップ404にて、シンクロトロン12からのビーム出射を停止させ、その後、ステップ405に移行し、シンクロトロン12に対し残ビーム減速指令を出力してシンクロトロン内の残ビームを減速させる。
このように中央処理装置100(第2制御装置)は、あるスポット(照射位置)への荷電粒子ビームの照射中に、照射を中断しなければならない事象が発生した場合に、ステップ401にて、そのスポットへの照射量が目標照射量に達するまでスキャニングコントローラ41(第1制御装置)の制御を継続し、ステップ401〜404にて、スポットへの照射量が目標照射量に達した時点でスキャニングコントローラ41の制御を中断しかつシンクロトロン12(加速器)からの荷電粒子ビームの出射を停止させる。
中央制御装置100は、ステップ406にて、照射中断要因が解消して復帰状態になったかどうかを判定し、その判定が「Yes」となった後、加速器コントローラ40は、ステップ407にて、シンクロトロン12に対してビーム加速指令を出力して、再度、各電磁石電源が設定された所定の電流で励磁されるよう電源を制御し、また、高周波加速空胴に高周波電力を印加する高周波電源を制御して、その高周波電力と周波数を所定の値まで増加させる。
これと同時に、加速器コントローラ40は、スキャニングコントローラ41に対して復帰指令を出力し、スキャニングコントローラ41はその復帰指令を受け取ると、ステップ408にて、中断していたj番目のスポットに対する照射処理を再開する。ただし、この従来システムでは、j番目のスポットへの照射線量は目標照射量に達しているので(ステップ209)、このスポットに対する照射処理は直ちに終了させ、ステップ212にて、層内最終スポットかどうかの判定が行われ、判定が「No」であれば、ステップ213に移り、スポット番号に1が加えられる(すなわち、照射位置が次のスポットに移動される)。そしてステップ205,206に移り、スキャニング照射装置15の走査電磁石5A,5B(荷電粒子ビーム走査装置)を制御することによりスポット(照射位置)を変更させかつこの変更後にシンクロトロン12(加速器)からの荷電粒子ビームの出射を再開させる。その後は、通常時と同様に各ステップの処理が繰り返し行われ、患者30の患部に対する一連の照射処理が終了する。
このように中央処理装置100(第2制御装置)は、ステップ402,404にて荷電粒子ビームの出射停止後、照射を中断しなければならない事象が解消した場合は、ステップ407,408にてスキャニングコントローラ41(第1制御装置)の制御を復帰させ、スキャニングコントローラ41は、その復帰後に、ステップ213,205,206にて直ちに走査電磁石5A,5B(荷電粒子ビーム走査装置)を制御することによりスポット(照射位置)を変更させかつこの変更後にシンクロトロン12(加速器)からの荷電粒子ビームの出射を再開させる。
ところで、従来システムでは、あるスポットの集合に対する照射中に照射中断要因が発生した場合、当該スポットの照射中であれば、そのスポットの照射を完了させた後、ビーム出射(照射)が停止されるため、結果として、1つのスポットの集合に対する照射を途中の段階で強制的に2回以上に分割して行うこととなり、その結果、1つのあるスポットの集合に対して再開後の照射位置のズレ(ズレの要因としては、機器の状態、患者の状態などの微妙なズレが考えられる。)により、照射分布に乱れが生じる可能性がある。
本実施の形態における特徴は、あるスポットの集合への照射途中に照射中断要因が発生した場合に、ビーム出射(照射)を停止させず、そのスポットの集合のスポット全てを照射した後にビーム出射(照射)を停止させるように制御することで、照射がスポットの集合について途中の段階で終了することを回避する点にある。
次に、本実施の形態において、あるスポットの集合に対する照射中に照射中断要因が発生した場合の制御システムの動作について説明する。図8は、あるスポットに対する照射中に照射中断要因が発生した場合の、本実施の形態における制御フローを示したものである。
本実施の形態では、照射中に照射中断要因が発生した場合、中央処理装置100は照射中断指令を受け取ると、ステップ501aにて、はじめに、いずれかのスポットに対する照射中であるかを判定する。この判定は、スキャニングコントローラ41のステップ210におけるビーム出射停止指令が出力有無を確認することで容易に判定すること可能である。ステップ501aの判定の結果が「No」の場合(つまり、照射中でない場合)、ステップ501で図5の照射中断可能フラグの情報により、照射中断可能スポットの判断を実施する。ステップ501aの判定の結果が「YES」の場合(つまり、照射中の場合)、中央制御装置100は、「No」判定となるまで、以降の照射中断処理を実行しない。
ステップ501の判定の結果が「No」の場合(つまり、中断可能なスポットでない場合)、中央制御装置100は、「Yes」判定がとなるまで、以降の照射中断処理を実行せず、ステップ213に移り、スキャニングコントローラ41によりスポット番号に1が加えられる(すなわち、照射位置が次のスポットに移動される)。判定結果が「Yes」の場合(照射中断可能なスポットでの当該スポットの照射が完了した場合、つまり、スポットの集合のスポット全てを照射した場合)、中央制御装置100は、ステップ502に移行し、加速器コントローラ40およびスキャニングコントローラ41に対し、それぞれ、ビーム出射停止指令およびビーム照射停止指令を出力する。
これを受けたスキャニングコントローラ41は、ステップ503にて、以降のj番目のスポットに対する照射処理を中断する(具体的には、ステップ210の処理を実施後、処理を中断する)。
また、加速器コントローラ40は、ステップ504にて、シンクロトロン12からのビーム出射を停止させ、その後、ステップ505に移行し、シンクロトロン12に対し残ビーム減速指令を出力してシンクロトロン内の残ビームを減速させる。
このように中央処理装置100(第2制御装置)は、あるスポット(照射位置)が含まれるあるスポットの集合の途中で、照射を中断しなければならない事象が発生した場合に、ステップ501にて、あるスポットの集合のスポット全部について目標照射量に達するまでスキャニングコントローラ41(第1制御装置)の制御を継続し、ステップ501〜504にて、スキャニングコントローラ41の制御を中断しかつシンクロトロン12(加速器)からの荷電粒子ビームの出射を停止させる。
中央制御装置100は、ステップ506にて、照射中断要因が解消して復帰状態になったかどうかを判定し、その判定が「Yes」となった後、加速器コントローラ40は、ステップ507にて、シンクロトロン12に対してビーム加速指令を出力して、再度、各電磁石電源が設定された所定の電流で励磁されるよう電源を制御し、また、高周波加速空胴に高周波電力を印加する高周波電源を制御して、その高周波電力と周波数を所定の値まで増加させる。
これと同時に、加速器コントローラ40は、スキャニングコントローラ41に対して復帰指令を出力し、スキャニングコントローラ41はその復帰指令を受け取ると、ステップ508にて、中断していたj番目のスポットに対する照射処理を再開する。ただし、本実施の形態では、j番目のスポットにへの照射線量は目標照射量に達しているので(ステップ209)、このスポットに対する照射処理は直ちに終了させ、ステップ212にて、層内最終スポットかどうかの判定が行われ、判定が「No」であれば、ステップ213に移り、スポット番号に1が加えられる(すなわち、照射位置が次のスポットに移動される)。そしてステップ205,206に移り、スキャニング照射装置15の走査電磁石5A,5B(荷電粒子ビーム走査装置)を制御することによりスポット(照射位置)を変更させかつこの変更後にシンクロトロン12(加速器)からの荷電粒子ビームの出射を再開させる。その後は、通常時同様に各ステップの処理が繰り返し行われ、患者30の患部に対する一連の照射処理が終了する。
このように中央処理装置100(第2制御装置)は、ステップ502,504にて荷電粒子ビームの出射停止後、照射を中断しなければならない事象が解消した場合は、ステップ507,508にてスキャニングコントローラ41(第1制御装置)の制御を復帰させ、スキャニングコントローラ41は、その復帰後に、ステップ213,205,206にて直ちに走査電磁石5A,5B(荷電粒子ビーム走査装置)を制御することによりスポット(照射位置)を変更させかつこの変更後にシンクロトロン12(加速器)からの荷電粒子ビームの出射を再開させる。
図9および図10は、従来のシステムおよび本実施の形態のあるエネルギーにおけるシンクロトロン12内のイオンビームの制御パターンと、スポットに対する照射の関係を示した例である。照射中断要因発生時、従来システムでは、当該スポットの照射を完了次第、出射(照射)を停止し、即減速動作へ移行するのに対し、本実施の形態では、照射中断要因発生時、当該スポットが含まれるスポットの集合全体の照射が完了した時点で、出射(照射)を停止し、減速動作へ移行する)。
以上ように、照射中断要因が発生した際の処理として、中央制御装置100内に図8に示す新たな判定処理(図5の制御フラグを追加し、照射中断可能なスポットかどうかの判断処理)を追加し、中央制御装置100、加速器コントローラ40、およびスキャニングコントローラ41が連携して動作することで、スキャニング方式による照射において、あるスポットに対する照射中に照射中断要因が発生した場合に、当該スポットの照射を完了次第、ビーム出射(照射)を停止させず、そのスポットを含むスポットの集合全体に対する照射が完了した時点で停止させることが可能となる。これにより、あるスポットの集合の途中のスポットで照射が終了することを回避することができる。
なお、本実施の形態は、粒子線治療システムにおいて、照射中断事象が発生した際の処理に関するものであり、照射中止事象が発生した場合は、安全の観点から、従来システム同様、直ちに、出射(照射)を停止し、一連の照射処理が中止される。
以上のように構成した本実施の形態の粒子線照射システムは、以下のような効果を得る。
通常、照射線量の分布は、1つのスポットの線量だけでなく、あるスポットの集合について評価するものであり、あるスポットの集合の途中のスポットで、照射を中断させて、その中断要因がなくなり、照射をそのスポットの集合の途中のスポットから再開させた場合、機器の状態、患者の状態により、スポットの位置のズレが生じ、線量分布に乱れが生じる。
図11は、あるスポットの集合に対する照射の途中で、中断、再開した場合の位置ズレによる線量分布への影響を示したものである。例えば、図11(a)のような、No.2〜30スポットの集合に対する線量分布を得たい場合、その分布のスポットの集合の途中(No.14スポット照射完了後)で照射を中断し、再開後の位置のズレで、1スポット分空いてスポット照射を再開した場合は、図11(b)のようにNo.15スポットに照射されず、No.31スポットに誤照射される。逆に、1スポット分詰めてスポット照射を再開した場合は、図11(c)のようにNo.14スポットに重複照射され、No.30スポットに照射されない。
これに対し、本実施の形態では、あるスポット(No.14)に対する照射中に、照射中断要因(照射継続可能な比較的軽度な異常)が発生した場合に関して、当該スポットの照射完了後で照射を停止するのではなく、当該スポットを含む、あるスポットの集合(No.2〜30スポット)の全スポットに対し、照射を行う。その結果、図11(a)に示す計画線量分布が得られる。このように、スポットの集合として管理したほうがよい場合には、スポット毎の単位で照射を中断するのではなく、スポットの集合の単位で照射を中断することにより、照射線量の分布の乱れをなくし、精度よい照射が可能となる。
本実施の形態の適用が好ましいスポットの集合の実施例を説明する。本実施の形態では、スポットの集合をどの様に予め定義するかが重要である。
第1実施例は、同一層のなかで、スポットの集合が分離している例である。図12は、第1実施例におけるスポットの集合を説明する図である。図12(a)に示すように患部形状によっては、同一層であっても患部が分離することもある。この場合、それぞれをスポットの集合として管理したほうがよい。
一方、照射の中断要因として、異常発生のほかに呼吸同期制御のゲート信号がOFFとなる場合がある。呼吸同期制御では、呼吸位相に合わせて、ゲート信号がONのとき照射し、ゲート信号がOFFのとき照射を停止する。これにより呼吸によるスポットの位置のズレを防止し、安定的な照射ができる。
しかし、照射線量の分布は、1つのスポットの線量だけでなく、あるスポットの集合について評価するものである。呼吸同期制御を優先的に一律に適用し、ゲート信号がOFFのとき照射を中断させて、その後照射を再開させると、逆にスポットの位置のズレが生じ、線量分布に乱れが生じる場合もある。
図12(b)は、ゲート信号がOFFのとき照射を中断し、その後再開する動作を説明する図である。黒丸は、ゲート信号がONのとき照射したスポットであり、白丸は、ゲート信号がOFFのとき照射を中断し、その後ゲート信号がONのとき照射を再開したスポットである。1つのスポットの集合に対する照射を途中の段階で強制的に2回に分割して行うこととなり、その結果、再開後の照射位置のズレにより、照射線量分布に乱れが生じる可能性がある。
図12(c)は、本実施の形態における動作を説明する図である。本実施の形態では、スポットの集合として管理したほうがよい場合には、スポットの集合の全スポットについて予定の照射を完了することを優先する。すなわち、ゲート信号がOFFのときも照射を継続する。
これにより、スポットの集合の単位で照射を中断することにより、照射線量の分布の乱れをなくし、精度よい照射が可能となる。このように、本実施の形態は、スポットスキャニングの呼吸同期制御と組み合わせて用いるのに適している。
第2実施例は、1スピルで照射可能なスポット数を演算し、スポットの集合として管理する例である。シンクロトロン12のパルス運転の1パルスで照射できる単位である。治療計画装置140により各スポットの目標照射量が演算され、1スピルで打ちきれるスポット数も演算される。このスポットの集合を1単位として管理する。安全性に問題がない場合や、異常が軽度なことが確実な場合は、異常が発生した場合でも、そのスポットの集合に対する照射を継続する。
上述した呼吸同期制御を適用する場合は、治療計画装置140によりゲート信号がONのとき照射可能なスポット数を演算し、このスポットの集合を1単位として管理してもよい。
第3実施例は、スポットの集合に重なりを持たせる例である。特許文献1のスキャニング方式の粒子線照射システムにおいては、照射対象をいくつかのスポット(照射位置)の集合に分割することや、分割照射をするための照射回数と1回当たりの照射量を事前に設定し、1つのスポットに対する照射を複数回に分割して行うことで、各スポットに対する1回の照射量(照射時間)を小さくし、ばらつきを抑え、より正確に実際の照射線量の検出および評価(線量分布等の評価)を行うことができるよう工夫がされている。
しかし、全スポットについて1つのスポットに対する照射を複数回に分割して行うことは、治療時間の長期化につながり、システム運用の面で効率的でないという問題があった。
上記問題に対し、スポットの集合に重なりを持たせる照射手法が提案されている。図13は、第3実施例におけるスポットの集合を説明する図である。
例えば、図13(a)上段のような、No.2〜35スポットの集合に対する線量分布を得ることを計画する。このとき、No.2〜23スポットの集合を第1集合とし、No.15〜35スポットの集合を第2集合として管理する。第1集合は、第2〜9スポットまで線量が単調増加し、第9〜14スポットまで線量は一定値であり、第14〜23スポットまで線量が単調減少し、図示台形形状となるように設定されている。第2集合は、第15〜24スポットまで線量が単調増加し、第24〜28スポットまで線量は一定値であり、第28〜35スポットまで線量が単調減少し、図示台形形状となるように設定されている。さらに、第1集合と第2集合に対し、No.15〜23スポットにおいて重なりを持たせている。第1集合と第2集合に対し、それぞれ図13(a)下段のような線量分布を得るように照射する。その結果、図13(a)上段のように計画した線量分布を得ることができる。
これにより、全スポットについて1つのスポットに対する照射を複数回に分割して行うことをせずに、第1集合と第2集合をそれぞれスポットの集合の1単位として管理し照射するため、治療時間の短縮化につながり、システム運用の面で効率的となる。
本実施の形態を、第3実施例に適用したときの効果について説明する。本実施の形態では、第1集合と第2集合をそれぞれスポットの集合の1単位として管理し、スポットの集合の全スポットについて予定の照射を完了することを優先する。すなわち、第1集合のスポットへの照射中に比較的軽度な異常が発生した場合でも、第1集合に対する照射を継続する。第1集合(No.2〜23スポット)に対する照射が完了した後、照射を停止し、照射中断事象が解消すると、第2集合(No.15〜35スポット)の先頭から照射を再開する。第2集合のスポットへの照射中に比較的軽度な異常が発生した場合でも、同様に第2集合に対する照射を継続する。
図13(b)上段は、中断、再開時に位置ズレが生じ、1スポット分前にずれた場合を説明する図であり、図13(b)下段は、本実施の形態の効果を説明する図である。第1集合(No.2〜23スポット)への照射は計画通りできたが、第2集合(No.15〜35スポット)へ照射すべきところを、位置ズレが生じて1スポット分前にずれて、No.14〜34スポットに照射したとする。しかし、第1集合と第2集合とを合わせたスポットの集合について評価すると、図13(b)下段のようになり、図13(a)上段の計画線量分布と比較すると、No.35スポットに照射されず、No.14〜23スポットにおいてやや多目に照射されているだけであり、位置ズレの影響が少ないのがわかる。
図13(c)上段は、中断、再開時に位置ズレが生じ、1スポット分後にずれた場合を説明する図であり、図13(c)下段は、本実施の形態の効果を説明する図である。第1集合(No.2〜23スポット)への照射は計画通りできたが、第2集合(No.15〜35スポット)へ照射すべきところを、位置ズレが生じて1スポット分前にずれて、No.16〜36スポットに照射したとする。しかし、第1集合と第2集合とを合わせたスポットの集合について評価すると、図13(c)下段のようになり、図13(a)上段の計画線量分布と比較すると、No.36スポットに誤照射され、No.15〜24スポットにおいてやや少な目に照射されているだけであり、位置ズレの影響が少ないのがわかる。
これにより、システム運用の面で効率化を図りつつ、スポットの集合の単位で照射を中断することにより、照射線量の分布の乱れをなくし、精度よい照射が可能となる。このように、本実施の形態は、第3実施例に示した照射手法と組み合わせて用いるのに適している。
ただし、本実施の形態は、異常発生時においても、発生した要因の種類、レベルにより、照射継続を可能とするものであり、患者ならびに操作者の安全の観点から、照射継続可能な要因の種類、レベルの選定が非常に重要となる。
なお、以上に述べたスポットスキャニングによるイオンビーム照射は、加速器としてサイクロトロンを用いた陽子線照射システムに適用することが可能である。