JP5364744B2 - 加速度検出装置、方法及びプログラム - Google Patents

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Description

この発明は、例えばユーザの歩行時における加速度を検出する加速度検出装置、方法及びプログラムに関する。
近年、ユーザに加速度センサを持たせ、この加速度センサの検出波形をもとにユーザの歩行状態等を分析する技術が提案されている。この技術は、例えばユーザの健康状態を遠隔監視する手段として利用可能である。
ところで、ユーザの歩行状態を分析するには、例えば加速度データの波形のピーク値が用いられる。信号波形からそのピーク値を検出する手法としては、例えば音信号からそのピーク値を検出する際に移動平均法を用いて平滑化を行った音声信号に対し三点比較を行うことでピークを検出する手法(例えば非特許文献1を参照)や、平滑化微分を用いて符号が正から負になる位置を抽出し、この抽出された位置の中から閾値以上の位置をピークとして抽出する手法が知られている(例えば非特許文献1を参照)。
琴坂信哉、stefan schaal、"神経振動子を用いたロボットのリズミックな運動生成"、日本ロボット学会誌、Vol.19,No.1,pp.116-123,2001 後藤真孝、"リアルタイム音楽情景記述システム:サビ区間検出手法"、情報処理学会 音楽情報科学研究会 研究報告、Vol.2002,No.100,pp.27-34,2002
ところが、上記非特許文献1及び非特許文献2に記載された手法は、ユーザの歩行状態の検出に適用しようとすると以下のような課題を有していた。すなわち、ユーザの歩行中に得られる加速度データは非常に複雑な波形となる。例えば、図10はパーキンソン病を患った患者の歩行時における3軸の加速度の生データを示し、図11は図10に示した加速度の生データを非特許文献1に記載された技術を用いて平滑化処理したデータを示す。また図10には、図11に示した平滑化処理されたデータから抽出されたピーク位置を示すデータを併せて図示している。図10及び図11から明らかなように、ユーザの歩行中の加速度の波形は、平滑化データを用いた場合においても多くの余分なピークが検出され、またピークの大きさは時間に応じて異なる。
このため、非特許文献1に記載された方式のように単に平滑化処理された信号波形からピークを算出する方式では、ピーク以外の箇所がピークとして抽出されてしまい、要求する検出精度が得られない。また、ユーザの歩行中における加速度データの波形は、ユーザの状態やユーザがいる位置での地理的要因等に応じて、ピークの大きさが時間に応じて相対的に大きく異なる場合がある。このため、非特許文献2のように閾値処理を加えることで不要なピークを削除する方式を採用しようとしても、閾値を適切な値に設定することが困難である。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、波形の平滑化処理や閾値を用いた処理のみではピーク抽出を行うことが困難な加速度データに対しても精度良くピークを抽出することが可能な加速度検出装置、方法及びプログラムを提供することにある。
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、加速度センサから複数の軸成分を有する加速度データを受信し記憶し、この記憶された加速度データを軸成分ごとに平滑化する。そして、この平滑化された加速度データからその軸成分ごとにピークの集合を抽出し、この抽出されたピークの集合の中から、上記複数の軸のすべてにおいてピーク位置を示す時刻が予め定められた時間幅の中に含まれるピークの組み合わせをピーク位置候補として抽出するようにしたものである。
したがって、ユーザの健康状態やユーザがいる位置の地理的要因等に応じて歩行時における波形データが大きく異なる場合のように、ローパスフィルタ等の平滑化処理や閾値処理のみではピーク抽出を行うことが困難な加速度データに対しても、不要なピークを効果的に削除して、ピーク候補を精度良く抽出することが可能となる。
また、この発明の第1の観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、上記ピーク位置候補の抽出処理に先立ち、上記平滑化された加速度データに対し各軸成分のデータ間で波形の正方向と負方向の向きが同じになるように調整を行うようにしたものである。
このようにすると、ピーク位置候補の抽出処理を簡単かつ精度良く行うことが可能となる。
第2の態様は、上記抽出されたピーク位置候補の情報に基づいて、加速度センサから取得した加速度データの各軸成分からピーク値を検出するようにしたものである。
このようにすると、加速度データから直接ピーク値を検出する場合に比べ、ピーク値を正確に検出することが可能となる。
すなわちこの発明によれば、波形の平滑化処理や閾値を用いた処理のみではピーク抽出を行うことが困難な加速度データに対しても精度良くピークを抽出することが可能な加速度検出装置、方法及びプログラムを提供することができる。
この発明の一実施形態に係る加速度検出システムの概略構成図。 図1に示したシステムにおいて加速度検出装置として使用されるピーク検出装置の機能構成を示すブロック図。 図2に示したピーク検出装置による加速度ピーク検出処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 前記3に示した加速度ピーク検出処理によるピーク位置候補抽出処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 図3に示した加速度ピーク検出処理による軸向き調整処理を説明するための図。 図4に示したピーク位置候補抽出処理により抽出されたピーク位置候補の一例を示す図。 図4に示したピーク位置候補抽出処理によるx軸とy軸との間のポジティブピーク位置間距離の算出結果の一例を示す図。 図4に示したピーク位置候補抽出処理によるx軸とz軸との間のポジティブピーク位置間距離の算出結果の一例を示す図。 図3に示した加速度ピーク検出処理によるピーク検出結果の一例を示す図。 従来技術によるピーク検出結果の一例を示す図。 図10に示した加速度データを平滑化したデータの一例を示す図。
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[構成]
図1は、この発明の一実施形態に係る加速度検出システムの概略構成図である。このシステムは、ユーザの体に装着される加速度センサASと、加速度検出装置としてのピーク検出装置PDとから構成される。
加速度センサASは、3軸加速度センサからなるセンサ本体と、無線ユニットとからなる。センサ本体は、ユーザの前後方向(x軸)、左右方向(y軸)、上下方向(z軸)における加速度の時系列上の変化をそれぞれ検出し、この検出された加速度の変化を表す3軸加速度データを無線ユニットへ出力する。無線ユニットはメモリと無線部を備える。そして、上記3軸加速度データをメモリに一旦蓄積し、一定時間分蓄積されるごとに読み出してピーク検出装置PDに向け無線部から送信する。このときの無線通信方式として、例えば携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)で使用される無線通信方式、Bluetooth(登録商標)やWiMAX(登録商標)等の小電力無線データ伝送規格に規定された無線通信方式が用いられる。
ピーク検出装置PDは、例えばユーザの自宅又はオフィスに設置されたパーソナル・コンピュータ、或いは業者又は自治体が運用するサーバコンピュータからなり、以下のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。
すなわち、このピーク検出装置PDは、アンテナ11を有する通信ユニット1と、制御ユニット2と、記憶ユニット3とを備えている。通信ユニット1は、上記加速度センサASとの間で加速度データを受信するための無線通信を行う。
記憶ユニット3は、記憶媒体として例えばハードディスクやフラッシュメモリ等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリを使用したもので、この発明の実施形態を実施する上で必要な記憶機能として、加速度データ記憶部31と、平滑化データ記憶部32と、軸向き調整後データ記憶部33と、ピーク位置候補記憶部34と、ピーク位置検出結果記憶部35を備えている。
加速度データ記憶部31は、加速度センサASから送られたユーザの動きを表す3軸加速度データを記憶するために用いられる。平滑化データ記憶部32は、上記3軸加速度データを平滑化処理したデータを記憶するために用いられる。軸向き調整後データ記憶部33は、上記平滑化された3軸加速度データに対し軸向きの調整が行われた後のデータを記憶するために用いられる。ピーク位置候補記憶部34は、上記軸向き調整後の平滑化データから抽出されたピーク位置の候補を表す情報を記憶するために用いられる。ピーク位置検出結果記憶部35には、上記ピーク位置の候補の中から検出されたピーク位置を表す情報が記憶される。
制御ユニット2は中央処理ユニット(CPU;Central Processing Unit)を備え、この発明の実施形態を実施する上で必要な処理機能として、3軸加速度データ受信部21と、正規化・平滑化処理部22と、軸向き調整部23と、ピーク位置候補抽出部24と、ピーク位置検出部25を備えている。これらの3軸加速度データ受信部21、正規化・平滑化処理部22、軸向き調整部23、ピーク位置候補抽出部24及びピーク位置検出部25は、いずれも制御ユニット2内のプログラム・メモリに格納されたアプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることにより実現される。
3軸加速度データ受信部21は、通信ユニット1を制御することにより、上記加速度センサASから予め定められた時間長の3軸加速度データを予め定めた時間間隔で受信する。そして、この受信した3軸加速度データを上記記憶ユニット3内の加速度データ記憶部31に記憶させる処理を行う。なお、予め定めたルールに基づいたイベントが発生するごとに、加速度センサASからその3軸加速度データを受信するようにしてもよい。
正規化・平滑化処理部22は、上記加速度データ記憶部31から処理対象の期間に含まれる加速度データを軸ごとに読込み、この読込んだ加速度データに対し正規化処理し、さらにディジタルフィルタを用いた平滑化処理を行う。そして、この平滑化された3軸加速度データを記憶ユニット3内の平滑化データ記憶部32に記憶させる処理を行う。正規化処理は、3軸それぞれの加速度データのスケールを同程度の大きさに調整するために行われる。平滑化処理は、後述するピーク候補の抽出処理のために加速度データの高周波数成分のノイズの影響を低減するために行われる。
軸向き調整部23は、上記平滑化データ記憶部32から3軸の平滑化データを予め設定した時間分ずつ読込み、この読込んだ各軸の平滑化データ間でその波形の+方向と−方向の向きが同じになるように調整する。そして、この軸向きが調整された3軸平滑化データを記憶ユニット3内の軸向き調整後データ記憶部33に記憶させる処理を行う。なお,軸の向き調整は、オペレータが各軸の波形の向きを判断して手動操作により行うことも可能である。
ピーク位置候補抽出部24は、上記軸向き調整後データ記憶部33から軸向き調整後の3軸平滑化データを軸ごとに読込み、この読込んだ軸向き調整後の3軸平滑化データからピーク位置の集合を抽出する。そして、この抽出されたピーク位置の集合の中から適切なピーク位置の候補を抽出する処理を行う。そして、この抽出されたピーク位置の候補を表す情報を記憶部3内のピーク位置候補記憶部34に記憶させる処理を行う。
ピーク位置検出部25は、上記ピーク位置候補記憶部34からピーク位置の候補を表す情報を読込むと共に、上記加速度データ記憶部31から当該ピーク位置候補が存在する期間の3軸加速度データを読込む。そして、上記読込んだピーク位置の候補を表す情報に基づいて、上記3軸加速度データ上でピーク位置を検出する処理を行い、その検出結果を表す情報を記憶ユニット3内のピーク位置検出結果記憶部35に記憶させる処理を行う。
[動作]
次に、以上のように構成されたピーク検出装置PDによる加速度ピーク位置検出動作を説明する。図3はその全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
(1)3軸加速度データの取得
ユーザの歩行中に加速度センサASは、当該ユーザの歩行動作により発生する加速度をその前後方向(x軸)、左右方向(y軸)、上下方向(z軸)に分けてそれぞれ検出し、その検出データを蓄積する。そして、予め設定された時間分の検出データが蓄積されると、当該蓄積された検出データを読み出してこれを3軸加速度データとしてピーク検出装置PDに向け送信する。なお、上記蓄積された3軸加速度データは、ピーク検出装置PDから送信要求を受信したときにこの要求に応答してピーク検出装置PDへ送信するようにしてもよい。
一方、ピーク検出装置PDでは、3軸加速度データ受信部21が加速度センサSCによる3軸加速度データの送信を監視している。そして、3軸加速度データが送信されると、ステップS11において通信ユニット1により上記3軸加速度データを受信し、この受信された3軸加速度データを記憶ユニット3内の加速度データ記憶部31に記憶させる。
(2)3軸加速度データに対する正規化及び平滑化処理
上記新たな3軸加速度データが受信されると、ピーク検出装置PDでは正規化・平滑化処理部22が起動し、この正規化・平滑化処理部22が先ずステップS12において3軸(x軸、y軸、z軸)のうちの1つの軸を選択し、この選択した軸に該当する加速度データを上記加速度データ記憶部31から読込む。そして、ステップS13において、上記読込んだ加速度データに対し以下のような正規化処理を行う。
すなわち、正規化方式としては、加速度データの平均と分散の値を用いた方式がある。例えば、x軸の加速度データを
ax=(ax(t-N), ax(t-N+1),…,ax(t))
とした場合、下式に示す平均AVEと分散SDを用いることで、正規化データが
Ax’=(ax’(t-N), ax’(t-N+1),…,ax’(t))
として算出される。ただし、3軸加速度データ受信部21において受信された各軸の加速度データ数をN+1とし、iを任意の整数とする。
Figure 0005364744
続いて正規化・平滑化処理部22は、ステップS14において、上記正規化された加速度データに対し以下のように平滑化処理を行う。
すなわち、平滑化手法としては、例えばローパスフィルタを用いた平滑化処理がある。この平滑化処理は、正規化されたデータに対し、下式に示す一次遅れの伝達関数G(s)を乗じることにより実現できる。ただし、K,ωc ,sはそれぞれ、ローパスフィルタの通過域における利得、遮断周波数、ラプラス変換の変数とする。
Figure 0005364744
そうして上記選択した軸の加速度データに対する正規化及び平滑化処理が終了すると、正規化・平滑化処理部22はこれらの処理により得られた平滑化された加速度データを平滑化データ記憶部32に記憶した後、3軸すべての加速度データに対する処理が終了したか否かをステップS15において判定する。そして、まだ選択していない軸が残っていれば、ステップS12に戻ってこの未選択の軸を1つ選択し、ステップS13及びステップS14による正規化処理及び平滑化処理を実行する。
(4)軸の向きの調整
上記ステップS15により3軸すべての加速度データに対する処理が終了すると、制御ユニット2は次にステップS16において軸向き調整部23を起動する。そして、この軸向き調整部23により、上記平滑化データ記憶部32から3軸の平滑化された加速度データを読込み、この読込んだ各軸の平滑化された加速度データ間でその波形の+方向と−方向の向きが同じになるように、以下のような調整処理を行う。
すなわち、軸の向きの調整方式としては、例えば比較対象の軸を一つ選定し、この選定された軸における平滑化された加速度データと、残りの2つの軸における平滑化された加速度データ間の相互相関を算出する方式がある。
例えば、3軸の平滑化加速度データをそれぞれ
lax’=(lax’(t-N), lax’(t-N+1),…,lax’(t))
lay’=(lay’(t-N), lay’(t-N+1),…,lay’(t))
laz’=(laz’(t-N), laz’(t-N+1),…,laz’(t))
とし、比較対象としてx軸を選定すると、x軸とy軸との間、及びx軸とz軸との間のそれぞれにおける相互相関MAは以下のように算出される。ただし、添え字は相互相関の算出を行う軸の組み合わせを表す。
Figure 0005364744
続いて、上記のように算出された相互相関MAが予め定めた閾値σ未満であるか否かを判定し、閾値σ以下であれば該当する平滑化加速度データと、上記加速度データ記憶部31に記憶された加速度データ、つまり加速度の生データの符号をそれぞれ反転させる。例えば図3に示すように、MAx-y <σの場合には、
lay’_= -lay’=(-lay’(t-N), -lay’(t-N+1),…,-lay’(t))
ay_= -ay= (-ay(t-N), -ay(t-N+1),…,-ay(t))
とすることで、該当する軸の加速度データの符号を反転させる。なお、添え字の_は符号調整を行ったことを表す。これに対し、MAx-y ≧σである場合には、符号の反転を行わず、
ax_= ax
ay_= ay
とする。そして、この軸向き調整処理後の平滑化加速度データを軸向き調整後データ記憶部33に記憶させる。
(5)ピーク位置候補の抽出
次に制御ユニット2は、ステップS17によりピーク位置候補抽出部24を起動する。そして、このピーク位置候補抽出部24が、上記軸向き調整後の3軸の平滑化加速度データからピーク位置の候補を抽出する処理を以下のように実行する。図4は、このピーク位置候補抽出処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
(5−1)ポジティブピーク及びネガティブピークの抽出
先ずステップS171により、上記軸向き調整後データ記憶部33から軸向きが調整された平滑化加速度データを読込む。そして、この読込んだ軸向き調整後の平滑化加速度データの中から1つの軸をステップS172で選択し、この選択された軸に対応する軸向き調整後の平滑化加速度データから+方向に凸な部分(ポジティブピーク)及び−方向に凸な部分(ネガティブピーク)をそれぞれ抽出する(ステップS173)。
抽出方式としては、例えば前後2点の加速度データから傾きを算出し、傾きの符号が反転している部分を抽出する手法がある。例えば、
lax’_(i)-lax’_(i-1)>0,lax’_(i+1) - lax’_(i)<0
である場合には、位置iをポジティブピーク位置Piとする。これに対し
lax’_(i)-lax’_(i-1)<0,lax’_(i+1) - lax’_(i)>0
である場合には、位置iをネガティブピーク位置Niとする。そして、これらピーク位置と、当該ピーク位置における、軸の向きが調整された平滑化加速度データの値も合わせて抽出する。ここで、軸の向きが調整されたx軸の平滑化加速度データ上で抽出されたポジティブピーク群のデータセットPx を
((Px1, lax’_(Px1), (Px2, lax’_(Px2),…, (Pxn, lax’_(Pxn))
のように表記する。ただし、n は抽出されたピークの数であるとする。
(5−2)閾値処理
続いてステップS174において、上記抽出された各ピーク群から不要なピーク候補を削除するための閾値処理が行われる。具体的には、ポジティブピーク群に対しては0以下のポジティブピークの削除を行い、ネガティブピーク群に対しては0以上のネガティブピークをネガティブピーク群から削除する。例えば、
Px=((Px1, lax’_(Px1), (Px2, lax’_ (Px2), (Px3, lax’_ (Px3),…, (Pxn, lax’_ (Pxn))
のうち、2つ目のピーク値が0以下である場合(lax’_(P2)<0)には、閾値処理されたx軸におけるポジティブピーク群Px’は、
Px’=((Px1, lax’_(Px1), (Px3, lax’_ (Px3),…, (Pxn, lax’_(Pxn))
となる。この閾値処理されたx軸のピーク群Px’は制御ユニット2内の作業メモリに保存される。
ステップS175では、上記したピーク抽出処理と閾値処理が3軸のすべての軸について終了したか否かが判定される。この判定の結果、まだ処理していない軸が残っていれば、ステップS172に戻って次の未選択の軸が選択され、この軸に対し上記ピーク抽出処理と閾値処理が実行される。
(5−3)ピーク位置候補の抽出
上記3軸のすべての軸について上記ピーク抽出処理と閾値処理が終了すると、ピーク位置候補抽出部24はステップS176において、上記軸ごとに抽出されたポジティブピーク群及びネガティブピーク群の近接関係からピーク位置候補の抽出を以下のように行う。
すなわち、ポジティブピーク位置の候補を抽出する場合には、軸を一つ選定し、この選定された軸について抽出されたポジティブピーク群の各ピーク位置ごとに、当該ピーク位置を含む所定の時間幅の期間(近傍位置)において、残り2つの軸でもポジティブピークが抽出されているかどうかを判定する。そして、上記近傍位置において3軸ともにポジティブピークが抽出されている場合には、その組み合わせをピーク候補として抽出し、ピーク位置候補記憶部34に記憶させる。
例えば、x軸を選定した場合には、
Px’=((Px1, lax’_(Px1), (Px3, lax’_ (Px3),…, (Pxn, lax’_(Pxn))
の各位置に対して、Pa’ 及びPz’ の各要素において近しいピークがあるかどうかを探索する。その算出イメージを図7及び図8に示す。同図では、各ピーク位置間の時間差を算出し、時間差が閾値以内だった組み合わせに対してその旨の情報(○印で図示)を付与している。図7及び図8の例では、Px’1 に対してその近傍位置でPy'1 及びPz’2 においてピークが抽出されている。このため、
(|Px1-Py1|<δ && | Px1-Pz2|<δ(δ:近傍を表すパラメータ)),
(Px1,Py1,Pz2)
の組み合わせをピーク位置候補として抽出する。この抽出されたピーク位置候補はピーク候補位置記憶部34に記憶される。
このように、あるピーク位置の近傍位置において3軸のすべてでピーク位置が抽出されるときの当該ピーク位置の組み合わせのみをピーク位置候補として抽出することで、不要なピークを削除することができる。図6は、実際の3軸の加速度データから抽出されたピーク位置候補の例を示すものである。
(6)ピーク位置の検出
次に制御ユニット2は、ピーク位置検出部25が、上記ピーク位置候補抽出部24により検出されたピーク位置候補に基づいて、加速度データ(生データ)上のピーク位置を検出する処理を以下のように行う。
すなわち、先ずステップS18により3軸(x軸、y軸、z軸)のうちの1つの軸を選択し、この選択した軸に該当するピーク位置候補を上記ピーク位置候補記憶部34から読込む。またそれと共に、当該ピーク位置候補が存在する期間を含む加速度の生データを上記加速度データ記憶部31から読込む。そして、ステップS19において、上記読込んだ加速度の生データ上で、上記ピーク位置候補の位置を含む所定の時間帯に対し最大の値を持つ加速度値を探索し、この探索された最大をとる加速度値をピーク値として検出する。この検出されたピーク値は、その検出位置を表す時刻情報と、ユーザの識別情報と関連付けられてピーク位置検出結果記憶部35に記憶される。
ステップS20では、以上述べたピーク位置検出処理が3軸のすべての軸について終了したか否かが判定される。この判定の結果、まだ処理が終了していない軸が残っていれば、ステップS18に戻って未選択の軸が選択され、この選択された軸に対しステップS19により上記ピーク位置検出処理が行われる。
図9は、以上述べたピーク位置検出処理の具体例を示すものである。同図において、ピーク位置候補が(Px1,Py1,Pz2),(Px6,Py5,Pz6)の2つだったとすると、各軸のピークは
x軸上のピーク(Px’’1,ax_(Px’’1)),(Px’’2,ax_ (Px’’2))
y軸上のピーク(Py’’1,ay_ (Py’’1)),(Py’’2,ay_(Py’’2))
z軸上のピーク(Pz’’1,az_ (Pz’’1)),(Pz’’2,ax_ (Pz’’2))
のようになる。図9において、破線はピーク位置候補を、また実線は当該ピーク位置候補に基づいて加速度の生データ上で検出されたピークをそれぞれ示している。
なお、上記ピーク位置検出結果記憶部35に記憶された加速度ピーク値の検出情報は、例えば本人、家族又は医療従事者の端末からアクセスすることにより適宜読み出され、ユーザの健康状態の判定や治療方法を検討するデータとして使用される。
以上詳述したようにこの実施形態では、加速度センサASから受信した3軸加速度データを正規化及び平滑化した後、その平滑化加速度データにおいて各軸のデータ間で波形の+方向と−方向の向きが同じになるように調整する。そして、この軸向き調整後の3軸平滑化加速度データから、近傍位置において3軸のすべてでピーク位置が抽出されるときの当該ピーク位置の組み合わせのみをピーク位置候補として抽出し、この抽出されたピーク位置候補の情報をもとに、加速度の生データの対応する位置に存在する値が最も大きい加速度値をピーク値として検出するようにしている。
したがって、ユーザの健康状態やユーザがいる位置の地理的要因等に応じて歩行時における波形データが大きく異なる場合のように、ローパスフィルタ等の平滑化処理や閾値処理のみではピーク抽出を行うことが困難な加速度データに対しても、ピーク値を精度良く検出することが可能となる。
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ピーク検出装置PDが携帯電話機やスマートホン、PDA(Personal Digital Assistant)、電子書籍端末、ノート型パーソナル・コンピュータ等の携帯端末により構成され、この携帯端末をユーザが携帯する場合には、加速度センサASにより得られた加速度データを有線信号ケーブルにより携帯端末へ伝送するようにしてもよい。また、加速度センサASを携帯端末に内蔵させ、この携帯端末内において加速度の検出からそのピーク値の検出処理までの一連の処理をすべて行うように構成してもよい。
その他、加速度検出装置の構成や、正規化処理、平滑化処理、軸向きの調整処理、ピーク位置候補の抽出処理及びこのピーク位置候補に基づくピーク値の検出処理の各処理手順と処理内容については、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。また、検出された加速度ピーク値の用途等についても、ユーザの健康状態や医療目的に限定されず、種々の用途が考えられる。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
AS…加速度センサ、PD…ピーク検出装置、1…通信ユニット、2…制御ユニット、3…記憶ユニット、11…アンテナ、21…3軸加速度データ受信部、22…正規化・平滑化処理部、23…軸向き調整部、24…ピーク位置候補抽出部、25…ピーク位置検出部、31…加速度データ記憶部、32…平滑化データ記憶部、33…軸向き調整後データ記憶部、34…ピーク位置候補記憶部、35…ピーク位置検出結果記憶部。

Claims (7)

  1. 加速度センサから複数の軸成分を有する加速度データを受信し記憶する手段と、
    前記記憶された加速度データを軸成分ごとに平滑化する平滑化手段と、
    前記平滑化された加速度データからその軸成分ごとにピークの集合を抽出し、この抽出されたピークの集合の中から、前記複数の軸のすべてにおいてピーク位置を示す時刻が予め定められた時間幅の中に含まれるピークの組み合わせをピーク位置候補として抽出するピーク位置候補抽出手段と
    を具備することを特徴とする加速度検出装置。
  2. 前記平滑化された加速度データに対し各軸成分のデータ間で波形の正方向と負方向の向きが同じになるように調整を行い、この軸の向きが調整された平滑化加速度データを前記ピーク位置候補抽出手段に供給する軸向き調整手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の加速度検出装置。
  3. 前記ピーク位置候補抽出手段により抽出されたピーク位置候補の情報に基づいて、前記記憶された加速度データの各軸成分からピーク値を検出するピーク値検出手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載の加速度検出装置。
  4. 加速度センサから複数の軸成分を有する加速度データを受信しメモリに記憶する過程と、
    前記メモリに記憶された加速度データを軸成分ごとに平滑化する過程と、
    前記平滑化された加速度データからその軸成分ごとにピークの集合を抽出し、この抽出されたピークの集合の中から、前記複数の軸のすべてにおいてピーク位置を示す時刻が予め定められた時間幅の中に含まれるピークの組み合わせをピーク位置候補として抽出する過程と
    を具備することを特徴とする加速度検出方法。
  5. 前記ピーク位置候補の抽出過程に先立ち、前記平滑化された加速度データに対し各軸成分のデータ間で波形の正方向と負方向の向きが同じになるように調整を行う過程を、さらに具備することを特徴とする請求項4記載の加速度検出方法。
  6. 前記ピーク位置候補を抽出する過程により抽出されたピーク位置候補の情報に基づいて、前記メモリに記憶された加速度データの各軸成分からピーク値を検出する過程を、さらに具備することを特徴とする請求項4又は5記載の加速度検出方法。
  7. 請求項1乃至3のいずれかに記載の加速度検出装置が具備する手段による処理を、当該加速度検出装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。
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