JP5394163B2 - 洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメント、セメント系固化体の製造方法並びに大気中炭酸ガスの吸着方法 - Google Patents

洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメント、セメント系固化体の製造方法並びに大気中炭酸ガスの吸着方法 Download PDF

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Description

本発明は、建築・土木等に用いられるセメント系の固化体、その製造方法、そのセメント系固化体に用いられる水硬性セメント及び大気中炭酸ガスの吸着方法に関するものである。
今日、大気中の炭酸ガスの増加は温暖化の要因の一つとされており、特に、都市域、工場地帯、道路周辺では年々炭酸ガスの抑制が強く望まれている。このようななか、炭酸ガスを吸着する物質としてハイドロタルサイトや活性炭が知られている。このうち、ハイドロタルサイトについては、特許文献1記載のように、コンクリートに少量混入することにより、コンクリートの中性化(CO劣化)、塩害(塩素イオン劣化)を防止する薬剤として用いられている。しかし、ハイドロタルサイトを多量に含んだコンクリートは、その固化物が十分な強度を有することができず、屋外において容易に炭酸ガス低減用の資材として用いることができなかった。また、活性炭については、特許文献2記載のような、選択的に炭酸ガスを吸着する処理を施したものは、非常に高価でありコンクリート製品に添加して用いるには経済的に成り立たなかった。このほか、特許文献3,4記載のような、特殊材料による炭酸ガス吸着も提案されているが、これらは触媒的な使用で極めて高価であるため、いずれもコンクリート製品に用いることは経済的に成り立たなかった。
一方、鋳物製造工程から生ずる鋳物砂廃棄物は、平成15年度には年間130万トンに達し、そのうち70万トンは再生砂に、30万トンはセメント原料に、10万トンは路盤材等に、それぞれリサイクルされているが、まだ20万トンは埋め立て処分されている。しかし、現在設置されている最終処分場の埋め立て可能な残余量は減少しており、新たな最終処分場の建設も困難な状況となっている。また、鋳物砂廃棄物には鉛や銅等の重金属も含まれることがあるため、土壌からの溶出を防ぐべく、管理型最終処分場への埋め立てが必要な場合もあり、処分費用の高騰化が問題となっている。このため、廃鋳物砂を資源として有効に利用する技術が求められている。しかしながら、鋳物砂廃棄物は、セメントの固化を遅延させその強度が発現し難くなる亜鉛(Zn)等の不純物を多く含んでいることから、コンクリート製品には用いることができなかった。
特開平5−262546号公報 特開平11−79722号公報 特開平10−272336号公報 特開平10−263388号公報
そこで、本発明は、洗浄された廃鋳物砂を加えることで、大気中の炭酸ガスを吸着することができるセメント系固化体、その製造方法、そのセメント系固化体に用いられる水硬性セメント及びそのセメント系固化体を用いた大気中炭酸ガスの吸着方法を提供することを目的とする。
コンクリートの中性化からも明らかなように、水硬性セメントを水硬反応により固化してなるセメント系固化体は、炭酸ガスと反応して炭酸化合物を生成することから、炭酸ガスの吸着能を有している。しかし、炭酸化合物の生成は、固化体の略表面のみで起きているため、その吸着能は、長続きせず、比較的短期間で大幅に低下してしまっていた(表4の比較例1参照)。
そこで、発明者は、上記事情に鑑み、鋭意努力したところ、フェノール樹脂やフラン樹脂等の有機バインダー樹脂等を含み、鋳物の型材として用いられた鋳物砂の廃棄物である廃鋳物砂を高度に洗浄したものと、水硬性セメントとの混合物を養生して得た固化体は、大気中の炭酸ガスをその容積比で40〜90%の量を瞬時に吸着できる能力を有すると共に、その能力を比較的長期間維持することができることを見出した。この作用機構については明確ではないが、廃鋳物砂を高度に洗浄したものを加えることにより、固化体の略表面のみで起きていた炭酸化合物の生成が、固化体の内部でも炭酸化合物の生成が起きているものと考えられる。
本発明のセメント系固化体は、水硬性セメントに、廃鋳物砂を焼成することなく水洗浄してなる粒子径が0.6mm以下の洗浄廃鋳物砂が、水硬性セメントと洗浄廃鋳物砂との合計量に対する洗浄廃鋳物砂の質量比が5〜70%であり、かつ、均一に分散するように混合され、前記水硬性セメントが水硬反応により固化してなるセメント系固化体であって、大気中におかれて使用されることを特徴とする。
本発明のセメント系固化体の製造方法は、水硬性セメントに、廃鋳物砂を焼成することなく水洗浄してなる粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂を、水硬性セメントと洗浄廃鋳物砂との合計量に対する洗浄廃鋳物砂の質量比が5〜70%であり、かつ、均一に分散するように混合して洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを作成するステップと、前記洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントに少なくとも水を加えて水硬反応により固化させるステップとを含む。
本発明の洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントは、水硬性セメントに、廃鋳物砂を焼成することなく水洗浄してなる粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂が、水硬性セメントと洗浄廃鋳物砂との合計量に対する洗浄廃鋳物砂の質量比が5〜70%であり、かつ、均一に分散するように混合されている。
本発明の大気中炭酸ガスの吸着方法は、上記セメント系固化体を大気中におくことにより、大気中の炭酸ガスを該セメント系固化体に吸着させることを特徴とする。
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
1.洗浄廃鋳物砂
先ず、洗浄廃鋳物砂の製造方法の概略について説明すると、鋳物工場等から回収された廃鋳物砂は、まず大きな固形物をスクリーン等により除去される。除去された固形物はロッドミル等で粉砕し、再度スクリーン等で分級されたりする。こうして大きな固形物を除去された廃鋳物砂は、スパイラル洗浄機等で水洗され、磁選機によって鉄類が除去される。さらに分級機によって篩い分けされ、粒子径が0.15mm以上2mm以下の粗粒洗浄廃鋳物砂と、粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂とに分級される。
本明細書における、各物質の粒子径は、JIS A 1102の骨材のふるい分け試験方法により求めた値である。
廃鋳物砂は、鋳物の鋳造に用いられた鋳物砂型の砂の廃棄物である。そして、下記のように、鋳物砂は有機バインダー樹脂等の有機物を含むことから、鋳物の鋳造時の熱等により、含まれていた有機物が分解等された(分解等されていない有機物も含む)分解有機成分(例えば、炭素の酸化官能基等を有するもの)を含んでいる砂である。
鋳物としては、特に限定はされないが、鉄鋳物、アルミニウム鋳物、銅合金鋳物等が例示でき、鉄鋳物が好ましい。これは、アルミニウム鋳物や銅合金鋳物では、アルミニウムや銅合金が残留したり、銅合金には鉛等の有害な重金属を含むことがあるからである。
鋳物砂型としては、特に限定はされないが、ケイ砂に粘土、デンプン、植物性油、炭素等を含ませた生砂型や、ケイ砂にフェノール樹脂やフラン樹脂等の有機バインダー樹脂を含ませた有機砂型がある。
炭素の酸化官能基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、フェノール基等が例示できる。
洗浄廃鋳物砂の粒子径としては、特に限定はされないが、2mm以下であることが好ましい。また、洗浄廃鋳物砂は、粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂でもよいし、粒子径が0.15mm以上2mm以下の粗粒洗浄廃鋳物砂でもよいし、微粒洗浄廃鋳物砂と粗粒洗浄廃鋳物砂とを併せたものでもよい。
洗浄廃鋳物砂の配合率としては、特に限定はされないが、水硬性セメントとの合計量に対する質量比が5〜95%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましい。
また、洗浄廃鋳物砂が微粒洗浄廃鋳物砂である場合には、水硬性セメントとの合計量に対する質量比が10〜70%であることが好ましい。これは、この配合率であると、洗浄廃鋳物砂を用いた効果、即ち、略同じ粒子径の砂を用いた場合より、炭酸ガスの吸着能が優れるからである。より好ましくは、20〜50%である。
また、洗浄廃鋳物砂が粗粒洗浄廃鋳物砂である場合には、水硬性セメントとの合計量に対する質量比が20〜80%であることが好ましい。これは、この配合率であると、洗浄廃鋳物砂を用いた効果、即ち、略同じ粒子径の砂を用いた場合より、炭酸ガスの吸着能が優れるからである。より好ましくは、60〜80%である。これは、この配合率であると、比較的早い段階から、セメントのみからなる固化体より、炭酸ガスの吸着能が優れるからである。
また、洗浄廃鋳物砂が微粒洗浄廃鋳物砂と粗粒洗浄廃鋳物砂とを併せたものである場合には、水硬性セメントとの合計量に対する質量比が20〜80%であることが好ましい。これは、この配合率であると、洗浄廃鋳物砂として粗粒洗浄廃鋳物砂のみを用いた場合より、同じ配合率において、炭酸ガスの吸着能が優れるからである。より好ましくは、60〜80%である。これは、この配合率であると、洗浄廃鋳物砂として微粒洗浄廃鋳物砂のみを用いた場合より、同じ配合率において、炭酸ガスの吸着能が優れるからである。微粒洗浄廃鋳物砂と粗粒洗浄廃鋳物砂との配合割合(微粒洗浄廃鋳物砂:粗粒洗浄廃鋳物砂)としては、特に限定はされないが、2:8〜4:6であることが好ましい。
2.水硬性セメント
水硬性セメントとしては、特に限定はされないが、ポルトランドセメントを含むセメント(例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色セメント、超速硬性セメント)、アルミナセメント等が例示できる。
3.固化
水硬反応により固化させる方法としては、特に限定はされないが、常温養生、温水養生、蒸気養生等が例示できる。
4.洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメント
微粒洗浄廃鋳物砂は、粒子径が0.6mm以下であり、嵩が大きい上に比表面積も大きいことから、水に直接混ぜることは難しい。そのため、洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを用いることにより、水に混ぜ易くなり、比較的容易に微粒洗浄廃鋳物砂を含むセメント系固化体を作ることができる。また、洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントは、微粒洗浄廃鋳物砂だけでなく粗粒洗浄廃鋳物砂も水硬性セメントに均一に分散するように混合しておいたものでもよい。
5.セメント系固化体の製造方法
洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを作成するステップと、洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントに少なくとも水を加えて水硬反応により固化させるステップとを含むことにより、水に混ぜ易くなり、比較的容易に微粒洗浄廃鋳物砂を含むセメント系固化体を作ることができる。また、セメント系固化体の製造方法は、洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを作成するステップと、洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントに少なくとも水と粗粒洗浄廃鋳物砂とを加えて水硬反応により固化させるステップとを含むものでもよい。
6.セメント系固化体
セメント系固化体としては、特に限定はされないが、砂や砂利等の骨材を含まないもの、砂等の細骨材を含むモルタル体、細骨材と砂利等の粗骨材とを含むコンクリート体等が例示でき、建築・土木等の工事現場で大量に使用でき、その工事によってできた構造物等により、大規模に大気中の炭酸ガスを吸着することができることから、モルタル体及びコンクリート体であることが好ましい。
また、セメント系固化体は、特に限定はされないが、分解有機成分を2〜15質量%含んでいることが好ましい。これは、含まれている分解有機成分が2質量%未満では、十分な炭酸ガス吸着能を得ることが難しく、15質量%を超えると、硬化不良に成り易いためである。より好ましくは、2〜10質量%である。
セメント固化体は、現場打設による固化体でもよいし、プレキャスト等の工場打設による固化体でもよい。
セメント系固化体の用途としては、大気中で使用されるものであれば、特に限定はされないが、現場で打設されたコンクリート体又はモルタル体、建物、ダム、橋梁、法面補強体、建築用パネル(カーテンウォール、レリーフパネル、床パネル等)、防音用パネル、塀パネル、門柱、擁壁用ブロック、護岸用ブロック、土留用ブロック又はパネル、橋梁親柱、側溝蓋、コミュニティ水路、歩道板、歩車道用ブロック、花壇用ブロック、塀用ブロック等が例示できる。
本発明のセメント系固化体及びそれを用いる方法によれば、大気中の炭酸ガスを吸着することができる。また、本発明の洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを用いれば、容易にセメント系固化体を製造することができる。また、本発明のセメント系固化体の製造方法によれば、容易にセメント系固化体を製造することができる。
実施例7の破断面の一部の電子顕微鏡写真である。 実施例12の破断面の一部の電子顕微鏡写真である。 比較例1の破断面の一部の電子顕微鏡写真である。 比較例2の破断面の一部の電子顕微鏡写真である。 炭酸ガス吸着測定装置の模式図である。
本発明の実施例として粒子径が2mm以下の洗浄廃鋳物砂と普通ポルトランドセメントとを含むセメント混合物を養生したセメント系固化体を作成した(表1〜6)。但し、実施例12〜17は参考例である。また、比較例として、砂又はハイドロタルサイト等と普通ポルトランドセメントとを含むものを養生したセメント系固化体を作成した。
ここで先ず、本実施例に用いた洗浄廃鋳物砂の製造方法をついて説明する。
<固形物除去工程S1>
先ず、固形物除去工程S1として、鉄鋳物工場から廃棄された廃鋳物砂を収集し、50mm及び5mmの2段階のスクリーンに通してガラス、金属、レンガ等の夾雑物を除去し、粒子径が5mm未満のものを分取した。また、5〜50mmの分級部分のものについては、ロッドミルで、粒子径が5mm未満のものになるように破砕した。
<洗浄工程S2>
次に、洗浄工程S2として、固形物除去工程S1で得られた粒子径が5mm未満のものをスパイラル洗浄機に送り、水で洗浄を行った。
<鉄除去工程S3>
さらに、鉄除去工程S3として、洗浄工程S2によって水洗されたもの中の鉄類を湿式磁選機を用いて除去した。
<分取工程S4>
そして、分取工程S4として、バイブル分級機を用いて、粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂と、粒子径が0.15mm以上2mm以下の粗粒洗浄廃鋳物砂とに分けた。
<フィルタープレス工程S5>
さらに、分取工程S4で得られた微粒洗浄廃鋳物砂については、シックナーに送り、水中でゆっくり撹拌しながら沈殿濃縮した後、フィルタープレス装置によるろ過が行われた。
このようにして得られた洗浄廃鋳物砂の分解有機成分量を、地盤工学会のJGS 0221の土の強熱減量試験方法に準拠し、電気マッフル炉を用い、750±50℃にて1時間強熱で試験を行った。そして、試験前後の質量の差から求めた減少率を分解有機成分量とし、その値は、粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂は、18.1質量%であり、粒子径が0.15mm以上2mm以下の粗粒洗浄廃鋳物砂は、4.0質量%であった。
このようにして得られた洗浄廃鋳物砂のうち、粒子径が0.6mm以下の微粒洗浄廃鋳物砂について、その配合(5〜95質量%)を変えた14種類の実施例を、それぞれ1週間、密封気中で養生固化した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表1に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表1に示す。
比較例として、普通ポルトランドセメント又は微粒洗浄廃鋳物砂のみからなるもの、微粒洗浄廃鋳物砂のかわりに、普通砂を破砕して得た砂粉末(粒子径:0.6mm以下)を用い、その配合(20〜80質量%)を変えた3種類のもの、ハイドロタルサイト(配合率:70質量%)又は活性炭(配合率:55質量%、5質量%)を用いたものも、それぞれ1週間、密封気中で養生固化した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表1に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表1に示す。
以下に述べるものも含めて、実施例及び比較例には、次の原料を用いた。
セメントには普通ポルトランドセメントを用い、普通砂には山砂を用い、ハイドロタルサイトには、富田製薬の試薬を用い、活性炭には和光純薬工業の試薬を用いた。
以下に述べるものも含め全ての各供試体は、次のようにして作成した。
それぞれの配合の固形分(セメント等)の混合物に水を加えてペーストを作成し、そのペーストを型枠内に流し込み、その状態で、密封気中で7日間養生して、10cm×10cm×1cmの供試体Sを作成した。なお、上記ペーストの粘性は、JIS R 5201のセメントの物理試験方法、凝結試験の標準軟度程度になるように水の添加量を調整した。
以下に述べるものも含め全ての供試体の炭酸ガス(CO)の吸着率は、図5に示す装置を用い、次のようにして測定した。
内容積が8Lの吸着チャンバー11内に設けられた気体分散孔板15の上に供試体Sをセットし、ポンプ12を用いて、毎分200mlの大気(CO濃度:300〜600ppm)が、気体分散孔板15から吸着チャンバー11内に流入するようにして試験を行った。なお、大気の流量は、吸着チャンバー11の流出側で流量測定器13を用いて測定した。また、吸着チャンバー11内の流出口付近及び測定器14への流入口付近には、それぞれ気体拡散板16を設けた。
そして、所定の試験時間(12時間、24時間、48時間、72時間、96時間)毎に、吸着チャンバー11内に流入する大気の炭酸ガス濃度(C1)と吸着チャンバー11内から流出する大気の炭酸ガス濃度(C2)とを赤外線式炭酸ガス測定器14(ZG106モニター)を用いて測定し、その時の炭酸ガス吸着率を次に示す数式を用いて算出した。
表1に示すように、全ての実施例1〜14は、セメントのみからなる比較例1より炭酸ガス吸着率が高くなった。また、ハイドロタルサイトや活性炭を配合した比較例6〜8より炭酸ガス吸着率が高くなった。
また、微粒洗浄廃鋳物砂の配合率が20〜50質量%の実施例4〜9は、同じ配合率の普通砂粉末を用いた比較例4、5より炭酸ガス吸着率が高くなった。
次に、実施例4、8、10〜13及び比較例1の圧縮強度試験の測定値を表2に、実施例8、10〜12及び比較例1〜3の細孔分布の測定値を表3に示す。また、実施例7、12及び比較例1、2の破断面の電子顕微鏡写真を図1〜4に示す。図1〜4に示すように、セメントの配合率が大きくなるほど、層状の生成物(珪酸カルシウム水和物、水酸化カルシウム)が多く見られる。
圧縮強度試験は、JIS A 5308附属書3に準拠して行った。試験体は、室温密封養生にて、直径5cm高さ10cmのものを作成した。また、表2中の備考欄に、各試料の水比(W/P:添加した水の質量/セメント及び微粒洗浄廃鋳物砂の合計質量)を記載した。
細孔分布は、マイクロメリティックス社の商品名「オートポアIV 9500」を用いて、水銀圧入法により500〜0.0055μm(0.5mm〜5.5nm)の範囲で測定した。
次に、密封気中での1週間の養生後、屋外に所定期間(7日、14日、21日、49日)放置して屋外暴露した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表4に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表4に示す。
表4に示すように、屋外暴露期間7日においては、微粒洗浄廃鋳物砂の配合率が20〜80質量%の実施例4、9、12は、セメントのみからなる比較例1より炭酸ガス吸着率が高くなった。屋外暴露期間21日においては、微粒洗浄廃鋳物砂の配合率が20〜80質量%の実施例4、6、8、9、11、12は、セメントのみからなる比較例1より炭酸ガス吸着率が高くなった。
また、微粒洗浄廃鋳物砂の配合率が10〜70質量%の実施例2、4、6、8、9、11は、同じ屋外暴露期間においては、同じ配合率の普通砂粉末を用いた比較例4、5、9〜12より炭酸ガス吸着率が高くなった。なお、比較例9〜12の供試体についても上記のようにして作成したものである。
次に、洗浄廃鋳物砂として、粒子径が0.15mm以上2mm以下の粗粒洗浄廃鋳物砂を用い、配合(20〜80質量%)を変えた3種類の実施例を、それぞれ1週間、密封気中で養生固化した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表5に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表5に示す。
また、粗粒洗浄廃鋳物砂のかわりに、普通砂(粒子径:2mm以下)を用い、その配合(20〜80質量%)を変えた3種類の比較例を、それぞれ1週間、密封気中で養生固化した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表5に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表5に示す。
さらに、屋外に21日間放置して屋外暴露した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表5に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表5に示す。
なお、参考として、比較例1の表1、4に記載した値を表5に併記した。
表5に示すように、粗粒洗浄廃鋳物砂の配合率が80質量%の実施例15は、セメントのみからなる比較例1より炭酸ガス吸着率が高くなった。
また、屋外暴露期間21日においては、粗粒洗浄廃鋳物砂の配合率が20〜80質量%の実施例15〜17は、セメントのみからなる比較例1より炭酸ガス吸着率が高くなった。
粗粒洗浄廃鋳物砂の配合率が80質量%の実施例15及び粗粒洗浄廃鋳物砂の配合率が20質量%の実施例17は、同じ配合率の普通砂を用いた比較例13、15より炭酸ガス吸着率が高くなった。
次に、洗浄廃鋳物砂として、微粒洗浄廃鋳物砂と粗粒洗浄廃鋳物砂とを質量比で3:7に混ぜたものを用い、配合(20〜80質量%)を変えた3種類の実施例を、それぞれ1週間、密封気中で養生固化した供試体の炭酸ガス吸着率を測定し、その測定値を表6に示す。また、それぞれの配合並びに供試体の寸法及び質量も表6に示す。
なお、参考として、実施例4、9、12、15〜17、比較例1の表1に記載した値を表6に併記した。
表6に示すように、微粒洗浄廃鋳物砂と粗粒洗浄廃鋳物砂とを質量比で3:7に混ぜたもので配合率が20〜80質量%の実施例18〜20は、セメントのみからなる比較例1より炭酸ガス吸着率が高くなった。また、洗浄廃鋳物砂として粗粒洗浄廃鋳物砂のみを用いた実施例15〜17より同じ配合率において炭酸ガス吸着率が高くなった。
微粒洗浄廃鋳物砂と粗粒洗浄廃鋳物砂とを質量比で3:7に混ぜたもので配合率が80質量%の実施例18は、同じ配合率ではあるが洗浄廃鋳物砂として微粒洗浄廃鋳物砂のみを用いた実施例12より炭酸ガス吸着率が高くなった。
本実施例によれば、セメントのみからなる固化体より、特に屋外暴露後は、大気中の炭酸ガスの吸着率を高くすることができ、長期間の使用において、大気中の炭酸ガスの吸着率が比較的高い状態を維持することができる。
次に、本発明のセメント系固化体を工業的に製造する場合について説明する。
微粒洗浄廃鋳物砂は粒子径が0.6mm以下と非常に小さいことから、嵩が大きい上に比表面積も大きく、水に直接混ぜることは困難である。そこで、本発明のセメント系固化体としての擁壁用ブロックを次のようにして製造した。
先ず、微粒洗浄廃鋳物砂を普通ポルトランドセメントに均一に分散するように混合して、洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを作成した。
この洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントに粗粒洗浄廃鋳物砂と水とを加えて混練してスラリーを作成した。
そして、このスラリーを型枠に流し込んで養生固化して、擁壁用ブロックを得た。
このように、予めセメントに微粒洗浄廃鋳物砂を均一に混ぜておくことにより擁壁用ブロックの製造を容易にすることができた。
また、上記擁壁用ブロックを用いて、擁壁を形成した。
この擁壁用ブロックを用いて、擁壁を形成し、大気中においたことにより、大気中の二酸化炭素を長期間吸着することができる。なお、本発明のセメント系固化体は、擁壁用ブロックのみならず、課題を解決するための手段のところのセメント系固化体の段落(0017)に例示したものをはじめ、各種用途に用いることができる。
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。

Claims (3)

  1. 水硬性セメントに、廃鋳物砂を焼成することなく水洗浄してなる粒子径が0.6mm以下の洗浄廃鋳物砂が、水硬性セメントと洗浄廃鋳物砂との合計量に対する洗浄廃鋳物砂の質量比が5〜70%であり、かつ、均一に分散するように混合され、前記水硬性セメントが水硬反応により固化してなるセメント系固化体を大気中におくことにより、大気中の炭酸ガスを該セメント系固化体に吸着させることを特徴とする大気中炭酸ガスの吸着方法。
  2. 水硬性セメントに、廃鋳物砂を焼成することなく水洗浄してなる粒子径が0.6mm以下の洗浄廃鋳物砂が、水硬性セメントと洗浄廃鋳物砂との合計量に対する洗浄廃鋳物砂の質量比が5〜70%であり、かつ、均一に分散するように混合された洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメント。
  3. 水硬性セメントに、廃鋳物砂を焼成することなく水洗浄してなる粒子径が0.6mm以下の洗浄廃鋳物砂を、水硬性セメントと洗浄廃鋳物砂との合計量に対する洗浄廃鋳物砂の質量比が5〜70%であり、かつ、均一に分散するように混合して洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントを作成するステップと、
    前記洗浄廃鋳物砂混合水硬性セメントに少なくとも水を加えて水硬反応により固化させるステップとを含むセメント系固化体の製造方法。
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