JP5378897B2 - 鋳鋼片のガス切断方法及びガス切断装置 - Google Patents

鋳鋼片のガス切断方法及びガス切断装置 Download PDF

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Description

本発明は、例えば普通鋼や特殊鋼などの連続鋳造後の鋳片あるいは圧延後の鋼片などをガス切断する方法及び当該ガス切断方法を行うガス切断装置に関する。
ガス切断法は、プロパン(C)やアセチレン(C)などの可燃性の燃焼ガスを酸素と燃焼酸化反応させて、普通鋼、特殊鋼などの鉄鋼材料を切断する方法である。ガス切断法は、切断速度が速く、能率的であり、設備も簡単でランニングコストも安価であるなどの利点を有しており、一般的に広く利用されている。
しかしながら、ガス切断法では、切断溶鉄と酸化反応ドロスが鋳片や鋼片の下面に付着、成長する。このような付着物は、一般にバリやノロと呼ばれ、切断後の製品品質の重大な欠陥の原因となる。このため、切断の際に発生したバリをその後除去する必要があるが、バリの除去作業は、従来、人の手作業によって行われており、大変な重筋作業となっていた。
そこで、かかる人的作業を避けるため、ガス切断火口軸心部の切断酸素噴流口を囲続して配列した2重の同心環状配列の予熱炎墳流口から、4000〜5000Nl/h(ノルマルリットル/時間)流量の燃料ガスに中性炎又は酸素過剰炎が得られる混合比の酸素を加えた予熱用混合ガスを噴射する高速ガス切断方法が提案されている。(特許文献1)
また、垂直型連鋳機で形成されるスラブをガスカッタートーチからの火炎により切断する際に、スラブ溶融により生じるバリの生成付着部へノズルから噴射するエアジェットを斜め上方から衝突させて、前記バリを除去するスラブ切断時のバリ除去方法が提案されている。(特許文献2)
さらに、溶断された被溶断材の表面に、溶断に伴って付着した付着物を除去する付着物除去装置であって、付着物が付着した被溶断材を載置するテーブルと、このテーブル上で前記被溶断材に摺接するようにして、前記被溶断材の移動方向に対して交わる方向に配置された弾性材からなる除去部を備えた付着物除去装置が提案されている。(特許文献3)
特開平1−133675号公報 特開2003−112239号公報 特開2005−199299号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、燃料ガスと酸素の圧力を高くすることにより、切断溶鉄は粘性の高い酸化鉄に変化し易くなるため、切断溶鉄の流動性が低下し、強力な付着物を有するバリとなる。また、高い圧力でガスを噴射した場合、酸素を燃焼させる際の酸素炎が大きくなるため、鋼材の切断幅が大きくなり、製品の歩留まりが低下する。さらに、燃料ガスと酸素を噴射するノズルが劣化し易く、当該劣化したノズルから噴射される燃料ガスと酸素の気流が乱れることにより、鋼材の切断面が粗くなる。
特許文献2に記載された方法では、エアジェットを噴射することにより、切断溶鉄は粘性の高い酸化鉄に変化し易くなるため、この酸化鉄がスラブ表面に固着する。また、斜めからのエアジェットがスラブに衝突して、スラブ表面を部分的に溶削する。
特許文献3に記載された方法では、被溶断材の幅方向の反り等により、例えば被溶断材の幅方向中央部のバリを除去することができない。したがって、バリを完全に除去することができず、最終的に人の手作業によりバリを除去する必要がある。また、弾性材からなる除去部が磨耗するので寿命が短く、例えば人の手作業により付着物除去装置のメンテナンスを頻繁に行う必要がある。
以上のように、現状では、鋳鋼片に付着したバリを効率的に除去するには至ってない。なお、本願において「鋳鋼片」とは、「鋳片」と「鋼片」を総称したものであり、「鋳片」とは連続鋳造後の鋼材を意味し、「鋼片」とは鋳片を圧延後の鋼材を意味している。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、鋳鋼片に付着したバリを効率よく除去して、当該鋳鋼片を効率よくガス切断することを目的とする。
発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ガス切断に用いる可燃性の燃焼ガスに、例えばロウ付けに用いられるフラックスを構成する所定の元素を混合すると、当該元素の作用により鋳鋼片のバリを効率よく除去できることが分かった。これら所定のフラックスの構成元素とは、例えばP(リン)、Si(ケイ素)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、B(ホウ素)、ハロゲン族元素などである。なお、この元素の作用及び効果については、実施の形態において詳しく説明する。
このように燃焼ガスにフラックスの構成元素を良好に混入させるためには、フラックスを気化させることが最も好適である。フラックスを気化させる際に、フラックスをそのまま直接気化させることは、取り扱いが極めて困難であることから、実施の現場での運用の観点から、一旦フラックスをアルコールなどの溶媒に溶解させて液体フラックスを生成した後、当該液体フラックスを気化させることが便宜である。
また、発明者らが調べたところによれば、鋳鋼片のバリを効率よく除去するためには、燃焼ガスにフラックスの構成元素を所定量混合する必要があり、この所定量の元素は、液体フラックス中のフラックスの溶質濃度を15質量%以上にすることで得られることを新たに見出した。一方、燃焼ガスに混合されるフラックスの構成元素が多すぎると、切断後にこの元素が鋳鋼片の切断面に残留し、製品の品質を低下させるおそれがある。このため、液体フラックス中のフラックスの溶質濃度を50質量%以下にする必要があることを新たに見出した。したがって、液体フラックス中のフラックスの溶質濃度は15〜50質量%とする必要があることが分かった。
ここで、通常、連続鋳造後の鋳片の厚みは250〜400mm程度になっており、圧延後の鋼片の厚みは5〜300mm程度になっている。また、連続鋳造後の鋳片や圧延後の鋼片は、通常100℃以下まで冷却されている。したがって、本発明では、ガス切断の対象となる鋳鋼片は、厚みが5〜400mmであり、かつ温度が100℃以下としている。
かかる鋳鋼片に対して、上記液体フラックスを気化させた気化フラックスを燃焼ガスに混合させ、当該燃焼ガスと酸素を鋳鋼片に吹き付けたところ、吹き付ける際の条件によっては、鋳鋼片を効率よく切断できない場合があった。そこで、発明者らが鋭意検討を行い、次の条件で、ガス切断トーチから鋳鋼片に、気化フラックスを含有する燃焼ガスと酸素を吹きつけた場合、鋳鋼片を効率よく切断できることを新たに見出した。
ここで、鋳鋼片に吹き付ける酸素の圧力が0.3MPa未満の場合、製品の生産性が低下してしまう。一方、当該酸素の圧力が1.0MPaより大きい場合、鋳鋼片の切断幅が大きくなり、製品の歩留まりが低下する。またこの場合、ガス切断装置が高圧ガス対象設備となるため、取り扱いが難しくなる。したがって、ガス切断トーチから鋳鋼片に吹き付ける酸素の圧力は、0.3〜1.0MPaと規定した。
また、鋳鋼片に吹き付ける、気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力は特に規定されない。但し、0.02MPa未満の場合、酸素を効果的に燃焼させにくくなる。一方、当該燃焼ガスの圧力が0.11MPaより大きい場合、酸素を効果的に燃焼させることができるものの、燃焼ガスの消費量が多くなる。したがって、ガス切断トーチから鋳鋼片に吹き付ける、気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力は、0.02〜0.11MPaが好ましい。
さらに、ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に100〜600mm/分が適切となる。より具体的には、鋳鋼片の厚みが5〜50mmの場合、ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に300〜600mm/分が適切である。また、鋳鋼片の厚みが50mm超400mm以下の場合、ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に100〜300mm/分が適切である。このような範囲の切断速度が適切となる理由は次の通りである。すなわち、例えば各厚みの鋳鋼片において、ガス切断トーチの切断速度が下限値未満の場合、製品の生産性が低下してしまう。一方、各厚みの鋳鋼片において、ガス切断トーチの切断速度が上限値よりも大きい場合、切断速度が速過ぎて、切断面が荒れたり、さらに場合によっては鋳鋼片を切断できない。このため、ガス切断トーチの切断速度は上記範囲が適切となる。
本発明は、厚みが5〜400mmであり、かつ温度が100℃以下の鋳鋼片に対して、気化フラックスを含有する燃焼ガスと酸素とをガス切断トーチから吹き付けて、当該鋳鋼片を切断する鋳鋼片のガス切断方法であって、前記気化フラックスは、アルコール、アセトン、アミルアセテート、ベンゼン、四塩化炭素、トルエン、トリクロロエチレン、テルペン、キシレンの1種又は2種以上を組合せた溶媒に、P、Siが属する第1の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜30質量%であり、K、Na、Bが属する第2の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜20質量%であり、ハロゲン族元素が属する第3の元素群の3つの元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜30質量%であり残部がZn、Cu、Cs、S、C、H、N、Oの少なくともいずれかの元素からなる溶質を15〜50質量%混合した液体フラックスを気化したものであり、前記ガス切断トーチから前記鋳鋼片に吹き付ける前記酸素の圧力は、0.3〜1.0MPaであり、前記鋳鋼片の厚みが5〜50mmの場合、前記ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に300〜600mm/分であり、前記鋳鋼片の厚みが50mm超400mm以下の場合、前記ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に100〜300mm/分であることを特徴としている。そして、上述したように、前記ガス切断トーチから前記鋳鋼片に吹き付ける前記気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力は、0.02〜0.11MPaが好ましい。なお、第3の元素群のハロゲン族元素は、例えばF(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、I(ヨウ素)などである。また、気化フラックスを混合する前の燃焼ガスには、例えばプロパンガスやアセチレンガスが用いられる。
以上のように、本発明によれば、適切な溶質濃度の液体フラックスを気化させた気化フラックスを用いるので、鋳鋼片に付着したバリを効率よく除去することができる。また、気化フラックスを含有する燃焼ガスと酸素を上記条件で鋳鋼片に吹き付けるので、鋳鋼片を効率よく切断することができる。
また、上記液体フラックスを生成する場合、フラックスは、溶媒に溶け難いという問題がある。例えばこのフラックスを溶媒に混入して攪拌させただけでは、2〜3質量%程度しか溶解しないことを確認している。そこで、発明者らが鋭意検討したところ、フラックスを混入した溶媒に30000ガウス以上の磁場と15V以上の電圧を付加すると、フラックスは溶媒に溶解し易くなり、15〜50質量%の溶質濃度でも溶解することが可能であることを新たに見出した。
別な観点による本発明は、前記鋳鋼片のガス切断方法を行うガス切断装置であって、前記酸素を供給する酸素供給源と、前記液体フラックスを気化させて前記気化フラックスを生成する気化装置と、前記酸素供給源からの酸素と、前記気化装置からの気化フラックスを含有する燃焼ガスとを鋳鋼片に吹き付けるガス切断トーチとを備え、前記気化装置は、前記液体フラックスを貯留する容器と、前記容器内の液体フラックスに燃焼ガスを吹き込むガス供給ノズルと、を有し、前記ガス供給ノズルから吹き込まれた燃焼ガスによって、前記容器に貯留された液体フラックスを気化させることを特徴としている。
本発明によれば、鋳鋼片に付着したバリを効率よく除去して、当該鋳鋼片を効率よくガス切断することができる。
本実施の形態にかかるガス切断装置の構成の概略を示す説明図である。 ガス切断トーチの構成の概略を示す縦断面図である。 ガス切断トーチの構成の概略を示す横断面図である。 気化装置の構成の概略を示す縦断面図である。 液体フラックス生成装置の構成の概略を示す縦断面図である。
以下、鋳鋼片をガス切断する本実施の形態について説明する。発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ガス切断に用いる、プロパンガスやアセチレンガスなどの可燃性の燃焼ガスに、P、Si、K、Na、B、F、Cl、Br、Iの少なくともいずれかの元素(以下、「切断改善元素」という場合がある。)を混合すると、鋳鋼片のバリを効率よく除去できることを見出した。先ず、これら切断改善元素について説明する。
切断改善元素は、各元素がガス切断の際に発揮する作用効果により、次の3種類の元素群に分類することができる。
(1)第1の元素群:P、Si
(2)第2の元素群:K、Na、B
(3)第3の元素群:F、Cl、Br、I(ハロゲン族元素)
第1の元素群には、主として溶鉄やドロスの融点を降下させると共に流動性を向上させる効果がある。鋳鋼片の切断時において、第1の元素群の元素が溶鉄やドロス中に連続侵入すると、侵入型固溶体を作り、溶鉄やドロスの融点を下げることができる。これによって、溶鉄やドロスの流動性が向上し、鋳鋼片の切断面に付着するのを抑制することができる。
第2の元素群には、主として溶鉄やドロスの酸化を防止する効果がある。これによって、鋳鋼片の表層に形成される酸化鉄を除去する手間を省くことができるので、ガス切断を短時間で行うことができる。また同時に、酸化鉄が形成され難いので、鋳鋼片の切断面が良好になる。
第3の元素群には、主として溶鉄やドロスの表面張力を小さくする効果がある。鋳鋼片の切断時において、第3の元素群の元素が溶鉄やドロス中に侵入すると、溶鉄やドロスの表面張力が小さくなる。これによって、溶鉄やドロスの流動性が向上し、鋳鋼片の切断面を清浄化することができる。
上述の第1〜第3の元素群は、フラックスの構成元素として存在する場合が圧倒的に多く、溶質の残部の元素である、Zn、Cu、Cs、S、C、H、N、Oの少なくともいずれかの元素は、フラックスの溶質中で上述した切断改善元素を結合する機能を果たしている。
ここで、燃焼ガスにフラックスの構成元素を良好に混入させることが重要であるが、そのためには、フラックスを気化させることが最も好適である。フラックスを気化させる際に、フラックスをそのまま直接気化させることは、取り扱いが極めて困難であることから、実際の現場での運用の観点から、一旦フラックスをアルコールなどの溶媒に溶解させて液体フラックスを生成した後、当該液体フラックスを気化させることが便宜である。次に、これらフラックスと溶媒の組成について説明する。
フラックスとしては、例えばホウ砂・ホウ酸塩、ホウフッ化物、フッ化物(フロライド)、塩化物(クロライド)、臭化物(ブロマイド)、酸化物(オキサイド)、無機類、有機酸類、アミン・アミド類、有機ハロゲン類などがある。ホウ砂・ホウ酸塩としては、ホウ酸(HBO)、ホウ砂(Na)などがある。ホウフッ化物としては、ホウフッ化カリウム(KBF)、ホウフッ化水素酸(HBF)、ホウフッ化銅(Cu(BF))などがある。フッ化物としては、フッ化水素酸(HF)、フッ化カリウム(KF)などがある。塩化物としては、塩化水素酸(HCl)、塩化カリウム(KCl)などがある。臭化物としては、臭化水素酸(HBr)、臭化カリウム(KBr)などがある。酸化物としては、酸化カリウム(KO)、酸化ホウ素(B)などがある。無機類としては、リン酸(HPO)、炭酸カリウム(KCO)などがある。有機酸類としては、シュウ酸((COOH))、クエン酸((OH)C(COOH))などがある。アミン・アミド類としては、メチルアミン((CH)・NH)、ジメチルアミン((CH)・NH)などがある。有機ハロゲン類としては、アニリン塩酸塩(CNH・HCl)、ジエチルアミン塩酸塩(CNH・HCl)などがある。その他、ケイ酸エチル((CO)Si)、ホウ酸トリメチル((CHO)B)、リン酸トリメチル((CHO)PO)、KI(ヨウ化カリウム)、NHI(ヨウ化アンモニウム)などがある。また、融点で分類すると、180〜450℃までの融点化合物として、塩化亜鉛(ZnCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、ホウフッ化カリウム(KBF)、4塩化ケイ素(SiCl)、5酸化リン(P)、リン酸ナトリウム(Na10)、臭化リン(PBr)、酸性フッ化カリウム(KHF)、2リン酸カリウム(KHPO)、硫酸ナトリウム(Na)、ジエチルアミン塩酸塩(CNH・HCl)、ブチルアミン塩酸塩(CH(CH)NH・HCl)、尿素(CO(NH))などがある。450〜900℃までの融点化合物としては、ホウ酸(HBO)、フッ化カリウム(KF)、ホウ砂(Na)、ケイフッ化カリウム(KSiF)、酸化ホウ素(B)などがある。900℃以上の融点化合物として、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸セシウム(CsCO)、3リン酸ナトリウム(NaPO)、フッ化ナトリウム(NaF)などがある。
このフラックスの溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチルアルコール、メチルアルコール、イロプロピルアルコール、アミルアルコール、アセトン、アミルアセテート、ベンゼン、四塩化炭素、トルエン、トリクロロエチレン、テルペン、キシレンなどがある。
そして、液体フラックスを生成する際には、第1〜第3の元素群の少なくとも一の元素群に属する元素が含まれるように、より好ましくは第1〜第3の元素群に属する各元素がすべて含まれるように、例えば4〜10種類のフラックスを選択する。この際、液体フラックス中の溶質は、第1の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜30質量%であり、第2の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜20質量%であり、第3の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜30質量%である。
また、上述した溶媒から1種類あるいは2種類以上を組み合わせて溶媒を選択する。そして、この溶媒に上述のように選択したフラックスを溶解させ、液体フラックスを生成する。
なお、液体フラックスを生成する際には、液体フラックス中のフラックスの溶質濃度が15〜50質量%になるように、フラックスを混合する。発明者らが調べたところ、鋳鋼片のバリを効率よく除去するためには、燃焼ガスにフラックスの構成元素を所定量混合する必要があり、この所定量の元素は、液体フラックス中のフラックスの溶質濃度を15質量%以上にすることで、フラックスの溶質の種類に関わらず、鋳鋼片のバリを効率よく除去する効果が得られることを見出した。一方、燃焼ガスに混合されるフラックスの構成元素が多すぎると、切断後にこの元素が鋳鋼片の切断面に残留し、製品の品質を低下させるおそれがある。このため、フラックスの溶質濃度を50質量%以下にする必要があることを見出した。また、フラックスの溶質濃度を50質量%より大きくすると、フラックスが流れる供給管内やガス切断の火口にフラックスが析出して、当該供給管や火口に付着するという問題もある。したがって、液体フラックス中のフラックスの溶質濃度は15〜50質量%が適切となる。
次に、上述した切断改善元素を用いて鋳鋼片のガス切断を行うガス切断装置について説明する。図1は、本実施の形態にかかるガス切断装置1の構成の概略を示す説明図である。なお、本実施の形態においては、鋳鋼片のうち、鋳造後の鋳片Aをガス切断する場合について説明する。また、鋳片Aは、厚みが250mm〜400mm程度であり、温度が100℃以下になっている。
ガス切断装置1は、鋳片Aの切断部分に酸素と可燃性の燃焼ガスを吹き付けるガス切断トーチ10を有している。ガス切断トーチ10には、酸素供給源20に連通する供給管21が接続されている。酸素供給源20内には、酸素が貯留されている。供給管21には、酸素の流れを制御するバルブ22が設けられている。なお、酸素供給源20としては、酸素を貯留する形態だけではなく、工場内で酸素を供給する形態でも良い。
酸素供給源20からガス切断トーチ10に供給される酸素は、バルブ22によって、ガス切断トーチ10から鋳片Aに吹き付けられる圧力が0.3〜1.0MPaになるように制御される。例えば酸素の圧力が0.3MPa未満の場合、製品の生産性が低下してしまう。一方、当該酸素の圧力が1.0MPaより大きい場合、鋳鋼片の切断幅が大きくなり、製品の歩留まりが低下する。またこの場合、ガス切断装置1が高圧ガス対象設備となるため、取り扱いが難しくなる。このため、酸素の圧力は0.3〜1.0MPaに制御される。
ガス切断トーチ10には、気化装置30に連通する供給管31がさらに接続されている。気化装置30では、液体フラックスを気化させて切断改善元素を含有する気化フラックスを生成し、当該気化フラックスが燃焼ガスに混合される。供給管31には、気化フラックスを含有する燃焼ガスの流れを制御するバルブ32が設けられている。
気化装置30からガス切断トーチ10に供給される、気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力は特に規定されないが、バルブ32によって、ガス切断トーチ10から鋳片Aに吹き付けられる圧力が0.02〜0.11MPaになるように制御されるのが好ましい。例えば気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力が0.02MPa未満の場合、酸素を効果的に燃焼させにくくなる。また、当該燃焼ガスの圧力が0.11MPaより大きい場合、酸素を効果的に燃焼させることができるものの、燃焼ガスの消費量が多くなる。このため、気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力は0.02〜0.11MPaに制御されるのが好ましい。
気化装置30には、燃焼ガス供給源40に連通する供給管41と、液体フラックスを気化装置30内に注入するための注入管43とが接続されている。燃焼ガス供給源40内には、例えばプロパンガスやアセチレンガスなどの可燃性の燃焼ガスが貯留されている。供給管41には、燃焼ガスの流れを制御するバルブ44が設けられている。
前記の液体フラックスは、ガス切断装置1とは別の場所に設けられた液体フラックス生成装置42により生成される。その後、生成された液体フラックスは、液体フラックス生成装置42から液体フラックス搬送容器46へ流出され、液体フラックスが入れられた液体フラックス搬送容器46は気化装置30まで搬送される。そして、気化装置30の注入管43に設けられたバルブ45を開にした状態で、液体フラックス搬送容器46から注入管43を介して気化装置30内に、液体フラックスが注入されるようになっている。
次に、上述したガス切断トーチ10の構成について説明する。ガス切断トーチ10は、図2及び図3に示すように略円筒形状の本体部50を有している。本体部50には、平面視において本体部50の中心から外側に向けて、酸素通路51、内側酸素通路52、燃焼ガス通路53、外側酸素通路54がこの順で形成されている。酸素通路51は、本体部50の中央部に配置され、内側酸素通路52、燃焼ガス通路53、外側酸素通路54は、酸素通路51の同心円上にそれぞれ複数配置されている。各通路51〜54は、本体部50の上部から軸方向に沿って下方に延伸し、本体部50の下面において開口している。酸素通路51、内側酸素通路52、外側酸素通路54は、それぞれ酸素供給源20から供給された酸素を流通させることができる。燃焼ガス通路53は、気化装置30から供給された、気化フラックスを含有する燃焼ガスを流通させることができる。そして、ガス切断トーチ10の下面から鋳片Aの切断部分に向けて、上述したように、酸素が0.3〜1.0MPaの圧力で吹き付けられると共に、気化フラックスを含有する燃焼ガスが0.02〜0.11MPaの圧力で吹き付けられるようになっている。なお、酸素通路51には、内側酸素通路52及び外側酸素通路53よりも、高圧力かつ多流量の酸素が供給されるようにしてもよい。かかる場合、内側酸素通路52及び外側酸素通路53には、酸素供給源20とは別の酸素供給源(図示せず)から酸素が供給されるようにしてもよい。
次に、上述した気化装置30の構成について説明する。気化装置30は、図4に示すように内部に液体フラックスを貯留する容器60を有している。容器60には、液体フラックスの注入管43が設けられ、液体フラックスが容器60内に注入されるようになっている。
また、容器60には、燃焼ガスの供給管41が接続されている。供給管41は、平面視において容器60内の中央部付近まで延伸している。供給管41の先端部には、ガス供給ノズル61が設けられている。ガス供給ノズル61は、定常操業時において、容器60内に貯留された液体フラックスに浸漬するように配置されている。ガス供給ノズル61の上面には、燃焼ガスを液体フラックス中に吹き込む吹込口(図示せず)が複数形成されている。そして、ガス供給ノズル61から液体フラックス中に燃焼ガスを吹き込むことにより、当該液体フラックスが気化されて気化フラックスが生成される。なお、燃焼ガスは、液体フラックスを十分に気化するために、0.10〜0.30MPa、より好ましくは0.11〜0.15MPaの圧力で液体フラックス中に吹き込むのが望ましい。また、気化フラックスが鋳片Aに吹き付けられるまでに、気化フラックス中の切断改善元素が再結晶化しないように、例えば容器60内の上部に磁石62を設け、この磁石62によって例えば気化フラックスを30000ガウス以上の強磁場帯に置くことで活性化させてもよい。
容器60の上面には、容器60内で生成された気化フラックスを含有する燃焼ガスが流出する供給管31がさらに接続されている。容器60内で生成された気化フラックスは燃焼ガスに混合され、当該気化フラックスを含有する燃焼ガスは容器60内を上昇して供給管31から流出する。
次に、上述した液体フラックス生成装置42の構成について説明する。液体フラックス生成装置42は、図5に示すように容器70を有している。容器70内では、アルコール等の溶媒に、フラックスを溶質として溶解させて、液体フラックスを生成する。
容器70内の底面には、容器70内の溶媒及びフラックスを攪拌する攪拌器71が設けられている。
また、容器70の外側を囲むように、磁石72が設けられている。磁石72は、容器70内の溶媒及びフラックスに対して30000ガウス以上の磁場を形成するように配置されている。なお、磁場の上限は特に規定しないが、磁場が大きくなると液体フラックスが加熱されて溶質の溶解度が増加するため、常温時における溶質濃度の調整がし難くなることから、上限は例えば100000ガウスとすることが好ましい。
さらに、容器70には、一対の電極73、73が設けられている。電極73は、その先端部が容器70内の溶媒及びフラックスに浸漬するように配置されている。また、電極73には、例えば直流電源(図示せず)が接続され、容器70内の溶媒及びフラックスに15V以上の電圧を印加することができる。なお、電圧の上限は特に規定しないが、電圧を上げると、溶媒の温度が上昇し溶質が溶け易くなって過飽和状態となるため、液体フラックスが常温まで冷却されると、当該液体フラックスが飽和状態になるまで溶質が再結晶化することから、上限は例えば50V以下が好ましく、より好ましくは40V以下となる。
そして、容器70内で、30000ガウス以上の磁場と15V以上の電圧を付加し、フラックスを溶媒に攪拌溶解させて、液体フラックスが生成される。この条件で磁場と電圧を付加すれば、液体フラックス中の溶質濃度が15〜50質量%になるようにフラックスを溶媒に溶解できることが、発明者らの知見により明らかになっている。
容器70の側面には、開閉自在の流出口74が形成されている。生成された液体フラックスは、容器70から流出口74を介して液体フラックス搬送容器46へ流出され、液体フラックスが入れられた液体フラックス搬送容器46が気化装置30に搬送されて、気化装置30の注入管43のバルブ45を開にした状態で、液体フラックス搬送容器46から注入管43を介して気化装置30内に注入される。
ガス切断装置1は、以上のように構成されている。次に、ガス切断装置1で行われる鋳片Aをガス切断する方法について説明する。
先ず、液体フラックス生成装置42において、容器70内で所定のフラックスと溶媒を混合する。その後、磁石72と電極73によって30000ガウス以上の磁場と15V以上の電圧を付加すると共に、攪拌器71によって溶媒を攪拌する。そうすると、フラックスの溶質濃度が15〜50質量%の液体フラックスが生成される。この生成された液体フラックスは、容器70から流出口74を介して液体フラックス搬送容器46へ流出され、液体フラックスが入れられた液体フラックス搬送容器46は気化装置30に搬送される。そして、気化装置30の注入管43のバルブ45を開にした状態で、液体フラックス搬送容器46から注入管43を介して気化装置30内に、液体フラックスが注入される。
気化装置30内では、液体フラックス中にガス供給ノズル61から燃焼ガスが吹き込まれる。そうすると、液体フラックスは気化して切断改善元素を含有する気化フラックスが生成される。生成された気化フラックスは燃焼ガスに混合され、供給管31を介してガス切断トーチ10に送られる。
一方、このように気化フラックスを含有する燃焼ガスがガス切断トーチ10に供給されると同時に、当該ガス切断トーチ10には酸素供給源20から酸素が供給される。
そして、ガス切断トーチ10から鋳片Aの切断部分に、0.3〜1.0MPaの圧力で酸素が吹き付けられ、0.02〜0.11MPaの圧力で気化フラックスを含有する燃焼ガスが吹き付けられる。そして、ガス切断トーチ10による鋳片Aの切断速度を、鋳片Aの幅方向に100〜300mm/分として、鋳片Aのガス切断が行われる。
なお、例えばガス切断トーチ10の切断速度が100mm/分未満の場合、製品の生産性が低下してしまう。また、切断速度が300mm/分より大きい場合、切断速度が速過ぎて、鋳片Aの切断面が荒れたり、さらに場合によっては切断できない。このため、ガス切断トーチ10の切断速度を上述のように100〜300mm/分として、鋳片Aのガス切断が行われる。
このように鋳片Aのガス切断を行うと、酸素と気化フラックスを含有する燃焼ガスにより鋳片Aが溶解して切断されると同時に、気化フラックス中に含まれる切断改善元素によって溶鉄やドロスがいわゆるロウ付けされる。このため、溶鉄やドロスは、鋳片Aの切断面に帯状に連続して繋がってバリとなり、次第に重くなって自重落下する。こうして、鋳片Aのガス切断が終了する。
以上の実施の形態によれば、フラックスの溶質濃度が15〜50質量%の適切な溶質濃度で液体フラックスを生成することができるので、適切な量の切断改善元素を鋳片Aの溶鋼やドロスに混入させることができる。そうすると、上述のように鋳片Aの切断面に形成されるバリを自重落下させることができ、あるいは僅かな外力で落下させることができる。このように重筋作業なくバリの除去をできるので、鋳片Aを効率よく切断することができる。
また、バリを除去するために余分な外力を加える必要がないので、ガス切断に鋳片Aに吹き付けられる酸素及び気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力を最小化することができる。これによって、鋳片Aの切断幅を小さくすることができ、製品の歩留まりを向上させることができる。また、鋳片Aの表面を疵つけることもない。
また、第1の元素群の各元素が溶鉄やドロスの融点を降下させると共に流動性を向上できるので、溶鋼やドロスが積層して成長するのを防止することができる。これによって、バリが鋳片Aの切断面に付着するのを抑制することができる。
また、第2の元素群の各元素が溶鉄やドロスの酸化を防止できるので、ガス切断を短時間で行うことができ、製品の生産性を向上させることができる。同時に、鋳片Aの良好な切断面を得ることができる。
また、第3の元素群の各元素が溶鉄やドロスの表面張力を小さくできるので、溶鉄やドロスの流動性を向上させることができる。これによって、バリが鋳片Aの切断面に付着するのを抑制することができ、また鋳片Aの切断面を清浄化することもできる。
さらに、以上のように切断改善元素を燃焼ガスに混入させるためには、気化装置30と液体フラックス生成装置42のような簡便な設備を追加するだけでよい。また、ガス切断トーチ10の切断火口等も通常用いられる火口で対応可能であり、特殊な火口は不要である。したがって、設備投資費も最小限に抑えることができる。
また、以上のようにガス切断トーチ10から鋳片Aに吹き付けられる酸素と気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力をそれぞれ0.3〜1.0MPaと0.02〜0.11MPaとし、ガス切断トーチ10の切断速度を100〜300mm/分としたので、鋳片Aを効率よくガス切断して、製品の生産性を向上させることができる。
なお、以上の実施の形態では、厚みが250〜400mm程度の鋳片Aをガス切断する際について説明したが、上記ガス切断装置1を用いて、例えば厚みが5〜300mmの程度の圧延後の鋼片をガス切断してもよい。かかる場合、厚みが50mmより厚い鋼板を切断する際には、上記実施の形態と同じ条件で鋼板を効率よくガス切断することができる。
また、厚みが5〜50mmの鋼片を切断する場合には、ガス切断トーチ10の切断速度を鋳片Aの幅方向に300〜600mm/分として、鋼片をガス切断する。厚みが50mm以下の薄い鋼板の場合、例えば切断速度を300mm/分未満とすると、製品の生産性が低下してしまう。また、切断速度が600mm/分より大きいと、切断速度が速過ぎて、鋼片の切断面が荒れたり、さらに場合によっては切断できない。このため、ガス切断トーチ10の切断速度を300〜600mm/分として、鋼片のガス切断が行われる。なお、ガス切断トーチ10から鋼片に吹き付けられる酸素と気化フラックスを含有する燃焼ガスの圧力等その他の条件は、上記実施の形態と同様である。かかる場合でも、鋼板を効率よくガス切断することができる。
以下、本発明のガス切断方法を用いて鋼片を切断した場合のバリの除去効果について説明する。本実施例においては、先に図1に示したガス切断装置1を用いて、鋼片のガス切断を行った。
本実施例では、表1に示す割合で切断改善元素が含まれるように、HBF、KHF、KSiF、P、B、NaFのフラックスを選択した。そして、液体フラックス生成装置42において、30000ガウスの磁場と30Vの電圧を付加して、上記フラックスをメチルアルコールに攪拌溶解させ、フラックスの溶質濃度が30質量%の液体フラックスを生成した。また、気化フラックスを混合する前の燃焼ガスとしてはLPGを用い、気化装置30で上記液体フラックスを気化させた。そして、この気化フラックスを含有するLPGと酸素を鋼片に吹き付けて、鋼片のガス切断を行った。ガス切断時に鋼片に吹き付ける気化フラックスを含有するLPGの圧力は0.06MPaで、酸素の圧力は0.6MPa、ガス切断トーチ10の切断速度は200mm/分であった。また、この条件で、低炭材、高炭材、合金鋼の3種類の鋼片のガス切断を行った。
また、比較例として、燃焼ガスに切断改善元素を含有しないLPGを用いた場合の鋼片のガス切断も行った。この比較例のガス切断の条件は、LPG中の切断改善元素の有無以外は、上述した条件と同じ条件であった。
以上の条件で鋼片のガス切断を行った結果を表2に示す。表2中、「気化フラックス切断」が本実施例を示し、「LPG切断」が比較例を示している。また、鋼片に付着したバリの剥離性、すなわちバリの除去効率については、次の5段階の評点で評価を行った。
1:切断した状態で鋼片にバリの付着なし。
2:鋼片にバリが付着するが、バリは自然剥離する。
3:鋼片にバリが付着するが、僅かな外力でバリは剥離する。
4:鋼片にバリが付着し、バリの剥離にはタガネとハンマーが必要である。
5:鋼片にバリが付着し、バリの剥離には研磨作業が必要である。
表2を参照すると、すべての鋼片において、本実施例のガス切断では、比較例のガス切断に比べてバリの除去効率に大きな改善があることを確認できた。したがって、本発明のガス切断方法を用いれば、鋳片に付着したバリを効率よく除去できることが分かった。
次に、本発明のガス切断方法を用いて鋳片を切断した場合の製品の生産性と経済性及び切断面品質について説明する。本実施例においても、先に図1に示したガス切断装置1を用いて、鋳片のガス切断を行った。
本実施例では、上記実施例1と同様の気化フラックスを含有するLPGと酸素を鋳片に吹き付けて、鋳片のガス切断を行った。鋳片には厚みが25mmと250mmの2種類の鋳片を用い、それぞれの鋳片のガス切断を行った。
先ず、厚みが25mmの鋳片のガス切断を行った場合について説明する。本実施例では、鋳片に吹き付ける酸素の圧力として、0.2MPa、0.4MPa、0.6MPa、0.8MPa、1.2MPaの5通りの条件でガス切断を行った。また、ガス切断トーチの切断速度を、200mm/分、400mm/分、700mm/分の3通りの条件でガス切断を行った。なお、鋳片に吹き付ける気化フラックスを含有するLPGの圧力は、0.06MPaであった。
以上の条件で鋳片のガス切断を行った結果を表3に示す。表3中、ガス切断の際の酸素の圧力とガス切断トーチの切断速度の条件が、それぞれ本発明の条件である0.3〜1.0MPaと300〜600mm/分を共に満たしていれば、「条件の充足」の列に「○」が示され、いずれか一方又は両方の条件を満たしていなければ「×」が示されている。また、ガス切断を行った場合の製品の生産性が良好であれば、「生産性評価」の列に「○」が示され、生産性が悪ければ「×」が示されている。さらに、ガス切断を行った場合の製品の経済性及び切断面品質が良好であれば、「経済性・切断面品質評価」の列に「○」が示され、経済性又は切断品質が悪ければ「×」が示されている。
ちなみに、「生産性評価」については、ガス切断トーチの切断速度が、本発明の範囲の下限値より小さい場合を「×」、本発明の範囲の下限値以上の場合を「○」とした。
また、「経済性・切断面品質評価」について、「経済性」は鋳片の切断幅が5mm以上の場合を「×」とし、「切断面品質」は切断面荒れ(切断面が汚い)が発生し、また未切断部分が発生した場合を「×」とした。従って、「経済性・切断面品質評価」は、鋳片の切断幅が5mm未満で、かつ、切断面荒れがなく良好であって未切断部分が発生しなかった場合を「○」とした。
表3を参照すると、酸素の圧力が本発明の条件を満たさない場合、すなわち0.2MPa、1.2MPaの場合、製品の生産性、経済性、切断面品質のすべてが良好となる場合はなかった。酸素の圧力が0.2MPaの場合、ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件を満たす400mm/分であっても、鋳片に未切断部分が発生した。また、酸素の圧力が1.2MPaの場合、ガス切断トーチの切断速度を本発明の条件を満たす400mm/分とすると生産性は良好となったが、鋳片の切断幅が大きくなり、製品の歩留まりが低下し、経済性が悪かった。
一方、酸素の圧力が本発明の条件を満たす場合、すなわち0.4MPa、0.6MPa、0.8MPaの場合であっても、ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件を満たさない場合、製品の生産性、経済性、切断面品質のすべてが良好となる場合はなかった。ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件よりも遅い200mm/分の場合、切断速度が遅いので切断面性状は良好であったが、生産性が悪かった。生産性は、切断速度に比例するためである。また、ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件よりも速い700mm/分の場合、生産性は良好であったが、切断速度が速いので、切断面荒れ(切断面が汚い)が発生し、一部で未切断部分が発生した。
これに対して、酸素の圧力が本発明の条件を満たす0.4MPa、0.6MPa、0.8MPaの場合であって、かつガス切断トーチの切断速度が本発明の条件を満たす400mm/分の場合、製品の生産性、経済性、切断面品質のすべてが良好であった。したがって、本発明のガス切断方法を用いれば、鋳片を効率よくガス切断できることが分かった。なお、本実施例では、鋳片の厚みが25mmの場合について説明したが、発明者らが調べたところ、鋳片の厚みが5〜50mmにおいて同様の効果が確認されている。
次に、厚みが250mmの鋳片のガス切断を行った場合について説明する。本実施例では、鋳片に吹き付ける酸素の圧力として、0.2MPa、0.4MPa、0.6MPa、0.8MPa、1.2MPaの5通りの条件でガス切断を行った。また、ガス切断トーチの切断速度を、50mm/分、200mm/分、400mm/分の3通りの条件でガス切断を行った。なお、鋳片に吹き付ける気化フラックスを含有するLPGの圧力は、0.06MPaであった。
以上の条件で鋳片のガス切断を行った結果を表4に示す。但し、厚みが250mmの鋳片のため、「経済性」は鋳片の切断幅が10mm以上の場合を「×」とした。
また、表4中、「条件の充足」、「生産性評価」、「経済性・切断面品質評価」の列は、上述した表3と同様に記載している。なお、「条件の充足」において、酸素の圧力とガス切断トーチの切断速度の本発明の条件は、それぞれ0.3〜1.0MPaと100〜300mm/分である。
表4を参照すると、酸素の圧力が本発明の条件を満たさない場合、すなわち0.2MPa、1.2MPaの場合、製品の生産性、経済性、切断面品質のすべてが良好となる場合はなかった。酸素の圧力が0.2MPaの場合、ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件を満たす200mm/分であっても、鋳片に未切断部分が発生した。また、酸素の圧力が1.2MPaの場合、ガス切断トーチの切断速度を本発明の条件を満たす200mm/分とすると生産性は良好となったが、鋳片の切断幅が大きくなり、製品の歩留まりが低下し、経済性が悪かった。
また、酸素の圧力が本発明の条件を満たす場合、すなわち0.4MPa、0.6MPa、0.8MPaの場合であっても、ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件を満たさない場合、製品の生産性、経済性、切断面品質のすべてが良好となる場合はなかった。ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件よりも遅い50mm/分の場合、切断速度が遅いので切断面性状は良好であったが、生産性が悪かった。生産性は、切断速度に比例するためである。また、ガス切断トーチの切断速度が本発明の条件よりも速い400mm/分の場合、生産性は良好であったが、切断速度が速いので、切断面荒れ(切断面が汚い)が発生し、一部で未切断部分が発生した。
これに対して、酸素の圧力が本発明の条件を満たす0.4MPa、0.6MPa、0.8MPaの場合であって、かつガス切断トーチの切断速度が本発明の条件を満たす200mm/分の場合、製品の生産性、経済性、切断面品質のすべてが良好であった。したがって、本発明のガス切断方法を用いれば、鋳片を効率よくガス切断できることが分かった。なお、本実施例では、鋳片の厚みが250mmの場合について説明したが、発明者らが調べたところ、鋳片の厚みが50mm超400mm以下において同様の効果が確認されている。
Figure 0005378897
Figure 0005378897
<鋳片の厚みが25mmの場合>
Figure 0005378897
<鋳片の厚みが250mmの場合>
Figure 0005378897
本発明は、例えば普通鋼や特殊鋼などの連続鋳造後の鋳片あるいは圧延後の鋼片などをガス切断する際に有用である。
1 ガス切断装置
10 ガス切断トーチ
20 酸素供給源
21 供給管
22 バルブ
30 気化装置
31 供給管
32 バルブ
40 燃焼ガス供給源
41 供給管
42 液体フラックス生成装置
43 注入管
44 バルブ
45 バルブ
46 液体フラックス搬送容器
50 本体部
51 酸素通路
52 内側酸素通路
53 燃焼ガス通路
54 外側酸素通路
60 容器
61 ガス供給ノズル
62 磁石
70 容器
71 攪拌器
72 磁石
73 電極
74 流出口
A 鋳片

Claims (3)

  1. 厚みが5〜400mmであり、かつ温度が100℃以下の鋳鋼片に対して、気化フラックスを含有する燃焼ガスと酸素とをガス切断トーチから吹き付けて、当該鋳鋼片を切断する鋳鋼片のガス切断方法であって、
    前記気化フラックスは、
    アルコール、アセトン、アミルアセテート、ベンゼン、四塩化炭素、トルエン、トリクロロエチレン、テルペン、キシレンの1種又は2種以上を組合せた溶媒に、
    P、Siが属する第1の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜30質量%であり
    K、Na、Bが属する第2の元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜20質量%であり
    ハロゲン族元素が属する第3の元素群の3つの元素群の少なくともいずれかの元素の含有量が10〜30質量%であり
    残部がZn、Cu、Cs、S、C、H、N、Oの少なくともいずれかの元素からなる溶質を15〜50質量%混合した液体フラックスを気化したものであり、
    前記ガス切断トーチから前記鋳鋼片に吹き付ける前記酸素の圧力は、0.3〜1.0MPaであり、
    前記鋳鋼片の厚みが5〜50mmの場合、前記ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に300〜600mm/分であり、
    前記鋳鋼片の厚みが50mm超400mm以下の場合、前記ガス切断トーチの切断速度は、鋳鋼片の幅方向に100〜300mm/分であることを特徴とする、鋳鋼片のガス切断方法。
  2. 前記液体フラックスは、30000ガウス以上の磁場と15V以上の電圧を付加して、前記溶媒に前記溶質を攪拌溶解させて生成されることを特徴とする、請求項に記載の鋳鋼片のガス切断方法。
  3. 請求項に記載の鋳鋼片のガス切断方法を行うガス切断装置であって、
    前記酸素を供給する酸素供給源と、
    前記液体フラックスを気化させて前記気化フラックスを生成する気化装置と、
    前記酸素供給源からの酸素と、前記気化装置からの気化フラックスを含有する燃焼ガスとを鋳鋼片に吹き付けるガス切断トーチとを備え、
    前記気化装置は、
    前記液体フラックスを貯留する容器と、
    前記容器内の液体フラックスに燃焼ガスを吹き込むガス供給ノズルと、を有し、
    前記ガス供給ノズルから吹き込まれた燃焼ガスによって、前記容器に貯留された液体フラックスを気化させることを特徴とする、鋳鋼片のガス切断装置。
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