JP5374786B2 - 上方へ向かって締め付け圧力が減少するガードル - Google Patents

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腹筋の筋力低下を補う機能を有するガードルに関する
運動不足や老化により腹筋の筋力が低下すると、腹圧を維持し難くなり腰痛発症の危険が増す。また、内臓の下垂や、腹筋で構成される腹壁の隙間も広がるため、鼠径ヘルニアを発症し易くなる。腹部全体を腹圧と同等の圧力で外部から加圧できれば、腹膜の保護や内臓下垂予防に有効となる可能性が考えられる。
腹圧は腹壁の筋肉と横隔膜の張力により生じるが、立位や座位では内臓の重量等により腹圧は上腹部横隔膜下で最も低く、下腹部へ向かって次第に高くなり、下腹部下端で最大となる。咳やクシャミをする時は横隔膜の張力が一時的に増すため腹圧が高まり、鼠径部付近の腹膜がこの圧力で伸びて変形してしまうと鼠径ヘルニアの原因となる。
外部から圧力を加える実用例として、腰痛ベルトや腹帯がある。腹圧を上げることで椎間板の圧迫力を軽減し腰痛予防に有効ではあるが、腰付近に巻くため下腹部は支えられない。既存のガードルも腹部加圧手段のひとつであるが、体型補正を目的として作られているため主に臍部近傍のふくらみを締め付けて押さえており、下腹部・鼠径部付近の締め付け圧力が不足する。
下腹部の締め付け圧力を上げる工夫として、股部を含め全体を弾力性ニット材でつくり、腹部領域に全圧力を及ぼすとともに、縫製方法を工夫し着用時に股の一部に予圧を加えるパンツ状補助衣(特許文献1)がある。ガードルでは、ウェスト部の締め付け力を下部よりも下げ圧迫感を解消する目的で、ウェスト部の一部に三角形状の(特許文献2)あるいは折り返した生地片による(特許文献3)伸縮部を設ける工夫がされている。
特表2007−519439号 公報 特開2000−336501号 公報 実開平07−002408 号 公報
従来の技術では、パンツ状補助衣のように局部的に圧力を高めることはできるが、全体がほぼ同一圧力で締付けられる構造であり、腹部の圧迫感から全体の締付け圧力が制限され、下腹部の圧力が不足する。またガードルの場合は主として、大腿部付け根付近・腹部・臀部全周を環状に締付ける構造のため、大腿と外陰部との間で凹んでいる鼠径部付近の締付け圧が弱く、特に座位では下腹部の締付け圧が著しく低下するという欠点がある。
本発明は、上記従来技術の欠点を解決すべく、立位・座位に関わらず締め付け力が下腹部で最大で、上方へ向かって連続的に減少し腹圧と同様の圧力分布を有するガードルを提供する。
腹部形状を単純化して円柱形状と見做せば、腹圧と同等の圧力分布を得るためには、横方向の締め付け力が下腹部で最大となり上方へ向かって減少するような締め付け構造を実現すれば良い。
臍より下の腹部を覆う概略逆三角形の布の左右斜辺を、「図1」のように、鼠径線より上を経由し、下腹部下端付近に頂点を持ち互いに向き合う、一対の放物線状に成形する。左右および下の各頂点に帯等を接続し、下の頂点を股下から背面へ、左右の頂点を腸骨近傍から腰背面へ、3方向へ帯等で引っ張り着用する。この時、布の左右斜辺には辺を直線に近づける方向へ力が生じ、布に横方向の張力成分が発生する。
上記布を伸縮性の少ない材質で作り、その中央部に、伸縮性弾性素材からなる部分(以下伸縮部と呼ぶ)を、布の下端付近から双曲線状に広がり上端に達するよう設ける。着用時に布は横方向に変位し、伸縮部には布の変位に応じた張力を発生する。
伸縮部の横方向寸法は下部で短く、上部へ向かって双曲線状に長くしているので、伸縮部の伸び量を元の長さで割った「伸び率」は、下部で大きく上部で小さくなる。伸び率に比例して、布には下部で大きく上部へ向かって減少する張力分布が得られる。適切な寸法を選べば腹圧と同じ締め付け圧力分布を得ることも可能となる。
尚、伸縮部は必ずしも中央部に設けられる必要は無く、横方向の寸法が下から上へ双曲線状に増加するという条件を満たせば、分割配置しても良い。
男性用には「図2」の如く、前記布の伸縮部より下部に逆三角形状の開口部を設け、外陰部をその開口部に通して着用することで、外陰部を圧迫すること無く近傍まで加圧することができる。
下の頂点を引く帯等の数と方向は任意であり、その張力の合力が体の中心線に沿って股下から背面に向かっていれば良い。左右の頂点を含め、着用の帯等は、形状・材質ともに任意で、伸縮しにくい布等の材質の代わりに、一部区間をゴム等の伸縮と弾力に富む材質に替えても良い。また、帯の代わりに概略逆三角形状の布とし、各頂点を腹部の布の頂点と接合して全体をパンツの形状「図3」とすることもできる。
請求項1に係わる発明によれば、大腿部を経由せずに腹部を締め付ける構造であるため、座位においても立位と同様の圧力で腹部を加圧できる。
請求項2に係わる発明によれば、腹圧と同等の圧力で外部から加圧でき、外見的な腹部補整用途だけでなく、腹膜の保護や内臓下垂予防など、日常生活の様々な姿勢においても継続して、腹筋の筋力低下を補う用途で使用できるガードルが実現する。
請求項3に係わる発明によれば、恥骨部筋肉を避けて男性外陰部周辺を加圧できるので連続着用ができ、鼠径ヘルニアの予防ないし保存療法の補助衣としての利用や、排尿時の脱着が不要なガードルが実現する。
請求項4に係わる発明によれば、外見が通常のパンツと変わらぬ形状のガードル機能を有する下着が実現でき、運動着への着替え等が必要な場所でも他人の目を気にすることなく、着用の抵抗感を著しく減らすことができる。
着用時正面図である。 請求項3に係わる発明の布の展開図である。 実施形態の正面斜視図である。
図3は本発明の実施形態のひとつを示すもので、下腹部に当てられる前みごろ1の下部に、男性外陰部を通すための開口部5を設け、股下からは帯の代わりに伸縮性の少ない材質で作られた後ろみごろ4をつけて背面に引いている。前みごろ1の左右の頂点は、弾力性素材の帯3cで腰背面に引く構造としている。
正面から見た場合、図3の帯3cは、図2の帯3aに同じく前みごろ1に対し若干の角度を持って接続される。前みごろ1の左右斜辺は図2のように放物線状に成形され、開口部上端の左右1aが放物線の頂点になり、この間に最も強い横方向張力が生じる。
前みごろの中央部に弾力性素材で作られた伸縮部2を、布上端に向けて双曲線状に広がる形状で設けている。伸縮部の下端は開口部付近にまで至ることにより、連続的な締め付け圧力変化を作り出すことができる。
着用時には、前みごろ1の放物線状斜辺は、図1のように、腸骨端付近から発して人体の鼠径線10より上部を経由して頂点に至るよう成形されている。これにより、帯3aの張力は効率良く下腹部下端の放物線の頂点1a間に張力を生じさせる。
1 前みごろ
1a 前みごろの斜辺をなす放物線の頂点
2 伸縮部
3a、3b、3c 着用のための帯
4 後ろみごろ
5 開口部
10 人体の鼠径線

Claims (4)

  1. 伸縮性の少ない材質で作られた概略逆三角形を成す布を下腹部にあて、左右および下の各頂点を背面へ引っ張り着用する衣類であって、布の中央部に下腹部下端付近から臍下の布上端にかけて双曲線状に広がる形状の伸縮部を有し、その布の左右斜辺を、鼠径線より上を経由して下腹部下端付近を頂点として向かい合う一対の放物線状に成形することを特徴とする、ガードル等の衣類。
  2. 請求項1の伸縮部形状を、双曲線状の広がりを左右方向に分割配置した形状に成形することを特徴とするガードル等の衣類。
  3. 請求項1又は2の布の下部に、外陰部を通すための、逆三角形状の開口部を設けた男性用ガードル等の衣類。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかの構造を、通常の布製パンツ等に挿入、あるいは一部として合成する、等の方法で一体化したガードル機能を有するパンツ等衣類。
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