JP2009113115A - Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の溶接方法 - Google Patents

Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の溶接方法 Download PDF

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健司 小川
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Abstract

【課題】Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を溶融溶接する際に、めっき層を予め除去することなく、また入熱量が少ない溶融溶接においても、応力集中が発生しやすい溶接開始点及び終了点の熱影響部に溶融金属脆化割れが発生することのない溶接方法を提供する。
【解決手段】Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板1を溶融溶接する際に、溶接部4および熱影響部5に0〜100モル%のCsAlF4と100〜0モル%のCs3AlF6のフッ化物系混合物を予め塗布又は載置した後、あるいは供給しつつ溶接し、溶接部近傍のめっき層合金からMg成分を除去することにより、めっき層合金の溶融温度を高め、熱影響部での溶融金属脆化に起因した割れの発生を抑制する。
【選択図】図2

Description

本発明は、耐食性に優れたZn−Al−Mg系合金めっき鋼板を、溶接部および熱影響部に溶融金属脆化割れを発生させることなく溶接する方法に関する。
溶融めっき鋼板は、優れた耐食性を活用し、腐食雰囲気に曝される屋根材,構造材等に広く使用されている。なかでも、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板に比較して格段に優れた耐食性を示しているので、自動車用はもとより、建築構造物や家電製品等に使用されようとしている。しかし、板状のままで使用されることはほとんどなく、何らかの手段で所要の形状に成形した後、各々の部品を溶接して最終製品を製造している。つまり、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を用いて所望製品を製造する際には、ほとんどで溶接工程が入ってくる。
溶接の種類としては、スポット溶接に代表されるような抵抗溶接と、アーク溶接に代表されるような溶融溶接がある。建築構造物や自動車の足廻り部品などでは、比較的高い接合強度が必要なことや板厚が比較的厚いこと、抵抗溶接での電極の低寿命などを考慮して、溶融溶接を用いる場合が多い。
溶融溶接は、非常に高い熱量を被溶接材に与えて溶融・凝固、場合によっては溶接ワイヤーを供給して溶接する方法である。Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を溶融溶接するとめっき原板である鋼母材も溶融するが、その母材表面に被覆されているめっき層も再溶融、あるいは蒸発する。
Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の場合、めっき層の融点が母材である鋼板の融点よりもかなり低いことから、溶接部の一部の領域や溶接部の周辺では、溶接中あるいは溶接後のある一定期間の間、めっき層が溶融状態で鋼板表面に存在することになる。鋼板上にめっき金属が溶融状態で存在した状態で、一定以上の引張り応力が作用すると、鋼板に割れが発生することが知られている。いわゆる「溶融金属脆化割れ」と称されているものである(例えば、非特許文献1参照)。
特に、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を溶融溶接しようとするとき、複数の条件が重なると、熱影響部近傍に溶融金属脆化割れが発生しやすく、問題となっている。
熱影響部近傍での溶融金属脆化割れの発生を抑制するために、溶接に先立って溶接部近傍のめっき層を除去することも行われている。しかしながら、めっき層の除去工程で粉塵を撒き散らすことになって作業環境を悪化させるばかりでなく、めっき層が除去された溶接部は、下地鋼が露出しているためめっき部に比較して耐食性が劣る。耐食性の低下は溶接部にめっき層と同種材料からなる溶射層等を形成することにより防止できるものの、溶接前のめっき層除去及び溶接後の溶射層形成と余分な工程を必要とするため、製造にかかる負荷が大きくなり、現実的ではない。
また、被溶接材の拘束方法を変更して作用する引張り応力を緩和させたり、被溶接材の残留応力を事前に低減させたりするなどの処置も施されている。しかし、この方法も、製品形状に応じて発生する応力や歪が異なるために、確実性に欠けるという問題がある。さらに溶接する際の入熱量をできるだけ低くして、発生・残存する熱応力を低減する方法もあるが、溶接する際の入熱量が少ないと十分な溶込みが得られないことがあり、溶接部の接合強度が不安定になるという問題がある。
本出願人は、特許文献1で、下地鋼の組成と溶融めっき層の組成を特定の組み合わせにすることにより、溶接時の溶融金属脆化割れを抑制する技術に関する提案をした。
また、本出願人は、鋼管製造時の溶接方法ではあるが、特許文献2で、アプセット量の調整によるメタルフロー角度の調整を、めっき層中のMg含有量に応じて行い、この調整により溶接部に加わる応力集中を緩和して溶融金属脆化割れの発生を抑制することを提案した。
さらに、本出願人は、溶融金属脆化割れの発生を抑制する溶接方法として、特許文献3で、Zn−Al−Mg合金を鋼板表面にめっきしたZn−Al−Mg合金めっき鋼板を溶接する際に、溶接部にMg成分除去作用を有する物質として、0〜100モル%のKAlF4と100〜0モル%のK3AlF6のフッ化物系混合物を使用し、これを予め塗布・載置し、あるいは供給しつつ、溶接に必要な熱量を付加して溶接することを提案した。
上田修三著「叢書 鉄鋼技術の流れ 第1シリーズ 第9巻 構造用鋼の溶接−低合金鋼の諸性質とメタラジー−」1997.6.1 株式会社地人書館,p274−276 特開2003−3238号公報 特開2002−115793号公報 特開2005−118797号公報
Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を適宜形状に成形した後溶接して構造物を構築する際に、溶接部に本出願人らが特許文献3で提案したMg除去成分作用を有する物質を予め塗布・載置し、あるいは供給しつつ溶接すれば、溶接熱により、一定以上の温度においてMg成分除去作用を有する物質とZn−Al−Mg系合金めっきが反応する温度域が得られ、その溶接形態であれば、溶接時に熱影響部に発生しやすい溶融金属脆化割れを防止することは比較的容易である。
しかし、構造的に応力集中が発生しやすい部位は溶接の開始点及び終了点であり、溶接熱は、溶接距離が短くなるほど入熱は少なくなる。溶接の開始点及び終了点では溶接熱の調整が難しいため、特許文献3で提案したKAlF4とK3AlF6のフッ化物系混合物の使用では、溶融金属脆化割れの発生を抑制することは難しくなる。
ところで、溶接予定部位に、Mg成分除去作用を有する物質、さらにはAl成分除去作用を有する物質を予め塗布又は載置する、あるいは供給し続ける手法は、溶接位置が下側にある溶接部位に対しては、有効である。しかし、構造物を構築する際の施工に使用される溶接方向は、下側だけではなく、縦方向や上向き方向の溶接も存在する。そして、これらの溶接部位にも、溶接部材の組み立て前に必要量のMg成分除去作用を有する物質、Al成分除去作用を有する物質を、予め塗布又は載置する必要がある。しかし、溶接部材の組み立てにおいては運搬や設置が不可欠であり、Mg成分除去作用を有する物質、さらにはAl成分除去作用を有する物質が、運搬や設置時に発生する、振動や衝撃を起因とした剥落による物質減少が想定され、製造現場において減少した物質を再塗布・乾燥させることは時間的負担が大きい。
また、Mg成分除去作用を有する物質、さらにはAl成分除去作用を有する物質を供給し続ける手法として、特許文献3に記載の、Mg成分除去作用を有する物質、さらにはAl成分除去作用を有する物質を、固着剤を用いて溶接棒の表面に固着させ、溶接時に被溶接箇所に供給し続ける手法は、溶接棒による溶接作業が現在も利用されているため有効ではある。しかしながら、溶接棒による溶融溶接では、大量のフューム発生による安全環境面の問題や、大量生産向きではないことから、多くの溶接工程を含む工場では、溶接ワイヤーを使用する半自動溶接機(MIG溶接機やMAG溶接機(炭酸ガスアーク溶接機を含む))が多く使用されるようになっている。このため、特許文献3で提案した手法は、溶接ワイヤーを使用する半自動溶接機で使用する場合においては有効ではない。
半自動溶接機を使用する場合にあっては、Mg成分除去作用を有する物質、さらにはAl成分除去作用を有する物質を供給し続けるためには、フラックスワイヤー中のフラックスを、Mg成分除去を有する物質と置き換える必要がある。そして、フラックスワイヤー溶接法の特徴である溶着金属の成分調整効果のためのフラックスを、Mg成分除去作用を有する物質、さらにはAl成分除去作用を有する物質を置き換えることにより、Mg成分除去及びAl成分除去の効果が得られる、すなわち、溶融金属脆化割れの発生を抑制することができる可能性は高いが、コスト負担が大きくなると考えられる。
また、Al成分除去作用を有する物質には強い酸化作用を持つ物質が用いられているため、溶接作業後に溶接部を洗浄してAl成分除去作用を有する物質を除去する必要があり、工程的・コスト的に大きな負担となる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を溶融溶接する際に、めっき層を予め除去することなく、また入熱量が少ない溶融溶接においても、応力集中が発生しやすい溶接開始点及び終了点の熱影響部に溶融金属脆化割れが発生することのない溶接方法を提供することを目的とする。
本発明は、さらに、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を適宜形状に成形した後に溶接して構造物を構築する際に、溶接施工状況の如何に拘らず、Mg成分の悪影響を排除して、溶接熱影響部に発生しやすい溶融金属脆化割れが発生することのない溶接方法を提供することを目的とする。
本発明のZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の溶接方法は、その目的を達成するため、Zn−Al−Mg系合金を鋼板表面にめっきしためっき鋼板の溶融溶接において、溶接部および熱影響部に、フラックスとして、Mg成分除去作用を有する物質を予め塗布又は載置した後、あるいは供給しつつ、溶接に必要な熱量を付加して溶接する際に、Mg成分除去作用を有する物質として、0〜100モル%のCsAlF4と100〜0モル%のCs3AlF6のフッ化物系混合物を用いることを特徴とする。
Mg成分除去作用を有する物質としては固形化したものを使用することが好ましい。そして、Mg成分除去作用を有する物質を固形化させるためには、樹脂成分、溶剤及びゲル化剤を用いることが好ましい。
なお、本発明では、Zn−Al−Mg系合金めっき層として、Mg:0.05〜10質量%,Al:4〜22質量%を含む組成に調整されているものを想定している。さらに、任意成分として0.1質量%以下のTi,0.045質量%以下のB,あるいは2.0質量%以下のSiを含むものでもよい。
Zn−Al−Mg系合金を鋼板表面にめっきした鋼板を溶接する際に、既存のMg成分除去作用を有する物質よりも溶融温度が低いMg成分除去作用を有する物質を使用することにより、溶接時の入熱が低く、応力集中が発生しやすい溶接開始点及び終了点のめっき層の融点以上に加熱される領域においても、Mg成分が除去され、溶融めっき金属の融点が高くなって、溶接熱影響部の粗粒結晶粒の粒界に当該成分を含有する溶融金属が浸透することがなくなり、溶融金属脆化割れの発生を抑制することが可能となった。
また、Mg成分除去作用を有する物質と樹脂成分、溶剤及びゲル化剤を用いて固形化させたフラックスを溶接部位に塗り着けるように付着させて使用することにより、立体構造物溶接に不可欠である縦方向や上向き方向の溶接部位へのMg成分除去作用を有する物質を簡単に、かつ安定的に供給できるようになった。また、有効に作用する量のMg成分除去物質を効果的に供給することが可能となった。
このため、耐食性に優れるZn−Al−Mg系合金めっき鋼板に応力集中が発生しやすい構造で、しかも立体的で溶接しても、溶融金属脆化に起因する割れが発生することなく、健全な溶接部をもつ溶接製品が製造される。得られた溶接製品は、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板の本来の高耐食性を活用し、各種分野における構造部材等として使用される。
本発明者等は、Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を溶融溶接する際に溶接開始点及び終了点に発生しやすい溶融金属脆化割れの発生メカニズムを次のように推察している。
Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を溶融溶接すると、溶接開始点ではまず溶接ワイヤーがアークにより溶融される。溶滴移行により鋼板に接触した溶融金属は鋼板に熱を奪われて急激に温度を下げるため、溶接開始点付近に関しては溶込みが浅くなる。また、溶接終了点においても、溶接終了後は溶融金属による温度付加が無くなるために温度は低下していく。Zn−Al−Mg系合金はZn(融点420℃)に比較して液相線温度が低く、比較的長時間にわたって溶融状態を維持するが溶接開始点及び終了点に関しては基本的に溶け込みが浅いことから、溶接開始点を見た場合、入熱は低く、既存のMg成分除去作用を有する物質の溶融温度に到達しない。溶接点は遠ざかりながらも熱を供給しつづけるために、開始点の温度は、既存のMg成分除去作用を有する物質の溶融温度には達しないがZn−6質量%Al−3質量%Mg合金の溶融温度335℃には到達する。さらに粗粒化した熱影響部が溶融金属に長時間曝され、かつ加熱後の冷却時に発生する引張り応力が加わることで、溶融金属が結晶粒界に侵入し、溶融金属脆化割れを引き起こす。
溶接時にZn−Al−Mg系合金中のAl分が下地Feと早期に反応しAl−Fe合金層となって消費されるに従って液相のAl濃度が低下し、最終的にはZn−Mg二元系になるが、Znの420℃と比較するとZn−3質量%Mgでも凝固終了温度が360℃と遥かに低い。
溶接開始点では、既存のMg成分除去作用を有する物質の溶融温度に到達しないため、粗粒化した熱影響部が溶融金属に長時間曝され、かつ加熱後の冷却時に発生する引張り応力が加わることで、溶融金属が結晶粒界に侵入し、溶融金属脆化割れを引き起こす。このような溶融金属脆化割れは、特許文献3で提案したMg除去作用を有する物質(カリウム系フラックス,溶融温度領域550℃以上)を塗布・載置して、高入熱により応力集中が発生し易い施工方法において溶融溶接を実施した場合ならばほとんど見られない。
溶接開始点の入熱による到達温度が大きく影響していることは、次の予備的実験からも明らかである。高い入熱により応力集中が発生しやくす、溶融金属脆化割れが発生しやすい溶接施工法に対して、550℃以上の温度域で溶融するMg除去成分を有する物質を塗布・載置し、入熱を減らして溶接施工したところ、溶接開始点及び終了点において溶融金属脆化割れが発生した。
既存のMg成分除去作用を有する物質として0〜100モル%のKAlF4と100〜0モル%のK3AlF6のフッ化物系混合物の反応温度は550℃以上であり、凝固終了温度が335℃であるZn−6質量%Al−3質量%Mg合金のめっきとは200℃以上の温度差がある。
そのため溶接開始点及び終了点の熱影響部では、Mg成分除去作用を有する物質と溶融した合金めっきとの反応が不完全で、溶融金属脆化割れの発生を抑えることができなかったと推測される。
そこで、より溶融温度の低いMg成分除去作用を有する物質として0〜100モル%のCsAlF4と100〜0モル%のCs3AlF6のフッ化物系混合物が有効であることを見いだした。図1に示すようにこのフッ素系混合物の溶融温度は450℃前後であるため、入熱の少ない溶接開始点及び終了点の熱影響部においてもMg除去作用反応を得ることが可能となる。
これらのフッ化物系混合物にあっては、それぞれ単独のフッ化物でもMg成分除去作用を有しているが、それぞれ同量程度の混合物として用いることが好ましい。
CsAlF4+Cs3AlF6の混合物は、450℃前後に溶融温度を有し、通常、Al合金をろう付けする際にフラックスとして使用されている物質であるが、本発明では、溶接時にMg成分を除去させるために使用する。
このCsAlF4+Cs3AlF6混合物のMg成分除去作用について次の方法で検討した。まず、当該CsAlF4とCs3AlF6のモル比1:1の混合物を水溶液として、Zn−6質量%Al−3質量%Mg合金めっきを施した鋼板上に塗布し、乾燥後、鋼板温度をフラックスの溶融温度である450℃前後に短時間加熱した。加熱後のめっき鋼板の断面組織を観察したところ、鋼板表面にFe−Al系金属間化合物層が生成し、その上層部には細かに分断されたFe−Al系金属間化合物が分散しているZn層が形成されていた。Zn層からはMg成分及ほとんど検出されなかった。塗布されたCsAlF4+Cs3AlF6混合物の作用により、加熱時にMg成分が優先的に除去されたものである。また、AlはFe−Al系金属間化合物の形成によって、めっき層から除去されたものである。
CsAlF4+Cs3AlF6混合物の作用により、加熱時にMg成分が優先的に除去される理由については、既存のK系フラックスと同様に推測される。
乾燥されているとはいえ、CsAlF4+Cs3AlF6混合物の塗布面にはH2Oが残存している。このH2Oによりめっき層中のMgがイオン化し、
3Mg+2CsAlF4 → 2Al+2CsF+3MgF2
の反応式にしたがい、Mgフッ化物を形成し、めっき層中からMgが除去される。また、めっき層中のAlはFe−Al系金属間化合物を形成することで減少する。さらに、高温に加熱されるので、めっき層中のMg,Alの一部は酸化物を形成して減少する。
以上、Mg成分除去作用を有する物質の作用について説明したが、このような物質は、上記態様で説明したように、水溶液として溶接する箇所に予め塗布し、乾燥後溶接してもよいが、Mg成分除去作用を有する物質を、例えば固着剤を用いて溶接棒の表面に固着させ、溶接時に被溶接箇所に供給するようにしてもよい。また、樹脂成分、溶剤及びゲル化剤を用いて固形化し、この固形化したMg成分除去作用を有する物質を溶接する箇所に予め塗布してもよい。
Mg成分除去作用を有する物質を固形化し、溶接部位に塗り着けるような態様を採用すれば、立体構造物を溶接する際にあっても、縦方向や上向き方向の溶接部位へのMg成分除去作用を有する物質を簡単に、かつ安定的に供給することができる。
固形化のため、樹脂成分、溶剤及びゲル化剤が用いられる。
樹脂成分と溶剤は、Mg成分除去作用を有する物質を分散させるために用いられる。
樹脂成分としては、ブチラール樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース及びアセチルセルロースから選ばれた少なくとも1種を含むものが好ましい。樹脂成分の使用量は、用いる樹脂成分の種類等によって異なるが、全体の3〜40重量%程度、好ましくは6〜35重量%とすれば良い。樹脂成分が過剰であるとゲル硬度が高くなり塗布又は載置性等が低下する場合がある。樹脂成分が少なすぎるとゲル化が困難となる場合がある。
溶剤としては、特に制限されず、公知の有機溶剤を用いることができる。例えば3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等の一価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;上記グリコール類のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、フェニルエーテル、メチルエーテルアセテート等又はこれらのエステル化合物等のグリコールエーテル類等を用いることができる。
溶剤の使用量は、他の成分との関係において適宜定めることができるが、20〜80重量%程度、好ましくは30〜65重量%とすれば良い。溶剤が過剰であるとゲル化が困難となる場合がある。溶剤が少ないと他の成分の溶解が困難となり、均一なゲルができなくなる場合がある。
ゲル化剤としては、特に制限されず、従来技術におけるクレヨン(ゲル化クレヨン)に適用されるものを用いることができる。例えば、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油ゲル化剤、脂肪酸類等が挙げられる。これらの中でも12−ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類を用いることが好ましい。
ゲル化剤の含有量は、用いるゲル化剤の種類等に応じて適宜設定することができる。通常は2〜12重量%程度が好ましく、より好ましくは3〜8重量%である。ゲル化剤が多すぎるとゲル硬度が上がりすぎて塗布又は載置性等が低下する場合がある。ゲル化剤が少なすぎるとゲル化が困難となる場合がある。
溶剤に樹脂を加えて溶解させ、その後、Mg除去成分を有する物質を加え、ミル等で充分分散させた後、ゲル化剤を加えて完全に溶解させる。得られた溶液を所望の形状を有する容器に流し込み、乾燥・冷却・固化させればMg成分除去作用を有する物質の固形化物が得られる。
固形化したMg成分除去作用物質を溶接部および溶接熱影響部に塗布又は載置し、溶接を実施することで、固形化したMg除去作用物質が溶接熱により溶融して、溶融めっき成分中のMgと反応し,Mg成分の除外作用が生じる。Mg成分が溶接熱影響部から除去され、溶融めっき金属の融点が高くなって、溶接熱影響部の粗粒結晶粒の粒界に当該成分を含有する溶融金属が浸透することがなくなり、溶融金属脆化割れの発生を抑制する。
なお、本発明におけるMg成分除去作用を有する物質の使用量は、水溶液での使用あるいは固化剤等を用いての固化状態での使用を問わず、少量でもそれなりの効果は発揮する。しかしある程度の量でその効果は飽和するので、多すぎることはコスト的に好ましくない。溶接されるめっき鋼板の板厚やめっき厚あるいは溶接時の入熱量等を考慮しつつ、適宜決められる。
実施例;
Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板として、表1に示す組成の板厚4.0mmの熱延鋼板を原板とし、片面当り90g/m2の付着量で溶融Zn−Al−Mg系合金めっきを施したものを使用した。図2に示すように、100mm×100mmに切り出しためっき鋼板1を台(図示せず)上にクランプし、このめっき鋼板1上に、50mm×50mm×6mmの鋼板2を載置して、その接触部を図2中3で示す方向にT字隅肉溶接した。
溶接条件はシールドガスとしてCO2を用い、溶接電流を175A,溶接電圧を22.2V,溶接速度を0.25m/分,トーチ角を45度,後退角を0度,シールドガスの流量を20L/分とした。溶接ワイヤーには直径1.2mmのYGW12を用いた。入熱条件の影響を確認するために、高入熱での溶接として、溶接電流を195A,溶接電圧を24.5Vの条件でも溶接を行った。
この実施例ではMg成分除去作用を有する物質として、CsAlF4+Cs3AlF6をモル比1:1で混合して用い、これらを水溶液にして鋼板2の下及び周囲に塗布した。熱風を吹き付けて乾燥させた後、上記溶接条件でT字隅肉溶接した。
T字隅肉溶接すると、図2中4で示すような溶接ビードが形成され、ビード端から約7mmの範囲(図中破線で示される範囲の内側)に熱影響部5が形成されていた。
そこで、溶接されたものの溶接開始点の溶接ビードを、溶接進行方向に切断し、顕微鏡観察すると、Mg成分除去作用を有する物質として、CsAlF4+Cs3AlF6を塗布・乾燥させ通常入熱で溶接したサンプルでは溶融金属脆化割れは認められなかった。
また、入熱量が高い溶接条件であっても溶融金属脆化割れは発生しておらず、入熱量の影響は認められなかった。
Figure 2009113115
比較例;
既存のMg成分除去作用を有する物質として、KAlF4+K3AlF6をモル比1:1で混合して用い、実施例と同じ素材を使用し、実施例と同じ条件でT字隅肉溶接した。
溶接されたものの溶接開始点の溶接ビードを、溶接進行方向に切断し、顕微鏡観察すると、Mg成分除去作用を有する物質として、既存のKAlF4+K3AlF6を塗布・乾燥させ通常の入熱量で溶接したサンプルでは溶融金属脆化割れが発生した。また、既存のMg成分除去作用を有する物質を塗布・乾燥させ、入熱量を高めるためにビード形状を無視して溶接入熱を増大させ溶接した結果、溶融金属脆化割れは発生せず、入熱量の影響が認められた。
上記実施例及び比較例の溶接結果をまとめると、表2に示す通りとなる。
なお、表2中、○は溶融金属脆化割れなしを,×は溶融金属脆化割れありを表わす。
表2に示す結果から、既存のMg成分除去作用を有する物質を溶接部に載置又は供給しながら溶接を実施した場合、溶接ビードの熱影響部の温度が、既存のMg除去作用を有する物質の溶融温度以上に上昇すればMg成分除去作用が機能して、溶融金属脆化割れの発生を防止する効果を得ることが出来るが、溶融温度以下の場合は機能せずに、溶融金属脆化割れが発生してしまう。
しかし、本発明の提案するMg成分除去作用を有する物質は、既存のMg除去作用を有する物質よりも溶融温度が低いために、既存のMg成分除去作用を有する物質では防止効果がえられない低入熱の溶接施工においても、溶融金属脆化割れ防止効果を得ることが可能となった。
既存のMg成分除去作用を有する物質よりも溶融温度が低いMg成分除去作用を有する物質を溶接部に供給して溶接を行うと、低入熱の溶接開始点及び終了点においても溶融めっき金属からMg成分が除去され、溶融めっき金属はZnを主体としたものとなって溶融温度が高くなる。このため、溶接後の冷却時に溶接熱影響部に引張りの応力が作用しても、溶融温度が高くなっためっき金属の結晶粒界への進入が抑制され、結果的に溶融金属脆化に起因した割れの発生がなくなっている。
Figure 2009113115
K系フラックスとCs系フラックスの反応温度の違いを示す図 T字隅肉溶接試験方法を模式的に説明する図

Claims (3)

  1. Zn−Al−Mg系合金を鋼板表面にめっきしためっき鋼板の溶融溶接において、溶接部および熱影響部にMg成分除去作用を有する物質を予め塗布又は載置した後、あるいは供給しつつ、溶接に必要な熱量を付加して溶融溶接する際に、Mg成分除去作用を有する物質として、0〜100モル%のCsAlF4と100〜0モル%のCs3AlF6のフッ化物系混合物を用いることを特徴とするZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の溶接方法。
  2. 前記Mg成分除去作用を有する物質を固形化したものを使用することを特徴とする請求項1に記載のZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の溶接方法。
  3. 前記Mg成分除去作用を有する物質を固形化させるために樹脂成分、溶剤及びゲル化剤を用いる請求項2に記載のZn−Al−Mg系合金めっき鋼板の溶接方法。
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