以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、素子、配線、接続部等を一部省略してある。
(第1の実施形態)
<液晶装置>
まず、第1の実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置の構成について図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す図である。詳しくは、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は図1(a)中のA−A’線に沿った断面図である。図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の表示領域の拡大平面図である。詳しくは、図2は、液晶装置を観察側から見た図であり、図3の液晶パネルに図5の視差バリアーを重ねた状態を示した平面図でもある。図3は、第1の実施形態に係る電気光学パネルとしての液晶パネルの拡大平面図である。図4は、第1の実施形態に係る液晶装置の模式断面図である。詳しくは、図4は、図2中のB−B’線に沿った断面図である。図5は、第1の実施形態に係る光学フィルターとしての視差バリアーの拡大平面図である。なお、本明細書では、液晶装置の観察側表面の法線方向から見ることを「平面視」とも呼ぶ。
本実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置は、スイッチング素子としてTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)素子を備えたアクティブマトリックス型の液晶装置であるとともに、TN(Twisted Nematic)方式の透過型の液晶装置である。図1に示すように、液晶装置100は、電気光学パネルとしての液晶パネル1と、液晶パネル1に対向して配置された光学フィルターとしての視差バリアー50と、バックライト46と、を備えている。
以下では、液晶パネル1の視差バリアー50側の方向を「観察側」とも呼び、視差バリアー50とは反対側の方向を「背面側」とも呼ぶ。視差バリアー50は、遮光部51と開口部52とを有している(図2、図4、および図5参照)。視差バリアー50の観察側には偏光板45が配置され、液晶パネル1の背面側には偏光板44が配置されている。
液晶パネル1は、観察側に配置された第1の基板としての対向基板30と、対向基板30に対向配置された第2の基板としての素子基板10と、を有している。素子基板10と対向基板30とは、枠状のシール剤41を介して貼り合わされている。素子基板10、対向基板30、およびシール剤41によって囲まれた空間には、表示素子としての液晶層40が配置されている。
素子基板10上には、液晶層40を駆動するためのドライバーIC42が配置されている。偏光板44の背面側には、バックライト46が配置されている。液晶装置100は、バックライト46から入射した光を変調し、観察側に透過させることによって、表示領域2において表示を行う。
図3に示すように、液晶パネル1は2次元的に配列されたサブ画素4r,4g,4bを有しており、これらはそれぞれ赤(r)、緑(g)、青(b)の表示に寄与する(以下では、対応する色を区別しない場合には単にサブ画素4とも呼ぶ)。サブ画素4は、平面形状が矩形であり、短辺と長辺とを有している。サブ画素4の短辺に沿った方向を行方向と呼び、サブ画素4の長辺に沿った方向を列方向と呼ぶ。サブ画素4は、行方向および列方向にマトリックス状に配置されている。
3つの異なる色のサブ画素4r,4g,4bで、一つの画素6が構成される。画素6、すなわちサブ画素4r,4g,4bは、行方向においてこの順に繰り返し配置されている。サブ画素4は、列方向においては、同一の色に対応するサブ画素4が一列にストライプ状に並ぶように配置されている。隣り合うサブ画素4同士の間には、遮光性の樹脂からなる遮光層32が配置されている。つまり、遮光層32に囲まれた領域がサブ画素4の領域である。
図2に示すように、サブ画素4から視差バリアー50を通して観察側に射出される光は、第1の画像または第2の画像のいずれかを構成する。第1の画像を構成する光を射出するサブ画素4をサブ画素4R、第2の画像を構成する光を射出するサブ画素4をサブ画素4Lとも呼ぶ。行方向には、サブ画素4Rとサブ画素4Lとが交互に繰り返し配置されている。また、列方向にも、サブ画素4Rとサブ画素4Lとが交互に繰り返し配置されている。
また、第1の画像を構成する光を射出する画素6を画素6R、第2の画像を構成する光を射出する画素6を画素6Lとも呼ぶ。3つの異なる色のサブ画素4R(4r,4g,4b)で画素6Rが構成され、3つの異なる色のサブ画素4L(4r,4g,4b)で画素6Lが構成される。画素6Rは第1の画素に対応し、画素6Lは第2の画素に対応する。
視差バリアー50は、サブ画素4の観察側に配置されている。視差バリアー50は、光を遮光する遮光部51と、光を通過させる開口部52とを有している。なお、図2および図4では説明に必要な構成要素以外の構成要素を省略している。また、図2および図5では各開口部52の形状を矩形で示しているが、視差バリアー50における開口部52の形状は不均一であり、異なる形状の開口部52が混在している。開口部52の形状については後で詳述する。
図4に示すように、視差バリアー50は液晶パネル1の観察側の表面に略平行に配置されている。サブ画素4Rから射出され、開口部52を通過した光は、図4中右寄りに偏在する表示角度範囲3Rにおいて視認される。同様に、サブ画素4Lから射出され、開口部52を通過した光は、図4中左寄りに偏在する表示角度範囲3Lにおいて視認される。
表示角度範囲3Rのうち表示角度範囲VRでは、サブ画素4Rからの光のみが視認され、表示角度範囲3Lのうち表示角度範囲VLでは、サブ画素4Lからの光のみが視認される。よって、表示角度範囲VRでは第1の画像のみが視認され、表示角度範囲VLでは第2の画像のみが視認される。また、表示角度範囲VCでは、第1の画像および第2の画像の双方が視認される。このように、視差バリアー50は、第1の画像と第2の画像とを異なる方向に表示する障壁として機能する。
指向性表示が可能な液晶装置100によれば、例えば、表示角度範囲VR,VLに異なる観察者を位置させることにより、第1の画像と第2の画像とを当該異なる観察者に同時に視認させることができる。あるいは、表示角度範囲VR,VLに観察者の右目、左目がそれぞれ位置するように構成すれば、第1の画像が右目に入射し、第2の画像が左目に入射することとなるため、立体表示を行うことができる。
図5に示すように、視差バリアー50は、遮光部51と、サブ画素4(図2参照)に対応して2次元的に配列された開口部52とを有している。行方向には、所定数の開口部52で構成された開口部サイクル53Hが繰り返し配列されている。列方向には、所定数の開口部52で構成された開口部サイクル53Vが繰り返し配列されている。また、列方向において隣り合う開口部サイクル53Hは、行方向に開口部52の配置ピッチの1/2ずれるように配置されている。視差バリアー50は、開口部52がステップ状に配置された所謂ステップバリアーである。
開口部サイクル53Hは、例えば151列の開口部52で構成される。開口部サイクル53Hにおいて、開口部52は略等ピッチで配置されている。より具体的には、列1から列150までは等ピッチ、例えば0.120μmのピッチで配置されており、列151はそれとは異なるピッチ、例えば0.119μmのピッチで配置されている。つまり、開口部サイクル53Hにおける開口部52の配置ピッチとして、異なる2種類の配置ピッチが混在している。
一方、開口部サイクル53Vは、例えば123行の開口部52で構成される。開口部サイクル53Vにおいて、開口部52は略等ピッチで配置されている。より具体的には、行1から行122までは等ピッチ、例えば0.163μmのピッチで配置されており、行123はそれとは異なるピッチ、例えば0.162μmのピッチで配置されている。開口部サイクル53Vにおける開口部52の配置ピッチとしても、異なる2種類の配置ピッチが混在している。
ここで、例えば、図4において表示角度範囲VR,VLに観察者の右目、左目がそれぞれ位置するように構成する場合、観察者の右目−左目間の距離をE(図示しない)、サブ画素4の配置ピッチをPとすると、開口部52の理想的な配置ピッチBは、B=2PE/(P+E)で求められる。開口部サイクル53Hおよび開口部サイクル53Vにおいて、開口部52はこの理想的な配置ピッチBで形成されることが望ましい。
しかしながら、視差バリアー50の開口部52を理想的な配置ピッチBで形成することは、製造工程における加工能力上困難である場合が多い。そのため、製造可能な複数の異なる配置ピッチを混在させることで、開口部サイクル53Hおよび開口部サイクル53Vのそれぞれにおいて開口部52の平均の配置ピッチを理想的な配置ピッチBに近付けている。
例えば、行方向における開口部52の理想的な配置ピッチBを0.119993μmとする。開口部サイクル53Hにおける開口部52の平均配置ピッチBaは、以下の式で求められ、理想的な配置ピッチBと同じ値となる。
Ba=(0.120×150+0.119)/151
開口部サイクル53Vにおける開口部52の平均配置ピッチBaも、同様にして求められる。
次に、開口部52の形状および配置について設計上の構成を、図6、図7、図8、および図9を参照して説明する。図6、図7、図8、および図9は、第1の実施形態に係る視差バリアーにおける開口部の設計上の構成を説明する図である。詳しくは、図6(a)は、開口部52の基本形状を示す平面図であり、図6(b)は、開口部52の異なる形状の一例を示す平面図である。図7、図8、および図9は、開口部サイクル53Hおよび開口部サイクル53Vにおける開口部の形状および配置を説明する図である。なお、図7および図9では、開口部の形状および配置をわかりやすく示すため、列方向において隣り合う開口部52を一列に(行方向に1/2ピッチ分ずらさずに)図示している。
図6(a)に示すように、開口部52の基本形状は、第1の辺としての短辺52aと、短辺52aと交差する方向に位置する第2の辺としての長辺52bとを有する矩形である。短辺52aの長さは、例えば0.030μmであり、長辺52bの長さは、例えば0.106μmである。開口部52の領域を短辺52aに平行な線(図6(a)に破線で示す)により、例えば0.001μmの幅で仮想的に分割したとすると、開口部52はこれらの線で区切られた0.001μm×0.030μmの小領域52cが106個集合したものであるとみなすことができる。開口部サイクル53Hの列151(図7、図9参照)に配置された開口部52は、図6(a)に示す矩形状である。
図6(b)に示す開口部52は、図6(a)に示す矩形に対して、106個の小領域52cのうち所定の数の小領域52cが、所定の側に所定の長さ、例えば0.001μmだけ短辺52aに平行に移動した形状を有している。このように基本形状とは異なる形状の開口部52は、2つの矩形を組み合わせた多角形状を有しているともいえる。
図7に示すように、開口部サイクル53Hの列1における開口部52は、開口部52の基本形状に対して、一方の短辺52a側の小領域52cの一つが、短辺52aに平行に、かつ隣り合う開口部サイクル53Hの列151側に0.001μm移動した形状を有している。ここで、開口部52の短辺52a(図6参照)の長さは0.030μmであり、列151以外の開口部52は0.120μmの等ピッチで配置されているので、列1における開口部52と隣り合う開口部サイクル53Hの列151における開口部52との間隔は、0.090μmとなる。列1の開口部52において、小領域52cが隣り合う開口部サイクル53Hの列151側に移動した部分では、隣り合う列151における開口部52との間隔は他の部分と異なり、0.089μmとなる。
次に、開口部サイクル53Hの列2における開口部52は、列1における開口部52の形状に対して、列1で移動した小領域52cに隣り合う小領域52cが、短辺52aに平行に列1側に移動した形状を有している。したがって、列2の開口部52において、列1における開口部52に対して新たに小領域52cが移動した部分では、列1の開口部52との間隔は0.089μmとなり、他の部分の0.090μmとは異なる。
列3における開口部52は、列2における開口部52に対して小領域52cの移動がなく、列2における開口部52と同じ形状を有している。また、列4における開口部52は列3における開口部52に対して小領域52cが一つ移動した形状を有しており、列5における開口部52は列4における開口部52に対してさらに小領域52cが一つ移動した形状を有している。列6における開口部52は、列5における開口部52に対して小領域52cの移動がなく、列5における開口部52と同じ形状を有している。
図8では、開口部サイクル53Hの1から151までの各列における開口部52の形状を、列番号と、新たに移動した小領域数と、移動した全小領域数との対比表で示している。新たに移動した小領域数とは、列n−1における開口部52に対して列nにおける開口部52で新たに移動した小領域52cの数のことをいう。また、移動した全小領域数とは、列1から列nまでに移動した全小領域52cの数のことをいう。
図8に示すように、列1から列151までの開口部サイクル53H内で、開口部52の領域を0.001μmの幅で区分した小領域52cが一つずつ移動され、最終的には106個すべての小領域52cが移動される。このように、移動した小領域52cの数を順次増加させることで、開口部52の形状は列により異なる。
ただし、106個の小領域52cを151列内で一つずつ移動させるため、列1から列151までの間に3列毎または4列毎に1回程度小領域52cが移動しない列がある。つまり、開口部サイクル53H内に配列された開口部52において、小領域52cの数が同じ数とされる部分が複数存在した状態で増加し、互いに隣り合う列間で開口部52の形状が同じ場合が存在する。
図9に示すように、列150における開口部52では、105個の小領域52cが列149側に0.001μm移動し、残り1個の小領域52cが列149における開口部52に対して0.120μmのピッチで配置された状態となっている。そして、列151における開口部52では、106個の小領域52cすべて、すなわち開口部52の全領域が列150側に0.001μm移動している。つまり、列150における開口部52に対して、列151における開口部52は実質的に0.119μmのピッチで配置されたこととなる。また、これにより、列151における開口部52は、基本形状である短辺52aと長辺52bとを有する矩形となる。
なお、図6、図7、および図9では、設計上の構成方法をわかりやすく示すため、小領域52cの数(破線の数)を少なく示している。また、小領域52cは設計上の構成単位としての仮想的な区分であり、視差バリアー50における開口部52には図6、図7、および図9に破線で示す区切りは存在しない。
このように、本実施形態の視差バリアー50は、開口部サイクル53H内に様々な形状の開口部52を備えている。また、開口部52の形状を、開口部52の領域を仮想的に区分した小領域52cを所定の数ずつ移動させた形状とすることで、互いに隣り合う開口部52間での形状の差異は観察者にほとんど認識されない程度に小さくなっている。なお、行1から行123までの各行における開口部サイクル53H内の開口部52の配列は共通である。
ところで、従来の構成のように、同じ形状の開口部が複数の異なる配置ピッチで配列された視差バリアーでは、サブ画素の配置ピッチに基づく開口部の理想的な配置ピッチと実際の配置ピッチとのずれにより、視差バリアーの各開口部を通過して観察者側に進む光の強度に差が生じる。そのため、各開口部を通過した光が干渉しあってスジ状のムラ(干渉縞)が発生し観察者に視認されることがある。また、第1の画像または第2の画像のうち一方の画像の表示に寄与する光を視認する視方向から、他方の画像の表示に寄与する光が混在して視認されるクロストークが発生することがある。このようなスジ状のムラやクロストークの発生は、液晶装置等の電気光学装置における表示品位の低下を招くこととなる。
これに対して、本実施形態に係る視差バリアー50は、行方向に位置する開口部サイクル53Hに、観察者にほとんど認識されない程度に小さな差異で様々に異なる形状を有する開口部52を備えている。このため、行方向における開口部52の配置ピッチと理想的な配置ピッチとの間にずれがあっても、そのずれ量が開口部サイクル53Hの中で分散されるので、光の強度の差が目立ちにくくなる。これにより、行方向における各開口部を通過した光の干渉を抑制できるので、従来の構成の視差バリアーに比べてスジ状のムラの発生が抑えられる。また、同様にして、従来の構成の視差バリアーに比べてクロストークの発生が抑えられる。この結果、表示品位の高い液晶装置100を提供することができる。
なお、本実施形態における視差バリアー50および液晶装置100の構成は、3つ以上の異なる方向に異なる画像を指向性表示する電気光学装置にも適用可能である。
(第2の実施形態)
<視差バリアー>
次に、第2の実施形態に係る液晶装置は、第1の実施形態に係る液晶装置に対して、視差バリアーの構成が異なっているが、その他の構成は同じである。また、第2の実施形態に係る視差バリアーは、第1の実施形態に係る視差バリアーに対して、開口部の形状と配置とが異なっているが、その他の構成は同じである。したがって、ここでは、第2の実施形態に係る視差バリアーの開口部の形状と配置について説明する。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
図10、図11、図12、および図13は、第2の実施形態に係る視差バリアーにおける開口部の設計上の構成を説明する図である。詳しくは、図10(a)は、開口部54の基本形状を示す平面図であり、図10(b)は、開口部54の異なる形状の一例を示す平面図である。図11、図12、および図13は、開口部サイクル53Hおよび開口部サイクル53Vにおける開口部の形状および配置を説明する図である。
図11および図13に示すように、第2の実施形態に係る視差バリアー55は、第1の実施形態に係る視差バリアー50と同様に、行方向に沿って配列された151列の開口部54で構成される開口部サイクル53Hと、列方向に沿って配列された123行の開口部54で構成される開口部サイクル53Vとを有している。視差バリアー55は、開口部54がステップ状に配置されたステップバリアーである。なお、図11および図13では、開口部54の形状および配置をわかりやすく示すため、列方向において隣り合う開口部54を一列に(行方向に1/2ピッチ分ずらさずに)図示している。
開口部サイクル53Hにおいて、開口部54は、列1から列150までは0.120μmの等ピッチで配置されており、列151は0.119μmのピッチで配置されている。また、開口部サイクル53Vにおいて、開口部54は、行1から行122までは0.163μmの等ピッチで配置されており、行123は0.162μmのピッチで配置されている。
図10(a)に示すように、開口部54の基本形状は、第1の実施形態に係る視差バリアー50が備える開口部52と同様に、長さが0.030μmの短辺54aと長さが0.106μmの長辺54bとを有する矩形である。この開口部54の領域を長辺54bに平行な線(図10(a)に破線で示す)により、例えば0.001μmの幅で仮想的に分割したとすると、開口部54はこれらの線で区切られた0.106μm×0.001μmの小領域54cが30個集合したものであるとみなすことができる。開口部サイクル53Vの行1、行2、行3(図11参照)に配置された開口部54は、図10(a)に示す矩形状である。
図10(b)に示す開口部54は、図10(a)に示す矩形に対して、30個の小領域54cのうち所定の数の小領域54cが所定の側に所定の長さ、例えば0.001μmだけ長辺54bに平行に移動した形状を有している。このように基本形状とは異なる形状の開口部54は、2つの矩形を組み合わせた多角形状を有しているともいえる。
図12では、開口部サイクル53Vの1から123までの各行における開口部54の形状を、行番号と、新たに移動した小領域54cの数と、移動した全小領域54cの数との対比表で示している。図12に示すように、行1から行123までの開口部サイクル53V内で、開口部54の領域を0.001μmの幅で区分した小領域54cが一つずつ移動され、最終的には30個すべての小領域54cが移動される。このように、移動した小領域54cの数を順次増加させることで、開口部54の形状は行により異なる。
ただし、30個の小領域54cを123行内で一つずつ移動させるため、行1から行123までの間で小領域54cが移動するのは4行毎に1回程度の割合となる。つまり、開口部サイクル53V内に配列された開口部54において、小領域54cの数が同じ数とされる部分が複数存在した状態で増加し、互いに隣り合う行間で開口部54の形状が同じ場合が存在する。
図11に示すように、行4、行5、行6、行7における開口部54は、開口部54の基本形状に対して、一方の長辺54b側の小領域54cの一つが、長辺54bに平行に、かつ開口部サイクル53Vの行3側に0.001μm移動した形状を有している。ここで、開口部54の長辺54b(図10参照)の長さは0.106μmであり、行123以外の開口部54は0.163μmの等ピッチで配置されているので、行3における開口部54と隣り合う行4における開口部54との間隔は、0.057μmとなる。行4の開口部54において、小領域54cが隣り合う行3側に移動した部分では、隣り合う行3における開口部54との間隔は他の部分と異なり、0.056μmとなる。
図13に示すように、行116から行119における開口部54では、29個の小領域54cが隣り合う行115(図示しない)側に0.001μm移動している。行120における開口部54では、30個の小領域54c、すなわち開口部54の全領域が行119側に0.001μm移動している。つまり、行120における開口部54は実質的に0.162μmのピッチで配置されたこととなる。行121から行123における開口部54は、行120における開口部54と同じ形状を有し、0.163μmのピッチで配置されている。
なお、図10、図11、および図13では、設計上の構成方法をわかりやすく示すため、小領域54cの数(破線の数)を少なく示している。また、小領域54cは設計上の構成単位としての仮想的な区分であり、視差バリアー55における開口部54には図10、図11、および図13に破線で示す区切りは存在しない。
このように、本実施形態の視差バリアー55は、開口部サイクル53V内に様々な形状の開口部54を備えている。また、開口部54の形状を、開口部54の領域を仮想的に区分した小領域54cを所定の数ずつ移動させた形状とすることで、互いに隣り合う開口部54間での形状の差異は観察者にほとんど認識されない程度に小さくなっている。なお、列1から列151までの各列における開口部サイクル53V内の開口部54の配列は共通である。
本実施形態に係る視差バリアー55は、列方向に位置する開口部サイクル53Vに、観察者にほとんど認識されない程度に小さな差異で様々に異なる形状を有する開口部54を備えている。このため、列方向における開口部54の配置ピッチと理想的な配置ピッチとの間にずれがあっても、そのずれ量が開口部サイクル53Vの中で分散されるので、光の強度の差が目立ちにくくなる。これにより、列方向における各開口部を通過した光の干渉を抑制できるので、従来の構成の視差バリアーに比べてスジ状のムラの発生が抑えられる。また、同様にして、従来の構成の視差バリアーに比べてクロストークの発生が抑えられる。
(第3の実施形態)
<視差バリアー>
次に、第3の実施形態に係る液晶装置は、上記実施形態に係る液晶装置に対して、視差バリアーの構成が異なっているが、その他の構成は同じである。また、第3の実施形態に係る視差バリアーは、上記実施形態に係る視差バリアーに対して、開口部の形状と配置とが異なっているが、その他の構成は同じである。したがって、ここでは、第3の実施形態に係る視差バリアーの開口部の形状と配置について説明する。上記実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
図14、図15、図16、および図17は、第3の実施形態に係る視差バリアーにおける開口部の設計上の構成を説明する図である。詳しくは、図14は、開口部の形状を説明する図である。図15、図16、および図17は、開口部サイクル53Hおよび開口部サイクル53Vにおける開口部の形状および配置を説明する図である。
図15、図16、および図17に示すように、第3の実施形態に係る視差バリアー57は、第1の実施形態に係る視差バリアー50、および第2の実施形態に係る視差バリアー55と同様に、行方向に沿って配列された151列の開口部56で構成される開口部サイクル53Hと、列方向に沿って配列された123行の開口部56で構成される開口部サイクル53Vとを有している。視差バリアー57は、開口部56がステップ状に配置されたステップバリアーである。なお、図15、図16、および図17では、開口部56の形状および配置をわかりやすく示すため、列方向において隣り合う開口部56を一列に(行方向に1/2ピッチ分ずらさずに)図示している。
開口部サイクル53Hにおいて、開口部56は、列1から列150までは0.120μmの等ピッチで配置されており、列151は0.119μmのピッチで配置されている(図17参照)。また、開口部サイクル53Vにおいて、開口部56は、行1から行122までは0.163μmの等ピッチで配置されており、行123は0.162μmのピッチで配置されている(図16、図17参照)。
なお、第3の実施形態に係る視差バリアー57では、第1の実施形態に係る視差バリアー50、および第2の実施形態に係る視差バリアー55とは異なり、行1から行123までの各行における開口部サイクル53H内、および列1から列151までの各列における開口部サイクル53V内の開口部56の配列は共通ではないが、互いに隣り合う列同士または行同士で開口部56の配列が同じ場合がある。
開口部56の基本形状は、第1の実施形態に係る視差バリアー50が備える開口部52、および第2の実施形態に係る視差バリアー55が備える開口部54と同様に、長さが0.030μmの短辺56aと長さが0.106μmの長辺56bとを有する矩形である。開口部サイクル53Hの列151と開口部サイクル53Vの行1、行2、行3とが交差する位置に配置された開口部56(図15参照)は、基本形状である矩形を有している。
この開口部56の領域を短辺56aに平行な線、および長辺56bに平行な線(図14(a)に破線で示す)により、それぞれ例えば0.001μmの幅で仮想的に分割したとすると、開口部56はこれらの線で区切られた0.001μm×0.001μmの小領域56cが106×30個集合したものであるとみなすことができる。
図14(a)は、開口部サイクル53Hの列151と開口部サイクル53Vの行4とが交差する位置に配置された開口部56を示す平面図である。図14(a)に示す開口部56は、基本形状である矩形に対して、列150(図示しない)側の長辺56bの一端部から同じ長辺56bの他端部に移動した小領域56c1が短辺56aから行3(図15参照)側に突出した形状を有している。この開口部56の形状は、図11に示す行4における開口部54の形状と同じであり、一列に位置する106個の小領域56cが、長辺56bに平行に0.001μmだけ行3側に移動した形状であるともいうことができる。
図14(b)は、開口部サイクル53Hの列1と開口部サイクル53Vの行4とが交差する位置に配置された開口部56を示す平面図である。図14(b)に示す開口部56は、図14(a)に示す小領域56c1と、行3側に一列に位置する30個の小領域56cとが、短辺56aに平行に0.001μmだけ列150側に移動した形状である。このように、基本形状とは異なる形状の開口部56は、複数の矩形を組み合わせた多角形状を有している。
図15に示すように、行1における開口部56は、開口部サイクル53Hの各列において、短辺56aに沿って一列に配置された30個の小領域56cを一つの単位として、順次短辺56aに平行に0.001μm移動した形状を有している。行2および行3についても同様である。したがって、行1から行3における開口部サイクル53H内の開口部56の形状および配置は、第1の実施形態の視差バリアー50における開口部サイクル53H内の開口部52の形状および配置と同じとなっている。
一方、列151における開口部56は、開口部サイクル53Vの各行において、長辺56bに沿って一列に配置された106個の小領域56cを一つの単位として、順次長辺56bに平行に0.001μm移動した形状を有している。したがって、列151における開口部サイクル53V内の開口部56の形状および配置は、第2の実施形態の視差バリアー55における開口部サイクル53V内の開口部54の形状および配置と同じとなっている。
次に、行4から行7までを見ると、列151における開口部56は図14(a)に示す形状を有しており、列1における開口部56は図14(b)に示す形状を有している。そして、列2における開口部56は、列1における開口部56に対して、短辺56aに沿って一列に位置する30個の小領域56cが、さらに短辺56aに平行に0.001μm移動した形状である。列3についても同様である。列4における開口部56は、列2および列3における開口部56に対して、短辺56aに沿って一列に位置する30個の小領域56cが、さらに短辺56aに平行に0.001μm移動した形状である。
このように、行4から行7における開口部サイクル53Hは、列151における開口部56に対して、短辺56aから突出した小領域56c1に加えて、短辺56aに沿って一列に配置された30個の小領域56cを一つの単位として、短辺56aに平行に0.001μm移動した形状を有している。行8以降の各行における開口部サイクル53Hについても同様の構成を有している。
図16に示すように、行123で一つの開口部サイクル53Vが終了し、図17に示すように、列151で一つの開口部サイクル53Hが終了する。ここで、行120と列151とが交差する位置に配置された開口部56では、106×30個の小領域56c、すなわち開口部56の全領域が、行方向において列150側に0.001μm移動し、列方向において行119側に0.001μm移動している。つまり、この位置における開口部56は、行方向において実質的に0.119μmのピッチで配置され、列方向において実質的に0.162μmのピッチで配置されたこととなる。
行121から行123、および次の開口部サイクル53Vにおける行1から行3までは、開口部56は行方向に0.120μmの等ピッチで配置され、各行における開口部サイクル53Hは行120と同様の構成を有している。
ところで、図17に示す行116から行119と列149および列150とが交差する位置に配置された開口部56では、小領域56c2が短辺56aおよび長辺56bから突出し孤立した状態となっている。このように小領域56c2が孤立する場合、製造工程における加工能力上困難であれば、小領域56c2は開口部56の領域の一部として形成されなくてもよい。
なお、図14、図15、図16、および図17では、設計上の構成方法をわかりやすく示すため、小領域56cの数(破線の数)を少なく示している。また、小領域56cは設計上の構成単位としての仮想的な区分であり、視差バリアー57における開口部56には図14、図15、図16、および図17に破線で示す区切りは存在しない。
このように、本実施形態の視差バリアー57は、行方向における開口部サイクル53H、および列方向における開口部サイクル53V内に様々な形状の開口部56を備えている。また、開口部56の形状を、開口部56の領域を仮想的に区分した小領域56cを所定の数ずつ移動させた形状とすることで、行方向および列方向の双方において互いに隣り合う開口部56間での形状の差異が観察者にほとんど認識されない程度に小さくなっている。
このため、本実施形態に係る視差バリアー57は、行方向および列方向のいずれか一方、または双方における開口部56の配置ピッチと理想的な配置ピッチとの間にずれがあっても、そのずれ量が分散され目立ちにくくなる。これにより、行方向および列方向における各開口部を通過した光の干渉を抑制できるので、従来の構成の視差バリアーに比べて行方向および列方向の双方においてスジ状のムラの発生が抑えられる。また、同様にして、従来の構成の視差バリアーに比べてクロストークの発生が抑えられる。
(電子機器)
上述した液晶装置100は、例えば、図18に示すような電子機器としてのカーナビゲーションシステム用の表示装置500に搭載して用いることができる。この表示装置500は、表示部510に組み込まれた液晶装置100によって、2つの画像を異なる表示角度範囲に指向性表示することができる。例えば、運転席側に地図の画像を表示するとともに、助手席側に映画の画像を表示することができる。その際、スジ状のムラやクロストークの発生が抑えられたより高品質な表示を行うことができる。
なお、液晶装置100は、上記表示装置500の他、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器等の各種電子機器に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
(変形例1)
上記実施形態の液晶装置が備える視差バリアーでは、開口部がステップ状に配置されたステップバリアーであったが、この形態に限定されない。視差バリアーは、開口部がストライプ状に配置されたストライプバリアーであってもよい。
図19は、変形例1に係る視差バリアーを説明する図である。上記実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。図19に示すように、変形例1に係る視差バリアー60は、遮光部61と、行方向に沿って配列された151列の開口部62で構成される開口部サイクル63Hと、列方向に沿って配列された123行の開口部62で構成される開口部サイクル63Vとを有している。視差バリアー60は、開口部62が列方向に沿って一列に配列された、所謂ストライプバリアーである。
視差バリアー60における開口部サイクル63Hおよび開口部サイクル63Vの構成は、それぞれ開口部サイクル53Hおよび開口部サイクル53Vと同じである。視差バリアー60における開口部の形状と配置は、第1の実施形態に係る視差バリアー50、第2の実施形態に係る視差バリアー55、および第3の実施形態に係る視差バリアー57のいずれと同じであってもよい。
視差バリアー60のように開口部62が列方向に沿って一列に配列された構成であっても、上記実施形態と同様に、各開口部を通過した光の干渉を抑制できるのでスジ状のムラの発生が抑えられるとともに、クロストークの発生が抑えられる。
(変形例2)
上記実施形態の液晶装置が備える視差バリアーでは、開口部の領域を仮想的に同じ大きさの小領域に等分し、行方向または列方向の開口部サイクルにおいて開口部の形状を所定の数だけ小領域を移動させた形状とする構成であったが、この形態に限定されない。開口部の領域を異なる大きさの小領域に仮想的に分割し、開口部の形状をこれらの小領域の組み合わせで構成された形状としてもよい。
(変形例3)
上記実施形態の液晶装置が備える視差バリアーでは、開口部の領域を仮想的に分割した小領域を、行方向または列方向の開口部サイクルにおいて開口部の一方の短辺側または一方の長辺側から順次移動させた形状とする構成であったが、この形態に限定されない。開口部の領域を仮想的に分割した小領域を、開口部の一方の短辺側と他方の短辺側、または一方の長辺側と他方の長辺側から交互に順次移動させた形状としてもよい。あるいは、短辺の中心部または長辺の中心部から両端部に向かって交互に順次移動させた形状としてもよい。
(変形例4)
上記実施形態の液晶装置が備える視差バリアーでは、開口部の基本形状が矩形であったが、この形態に限定されない。開口部の基本形状は、平行四辺形や他の多角形であってもよい。
(変形例5)
上記の実施形態では、液晶装置はTN方式の透過型の液晶装置であったが、この形態に限定されない。液晶装置は、TN方式と同様に素子基板と対向基板との間に生じる縦電界により液晶分子の配向制御を行う、VA(Vertical Alignment)方式やECB(Electrically Controlled Birefringence)方式等の液晶装置であってもよい。また、液晶装置は、横電界により液晶分子の配向制御を行う、FFS(Fringe-Field Switching)方式やIPS(In-Plane Switching)方式の液晶装置であってもよい。さらに、液晶装置は、透過表示領域と反射表示領域とを有する半透過反射型の液晶装置であってもよい。これらの液晶装置であっても、上記実施形態の液晶装置の構成を適用することができる。
(変形例6)
上記の実施形態では、電気光学装置は液晶装置であったが、この形態に限定されない。電気光学装置は、有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)を備えた有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL装置)やプラズマ表示素子を備えたプラズマディスプレイ装置等であってもよい。これらの電気光学装置であっても、上記実施形態の電気光学装置の構成を適用することができる。