本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、治療部位のより近くに接近して治療用カテーテルを案内することが出来ると共に、基端側デバイス数の削減と、これによるカテーテル長の短縮を図ることの出来る、新規な構造のガイディングカテーテルを提供することにある。
すなわち、本発明の第一の態様は、ガイディングカテーテルの基端側開口部から挿入されて先端側開口部から突出される長さを有すると共に、治療用カテーテルが挿通されて該治療用カテーテルの先端部分を治療部位まで案内モノレールタイプカテーテルであって、前記モノレールタイプカテーテルには、前記ガイディングカテーテルの前記先端側開口部から突出されて治療用カテーテルが挿通される挿通チューブが先端部分に設けられていると共に、前記挿通チューブには、該挿通チューブの基端側から延びて前記ガイディングカテーテルの前記基端側開口部から突出させられるワイヤが連結されている一方、該ワイヤを通じて前記挿通チューブに伝達される前記モノレールタイプカテーテルの操作力の伝達経路上に、前記ワイヤに所定の引張力が及ぼされた際に伸長可能とされた伸長部が設けられていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたモノレールタイプカテーテルを用いれば、モノレールタイプカテーテルをガイディングカテーテルに挿通して、冠動脈入口に位置させたガイディングカテーテルの先端側開口部からモノレールタイプカテーテルの挿通チューブを突出させることによって、モノレールタイプカテーテルの挿通チューブを冠動脈内に挿入することが出来る。そして、モノレールタイプカテーテルを治療用カテーテルのガイディングカテーテルとして、挿通チューブに治療用カテーテルを挿通することによって、挿通チューブで治療用カテーテルを冠動脈内の治療部位により近い位置まで案内して支持することが出来て、より優れたバックアップ力を得ることが出来る。
さらに、本発明におけるモノレールタイプカテーテルによれば、挿通チューブが先端部分にのみ設けられており、挿通チューブから基端側にはワイヤが設けられたモノレールタイプとされている。従って、薬液の注入や血液の逆流阻止は、モノレールタイプカテーテルが挿通されるガイディングカテーテルの基端側デバイスを用いて行なうこととなり、モノレールタイプカテーテルには、特別な基端側デバイスを設けることが不要とされる。その結果、基端側デバイス数の削減を図ることが出来る。それと共に、治療用カテーテルを、ガイディングカテーテルの基端側デバイスとそれに挿通されるモノレールタイプカテーテルの基端側デバイスの両方に挿通することも不要となり、ガイディングカテーテルの基端側デバイスから挿入するのみで足る。その結果、治療用カテーテルに要求されるカテーテル長の短縮を図ることが出来て、より多種の治療用カテーテルを使用することが出来る。
また、モノレールタイプカテーテルの一部をワイヤで構成したことによって、ガイディングカテーテルの内周面との摩擦が軽減されて、ガイディングカテーテルへのモノレールタイプカテーテルの挿抜をより容易に行なうことが出来る。また、ガイディングカテーテルの中間部分は、ワイヤが挿通されるのみで内部のクリアランスをより大きく確保出来ることから、治療用カテーテルの挿抜もより容易に行なうことが出来る。
ところで、本発明のモノレールタイプカテーテルは、筒状の挿通チューブと線状のワイヤの連結構造としたことによって、カテーテル本体が全長に亘って筒形状のものに比して、特に抜去時に、挿通チューブとワイヤの接続部分がガイディングカテーテルの内周面等に引っ掛かるおそれがある。しかし、本発明によれば、ワイヤに所定の引張力が及ぼされた場合に伸長する伸長部を設けたことによって、モノレールカテーテルの挿入時に際するワイヤへの押込力に対しては伸長部をほぼ非変形として、有効な押込力を確保することが出来る。また、モノレールカテーテルの抜去時、特に、挿通チューブが引っ掛かった状態で更にワイヤが引っ張られて、引っ掛かりの無い通常の抜去時に及ぼされるよりも大きな所定の引張力がワイヤに及ぼされた場合には、伸長部が伸びることにより、操作感によって引っ掛かりの発生を術者に認識させることが出来る。これにより、ワイヤや挿通チューブとの接続部の破断を防ぐことが出来ると共に、ワイヤに過度に大きな引張力が加えられることも回避されて、無理な引っ張りに起因するワイヤや挿通チューブとの接続部の破断を防止することが出来る。
なお、伸長部は、モノレールタイプカテーテルの操作力の伝達経路上に設けられていれば良いのであって、ワイヤ上に限らず、ワイヤの基端側に設けられるハブ等の操作部や、挿通チューブに設けるなどしても良い。例えば、挿通チューブの基端側を線状に延び出させて伸長可能とすることによって伸長部を形成すると共に、かかる伸長部の延び出し先端部分にワイヤを接続する等しても良い。また、ワイヤや操作部、挿通チューブを分断すると共に、かかる分断部分をゴム弾性体や樹脂ばね、金属ばね等の伸長可能な部材で連結して部分的に伸長可能とすることによって、伸長部を構成する等しても良い。
また、本発明における伸長部としては、復元することなく単に伸長するだけのものも含むが、好適には、本発明の第二の態様として、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記伸長部が、弾性伸長可能な弾性伸長部とされる。このようにすれば、ワイヤに及ぼされた通常の抜去時以上の引張力が解放された場合には、伸長部を伸長前の状態に復帰させることが出来る。これにより、例えば、挿通チューブの引っ掛かりが生じた際に、引っ張り操作を繰り返すことによって、引っ張りの度に引っ掛かりが解消出来たか否かを確認することが出来、伸長による引っ掛かり発生の認識効果やワイヤ破断防止効果を繰り返し得ることが出来る。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記伸長部が、前記ワイヤにおける前記挿通チューブ側の端部に設けられているものである。
本態様によれば、伸長部が挿通チューブに近接して位置されることから、挿通チューブの引っ掛かり以外の原因で伸長部が伸長することが軽減される。これにより、挿通チューブの引っ掛かりの際にのみ伸長部を伸長させて、操作感により術者に引っ掛かりの発生をより確実に伝えることが出来る。
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記ワイヤが波状に湾曲形成されることで前記伸長部が形成されているものである。このようにすれば、別途に伸長部材を準備して組み付ける必要も無く、伸長部を安価且つ容易に形成することが出来る。
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記ワイヤの先端部に異形の連結部が設けられており、該連結部において該ワイヤが前記挿通チューブに固着されているものである。このようにすれば、挿通チューブとの固着力をより強固に得ることが出来て、ワイヤの破断をより効果的に防止することが出来る。
本発明の第六の態様は、前記第一〜第五の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記挿通チューブが複数のチューブの重ね合わせ構造とされており、重ね合わされた該チューブ間に前記ワイヤの先端部が挟まれて両チューブが溶着されることにより該ワイヤの先端部が前記挿通チューブに固着されているものである。このようにすれば、接着剤を用いることなくワイヤを挿通チューブに固定出来ることから、生体への安全性を確保することが出来る。また、ワイヤ先端部の挿通チューブ外面への露出を防止出来ることから、ガイディングカテーテルへの引っ掛かりも軽減出来る。なお、挿通チューブは、ワイヤ固着部分のみが重ね合わせ構造とされていても良い。また、本態様において、より好適には、前記ワイヤが前記伸長部を含んで前記挿通チューブに固着される。このようにすれば、伸長部が挿通チューブに固着されることから、モノレールタイプカテーテルの挿入時には挿通チューブをより安定的に押し進めることが出来る。
本発明の第七の態様は、前記第一〜第六の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記伸長部の最大伸長量が10mm〜50mmの範囲内で設定されているものである。
このようにすれば、モノレールタイプカテーテルの挿抜の操作性を確保しつつ、ワイヤの破断を防止することが出来る。即ち、伸長部の最大伸長量を10mm以上に確保することによって、引っ掛かり状態で引っ張られた際に、即時に最大伸長量に達してワイヤを破断してしまうおそれを回避すると共に、伸長部の最大伸長量を50mm以下に抑えて過度の伸張を防止することによって、挿抜の操作性を確保することが出来る。
本発明に従うモノレールタイプカテーテルによれば、モノレールタイプカテーテルの挿通チューブをガイディングカテーテルの先端側開口部から突出させて冠動脈内に挿入することによって、治療部位により近い位置まで治療用カテーテルを案内して、治療部位により近い位置でバックアップ力を得ることが出来る。そして、モノレールタイプカテーテルにおいて、先端部分のみに挿通チューブを設けて、基端側をワイヤで構成したことから、モノレールタイプカテーテルに基端側デバイスを設けることが不要とされる。これにより、基端側デバイス数の削減が図られると共に、治療用カテーテルに要求されるカテーテル長を短縮することが出来て、より多種の治療用カテーテルを使用することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1に、ガイディングカテーテル構造体10を備えたカテーテル組立体12を示す。ガイディングカテーテル構造体10は、本発明の一実施形態としてのモノレールタイプカテーテル14が、ガイディングカテーテル16に挿通されて構成されている。そして、ガイディングカテーテル16に挿通されたモノレールタイプカテーテル14に対して、治療用カテーテルとしてのバルーンカテーテル18が、ガイドワイヤ20に外挿された状態で挿通されており、これらガイディングカテーテル構造体10とガイドワイヤ20、バルーンカテーテル18を含んでカテーテル組立体12が構成されている。
図2に、モノレールタイプカテーテル14を示す。モノレールタイプカテーテル14は、カテーテル本体22の基端部に操作部としてのハブ23が設けられた構造とされている。カテーテル本体22は、先端側に設けられた挿通チューブ24と、基端側に設けられて、挿通チューブ24の基端側から延びるワイヤ26を含んで構成されている。ハブ23は硬質のプラスチック等から形成された部材で、ワイヤ26の基端側端部に固定的に設けられている。なお、図2および後述する図5、図7については、理解を容易とするために、後述する被覆チューブ42を透視して示す。
図3および図4に、挿通チューブ24を示す。挿通チューブ24は、チューブ本体25に、後述する被覆チューブ42が外挿状態で固着された構造とされている。チューブ本体25は、略一定の断面形状をもって、所定の寸法に亘って延びる湾曲容易な円筒形状を有している。チューブ本体25は、内層チューブ28の外周が外層チューブ30で覆われた重ね合わせ構造とされており、内層チューブ28の内周面32によって、チューブ本体25の内周面が形成されている。但し、挿通チューブ24は円筒形状に限定されるものではなく、多角筒状などでも良い。
これら内層チューブ28および外層チューブ30の材質としては、熱可塑性樹脂が好適に採用され得るが、所定の形状保持特性と弾性とを有する材質であれば特に限定されない。外層チューブ30としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル等が採用され、放射線不透過性の造影剤が配合されることが好ましい。造影剤としては、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス等が例示される。また、内層チューブ28としては、上記例示の材質も採用可能であるが、バルーンカテーテル18等の操作性に影響を及ぼすため、摩擦係数が小さい、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系材質がより好適に採用される。なお、内層チューブ28の内周面32に、シリコンコーティングやフッ素樹脂による表面処理加工等の滑性化処理を施す等しても良い。また、外層チューブ30として、上記例示の材質を採用することも可能である。なお、内層チューブ28と外層チューブ30は、互いに同じ材質とされても良いし、異なる材料であっても良い。そして、内層チューブ28に外層チューブ30が外挿されて、互いに接着や溶着等されることにより、チューブ本体25が形成されている。
また、内層チューブ28と外層チューブ30の間には、外層チューブ30の内周部分にメッシュ状に埋め込まれた金属製補強体としてのブレード34が設けられている。ブレード34は、内層チューブ28と外層チューブ30の間の略全長に亘って設けられている。
さらに、挿通チューブ24の先端部分には、先端チップ36が設けられている。先端チップ36は、内層チューブ28および外層チューブ30の先端部分に溶着や接着、或いは一体成形される。先端チップ36は内層チューブ28や外層チューブ30と同様の上記例示の如き材質に造影剤が配合された筒形状とされており、その内径寸法が内層チューブ28の内径寸法と等しくされると共に、その外径寸法が外層チューブ30の外径寸法と等しくされている。本実施形態においては、先端チップ36に造影剤が配合されて、術中の放射線透視下で挿通チューブ24の先端位置が確認可能とされているが、造影剤に代えて、或いは加えて、挿通チューブ24の先端部分に、ステンレス鋼やプラチナ合金等の放射線不透過性の材質からなるマーカーを設ける等しても良い。
図5に示すように、挿通チューブ24の基端部には、ワイヤ26の延出先端部38が固着されている。ワイヤ26の延出先端部38には、延出方向(図5中、左方向)と反対側にコの字状に折り曲げられた連結部としての鉤状部40が形成されている。そして、鉤状部40がチューブ本体25における外層チューブ30の基端部の外周面上に重ね合わされると共に、チューブ本体25に対して別体形成された被覆チューブ42が鉤状部40の外側から重ね合わされて外層チューブ30に外挿状態で被着されることによって、鉤状部40が外層チューブ30と被覆チューブ42に挟まれて挿通チューブ24に固定されている。なお、被覆チューブ42の材質としては、外層チューブ30と同一の樹脂材質が好適に採用される。また、外層チューブ30への被覆チューブ42の被着は、接着剤を用いても良いが、生体への安全性の観点から、熱溶着が好適に採用される。例えば、外層チューブ30の外面にワイヤ26の鉤状部40を重ね合わせて、更に外側に被覆チューブ42を重ね合わせて必要に応じて外圧をかけながら両チューブ30,42を密着させて溶融させることによって、鉤状部40を埋め込むようにして被覆チューブ42が外層チューブ30に溶着される。
なお、本実施形態における被覆チューブ42は、鉤状部40が重ね合わされたチューブ本体25の基端部分にのみ被着されているが、被覆チューブ42をチューブ本体25の全長に亘って重ね合わせても良い。被覆チューブ42をチューブ本体25の全長に亘って重ね合わせる場合には、先端チップ36を被覆チューブ42に固着する等して、先端チップ36の外径寸法を被覆チューブ42の外径寸法と等しくすることが好ましい。また、被覆チューブ42の基端側端部はチューブ本体25から基端側に突出すると共に斜めに開口されて、ガイディングカテーテル16内でのバルーンカテーテル18の挿通チューブ24への挿入が容易とされていると共に、引っ掛かりを軽減してガイディングカテーテル16内での抜去方向の移動が容易とされている。
また、ワイヤ26において、挿通チューブ24に固着された延出先端部38から基端側には、伸長部44が形成されている。伸長部44は、ワイヤ26が波状に湾曲又は屈曲されて形成されている。伸長部44の最大伸長量は、好適には10mm〜50mm、より好適には、20mm〜40mmの範囲内で設定される。伸長部44の最大伸長量を10mm以上に確保することによって、挿通チューブ24の引っ掛かり時に伸長部44が即座に最大伸長量に達してワイヤ26が破断することを回避すると共に、最大伸長量を50mm以下に抑えることによって、過度の伸長を抑えると共にワイヤ26の強度を確保して、モノレールタイプカテーテル14の挿抜の操作性を確保することが出来る。
なお、伸長部44の形成位置は、ワイヤ26を通じて挿通チューブ24に伝達される操作力の伝達経路上であれば特に限定されるものではない。従って、ワイヤ26上に限定されず、挿通チューブ24やハブ23に設けることも可能である。本実施形態においては、ワイヤ26において鉤状部40に近接した先端側に伸長部44が形成されている。そして、伸長部44が鉤状部40と共にチューブ本体25の基端部に重ね合わされて、更に被覆チューブ42が重ね合わされて溶着されることにより、伸長部44は、鉤状部40と共にチューブ本体25と被覆チューブ42の間に挟まれて、挿通チューブ24に固着されている。
なお、被覆チューブ42を含む挿通チューブ24は、ガイディングカテーテル16に挿通可能な外径と、バルーンカテーテル18、必要に応じては、ステントを備えたバルーンカテーテル18を挿通可能な内径をもって形成される。具体的には、挿通チューブ24の外径寸法は、0.5mm〜2.5mm、より好適には、1.0mm〜2.0mmの範囲内で設定される。また、挿通チューブ24の内径寸法は、0.5mm〜2.0mm、より好適には、1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定される。
また、被覆チューブ42を除いたチューブ本体25の長さ寸法は、冠動脈入口に位置されたガイディングカテーテル16の後述する先端側開口部64から冠動脈内に延び出して、先端チップ36が治療部位付近にまで到達可能な長さ寸法、即ち、冠動脈入口から治療部位までの距離に相当する長さ寸法を有することが好ましい。具体的には、100mm〜500mm、より好適には、150mm〜300mmの範囲内で設定される。
さらに、挿通チューブ24とワイヤ26を含んだカテーテル本体22の長さ寸法は、挿通チューブ24が後述するガイディングカテーテル16の先端側開口64から突出可能で、且つハブ23が後述するガイディングカテーテル16の基端側開口65から突出されて操作可能状態を維持し得るように、ガイディングカテーテル16の長さ寸法よりも大きく設定される。具体的には、カテーテル本体22の長さ寸法は、後述するYコネクタ48を含むガイディングカテーテル16の全長に比して、500mm〜2000mm、より好適には、1000mm〜1500mmの範囲内でより長く設定される。
このような構造とされたモノレールタイプカテーテル14は、図1に示したように、ガイディングカテーテル16に挿通される。ガイディングカテーテル16としては従来公知のものが適宜に採用可能であることから、概略を説明するに留める。ガイディングカテーテル16は、湾曲可能な筒状の可撓性チューブ46の基端部に、基端側デバイスとしてのYコネクタ48が設けられた構造とされている。可撓性チューブ46は、モノレールタイプカテーテル14のチューブ本体25と同様に、金属製の補強材が埋設された、熱可塑性樹脂性のチューブからなる重ね合わせ構造とされている。また、可撓性チューブ46の先端には、造影剤が配合される等して放射線不透過性とされた先端チップ47が設けられている。このことから明らかなように、モノレールタイプカテーテル14のチューブ本体25は、従来公知のガイディングカテーテルのチューブと略同様の構造とされている。
可撓性チューブ46の基端側には、Yコネクタ48が設けられている。Yコネクタ48内には、図示しない逆止弁が設けられており、血液の逆流が阻止されるようになっている。また、Yコネクタ48には、本体部分から分岐するサイドアーム50が設けられており、サイドアーム50を通じて、薬液や造影剤が注入可能とされている。
さらに、モノレールタイプカテーテル14には、ガイドワイヤ20およびバルーンカテーテル18が挿通される。これらガイドワイヤ20およびバルーンカテーテル18としても、従来公知のものが適宜に採用可能であり、バルーンカテーテル18としては、従来公知のラピッドエクスチェンジ型のものが好適に用いられる。バルーンカテーテル18において湾曲可能とされたカテーテル本体52の先端部分には、ポリアミド,ポリエチレン,ポリエチレンエラストマー,ポリウレタン等の可撓性を有する軟質の合成樹脂や、ゴム膜等によって形成されたバルーン54が設けられている。そして、気体や液体等の圧力流体がカテーテル本体52を通じてバルーン54内に供給および排出されることによって、バルーン54の膨張と収縮が制御されるようになっている。
これらガイディングカテーテル16、モノレールタイプカテーテル14、ガイドワイヤ20、バルーンカテーテル18を含んでカテーテル組立体12が構成されており、ガイディングカテーテル16にモノレールタイプカテーテル14が挿通されると共に、モノレールタイプカテーテル14に対して、ガイドワイヤ20に外挿されたバルーンカテーテル18が挿通される。
このようなカテーテル組立体12を用いた経皮的冠動脈形成術(PTCA)により心臓の冠動脈内の狭窄部を拡張する際には、先ず、図6に示すように、患者の橈骨動脈56を穿刺して、穿刺箇所からシース58の先端を橈骨動脈56内に挿入する。次に、図示しない周知のガイディングカテーテル用のガイドワイヤをシース58を通じて橈骨動脈56内に挿入し、橈骨動脈56から上腕動脈60を経て、上行大動脈62まで挿入する。続いて、このガイディングカテーテル用のガイドワイヤにガイディングカテーテル16を外挿してシース58から橈骨動脈56に挿入し、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤに沿わせて先端側開口部64を冠動脈66の入口に位置させる。なお、ガイディングカテーテル16の先端チップ47には造影剤が配合されていることから、放射線撮像下で先端チップ47の位置が視認可能とされている。そして、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤのみを動脈内から抜去する。
次に、ガイディングカテーテル16に接続されたYコネクターの基端側開口部65からモノレールタイプカテーテル14のカテーテル本体22を挿入し、挿通チューブ24をガイディングカテーテル16の先端側開口部64から突出させて冠動脈66内に挿入して、先端チップ36を狭窄部68の手前に位置させる。なお、ガイディングカテーテル16の先端チップ47と同様に、先端チップ36には造影剤が配合されていることから、放射線撮像下で先端チップ36の位置が視認可能とされており、狭窄部68に近接して正確に位置させることが出来る。その後、バルーンカテーテル18用のガイドワイヤ20をガイディングカテーテル16に基端側開口部65から挿入すると共に、ガイディングカテーテル16内でモノレールタイプカテーテル14の挿通チューブ24に挿入して、挿通チューブ24の先端チップ36から冠動脈66内に挿入して、その先端が狭窄部68を通過する位置まで到達させる。
続いて、バルーンカテーテル18をガイドワイヤ20に外挿した状態で、ガイディングカテーテル16の基端側開口部65から挿入すると共に、ガイドワイヤ20に沿わせてガイディングカテーテル16内でモノレールタイプカテーテル14の挿通チューブ24に挿通する。そして、バルーン54を挿通チューブ24で案内しつつ、先端チップ36から冠動脈66内に挿入して、狭窄部68内に押し進める。その後、バルーン54を膨張させることによって、狭窄部68を拡張して、狭窄部68の血流を回復する。
なお、上記手技はあくまでも一例であって、PTCAが経橈骨動脈アプローチ(TRI)による手技を例に説明したが、本発明のカテーテル組立体12を経大腿動脈アプローチ(TFI)による手技に用いることも可能である。また、必要に応じて、バルーン54に周知のステントを外挿した状態で狭窄部68内に押し進めて、狭窄部68にステントを留置する等しても良い。更にまた、カテーテル組立体12を構成する各カテーテルやガイドワイヤの挿入順序は上記順序に限定されるものではない。
本実施形態に従うモノレールタイプカテーテル14を用いれば、冠動脈66の入口に位置されたガイディングカテーテル16の先端側開口部64から挿通チューブ24を突出させて冠動脈66内に挿入して、バルーンカテーテル18を冠動脈66内まで案内して冠動脈66内で支持することによって、狭窄部68により近い位置でバルーンカテーテル18へのバックアップ力を得ることが出来る。これにより、狭窄部68の狭窄が強かったり、狭窄部68が冠動脈66の入口から離れている場合でも、バルーンカテーテル18のバルーン54を狭窄部68内により容易に押し進めることが出来る。
また、カテーテル本体22の基端側がワイヤ26で形成されていることから、ガイディングカテーテル16の内周面との摩擦が軽減されて、ガイディングカテーテル16に対する挿抜が容易になる。それと共に、ワイヤ26によってガイディングカテーテル16内でのクリアランスがより大きく確保されることから、バルーンカテーテル18の挿抜もより容易に行なうことが出来る。
さらに、ガイディングカテーテル16のようなYコネクタ48も不要とされることから、基端側デバイス数の削減を図ることが出来る。その結果、モノレールタイプカテーテル14を用いる場合でも、モノレールタイプカテーテル14を用いない場合と同様に、バルーンカテーテル18をガイディングカテーテル16のYコネクタ48から挿入することが出来る。これにより、バルーンカテーテル18に要求されるカテーテル長を短くすることも出来て、より多種のバルーンカテーテル18を使用することが出来る。
また、ワイヤ26に伸長部44が設けられていることから、例えばガイディングカテーテル16からの抜去時において、挿通チューブ24がガイディングカテーテル16の内周面等に引っ掛かって、引っ掛かりの無い通常の抜去時に及ぼされるよりも大きな所定の引張力がワイヤ26に及ぼされた場合には、伸長部44がチューブ本体25と被覆チューブ42との固着面を破壊しつつ伸ばされることによって、ワイヤ26と挿通チューブ24との接続部分に及ぼされる引張力を緩和して、ワイヤ26の破断を防止することが出来る。更に、伸長部44が伸びる操作感により術者に挿通チューブ24の引っ掛かりを認識させることが出来て、過度の引張によるワイヤ26の破断も防止することが出来る。特に、本実施形態における伸長部44は、最も引張強度が弱く、破断し易い挿通チューブ24とワイヤ26の接続部分に近接して位置されていることから、破断を効果的に防止出来ると共に、挿通チューブ24の引っ掛かり以外の原因で伸長部44が伸長するおそれが軽減されて、挿通チューブ24の引っ掛かりに対するより確実な破断防止効果を発揮することが出来る。
さらに、伸長部44がチューブ本体25と被覆チューブ42で挟まれて、鉤状部40と共に挿通チューブ24に固着されていることから、ガイディングカテーテル16への挿入時には、挿通チューブ24に対して安定した押込力を及ぼすことが出来る。特に、鉤状部40がコの字のフック形状とされていることから、チューブ本体25への重ね合わせ面積をより大きく確保することが出来て、より強固な固着力を得ることが出来る。加えて、被覆チューブ42は鉤状部40および伸長部44を挟んでチューブ本体25に対して熱溶着で固着されている。これにより、ワイヤ26を強固に挟み込んで保持出来ると共に、接着剤を用いないことから、生体への安全性も確保される。また、線状のワイヤ26をチューブ本体25と被覆チューブ42の間に挟んで固着することから、挿通チューブ24の外周面上に部分的な突出部が形成されるようなおそれも少ない。これにより、挿通チューブ24の外周面形状を滑らかにすることが出来て、引っ掛かりのおそれをより軽減することが出来る。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、伸長部としては、復元することなく単に伸長変形のみが許容されたものでも良いが、図7に本発明の異なる態様の要部を示すように、伸長部を、伸長後に元の状態に復元可能な弾性伸長部70として構成する等しても良い。本態様における弾性伸長部70は、ワイヤ26が波状に湾曲又は屈曲されてなるばねとして形成されており、引っ掛かりの無い状態でワイヤ26に及ぼされるより大きな引張力が及ぼされた場合に弾性的に伸長する引張バネとされている。そして、ワイヤ26の鉤状部40がチューブ本体25と被覆チューブ42の間に挟まれて挿通チューブ24に固着されていると共に、チューブ本体25から突出する被覆チューブ42の基端部に、弾性伸長部70が収容位置されている。これにより、ガイディングカテーテル16内での弾性伸長部70の引っ掛かりのおそれが軽減されている。
本態様によれば、挿通チューブ24の引っ掛かり等により、ワイヤ26に対して、引っ掛かりの無い状態で及ぼされるより大きな引張力が及ぼされた場合には、弾性伸長部70が伸長することによって、ワイヤ26の破断を防止することが出来る。そして、弾性伸長部70は引張力が解除された場合には元の状態に復元可能であることから、例えば挿通チューブ24の引っ掛かりが生じている場合において、引っ張りとその解放の繰り返し操作を可能とすることによって、引っ掛かりが解消されたか否かを術者により明瞭に認識させることが出来て、より優れた操作性を得ることが出来る。
また、前述したように、伸長部はモノレールタイプカテーテルの操作力の伝達経路上に設けられておれば良い。例えば、前記実施形態において、ワイヤ26上に限らず、挿通チューブ24やハブ23を部分的或いは全体的に伸長可能として伸長部を設ける等しても良い。また、伸長部はこれら挿通チューブ24、ワイヤ26、およびハブ23から別体形成されていても良く、挿通チューブ24、ワイヤ26、ハブ23の何れか1つ或いは幾つかをそれぞれ適宜の位置で分断して、分断部分に例えばゴム弾性体や樹脂ばね、金属ばね等の伸長部材を設けることによって伸長部を形成する等しても良い。加えて、操作力の伝達経路上で伸長部を複数設けることも可能である。
また、ワイヤにおける挿通チューブへの連結部の具体的形状は前記鉤状部40の如きコ字形状に限定されるものではなく、例えばL字形状やつづら折れ形状、円形状、U字形状、十字形状、渦巻形状など、各種形状が適宜に採用可能である。更に、連結部をプレート形状とすることによって、より大きな固着面積を確保する等しても良い。
更にまた、ワイヤを挿通チューブにインサート成形して固着すること等も可能であり、そのようにすれば、二重のチューブの重ね合わせ構造も不要で、且つ強固に固着できる。例えば、挿通チューブの成形時や、内層チューブの外周に外層チューブを成形する例えば二色成形等の場合において、外層チューブの成形キャビティ内に内層チューブをセットすると共に、この内層チューブの外周面にワイヤの先端部を重ね合わせてセットして、成形キャビティに外層チューブの成形材料を充填することによって、外層チューブの成形と同時に、内層チューブの外周面に重ね合わされて外層チューブに埋設固着されたワイヤ先端部をインサート成形で固着することが出来る。なお、ワイヤ先端部は、引っ掛かり防止や生体安全性の観点から、前記実施形態の如き被覆チューブや上記外層チューブなどのチューブで覆われて接着剤を用いることなく固着されることが好ましいが、それらチューブで覆うことなく、挿通チューブの外面に接着等で簡易に固着しても良い。
また、治療用カテーテルは本発明の権利範囲ではなく、その種類によって本発明が何等限定されるものではないが、本発明のガイディングカテーテルに挿通される治療用カテーテルは、バルーンカテーテルに限定されるものではなく、ロータブレーター(RA)や方向性アテレクトミー(DCA)、その他従来公知の各種カテーテルが任意に採用可能である。